熱可塑性ポリアミドエラストマー

概要

項目内容
材料名熱可塑性ポリアミドエラストマー
略記号TPAE、TPA、TPE-A。ポリエーテルブロックアミド系はPEBAとも表記される。
IUPAC単一のIUPAC名で表される材料ではなく、ポリアミド硬質セグメントとポリエーテル又はポリエステル軟質セグメントからなるブロック共重合体群である。
英語名Thermoplastic Polyamide Elastomer、Polyamide-based Thermoplastic Elastomer、Polyether Block Amide
日本語名・別名熱可塑性ポリアミドエラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマー、ポリエーテルブロックアミド、ナイロンエラストマー
分類熱可塑性エラストマー、ポリアミド系ブロック共重合体
プラスチック分類エンジニアリング・エラストマー、熱可塑性樹脂、結晶性又は半結晶性材料
化学式又は代表構造−[ポリアミド硬質セグメント]−CO−O−[ポリエーテル軟質セグメント]−O−CO− の繰返しを基本とする。
CAS No.材料群として一意のCAS No.はない。構成ブロック、末端基及び組成により異なる。
構造・主成分PA6、PA11又はPA12等のポリアミド硬質ブロックと、PTMG、PEG又はPPG等のポリエーテル軟質ブロックからなる。
主な用途スポーツシューズ、スキーブーツ、医療用カテーテル・チューブ、自動車配管、空圧チューブ、電線被覆、フィルム、3Dプリント、制振・弾性部品

熱可塑性ポリアミドエラストマーは、ポリアミドからなる硬質セグメントと、ポリエーテル等からなる軟質セグメントを分子内に持つブロック共重合体型の熱可塑性エラストマーである。ポリアミド結晶が物理架橋点として働き、常温ではゴム弾性を示す一方、加熱すると溶融して射出成形や押出成形が可能になる。

市場ではポリエーテルブロックアミド(PEBA)系が代表的であり、硬質セグメントにPA6、PA11又はPA12、軟質セグメントにPTMG、PEG又はPPG等が用いられる。硬質セグメント比率を高めると硬度、剛性、耐熱性が増し、軟質セグメント比率を高めると柔軟性、伸び、低温特性が増す。

材料選定では、TPAEという材料群名だけでなく、ポリアミド種、ポリエーテル種、硬度、融点、吸水性、医療・食品・難燃等の認証、使用温度、薬品濃度、荷重、応力、湿度及び寿命を確認する必要がある。

特徴

項目内容
長所低密度、優れた低温柔軟性、反発弾性、屈曲疲労性、耐摩耗性、耐油性を併せ持つ。可塑剤を使用せず広い硬度範囲を設計できる。
短所一般的なTPOや軟質PVCより高価である。吸湿、熱水、強酸、フェノール類及び一部極性溶剤で物性が変化し得る。
外観自然色は乳白色から半透明が一般的であり、薄肉又は特定グレードでは透明性を示す。着色グレードもある。
耐熱性融点は概ね130~175℃の範囲で、連続使用温度は一般に80~110℃程度が目安である。硬質セグメント及び安定化処方により異なる。
耐薬品性油、グリース、脂肪族炭化水素に比較的良好であるが、強酸、フェノール、熱水、強極性溶剤には注意を要する。
加工性射出、押出、ブロー、フィルム、チューブ、発泡、粉末造形等に適用できる。吸湿性があるため成形前乾燥が重要である。
分類上の注意TPAEは材料群の総称であり、PEBAと完全な同義ではない。市場ではPEBA系が中心であるが、ポリエステルアミド系等も含み得る。

構造式

熱可塑性ポリアミドエラストマーTPAEの代表構造とミクロ相分離構造

構造要素代表例役割・特徴
硬質セグメントPA6、PA11、PA12等結晶化して物理架橋点を形成し、強度、耐熱性、耐油性を付与する。
軟質セグメントPTMG、PEG、PPG等柔軟性、低温特性、反発弾性、透湿性等を付与する。
結合部主にエステル結合PAオリゴマー末端カルボキシ基とポリエーテル末端ヒドロキシ基の縮合で形成される。
共重合・変性硬質/軟質比、末端基、分子量、添加剤硬度、融点、吸水、反発、加工性、耐候性、難燃性を調整する。

種類・代表グレード

グレード区分主な改質方法・構成代表的特徴物性への影響・短所主用途
非強化・標準PA硬質ブロック+ポリエーテル軟質ブロック硬度と弾性のバランスが良い高温剛性は硬質樹脂より低い一般射出品、スポーツ部材
押出・チューブ高溶融強度又は高粘度設計寸法安定、耐屈曲、耐キンク性乾燥とダイ温度管理が必要医療・空圧・自動車チューブ
高反発・発泡低ヒステリシス設計、発泡適性付与軽量、高エネルギーリターン成形設備と発泡条件が限定されるミッドソール、スポーツ用品
医療用途向け抽出物、色、トレーサビリティを管理カテーテル加工性、柔軟性認証は個別グレード確認が必要カテーテル、医療チューブ
帯電防止・導電親水性PEBA又は導電材配合永久帯電防止、柔軟性吸湿依存や表面汚染に注意電子包装、樹脂改質
難燃リン系等の難燃剤を配合電線・電子用途に対応可能伸び、反発、色調が低下し得るケーブル被覆、電装部品
GF強化GFを一般に10~30質量%配合剛性、耐熱、寸法安定性向上弾性、透明性、表面性低下構造部品、補強部材
バイオベースPA11系等の再生可能原料を部分使用低密度、環境負荷低減の選択肢バイオベース率はグレード依存スポーツ、消費財

成形加工

加工方法適性理由・主な注意点
射出成形広い硬度範囲で可能。ショートショット、ジェッティング、過充填に注意する。
押出成形チューブ、ホース、被覆、異形押出に適する。溶融粘度と引取条件を調整する。
ブロー成形高粘度グレードで可能。肉厚均一性とパリソン保持性を確認する。
Tダイフィルム成形薄膜化可能。ネックイン、ブロッキング、吸湿に注意する。
インフレーション成形専用グレードが必要になりやすい。バブル安定性を確認する。
真空・圧空成形シートグレードで可能であるが、加熱窓とスプリングバックに注意する。
圧縮成形試験片、積層、特殊形状に利用できる。
発泡成形ビーズ発泡、射出発泡等が可能な専用グレードがある。
3DプリントSLS粉末及びFDM用グレードがある。吸湿と造形収縮を管理する。
切削加工柔軟グレードは変形、バリ、発熱が生じやすい。
溶着熱板、超音波、レーザー等を検討できる。組成と硬度の整合が必要である。
接着表面処理、プライマー、反応性接着剤が必要な場合がある。
成形条件の一般的な目安
項目代表範囲・設定注意点
予備乾燥吸湿により加水分解、銀条、気泡、粘度低下が生じ得る。
推奨乾燥温度70~90℃除湿乾燥機を基本とし、グレード指示を優先する。
推奨乾燥時間3~6 h開封後の吸湿量、粒径、乾燥機性能で調整する。
許容含水率0.05~0.10%以下を目安医療チューブや外観品ではより厳しく管理する場合がある。
シリンダー温度170~240℃融点・硬度・グレードにより設定する。高温滞留を避ける。
ノズル温度180~235℃糸引き、固化、滞留劣化を見ながら調整する。
金型温度20~60℃結晶化、外観、収縮、離型に影響する。
射出圧力50~120 MPa製品形状、流動長、ゲートにより調整する。
射出速度中速~高速ジェッティング、焼け、エア巻込みを避ける。
背圧0.3~1.0 MPa程度混練と計量安定に必要な最小限とする。
スクリュー回転数30~100 rpm目安せん断発熱と滞留時間を抑える。
成形収縮率・流動方向0.8~2.0%硬度、結晶化、肉厚、金型温度で変動する。
成形収縮率・流動直角方向1.0~2.3%異方性と反りを実金型で確認する。
滞留時間可能な限り短くする長時間停止時はメーカー推奨樹脂でパージする。

成形条件は材料群としての目安であり、メーカー、硬度、融点、溶融粘度、製品形状、成形機及び要求品質により異なる。成形前には個別グレードの技術資料を優先し、含水率、樹脂温度、滞留時間及び実成形品の物性を確認する。

代表的な物性値又は機械的性質

次表は非強化・無充填の標準的なPEBA系TPAEを中心とした代表範囲である。硬度25D級から70D級までを含むため幅が大きく、特定グレードの保証値ではない。

項目単位代表範囲試験規格材料状態・条件備考
密度g/cm³1.00~1.14ISO 118323℃、非強化PA/ポリエーテル比で変動
比重無次元1.00~1.14代表値、規格不明23℃、非強化密度とほぼ同等
硬度Shore D25~72ISO 86823℃軟質から硬質まで幅広い
引張強さ・破断MPa20~55ISO 52723℃、乾燥状態硬度と配向で変動
引張弾性率GPa0.012~0.55ISO 52723℃、乾燥状態軟質グレードは低い
引張破断伸び%250~700ISO 52723℃、乾燥状態グレード差が大きい
曲げ弾性率GPa0.012~0.52ISO 17823℃、乾燥状態硬質セグメント比で変動
アイゾット衝撃強さ・ノッチ付きkJ/m²データなしISO 18023℃NBとなるグレードが多く数値一般化困難
圧縮永久ひずみ%20~55ISO 81523~70℃硬度、温度、時間で大きく変動
吸水率・24時間%0.3~2.0ISO 62相当23℃水中PEG系又は軟質グレードで増加し得る
平衡吸水率%0.5~3.0代表値、規格不明23℃・50%RH又は水中条件で異なる条件を明記して比較する
ガラス転移温度・軟質相-70~-30DSC/DMA代表範囲ポリエーテル種で変動
融点130~175ISO 11357DSC、2nd heating相当PA硬質相に由来
荷重たわみ温度・0.45 MPa45~100ISO 75非強化軟質グレードでは適用性が低い
連続使用温度80~110一般的目安空気中寿命、荷重、薬品で変動
低温使用限界-60~-40一般的目安無荷重又は低荷重低温衝撃性に優れる
熱伝導率W/(m・K)0.20~0.30代表値、規格不明23℃未充填材の目安
線膨張係数10⁻⁵/K10~20ISO 11359相当流動方向、非強化異方性と温度依存あり
体積抵抗率Ω・cm1×10¹²~1×10¹⁶IEC 60093相当乾燥状態帯電防止グレードを除く
絶縁破壊強さkV/mm15~30IEC 60243相当厚さ依存吸湿で低下し得る
比誘電率・1 MHz無次元3.0~5.0IEC 60250相当乾燥状態組成・吸湿で変動
UL 94燃焼性等級HB~V-0UL 94厚さ・色・グレード依存材料群一律ではない
強化・改質グレードの物性傾向
グレード強化材含有率密度 g/cm³引張弾性率 GPa引張強さ MPa主な変化
GF強化TPAE10~30質量%1.10~1.351.0~5.050~120剛性、HDT、寸法安定性が向上する一方、伸び、反発、表面性が低下する。
導電・帯電防止TPAE導電材量はグレード依存1.02~1.25グレード依存グレード依存表面抵抗を低下できるが、色、機械特性、吸湿依存性が変化する。
発泡TPAE発泡倍率依存0.08~0.50一般化困難一般化困難軽量性とエネルギーリターンを狙う。セル構造と成形法で物性が大きく変わる。
比較用評価スコア
評価項目スコア(0~5)評価理由
引張強度3標準的。硬度の高いグレードでは高いが、硬質PAより低い。
剛性2エラストマーとしては設計可能だが、構造樹脂より低い。
衝撃強度5低温を含め非常に優れる。
耐熱性3TPEとして標準~良好。硬質相と安定化処方に依存する。
低温特性5低温柔軟性と衝撃性に優れる。
耐薬品性4油・燃料・脂肪族炭化水素に良好だが、強酸・一部溶剤は注意。
耐候性3安定化グレードでは良好。無安定材は要確認。
耐加水分解性3ポリエーテル系は比較的良好だが、熱水長期では確認が必要。
寸法安定性3PA6系より低吸水のPA12系は良好。軟質材としてのクリープに注意。
低吸水性3PA12系は比較的低いが、PEBA組成により吸水する。
摺動性3耐摩耗性は良いが、PV限界と摩擦は条件依存。
電気絶縁性4乾燥状態では良好。吸湿で低下し得る。
成形加工性4射出・押出等に広く適用できる。乾燥管理が必要。
リサイクル性4熱可塑性で再溶融可能。ただし熱履歴と吸湿を管理する。
価格優位性1高機能TPEであり、一般TPEより高価である。

耐薬品性

次表は一般的なTPAEのスクリーニング評価であり、保証値ではない。実使用では薬品組成、濃度、温度、接触時間、浸漬又は飛沫、残留応力、荷重、繰返し、吸湿状態及びグレードをそろえて確認する。

薬品濃度温度接触条件応力評価主な劣化形態備考
100%23℃24 h浸漬無応力吸水、寸法・弾性率変化長期は実測する
温水100%60~90℃24~168 h浸漬無応力吸水、加水分解、強度低下軟質セグメントと安定化処方に依存
塩水・海水3~3.5% NaCl23℃168 h浸漬無応力吸水、添加剤抽出金属接触部は腐食も確認
塩酸10%23℃24 h浸漬無応力アミド結合の劣化、膨潤濃度・温度上昇で悪化
硫酸10%23℃24 h浸漬無応力膨潤、加水分解濃硫酸は不適
酢酸10%23℃24 h浸漬無応力吸収、軟化長期接触を確認
水酸化ナトリウム10%23℃24 h浸漬無応力長期で加水分解の可能性高温・高濃度は注意
アンモニア水10%23℃24 h浸漬無応力吸水、物性変化応力下を確認
エタノール99%23℃24 h浸漬無応力軽度吸収、軟化軟質グレードほど影響し得る
IPA99%23℃24 h浸漬無応力軽度吸収長期・高温は確認
グリセリン99%23℃24 h浸漬無応力吸湿、可塑化洗浄後の物性回復も確認
MMB99%23℃24 h浸漬無応力膨潤、軟化グレード差が大きい
アセトン99%23℃24 h浸漬無応力膨潤、軟化、抽出短時間拭取りも実部品確認
MEK99%23℃24 h浸漬無応力膨潤、軟化応力下で悪化し得る
酢酸エチル99%23℃24 h浸漬無応力膨潤、軟化長時間浸漬は避ける
トルエン99%23℃24 h浸漬無応力軟質相の膨潤硬度低下に注意
n-ヘキサン99%23℃24 h浸漬無応力軽度膨潤油分を含む実液で確認
ジクロロメタン99%23℃24 h浸漬無応力×著しい膨潤・軟化原則不適
エンジン油市販油100℃168 h浸漬無応力添加剤抽出、膨潤油種、温度、酸化状態で確認
ガソリン系燃料市販燃料23~60℃168 h浸漬無応力膨潤、透過アルコール混合燃料は別評価
ブレーキ液DOT 3/423~100℃168 h浸漬無応力吸収、軟化専用配管グレードを選定
次亜塩素酸Na200~1000 ppm23℃24~168 h無応力酸化、変色、強度低下pH、遊離塩素、温度を管理
過酸化水素3%23℃24 h浸漬無応力酸化劣化高濃度・高温は避ける
SP値(溶解度パラメータ)

TPAEは多相ブロック共重合体であるため単一のSP値で表すことは困難である。PEBA系の見掛けのSP値は、組成により概ね20~24 MPa1/2程度を参考範囲として扱えるが、硬質相と軟質相で親和性が異なる。SP値だけで耐薬品性を判断せず、結晶性、吸水、加水分解、酸化、温度、応力及び添加剤抽出を併せて評価する。

溶解性の目安
SP値差 Δδ(MPa1/2溶解・膨潤の目安判定
0~2膨潤・軟化しやすい×
2~5条件により膨潤する
5~8短時間接触では比較的安定
8以上溶解・膨潤しにくい
SP値から見た耐溶剤性
薬品SP値 MPa1/2TPAEとの差の目安評価注意点
n-ヘキサン14.96~9○~◎脂肪族炭化水素。一般に比較的安定。
トルエン18.23~6軟質相の組成により膨潤する。
酢酸エチル18.62~6エステル系溶剤。軟化に注意。
MEK19.02~6ケトン系。短時間接触でも確認が必要。
アセトン20.01~5△~×グレードにより膨潤又は抽出。
IPA23.52~7○~△水素結合性のため単純なSP差のみで評価不可。
エタノール26.04~10○~△吸収や可塑化を確認する。
47.920以上○~△SP差は大きいが吸水・加水分解が支配する。

上表の評価はSP値を補助指標として用いた定性的な目安である。特に水、アルコール、酸、アルカリ、酸化剤では、水素結合、イオン性、化学反応及び吸水が支配的となるため、SP値差と実測耐薬品性が一致しない場合がある。

環境応力割れ・寸法設計上の注意

TPAEは非晶性樹脂ほど典型的なESCを示さない場合もあるが、溶剤吸収、残留応力、圧入、曲げ、ノッチ及び高温が重なると亀裂、白化又は永久変形を生じ得る。短時間の引張強さを設計許容応力に直接用いず、クリープ、疲労、吸湿、温度及び薬品環境を含む実部品評価を行う。

品質・成形不良及び劣化・故障モード
現象主な原因発生しやすい条件影響予防策推奨確認試験
シルバーストリーク・気泡吸湿、揮発分乾燥不足、高温滞留外観不良、強度低下除湿乾燥、滞留短縮、温度適正化含水率、MFR、外観確認
加水分解・粘度低下水分と高温未乾燥ペレットの成形分子量低下、伸び低下乾燥、密閉搬送、再生材管理MFR、引張、GPC
反り・収縮ばらつき結晶化、肉厚差、配向高金型温度、偏肉、過保圧寸法不良ゲート・冷却均一化、保圧最適化寸法測定、成形収縮率
ウェルド強度低下低温合流、汚染、吸湿多点ゲート、長流動割れ、リーク樹脂温度・金型温度・ベント改善溶着部引張、耐圧
ブリード・表面べたつき添加剤移行、溶剤吸収高温、高湿、薬品接触汚染、接着不良低移行グレード、実液評価表面分析、抽出試験
熱酸化劣化酸素、高温、せん断長期高温、滞留、再加工黄変、脆化、臭気熱安定化グレード、温度低減熱老化、色差、引張保持率
紫外線劣化UV、酸素屋外、淡色、無安定材黄変、亀裂、強度低下耐候グレード、顔料、遮光キセノンアーク、色差
薬品膨潤・応力割れ溶剤吸収と残留応力高温、曲げ、圧入、洗浄剤軟化、亀裂、寸法変化アニール、応力低減、薬品変更応力負荷浸漬、質量・寸法変化
クリープ・圧縮永久ひずみ粘弾性変形高温、長時間荷重シール低下、変形断面設計、荷重低減、硬質グレード圧縮永久ひずみ、クリープ
滅菌劣化熱、水蒸気、放射線、薬品オートクレーブ、γ線、EtO反復変色、脆化、抽出物増加医療グレード、滅菌法適合確認反復滅菌、ISO 10993、抽出物
法規制・認証
法規制・認証材料群としての位置付け確認事項
RoHS・REACH・SVHC一般に対応可能なグレードが存在する色、添加剤、製造拠点を含む最新証明書を確認する。
ELV・ハロゲンフリー対応グレードが存在する難燃剤や着色剤を含む個別確認が必要である。
EU・米国・日本の食品接触適合グレードが存在する場合がある接触食品、温度、時間、移行試験、ポジティブリスト適合を確認する。
FDA食品接触適合グレードが存在する場合があるFDA登録又は適合宣言をグレード単位で確認する。
USP Class VI・ISO 10993医療用途向けグレードで対応例がある材料名だけで生体適合性を断定しない。滅菌後も評価する。
UL認証・UL 94認証グレードが存在する厚さ、色、難燃処方、RTI、ファイル番号を確認する。
PFAS関連規制通常のPEBA主鎖はフッ素を必須としない加工助剤、添加剤、着色剤に意図的又は非意図的含有がないか供給者へ確認する。
環境・リサイクル性及び供給性
項目評価・概要注意点
熱可塑性・マテリアルリサイクル再溶融可能であり、工程内端材の再利用を検討できる。熱履歴、加水分解、色、異物、医療用途等の品質要求を確認する。
ケミカルリサイクル解重合又は原料回収の研究・限定的適用が考えられる。一般流通の確立度は地域・回収量に依存する。
バイオベースPA11系等を用いた部分バイオベースグレードが存在する。バイオベース率と生分解性は別概念であり、通常は生分解性を意味しない。
焼却窒素を含み、燃焼条件によりNOx、CO、煙等が発生し得る。適切な排ガス処理設備で処理する。
価格区分比較的高価格~高価格硬度、医療認証、発泡、バイオベース、購入量で変動する。
供給形態ペレット、粉末、チューブ、フィルム、シート、発泡体等少量購入や特注色はメーカー・商社・地域により制限される。

製法

TPAE PEBA系の代表的な製造工程

工程・項目内容
原料末端カルボキシル基を持つPAオリゴマーと、末端ヒドロキシ基を持つポリエーテルを主原料とする。
重合方法触媒存在下の溶融エステル化・重縮合により、PA硬質ブロックとポリエーテル軟質ブロックを連結する。
代表反応PA−COOH + HO−PE−OH → PA−COO−PE−OH + H₂O。実際には二官能性成分が連続反応して高分子量ブロック共重合体となる。
ペレット化重合物をストランド又は水中カットし、乾燥、選別、品質確認後に包装する。
コンパウンド熱安定剤、光安定剤、顔料、難燃剤、帯電防止剤、補強材等を用途に応じて配合する。
注意点末端基当量、含水率、真空度、反応温度、滞留時間が分子量、色調、ゲル、粘度及び機械特性に影響する。

詳細な利用用途

用途適性採用理由注意点
スポーツシューズ・ミッドソール低密度、高反発、低温特性発泡倍率、疲労、接着、摩耗を確認
スキーブーツ・スポーツ部品低温でも靭性と弾性を保持紫外線、低温衝撃、塗装・接着を確認
医療用カテーテル・チューブ硬度選択、耐キンク性、押出性ISO 10993、滅菌、抽出物は個別グレードで確認
自動車空圧・燃料配管耐油、耐屈曲、低温性燃料組成、透過、継手保持、長期熱老化を確認
電線・ケーブル被覆柔軟、耐摩耗、耐屈曲難燃、電気特性、耐熱、規格適合を確認
ギア・軸受・ブッシュ静音、弾性、耐摩耗剛性、クリープ、PV値、寸法精度に注意
シール・ガスケット・Oリング耐油、熱可塑加工性圧縮永久ひずみと高温シール性を確認
フィルム・膜柔軟、透湿・ガス選択性設計が可能厚み、ブロッキング、溶剤耐性を確認
3Dプリント柔軟造形、粉末造形適性吸湿、粉末再利用率、寸法収縮を確認
屋外部品耐候安定化グレードを選択可能無安定材では黄変・強度低下に注意

用途適性は材料群としての一般的な評価である。最終選定では、硬度、融点、荷重、温度、薬品、湿度、寿命、法規制、滅菌、接着・溶着、成形性及び実部品形状を確認する。

関連材料との比較

比較材料特徴TPAEとの違い
熱可塑性ポリウレタン(TPU)耐摩耗性、機械強度、弾性に優れるTPAEは一般に低密度、低温特性、反発弾性で有利であり、TPUは耐摩耗性と接着性で有利な場合がある。
熱可塑性ポリエステルエラストマー(TPEE)耐熱、耐油、屈曲疲労性に優れるTPAEは低温柔軟性と軽量性で有利、TPEEは高温剛性とコストで有利な場合がある。
熱可塑性オレフィン(TPO)低密度、耐水、耐候、低コストTPAEは耐摩耗、耐油、反発、極性基材との接着で有利である。
ポリアミド(PA)強度、剛性、耐摩耗性に優れるTPAEはPA硬質相を持ちながら、軟質相により大きな伸びとゴム弾性を示す。
ナイロン6(PA6)高強度、成形性、コストバランスTPAEは柔軟性と低温衝撃性に優れるが、PA6より剛性と耐熱は低い。
ナイロン66(PA66)高融点、高剛性、高温強度TPAEは弾性・柔軟性に優れ、PA66は構造部品用途に適する。
ポリアセタール(POM)寸法安定性、摺動性、疲労性に優れるTPAEは柔軟、低騒音、衝撃吸収に有利だが、POMは剛性と精密成形で有利である。
エチレン・酢酸ビニル共重合体(EVA)柔軟、発泡性、低コストTPAEは反発、低温性能、耐摩耗、耐油で有利だが価格は高い。

代表的なメーカー

メーカー代表製品・ブランド概要
ArkemaPebax®PAとポリエーテルからなるPEBA系エラストマーを展開し、スポーツ、医療、工業、帯電防止等に使用される。
Evonik IndustriesVESTAMID® E、VESTAMID® CarePEBA系を展開し、自動車、スポーツ、医療用チューブ・カテーテル等に使用される。
UBE株式会社UBESTA® XPAポリアミドエラストマー系グレードを展開し、押出、射出、フィルム等に適用される。

製品名、供給地域、グレード構成及び認証状況は変更される場合がある。採用時にはメーカーの最新技術資料、SDS、適合証明書及び供給条件を確認する。

推奨確認試験
  • 実薬品浸漬試験:実液濃度、23℃及び最高使用温度、24時間・168時間・1000時間を目安に、質量、寸法、硬度、引張強さ及び外観を確認する。
  • 応力負荷下の薬品試験:実部品又は曲げ試験片に設計応力を負荷し、洗浄剤、油、燃料又は溶剤への接触後の亀裂、白化及び永久変形を確認する。
  • 高温高湿・熱水試験:85℃・85%RH、温水又は熱水条件で、吸水、加水分解、電気特性及び寸法変化を確認する。
  • 熱老化・ヒートサイクル試験:最低使用温度から最高使用温度までの繰返し後に、硬度、反発、引張、溶着及びシール性能を確認する。
  • クリープ・圧縮永久ひずみ試験:実使用温度、荷重及び時間で、長期変形とシール保持性を確認する。
  • 屈曲疲労・摩耗試験:実際の曲率、速度、荷重、相手材、潤滑条件及び繰返し回数を設定する。
  • 医療・食品用途:滅菌前後の生体適合性、溶出、抽出物、臭気、着色剤及び法規制適合を確認する。
  • 実成形・実部品耐久試験:乾燥条件、再生材比率、成形温度、ウェルド、肉厚、ゲート及び残留応力を含めて量産条件で確認する。

関連キーワード

熱可塑性ポリアミドエラストマーTPAEPEBAポリアミドPA6PA66熱可塑性エラストマーTPUTPEETPOプラスチック材料エンジニアリングプラスチックポリエーテルブロックアミドPTMG医療用チューブカテーテル材料スポーツシューズ材料低温特性屈曲疲労加水分解耐薬品性UL 94ISO 10993

タイトルとURLをコピーしました