| 材料名 | 熱可塑性エラストマー |
|---|---|
| 略記号 | TPE |
| 英語名 | Thermoplastic Elastomer |
| 分類 | 熱可塑性樹脂、エラストマー、ゴム弾性材料 |
| 基本構造 | ハードセグメントとソフトセグメントからなる相分離構造 |
| 主な種類 | TPS、TPO、TPU、TPC、TPA、TPV、フッ素系TPE |
| 主な用途 | グリップ、パッキン、シール、チューブ、医療部材、自動車内装、電線被覆、靴材 |
熱可塑性エラストマー(TPE)は、熱可塑性樹脂、エラストマー、ゴム弾性材料に分類される材料である。 質相(ハードセグメント)となるプラスチックと軟質相(ソフトセグメント)からなる相分離構造を基本構造または代表構造としたプラスチックとゴムとの中間の性質を持つ樹脂であり、グリップ、パッキン、シール、チューブ、医療部材、自動車内装、電線被覆、靴材などに使用される。
特徴
- 加硫ゴムのような弾性を持ちながら、熱可塑性樹脂のように成形できる材料群である
- 射出成形、押出成形、ブロー成形に対応できる
- 柔軟性、反発性、シール性に優れる
- リサイクル性と加工性が良い
- 耐熱性、耐油性、耐薬品性は種類により大きく異なる
- 熱可塑性プラスチック同様に加熱して成形することができる。
- 成形加工がゴムと比較して簡単なため、不良品の再生も可能である。
- 分子にゴム相と樹脂相があり、樹脂相は冷却により固化して分子同士を結合さ(ドメイン)せ、ゴムと同様の性質を示す。
- 上記を加熱すると、ドメインが外れて流動化する。
- ゴム相と樹脂相の割合を変えることで、プラスチックに近いものからゴムに近いものまで作成が可能となる。
- 二重結合のないものは耐候性がすぐれている。
- 次のような分類がある。
(1) ポリスチレン系(スチレンブタジエンブロック共重合体)
(2) ポリウレタン系
(3) オレフィン系(EPDM)
(4) ポリエステル系
(5) ポリアミド系
(6) その他(エチレン・酢酸ビニル共重合体、1,2-ポリブタジエン、アイオノマー、エチレン・アクリル酸エチル共重合体、ポリ塩化ビニル系など)
長所
- 柔軟性が高い
- 射出成形できる
- リサイクルしやすい
- 加硫工程が不要である
- ソフトタッチ用途に適する
短所
- 耐熱性は加硫ゴムより低い場合がある
- 圧縮永久ひずみは種類により大きい
- 耐油性や耐薬品性はグレード依存である
- 高温荷重下で変形しやすい
成形加工
熱可塑性エラストマーの加工性は、樹脂の種類、分子量、充填材、硬化系、添加剤、成形温度により大きく変化する。 成形時には乾燥、熱分解、残留応力、結晶化、硬化条件、離型性を確認する必要がある。
| 加工方法 | 適性 | 主な製品例 |
|---|---|---|
| 射出成形 | ○ | 成形材料グレードで対応する。複雑形状部品、機構部品、電気電子部品に使用する |
| 押出成形 | ○ | シート、フィルム、チューブ、棒材、板材に使用する |
| 圧縮成形 | △〜○ | 熱硬化性樹脂や高耐熱材、切削素材で使用する |
| 注型・含浸 | △〜○ | 熱硬化性樹脂、塗料、ワニス、複合材料で使用する |
| 切削加工 | ○ | 板材、丸棒、精密部品、治具に使用する |
| 接着・塗装 | △ | 材料の表面性により表面処理や専用接着剤が必要である |
構造式
熱可塑性エラストマーの構造は、材料分類、重合方法、共重合成分、充填材の有無により変化する。 構造中の極性基、芳香環、フッ素原子、シロキサン結合、イミド結合、エステル結合などが、耐熱性、耐薬品性、機械特性、吸水性、電気特性に影響する。
種類
TPS
| 名称 | TPS |
|---|---|
| 構成 | 熱可塑性エラストマーの用途別または改質グレードである |
| 特徴 | 熱可塑性エラストマーの基本特性を用途に合わせて調整したグレードである |
| 主な用途 | グリップ、パッキン、シール、チューブ、医療部材、自動車内装、電線被覆、靴材 |
特徴
- 用途に応じて物性を調整したグレードである
- 標準品と比較して耐熱性、耐薬品性、機械特性、成形性のいずれかを改善する
- 実使用条件ではメーカーグレードごとのデータ確認が必要である
TPO
| 名称 | TPO |
|---|---|
| 構成 | 熱可塑性エラストマーの用途別または改質グレードである |
| 特徴 | 熱可塑性エラストマーの基本特性を用途に合わせて調整したグレードである |
| 主な用途 | グリップ、パッキン、シール、チューブ、医療部材、自動車内装、電線被覆、靴材 |
特徴
- 用途に応じて物性を調整したグレードである
- 標準品と比較して耐熱性、耐薬品性、機械特性、成形性のいずれかを改善する
- 実使用条件ではメーカーグレードごとのデータ確認が必要である
TPU
| 名称 | TPU |
|---|---|
| 構成 | 熱可塑性エラストマーの用途別または改質グレードである |
| 特徴 | 熱可塑性エラストマーの基本特性を用途に合わせて調整したグレードである |
| 主な用途 | グリップ、パッキン、シール、チューブ、医療部材、自動車内装、電線被覆、靴材 |
特徴
- 用途に応じて物性を調整したグレードである
- 標準品と比較して耐熱性、耐薬品性、機械特性、成形性のいずれかを改善する
- 実使用条件ではメーカーグレードごとのデータ確認が必要である
TPC
| 名称 | TPC |
|---|---|
| 構成 | 熱可塑性エラストマーの用途別または改質グレードである |
| 特徴 | 熱可塑性エラストマーの基本特性を用途に合わせて調整したグレードである |
| 主な用途 | グリップ、パッキン、シール、チューブ、医療部材、自動車内装、電線被覆、靴材 |
特徴
- 用途に応じて物性を調整したグレードである
- 標準品と比較して耐熱性、耐薬品性、機械特性、成形性のいずれかを改善する
- 実使用条件ではメーカーグレードごとのデータ確認が必要である
代表的な物性値又は機械的性質
| 性質 | 単位 | TPS スチレン系 | TPU ウレタン系 | TPO・TPV オレフィン系 | TPEE ポリエステル系 | TPAE ポリアミド系 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 比重 | – | 0.90 ~ 1.10 | 1.10 ~ 1.25 | 0.88 ~ 1.00 | 1.10 ~ 1.30 | 1.00 ~ 1.05 |
| 硬さ | ショアA・D | A20 ~ D50 | A60 ~ D75 | A40 ~ D50 | D30 ~ D75 | D35 ~ D70 |
| 引張強さ | MPa | 3 ~ 25 | 20 ~ 60 | 5 ~ 25 | 20 ~ 50 | 25 ~ 55 |
| 引張伸び | % | 300 ~ 900 | 300 ~ 800 | 200 ~ 700 | 200 ~ 600 | 250 ~ 600 |
| 引裂強さ | kN/m | 10 ~ 60 | 50 ~ 150 | 15 ~ 80 | 40 ~ 120 | 50 ~ 140 |
| 曲げ弾性率 | MPa | 10 ~ 500 | 20 ~ 1,000 | 20 ~ 800 | 100 ~ 2,000 | 100 ~ 1,500 |
| 反発弾性 | % | 30 ~ 70 | 30 ~ 60 | 40 ~ 70 | 40 ~ 70 | 40 ~ 70 |
| 圧縮永久ひずみ | % | 20 ~ 60 | 20 ~ 50 | 15 ~ 50 | 20 ~ 50 | 20 ~ 50 |
| 耐熱温度 | ℃ | 60 ~ 100 | 80 ~ 120 | 80 ~ 135 | 120 ~ 160 | 130 ~ 170 |
| 低温柔軟性 | ℃ | -40 ~ -60 | -30 ~ -50 | -40 ~ -60 | -40 ~ -70 | -40 ~ -60 |
| 成形収縮率 | % | 0.5 ~ 2.0 | 0.5 ~ 1.5 | 1.0 ~ 2.5 | 0.5 ~ 1.5 | 0.5 ~ 1.5 |
| 主な特徴 | – | 柔軟性、成形性、着色性に優れる。 | 耐摩耗性、機械強度、弾性回復性に優れる。 | 軽量で耐候性、耐水性、耐薬品性に優れる。 | 耐熱性、耐油性、耐疲労性に優れる。 | 耐熱性、耐油性、低温特性に優れる。 |
※熱可塑性エラストマーは種類、硬度、可塑剤、フィラー、架橋状態により物性差が大きい材料である。上表は材料選定用の代表範囲であり、量産設計では各メーカーのグレード別データで確認する必要がある。
耐薬品性
熱可塑性エラストマーの耐薬品性は、樹脂構造、温度、濃度、接触時間、応力状態、グレード、充填材により変化する。 下表は一般的な目安であり、薬液タンク、配管、洗浄治具、食品・医療用途では実使用条件で確認する必要がある。
| 薬品・溶剤 | 耐性 | 備考 |
|---|---|---|
| 水 | ○ | 材料種により吸水、加水分解、白化に注意が必要である |
| 弱酸 | ○ | 多くの場合で短期使用は可能である |
| 強酸 | △〜× | 樹脂構造により劣化、分解、膨潤が起こる |
| 弱アルカリ | ○〜△ | 材料により安定性が異なる |
| 強アルカリ | △〜× | エステル、イミド、アミド、カーボネート系では注意が必要である |
| アルコール | ○〜△ | 応力下ではクラックや膨潤に注意する |
| アセトン | △〜× | 非晶性樹脂や極性樹脂では膨潤・溶解しやすい |
| MEK | △〜× | 溶剤種、温度、応力条件で影響が大きい |
| トルエン | △ | 芳香族溶剤に弱い材料では膨潤・クラックが起こる |
| 塩素系溶剤 | △〜× | 多くの樹脂で膨潤・溶解・クラックに注意が必要である |
| 油・燃料 | ○〜△ | ポリオレフィン系、ポリアミド系などでは比較的良い場合がある |
更に詳しくはプラスチックの耐薬品性一覧表を参照。
SP値(溶解度パラメータ)
熱可塑性エラストマーのSP値は、種類により大きく異なる。TPSは約16〜18、TPUは約20〜24 MPa1/2が目安である。 SP値が近い溶剤では膨潤や溶解が起こりやすいが、結晶性、架橋構造、水素結合、分子量、充填材、温度の影響も大きいため、SP値は一次判断として扱う必要がある。
| 項目 | SP値(δ) MPa1/2 | 備考 |
|---|---|---|
| TPS(スチレン系熱可塑性エラストマー) | 17.0 ~ 18.5 | 非極性寄りであり、炭化水素系溶剤に影響を受けやすい。芳香族溶剤では膨潤しやすい。 |
| SEBS系TPE(油展開タイプ) | 16.5 ~ 17.5 | パラフィン油や脂肪族炭化水素への耐性は比較的良好であるが、トルエンやキシレンで膨潤しやすい。 |
| TPU(ポリウレタン系TPE) | 19.5 ~ 22.5 | 極性が高く、アルコールや油への耐性は良好であるが、ケトン系・DMF系溶剤に弱い。 |
| TPU(ポリエステル系) | 20.5 ~ 22.5 | 耐油性と耐摩耗性に優れるが、加水分解や極性溶剤に注意が必要である。 |
| TPU(ポリエーテル系) | 19.5 ~ 21.0 | 耐水性と低温特性に優れる。エステル系溶剤には注意が必要である。 |
| TPO(オレフィン系TPE) | 15.5 ~ 16.5 | 低極性であり、酸・アルカリには比較的安定であるが、炭化水素系溶剤に弱い。 |
| TPV(動的架橋オレフィン系) | 16.0 ~ 17.0 | 耐熱性と耐候性に優れる。架橋により通常TPOより耐溶剤性が向上している。 |
| TPEE(ポリエステル系TPE) | 20.0 ~ 22.0 | 耐油性・耐熱性・耐疲労性に優れる。極性溶剤では影響を受ける場合がある。 |
| TPAE(ポリアミド系TPE) | 22.0 ~ 24.0 | 高極性材料であり、耐油性・耐薬品性に優れるが、強酸やフェノール系溶剤には注意が必要である。 |
| GF強化TPEE(GF30) | 20.0 ~ 22.0 | GF添加により寸法安定性と耐薬品性が向上する。母材SP値自体は大きく変化しない。 |
| CF強化TPU(CF15) | 20.0 ~ 22.0 | 炭素繊維添加により耐摩耗性と機械強度が向上する。界面からの溶剤侵入には注意が必要である。 |
溶解性の目安
| Δδ | 挙動 |
|---|---|
| 0〜2 | 溶解しやすい |
| 2〜5 | 膨潤・軟化 |
| 5以上 | 溶解しにくい |
SP値から見た耐溶剤性
| 溶剤 | SP値(δ) MPa1/2 | TPS | TPU | TPO/TPV | TPEE | TPAE |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 水 | 47.9 | ◎ | ○ | ◎ | ○ | ○ |
| メタノール | 29.7 | ○ | △ | ◎ | △ | ○ |
| エタノール | 26.0 | ○ | △ | ◎ | △ | ○ |
| IPA | 23.5 | △ | △ | ○ | △ | ○ |
| アセトン | 20.0 | × | × | △ | × | △ |
| MEK | 19.0 | × | × | △ | × | △ |
| 酢酸エチル | 18.6 | × | △ | △ | △ | ○ |
| トルエン | 18.2 | × | △ | × | △ | ○ |
| キシレン | 18.0 | × | △ | × | △ | ○ |
| n-ヘキサン | 14.9 | △ | ◎ | × | ○ | ◎ |
| 鉱物油 | 15.0 ~ 17.0 | △ | ◎ | ○ | ◎ | ◎ |
※本耐溶剤評価は、各TPE系材料のSP値中央値と各溶剤のSP値差を基準とした概略評価である。実際には結晶性、架橋状態、添加剤、充填材、温度、応力状態により耐性は変化する。
◎:非常に良好 ○:概ね良好 △:注意が必要 ×:不適
特にTPS系およびTPO系は、トルエン・キシレン・ヘキサンなどの炭化水素系溶剤で大きく膨潤しやすいため注意が必要である。TPUおよびTPEEはアセトン、MEK、DMFなどの極性溶剤で軟化・膨潤しやすい。TPAEは比較的広範囲の耐薬品性を有するが、強酸、フェノール類、長時間の高温アルコール環境には注意が必要である。※TPEは種類により化学構造が大きく異なるため、実際の耐溶剤性はグレード依存性が極めて大きい材料群である。
実務上の注意
- SP値は溶解性の目安であり、耐久性そのものではない
- 結晶性樹脂や熱硬化性樹脂では、SP値が近くても溶解しにくい場合がある
- 非晶性樹脂では、応力クラックが耐薬品性の主要問題になりやすい
- 実使用では温度、濃度、接触時間、応力、成形残留応力を確認する必要がある
製法
熱可塑性エラストマーは、対応するモノマーの重合、重縮合、付加反応、共重合、架橋反応、コンパウンドなどにより製造される。 実用材料では、添加剤、充填材、安定剤、難燃剤、可塑剤、強化繊維などを配合して性能を調整する。
| 製法 | 特徴 | 主な製品形態 |
|---|---|---|
| 重合・重縮合 | 基本ポリマーを合成する | ベース樹脂 |
| 共重合・変性 | 耐熱性、柔軟性、耐薬品性、成形性を調整する | 改質グレード |
| コンパウンド | ガラス繊維、難燃剤、安定剤、潤滑剤などを配合する | 成形材料 |
| 成形・硬化 | 熱可塑性樹脂は溶融成形、熱硬化性樹脂は加熱硬化する | 最終成形品 |
詳細な利用用途
電気・電子用途
- コネクタ
- スイッチ部品
- 絶縁部品
- 筐体
- 高周波部品
自動車・輸送用途
- 内外装部品
- 機構部品
- 耐熱部品
- 摺動部品
- 燃料・配管関連部品
工業用途
- ギア
- 治具
- ライニング
- シール材
- 機械カバー
包装・生活用品用途
- フィルム
- 容器
- シート
- 日用品
- 保護部材
関連材料との比較
代表的なメーカー
| メーカー | 代表的な製品・商品名 | 備考 |
|---|---|---|
| 代表メーカー | クラレ、三菱ケミカル、旭化成、BASF、Covestro、Kraiburg TPE、Teknor Apex | 材料・グレードにより供給状況が異なる |
| 国内外コンパウンダー | 各種改質グレード | GF強化、難燃、摺動、耐候グレード |
| 成形材料メーカー | 用途別グレード | メーカー物性表で確認が必要である |