熱可塑性オレフィン

概要

項目内容
材料名熱可塑性オレフィン
略記号TPO、TPE-O
IUPAC単一物質ではないため一意に定義できない。主成分例はpoly(propene)、ethylene-propylene copolymer、ethylene-propylene-diene terpolymerである。
英語名Thermoplastic Olefin、Thermoplastic Polyolefin、Olefinic Thermoplastic Elastomer
日本語名熱可塑性オレフィン、オレフィン系熱可塑性エラストマー、オレフィン系TPE
分類熱可塑性エラストマー、ポリオレフィン系複合材料
プラスチック分類汎用プラスチック系高機能材料。一般にエンジニアリング・プラスチックには分類しない。
化学式又は代表構造PP系連続相[-CH2-CH(CH3)-]nと、EPR、EPDM、POE等のゴム相からなる多相構造
CAS No.混合物であるためTPO全体を表す単一CAS No.はない。母材PPは9003-07-0、EPMは9010-79-1、EPDMは25038-36-2等が用いられる場合がある。
構造・主成分PP、PE等の熱可塑性ポリオレフィンを連続相とし、EPR、EPDM、POE等のゴム成分を分散させた材料である。タルク等の無機充填材、耐候剤、酸化防止剤、顔料を配合する場合が多い。
主な用途自動車バンパー、インストルメントパネル、内外装表皮、エアバッグカバー、マッドガード、建築防水シート、ガスケット、電線被覆、グリップ、生活用品

熱可塑性オレフィンは、ポリプロピレン又はポリエチレン等のポリオレフィン樹脂に、エチレン・プロピレン系ゴム又はオレフィン系エラストマー成分を組み合わせた熱可塑性エラストマーである。ゴム的な柔軟性、耐衝撃性と、熱可塑性樹脂としての射出成形性、押出成形性、再溶融性を併せ持つ。

TPOは軽量、低吸水、耐水、耐酸・耐アルカリ、耐候性に優れ、自動車内外装や建築防水材で広く用いられる。一方、芳香族炭化水素、塩素系溶剤、燃料油等では膨潤又は物性低下が生じる場合があり、未処理表面は接着、塗装、印刷が難しい。

TPOは単一組成ではなく、非架橋ブレンド型、反応器内重合型、動的架橋型、タルク充填型等で物性幅が大きい。実使用では、グレード、硬度、充填材量、温度、薬品濃度、荷重、応力、湿度、接触時間及び成形条件を確認する必要がある。

特徴

長所
  • 密度が一般に約0.88~1.10 g/cm³であり、PVC、TPU及び多くのエンプラより軽量である。
  • 低吸水で、湿度による寸法変化及び電気特性変化が小さい。
  • 耐水性、耐塩水性、耐酸性、耐アルカリ性及び耐候性に優れるグレードが多い。
  • 射出、押出、ブロー、熱成形等へ適用でき、成形端材を再利用しやすい。
  • PPとの相溶性が高く、PP系部品との一体化及び単一材料化を行いやすい。
短所
  • 耐油性、耐燃料性及び芳香族・塩素系溶剤耐性は限定的である。
  • 表面エネルギーが低く、未処理では接着、塗装、印刷及びめっきが難しい。
  • 高温下の剛性、クリープ、圧縮永久ひずみは架橋ゴム又は高耐熱TPEに劣る場合がある。
  • 軟質グレードでは傷付き、摩耗、べたつき及びブロッキングに注意が必要である。
外観・耐熱性・加工性

自然色は乳白色から半透明又は不透明であり、充填材及び顔料により外観が変化する。PP結晶相の融点は一般に約150~165℃であるが、連続使用温度はこれより低く、標準TPOでは概ね80~100℃、耐熱又はTPV系では100~130℃程度が目安となる。成形性は良好であるが、グレードごとの流動性、収縮率、表面転写性を確認する必要がある。

分類上の注意

市場ではTPOを広義のオレフィン系TPE全般として用いる場合と、非架橋又は重合型TPOに限定し、動的架橋型をTPVとして分ける場合がある。本ページでは広義のTPOを扱い、TPVは別区分として明記する。

構造式

熱可塑性オレフィンTPOの代表構造と多相モルフォロジー

TPOは単一の繰返し単位からなるポリマーではなく、PP又はPE系の連続相と、EPR、EPDM、POE等のゴム相からなる。非架橋TPOではゴム相が未架橋又は低架橋であり、TPVでは混練中にゴム相を動的架橋して微細分散させる。

種類・代表グレード

種類・グレード主成分又は特徴長所短所主な用途
非架橋ブレンド型TPOPPとEPR、EPDM又はPOEを溶融混練加工性、低密度、コストバランス高温弾性回復及び圧縮永久ひずみは限定的自動車内外装、一般成形品
重合型TPO多段重合等でPP相とエラストマー相を反応器内形成分散均一性、衝撃性、外観組成設計の自由度は製法に依存バンパー、外装、シート
動的架橋型TPO(TPV)PP連続相中に架橋EPDM相を微分散弾性回復、耐熱、圧縮永久ひずみ価格及び加工管理が非架橋型より高い場合があるシール、ホース、ガスケット
タルク充填TPOタルク10~30質量%程度を配合する例が多い剛性、HDT、寸法安定性、低線膨張密度上昇、低温衝撃及び表面外観低下に注意自動車内外装、構造パネル
耐候・外装グレードUV吸収剤、HALS、耐候顔料を配合屋外耐久性、色調保持色、厚さ、曝露方位で寿命が変動バンパー、ルーフィング、建材
難燃グレードリン系、無機系等の難燃処方UL 94等級を取得した個別グレードがある密度、機械特性、成形性への影響電気部品、電線被覆
食品接触・医療用途向け抽出物、臭気、添加剤及び規制適合を管理低吸水、柔軟性、軽量性材料名だけでは適合を判断できない容器部品、チューブ、キャップ

成形加工

加工方法適性理由主な注意点
射出成形流動性と離型性が良く、複雑形状へ適用しやすい。収縮、反り、ウェルド、フローマーク、タルク配向を確認する。
押出成形シート、異形材、電線被覆、膜材に適する。メルトフラクチャー、ダイスウェル、厚み偏差を管理する。
ブロー成形高溶融張力グレードで中空品を成形できる。グレード選定とパリソン制御が必要である。
真空・圧空成形シートグレードは大型内装表皮等へ適用できる。加熱むら、薄肉化、表面転写及び戻りを確認する。
圧縮成形シート及び大型部材へ適用可能である。量産性と加熱冷却時間を考慮する。
切削加工加工可能だが、軟質材では変形しやすい。切削熱、ばり、固定変形を抑える。
3Dプリント専用フィラメント又はペレットで対応例がある。反り、層間接着、供給安定性を確認する。
熱板・振動・超音波溶着PP系材料同士では溶着しやすい。硬度、充填材、形状、溶着条件により強度が変化する。
接着・塗装・印刷未処理表面は低表面エネルギーである。コロナ、プラズマ、フレーム処理又は専用プライマーを使用する。
成形条件の一般的な目安
項目単位代表範囲備考
予備乾燥通常不要低吸水材料である。ただし吸湿性添加剤、再生材、結露がある場合は確認する。
乾燥温度60~80必要時の目安。2~3 h程度。
シリンダー温度170~230硬度、MFR、充填材及び架橋状態により調整する。
ノズル温度180~220糸引き、鼻垂れ、未溶融を確認する。
金型温度20~60外観、収縮、成形サイクルを優先して設定する。
射出圧力MPa50~120製品形状及び流動長により大きく変動する。
成形収縮率・流動方向%0.8~2.0タルク充填では低下する傾向がある。
成形収縮率・流動直角方向%1.0~2.2形状、保圧、充填材配向に依存する。

代表的な物性値又は機械的性質

以下は非強化・標準TPOの材料群としての代表範囲であり、特定グレードの保証値ではない。硬度、ゴム相量、タルク量、架橋状態、試験規格及び温度で大きく変動する。

項目単位代表値代表範囲条件・備考
密度g/cm³0.950.88~1.10非充填軟質材からタルク充填材まで。ISO 1183相当。
比重無次元0.950.88~1.1023℃の代表範囲。
吸水率・24時間%0.020.01~0.0523℃水中、代表値。添加剤及び充填材に依存。
引張強さ・破断MPa158~25ISO 527相当、23℃。硬度及び配合で変動。
引張弾性率GPa0.80.05~1.8軟質TPOから高剛性TPOまで幅が大きい。
引張破断伸び%400100~700ISO 527相当。タルク量増加で低下しやすい。
曲げ弾性率GPa0.90.1~2.5自動車外装用高剛性TPOでは高い値を取る。
アイゾット衝撃強さ・ノッチ付きkJ/m²データなし20~破壊せずISO方式。NBは数値化せず、低温条件を別途確認する。
硬度Shore A/Dグレード依存Shore A 60~Shore D 70軟質TPOから高剛性外装グレードまで。
ガラス転移温度・ゴム相-50-60~-35EPR、EPDM、POE組成に依存。
融点・PP結晶相160150~165DSC、PP相の融解ピーク。
荷重たわみ温度・0.45 MPa8560~120ISO 75相当。タルク充填、剛性で変動。
荷重たわみ温度・1.80 MPa5545~90高剛性充填グレードで高くなる。
連続使用温度9080~120標準TPOの目安。TPV又は耐熱グレードは個別確認。
低温使用限界-40-50~-30衝撃、曲げ、シール性の要求で異なる。
線膨張係数・流動方向10-5/K85~14タルク充填で低下する。
熱伝導率W/(m・K)0.200.15~0.3023℃、代表範囲。
体積抵抗率Ω・cm1×10161×1014~1×1017乾燥状態。導電グレードを除く。
絶縁破壊強さkV/mm2520~35厚さ及び試験方法に依存。
比誘電率・1 MHz無次元2.42.2~2.7乾燥状態、充填材で変動。
UL 94燃焼性等級HB相当が一般的グレード依存V-0等の難燃グレードもある。厚さ、色、認証番号を確認する。
限界酸素指数・LOI%1817~19標準非難燃材の目安。
充填・強化グレードの代表傾向
グレード密度 g/cm³引張強さ MPa曲げ弾性率 GPa備考
非充填標準TPO0.88~0.958~200.05~1.2柔軟性、低密度、耐衝撃性を重視。
タルク10~20質量%充填TPO0.98~1.0815~251.0~2.2剛性、HDT、寸法安定性を改善。
高充填・高剛性TPO1.05~1.2018~301.8~3.0低温衝撃、表面外観及びウェルド強度を確認。

耐薬品性

評価は一般的な非架橋TPOを23℃付近で短時間から中期接触させた場合の目安である。実部品では濃度、温度、時間、応力、成形残留応力、添加剤抽出及びゴム相組成を確認する。

薬品名濃度温度接触条件評価主な劣化形態備考
23℃浸漬影響は一般に小さい。低吸水である。
温水60~80℃長時間軟化、添加剤抽出温度と時間を確認する。
塩水・海水3~5%23℃浸漬影響は小さい。金属との組合せでは腐食に注意。
塩酸10%23℃浸漬影響は一般に小さい。高温・高濃度は個別確認。
硫酸10%23℃浸漬長期で表面変化の可能性濃硫酸、加熱条件は不適となり得る。
硝酸10%23℃浸漬酸化、変色、脆化酸化性のため濃度・温度依存が大きい。
水酸化ナトリウム10%23℃浸漬影響は一般に小さい。高温条件を確認する。
エタノール99%23℃浸漬軽微な膨潤又は抽出添加剤及び応力条件に依存。
イソプロピルアルコール99%23℃浸漬軽微な膨潤高温・長期は確認。
グリセリン99%23℃浸漬影響は小さい。多価アルコール。
MMB99%23℃浸漬膨潤、軟化グリコールエーテル系。実測確認を推奨。
アセトン99%23℃短時間添加剤抽出、軽微な膨潤長期及び応力下は確認。
メチルエチルケトン99%23℃浸漬膨潤、軟化ゴム相量が多いほど影響が出る場合がある。
酢酸エチル99%23℃浸漬膨潤、軟化長時間接触を避ける。
n-ヘキサン99%23℃浸漬ゴム相の膨潤SP値が近く、長期で影響しやすい。
トルエン99%23℃浸漬×著しい膨潤、軟化芳香族炭化水素。
キシレン99%23℃浸漬×著しい膨潤温度上昇で影響が増大する。
ジクロロメタン99%23℃浸漬×膨潤、軟化、抽出塩素系溶剤。
エンジン油23~100℃浸漬膨潤、硬度低下TPV及び耐油グレードでも個別確認。
ガソリン23℃浸漬×膨潤、抽出、強度低下燃料系部品には専用材料を選定する。
ブレーキ液グリコール系23~100℃浸漬配合により膨潤液種及び高温条件を確認する。
次亜塩素酸ナトリウム0.05%23℃短時間長期で酸化、退色濃度、pH、温度、光を確認する。
過酸化水素3%23℃短時間長期で酸化高濃度・高温は注意。
食品油23~80℃浸漬膨潤、臭気移行温度及び接触時間に依存。
SP値(溶解度パラメータ)

TPOは多相材料であるため単一のSP値で表すことはできない。PP相は概ね16.0~18.0 MPa1/2、EPR・EPDM相は概ね16.0~17.5 MPa1/2が目安であり、材料全体では約16~18 MPa1/2を参考範囲とする。SP値差が小さい炭化水素系溶剤ではゴム相の膨潤が生じやすい。

SP値は溶解・膨潤の一次スクリーニングに使用できるが、結晶性、架橋、充填材、分子量、温度、拡散、酸化反応、応力割れ及び添加剤抽出を表さないため、耐薬品性をSP値だけで判断してはならない。

溶解性の目安
SP値差溶解・膨潤の目安判定
0~2膨潤・軟化しやすい×
2~5条件により膨潤する
5~8短時間接触では比較的安定
8以上溶解・膨潤しにくい
SP値から見た耐溶剤性
溶剤SP値 MPa1/2TPOとの差の目安評価実務上の注意
n-ヘキサン14.91~3ゴム相の膨潤に注意。
トルエン18.20~2×著しい膨潤が生じやすい。
キシレン18.00~2×高温で影響が大きい。
酢酸エチル18.20~2極性差があるためSP差のみより良好な場合もあるが、実測が必要。
MEK19.01~3膨潤、抽出、応力下変形を確認。
IPA23.56~8長時間及び高温は確認。
エタノール26.08~10添加剤抽出を考慮。
47.930以上熱水では熱軟化及び添加剤抽出を別途確認。

製法

熱可塑性オレフィンTPOの代表的な製造工程

ブレンド型TPOは、PP又はPE、EPR、EPDM、POE等を、酸化防止剤、耐候剤、相溶化剤、顔料、タルク等とともに二軸押出機等で溶融混練し、脱揮、濾過、造粒して製造する。反応器内重合型TPOでは、多段重合又は連続重合によりPP系相とエチレン・プロピレン系ゴム相を形成する。

TPVでは、PP溶融相中でEPDM等を混練しながら架橋反応を進め、架橋ゴム相を微細粒子として分散させる。代表的な概念反応は「EPDM+架橋剤 → 架橋EPDM相」であるが、実際の架橋剤、助剤、反応条件は製品設計により異なる。ペレット化後はMFR、硬度、密度、引張特性、圧縮永久ひずみ、分散状態、色及び異物を管理する。

詳細な利用用途

分野代表用途適性選定理由・注意点
自動車外装バンパー、クラッディング、マッドガード低密度、低温衝撃、耐候性に優れる。塗装密着、傷付き、線膨張を確認する。
自動車内装インストルメントパネル、表皮、エアバッグカバー触感、柔軟性、軽量性、成形性に優れる。VOC、臭気、フォギングを確認する。
シール部品ウェザーストリップ、ガスケット、グロメットTPV系が適する。圧縮永久ひずみ、温度、油接触を確認する。
建築・設備防水シート、ルーフィング、目地材耐候性、溶着性、耐水性に優れる。長期屋外曝露及び接合部を評価する。
電気・電子電線被覆、コネクタシール、筐体緩衝部電気絶縁性と柔軟性に優れる。難燃、耐熱、低分子移行を確認する。
医療チューブ、グリップ、機器外装医療用個別グレードのみ。滅菌、抽出物、ISO 10993等を確認する。
食品接触キャップ、シール、容器部品食品接触適合グレードに限定し、油脂、温度、移行試験を確認する。
ギア・軸受低荷重緩衝ギア、ブッシュ剛性、クリープ、摩耗及び寸法精度が制約となる。
燃料系部品燃料ホース、タンクシール×標準TPOは燃料で膨潤しやすい。専用バリア材又は耐燃料材を使用する。
塗料・コーティング粉末、ホットメルト、表皮層低表面エネルギーと溶剤選定に注意。接着性改良が必要な場合がある。
注意点・劣化及び故障モード
劣化現象主な原因発生しやすい条件影響予防策推奨確認試験
熱酸化劣化酸素、熱、金属触媒残渣高温長時間、薄肉、換気環境硬化、脆化、亀裂、変色耐熱安定剤、温度低減、遮熱100~130℃熱老化、引張保持率
紫外線劣化UV、酸素、顔料屋外、淡色、薄肉白化、退色、亀裂、強度低下HALS、UV吸収剤、耐候顔料キセノンアーク、色差、光沢、強度保持率
溶剤膨潤炭化水素系溶剤の吸収燃料、芳香族溶剤、温度上昇寸法増加、軟化、強度低下耐油材への変更、接触回避実薬品浸漬、質量・体積・硬度変化
クリープ変形低弾性率、温度、持続荷重高温、締結、片持ち、薄肉永久変形、シール低下肉厚、リブ、荷重低減、充填材使用温度・荷重で1000 h以上のクリープ試験
接着・塗装剥離低表面エネルギー、離型剤未処理表面、汚染、経時剥離、外観不良洗浄、表面処理、専用プライマー表面張力、クロスカット、180度剥離
アウトガス・フォギング低分子添加剤、加工劣化物自動車内装、高温密閉臭気、ガラス曇り、汚染低VOCグレード、乾燥、滞留抑制VOC、フォギング、GC-MS、質量減少
法規制・認証
法規制・認証一般的な対応確認事項
RoHS、REACH、SVHC対応可能なグレードが多い色、難燃剤、安定剤、製造拠点及び最新証明書を確認する。
ELV自動車用グレードで対応例が多いIMDS登録及び個別材料データを確認する。
日本食品衛生法・ポジティブリスト適合グレードが存在する食品種、接触温度、時間、油脂性食品、添加剤を確認する。
FDA食品接触適合グレードが存在する該当条項、使用条件及びメーカー適合宣言を確認する。
USP Class VI、ISO 10993医療用個別グレードに限定最終製品の生物学的安全性及び滅菌後性能を評価する。
UL 94HB又は難燃認証グレードがある等級、厚さ、色、UL File No.を個別確認する。
PFAS関連規制標準TPO主鎖はフッ素を含まない加工助剤、難燃剤、表面処理剤等の意図的添加を確認する。
環境・リサイクル性及び価格・供給性

TPOは熱可塑性であり、組成及び汚染が管理された成形端材はマテリアルリサイクルしやすい。PP系部品との単一材料化に有利である一方、架橋ゴム相、塗膜、接着剤、異種材、タルク及び劣化履歴は再生材物性に影響する。バイオベース又はマスバランス原料を用いた製品も存在するが、バイオベースであることと生分解性は別であり、一般的なTPOは生分解性ではない。

価格は一般に比較的低価格から中価格であり、TPV、医療、難燃、低VOC及び特殊外観グレードは高くなる。国内外で流通性は良いが、硬度、色、充填材量及び自動車認定仕様では最小購入量と供給継続性を確認する。

比較用評価スコア
評価項目スコア評価理由
引張強度2柔軟性を重視する材料群であり、高強度エンプラより低い。
剛性3タルク充填により高められるが、非充填軟質材は低い。
衝撃強度5低温を含む耐衝撃性を設計しやすい。
耐熱性3標準TPOは中程度、TPV及び耐熱材で改善可能。
耐薬品性4水、酸、アルカリに強いが、油、燃料、芳香族溶剤に弱い。
耐候性4安定化グレードは屋外用途に適する。
低吸水性5吸水率が低く、湿度寸法変化が小さい。
成形加工性5射出、押出、ブロー、熱成形へ対応しやすい。
接着性1表面処理又は専用プライマーが必要となりやすい。
リサイクル性4熱可塑性でPP系部品との単一材料化に適する。
価格優位性4性能に対して比較的低価格である。

関連材料との比較

比較材料特徴TPOとの違い
ポリプロピレン(PP)低密度、耐薬品性、剛性、成形性に優れる。TPOはゴム相によりPPより柔軟で低温衝撃性に優れるが、剛性と耐熱変形は低い場合がある。
熱可塑性エラストマー(TPE)TPS、TPO、TPV、TPU、TPC、TPAE等の総称。TPOはTPEの一群であり、オレフィン系組成、低密度、耐水性を特徴とする。
SEBS水添スチレン系TPE。低硬度、触感、透明設計に適する。TPOは自動車外装や大型成形に適し、SEBSは軟質グリップや透明・着色用途を設計しやすい。
熱可塑性ポリウレタン(TPU)耐摩耗、引張強度、耐油性に優れる。TPOは低密度、耐水、耐候、コストで有利。TPUは吸湿と加水分解に注意。
熱可塑性ポリエステルエラストマー(TPC)耐熱、疲労、反発弾性、耐油性に優れる。TPOは低密度、耐水、耐候、価格で有利だが、高温機械特性はTPCに劣る。
熱可塑性ポリアミドエラストマー(TPAE)耐熱、耐油、低温柔軟性に優れる高機能TPE。TPOは低吸水、低価格、加工性で有利。TPAEは高温・油環境に適する。
EPDM架橋ゴム。耐候、耐水、耐オゾン、シール性に優れる。TPOは再溶融成形とリサイクルが可能。EPDMは高温弾性回復及び圧縮永久ひずみに優れる場合が多い。
軟質ポリ塩化ビニル(PVC)難燃性、接着・印刷性、柔軟配合範囲に優れる。TPOは低密度、ハロゲンフリー設計、耐候及び再資源化で有利。PVCは油や溶剤で可塑剤移行に注意。

代表的なメーカー

メーカー代表製品・ブランド概要
三井化学株式会社ミラストマー®オレフィン系ゴムとポリオレフィン樹脂を主体とするTPO/TPV。自動車シール、内装表皮、グリップ、建材等に展開する。
LyondellBasellHifax、Hiflex、Softell反応器型TPO及びコンパウンドを自動車、建築防水、シート、表皮用途等へ展開する。
ExxonMobil Product SolutionsSantoprene™ TPV動的架橋型オレフィン系熱可塑性エラストマー。シール、ホース、電気、自動車用途で使用される。
Teknor ApexSarlink® TPVTPV及びオレフィン系TPEを自動車、工業、消費財用途へ展開する。
Avient CorporationOnFlex™、Maxelast™等オレフィン系を含む各種TPEコンパウンドを提供する。個別製品の樹脂系統を確認して選定する。

ブランドの分類はメーカーの製品体系によりTPO、TPE-O又はTPVと表記される。採用時は最新の技術資料、供給地域、グレード統廃合、規制証明及び物性保証範囲をメーカーへ確認する。

関連キーワード

熱可塑性オレフィン熱可塑性エラストマーポリプロピレンEPDMSEBSTPUTPCTPAE汎用プラスチック動的架橋環境応力割れ耐薬品性SP値射出成形押出成形自動車バンパールーフィングUL 94

用途決定前に推奨される確認試験
  • 実薬品浸漬試験:実濃度、実温度、予定接触時間で質量、体積、硬度、引張強さ及び外観を測定する。
  • 応力負荷下耐薬品試験:実部品又は曲げ試験片へ設計応力を付与し、割れ、白化及び永久変形を確認する。
  • 熱老化試験:使用上限温度付近で500~2000 hを目安に、引張特性、伸び、色及び臭気を評価する。
  • 紫外線促進耐候試験:キセノンアーク又はUV試験後の色差、光沢、亀裂及び強度保持率を確認する。
  • クリープ・圧縮永久ひずみ試験:実温度、実荷重又は圧縮率で長期変形を評価する。
  • 接着・塗装試験:表面処理直後及び経時後に、密着性、剥離強度、温湿度及び薬品耐久性を確認する。
  • 実成形試験:収縮、反り、ウェルド、フローマーク、外観、臭気、VOC及び再生材混合率の影響を確認する。

材料選定では、短時間物性値をそのまま設計許容応力として使用せず、グレード、温度、濃度、荷重、応力、湿度、時間、試験片形状、肉厚、成形履歴及び安全率を含めて評価する必要がある。

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