ポリアクリル酸ブチル

概要特徴構造式種類・代表グレード成形加工代表的な物性値又は機械的性質耐薬品性製法詳細な利用用途関連材料との比較代表的なメーカー関連キーワード

概要

項目内容
材料名ポリアクリル酸ブチル
略記号PBA、PnBA(poly(n-butyl acrylate)を明示する場合)
IUPACPoly(butyl prop-2-enoate)。高分子であるため、資料によりpoly(n-butyl acrylate)等の慣用名が用いられる。
英語名Poly(butyl acrylate)、Poly(n-butyl acrylate)、Poly(butyl prop-2-enoate)
日本語名ポリアクリル酸ブチル、ポリ(n-ブチルアクリレート)、アクリル酸n-ブチル重合体
分類アクリル系ポリマー、熱可塑性高分子、非晶性エラストマー状ポリマー、粘着剤・塗料・コーティング用バインダー原料
プラスチック分類一般的な硬質プラスチック、エンジニアリング・プラスチック、スーパーエンジニアリング・プラスチックには通常分類しない。室温でゴム状のアクリル系軟質ポリマーである。
化学式又は代表構造–[CH2–CH(COOC4H9)]n–、繰り返し単位 C7H12O2
CAS No.9003-49-0(Poly(butyl acrylate)として一般に用いられる)。モノマーn-ブチルアクリレートは141-32-2であり、ポリマーと混同しない。
構造・主成分n-ブチルアクリレートのビニル基をラジカル付加重合して得られる炭素-炭素主鎖型ポリマーで、側鎖にn-ブチルエステル基を持つ。側鎖が長く柔軟であるためTgが低い。
主な用途感圧粘着剤、アクリルエマルション、塗料・コーティング、シーラント、接着剤、繊維・紙・不織布バインダー、ポリマー改質、ブロック共重合体の軟質セグメント。

ポリアクリル酸ブチル(PBA)は、n-ブチルアクリレートを重合して得られる代表的な軟質アクリルポリマーである。PBAホモポリマーのガラス転移温度は一般に約−55~−45℃であり、室温では硬質樹脂ではなく、柔らかいゴム状・粘着性の高い状態を示す。この低Tgが感圧粘着性、低温柔軟性、造膜性に寄与する。

工業用途では、PBAホモポリマーを単独で射出成形ペレットとして使用する例よりも、MMA、アクリル酸、アクリル酸エチル、2-エチルヘキシルアクリレート等との共重合体として、粘着剤、塗料、コーティング、シーラント及び各種バインダーに利用する例が多い。共重合組成、分子量、分岐・ゲル分、架橋密度、乳化剤、残留モノマー及び添加剤により性能は大きく変化する。

したがって、PBAを一般的な「成形用プラスチック」の物性表だけで評価するのは適切でない。実使用では、乾燥皮膜か水分散体か、ホモポリマーか共重合体か、架橋の有無、膜厚、温度、薬品濃度、接触時間、荷重及び応力を明確にした上で評価する必要がある。

特徴

長所
  • 低いTgにより室温及び低温で柔軟性を保持しやすい。
  • 感圧粘着剤の軟質成分として高いタック、濡れ性及び追従性を設計しやすい。
  • アクリル系であり、共重合設計により耐候性、透明性、接着性、硬さを広範囲に調整できる。
  • 乳化重合、溶液重合、塊状重合、制御ラジカル重合など多様な重合法が適用できる。
  • MMA、AA、EA、2-EHA等と共重合しやすく、塗料・粘着剤・シーラント用途に適応しやすい。
短所
  • ホモポリマーは室温で軟らかく、剛性・耐クリープ性・寸法保持性が低いため、構造部品には不向きである。
  • トルエン、キシレン、酢酸エチル、THF等の良溶媒・近似溶媒では溶解又は著しい膨潤が起こり得る。
  • 未架橋状態では耐熱変形性、耐溶剤性及び凝集力に限界がある。
  • 乳化重合品では界面活性剤、残留モノマー、低分子量成分が耐水性、白化、臭気、接着性に影響する場合がある。
外観

純粋なPBAホモポリマーは一般に無色から淡色の透明~半透明な粘稠・ゴム状材料である。乳化重合品は白色乳濁液として供給され、乾燥後に透明~半透明の柔軟皮膜を形成する場合が多い。実際の外観は粒径、共重合組成、架橋、添加剤及び顔料により異なる。

耐熱性

Tgは低いが、これは「高い耐熱性」を意味しない。室温で既にゴム状領域にあるため、荷重下ではクリープしやすい。実用耐熱性は分子量、架橋、共重合組成、酸化防止設計及び使用荷重に依存し、未架橋PBAホモポリマーに一般成形材のHDTを適用することは適切でない。

耐薬品性

水には溶解しないが、芳香族炭化水素、エステル、エーテル、一部ケトン等の有機溶剤では膨潤又は溶解しやすい。酸・アルカリに対しては炭素主鎖自体は比較的安定であるが、側鎖エステル基は高温・高濃度の強酸又は強アルカリで加水分解を受け得る。

加工性

ホモポリマーは軟質・粘着性が高いため、一般的な射出成形、切削加工及び高精度機械部品加工には不向きである。実用加工は乳化重合ラテックスの塗布・乾燥、溶液コーティング、ホットメルト、共重合・架橋、フィルム形成等が中心となる。

分類上の注意

PBAは「アクリル樹脂」という広い分類に含まれるが、PMMA(アクリル樹脂)とは性質が大きく異なる。PMMAはTgが約100℃前後の硬質透明樹脂であるのに対し、PBAはTgが約−50℃前後の軟質ポリマーである。

構造式

PBA ポリアクリル酸ブチルの構造式

項目構造・内容
代表的な構造単位–[CH2–CH(COOC4H9)]n
繰り返し単位の化学式C7H12O2
モノマーn-ブチルアクリレート(butyl prop-2-enoate)、CH2=CHCOO(CH2)3CH3
主鎖付加重合により形成される炭素-炭素結合主鎖。
側鎖n-ブチルエステル基。柔軟なアルキル側鎖により鎖間相互作用が弱まり、Tgが低下する。
共重合体・変性MMA、AA、MAA、EA、2-EHA、スチレン等との共重合、架橋性モノマー導入、コアシェル化、ブロック共重合などが用いられる。

基本反応は、n-ブチルアクリレートの炭素-炭素二重結合がラジカル開始剤により付加重合する反応である。

n CH2=CH–COO–(CH2)3CH3 → –[CH2–CH(COOC4H9)]n

種類・代表グレード

種類・グレード区分主成分・特徴長所短所・注意点主な用途
PBAホモポリマーn-BA単独重合。Tgが低い軟質ポリマー。低温柔軟性、タック、濡れ性。凝集力、耐熱、耐溶剤、寸法保持性が低い。研究用、改質材、ブロック共重合体、粘着性成分。
アクリル粘着剤用共重合体BAを主軟質モノマーとし、AA、2-EHA、MMA等を共重合。タック・粘着力・凝集力をバランス化しやすい。組成・分子量・架橋で性能差が大きい。ラベル、テープ、保護フィルム、両面粘着材。
塗料・コーティング用共重合体BAとMMA、スチレン、官能性モノマー等を共重合。造膜性、柔軟性、耐候性を調整可能。耐水白化、ブロッキング、耐汚染性の調整が必要。建築塗料、紙、繊維、不織布、保護コーティング。
架橋型多官能モノマー、金属架橋、イソシアネート、エポキシ等で架橋。耐熱、凝集力、耐溶剤、クリープを改善。再溶融性低下、ポットライフ・硬化条件管理。高耐久粘着剤、工業用コーティング。
ブロック共重合体PBAをソフトセグメントとしてハードブロックと組合せる。相分離構造により弾性と強度を両立可能。合成・分子量制御が複雑。ナノ構造材料、改質剤、特殊粘着剤。
食品・医療用途向け個別規制対応のアクリル系配合・共重合体。低抽出・衛生用途に設計可能。PBAという材料名のみで適合を判断できない。個別グレードでの食品接触、医療関連粘着材。

GF強化、CF強化、一般射出成形用難燃グレード、摺動グレード等は、PBAホモポリマーの代表的な工業グレード区分ではない。これらを標準グレードとして扱わない。

成形加工

加工方法適正理由・主な注意点
射出成形×PBAホモポリマーは室温で軟質・粘着性が高く、一般的な硬質射出成形材料としては不適である。
押出成形高分子量・改質・共重合系では適用可能な場合があるが、単独PBAでは粘着、形状保持、冷却後の寸法保持に課題がある。
ブロー成形×形状保持性が低く、一般的なボトル成形材料には適さない。
インフレーション成形×単独PBAではバブル安定性と自立性が不足する。
Tダイフィルム成形支持基材上へのコーティング又は改質共重合体では可能であるが、自立フィルム化は配合依存である。
真空・圧空成形×一般的な熱成形用硬質シートを形成しない。
圧縮成形試験片作製や架橋配合で適用可能な場合があるが、標準量産法ではない。
塗布・コーティング乳化重合品、溶液品、ホットメルト型の主要加工法である。乾燥・造膜・架橋条件を管理する。
接着剤・粘着剤加工PBAの代表用途である。分子量、Tg、官能基、架橋密度、粘着付与剤の有無で設計する。
切削加工×軟質・粘着性のため、精密切削には不向きである。
3Dプリント×標準的なFDMフィラメント材料ではない。特殊インク・光硬化系の成分として用いる場合は別系統である。
接着・ラミネート低Tgと濡れ性を活かせる。基材表面エネルギー、プライマー、架橋を最適化する。
成形・加工条件の目安
項目代表値・目安備考
予備乾燥一般化困難乳化重合ラテックスは水分散体であり乾燥対象が異なる。固形ポリマーは保管状態・用途により判断する。
乾燥温度・時間データなし一般成形ペレットの統一条件を設定しない。
シリンダー温度該当なし標準PBAホモポリマーを一般射出成形材として扱わない。
金型温度該当なし同上。
成形収縮率一般化困難薄膜、粘着剤、架橋皮膜では基材拘束、乾燥収縮、架橋収縮が支配的である。
塗膜乾燥配合依存水系では水の蒸発と粒子融合、溶剤系では溶剤蒸発、架橋型では硬化反応を含む。

代表的な物性値又は機械的性質

以下は、特に断らない限り、非架橋PBAホモポリマーの材料群として確認可能な代表値・目安である。市販のアクリル粘着剤、エマルション、架橋塗膜及び共重合体の保証値ではない。

項目単位代表値代表範囲試験条件・備考
密度g/cm³1.087約1.05~1.0925℃付近。分子量・測定法・試料状態で差がある。
比重1.09約1.05~1.09密度に対応する概略値。
ガラス転移温度-49-55~-45分子量、タクチシティ、残留モノマー、測定法で変化。代表的な市販PBAで−49℃の例がある。
融点該当なし該当なし実用上は非晶性ゴム状ポリマーとして扱われ、明瞭な結晶融点を一般化しない。
引張強さ・破断MPaデータなし一般化困難分子量、架橋、膜厚、試験速度で大きく変わる。未架橋ホモポリマーの統一代表値を置かない。
引張弾性率GPaデータなし一般化困難室温ではゴム状領域。硬質樹脂用のGPa級指標での比較は不適切。
引張破断伸び%データなし一般化困難架橋密度と分子量に強く依存。
曲げ強さMPa該当なし該当なし自立硬質試験片を前提とする評価は代表的でない。
曲げ弾性率GPa該当なし該当なし同上。
アイゾット衝撃強さ・ノッチ付きkJ/m²該当なし該当なし硬質試験片を前提とするため、PBAホモポリマーの代表比較項目には適さない。
荷重たわみ温度・0.45 MPa該当なし該当なし室温でゴム状であり、一般成形材のHDTとして扱わない。
荷重たわみ温度・1.80 MPa該当なし該当なし同上。
連続使用温度データなしグレード依存用途は粘着・塗膜が中心であり、荷重、架橋、酸化、基材により大きく異なる。
吸水率・24時間%データなし一般化困難疎水性アルキル側鎖を持つが、乳化剤・官能性コモノマー・架橋剤により変化する。
体積抵抗率Ω・cmデータなし一般化困難含水、残留界面活性剤、イオン性成分の影響が大きい。
屈折率データなしグレード依存透明皮膜用途では個別データ確認を推奨する。
燃焼性・難燃性

PBAホモポリマーのUL 94等級を材料群として一律に設定することはできない。未難燃の有機ポリマーであり、自己消火性を前提にしてはならない。難燃剤や無機フィラーを配合したアクリル系材料では性能を改善できるが、グレード、膜厚、基材、添加剤により評価が異なる。

電気的性質

アクリル系ポリマー自体は一般に絶縁性を示すが、PBA実用品は乳化剤、塩、中和剤、帯電防止剤、導電フィラー等を含む場合があり、体積抵抗率・表面抵抗・誘電特性を材料名だけで一般化できない。

寸法精度・設計特性

低Tgにより長期荷重下でクリープしやすく、硬質機械部品の寸法設計には適さない。粘着剤ではクリープ、せん断保持力、剥離、タック、応力緩和を重視し、短時間引張強さを設計許容応力として使用しない。

耐薬品性

以下は非架橋PBAホモポリマーの一般傾向であり、25℃付近・短~中時間接触を主に想定した目安である。実際の塗膜・粘着剤は共重合、架橋、乳化剤、添加剤、基材拘束により挙動が変わる。

薬品分類代表薬品濃度温度接触条件評価主な劣化形態備考
純水23℃浸漬低分子・界面活性剤抽出PBA自体は水に不溶。乳化重合塗膜では白化・界面活性剤移行を別途確認する。
温水温水60~80℃浸漬軟化、膨潤、抽出低Tgのため温度上昇で機械保持力が低下しやすい。
無機酸塩酸希薄23℃短時間~浸漬長期で加水分解の可能性高濃度・高温では個別確認する。
無機酸硫酸希薄23℃短時間変色、加水分解濃硫酸・高温は避け、実測する。
酸化性酸硝酸濃厚23℃接触×酸化、変色、鎖切断強酸化条件は不適と考える。
強アルカリNaOH、KOH希薄23℃短時間エステル加水分解濃度・温度・時間増加でけん化が進み得る。
低級アルコールメタノール、エタノール、IPA純品~水溶液23℃浸漬軽度膨潤、抽出共重合体・乳化剤の影響を確認する。
多価アルコールグリセリン、エチレングリコール23℃浸漬高温では実測する。
グリコールエーテルMMB等23℃接触膨潤、軟化溶解力が高いグリコールエーテルは注意する。
芳香族炭化水素トルエン、キシレン純品23℃浸漬×著しい膨潤~溶解PBAの代表的な良溶媒側である。
脂肪族炭化水素n-ヘキサン、ヘプタン純品23℃浸漬膨潤、抽出芳香族より溶解力が低い場合が多いが、長時間接触は注意する。
ケトンMEK、MIBK純品23℃浸漬×膨潤~溶解配合・分子量・架橋で差が大きい。
エステル酢酸エチル、酢酸ブチル純品23℃浸漬×膨潤~溶解アクリル樹脂用溶剤として一般的に用いられる系統である。
エーテルTHF純品23℃浸漬×溶解強い溶解力を示す代表溶媒。
塩素系溶剤ジクロロメタン、クロロホルム純品23℃浸漬×著しい膨潤~溶解基本的に不適。
燃料ガソリン市販燃料23℃浸漬×膨潤、抽出、軟化芳香族成分を含むため耐燃料用途に単独PBAを推奨しない。
潤滑油鉱物油23℃浸漬膨潤油種、芳香族分、温度で変化する。
酸化剤過酸化水素、次亜塩素酸塩希薄23℃短時間酸化、変色濃度・pH・温度・光の影響を含め実測する。
SP値(溶解度パラメータ)

PBAのHildebrand型SP値は測定法・温度・溶媒系列により差があり、文献では概ね19.8~21.5 MPa1/2程度の値が報告されている。実務上の代表値として約20.5 MPa1/2を置くことは可能であるが、確定定数として扱わない。

SP値は溶解・膨潤傾向を把握する一次スクリーニングに有効であるが、PBAの耐薬品性は分子量、架橋、共重合組成、溶媒の水素結合性、温度、時間、応力及び拡散速度でも変わる。SP値差だけで使用可否を決定しない。

溶解性の目安
SP値差溶解・膨潤の目安判定
0~2膨潤・軟化しやすい×
2~5条件により膨潤する
5~8短時間接触では比較的安定
8以上溶解・膨潤しにくい
SP値から見た耐溶剤性
溶剤SP値
MPa1/2
PBAとの差
(PBA=20.5)
評価補足
トルエン約18.22.3実際にはPBAを強く膨潤・溶解し得るため、SP差だけでは過小評価となる。
キシレン約18.02.5長時間・高温では不適側。
酢酸エチル約18.22.3実溶解性は高く、実務評価は×側と考える。
MEK約19.01.5×近接SPで膨潤・溶解リスクが高い。
アセトン約19.90.6×近接SP。分子量・架橋で実挙動を確認する。
THF約18.52.0×強い溶解力を示す。
IPA約23.53.0総SP差だけより耐性が良い場合があり、極性・水素結合項の考慮が必要。
エタノール約26.05.5短時間では比較的安定な場合が多い。
約47.927.4PBA自体は不溶。ただし乳化剤抽出・塗膜白化は別機構で起こり得る。

評価基準は、◎:一般的な条件で影響が小さい、○:概ね使用可能であるが条件確認が必要、△:膨潤、軟化、抽出、強度低下等に注意、×:溶解又は著しい膨潤・劣化の可能性が高い、とする。

製法

PBA ポリアクリル酸ブチルの製造工程

原料
  • n-ブチルアクリレート(BA)
  • ラジカル開始剤(過硫酸塩、有機過酸化物、アゾ系等。重合法により異なる)
  • 乳化重合では水、乳化剤、必要に応じて保護コロイド・緩衝剤・還元剤等
  • 溶液重合では適切な有機溶媒
  • 分子量調整剤、架橋性モノマー、共重合モノマー、酸化防止剤等
重合方法

PBAはラジカル重合で製造でき、乳化重合、溶液重合、塊状重合、懸濁系、制御ラジカル重合等が用いられる。塗料・粘着剤・バインダー用途では、乳化重合又は溶液重合による共重合体として製造されることが多い。反応温度、開始剤濃度、モノマー供給、分子量調整剤及び乳化剤条件により分子量、粒径、ゲル分、分岐、残留モノマーを制御する。

反応後処理・製品化

乳化重合では残留モノマー低減、中和、ろ過、防腐、固形分・pH調整を行い、水分散体として製品化する。溶液重合では粘度・固形分を調整し、必要に応じて脱揮や溶媒置換を行う。固形PBAは研究用・特殊用途では供給されるが、一般的な硬質ペレット成形材料のような供給形態が主流ではない。

添加剤・改質

粘着剤では架橋剤、粘着付与樹脂、可塑化成分、酸化防止剤、消泡剤等を配合する場合がある。水系塗料では濡れ剤、消泡剤、増粘剤、造膜助剤、pH調整剤、防腐剤等が使用される。これらの配合は耐水性、耐薬品性、VOC、臭気、ブリード、抽出性及び法規制適合に影響する。

詳細な利用用途

分野代表用途採用理由選定時の注意
粘着テープ・ラベル感圧粘着剤、保護フィルム、両面テープ低Tg、濡れ性、タック、共重合設計自由度せん断保持力、残糊、耐熱、可塑剤移行、耐候を確認。
塗料・コーティング建築塗料、柔軟塗膜、保護コート造膜性、柔軟性、耐候性設計耐ブロッキング、耐汚染、耐水白化、架橋を確認。
接着剤・シーラント水系・溶剤系アクリル接着剤基材濡れ、柔軟追従性耐熱クリープ、溶剤、可塑剤、長期接着性。
紙・繊維・不織布含浸バインダー、表面処理柔軟性、接着、風合い調整洗濯耐久、耐水、黄変、ホルムアルデヒドフリー要求等。
自動車粘着材、制振・内装用バインダー、コーティング柔軟性、接着性、低温追従性VOC・FOG、耐熱、耐候、可塑剤・油接触。
電気・電子保護フィルム用粘着剤、固定用テープ透明性、粘着設計、低温柔軟性アウトガス、イオン性不純物、絶縁性、残渣、耐熱。
医療皮膚貼付用アクリル粘着剤の構成モノマー柔軟性、粘着調整生体適合性は最終配合で評価し、ISO 10993等を個別確認。
食品包装ラベル・テープ・ラミネート用接着系加工性、粘着設計直接・間接接触条件、移行、食品法規、添加剤を個別確認。
用途別選定
用途適性理由・注意点
ギア・軸受・ブッシュ×剛性、耐摩耗、寸法保持性が不足する。
シール・ガスケット架橋設計では可能性があるが、一般PBA単独は圧縮永久変形・溶剤膨潤に注意。
チューブ・配管・タンク×自立構造材としての剛性と耐クリープが不足する。
フィルム・シート単独自立フィルムより、基材上コーティング・共重合・架橋系が適する。
電気コネクタ・筐体×硬質構造部品には不向き。
自動車内装用粘着・コート配合設計により適用可能。耐熱・VOC・フォギング確認が必要。
医療粘着材アクリル粘着剤の構成成分として有用。最終製品の生体適合性試験が必須。
接着剤主要用途。共重合・架橋で粘着特性を調整する。
塗料・コーティング主要用途。柔軟性・造膜性付与成分として有用。
複合材料マトリックス硬質構造マトリックスより、改質・柔軟相・バインダー用途が中心。

注意点・劣化・故障モード

劣化現象主な原因発生しやすい条件外観・性能への影響予防策推奨確認試験
溶剤膨潤・溶解近似SP溶剤の浸透芳香族、エステル、ケトン、THF、塩素系溶剤軟化、粘着低下、溶解、寸法変化架橋、共重合、バリア層、溶剤選定23℃及び使用上限温度で24~168h浸漬、重量・体積・粘着変化測定。
熱クリープ低Tg、低架橋密度高温、持続荷重ずれ、流動、端部はみ出し架橋密度向上、ハードモノマー導入保持力試験、80℃等で荷重・時間を実使用に合わせる。
加水分解側鎖エステルの反応高温・強酸・強アルカリ極性変化、粘着・強度変化pH・温度制限、耐薬品共重合設計実薬品浸漬、FT-IR、酸価・質量変化。
酸化劣化熱、酸化剤、UV高温空気、強酸化剤、屋外変色、硬化、鎖切断、粘着低下酸化防止剤、UV安定剤、顔料設計熱老化、キセノン、UV、過酸化物接触試験。
水白化・抽出乳化剤・親水成分移動水浸漬、高湿、低温造膜白化、接着低下、表面べたつき低乳化剤設計、架橋、十分な造膜23℃水浸漬24~168h、高温高湿85℃/85%RH等。
アウトガス・臭気残留モノマー、溶剤、低分子密閉、高温、電子用途臭気、汚染、曇り、接点影響残留低減、脱揮、低VOC原料GC-MS、TDS、フォギング、真空アウトガス試験。

用途決定前には、実薬品浸漬、応力又は荷重負荷下の耐久、熱老化、高温高湿、紫外線促進耐候、クリープ、接着・剥離、せん断保持、アウトガス、溶出及び実部品耐久試験を推奨する。温度、濃度、時間、荷重、応力、湿度、膜厚、基材、前処理及び硬化条件を実使用に合わせる。

法規制・認証

項目一般的な位置付け確認事項
RoHS対応可能PBA骨格だけで適合を断定せず、添加剤、触媒残渣、顔料、製品証明書を確認する。
REACH / SVHC個別確認ポリマー免除の考え方と、モノマー・添加剤の登録及びSVHC含有を製品ごとに確認する。
TSCA個別確認米国向けは登録状態、用途制限、残留モノマーを供給者資料で確認する。
食品接触適合グレードが存在し得るFDA、EU食品接触、日本食品衛生法ポジティブリスト等は最終配合・用途・温度・接触時間で確認する。
医療用途個別グレード評価USP Class VI、ISO 10993等は材料名だけでは付与されない。最終製品・製造工程を含め確認する。
ULグレード依存UL 94等級をPBA材料群全体に付与しない。
PFAS関連規制PBA骨格はフッ素を含まない添加剤、界面活性剤、加工助剤まで含めた確認が必要である。

環境・リサイクル性

項目内容
熱可塑性 / 熱硬化性未架橋PBAは熱可塑性高分子であるが、実用粘着剤・塗膜は架橋される場合が多い。
マテリアルリサイクル単一樹脂成形品としての回収再成形は一般的でない。基材に薄膜・粘着層として存在するため分離が課題となる。
再生材利用一般化困難。粘着層混入はリサイクル工程で汚染・ブロッキング要因となる場合がある。
生分解性一般的なPBAは生分解性プラスチックとして扱わない。
バイオベース通常は石化原料由来。バイオベース原料を用いたアクリレート設計は別途可能であるが、生分解性とは別概念である。
焼却炭素、水素、酸素を主成分とする。添加剤・顔料・基材を含む最終製品として適切な廃棄処理を行う。

価格・供給性

項目一般的な評価
相対価格中価格。PBAホモポリマー研究試薬は高価格になりやすいが、工業用BA系アクリルエマルション・粘着剤は量産規模と配合で大きく変わる。
国内入手性n-BAモノマー、BA系アクリルエマルション及び粘着剤としては高い。純PBAホモポリマーの成形ペレットは一般的でない。
供給形態水系エマルション、溶液、粘着剤、共重合体、特殊固形ポリマー等。
少量購入研究用PBAは試薬メーカー経由で入手可能な場合がある。工業品はロット・最低購入量が設定される。

関連材料との比較

比較材料特徴PBAとの違い
PMMA(アクリル樹脂)硬質、高透明、耐候性、表面硬度に優れる。PMMAはTgが約100℃前後で硬質、PBAは約−50℃前後でゴム状。アクリル系でも用途は大きく異なる。
EEAエチレン・アクリル酸エチル共重合体。柔軟な熱可塑性樹脂。EEAは結晶性ポリエチレン骨格を持ち溶融成形しやすい。PBAは非晶性・低Tgで粘着剤/バインダー用途が中心。
EVA柔軟性、発泡性、ホットメルト加工性に優れる。EVAは成形・フィルム・発泡体に広く使用される。PBAはアクリル粘着・塗膜のソフト成分としての利用が中心。
TPU高強度、耐摩耗、弾性を持つ熱可塑性エラストマー。TPUは自立成形品や機械部品に適用可能。PBA単独は強度・耐摩耗・寸法保持で劣るが、粘着性・造膜性に優れる。
NBR耐油性に優れる加硫ゴム。NBRはシール・ホースに適する。PBAは油・燃料・溶剤で膨潤しやすく、粘着剤・コーティング分野が中心。
EPDM耐候、耐水、耐オゾンに優れる加硫ゴム。EPDMは加硫成形ゴム部品向け。PBAは低Tgアクリルバインダーであり、化学構造・加工法・耐油性が異なる。

比較用評価スコア

評価項目スコア評価理由
引張強度1未架橋ホモポリマーは構造用途の強度が低い。
剛性1室温でゴム状であり、硬質部材用途には不向き。
衝撃強度4低Tgにより脆性破壊しにくいが、硬質樹脂の衝撃規格での単純比較はできない。
耐熱性2荷重下クリープに弱い。架橋・共重合で改善可能。
低温特性5Tgが約−50℃で低温柔軟性に優れる。
耐薬品性2水系には比較的安定だが、多くの有機溶剤に膨潤・溶解しやすい。
耐候性4飽和炭素主鎖のアクリル系で、共重合塗膜として耐候設計しやすい。
低吸水性4PBA骨格は疎水的。ただし乳化剤・親水モノマーで変化。
寸法安定性1低Tgとクリープにより硬質部品の寸法保持に不向き。
電気絶縁性3ポリマー自体は絶縁性だが、実用水系配合はイオン成分依存。
難燃性1未難燃有機ポリマーとして自己消火性を期待しない。
透明性4純粋な乾燥皮膜は透明性を得やすいが、乳化粒子・添加剤で変化。
成形加工性2一般射出・押出成形には不向きだが、塗布・造膜加工性は非常に高い。
接着性5低Tgと濡れ性により粘着剤設計に適する。
リサイクル性2薄膜・粘着層として基材に付着し、分離回収が難しい。
価格優位性3工業用アクリル系として一般的だが、特殊高機能品は配合・重合法で高価となる。

代表的なメーカー

メーカー代表製品・ブランド概要
Merck / Sigma-AldrichPoly(butyl acrylate)研究・評価用途のPBAホモポリマー製品を扱う代表例。分子量、溶液形態等は製品ごとに異なる。
工業用アクリル樹脂メーカー各社BA系アクリルエマルション・粘着剤PBAホモポリマー単独より、BAを主要モノマーとする共重合エマルション・粘着剤として供給されることが多い。製品選定時はモノマー組成、Tg、固形分、酸価、架橋性、法規制適合を個別確認する。

工業用アクリルエマルションは、メーカー独自の共重合組成を持つ製品が多く、製品名だけから「PBAホモポリマー」と断定しない。

関連キーワード

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本ページの数値及び評価は、PBAホモポリマー又はBA系材料群の代表値・一般傾向であり、特定メーカーの保証値ではない。実使用では、ホモポリマー/共重合体、分子量、架橋、固形分、乳化剤、添加剤、膜厚、基材、温度、薬品濃度、接触時間、荷重、応力、湿度、試験片形状、乾燥・硬化条件及び法規制を確認し、実配合・実部品・実使用条件で採否を判断する必要がある。

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