概要
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 材料名 | 耐衝撃ポリメタクリル酸メチル |
| 略記号 | PMMA-IM、Impact Modified PMMA |
| IUPAC | PMMA主成分は poly(methyl 2-methylpropenoate)。耐衝撃改質材は多相系であり、材料全体を単一IUPAC名で表すことは一般に困難である。 |
| 英語名 | Impact Modified Poly(methyl methacrylate)、Impact Modified PMMA、Impact Resistant Acrylic |
| 日本語名 | 耐衝撃PMMA、耐衝撃アクリル、耐衝撃アクリル樹脂、強化アクリル |
| 分類 | 熱可塑性樹脂、非晶性樹脂、アクリル系透明樹脂、耐衝撃改質樹脂 |
| プラスチック分類 | 高機能汎用プラスチック。用途によっては透明エンジニアリング材料として扱われる。 |
| 化学式または代表構造 | PMMA基本繰返し単位:−[CH2−C(CH3)(COOCH3)]n−。耐衝撃グレードではPMMA連続相中にアクリル系ゴム粒子などを分散させる。 |
| CAS No. | PMMA:9011-14-7。耐衝撃改質PMMA全体としては配合物であり、単一CAS No.で表せない場合がある。 |
| 構造・主成分 | PMMAを連続相とし、アクリル酸エステル系ゴム、コアシェル型改質剤、又はこれらに類する耐衝撃改質相を微細分散した多相材料である。 |
| 主な用途 | 車載ランプ・メーター周辺、透明カバー、家電外装、スイッチ・ボタン、サイドバイザー、ディスプレイカバー、押出シート、建材、日用品、文具など。 |
PMMA-IMは、PMMA(アクリル樹脂)の高い透明性、耐候性、光沢、表面意匠性を維持しながら、標準PMMAの弱点である脆性破壊を緩和するためにゴム状改質相を導入した耐衝撃グレードである。一般に、衝撃時には分散ゴム粒子が応力集中を緩和し、クレーズや微小クラックの進展を抑えることで靭性を高める。
標準PMMAに比べて衝撃強さ、低温割れ抵抗、組立時の割れ抵抗を改善しやすい一方、ゴム量の増加に伴い、弾性率、表面硬度、耐熱性、光線透過率が低下する場合がある。したがってPMMA-IMは「透明性をできるだけ維持したまま割れにくくしたい」用途に適し、極端な衝撃性能を要求する場合はポリカーボネート(PC)との比較が重要となる。
PMMA-IMは単一組成の材料名ではなく、メーカーごとにゴム粒子径、多層構造、ゴム含有量、分子量、共重合成分が異なる。実使用ではグレード、肉厚、成形残留応力、温度、荷重、薬品濃度、接触時間、屋外暴露条件を確認する必要がある。
特徴
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 長所 | 標準PMMAより高い耐衝撃性、良好な透明性・光沢、優れた耐候性、低吸水性、良好な寸法安定性、射出・押出成形適性。 |
| 短所 | 標準PMMAより弾性率、表面硬度、HDT、透明性が低下する場合がある。ケトン、エステル、芳香族炭化水素、塩素系溶剤には弱く、応力下ではESCに注意が必要である。 |
| 外観 | 透明~半透明。高衝撃化の程度、粒子構造、板厚によりヘーズが増加する場合がある。 |
| 耐熱性 | 一般的な耐衝撃グレードのHDTは概ね80~95℃程度が目安であり、標準PMMAよりやや低い傾向がある。 |
| 耐薬品性 | 水、希酸、希アルカリ、脂肪族炭化水素、鉱油には比較的安定であるが、アセトン、MEK、酢酸エチル、トルエン、塩化メチレンなどには不適である。 |
| 加工性 | 射出成形、押出成形、シート加工、真空成形、切削、接着、印刷に対応しやすい。吸湿量は小さいが、外観不良防止のため予備乾燥が推奨される。 |
| 分類上の注意 | PMMA-IMは一般に「PMMAの耐衝撃改質グレード」であり、PC/PMMAアロイや透明ABSとは区別する。特定グレードの性能をPMMA-IM全体へ一般化しない。 |
構造式

| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 代表的な構造単位 | −CH2−C(CH3)(COOCH3)− |
| 主モノマー | メタクリル酸メチル(MMA):CH2=C(CH3)COOCH3 |
| 耐衝撃改質相 | アクリル酸エステル系ゴム、コアシェル型アクリル系改質剤など。詳細組成はグレード依存である。 |
| 構造上の特徴 | 剛直なPMMA相中に柔軟なゴム相を微分散させる多相構造により、衝撃エネルギーを分散させる。 |
種類・代表グレード
| 種類 | 主成分・特徴 | 長所 | 短所 | 主な用途 |
|---|---|---|---|---|
| 標準耐衝撃 | PMMAに中程度のアクリル系ゴム相を分散 | 透明性と衝撃性のバランス | 標準PMMAより剛性・硬度が低下 | カバー、スイッチ、車載内外装 |
| 高耐衝撃 | ゴム相を増やし靭性を優先 | 低温衝撃・割れ抵抗が高い | 透明性、HDT、剛性が低下しやすい | 保護カバー、建材、厚物成形 |
| 押出シート | 押出流動とシート外観を調整 | 押出安定性、熱成形性 | 射出用と流動・熱履歴条件が異なる | 透明板、屋外カバー、建材 |
| 高流動 | 射出成形性を重視 | 薄肉・複雑形状に適する | 衝撃性や耐熱性とのトレードオフ | 薄肉カバー、電装外装 |
| 耐候・UV | 耐候安定化設計 | 屋外で黄変・物性低下を抑えやすい | 添加剤・色により光学特性が変化 | 屋外サイン、車載外装 |
| 食品・医療対応 | 対象規制に適合する原料・添加剤設計 | 特定用途の法規要求に対応可能 | 対応可否は個別グレード確認が必須 | 食品接触部材、医療機器外装 |
成形加工
| 加工方法 | 適性 | 理由・注意点 |
|---|---|---|
| 射出成形 | ◎ | 代表的な加工法である。透明外観品では乾燥、樹脂温度、金型温度、残留応力管理が重要。 |
| 押出成形 | ◎ | シート、板、異形押出に適するグレードがある。 |
| ブロー成形 | △ | 専用高溶融強度グレードが必要で、一般射出グレードでは適用範囲が限定される。 |
| 真空成形・圧空成形 | ○ | 押出シートからの二次成形が可能。均一加熱と急激な延伸を避ける。 |
| 圧縮成形 | △ | 可能ではあるが量産熱可塑性成形としては一般的ではない。 |
| 3Dプリント | △ | 専用フィラメントでは可能。反り、臭気、層間強度、透明性に注意。 |
| 切削加工 | ○ | 板材・丸棒の切削が可能。発熱、クラック、エッジ欠けを避ける。 |
| 溶剤接着 | ○ | PMMA用溶剤・接着剤が使用可能だが、残留応力部ではクレージングに注意。 |
| 超音波溶着 | ○ | 形状設計と溶着条件最適化が必要。 |
| レーザー溶着 | △ | 吸収体・透過体の組合せ設計が必要。 |
| 塗装・印刷 | ○ | 可能であるが溶剤攻撃と応力割れに注意する。 |
| 蒸着 | ○ | 意匠・光学用途で利用可能。表面清浄度と真空中アウトガス確認が必要。 |
代表的な成形条件
| 項目 | 単位 | 一般的な目安 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 予備乾燥 | - | 推奨 | 吸水量は小さいが、銀条・気泡・外観不良防止のため実施することが多い。 |
| 乾燥温度 | ℃ | 70~85 | 高温過乾燥によるブロッキング、黄変を避ける。 |
| 乾燥時間 | h | 2~4 | 材料履歴、乾燥機、ペレット含水率で調整。 |
| シリンダー温度 | ℃ | 210~250 | 高温長時間滞留を避ける。 |
| 金型温度 | ℃ | 50~80 | 外観・ウェルド・残留応力のバランスを取る。 |
| 射出圧力 | MPa | 70~120 | 形状・肉厚・ゲートで大きく変動。 |
| 成形収縮率 | % | 0.3~0.7 | 非晶性で比較的小さい。流動方向差はグレード依存。 |
| アニール | - | 必要に応じ実施 | 薬品接触・接着用途では残留応力低減に有効。 |
代表的な物性値又は機械的性質
以下は非強化・透明系PMMA-IMの材料群としての代表範囲である。高衝撃化の程度によって特性幅が大きいため、比較機能では特定グレード値と材料群代表範囲を分離して扱う必要がある。
| 項目 | 単位 | 代表値 | 代表範囲 | 条件・備考 |
|---|---|---|---|---|
| 密度 | g/cm³ | 1.17 | 1.15~1.18 | 23℃、非強化。ゴム量で変化。 |
| 比重 | - | 1.17 | 1.15~1.18 | 代表値。 |
| 吸水率・24時間 | % | 0.30 | 0.2~0.4 | 23℃水中24h目安。規格・板厚で変動。 |
| 引張強さ・降伏 | MPa | 50 | 40~60 | ISO系代表範囲。高衝撃化で低下しやすい。 |
| 引張破断伸び | % | 30 | 10~60 | ゴム相量・試験速度依存が大きい。 |
| 引張弾性率 | GPa | 2.3 | 1.8~2.8 | 標準PMMAより低い傾向。 |
| 曲げ強さ | MPa | 80 | 65~95 | 代表範囲。 |
| 曲げ弾性率 | GPa | 2.2 | 1.8~2.7 | 代表範囲。 |
| シャルピー衝撃強さ・ノッチ付き | kJ/m² | 3.0 | 1.4~8 | ISO 179系の代表的な公開グレード範囲を参考。試験条件を揃えて比較する。 |
| ガラス転移温度 | ℃ | 100 | 90~105 | 主にPMMAマトリックス由来。DSC/DMA条件で変動。 |
| 融点 | ℃ | 該当なし | 該当なし | 非晶性樹脂で明確な融点を持たない。 |
| HDT・1.80 MPa | ℃ | 90 | 80~95 | 耐衝撃グレードの一般的目安。 |
| ビカット軟化温度 | ℃ | 95 | 85~105 | 荷重条件により変動。 |
| 連続使用温度 | ℃ | 75 | 70~85 | 長期熱老化・荷重・雰囲気により異なる。 |
| 線膨張係数 | 10⁻⁵/K | 7.0 | 6~9 | 非強化、23℃近傍の目安。 |
| 熱伝導率 | W/(m・K) | 0.19 | 0.18~0.21 | 代表値。 |
| 屈折率 | - | 1.49 | 1.48~1.50 | 可視域。改質相でわずかに変化。 |
| 光線透過率 | % | 88 | 80~92 | 透明グレード、板厚依存。標準PMMAより低下する場合がある。 |
| 体積抵抗率 | Ω・cm | 1×10¹⁵ | 10¹⁴~10¹⁶ | 乾燥状態の目安。 |
| 絶縁破壊強さ | kV/mm | 18 | 15~25 | 試験片厚さ・規格依存。 |
難燃性・法規制
| 項目 | 一般的な位置づけ | 注意点 |
|---|---|---|
| UL 94 | 標準PMMA系はHB相当のグレードが多い | UL等級はグレード、色、厚さごとの認証であり、PMMA-IM全体の等級ではない。 |
| RoHS / REACH | 適合グレードが広く存在 | メーカーの最新適合証明書を確認する。 |
| 食品接触 | 適合グレードが存在 | FDA、EU、日本食品衛生法・ポジティブリストは個別グレード確認が必要。 |
| 医療用途 | 医療向けグレードが存在する場合がある | USP Class VI、ISO 10993等の適合は材料名だけでは判断しない。 |
| PFAS関連 | PMMA骨格自体はフッ素系ポリマーではない | 添加剤、加工助剤、着色剤を含む配合全体を確認する。 |
耐薬品性
| 薬品 | 濃度 | 温度 | 接触 | 評価 | 主な劣化形態 | 備考 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 水 | - | 23℃ | 長期 | ◎ | 影響小 | 寸法変化は小さい。 |
| 温水 | - | 60~80℃ | 長期 | ○ | 応力緩和、白化 | 高温・応力下は確認必要。 |
| 塩酸 | ~10% | 23℃ | 浸漬 | ○ | 条件により外観変化 | 濃度・温度上昇で要評価。 |
| 硫酸 | ~10% | 23℃ | 浸漬 | ○ | 条件により劣化 | 濃硫酸は不適。 |
| 酢酸 | ~10% | 23℃ | 浸漬 | △ | 膨潤、白化 | 濃度上昇で悪化。 |
| NaOH | ~10% | 23℃ | 浸漬 | ○ | 長期で表面変化 | 高温濃厚アルカリは避ける。 |
| KOH | ~10% | 23℃ | 浸漬 | ○ | 長期で表面変化 | 高温では要確認。 |
| エタノール | 99%以下 | 23℃ | 短時間 | △ | クレージング、ESC | 残留応力が高いと割れやすい。 |
| IPA | 99%以下 | 23℃ | 短時間 | △ | クレージング、ESC | 消毒用途では実部品評価推奨。 |
| グリセリン | - | 23℃ | 長期 | ◎ | 影響小 | 一般に良好。 |
| MMB | - | 23℃ | 短時間 | △ | 膨潤、応力割れ | 実配合で確認。 |
| ヘキサン | - | 23℃ | 短時間 | ○ | 長期で膨潤可能性 | 脂肪族炭化水素は比較的良好。 |
| トルエン | - | 23℃ | 短時間 | × | 膨潤、溶解、クレージング | 芳香族溶剤は不適。 |
| アセトン | - | 23℃ | 短時間 | × | 急速な白化、膨潤、溶解 | 代表的な不適溶剤。 |
| MEK | - | 23℃ | 短時間 | × | 膨潤、溶解 | 不適。 |
| 酢酸エチル | - | 23℃ | 短時間 | × | 膨潤、溶解 | エステル系溶剤は注意。 |
| 塩化メチレン | - | 23℃ | 短時間 | × | 溶解 | PMMAの強溶剤。 |
| 鉱油 | - | 23℃ | 長期 | ○ | 添加剤抽出に注意 | 油種、添加剤で確認。 |
| ガソリン | - | 23℃ | 短時間 | △ | 膨潤、ESC | 芳香族成分量に依存。 |
| 次亜塩素酸Na | 200~1000 ppm | 23℃ | 短時間 | ○ | 長期で変色可能性 | 高濃度・高温・UV併用で要確認。 |
| 過酸化水素水 | 3% | 23℃ | 短時間 | ○ | 長期で酸化劣化可能性 | 高濃度は実試験必須。 |
SP値(溶解度パラメータ)
PMMAの代表的なHildebrand SP値は概ね18.6~20.5 MPa1/2程度として扱われる。PMMA-IMではゴム相の組成と含有量により材料全体の見かけの溶解挙動が変わるため、単一のSP値を厳密に与えることは難しい。実務上はPMMA連続相の代表値として約19 MPa1/2前後を一次スクリーニングに使用し、ゴム相と添加剤の影響を別途考慮する。
SP値だけで耐薬品性を判断してはならない。PMMA-IMでは特に、残留応力、温度、クレージング、環境応力割れ、ゴム相の膨潤、添加剤抽出、接触時間が重要である。
溶解性の目安
| SP値差 | 溶解・膨潤の目安 | 判定 |
|---|---|---|
| 0~2 | 膨潤・軟化しやすい | × |
| 2~5 | 条件により膨潤する | △ |
| 5~8 | 短時間接触では比較的安定 | ○ |
| 8以上 | 溶解・膨潤しにくい | ◎ |
SP値から見た耐溶剤性
| 溶剤 | SP値 MPa1/2 | PMMAとの差目安 | 評価 | 備考 |
|---|---|---|---|---|
| 水 | 47.9 | 約29 | ◎ | SP差は大きい。 |
| エタノール | 26.2 | 約7 | △ | SP差だけなら○域だが、応力割れ実績を考慮し△。 |
| IPA | 23.5 | 約4.5 | △ | 応力条件を確認。 |
| アセトン | 20.0 | 約1 | × | 強い溶剤作用。 |
| MEK | 19.0 | 約0 | × | 不適。 |
| 酢酸エチル | 18.6 | 約0.4 | × | 不適。 |
| トルエン | 18.2 | 約0.8 | × | 膨潤・溶解。 |
| n-ヘキサン | 14.9 | 約4.1 | ○ | 短時間は比較的安定だが長期確認が必要。 |
評価基準:◎ 非常に良好、○ 概ね良好、△ 注意が必要、× 不適。SP差は一次スクリーニングであり、実部品では応力負荷下浸漬試験を優先する。
環境応力割れ(ESC)
PMMA-IMは標準PMMAよりクラック進展抵抗が改善されるが、ESCが消失するわけではない。アルコール、香料、洗浄剤、ケトン、エステル、芳香族溶剤などが残留応力部に接触すると、白化、クレージング、亀裂が生じる場合がある。ねじ締結部、圧入部、インサート周辺、厚肉急変部、鋭角ノッチは特に注意が必要である。
製法

原料
- メタクリル酸メチル(MMA)
- ラジカル開始剤
- アクリル酸エステル系ゴム成分又はコアシェル型耐衝撃改質剤
- 必要に応じてUV吸収剤、光安定剤、離型剤、着色剤、帯電防止剤など
重合・改質
PMMAマトリックスはMMAのラジカル付加重合で形成される。代表式は n CH2=C(CH3)COOCH3 → −[CH2−C(CH3)(COOCH3)]n− である。
耐衝撃改質相は、アクリル酸エステル系ゴムを別途形成してPMMAへ溶融混練する方法、又は多段重合によりコアシェル粒子を形成する方法などがある。透明性を維持するため、改質相の粒子径、屈折率差、界面接着、分散状態が重要である。
ペレット化・コンパウンド
PMMA樹脂と耐衝撃改質剤、必要な添加剤を溶融混練し、ストランド又は水中カット等でペレット化する。過度のせん断・熱履歴は分子量低下、黄変、ゲル、黒点、ゴム相劣化の原因となるため、押出温度と滞留時間を管理する。
品質・成形不良
| 不良 | 材料側要因 | 成形条件側要因 | 主な対策 |
|---|---|---|---|
| シルバーストリーク | 吸湿、揮発分 | 高せん断、高温 | 適正乾燥、温度低減、背圧最適化 |
| クレージング | 溶剤感受性 | 高残留応力、急冷 | 金型温度最適化、アニール、薬品変更 |
| 黄変・黒点 | 熱劣化、異物 | 長時間滞留、局所過熱 | 滞留短縮、パージ、シリンダー清掃 |
| ウェルドライン | 流動性不足 | 低樹脂温度・低金型温度 | ゲート変更、温度・速度最適化 |
| 反り | 物性異方性、残留応力 | 偏肉、不均一冷却 | 均肉化、冷却回路改善、保圧調整 |
注意点・劣化故障モード
| 劣化現象 | 主な原因 | 発生しやすい条件 | 影響 | 予防策 | 推奨確認試験 |
|---|---|---|---|---|---|
| 環境応力割れ | 残留応力+溶剤 | ねじ締結部、接着部、IPA等接触 | 白化、クラック、破断 | 応力低減、アニール、薬品選定 | 応力負荷下ESC試験 |
| 熱酸化劣化 | 高温長時間暴露 | 成形滞留、高温使用 | 黄変、分子量低下 | 滞留短縮、安定剤 | 熱老化試験 |
| 紫外線劣化 | UV暴露 | 屋外長期 | 黄変、光沢低下 | 耐候グレード、UV安定剤 | キセノンアーク試験 |
| ゴム相膨潤 | 有機溶剤 | 燃料、芳香族・エステル系 | 白化、軟化、強度低下 | 実液評価、代替材検討 | 実薬品浸漬試験 |
| クリープ | 長期荷重 | 高温、締結、支持部 | 永久変形 | 応力低減、リブ設計 | クリープ試験 |
推奨確認試験
- 実薬品浸漬試験:実濃度、実温度、24 h、168 h、500 hなど段階評価。
- ESC試験:実部品又は曲げ治具で0.2~0.5%程度の表面ひずみを与え、IPA、洗浄剤、香料等の実液を接触。
- 高温高湿試験:85℃・85%RH等、用途寿命に応じて設定。
- 熱老化試験:使用上限温度付近で強度、黄変、寸法変化を追跡。
- UV促進耐候試験:キセノンアーク又はサンシャインウェザーメーターで色差、透過率、衝撃保持率を評価。
- 実成形試験:ウェルド、残留応力、ゲート部割れ、外観、離型性を確認。
詳細な利用用途
| 分野 | 代表用途 | 選定理由・注意点 |
|---|---|---|
| 自動車 | サイドバイザー、ランプ周辺、メーターカバー、内外装透明部品 | 耐候性と透明性、標準PMMAより高い割れ抵抗。燃料・洗浄剤・高温条件を確認。 |
| 電気・電子 | 表示窓、スイッチ、ボタン、透明筐体 | 意匠性、寸法安定性、絶縁性。UL認証は個別グレード確認。 |
| 家電 | ディスプレイカバー、操作パネル、装飾部品 | 光沢、透明性、表面外観。アルコール清掃によるESCに注意。 |
| 建築 | 透明板、サイン、カバー、採光部材 | 耐候性が高い。風荷重、固定応力、熱膨張を考慮。 |
| 医療 | 透明カバー、非体内接触部品 | 透明性と外観。薬剤、消毒、滅菌方法、ISO 10993等は個別確認。 |
| 食品機械 | 覗き窓、ガード、表示部 | 透明性と耐候性。食品接触規制、洗浄薬品、温水条件を確認。 |
用途別選定
| 用途 | 適性 | 理由・注意点 |
|---|---|---|
| 透明カバー | ◎ | 透明性、耐候性、耐衝撃性のバランスが良い。 |
| レンズ | ○ | 光学級では可能だが、ゴム相によるヘーズや屈折率均一性を確認。 |
| 一般筐体 | ○ | 外観性は良好。高耐熱・高衝撃が必要ならPC等と比較。 |
| ギア・軸受 | × | 摺動・疲労・耐摩耗を主目的とする材料ではない。 |
| チューブ・配管 | △ | 透明用途では可能性があるが、耐薬品・内圧・接合設計を要確認。 |
| 自動車外装 | ○ | 耐候性は良好。飛石衝撃、高温、洗浄剤を確認。 |
| エンジンルーム | × | 一般グレードでは耐熱不足。 |
| 食品機械部品 | ○ | 適合グレードで使用。熱水・洗浄剤を確認。 |
| 屋外部品 | ◎ | PMMA系の優れた耐候性を活かせる。 |
| 塗料・コーティング | × | 本ページは成形用PMMA-IMを対象とし、塗料用アクリル樹脂とは別材料群である。 |
関連材料との比較
| 比較材料 | 特徴 | PMMA-IMとの違い・選定ポイント |
|---|---|---|
| PMMA | 最高水準の透明性、耐候性、表面硬度。 | PMMA-IMは衝撃性が高いが、剛性・硬度・HDT・透明性がやや低下する場合がある。 |
| PC | 非常に高い耐衝撃性と耐熱性、透明性。 | PCは衝撃・耐熱で有利。PMMA-IMは耐候性、表面硬度、光学外観で有利な場合がある。 |
| ABS | 耐衝撃性、成形性、コストバランス。 | ABSは一般に不透明で屋外耐候性が劣る。PMMA-IMは透明性と耐候性で優位。 |
| ASA | 耐候性と耐衝撃性に優れる不透明樹脂。 | ASAは不透明外装に適し、PMMA-IMは透明・半透明用途に適する。 |
| AS樹脂(SAN) | 透明性、剛性、耐薬品性、成形性。 | PMMA-IMは耐候性と衝撃性で優れる一方、SANはコストや一部耐薬品性で有利な場合がある。 |
| PS | 透明性、低コスト、良好な成形性。 | PMMA-IMは耐候性・表面硬度・耐衝撃性で優れるが高価。 |
| PVC | 耐薬品性、難燃性、押出加工性。 | PVCは耐薬品・難燃で有利。PMMA-IMは透明外観と耐候性、低密度側で有利。 |
比較用評価スコア
| 項目 | スコア | 評価理由 |
|---|---|---|
| 引張強度 | 3 | 透明汎用樹脂として標準的。 |
| 剛性 | 3 | 標準PMMAよりやや低下する。 |
| 衝撃強度 | 4 | 標準PMMAより明確に改善。 |
| 耐熱性 | 3 | 一般にPCより低い。 |
| 耐薬品性 | 2 | 有機溶剤とESCに注意。 |
| 耐候性 | 5 | PMMA系の主要な強み。 |
| 寸法安定性 | 4 | 低吸水・低収縮で良好。 |
| 透明性 | 4 | 高いが標準PMMAより低下する場合がある。 |
| 成形加工性 | 4 | 射出・押出に適する。 |
| リサイクル性 | 4 | 熱可塑性で再溶融可能。ただし光学用途は品質管理が厳しい。 |
| 価格優位性 | 2 | 標準PMMAやPSより高価になりやすい。 |
代表的なメーカー
| メーカー | 代表製品・ブランド | 概要 |
|---|---|---|
| 三菱ケミカル株式会社 | ACRYPET™ 高衝撃グレード | IRG304、VRL40、IRK304、IRH50、IRS204、IRD50などの高衝撃PMMAグレードを展開している。 |
| Röhm GmbH | PLEXIGLAS® Resist | 耐衝撃改質PMMAの成形材料・押出材料を展開。透明性、耐候性とクラック抵抗の両立を狙ったグレード群である。 |
価格・供給性
| 相対価格 | 比較的高価格。標準PMMAより高く、PCとの価格差はグレード・市況・数量で変動する。 |
| 国内入手性 | 良好。国内外の主要PMMAメーカー、樹脂商社から調達可能である。 |
| 供給形態 | 射出・押出用ペレット、押出板・シート、成形品など。 |
| 少量購入 | 汎用品より選択肢が狭い場合があり、色・光学仕様では最小ロット確認が必要。 |
環境・リサイクル性
PMMA-IMは熱可塑性材料であり、選別・異物管理ができればマテリアルリサイクルが可能である。ただし耐衝撃改質相を含むため、標準PMMA再生材と混合すると透明性、ヘーズ、衝撃性、熱特性が変化する。ケミカルリサイクルではPMMAのMMAへの解重合技術が検討・実用化されているが、改質剤・添加剤を含むPMMA-IMでは回収プロセス適合性の確認が必要である。バイオベースと生分解性は別概念であり、一般的なPMMA-IMは生分解性プラスチックではない。
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