熱可塑性ポリウレタン

概要

材料名熱可塑性ポリウレタン
英語名Thermoplastic Polyurethane
略号TPU
分類熱可塑性エラストマー、ウレタン系エラストマー、エンジニアリングプラスチック相当材料
化学式一般式:[-O-R-O-CO-NH-R’-NH-CO-]n
CAS No9018-04-6、9009-54-5など。TPUは組成によりCAS Noが異なる。

熱可塑性ポリウレタンは、ウレタン結合を主鎖に持つ熱可塑性エラストマーである。一般にTPUと呼ばれ、ゴムのような弾性とプラスチックのような成形加工性を併せ持つ材料である。

TPUは、軟質セグメントと硬質セグメントから構成されるブロック共重合体である。軟質セグメントにより柔軟性、弾性、低温特性が付与され、硬質セグメントにより強度、耐摩耗性、耐油性、耐熱性が付与される。

射出成形、押出成形、カレンダー成形、ブロー成形、フィルム成形などに対応し、靴底、ホース、チューブ、ケーブル被覆、シート、フィルム、ローラー、パッキン、医療部材、スポーツ用品などに使用される。

特徴

  • ゴム状弾性と熱可塑性樹脂の成形加工性を併せ持つ。
  • 耐摩耗性、耐引裂性、反発弾性に優れる。
  • ポリエステル系TPUは耐油性、機械強度、耐摩耗性に優れる。
  • ポリエーテル系TPUは耐加水分解性、低温柔軟性、耐菌性に優れる。
  • ポリカプロラクトン系TPUは耐摩耗性、耐油性、低温特性のバランスが良い。
  • 軟質から硬質まで硬度範囲が広く、設計自由度が高い。
  • 一般的なゴムと異なり、加硫工程を必要としない。
  • リサイクル性が比較的高く、再溶融加工が可能である。
  • 強酸、強アルカリ、ケトン系溶剤、芳香族系溶剤、強極性溶剤には注意が必要である。

構造式

熱可塑性ポリウレタンは、ジイソシアネート、ポリオール、鎖延長剤から合成される。代表的な基本構造は以下である。

一般構造:

[-O-R-O-CO-NH-R’-NH-CO-]n

基本反応式:

HO-R-OH + OCN-R’-NCO → [-O-R-O-CO-NH-R’-NH-CO-]n

ここで、Rはポリエーテル、ポリエステル、ポリカプロラクトンなどの軟質セグメントを示し、R’はMDI、TDI、HDIなどのジイソシアネート由来構造を示す。

種類

種類の名称主成分・構造長所短所主な用途
ポリエステル系TPUポリエステルポリオール系耐油性、耐摩耗性、機械強度に優れる。高温多湿環境では加水分解に注意が必要である。ホース、ベルト、車輪、靴底、工業部品
ポリエーテル系TPUポリエーテルポリオール系耐加水分解性、低温柔軟性、耐菌性に優れる。ポリエステル系に比べて耐油性、機械強度がやや低い場合がある。医療部材、チューブ、ケーブル被覆、水回り部材
ポリカプロラクトン系TPUポリカプロラクトンポリオール系耐摩耗性、耐油性、低温特性のバランスが良い。グレードが限定され、コストが高くなる場合がある。高耐久ホース、シール材、工業用ローラー
芳香族TPUMDI、TDI系機械強度、耐摩耗性、反発弾性に優れる。紫外線で黄変しやすい。一般工業部品、靴材、ホース、フィルム
脂肪族TPUHDI、H12MDI、IPDI系耐候性、透明性、黄変抑制に優れる。芳香族TPUより高価である。透明フィルム、塗装保護フィルム、屋外部材
長所
  • 耐摩耗性が非常に高い。
  • 引張強さ、引裂強さ、伸びに優れる。
  • 広い硬度範囲を設計できる。
  • 射出成形、押出成形、フィルム成形が可能である。
  • 耐油性、耐グリース性が比較的良好である。
短所
  • 高温長期使用では軟化、永久ひずみ、物性低下が起こりやすい。
  • ポリエステル系は加水分解に注意が必要である。
  • ケトン系、芳香族系、エステル系、強極性溶剤で膨潤・軟化しやすい。
  • 芳香族TPUは紫外線により黄変しやすい。
成形加工
加工方法適正概要
射出成形靴底、キャスター、グリップ、機械部品などに使用される。
押出成形チューブ、ホース、シート、ケーブル被覆に適する。
フィルム成形透明フィルム、ラミネートフィルム、保護フィルムに使用される。
ブロー成形柔軟中空部品に使用されるが、グレード選定が必要である。
カレンダー成形シート、人工皮革、ラミネート材に使用される。
3DプリントTPUフィラメントとして柔軟造形に使用される。

代表的な物性値又は機械的性質

項目単位代表値・範囲備考
密度g/cm³1.10 ~ 1.25ポリエーテル系はやや低く、ポリエステル系はやや高い傾向である。
硬さShore A 60 ~ Shore D 75軟質から硬質まで幅広い。
引張強さMPa20 ~ 70高硬度グレードほど高くなる傾向である。
破断伸び%300 ~ 700ゴム状弾性を示す。
引裂強さkN/m40 ~ 150耐引裂性に優れる。
曲げ弾性率MPa10 ~ 1,000硬度とセグメント構造により大きく変化する。
ガラス転移温度-50 ~ -20軟質セグメントに依存する。
融点・軟化温度150 ~ 220硬質セグメント量により変動する。
連続使用温度-30 ~ 80耐熱グレードでは100℃前後まで使用される場合がある。
吸水率%0.5 ~ 2.0ポリエーテル系は加水分解に比較的強い。

耐薬品性

薬品・溶剤耐性備考
ポリエーテル系は良好である。ポリエステル系は高温多湿で加水分解に注意が必要である。
鉱物油耐油性は比較的良好である。ポリエステル系が有利である。
グリース一般的な潤滑環境に使用される。
希酸濃度、温度、接触時間により劣化する。
強酸×ウレタン結合の分解、膨潤、物性低下が起こりやすい。
希アルカリ短時間では使用可能な場合があるが、長期接触は避ける。
強アルカリ×加水分解、軟化、強度低下が起こりやすい。
アルコール類○~△短時間接触は比較的良好であるが、長期接触では膨潤に注意が必要である。
ケトン類×アセトン、MEKでは膨潤、軟化、溶解が起こりやすい。
芳香族炭化水素×トルエン、キシレンでは膨潤、軟化に注意が必要である。
脂肪族炭化水素ヘキサンなどには比較的安定である。

更に詳しくはプラスチックの耐薬品性一覧表を参照

SP値(溶解度パラメータ)

熱可塑性ポリウレタンのSP値は、ポリエステル系、ポリエーテル系、ポリカプロラクトン系、硬度、結晶性、添加剤により変動する。溶解性はSP値だけでなく、温度、応力、薬品濃度、接触時間で判断する必要がある。

TPUの代表的なSP値は約22.0 MPa1/2前後である。SP値が近い溶剤ほど膨潤、軟化、溶解が起こりやすい。ただしTPUは水素結合性、結晶性、硬質セグメント量の影響を強く受けるため、SP値のみで最終判断はできない。

項目SP値(δ)
MPa1/2
備考
TPU 標準グレード20.5 ~ 23.5ウレタン結合を含むため極性が高く、ケトン系、エステル系、芳香族系溶剤で膨潤しやすい。
ポリエステル系TPU21.0 ~ 23.5耐油性、耐摩耗性に優れるが、加水分解に注意が必要である。
ポリエーテル系TPU20.0 ~ 22.5耐加水分解性に優れ、低温柔軟性が良い。
ポリカプロラクトン系TPU20.5 ~ 23.0耐油性、耐摩耗性、低温特性のバランスが良い。
TPU GF強化グレード20.5 ~ 23.5ガラス繊維添加により剛性、寸法安定性が向上する。樹脂相の耐溶剤性は標準TPUに近い。
TPU 難燃グレード20.5 ~ 24.0難燃剤により極性、抽出性が変化する場合がある。
溶解性の目安
Δδ挙動
0〜2溶解しやすい
2〜5膨潤・軟化
5以上溶解しにくい
SP値から見た耐溶剤性
薬品・溶剤SP値(δ)
MPa1/2
SP値差評価備考
47.925.9SP値差は大きいが、ポリエステル系は高温多湿で加水分解に注意が必要である。
メタノール29.77.7短時間なら使用可能な場合があるが、長期接触では膨潤に注意が必要である。
エタノール26.04.0消毒用途などでは硬化、膨潤、白化を確認する必要がある。
IPA(イソプロパノール)23.51.5SP値が近く、長時間接触では膨潤する場合がある。
アセトン20.31.7×膨潤、軟化、溶解が起こりやすい。
MEK19.03.0×TPUを強く侵すため、洗浄溶剤としては不適である。
酢酸エチル18.63.4×エステル系溶剤であり、膨潤、軟化に注意が必要である。
THF19.42.6×強く膨潤・溶解する可能性が高い。
DMF24.82.8×強極性溶剤であり、TPUを溶解・膨潤させやすい。
NMP23.11.1×SP値が近く、高浸透性で危険である。
トルエン18.23.8×芳香族溶剤であり、膨潤、軟化を生じやすい。
キシレン18.04.0×長期接触では膨潤、物性低下が起こりやすい。
ヘキサン14.97.1脂肪族炭化水素には比較的安定である。
鉱物油15 ~ 175 ~ 7耐油性は比較的良好である。ポリエステル系TPUが有利である。

※SP値差は、TPUの代表中央値22.0 MPa1/2を基準として算出している。

◎:非常に良好  ○:概ね良好  △:注意が必要  ×:不適

特にアセトン、MEK、THF、DMF、NMP、トルエン、キシレン、酢酸エチルなどはTPUを膨潤・軟化・溶解させやすいため注意が必要である。洗浄、接着、塗装、印刷、ラミネート用途では、実使用温度、接触時間、応力状態で事前確認する必要がある。

製法

熱可塑性ポリウレタンは、主にジイソシアネート、長鎖ポリオール、短鎖ジオール系鎖延長剤を反応させて製造される。代表的には、MDIなどのジイソシアネートとポリエステルポリオール又はポリエーテルポリオールを用いる。

基本反応式:

n HO-R-OH + n OCN-R’-NCO → [-O-R-O-CO-NH-R’-NH-CO-]n

ポリオールには、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカプロラクトンポリオールなどが使用される。鎖延長剤には、1,4-ブタンジオール、エチレングリコールなどが使用される。重合法には、ワンショット法、プレポリマー法、反応押出法などがある。

詳細な利用用途

  • 靴底、スポーツシューズ、スキーブーツ、サンダル
  • ホース、チューブ、エアチューブ、油圧ホース外装
  • ケーブル被覆、ロボットケーブル、センサーケーブル
  • キャスター、ローラー、車輪、ベルト
  • パッキン、ガスケット、シール材、防振部材
  • フィルム、シート、ラミネート材、保護フィルム
  • 人工皮革、合成皮革、衣料用フィルム
  • 医療用チューブ、カテーテル、医療機器部材
  • スマートフォンケース、グリップ、保護カバー
  • 3Dプリンタ用柔軟フィラメント

関連材料との比較

比較材料特徴TPUとの違い
ポリウレタン熱硬化性、熱可塑性、発泡体などを含む広い材料群である。TPUはポリウレタンのうち、加硫せずに熱可塑成形できるエラストマーである。
ポリ塩化ビニル柔軟配合が可能で、汎用性が高い。TPUはPVCより耐摩耗性、反発弾性に優れるが、コストは高い。
熱可塑性エラストマー熱可塑性を持つゴム状材料の総称である。TPUはTPEの一種であり、耐摩耗性、機械強度に優れる。
天然ゴム反発弾性、伸びに優れる加硫ゴムである。TPUは加硫不要で熱可塑加工でき、耐摩耗性、耐油性で有利である。
シリコーンゴム耐熱性、耐寒性、電気特性に優れる。TPUは耐摩耗性、機械強度で有利であるが、耐熱性はシリコーンゴムが優れる。
ポリアミド強度、耐摩耗性、耐油性に優れるエンプラである。TPUはPAより柔軟で弾性が高く、ゴム状部品に適する。

代表的なメーカー

メーカー代表製品・ブランド特徴
BASFElastollanポリエステル系、ポリエーテル系など幅広いTPUグレードを展開する。
CovestroDesmopan、Texin高機能TPU、フィルム、ケーブル、工業部品向けグレードを展開する。
LubrizolEstane医療、工業、フィルム、接着剤用途のTPUを展開する。
HuntsmanIROGRAN、AVALON押出、射出、フィルム用途のTPUを展開する。
クラレクラミロン国内でTPU関連材料を展開する。
DICパンデックス熱可塑性ポリウレタンエラストマーを展開する。
三井化学FORTIMO、TAKENATE関連材料ウレタン原料、特殊イソシアネート関連材料を展開する。

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