概要
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 材料名 | 熱可塑性ポリウレタン |
| 略記号 | TPU |
| IUPAC | 単一のIUPAC名では表せない。長鎖ポリオール、ジイソシアネート及び低分子ジオール等から得られるセグメント化ポリウレタンである。 |
| 英語名 | Thermoplastic Polyurethane / Thermoplastic Polyurethane Elastomer |
| 日本語名 | 熱可塑性ポリウレタン、熱可塑性ポリウレタンエラストマー、ウレタン系熱可塑性エラストマー |
| 分類 | 熱可塑性エラストマー、ポリウレタン系材料 |
| プラスチック分類 | 熱可塑性プラスチック。用途によってはエンジニアリングプラスチック相当材料として扱われる。 |
| 代表構造 | 軟質セグメントと硬質セグメントからなるブロック共重合体。代表結合は —NH—CO—O— のウレタン結合である。 |
| CAS No. | 9009-54-5、9018-04-6等が用いられる場合があるが、組成により異なる。 |
| 構造・主成分 | ポリエーテル系、ポリエステル系又はポリカーボネート系の長鎖ポリオール、MDI等のジイソシアネート、1,4-ブタンジオール等の鎖延長剤。 |
| 主な用途 | ホース、チューブ、ケーブル被覆、フィルム、シート、靴部品、キャスター、ローラー、ベルト、シール、スポーツ用品、自動車部品、医療部材、3Dプリント材料。 |
熱可塑性ポリウレタンは、ウレタン結合を主鎖に持つ熱可塑性エラストマーである。一般にTPUと呼ばれ、ゴム状弾性、耐摩耗性、引裂強さ及び耐衝撃性と、熱可塑性プラスチックとしての溶融成形性を併せ持つ。
分子構造は、長鎖ポリオール由来の軟質セグメントと、ジイソシアネート及び鎖延長剤由来の硬質セグメントからなる。軟質セグメントは柔軟性、低温特性及び伸びを、硬質セグメントは強度、硬度、耐摩耗性及び物理架橋点を与える。原料系、硬質セグメント比率、分子量、結晶性及び添加剤により、Shore Aの軟質領域からShore Dの硬質領域まで広い特性設計が可能である。
用途はホース、チューブ、フィルム、ケーブル被覆、靴部品、キャスター、ローラー、ベルト、シール、スポーツ用品、自動車部品及び医療部材等である。実使用では、ポリエーテル系、ポリエステル系、ポリカーボネート系、芳香族系又は脂肪族系の別、硬度、温度、湿度、薬品、荷重、応力、接触時間及び規制適合性を確認する必要がある。
特徴
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 長所 | 耐摩耗性、引裂強さ、弾性、耐衝撃性、耐油性、屈曲疲労性に優れるグレードが多い。硬度範囲が広く、透明グレードや着色グレードも得られる。 |
| 短所 | 吸湿しやすく、乾燥不足では加水分解、発泡、銀条、強度低下が生じる。高温水、蒸気、強酸、強アルカリ、ケトン、エステル、強極性溶剤に注意が必要である。 |
| 外観 | 自然色は透明から半透明、乳白色まで幅がある。芳香族系は紫外線で黄変しやすく、脂肪族系は耐黄変性に優れる。 |
| 耐熱性 | 一般的な連続使用温度は約60~100℃が目安である。高温では軟化、圧縮永久ひずみ増大、クリープ、熱酸化劣化が進行する。 |
| 耐薬品性 | 油、グリース、脂肪族炭化水素に比較的良好なグレードがある。水系耐久性はポリエーテル系又はポリカーボネート系が有利な場合がある。 |
| 加工性 | 射出、押出、ブロー、フィルム、カレンダー、発泡、3Dプリント等に対応する。成形前乾燥、過熱防止、滞留時間管理が重要である。 |
| 分類上の注意 | TPUは化学組成、硬度、セグメント比率で物性幅が大きい。熱硬化性ポリウレタン、注型ウレタン、ウレタンゴム、ポリウレタンフォームとは加工法と架橋構造が異なる。 |
構造式
TPUは単一の繰返し構造だけで表せる均一ポリマーではなく、軟質セグメントと硬質セグメントが交互に連なるセグメント化ブロック共重合体である。代表的なウレタン結合は —NH—CO—O— である。
代表的な構成原料は、両末端にヒドロキシ基を持つ長鎖ポリオール、両末端にイソシアネート基を持つジイソシアネート及び低分子ジオール等の鎖延長剤である。ポリエーテルポリオールを用いると耐加水分解性と低温柔軟性、ポリエステルポリオールを用いると耐油性と機械強度、ポリカーボネートポリオールを用いると耐熱性、耐加水分解性及び耐酸化性が向上する傾向がある。
芳香族ジイソシアネート系は高強度と耐摩耗性に優れる一方、紫外線により黄変しやすい。脂肪族又は脂環式ジイソシアネート系は耐黄変性と透明性に優れるが、価格及び加工条件が異なる。
種類・代表グレード
| 種類・代表グレード | 主成分又は特徴 | 長所 | 短所 | 主な用途 |
|---|---|---|---|---|
| ポリエステル系TPU | ポリエステルポリオール | 耐摩耗性、耐油性、機械強度 | 高温高湿、熱水、微生物劣化、加水分解に注意 | ベルト、ローラー、靴部品、機械部品 |
| ポリエーテル系TPU | ポリエーテルポリオール | 耐加水分解性、低温柔軟性、耐微生物性 | 耐油性、耐熱性がポリエステル系より低い場合がある | ホース、チューブ、ケーブル、医療部材 |
| ポリカーボネート系TPU | ポリカーボネートポリオール | 耐熱性、耐加水分解性、耐酸化性、耐久性 | 比較的高価格で、加工窓が狭いグレードがある | 医療、産業部材、耐久フィルム |
| 芳香族系TPU | MDI等の芳香族ジイソシアネート | 高強度、耐摩耗性、価格性能バランス | 紫外線で黄変しやすい | 一般工業部品、靴、ホース、ベルト |
| 脂肪族系TPU | HDI、H12MDI等 | 耐黄変性、透明性、耐候性 | 高価格で、グレードにより機械強度差がある | 保護フィルム、光学・外観部品、自動車内装 |
| 難燃グレード | リン系等の難燃剤、難燃設計 | 電線・電子用途へ適用可能 | 機械特性、透明性、ブリード、規格厚さに注意 | ケーブル被覆、電気部品 |
| GF強化・無機充填グレード | GF又は無機フィラー | 剛性、寸法安定性、耐熱変形性 | 伸び、柔軟性、表面外観が低下しやすい | 構造部品、筐体、複合成形 |
| 摺動・低摩擦グレード | PTFE、シリコーン、ワックス等の改質 | 摩擦低減、耐摩耗性向上 | 接着性、塗装性、溶着性が低下する場合がある | ギア、ローラー、摺動部品 |
| 医療・食品接触用途向け | 抽出物、添加剤、品質管理を用途別設計 | 規制適合グレードが存在する | 滅菌法、接触条件、変更管理の確認が必要 | チューブ、カテーテル部材、食品機械部品 |
| 発泡グレード | 物理発泡又は化学発泡対応 | 軽量、衝撃吸収、反発性 | セル均一性、寸法、圧縮永久ひずみに注意 | 靴ミッドソール、緩衝部材 |
成形加工
| 加工方法 | 適性 | 理由・主な注意点 |
|---|---|---|
| 射出成形 | ◎ | 最も一般的である。乾燥、背圧、せん断発熱、離型、サイクルを管理する。 |
| 押出成形 | ◎ | ホース、チューブ、異形、電線被覆に適する。溶融温度とダイスウェルを管理する。 |
| ブロー成形 | ○ | ブロー対応高溶融強度グレードを選定する。 |
| インフレーション成形 | ○ | フィルムグレードで可能。ブロッキングと厚み均一性に注意する。 |
| Tダイフィルム成形 | ◎ | 透明フィルム、保護フィルム、積層用途に適する。 |
| 真空成形・圧空成形 | ○ | シートグレードで可能。加熱均一性と戻り弾性を考慮する。 |
| 圧縮成形 | △ | 可能であるが、通常は射出又は押出が優先される。 |
| 回転成形 | △ | 専用粉末グレードと条件設計が必要である。 |
| 発泡成形 | ○ | 専用グレードと発泡プロセスが必要である。 |
| 3Dプリント | ◎ | FDM用フィラメント、SLS用粉末等がある。吸湿と造形温度を管理する。 |
| 切削加工 | △ | 柔軟材では変形、発熱、バリが出やすい。硬質グレードは比較的加工しやすい。 |
| 溶着 | ◎ | 熱板、超音波、振動、高周波、熱風等が可能。グレード・形状依存である。 |
| 接着 | ○ | 極性があり比較的接着しやすいが、離型剤、添加剤、表面汚染に注意する。 |
| 塗装・印刷 | ○ | 表面処理や専用インキ・プライマーで対応する。 |
| めっき | △ | 通常用途では一般的でなく、表面改質と工程設計が必要である。 |
| レーザーマーキング | ○ | 着色剤又はレーザーマーキング添加剤を用いるグレードがある。 |
| インサート・二次成形 | ◎ | 硬質樹脂、金属、繊維との複合化に用いられる。界面接着と熱収縮差を確認する。 |
代表的な成形条件
以下は材料群としての一般的な目安である。実際の条件はメーカー、グレード、硬度、成形機、金型、製品形状及び要求外観により異なるため、個別の技術資料を優先する。
| 成形条件 | 代表値又は範囲 | 単位 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 予備乾燥 | 必要 | — | 多くのTPUで必須。開封後の吸湿にも注意する。 |
| 乾燥温度 | 80~110 | ℃ | 低硬度、透明、難燃等で条件が異なる。メーカー推奨を優先する。 |
| 乾燥時間 | 2~6 | h | 除湿乾燥機を用い、露点管理することが望ましい。 |
| 許容含水率 | 0.02以下を目標 | % | 代表的な管理目安。グレードにより0.03~0.05%以下の場合もある。 |
| シリンダー温度・供給部 | 170~200 | ℃ | 硬度、流動性、樹脂系により調整する。 |
| シリンダー温度・圧縮部 | 180~220 | ℃ | せん断発熱を含めて樹脂温度を管理する。 |
| シリンダー温度・計量部 | 190~230 | ℃ | 高温滞留で黄変、分解、粘度低下が起こり得る。 |
| ノズル温度 | 190~225 | ℃ | 糸引き、冷え固まり、熱劣化のバランスを取る。 |
| 金型温度 | 20~60 | ℃ | 外観、結晶化、収縮、離型性により調整する。 |
| 射出圧力 | 50~150 | MPa | 製品形状、肉厚、流動長、硬度に依存する。 |
| 背圧 | 0.3~1.5 | MPa | 過大な背圧はせん断発熱と分解を招く。 |
| スクリュー回転数 | 20~80 | rpm | 低~中速を基本とし、過熱を避ける。 |
| 成形収縮率・流動方向 | 0.5~2.0 | % | 軟質、結晶性、肉厚、保圧により大きく変動する。 |
| 成形収縮率・流動直角方向 | 0.7~2.2 | % | 異方性と後収縮を含めて実金型で確認する。 |
| 推奨肉厚 | 0.8~4.0 | mm | 薄肉では充填性、厚肉ではヒケ・ボイド・冷却時間を確認する。 |
| アニール | 条件により実施 | — | 寸法安定化や結晶化促進に用いる。温度・時間はグレード推奨に従う。 |
TPUは吸湿した状態で溶融すると、イソシアネート由来結合及びポリエステル部の加水分解、分子量低下、発泡、銀条、粘度低下及び機械特性低下を生じる場合がある。開封後の保管、除湿乾燥機の露点、乾燥後の搬送及びホッパー内再吸湿まで管理する必要がある。
代表的な物性値又は機械的性質
下表は非強化・無充填・標準TPUの公開情報を基に整理した代表範囲及び比較用代表値である。TPUは硬度範囲と化学組成が広いため、単一の代表値で全グレードを表すことはできない。比較用代表値は材料群の概略比較に用い、設計値又は保証値として使用しない。
| 項目 | 単位 | 代表範囲 | 比較用代表値 | 試験規格 | 材料状態・条件 | 備考 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 密度 | g/cm³ | 1.10~1.25 | 1.18 | ISO 1183相当 | 23℃、非強化標準グレード | ポリエーテル系、ポリエステル系、硬度で変動 |
| 比重 | 無次元 | 1.10~1.25 | 1.18 | 代表値 | 23℃ | 密度とほぼ同値 |
| 硬度 | Shore A / D | 70A~80D | 90A | ISO 48-4又はASTM D2240相当 | 23℃ | 軟質から硬質まで広い |
| 引張強さ・破断 | MPa | 25~60 | 40 | ISO 527又はISO 37相当 | 23℃、非強化 | 硬度と配合により変動 |
| 引張弾性率 | GPa | 0.02~1.5 | 0.10 | ISO 527相当 | 23℃、代表的軟質~硬質 | エラストマーではひずみ依存性が大きい |
| 引張破断伸び | % | 300~700 | 500 | ISO 527又はISO 37相当 | 23℃ | 高硬度・強化材で低下 |
| 100%モジュラス | MPa | 4~15 | 8 | ISO 37相当 | 23℃ | 軟質TPUの設計指標として有用 |
| 300%モジュラス | MPa | 8~30 | 15 | ISO 37相当 | 23℃ | 硬度、結晶化、温度依存 |
| 引裂強さ | kN/m | 50~150 | 90 | ISO 34-1相当 | 23℃ | 形状・ノッチで大きく変動 |
| 曲げ弾性率 | GPa | 0.03~1.8 | 0.15 | ISO 178相当 | 23℃ | 低硬度では測定・比較が難しい |
| アイゾット衝撃強さ・ノッチ付き | kJ/m² | 破壊せず~100超 | データなし | ISO 180相当 | 23℃ | NBは数値化しない |
| 圧縮永久ひずみ | % | 20~60 | 35 | ISO 815相当 | 23℃又は70℃、時間依存 | 温度・硬度・圧縮率で大きく変動 |
| 動摩擦係数 | 無次元 | 0.3~0.8 | 0.5 | 代表値、規格不明 | 乾燥、対鋼 | 相手材・荷重・速度依存 |
| ガラス転移温度 | ℃ | -60~-20 | -40 | DSC又はDMA | 軟質セグメント由来 | 組成で変動 |
| 融解・軟化域 | ℃ | 140~230 | 180 | DSC、代表範囲 | 硬質セグメント由来 | 単一融点ではなく幅を持つ場合が多い |
| 荷重たわみ温度・0.45 MPa | ℃ | 40~90 | 60 | ISO 75相当 | 硬質グレード中心 | 軟質グレードでは適用困難 |
| 連続使用温度 | ℃ | 60~100 | 80 | 一般的目安 | 無負荷~軽荷重 | 寿命、荷重、環境で評価が異なる |
| 低温使用限界 | ℃ | -50~-20 | -35 | 一般的目安 | 無負荷~動的用途 | ポリエーテル系が有利な場合がある |
| 熱伝導率 | W/(m・K) | 0.16~0.25 | 0.20 | 代表値 | 23℃ | 充填材で変動 |
| 線膨張係数 | 10⁻⁵/K | 10~20 | 15 | 代表値 | 流動方向、非強化 | 温度・配向依存 |
| 吸水率・24時間 | % | 0.2~1.5 | 0.5 | ISO 62相当 | 23℃水、24h | ポリエーテル系、硬度、厚みで変動 |
| 体積抵抗率 | Ω・cm | 1×10¹⁰~1×10¹⁴ | 1×10¹² | IEC 60093相当 | 乾燥、23℃ | 吸湿で低下し得る |
| 絶縁破壊強さ | kV/mm | 15~30 | 20 | IEC 60243相当 | 厚さ依存 | 難燃・導電グレードは別評価 |
| 比誘電率・1 MHz | 無次元 | 4~8 | 6 | IEC 60250相当 | 乾燥、23℃ | 吸湿で増加し得る |
| 誘電正接・1 MHz | 無次元 | 0.02~0.10 | 0.05 | IEC 60250相当 | 乾燥、23℃ | 極性材料で比較的大きい |
| UL 94燃焼性 | 等級 | HB~V-0 | データなし | UL 94 | 厚さ・グレード依存 | 難燃グレードのみV-0等が存在 |
| 限界酸素指数 | % | 20~28 | 23 | ISO 4589相当 | 代表範囲 | 難燃剤で向上 |
| 屈折率 | 無次元 | 1.49~1.57 | 1.53 | 代表値 | 透明グレード | 組成・波長依存 |
| 光線透過率 | % | 70~92 | 85 | ASTM D1003相当 | 透明グレード、厚さ依存 | 芳香族系は黄変に注意 |
強化・改質グレードの代表傾向
| グレード区分 | 強化材・含有率 | 密度 g/cm³ | 引張強さ MPa | 曲げ弾性率 GPa | 破断伸び % | 備考 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 非強化・標準TPU | なし | 1.10~1.25 | 25~60 | 0.02~1.5 | 300~700 | 柔軟性、耐摩耗性、弾性を重視 |
| GF強化TPU | GF 10~30 wt%程度 | 1.25~1.50 | 50~100 | 2~8 | 5~100 | 剛性、寸法安定性、HDT向上。一般化困難でグレード資料確認が必要 |
| 無機充填TPU | 無機フィラー 10~40 wt%程度 | 1.25~1.60 | 20~60 | 0.2~3 | 20~300 | 収縮、硬度、寸法安定性を調整。柔軟性低下に注意 |
| 導電TPU | カーボン系等 | 1.15~1.35 | 15~50 | 0.05~1.5 | 100~500 | 表面抵抗・体積抵抗は配合依存。標準グレードと別管理 |
比較用評価スコア
| 評価項目 | スコア | 評価理由 |
|---|---|---|
| 引張強度 | 5 | 高伸びを維持しながら高い破断強さを得やすい。 |
| 剛性 | 2 | 標準TPUは柔軟である。高硬度・強化グレードでは向上する。 |
| 衝撃強度 | 5 | 低温を含め高い靭性を示すグレードが多い。 |
| 耐熱性 | 3 | 一般的な連続使用は60~100℃程度であり、スーパーエンプラには及ばない。 |
| 低温特性 | 4 | ポリエーテル系を中心に低温柔軟性に優れる。 |
| 耐薬品性 | 3 | 油・脂肪族炭化水素には比較的良好だが、強溶剤、熱水、強酸・強アルカリに弱い。 |
| 耐候性 | 3 | 芳香族系は黄変しやすい。脂肪族系・耐候グレードでは向上する。 |
| 耐加水分解性 | 3 | ポリエーテル系・PC系は比較的良好。ポリエステル系は高温高湿に注意する。 |
| 寸法安定性 | 2 | 軟質、吸湿、クリープ、後収縮の影響を受けやすい。 |
| 低吸水性 | 3 | PAより低い場合が多いが、吸湿管理は重要である。 |
| 摺動性 | 3 | 耐摩耗性は高いが摩擦係数は必ずしも低くない。 |
| 耐摩耗性 | 5 | TPUを代表する長所である。 |
| 電気絶縁性 | 3 | 乾燥状態では絶縁材料として使用できるが、吸湿と誘電損失に注意する。 |
| 難燃性 | 2 | 標準材はHB程度が多く、V-0等は難燃グレードに限定される。 |
| 透明性 | 4 | 透明グレードが存在し、脂肪族系では耐黄変性も得られる。 |
| 成形加工性 | 4 | 射出・押出・フィルム等に対応するが、乾燥と熱履歴管理が必要である。 |
| 接着性 | 4 | 極性があり多くの基材へ接着しやすいが、添加剤と表面状態に依存する。 |
| リサイクル性 | 3 | 熱可塑性で再溶融可能だが、加水分解・熱履歴・異材混入で物性が低下する。 |
| 価格優位性 | 2 | 汎用TPEや軟質PVCより高価な場合が多い。 |
スコアは5が非常に優れる、4が優れる、3が標準的、2がやや劣る、1が劣る、0が評価不能又はデータなしを示す。材料群全体の一般的傾向であり、特定グレードの最高性能を示すものではない。
耐薬品性
TPUの耐薬品性は、ポリオール種、硬度、結晶性、添加剤、温度、濃度、接触時間、応力及び成形履歴により大きく変わる。下表は一般的な目安であり、実部品では質量変化、体積変化、硬度、引張強さ、伸び、外観及び応力下の亀裂を確認する必要がある。
| 薬品名 | 濃度 | 温度 | 接触時間・方法 | 応力 | 評価 | 主な劣化形態 | 備考 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 水 | 100% | 23℃ | 168 h浸漬 | 無応力 | ○ | 吸水、軟化、寸法変化 | ポリエーテル系・PC系が比較的有利 |
| 温水 | 100% | 60~80℃ | 168 h浸漬 | 無応力 | △ | 加水分解、強度低下 | ポリエステル系は特に確認が必要 |
| 水蒸気 | 飽和 | 100℃以上 | 反復 | 無応力 | × | 急速な加水分解、軟化 | 蒸気滅菌対応は医療グレードでも個別確認 |
| 塩酸 | 1~10% | 23℃ | 24~168 h | 無応力 | ○ | 膨潤、加水分解 | 低濃度・常温では比較的使用可能な場合がある |
| 硫酸 | 1~10% | 23℃ | 24~168 h | 無応力 | △ | 加水分解、変色 | 濃度・温度上昇で悪化 |
| 酢酸 | 5~10% | 23℃ | 24~168 h | 無応力 | △ | 膨潤、加水分解 | 有機酸は溶解度パラメータと反応性を併せて評価 |
| 水酸化ナトリウム | 1~5% | 23℃ | 24~168 h | 無応力 | △ | 加水分解、表面劣化 | 高濃度・高温では不適 |
| 水酸化ナトリウム | 10%以上 | 40℃以上 | 長時間 | 無応力 | × | 急速な加水分解 | ポリエステル系は特に不利 |
| エタノール | 99.5% | 23℃ | 24~168 h | 無応力 | ○ | 軽微な膨潤、抽出 | 長時間・応力下は確認 |
| IPA | 99% | 23℃ | 24~168 h | 無応力 | ○ | 軽微な膨潤 | グレード差あり |
| グリセリン | 99% | 23℃ | 168 h | 無応力 | ○ | 吸湿、軽微な軟化 | 高温では確認 |
| MMB | 100% | 23℃ | 24~168 h | 無応力 | △ | 膨潤、軟化 | グリコールエーテル系は個別試験が必要 |
| アセトン | 100% | 23℃ | 短時間~24 h | 無応力 | × | 著しい膨潤、軟化、溶解 | 不適 |
| MEK | 100% | 23℃ | 短時間~24 h | 無応力 | × | 著しい膨潤、軟化 | 不適 |
| 酢酸エチル | 100% | 23℃ | 短時間~24 h | 無応力 | × | 膨潤、溶解 | 不適 |
| THF | 100% | 23℃ | 短時間 | 無応力 | × | 溶解又は著しい膨潤 | 不適 |
| DMF | 100% | 23℃ | 短時間 | 無応力 | × | 溶解 | TPU溶液調製に用いられる代表的強溶剤 |
| トルエン | 100% | 23℃ | 24~168 h | 無応力 | △ | 膨潤、軟化 | 芳香族炭化水素に注意 |
| キシレン | 100% | 23℃ | 24~168 h | 無応力 | △ | 膨潤 | 硬度・ポリオール種に依存 |
| n-ヘキサン | 100% | 23℃ | 168 h | 無応力 | ○ | 軽微な膨潤 | 脂肪族炭化水素には比較的良好 |
| ミネラルオイル | 100% | 23~80℃ | 168~1000 h | 無応力 | ○ | 膨潤、硬度変化 | 高温・長時間は実油で確認 |
| ガソリン | 市販燃料 | 23℃ | 168 h | 無応力 | △ | 膨潤、抽出 | 芳香族分、酸素含有成分で変動 |
| 軽油 | 市販燃料 | 23℃ | 168 h | 無応力 | ○ | 膨潤 | バイオディーゼル混合で挙動が変わる |
| ブレーキ液 | グリコール系 | 23~100℃ | 168 h | 無応力 | △ | 膨潤、軟化、加水分解 | 専用耐ブレーキ液グレードを確認 |
| エチレングリコール水溶液 | 50% | 80℃ | 168~1000 h | 無応力 | △ | 吸水、加水分解 | 冷却液添加剤を含む実液評価が必要 |
| 次亜塩素酸ナトリウム | 100~1000 ppm | 23℃ | 反復接触 | 無応力 | △ | 酸化、変色、表面劣化 | 濃度、pH、温度、残留時間を確認 |
| 過酸化水素 | 3% | 23℃ | 24~168 h | 無応力 | △ | 酸化、黄変、強度低下 | 高濃度・高温で悪化 |
| 塩水 | 3.5% NaCl | 23℃ | 168~1000 h | 無応力 | ○ | 吸水、金属界面腐食 | TPU自体は比較的安定だが複合部材を評価 |
| 海水 | 実海水相当 | 23℃ | 長時間 | 無応力 | ○ | 吸水、生物付着 | ポリエーテル系が有利な場合がある |
| 食品油 | 植物油 | 23~80℃ | 168 h | 無応力 | ○ | 膨潤、抽出 | 食品接触適合は別途確認 |
| 界面活性剤水溶液 | 0.1~3% | 23~60℃ | 反復 | 無応力 | △ | 抽出、加水分解促進、応力割れ | 洗剤組成と温度で差が大きい |
評価基準は、◎が一般的な条件で影響が小さい、○が概ね使用可能であるが条件確認が必要、△が膨潤、軟化、強度低下、変色又は応力割れに注意、×が溶解、著しい膨潤、分解又は割れを生じる可能性が高い、-がデータなし又は評価困難である。
SP値(溶解度パラメータ)
TPUの代表的なHildebrand SP値は、材料系によりおおむね 19~23 MPa1/2 程度が目安であり、比較用代表値として約21 MPa1/2を用いることがある。ただし、TPUは軟質セグメントと硬質セグメントを持つ不均一なブロック共重合体であり、水素結合性も強いため、単一のSP値だけで溶解・膨潤挙動を説明することはできない。
耐薬品性の判断には、Hansen溶解度パラメータ、結晶性、硬質ドメイン、分子量、加水分解、酸化、添加剤抽出、温度及び応力を併せて評価する必要がある。
溶解性の目安
| SP値差 Δδ | 溶解・膨潤の目安 | 判定 |
|---|---|---|
| 0~2 | 膨潤・軟化しやすい | × |
| 2~5 | 条件により膨潤する | △ |
| 5~8 | 短時間接触では比較的安定 | ○ |
| 8以上 | 溶解・膨潤しにくい | ◎ |
SP値から見た耐溶剤性
下表はTPUの比較用SP値を21 MPa1/2として単純差を計算した目安である。実際の評価は、薬品の水素結合性、極性、分子サイズ、温度及びTPUのセグメント構造により変わる。
| 薬品名 | SP値 MPa1/2 | TPUとのSP値差 | 評価 | 補足 |
|---|---|---|---|---|
| アセトン | 20.0 | 約1.0 | × | 実際にも強い膨潤・軟化を生じやすい |
| MEK | 19.0 | 約2.0 | × | 近接し、膨潤・溶解リスクが高い |
| 酢酸エチル | 18.2 | 約2.8 | △ | SP差だけでは△だが、実際は強い膨潤・溶解を生じ得る |
| THF | 18.5 | 約2.5 | × | 強溶剤でありSP差以上に不適 |
| DMF | 24.8 | 約3.8 | × | 水素結合・極性相互作用が強く溶解しやすい |
| トルエン | 18.2 | 約2.8 | △ | 芳香族炭化水素で膨潤に注意 |
| n-ヘキサン | 14.9 | 約6.1 | ○ | 短時間では比較的安定な場合が多い |
| エタノール | 26.0 | 約5.0 | ○ | 境界域。吸収・抽出・長時間接触に注意 |
| 水 | 47.9 | 約26.9 | ○ | SP差は大きいが、加水分解・吸水を別途評価する |
| ミネラルオイル | 約14~17 | 約4~7 | ○ | 油種、芳香族分、温度で変動 |
特にDMF、THF、アセトン、MEK及び酢酸エチルは、単純なSP値差だけでは危険度を過小評価する場合がある。水はSP値差が大きくても、高温では加水分解を促進するため、SP値上の不溶性と長期耐久性を混同しない。
製法
TPUは、長鎖ポリオール、ジイソシアネート及び鎖延長剤を重付加反応させて製造する。代表的にはワンショット法又はプレポリマー法が用いられ、連続反応押出、バッチ反応、混練、ストランド化、水中カット及びペレット化を組み合わせる。
基本反応は、ヒドロキシ基とイソシアネート基の付加反応によりウレタン結合を形成する反応である。副生成物を伴わない重付加が基本であるが、水分が混入するとイソシアネート基と反応して二酸化炭素が発生し、気泡、尿素結合形成、粘度変化及び品質ばらつきの原因となる。
添加剤として、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、加水分解防止剤、触媒、顔料、難燃剤、滑剤、離型剤、帯電防止剤、抗菌剤、充填材及び強化繊維等が用いられる。添加剤は機械特性、接着性、塗装性、食品・医療規制、抽出物、アウトガス及びリサイクル性へ影響する。
品質・成形不良
| 不良 | 主な原因 | 発生しやすい条件 | 影響 | 主な対策 |
|---|---|---|---|---|
| シルバーストリーク・気泡 | ペレット吸湿、加水分解、ガス発生 | 乾燥不足、高温滞留 | 外観不良、強度低下 | 除湿乾燥、含水率測定、滞留時間短縮 |
| 変色・黒点 | 熱酸化、局所過熱、滞留材 | 高温、停止再開、デッドスポット | 黄変、黒点、臭気 | 温度低減、パージ、設備清掃、酸化安定剤確認 |
| フローマーク・ジェッティング | 流動不安定、金型温度不足 | 高速射出、ゲート設計不良 | 外観不良、ウェルド低下 | 射出速度プロファイル、金型温度、ゲート改善 |
| ヒケ・ボイド | 厚肉、保圧不足、冷却不足 | 厚肉部、ゲート早期凍結 | 寸法不良、内部欠陥 | 肉厚均一化、保圧・ゲート・冷却見直し |
| 反り・収縮差 | 配向、肉厚差、冷却差 | 大型品、複合成形 | 寸法不良、界面剥離 | 金型温度均一化、形状・ゲート設計、後収縮確認 |
| 離型不良・変形 | 高粘着性、抜き勾配不足 | 低硬度、鏡面金型 | 変形、傷 | 抜き勾配、表面仕上げ、離型剤又は内部離型設計 |
| ダイスウェル・メルトフラクチャー | 弾性回復、せん断過大 | 押出速度過大、ダイ設計不適 | 寸法変動、表面荒れ | 温度・吐出量・ダイランド調整 |
| 層間剥離 | 異材界面接着不足、汚染 | 二色成形、積層、低温界面 | 剥離、漏れ | 材料組合せ、表面処理、成形温度、界面設計を確認 |
注意点・劣化及び故障モード
| 劣化現象 | 主な原因 | 発生しやすい条件 | 外観又は性能への影響 | 予防策 | 推奨確認試験 |
|---|---|---|---|---|---|
| 加水分解 | ウレタン結合又はポリエステル軟質部の分解 | 高温高湿、温水、蒸気、酸・アルカリ | 強度低下、粘着、亀裂、溶出 | ポリエーテル系又はPC系選定、乾燥、安定剤 | 85℃・85%RH、熱水浸漬、実液試験 |
| 熱酸化劣化 | 酸素、熱、触媒残渣、せん断履歴 | 長時間高温、薄肉、空気接触 | 黄変、硬化、脆化、臭気 | 耐熱グレード、温度低減、安定剤 | 熱老化後の引張・伸び・硬度保持率 |
| 紫外線劣化 | 芳香族構造の光酸化 | 屋外、透明・淡色、紫外線 | 黄変、白化、亀裂、強度低下 | 脂肪族系又は耐候グレード、遮光、UV安定剤 | キセノンアーク、色差、光沢、引張保持率 |
| 膨潤・溶解 | 溶剤との高親和性 | ケトン、エステル、DMF、THF、芳香族溶剤 | 軟化、寸法増加、粘着、溶解 | 耐溶剤グレード、バリア層、接触回避 | 実薬品浸漬、質量・体積・硬度・強度変化 |
| クリープ・圧縮永久ひずみ | 粘弾性変形、硬質ドメイン緩和 | 高温、長期荷重、高圧縮率 | シール低下、永久変形 | 硬度・耐熱グレード選定、圧縮率低減 | 温度別圧縮永久ひずみ、長期クリープ |
| 疲労・屈曲亀裂 | 繰返しひずみ、ノッチ、加水分解 | ベルト、ホース、薄膜、低温 | 亀裂、破断、漏れ | R形状、肉厚均一、グレード選定 | 繰返し屈曲、圧力パルス、低温疲労 |
| 添加剤抽出・ブリード | 低分子添加剤の移行 | 油、洗剤、温水、接着界面 | べたつき、曇り、接着低下、溶出 | 低抽出グレード、配合・接触材確認 | 抽出物、重量減少、GC-MS、接着耐久 |
| アウトガス | 残留モノマー、低分子、添加剤 | 真空、高温、密閉電子機器 | 曇り、汚染、臭気、接点障害 | 低VOCグレード、乾燥、後処理 | TML/CVCM、GC-MS、フォギング試験 |
| 滅菌劣化 | 蒸気、放射線、酸化剤 | オートクレーブ、γ線、電子線、過酸化水素 | 黄変、脆化、分子量低下 | 医療グレード、滅菌法適合確認 | 複数回滅菌後の物性・溶出・外観 |
法規制・認証
| 法規制・認証 | 一般的な位置付け | 確認事項 |
|---|---|---|
| RoHS・REACH・SVHC | 一般に対応可能なグレードがある | 材料名だけでは断定できない。メーカー適合証明書、色、添加剤、製造拠点を確認する。 |
| ELV・自動車規格 | 自動車用途向けグレードがある | OEM規格、VOC、フォギング、耐候、難燃、流体適合性を個別確認する。 |
| FDA食品接触・EU食品接触 | 適合グレードが存在する | 接触食品、温度、時間、抽出条件、着色剤を含めて適合証明を確認する。 |
| 日本の食品衛生法・ポジティブリスト | 適合グレードが存在する | 樹脂区分、添加剤、用途、使用温度、事業者間情報伝達を確認する。 |
| USP Class VI・ISO 10993 | 医療用途向けグレードが存在する | 材料の生物学的評価は最終医療機器、接触部位、接触時間、滅菌法で実施する。 |
| UL 94・UL認証 | 難燃・電気用途向け認証グレードがある | 等級、厚さ、色、登録ファイル、温度指数をグレードごとに確認する。 |
| PFAS関連規制 | TPU主鎖自体は通常フッ素系ではない | フッ素系加工助剤、PTFE改質、離型剤等の有無をサプライヤーへ確認する。 |
| ハロゲンフリー | 対応グレードが存在する | 難燃剤、顔料、添加剤を含む規格定義と分析基準を確認する。 |
規制適合は材料群全体ではなく、メーカー、グレード、色、添加剤、製造拠点、用途、接触条件及び最終製品で確認する必要がある。「一般に対応可能」「適合グレードが存在する」「当該グレードが認証済み」を区別する。
環境・リサイクル性及び供給性
| 項目 | 評価・位置付け | 注意点 |
|---|---|---|
| 熱可塑性 | 再溶融及び再成形が可能 | 加水分解、熱酸化、混合汚染で分子量と物性が低下する。 |
| マテリアルリサイクル | ○ | 単一材、清浄な工程端材では比較的実施しやすい。異硬度、異系統、顔料、難燃剤混入に注意する。 |
| ケミカルリサイクル | 開発・限定実用段階 | 加溶媒分解、グリコリシス等が検討されるが、回収・精製・経済性が課題である。 |
| バイオベースTPU | 対応製品が存在する | バイオベース含有率と生分解性は別概念である。 |
| 生分解性 | 一般的TPUは生分解性材料として扱わない | 特殊設計品を除き、自然環境で速やかに分解するとは限らない。 |
| 価格区分 | 比較的高価格 | 汎用TPE、軟質PVC、一般ゴムより高い場合がある。硬度、透明性、耐候、医療、難燃で上昇する。 |
| 国内入手性 | 良好 | 主要メーカー品、代理店品、コンパウンド品があるが、少量購入、色、MOQはグレード依存である。 |
| 供給形態 | ペレット、粉末、フィルム、シート、チューブ、ホース、丸棒、3Dプリント材料等 | 素材形状とグレードの組合せは供給者ごとに異なる。 |
詳細な利用用途
| 用途 | 適性 | 選定理由 | 主な注意点 |
|---|---|---|---|
| ギア・軸受・ブッシュ | ○ | 耐摩耗性と静音性を活用 | 高温クリープ、摩擦発熱、寸法精度を確認 |
| ローラー・キャスター | ◎ | 耐摩耗、弾性、耐荷重、静音性 | 圧縮永久ひずみ、発熱、加水分解を確認 |
| シール・ガスケット・Oリング | ○ | 耐油性と弾性を利用 | 圧縮永久ひずみ、高温、薬品、透過性を確認 |
| チューブ・ホース | ◎ | 屈曲性、透明性、耐摩耗性 | 加水分解、薬液、圧力パルス、抽出物を確認 |
| フィルム・シート | ◎ | 柔軟性、耐穿刺性、透明性 | ブロッキング、黄変、溶剤、厚み均一性 |
| ケーブル被覆 | ◎ | 耐摩耗、屈曲、難燃グレード | UL、難燃、加水分解、低温、耐油を確認 |
| 電気コネクタ・絶縁部品 | △ | 柔軟絶縁、封止、ストレインリリーフ | 吸湿、誘電損失、耐熱、難燃を確認 |
| 一般筐体・透明カバー | ○ | 耐衝撃、触感、透明性 | 剛性、傷、黄変、寸法安定性 |
| 自動車内装 | ◎ | ソフトタッチ、耐摩耗、複合成形 | VOC、フォギング、耐光、べたつき |
| 自動車外装 | ○ | 耐衝撃、耐摩耗 | 脂肪族系又は耐候グレード、温湿度耐久 |
| エンジンルーム部品 | △ | 耐油グレードで限定使用 | 高温、燃料、冷却液、加水分解、寿命 |
| 燃料系部品 | △ | 特定グレードでホース等に使用 | 燃料組成、透過、膨潤、抽出を長期評価 |
| 食品機械部品 | ○ | ローラー、スクレーパー、チューブ | 食品接触適合、洗浄剤、熱水、摩耗粉 |
| 医療機器部品 | ◎ | チューブ、カテーテル、柔軟部材 | 医療グレード、溶出、滅菌、変更管理 |
| 半導体・真空装置部品 | △ | 柔軟シール、保護部材 | アウトガス、粒子、薬品、真空耐久 |
| 建築・屋外部品 | ○ | シール、膜、保護材 | 耐候グレード、加水分解、汚染、難燃 |
| 接着剤・コーティング | ○ | TPU溶液、ホットメルト、フィルム接着 | 溶剤、乾燥、耐熱、耐加水分解 |
| 複合材料マトリックス | ○ | 繊維複合、オーバーモールド | 含浸、界面接着、熱履歴、リサイクル性 |
用途適性は材料群としての一般的な目安である。実使用では、グレード、硬度、温度、濃度、荷重、応力、湿度、使用時間、繰返し回数、試験片形状、成形条件及び法規制を確認する必要がある。
関連材料との比較
| 比較材料 | 特徴 | TPUとの違い |
|---|---|---|
| 熱可塑性ポリエステルエラストマー(TPEE) | 耐熱性、耐油性、反発弾性、屈曲疲労性に優れる | TPUは一般に耐摩耗性、引裂強さ、透明性、接着性で有利な場合がある。TPEEは高温剛性と耐クリープ性で有利な場合がある。 |
| 熱可塑性ポリアミドエラストマー(TPAE) | 低温柔軟性、耐油性、軽量性に優れる | TPUは耐摩耗性と接着性に優れる場合が多い。TPAEは低比重、耐薬品性、低温性で有利な場合がある。 |
| スチレン系熱可塑性エラストマー(TPS) | 低硬度、低比重、成形性、コストに優れる | TPUは機械強度、耐摩耗性、耐油性で有利である。TPSは柔軟性、軽量性、価格で有利な場合がある。 |
| 熱可塑性エラストマー(TPE) | 各種TPEの総称 | TPUはTPEの一種であり、ウレタン結合とセグメント構造に由来する高強度・耐摩耗性が特徴である。 |
| ポリウレタン(PU) | 熱硬化性、発泡体、塗料、接着剤等を含む広い材料群 | TPUは溶融再成形できる。熱硬化性PUや注型ウレタンは架橋構造を持ち、耐熱・圧縮特性が異なる。 |
| シリコーン樹脂・シリコーン系材料 | 耐熱性、耐候性、電気特性に優れる | TPUは耐摩耗性、引裂強さ、機械強度で有利である。シリコーン系は高低温特性、耐候性で有利である。 |
| ニトリルゴム(NBR) | 加硫ゴムで耐油性に優れる | TPUは熱可塑成形とリサイクル性で有利である。NBRは高温油中や圧縮シール用途で有利な場合がある。 |
| 軟質ポリ塩化ビニル(軟質PVC) | 低価格、難燃性、加工性に優れる | TPUは可塑剤移行が少なく、耐摩耗性、低温性、機械強度で有利な場合がある。軟質PVCはコストと難燃性で有利である。 |
代表的なメーカー
| メーカー | 代表製品・ブランド | 概要 |
|---|---|---|
| BASF | Elastollan® | ポリエーテル系、ポリエステル系、難燃、透明、押出・射出等の幅広いTPUを展開する。 |
| Covestro | Desmopan®、Texin® | 耐摩耗、耐油、耐候、低炭素フットプリント等のTPUラインを展開する。 |
| Lubrizol | ESTANE® | 医療、電線、接着、フィルム、工業用途を含むTPUを展開する。 |
| Huntsman | IROGRAN®、AVALON® | 射出、押出、フィルム、靴、工業用途向けTPUを展開する。 |
| Wanhua Chemical | WANTHANE® | ポリエステル系、ポリエーテル系、脂肪族系等のTPUを展開する。 |
| Miracll Chemicals | Mirathane® | 射出、押出、フィルム、発泡等のTPUを展開する。 |
| 三菱ケミカルグループ | エラストマー関連製品群 | 国内供給品は時期・地域・事業再編で変わるため、現行の製品名と供給主体を個別確認する。 |
製品名、ブランド、供給地域及び事業主体は変更される場合がある。採用時には各メーカー又は正規代理店の最新技術資料、SDS、規制適合証明書及び供給条件を確認する。
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用途決定前の推奨確認試験
- 実薬品浸漬試験:実使用濃度及び温度で24時間、168時間、500時間又は目標寿命相当まで評価し、質量、体積、硬度、引張強さ、伸び及び外観を測定する。
- 高温高湿・加水分解試験:85℃・85%RH、70℃温水又は用途相当条件で、物性保持率、粘着、亀裂及び分子量変化を確認する。
- 応力負荷下試験:実部品の最大ひずみ又は圧縮率を再現し、薬品、温湿度及び繰返し負荷を組み合わせる。
- クリープ・圧縮永久ひずみ試験:使用温度、荷重、圧縮率及び時間を再現し、シール性又は寸法保持性を確認する。
- 摩耗・摩擦試験:相手材、表面粗さ、荷重、速度、温度、湿度及び潤滑条件を実機に合わせる。
- 紫外線促進耐候試験:芳香族系と脂肪族系を区別し、色差、光沢、亀裂、硬度及び引張特性を確認する。
- 滅菌耐久・溶出・アウトガス試験:医療、食品、半導体及び真空用途では、採用グレードと最終成形品で実施する。
- 実成形・実部品耐久試験:乾燥条件、滞留時間、ウェルド、肉厚、残留応力、接合界面及び量産ばらつきを含めて確認する。