エチレン・酢酸ビニル共重合体
概要
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 材料名 | エチレン・酢酸ビニル共重合体 |
| 略記号 | EVA、EVAC |
| IUPAC | Poly(ethylene-co-vinyl acetate) |
| 英語名 | Ethylene Vinyl Acetate Copolymer、Ethylene-Vinyl Acetate |
| 日本語名 | エチレン酢酸ビニル共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂、EVA樹脂 |
| 分類 | ポリオレフィン系共重合体、熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマー的性質を示す軟質樹脂 |
| プラスチック分類 | 一般プラスチック、軟質ポリオレフィン系樹脂 |
| 化学式または代表構造 | [-CH2-CH2-]m[-CH2-CH(OCOCH3)-]n |
| CAS No. | 24937-78-8 |
| 構造・主成分 | エチレン単位と酢酸ビニル単位からなるランダム共重合体である。酢酸ビニル含有量により、ポリエチレンに近い硬質グレードからゴム状・ホットメルト接着剤用グレードまで性質が大きく変化する。 |
| 主な用途 | フィルム、シート、発泡体、靴底、ホットメルト接着剤、太陽電池封止材、電線被覆、チューブ、包装材、改質材、玩具、スポーツ用品である。 |
エチレン・酢酸ビニル共重合体(EVA)は、エチレンと酢酸ビニルを共重合した柔軟性の高い熱可塑性樹脂である。一般にポリエチレンより柔軟で、低温特性、透明性、耐衝撃性、接着性、発泡加工性に優れる。酢酸ビニル含有量が低いグレードではポリエチレンに近い性質を示し、酢酸ビニル含有量が高くなるほど柔軟性、極性、接着性、ゴム弾性が増す傾向がある。
EVAは、フィルム、発泡体、ホットメルト接着剤、電線被覆、太陽電池封止材などに広く用いられる材料である。特に酢酸ビニル含有量、メルトフローレート、分子量、添加剤、架橋の有無により性能差が大きいため、単にEVAと表記されていても、フィルム用、発泡用、接着剤用、封止材用では実用特性が大きく異なる。
耐薬品性はポリエチレン系樹脂として水、アルカリ、低級アルコール、油類に比較的安定である一方、芳香族炭化水素、塩素系溶剤、エステル、ケトン類では膨潤、軟化、抽出が起こる場合がある。特に高酢酸ビニル含有グレード、低分子量グレード、可塑剤や粘着付与樹脂を含む配合品では、溶剤による変化が大きくなるため、実使用では温度、濃度、接触時間、応力、膜厚を確認する必要がある。
特徴
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 長所 | 柔軟性、低温耐衝撃性、透明性、発泡加工性、ヒートシール性、接着性、耐水性に優れる。酢酸ビニル含有量により硬さや粘着性を調整しやすい。 |
| 短所 | 耐熱性、剛性、耐溶剤性、耐クリープ性はエンジニアリングプラスチックに比べて低い。高温では軟化しやすく、芳香族溶剤や塩素系溶剤で膨潤しやすい。 |
| 外観 | 一般に乳白色から透明ないし半透明である。発泡体では白色または着色品が多い。 |
| 耐熱性 | 連続使用温度は一般に40〜70℃程度が目安であり、耐熱グレードや架橋グレードでは条件により高くなる。荷重下では軟化、変形、クリープに注意が必要である。 |
| 耐薬品性 | 水、アルカリ、低級アルコール、油脂には比較的良好である。芳香族炭化水素、塩素系溶剤、エステル、ケトン類では膨潤、軟化、重量変化が生じやすい。 |
| 加工性 | 押出成形、フィルム成形、シート成形、発泡成形、射出成形、ホットメルト加工に適する。低融点で加工しやすいが、熱履歴が長いと酢酸臭、変色、熱劣化が問題になる場合がある。 |
| 分類上の注意 | EVAは熱可塑性樹脂であるが、高酢酸ビニル含有グレードでは熱可塑性エラストマーに近い柔軟性を示す。酢酸ビニル含有量が高い接着剤用EVAは、一般成形用EVAとは実用特性が異なる。 |
構造式
構造式

エチレン単位と酢酸ビニル単位がランダムに共重合した構造を持つ。構造中の官能基、結晶性、架橋密度、芳香族骨格、充填材の有無により、耐熱性、耐薬品性、機械的性質、成形性が変化する。代表構造は以下のように表される。
| 項目 | 構造・内容 |
|---|---|
| 代表的な構造単位 | [-CH2-CH2-]m[-CH2-CH(OCOCH3)-]n |
| エチレン単位 | -CH2-CH2– |
| 酢酸ビニル単位 | -CH2-CH(OCOCH3)- |
| モノマー | エチレン:CH2=CH2、酢酸ビニル:CH2=CH-OCOCH3 |
| 共重合組成 | 酢酸ビニル含有量は、一般成形・フィルム用途で数%〜30%程度、接着剤や特殊用途ではさらに高いグレードが用いられる場合がある。 |
| 変性・複合グレード | 架橋EVA、発泡EVA、難燃EVA、接着剤用EVA、太陽電池封止材用EVA、フィラー配合EVA、顔料・安定剤配合EVAなどがある。 |
酢酸ビニル基はエチレン鎖に極性を与えるため、酢酸ビニル含有量が高くなるほど柔軟性、透明性、接着性、相溶性が向上する傾向がある。一方で、結晶性、融点、剛性、耐熱変形性は低下しやすい。
種類
| 種類の名称 | 主成分または特徴 | 長所 | 短所 | 主な用途 |
|---|---|---|---|---|
| 低VA含有EVA | 酢酸ビニル含有量が低く、ポリエチレンに近い性質を示すグレード | 耐水性、耐薬品性、成形性、価格バランスに優れる | 柔軟性や接着性は高VA品より低い | フィルム、シート、成形品、包装材 |
| 中VA含有EVA | 柔軟性、透明性、ヒートシール性のバランスを持つグレード | 柔軟性、透明性、耐衝撃性、加工性が良好である | 耐熱変形性、剛性、耐溶剤性に注意が必要である | 包装フィルム、チューブ、シート、発泡体 |
| 高VA含有EVA | 酢酸ビニル含有量が高く、ゴム状・粘着性を示しやすいグレード | 柔軟性、接着性、相溶性、低温特性に優れる | 耐熱性、耐溶剤性、寸法安定性が低下しやすい | ホットメルト接着剤、改質材、粘着材、シーリング材 |
| 発泡EVA | EVAに発泡剤、架橋剤、顔料などを配合して発泡させた材料 | 軽量性、クッション性、柔軟性、断熱性に優れる | 圧縮永久ひずみ、熱変形、摩耗、溶剤膨潤に注意が必要である | 靴底、マット、スポーツ用品、緩衝材、玩具 |
| 架橋EVA | 有機過酸化物、電子線、シランなどにより架橋したEVA | 耐熱性、耐クリープ性、耐久性が向上しやすい | 再溶融加工性が低下し、リサイクル性に制約が出る | 電線被覆、太陽電池封止材、発泡体、耐熱シート |
| 難燃EVA | 水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、リン系難燃剤などを配合したグレード | 柔軟性を維持しながら難燃性を付与しやすい | 充填量が多い場合、機械強度、伸び、加工性が低下する | 電線被覆、ケーブル、建材、電子部材 |
| 太陽電池封止材用EVA | 架橋剤、接着助剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤などを配合した封止材用グレード | 透明性、接着性、クッション性、封止性に優れる | 長期使用では黄変、酢酸発生、加水分解、PID対策が課題になる場合がある | 太陽電池モジュール封止材 |
| 食品接触対応EVA | 食品接触用途に対応した樹脂・添加剤設計のグレード | 柔軟性、透明性、ヒートシール性を食品包装に利用できる | 法規制適合は国・用途・添加剤・グレードごとに確認が必要である | 食品包装フィルム、キャップライナー、チューブ |
成形加工
| 加工方法 | 適正 | 内容・注意点 |
|---|---|---|
| 射出成形 | ○ | 軟質成形品、キャップ、部品に使用される。低硬度グレードでは離型性、変形、ゲート跡、べたつきに注意する。 |
| 押出成形 | ◎ | フィルム、シート、チューブ、電線被覆に適する。MFR、VA含有量、冷却条件により透明性やブロッキングが変化する。 |
| ブロー成形 | ○ | 柔軟容器やチューブ状製品に適用される場合がある。溶融張力と肉厚安定性の確認が必要である。 |
| インフレーション成形 | ◎ | 包装フィルム、農業用フィルム、ラミネートフィルムに適する。ブロッキング防止、滑り性、ヒートシール性の設計が重要である。 |
| カレンダー成形 | ○ | シート用途で使用される場合がある。ロール温度、粘着、表面荒れに注意する。 |
| 圧縮成形 | △ | 試験片、発泡シート、架橋発泡体などで用いられる。量産では押出・射出・発泡成形が中心である。 |
| 真空成形 | △ | シート成形品に適用できる場合があるが、軟化温度範囲が広く、形状保持性はグレード依存である。 |
| 発泡成形 | ◎ | 化学発泡、架橋発泡に適する。発泡倍率、架橋度、セル径、圧縮永久ひずみの管理が重要である。 |
| ホットメルト加工 | ◎ | 接着剤用EVAとして広く用いられる。粘着付与樹脂、ワックス、酸化防止剤との配合で接着性と粘度を調整する。 |
| 切削加工 | △ | 柔軟で変形しやすいため精密切削には不向きである。低温固定、刃物条件、バリ対策が必要である。 |
| 溶着・ヒートシール | ◎ | 低温ヒートシール性に優れる。シール温度、圧力、時間、フィルム厚みにより強度が変化する。 |
| 成形条件項目 | 代表値・目安 | 備考 |
|---|---|---|
| 乾燥温度 | 通常は不要 必要時40〜60℃ | 吸水性は小さいが、表面水分や配合剤由来の水分がある場合は軽乾燥する。高温乾燥ではブロッキングや変形に注意する。 |
| シリンダー温度 | 120〜190℃程度 | VA含有量、MFR、添加剤により異なる。高温・長時間滞留では熱劣化、臭気、変色に注意する。 |
| 金型温度 | 20〜50℃程度 | 冷却速度により収縮、透明性、表面状態が変化する。 |
| 成形収縮率 | 1.0〜3.0%程度 | 結晶性、VA含有量、肉厚、成形条件により変化する。低VA品ほどポリエチレンに近い収縮挙動を示す。 |
| 推奨注意点 | 低せん断・短滞留を基本とする | 焦げ、酢酸臭、ゲル、フィッシュアイ、ブロッキング、金型汚染を確認する。 |
代表的な物性値又は機械的性質
| 項目 | 単位 | 低VA EVA | 中VA EVA | 高VA EVA | 発泡EVA | 備考 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 密度 | g/cm3 | 0.92〜0.94 | 0.94〜0.96 | 0.96〜0.99 | 0.03〜0.30程度 | 酢酸ビニル含有量が高いほど密度は上がる傾向がある。発泡体は倍率により大きく異なる。 |
| 引張強さ | MPa | 15〜30 | 10〜25 | 3〜15 | 0.5〜5程度 | グレード、MFR、架橋、発泡倍率により変化する。 |
| 伸び | % | 300〜800 | 500〜1000 | 600〜1200 | 100〜500程度 | 一般に柔軟で伸びが大きい。 |
| 曲げ弾性率 | MPa | 80〜300 | 20〜150 | 5〜80 | 1〜30程度 | VA含有量が高くなるほど低下しやすい。 |
| アイゾット衝撃強さ | J/m | 破壊しにくい | 破壊しにくい | 破壊しにくい | 用途依存 | ノッチ条件、温度、硬さにより評価が変わる。低温衝撃性は比較的良好である。 |
| 荷重たわみ温度 | ℃ | 35〜60 | 30〜50 | 25〜45 | 用途依存 | 荷重下では変形しやすい。耐熱構造部品には不向きである。 |
| 融点 | ℃ | 80〜105 | 60〜90 | 40〜75 | 配合依存 | VA含有量増加により結晶性と融点は低下する傾向がある。 |
| ガラス転移温度 | ℃ | -30〜-40 | -25〜-40 | -20〜-35 | 配合依存 | 低温柔軟性に優れる。 |
| 連続使用温度 | ℃ | 40〜70 | 40〜65 | 30〜60 | 30〜60 | 荷重、応力、接触媒体、架橋の有無により異なる。 |
| 吸水率 | % | 0.01〜0.05程度 | 0.02〜0.10程度 | 0.05〜0.20程度 | 配合依存 | 一般に吸水性は小さいが、極性成分、フィラー、添加剤により増える場合がある。 |
| 体積抵抗率 | Ω・cm | 1014〜1016 | 1013〜1016 | 1012〜1015 | 配合依存 | 電気絶縁性は良好であるが、難燃剤、カーボン、帯電防止剤配合で低下する。 |
| 硬度 | Shore A / D | D 30〜50程度 | A 70〜D 40程度 | A 40〜90程度 | A 10〜70程度 | VA含有量、発泡倍率、架橋度により大きく変化する。 |
| 難燃性 | UL94 | HB相当が多い | HB相当が多い | HB相当が多い | 配合依存 | 未充填EVAは燃えやすい。難燃グレードではV-2、V-0相当を狙う配合もある。 |
| 酸素指数 | % | 18〜20程度 | 18〜20程度 | 18〜20程度 | 配合依存 | 無添加では難燃性は高くない。難燃剤配合により上昇する。 |
上記の数値は代表値または目安である。EVAは酢酸ビニル含有量、MFR、分子量、架橋度、発泡倍率、添加剤、フィラー、成形条件により物性が大きく変化するため、実設計では使用グレードの技術資料と実機条件で確認する必要がある。
耐薬品性
| 薬品分類 | 代表薬品 | 評価 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 酸類 | 希塩酸、希硫酸、酢酸水溶液 | ○ | 低濃度・常温では比較的安定である。濃酸、高温、長時間では添加剤抽出、劣化、膨潤を確認する。 |
| 強酸化性酸 | 濃硝酸、発煙硝酸、クロム酸混液 | × | 酸化劣化、変色、脆化が起こりやすく、基本的に不適である。 |
| アルカリ類 | 水酸化ナトリウム、KOH、炭酸ナトリウム | ○ | 常温の希アルカリでは比較的良好である。高温・高濃度では酢酸ビニル部位の加水分解、添加剤抽出に注意する。 |
| 低級アルコール類 | メタノール、エタノール、IPA | ○ | 短時間接触では比較的安定である。高VA品や接着剤配合品では膨潤、白化、抽出を確認する。 |
| 高級アルコール類 | ブタノール、グリセリン、MMB | ○〜△ | 分子量が大きいアルコールでは浸透は遅いが、長時間接触や高温では軟化する場合がある。 |
| 芳香族炭化水素類 | トルエン、キシレン、エチルベンゼン | × | 膨潤、軟化、寸法変化が起こりやすい。特に高VA品、薄膜、応力下では不適である。 |
| 脂肪族炭化水素類 | ヘキサン、ヘプタン、ミネラルスピリット | △ | ポリエチレン系成分との親和性により膨潤する場合がある。燃料、油類との長期接触では確認が必要である。 |
| ケトン | アセトン、MEK、MIBK | △〜× | 高VA品では膨潤、軟化、抽出が起こりやすい。短時間の拭き取り用途でも外観変化を確認する。 |
| エステル | 酢酸エチル、酢酸ブチル | × | 酢酸ビニル部位との親和性が高く、膨潤・軟化しやすい。接着剤や封止材では特に注意が必要である。 |
| 塩素系溶剤 | ジクロロメタン、クロロホルム、トリクロロエチレン | × | 膨潤・溶解・抽出が起こりやすく、基本的に不適である。 |
| 水・温水 | 水道水、純水、温水 | ◎〜○ | 常温水には良好である。高温水、蒸気、太陽電池封止材など長期用途では加水分解、酢酸発生、接着低下を確認する。 |
| 油脂 | 植物油、動物油、潤滑油 | ○〜△ | 短時間では比較的良好な場合が多いが、長時間・高温では膨潤、軟化、添加剤抽出が起こる場合がある。 |
| 燃料 | ガソリン、軽油、灯油 | △〜× | 芳香族成分や低分子炭化水素を含むため膨潤しやすい。燃料チューブ用途では専用材料を選定する。 |
| 界面活性剤水溶液 | 中性洗剤、アルカリ洗浄剤 | ○〜△ | 水溶液自体には比較的安定であるが、溶剤、アルカリ、キレート剤、温度、浸漬時間により評価が変化する。 |
耐薬品性評価は、EVA単体樹脂、発泡体、接着剤配合物、封止材、難燃配合物で大きく異なる。特に可塑剤、粘着付与樹脂、ワックス、難燃剤、架橋剤、酸化防止剤を含む配合品では、樹脂本体よりも添加剤の抽出や膨潤が先に問題となる場合がある。
SP値(溶解度パラメータ)
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 代表的なSP値 | 約17〜20 MPa1/2 |
| 低VA EVAの目安 | 約17〜18 MPa1/2 |
| 中VA EVAの目安 | 約18〜19 MPa1/2 |
| 高VA EVAの目安 | 約19〜20 MPa1/2 |
| 傾向 | 酢酸ビニル含有量が高くなるほど極性が増し、SP値は上昇する傾向がある。 |
| 注意点 | SP値は溶解・膨潤の目安であり、耐薬品性を単独で判断する指標ではない。結晶性、架橋、拡散速度、温度、接触時間、応力、添加剤、フィラー、膜厚を併せて評価する必要がある。 |
溶解性の目安
| SP値差 | 溶解・膨潤の目安 | 判定 |
|---|---|---|
| 0〜2 | 膨潤・軟化しやすい | × |
| 2〜5 | 条件により膨潤する | △ |
| 5〜8 | 短時間接触では比較的安定 | ○ |
| 8以上 | 溶解・膨潤しにくい | ◎ |
SP値から見た耐溶剤性
以下は、EVAの代表SP値を18.5 MPa1/2と仮定した場合の目安である。実際のEVAは酢酸ビニル含有量によりSP値が変化するため、低VA品では非極性溶剤への膨潤、高VA品ではエステルやケトンへの膨潤が強く出る場合がある。
| 薬品名 | SP値目安 MPa1/2 | EVAとの差 | 評価 | 実用上の注意 |
|---|---|---|---|---|
| 水 | 47.9 | 約29.4 | ◎ | SP値差は大きく常温水では良好である。ただし温水・長期では加水分解や添加剤抽出を確認する。 |
| メタノール | 29.7 | 約11.2 | ◎〜○ | 短時間では比較的良好であるが、高VA品では表面変化を確認する。 |
| エタノール | 26.0 | 約7.5 | ○ | 消毒用アルコールなどでは添加剤抽出、白化、応力下の変化を確認する。 |
| IPA | 23.5 | 約5.0 | ○〜△ | 短時間接触では使用可能な場合が多いが、長時間浸漬では膨潤確認が必要である。 |
| アセトン | 20.3 | 約1.8 | × | SP値が近く、膨潤・軟化しやすい。拭き取り用途でも確認が必要である。 |
| MEK | 19.0 | 約0.5 | × | 膨潤・軟化・抽出のリスクが高い。 |
| 酢酸エチル | 18.6 | 約0.1 | × | EVAとSP値が近く、高VA品や接着剤配合品では不適となる場合が多い。 |
| トルエン | 18.2 | 約0.3 | × | 芳香族炭化水素であり膨潤しやすい。長時間接触は避ける。 |
| キシレン | 18.0 | 約0.5 | × | 膨潤、軟化、寸法変化が起こりやすい。 |
| ヘキサン | 14.9 | 約3.6 | △ | SP値差だけでは中程度だが、低VA品では炭化水素膨潤に注意する。 |
| 灯油 | 約16〜17 | 約1.5〜2.5 | △〜× | 組成により膨潤性が異なる。長期接触や高温では不適となる場合がある。 |
| ジクロロメタン | 20.2 | 約1.7 | × | 塩素系溶剤で膨潤・溶解リスクが高い。 |
| グリセリン | 約36 | 約17.5 | ◎〜○ | SP値差は大きいが、温度、添加剤、混合成分により評価が変わる。 |
| 植物油 | 約16〜18 | 約0.5〜2.5 | ○〜△ | SP値上は近いが、分子サイズが大きく拡散が遅い。長期・高温では膨潤確認が必要である。 |
評価基準は、◎非常に良好、○概ね良好、△注意が必要、×不適である。SP値は溶解性の初期スクリーニングには有効であるが、EVAでは結晶性、酢酸ビニル含有量、架橋度、発泡構造、添加剤抽出、溶剤の拡散速度が実際の耐薬品性を大きく左右する。
製法
| 工程 | 内容 |
|---|---|
| 原料 | エチレン、酢酸ビニルを主原料とする。必要に応じて重合開始剤、連鎖移動剤、安定剤、酸化防止剤などが使用される。 |
| 重合方法 | 一般に高圧ラジカル共重合により製造される。エチレンと酢酸ビニルの仕込み比、圧力、温度、開始剤条件により酢酸ビニル含有量、分子量、MFRを調整する。 |
| 代表反応式 | m CH2=CH2 + n CH2=CH-OCOCH3 → [-CH2-CH2-]m[-CH2-CH(OCOCH3)-]n |
| ペレット化 | 重合後、脱揮、造粒、ペレット化を行う。ブロッキングを抑えるため、保管温度やペレット表面状態の管理が重要である。 |
| コンパウンド | 用途に応じて酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、滑剤、アンチブロッキング剤、顔料、フィラー、難燃剤、発泡剤、架橋剤、シランカップリング剤などが配合される。 |
| 発泡体製造 | EVAに発泡剤、架橋剤、顔料、充填材などを配合し、加熱により発泡・架橋させる。セル径、発泡倍率、硬度、圧縮永久ひずみの管理が重要である。 |
| 太陽電池封止材 | EVAに架橋剤、接着助剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤などを配合し、シート化する。ラミネート工程で加熱架橋し、ガラスやセルへの密着性を得る。 |
EVAの性能は、重合組成だけでなく配合設計に強く依存する。特に発泡体、ホットメルト接着剤、封止材、難燃ケーブル材料では、EVA樹脂単体の物性よりも添加剤、架橋、混練条件、熱履歴が実用性能を支配する場合が多い。
詳細な利用用途
| 用途分野 | 具体例 | 採用理由 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 自動車 | 防音材、シール材、内装材、発泡緩衝材、ワイヤーハーネス被覆 | 柔軟性、低温特性、クッション性、加工性が良好である | 耐熱性、耐油性、VOC、難燃性、長期圧縮変形を確認する |
| 電気・電子 | 電線被覆、ケーブル、絶縁シート、太陽電池封止材 | 電気絶縁性、柔軟性、接着性、透明性を利用できる | 難燃性、絶縁抵抗、熱老化、湿熱劣化、酢酸発生を確認する |
| 包装 | 食品包装フィルム、ラミネートフィルム、ヒートシール層、キャップライナー | 低温ヒートシール性、透明性、柔軟性、耐衝撃性に優れる | 食品接触規制、添加剤溶出、臭気、ブロッキングを確認する |
| 建築・設備 | 防水シート、床材、クッション材、配管保護材、シール材 | 柔軟性、耐水性、施工性、発泡加工性を利用できる | 屋外では紫外線、熱変形、難燃性、可塑剤・添加剤の移行を確認する |
| 靴・スポーツ用品 | 靴底、サンダル、マット、プロテクター、グリップ材 | 軽量性、クッション性、柔軟性、発泡性が良好である | 摩耗、圧縮永久ひずみ、耐油性、熱変形を確認する |
| 医療・衛生 | チューブ、シート、包装材、柔軟部材 | 柔軟性、透明性、可塑剤非使用設計が可能な場合がある | 医療用途では生体適合性、滅菌適性、抽出物、規格適合をグレードごとに確認する |
| 食品機械 | パッキン、軟質シート、保護材、低荷重クッション材 | 柔軟性、耐水性、加工性が利用できる | 高温洗浄、アルカリ洗浄剤、油脂、食品衛生法適合を確認する |
| 接着剤 | ホットメルト接着剤、製本、包装、木工、ラベル | 溶融粘度、接着性、柔軟性、粘着付与樹脂との相溶性が良い | 耐熱クリープ、耐溶剤性、耐水性、接着基材との相性を確認する |
| 改質材 | ポリオレフィン改質、耐衝撃改質、柔軟化、接着性付与 | 柔軟性と極性を付与できる | 相溶性、ブリード、透明性、機械強度低下を確認する |
関連材料との比較
| 比較材料 | 特徴 | EVAとの違い |
|---|---|---|
| ポリエチレン(PE) | 耐水性、耐薬品性、電気絶縁性に優れる汎用ポリオレフィンである。 | EVAはPEより柔軟性、透明性、接着性、ヒートシール性に優れるが、耐熱性や剛性は低下しやすい。 |
| 低密度ポリエチレン(LDPE) | 柔軟性と成形性に優れるポリエチレンである。 | EVAはLDPEより低温シール性、接着性、透明性に優れる場合が多い。耐溶剤性はVA含有量により低下する。 |
| ポリプロピレン(PP) | 軽量で耐熱性、剛性、耐薬品性に優れる汎用樹脂である。 | EVAはPPより柔軟で低温衝撃性が良いが、耐熱性、剛性、寸法安定性はPPが優れる。 |
| ポリ塩化ビニル(PVC) | 可塑剤配合により軟質化でき、難燃性も比較的高い樹脂である。 | EVAはハロゲンを含まない柔軟材料として選ばれる場合がある。一方、難燃性や耐油性はPVCが有利な場合がある。 |
| 熱可塑性エラストマー(TPE) | ゴム弾性と熱可塑性加工性を併せ持つ材料群である。 | EVAはTPEほどの弾性回復性や耐摩耗性を持たない場合があるが、発泡性、低温柔軟性、コストで有利な用途がある。 |
| ポリウレタン(PU) | 耐摩耗性、弾性、機械強度に優れるエラストマーである。 | EVAはPUより軽量で加工しやすいが、耐摩耗性、反発弾性、耐油性ではPUが有利な場合が多い。 |
| PETG樹脂 | 透明性、耐衝撃性、成形性に優れる非晶性ポリエステル系樹脂である。 | EVAはPETGより柔軟で低温シール性に優れる。PETGは透明剛性部品や硬質シートに向く。 |
| エチレン・メチルアクリレート共重合体(EMA) | エチレンとアクリル酸エステルの共重合体で、柔軟性と極性を持つ。 | EMAはEVAに近い軟質ポリオレフィン系材料であるが、耐熱性、接着性、相溶性、溶剤感受性はグレードにより異なる。 |
代表的なメーカー
| メーカー | 代表製品・ブランド | 概要 |
|---|---|---|
| 三井・ダウ ポリケミカル | エバフレックス | EVA樹脂の代表的な国内ブランドである。フィルム、成形、接着、改質用途などに使用される。 |
| 東ソー | ウルトラセン | EVA樹脂の国内代表例であり、フィルム、シート、接着剤、発泡用途などで使用される。 |
| 住友化学 | スミテート | EVA樹脂の代表例として知られる。包装、成形、改質、接着関連用途で使用される。 |
| ENEOSマテリアル | 代表例:EVA系材料 | ポリオレフィン系材料、エラストマー系材料の供給メーカーである。採用時は現行グレードの確認が必要である。 |
| ExxonMobil Chemical | Escorene Ultra | EVA樹脂の代表的な海外ブランドである。フィルム、ホットメルト、改質用途などで使用される。 |
| Celanese | Ateva | EVA樹脂の代表的な海外ブランドである。成形、フィルム、接着剤、改質用途などに用いられる。 |
| LG Chem | 代表例:EVA resin | 包装、発泡、太陽電池封止材、接着関連用途向けのEVAを供給するメーカーである。 |
| Hanwha TotalEnergies Petrochemical | 代表例:EVA resin | アジア地域でEVA樹脂を供給する主要メーカーの一つである。用途別グレードの確認が必要である。 |
メーカー名、ブランド名、供給グレードは統廃合、事業移管、販売地域により変わる場合がある。実際の採用では、現行の技術資料、SDS、食品接触適合、UL、RoHS、REACH、FDAなどの適合状況をメーカーまたは販売代理店に確認する必要がある。
法規制・安全性・採用時の注意点
| 項目 | 確認内容 | 注意点 |
|---|---|---|
| RoHS | 鉛、カドミウム、水銀、六価クロム、臭素系難燃剤、フタル酸エステル類など | 樹脂本体よりも添加剤、顔料、難燃剤、リサイクル材に注意する。 |
| REACH | SVHC、制限物質、登録物質の確認 | 輸出用途では最新の規制リスト確認が必要である。 |
| 食品衛生 | 食品接触材料としての適合性 | 食品用途では樹脂グレード、添加剤、着色剤、最終成形品で確認する。日本、EU、米国で要求が異なる。 |
| FDA | 米国食品接触用途への適合性 | すべてのEVAがFDA対応ではない。用途、温度、食品種、抽出条件ごとに確認する。 |
| 医療用途 | 生体適合性、滅菌適性、抽出物、溶出物 | 医療用途では医療グレードを選定し、ISO 10993などの評価が必要になる場合がある。 |
| 難燃性 | UL94、酸素指数、ケーブル規格 | 未充填EVAは燃えやすい。難燃用途では難燃グレードまたは難燃コンパウンドを選定する。 |
| アウトガス | 酢酸、低分子成分、添加剤揮発 | 電子部品、光学部品、太陽電池封止材ではアウトガス、腐食、黄変を確認する。 |
| 加水分解・湿熱 | 高温高湿、温水、屋外暴露 | 長期使用では酢酸ビニル部位の変化、接着低下、黄変、添加剤劣化に注意する。 |
| 応力割れ・膨潤 | 溶剤、油、燃料、洗浄剤との接触 | 軟質材料であっても応力下、接着界面、薄膜では膨潤や剥離が問題になる場合がある。 |
用途別選定の目安
| 用途 | 推奨されやすいグレード | 重視する特性 | 確認試験 |
|---|---|---|---|
| フィルム | 低〜中VA、フィルム用MFR | 透明性、ヒートシール性、ブロッキング防止、耐衝撃性 | シール強度、曇度、引張、落袋、滑り性 |
| チューブ | 中VA、柔軟グレード | 柔軟性、透明性、耐水性、低温特性 | 曲げ、耐圧、抽出、薬品浸漬、寸法安定性 |
| 発泡体 | 発泡・架橋用EVA | 軽量性、クッション性、硬度、圧縮永久ひずみ | 発泡倍率、圧縮永久ひずみ、反発弾性、耐熱変形 |
| ホットメルト接着剤 | 高VA、高MFRグレード | 溶融粘度、接着性、オープンタイム、柔軟性 | 接着強度、耐熱クリープ、低温接着、耐水性 |
| 電線被覆 | 難燃EVA、架橋EVA | 柔軟性、絶縁性、難燃性、耐熱性 | UL94、体積抵抗率、熱老化、耐屈曲、難燃試験 |
| 太陽電池封止材 | 封止材用架橋EVA | 透明性、接着性、耐湿熱性、耐候性 | ゲル分率、湿熱、UV、黄変、接着強度、酢酸発生 |
| 食品接触部材 | 食品接触対応グレード | 低臭気、溶出安全性、柔軟性、ヒートシール性 | 溶出試験、臭気、食品疑似溶媒浸漬、規格適合確認 |
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