シンジオタクチック-1, 2ポリブタジエン系

概要

材料名シンジオタクチック-1,2ポリブタジエン系
英語名Syndiotactic 1,2-Polybutadiene
略号s-1,2-PB、SPB、RB
分類熱可塑性エラストマー、ポリブタジエン系樹脂
関連材料ポリブタジエン天然ゴムスチレンブタジエンゴム

特徴

  • 1,2結合を多く含むシンジオタクチック構造のポリブタジエン系材料である。
  • 結晶性を有するため、ゴム的な柔軟性と熱可塑性樹脂としての成形加工性を併せ持つ。
  • 透明性、柔軟性、低温ヒートシール性、引裂き強さに優れる。
  • 二重結合を含むため、加硫、架橋、グラフト反応などの化学反応性を利用できる。
  • 天然ゴム、SBR、BRなどとの相溶性が比較的良く、ゴム改質材として使用される。
  • 耐油性、耐芳香族溶剤性、耐酸化性は用途条件により注意が必要である。

構造式

シンジオタクチック-1,2ポリブタジエンは、1,3-ブタジエンが主に1,2付加で重合し、側鎖にビニル基を持つ構造である。

基本構造単位:-[CH2-CH(CH=CH2)]n

種類

種類の名称特徴長所短所主な用途
低融点タイプ融点が約70℃前後の柔軟タイプである。低温ヒートシール性、柔軟性、透明性に優れる。耐熱性は高融点タイプより低い。フィルム、医療用チューブ、包装材
中融点タイプ融点が約90~100℃の標準タイプである。柔軟性と機械的強度のバランスが良い。高温荷重下では寸法安定性に注意を要する。シート、成形品、ゴム改質材
高融点タイプ融点が約120℃前後の高結晶タイプである。硬さ、流動性、加工性に優れる。低温柔軟性は低融点タイプより劣る。タイヤ、靴底、硬質エラストマー成形品
ゴム改質用タイプNR、SBR、BRなどに配合して使用するタイプである。硬度、耐摩耗性、加工性の調整がしやすい。配合設計により物性が大きく変化する。タイヤ、ベルト、ホース、スポンジ製品
長所
  • 熱可塑性であり、押出成形、射出成形、カレンダー成形などが可能である。
  • 柔軟性、透明性、低温ヒートシール性に優れる。
  • ゴム材料との相溶性が良く、改質材として利用しやすい。
  • 側鎖ビニル基により架橋・加硫などの反応設計が可能である。
短所
  • 不飽和結合を含むため、酸化劣化、オゾン劣化、紫外線劣化に注意を要する。
  • 芳香族炭化水素、塩素系溶剤、強い膨潤性溶剤には弱い。
  • 汎用ポリオレフィンに比べて材料価格が高くなりやすい。
成形加工
加工方法適正概要注意点
押出成形フィルム、シート、チューブ、異形押出に適する。融点グレードに応じた温度設定が必要である。
射出成形柔軟成形品、靴底、改質材配合品に使用される。結晶化速度と離型性を考慮する。
カレンダー成形シート、フィルム、ゴム配合シートに適用できる。ロール温度と粘着性の管理が重要である。
ブロー成形薄肉中空品では条件により適用可能である。溶融張力が不足する場合がある。
加硫・架橋成形ゴム配合材として架橋し、耐熱性や弾性を調整できる。配合剤、加硫系、架橋密度の設計が必要である。

代表的な物性値又は機械的性質

項目単位代表値備考
密度g/cm30.901~0.91低密度のポリブタジエン系樹脂である。
融点約70~126グレードにより大きく異なる。
1,2結合量%約90以上シンジオタクチック1,2構造を主体とする。
結晶化度%15~35柔軟性と熱可塑性の発現に関係する。
平均分子量約100,000~200,000代表的な商業グレードの範囲である。
MFRg/10min約3~9150℃、21.2Nでの代表値である。
硬さ軟質~中硬質融点、結晶化度、配合により変化する。
耐寒性良好ゴム的性質を有し、低温柔軟性を示す。

耐薬品性

薬品分類耐性備考
吸水性は低く、一般的な水環境では安定である。
希酸常温の希酸には比較的安定である。
希アルカリ常温の希アルカリには比較的安定である。
アルコール類エタノール、イソプロパノールには比較的良好である。
脂肪族炭化水素膨潤する場合がある。
芳香族炭化水素×トルエン、キシレンなどでは膨潤・溶解に注意を要する。
塩素系溶剤×ジクロロメタン、クロロホルムなどには不適である。
ケトン類アセトン、MEKではグレードや温度により膨潤する場合がある。
油脂類鉱油、燃料油では膨潤に注意する。

更に詳しくはプラスチックの耐薬品性一覧表を参照。

SP値(溶解度パラメータ)
項目SP値(δ)備考
シンジオタクチック-1,2ポリブタジエン系 標準16.7~17.3 MPa1/2低極性で炭化水素系に近く、非極性溶剤で膨潤しやすい。
低融点タイプ16.6~17.2 MPa1/2柔軟性が高く、溶剤による膨潤影響を受けやすい。
中融点タイプ16.8~17.4 MPa1/2標準的な耐溶剤性を示す。
高融点タイプ17.0~17.6 MPa1/2結晶性が高く、低融点タイプより膨潤しにくい傾向がある。
GF配合タイプ17.2~18.0 MPa1/2ガラス繊維により寸法安定性は向上するが、樹脂相の耐溶剤性が支配的である。
CF配合タイプ17.0~17.8 MPa1/2炭素繊維により剛性は向上するが、溶剤膨潤は母材樹脂に依存する。
溶解性の目安
  • SP値差が小さい溶剤ほど、膨潤・軟化・溶解が起こりやすい。
  • シンジオタクチック-1,2ポリブタジエン系は低極性材料であるため、芳香族炭化水素、塩素系溶剤、燃料油には注意を要する。
  • 水、アルコール、希酸、希アルカリには比較的安定である。
SP値から見た耐溶剤性
SP値から見た耐溶剤性
薬品・溶剤SP値(δ)MPa1/2SP値差評価備考
47.930.9SP値差が大きく、吸水・溶解は起こりにくい。
メタノール29.712.7極性が高く、常温では比較的安定である。
エタノール26.09.0短時間接触では比較的良好である。
イソプロピルアルコール23.56.5大きな溶解性は低いが、長時間接触では確認が必要である。
アセトン19.92.9膨潤、軟化に注意を要する。
MEK19.02.0グレードや温度により膨潤する場合がある。
酢酸エチル18.61.6SP値が近く、膨潤しやすい。
n-ヘキサン14.92.1非極性溶剤であり、膨潤に注意する。
トルエン18.21.2×芳香族炭化水素であり、膨潤・溶解のリスクが高い。
キシレン18.01.0×膨潤・軟化を起こしやすい。
ジクロロメタン20.23.2×塩素系溶剤であり、不適である。
クロロホルム19.02.0×膨潤・溶解しやすいため使用を避ける。
ガソリン14~161.0~3.0燃料油では膨潤や物性低下に注意する。

上表はシンジオタクチック-1,2ポリブタジエン系のSP値中央値を17.0 MPa1/2として算出した目安である。

評価基準:◎:非常に良好 ○:概ね良好 △:注意が必要 ×:不適

特に注意する溶剤:トルエン、キシレン、クロロホルム、ジクロロメタン、ガソリン、鉱油類は膨潤・軟化・物性低下を起こしやすいため、実使用条件での確認が必要である。

製法

シンジオタクチック-1,2ポリブタジエン系は、1,3-ブタジエンを立体特異性触媒により1,2付加重合させて製造する。コバルト系触媒、アルミノキサン系助触媒などを用い、1,2結合量とシンジオタクチック性を制御する。

基本反応式:

n CH2=CH-CH=CH2 → -[CH2-CH(CH=CH2)]n

詳細な利用用途

  • フィルム、シート、包装材料
  • 医療用チューブ、柔軟チューブ
  • 低温ヒートシール材
  • 靴底、スポンジ製品、柔軟成形品
  • タイヤ用改質材
  • 天然ゴム、SBR、BRの硬度・加工性改良材
  • 樹脂改質材、エラストマー改質材
  • 接着性、架橋性を利用した特殊配合材料

関連材料との比較

比較材料特徴シンジオタクチック-1,2ポリブタジエン系との違い関連リンク
ポリブタジエンゴム弾性、低温特性、耐摩耗性に優れる。一般的なBRはゴム用途が主体であり、s-1,2-PBは熱可塑性加工性を持つ。ポリブタジエン
天然ゴム高弾性、高引張強さを持つ天然由来ゴムである。s-1,2-PBは熱可塑性があり、成形加工しやすい。天然ゴム
SBRタイヤ、ゴム製品に広く使われる合成ゴムである。s-1,2-PBはSBRの硬度、加工性、耐摩耗性の改質に使われる。スチレンブタジエンゴム
ポリエチレン低価格で耐水性、耐薬品性に優れる汎用樹脂である。s-1,2-PBは柔軟性、ゴム的性質、反応性に優れる。ポリエチレン
EVA柔軟性、透明性、接着性に優れる共重合体である。s-1,2-PBは低極性で、ゴム材料との相溶性に優れる。エチレン酢酸ビニル共重合体

代表的なメーカー

メーカー代表製品・グレード特徴
ENEOS MaterialsRBシリーズシンジオタクチック-1,2ポリブタジエン系の代表的な商業グレードである。
JSRJSR ATシリーズタイヤ用途、ゴム改質用途向けの高1,2結合タイプである。
海外コンパウンダー各社RB系改質材、TPEコンパウンド靴底、スポンジ、フィルム、ゴム改質用途で供給される。
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