概要
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 材料名 | ナイロン6 |
| 略記号 | PA6 |
| IUPAC | Poly[imino(1-oxohexane-1,6-diyl)](代表的な高分子命名) |
| 英語名 | Polyamide 6 / Nylon 6 / Polycaprolactam |
| 日本語名 | ポリアミド6、6ナイロン、ポリカプロラクタム |
| 分類 | 脂肪族ポリアミド、半結晶性熱可塑性樹脂 |
| プラスチック分類 | エンジニアリング・プラスチック |
| 代表構造 | [-NH-(CH2)5-CO-]n |
| CAS No. | 25038-54-4(ポリアミド6の代表的登録番号) |
| 構造・主成分 | ε-カプロラクタムの開環重合体。主鎖中にアミド結合を持つ。 |
| 主な用途 | 自動車部品、ギア、軸受、結束バンド、電気部品、フィルム、モノフィラメント、繊維、チューブ |
ナイロン6は、ε-カプロラクタムを主原料として開環重合により得られる脂肪族ポリアミドである。主鎖中のアミド結合間に水素結合が形成されるため、比較的高い強度、靭性、耐摩耗性、耐疲労性及び耐油性を示す。射出成形材料だけでなく、フィルム、繊維、モノフィラメント、チューブ及び大型キャスト品まで用途範囲が広い。
一方、アミド基は水分と強く相互作用するため、PA6は吸湿性が高い。乾燥状態では剛性と強度が高いが、吸湿すると靭性が増す一方で、弾性率、強度、電気絶縁性及び寸法精度が低下する。設計値は絶乾、成形直後、23℃・50%RH調節後又は吸湿平衡のどの状態であるかを明確にする必要がある。
実使用では、グレード、結晶化度、含水率、GF等の強化材量、温度、濃度、荷重、応力、湿度、使用時間、試験片形状及び成形条件を確認し、実部品で評価することが重要である。
特徴
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 長所 | 強度、靭性、耐摩耗性、耐疲労性、耐油性、成形性のバランスに優れる。PA66より低い融点で加工しやすい。 |
| 短所 | 吸水率が高く、吸湿により寸法、弾性率、強度、電気特性が変化する。強酸、酸化剤、熱水・蒸気、高温アルカリでは加水分解に注意する。 |
| 外観 | 自然色は乳白色から半透明。結晶化度、肉厚、顔料、充填材により透明感と表面外観が変わる。 |
| 耐熱性 | 融点は一般に約215~225℃。非強化標準材の連続使用温度は概ね80~100℃が目安であり、熱安定化・GF強化グレードでは高温側へ拡張される。 |
| 耐薬品性 | 油、燃料、脂肪族炭化水素、アルカリに比較的良好であるが、酸、フェノール類、強酸化剤、熱水では注意が必要である。 |
| 加工性 | 射出、押出、フィルム、ブロー、モノフィラメント、キャスト重合に適用できる。成形前乾燥と滞留管理が重要である。 |
| 分類上の注意 | ナイロンはポリアミドの慣用総称である。PA6、PA66、PA11、PA12、PPA、MXD6等は構造と物性が異なるため同一材料として扱わない。 |
長所
- 耐摩耗性、耐疲労性、耐衝撃性のバランスに優れる。
- 油、燃料及び脂肪族炭化水素に比較的安定である。
- 射出、押出、フィルム、繊維、キャスト重合等の加工方法に対応する。
- GF、CF、難燃剤、摺動改質剤等による高機能化が容易である。
短所
- 吸湿による寸法変化と物性変化が大きい。
- 強酸、フェノール類、酸化剤、熱水・蒸気で劣化しやすい。
- 無安定グレードは紫外線及び高温酸化で黄変・脆化しやすい。
- 結晶化収縮と繊維配向により反りが生じる場合がある。
構造式

代表的な繰返し単位は[-NH-(CH2)5-CO-]nであり、構成単位の分子式はC6H11NOである。ε-カプロラクタムの環が開いて線状高分子を形成する。アミド基間の水素結合は強度、融点及び耐摩耗性に寄与する一方、水分子もアミド基へ結合するため吸湿性の原因となる。
共重合PA6、耐衝撃PA6、難燃PA6、GF・CF強化PA6、摺動PA6等が存在する。改質剤は結晶化、吸水、摩擦、難燃性、電気特性及び耐薬品性を変えるため、標準材の数値をそのまま適用しない。
種類・代表グレード
| グレード区分 | 主な改質・特徴 | 長所 | 短所・注意点 | 主用途 |
|---|---|---|---|---|
| 非強化・標準 | 無充填PA6 | 靭性、耐摩耗、成形性、価格バランス | 吸湿寸法変化、剛性低下 | 一般機械部品、結束バンド、筐体 |
| 高粘度・押出 | 高分子量化、粘度調整 | 溶融強度、チューブ・フィルム適性 | 乾燥不足で粘度低下 | フィルム、チューブ、モノフィラメント |
| 高流動・射出 | 粘度・結晶化調整 | 薄肉充填、サイクル短縮 | 靭性・ウェルド強度との両立確認 | 薄肉部品、コネクタ |
| 耐衝撃 | エラストマー等で改質 | 低温衝撃、ノッチ靭性 | 剛性・耐熱・耐溶剤性が低下する場合 | クリップ、カバー |
| 耐熱安定化 | 熱安定剤、銅系安定剤等 | 熱老化寿命を改善 | 色調、電気特性、規制適合を確認 | エンジンルーム部品 |
| 難燃 | ハロゲン系又はハロゲンフリー難燃剤 | UL 94 V-0等の認定グレードが存在 | 吸湿、腐食性、物性、厚さ依存 | 電気・電子部品 |
| GF15~45%強化 | 短繊維ガラス強化 | 剛性、強度、HDT、寸法安定性 | 異方性、反り、繊維浮き、相手材摩耗 | 構造部品、ハウジング |
| CF強化 | 炭素繊維強化 | 高比剛性、導電性、低熱膨張 | 高価格、異方性、電気絶縁用途不可 | 精密・軽量構造部品 |
| 摺動 | PTFE、シリコーン、油、MoS2等 | 摩擦・摩耗を低減 | 添加剤移行、相手材・PV条件依存 | ギア、軸受、ブッシュ |
| 食品・医療 | 添加剤・色材・品質管理を限定 | 適合証明可能なグレードが存在 | 材料名だけでは適合しない | 食品機械、医療部品 |
成形加工
| 加工方法 | 適性 | 理由 | 主な注意点 |
|---|---|---|---|
| 射出成形 | ◎ | 流動性と結晶化性を利用し複雑形状を量産可能 | 乾燥、金型温度、保圧、反り、吸湿後寸法 |
| 押出成形 | ◎ | 高粘度グレードでフィルム、シート、チューブに適する | 水分による粘度低下、ダイ滞留 |
| ブロー成形 | ○ | 高粘度グレードで中空成形可能 | パリソン強度、吸湿、肉厚分布 |
| Tダイフィルム | ◎ | 耐ピンホール性とガスバリア性を利用 | 吸湿、ネックイン、延伸条件 |
| インフレーション | ○ | 専用高粘度グレードで可能 | バブル安定性、乾燥 |
| 真空・圧空成形 | △ | シート予備成形は可能 | 結晶化、加熱窓、吸湿 |
| 圧縮成形 | △ | 用途限定で可能 | 一般には射出・押出が合理的 |
| キャスト重合 | ◎ | 大型厚肉品をモノマーキャストで製造可能 | 重合収縮、残留モノマー、熱履歴 |
| 3Dプリント | ○ | FDM・粉末床溶融向け材料が存在 | 吸湿、反り、造形温度 |
| 切削加工 | ◎ | 押出・キャスト素材を精密加工可能 | 吸湿寸法変化、発熱、バリ |
| 溶着 | ○ | 熱板、振動、超音波、レーザー等が適用可能 | 含水率、GF量、接合設計 |
| 接着・塗装 | △ | 極性はあるが結晶性と吸湿の影響を受ける | 表面処理、プライマー、乾燥が必要 |
一般的な射出成形条件
| 成形条件項目 | 一般的な目安 | 注意点 |
|---|---|---|
| 予備乾燥 | 80~90℃、4~8 h | 除湿乾燥を推奨。高温長時間で酸化・黄変に注意 |
| 許容含水率 | 概ね0.08~0.15%以下 | 外観・機械特性重視ではメーカー推奨値を優先 |
| シリンダー温度 | 供給部220~240℃、圧縮部230~250℃、計量部240~270℃ | グレード、滞留、せん断発熱で調整 |
| ノズル温度 | 235~260℃ | 糸引き・固化・滞留分解を防止 |
| 樹脂温度 | 240~270℃ | 過熱・長時間滞留で分解、ガス、変色 |
| 金型温度 | 60~90℃ | 外観・寸法安定・結晶化重視では高め |
| 射出圧力 | 60~140 MPa | 製品形状・流動長・GF量で調整 |
| 射出速度 | 中~高速 | 焼け、ジェッティング、ウェルドを確認 |
| 背圧 | 2~10 MPa程度 | 過度なせん断発熱を避ける |
| 成形収縮率・流動方向 | 1.0~1.8%(非強化) | GF強化では0.2~0.8%程度の例、異方性に注意 |
| 成形収縮率・流動直角方向 | 1.2~2.0%(非強化) | 金型温度・保圧・肉厚・結晶化度依存 |
| アニール | 80~150℃、1~4 hの範囲で用途別設定 | 寸法安定化の一方で収縮・酸化・吸湿を管理 |
上記は材料群としての一般的な目安である。実際の条件は分子量、粘度、GF量、難燃剤、製品肉厚、流動長、成形機及びメーカー推奨条件により調整する。
代表的な物性値又は機械的性質
以下は非強化・無充填・標準PA6の代表値又は代表範囲であり、原則として乾燥状態を基準とする。吸湿状態の値と混在させてはならない。
| 項目 | 単位 | 代表値 | 代表範囲 | 試験条件・状態 | 備考・信頼度 |
|---|---|---|---|---|---|
| 密度 | g/cm³ | 1.13 | 1.12~1.15 | 非強化・乾燥状態、23℃ | 一般的代表値、A~B |
| 比重 | 無次元 | 1.13 | 1.12~1.15 | 非強化・乾燥状態 | 密度に準ずる |
| 吸水率・24時間 | % | 0.7 | 0.5~1.2 | ISO 62相当、23℃水中、成形品 | 厚さ・結晶化度依存、B |
| 飽和吸水率 | % | 7.0 | 6.0~10.0 | 23℃水中、平衡 | 試験片厚さ・結晶化度依存、B |
| 引張強さ・降伏 | MPa | 75 | 65~85 | ISO 527相当、乾燥、23℃ | 吸湿で低下、A~B |
| 引張弾性率 | GPa | 2.8 | 2.3~3.2 | ISO 527相当、乾燥、23℃ | 吸湿で大幅低下、A~B |
| 引張破断伸び | % | 50 | 20~200 | 非強化、乾燥、23℃ | 試験速度・調湿に強く依存、B |
| 曲げ強さ | MPa | 100 | 85~120 | ISO 178相当、乾燥、23℃ | 代表範囲、B |
| 曲げ弾性率 | GPa | 2.6 | 2.2~3.0 | ISO 178相当、乾燥、23℃ | 吸湿で低下、A~B |
| アイゾット衝撃強さ・ノッチ付き | kJ/m² | 5 | 3~10 | ISO 180相当、乾燥、23℃ | ASTMのJ/mと混同不可、B |
| ガラス転移温度 | ℃ | 50 | 45~60 | DSC/DMA、乾燥状態 | 吸湿で低下、B |
| 融点 | ℃ | 220 | 215~225 | DSC | 結晶形・熱履歴依存、A |
| HDT・0.45 MPa | ℃ | 160 | 145~180 | ISO 75相当、非強化 | グレード依存、B |
| HDT・1.80 MPa | ℃ | 65 | 55~75 | ISO 75相当、非強化 | GF強化で大幅上昇、B |
| 連続使用温度 | ℃ | 90 | 80~100 | 一般環境、長期 | 熱安定化材は別評価、C |
| 線膨張係数・流動方向 | 10−5/K | 8 | 7~10 | 非強化成形品、23~80℃目安 | 吸湿・配向依存、B |
| 熱伝導率 | W/(m・K) | 0.25 | 0.23~0.30 | 23℃、非強化 | 代表値、B |
| 体積抵抗率 | Ω・cm | 1×1014 | 1×1012~1×1015 | 乾燥、23℃ | 吸湿で低下、B |
| 絶縁破壊強さ | kV/mm | 20 | 15~30 | 乾燥、試験片厚さ依存 | グレード・厚さ依存、B |
| UL 94燃焼性 | - | HB | HB相当が一般的 | 非難燃・厚さ依存 | V-0等は認定難燃グレードのみ |
強化グレードの代表比較
| 区分 | 強化材含有率 | 密度 g/cm³ | 引張強さ MPa | 曲げ弾性率 GPa | HDT 1.80 MPa ℃ | 注意点 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 非強化標準 | 0 wt% | 1.12~1.15 | 65~85 | 2.2~3.0 | 55~75 | 乾燥状態の代表範囲 |
| GF15 | 15 wt% | 1.25~1.30 | 100~150 | 4.5~6.5 | 170~205 | 配向・ウェルド依存 |
| GF30 | 30 wt% | 1.34~1.40 | 140~200 | 7.0~10.0 | 190~215 | 反り・繊維浮き・異方性 |
| GF45 | 45 wt% | 1.48~1.55 | 170~230 | 11~15 | 200~220 | 成形流動・ウェルド・工具摩耗 |
| CF20~30 | 20~30 wt% | 1.25~1.40 | 150~250 | 12~25 | 180~215 | 導電性、異方性、高価格 |
比較用評価スコア
| 評価項目 | スコア | 評価理由 |
|---|---|---|
| 引張強度 | 4 | 非強化でも高く、GF強化で大幅に向上する。 |
| 剛性 | 3 | 乾燥時は良好だが吸湿で低下する。 |
| 衝撃強度 | 4 | 靭性が高く、耐衝撃改質も可能。 |
| 耐熱性 | 3 | 融点は約220℃だが非強化の高荷重HDTは高くない。 |
| 耐薬品性 | 3 | 油・炭化水素に良好、酸・酸化剤・熱水に弱い。 |
| 耐候性 | 2 | 無安定材はUVで劣化しやすい。 |
| 耐加水分解性 | 2 | 高温高湿・熱水・酸で加水分解に注意。 |
| 寸法安定性 | 2 | 吸湿と結晶化収縮の影響が大きい。 |
| 摺動性・耐摩耗性 | 4 | ギア・軸受用途で広く使用される。 |
| 電気絶縁性 | 3 | 乾燥時は良いが吸湿で低下する。 |
| 難燃性 | 2 | 標準材はHB程度、難燃グレードは存在。 |
| 成形加工性 | 4 | 射出・押出・フィルム・キャストに広く対応。 |
| リサイクル性 | 3 | 熱可塑性で再溶融可能だが加水分解・混入管理が必要。 |
| 価格優位性 | 4 | エンプラ中では比較的入手性とコストバランスが良い。 |
耐薬品性
評価は一般的なPA6の傾向であり、薬品濃度、温度、接触時間、浸漬又は飛沫、応力、含水率、結晶化度、添加剤及びグレードにより変化する。◎は一般的条件で影響が小さい、○は概ね使用可能だが確認が必要、△は膨潤・軟化・強度低下・変色等に注意、×は分解又は著しい劣化の可能性が高いことを示す。
| 薬品・環境 | 代表条件 | 評価 | 主な劣化形態 | 備考 |
|---|---|---|---|---|
| 水 | 23℃、短時間~長期 | ○ | 吸水、寸法増加、弾性率低下 | 溶解しないが物性変化を生じる |
| 温水・熱水 | 60~100℃、浸漬 | △ | 吸水、加水分解、強度低下 | 時間・pH・応力依存 |
| 水蒸気 | 100℃以上 | × | 加水分解、脆化 | 長期蒸気用途は不向きな場合が多い |
| 塩酸 | 希薄、23℃ | × | 酸加水分解、強度低下 | 濃度・時間により急速劣化 |
| 硫酸 | 希薄~濃厚、23℃ | × | 溶解・分解 | 一般に不適 |
| 酢酸 | 低濃度、23℃ | △ | 吸収、加水分解 | 濃度・温度上昇で悪化 |
| NaOH・KOH | 低濃度、23℃ | ○ | 長期・高温で加水分解 | 強アルカリ高温は要試験 |
| エタノール・IPA | 23℃ | ○ | 軽微な吸収・寸法変化 | 応力下で確認 |
| グリセリン・グリコール | 23℃ | ○ | 吸収、可塑化 | 高温冷却液は要試験 |
| アセトン・MEK | 23℃ | ○ | 吸収、表面変化 | 短時間は比較的良好、長期確認 |
| 酢酸エチル | 23℃ | ○ | 吸収、膨潤 | 応力・時間依存 |
| トルエン・キシレン | 23℃ | ◎ | 影響小 | 高温長期は確認 |
| ヘキサン・ヘプタン | 23℃ | ◎ | 影響小 | 油添加剤の影響を確認 |
| ジクロロメタン | 23℃ | △ | 膨潤、抽出 | 条件により応力割れ・軟化 |
| フェノール・クレゾール | 23℃ | × | 溶解・著しい膨潤 | PAの強い溶媒となり得る |
| エンジン油・潤滑油 | 23~120℃ | ◎ | 熱酸化、添加剤影響 | 高温寿命を確認 |
| ガソリン・軽油 | 23℃ | ○ | 吸収、添加剤影響 | アルコール混合燃料は別評価 |
| ブレーキ液 | 23~120℃ | △ | 吸収、軟化、加水分解 | 液種と温度で大差 |
| 次亜塩素酸塩 | 低濃度、23℃ | △ | 酸化、変色、強度低下 | 有効塩素、pH、時間依存 |
| 海水・塩水 | 23℃ | ○ | 吸水、寸法変化 | 金属インサート腐食も確認 |
SP値(溶解度パラメータ)
| 項目 | 値・内容 |
|---|---|
| PA6の代表的SP値 | 約24~28 MPa1/2。資料、結晶化度、含水状態、算定法により幅がある。比較用代表値として27 MPa1/2程度を用いる場合がある。 |
| 注意 | SP値は非反応性の溶解・膨潤傾向をみる一次指標である。PA6では水素結合、結晶性、吸水、酸・アルカリ加水分解、酸化、応力、温度を併せて評価する必要がある。 |
溶解性の目安
| SP値差 Δδ MPa1/2 | 溶解・膨潤の目安 | 判定 |
|---|---|---|
| 0~2 | 膨潤・軟化しやすい | × |
| 2~5 | 条件により膨潤する | △ |
| 5~8 | 短時間接触では比較的安定 | ○ |
| 8以上 | 溶解・膨潤しにくい | ◎ |
SP値から見た耐溶剤性
| 溶剤 | SP値 MPa1/2 | PA6との差(代表27) | SP値評価 | 実務上の補足 |
|---|---|---|---|---|
| 水 | 47.9 | 20.9 | ◎ | SP差は大きいが吸水・加水分解を生じるためSP判定のみでは不可 |
| エタノール | 26.0 | 1.0 | × | 実際には常温で直ちに溶解しない。結晶性と水素結合の影響が大きい |
| IPA | 23.5 | 3.5 | △ | 一般に比較的良好だが長期・応力下を確認 |
| アセトン | 20.0 | 7.0 | ○ | 短時間は比較的安定、長期吸収を確認 |
| MEK | 19.0 | 8.0 | ◎ | 実際の長期接触・応力下を確認 |
| 酢酸エチル | 18.2 | 8.8 | ◎ | 吸収・添加剤抽出の可能性 |
| トルエン | 18.2 | 8.8 | ◎ | 一般に良好 |
| ヘキサン | 14.9 | 12.1 | ◎ | 一般に良好 |
| ジクロロメタン | 20.2 | 6.8 | ○ | 実際には膨潤・抽出に注意 |
| フェノール | 24.3 | 2.7 | △ | 水素結合性が強く、実際には溶解性が高いため不適 |
PA6は半結晶性で強い水素結合を持つため、単一のSP値差と実際の溶解・膨潤挙動が一致しない場合が多い。特に水、アルコール、フェノール、酸及び熱水では、極性、水素結合、結晶性、反応性及び加水分解を含めて評価する。
製法

代表反応は、n個のε-カプロラクタムが開環して[-NH-(CH2)5-CO-]nを形成する平衡重合である。工業的には水を開始剤として加水分解開環を行い、高温で重合し、未反応モノマー及び低分子量成分を低減した後にペレット化する。用途に応じて分子量、末端基、残留モノマー、熱安定性及び粘度を調整する。
| 工程 | 内容 | 管理ポイント |
|---|---|---|
| 原料調整 | ε-カプロラクタム、水、必要に応じて分子量調整剤を使用 | 純度、水分、末端基制御 |
| 開環・加水分解開始 | 少量の水によりラクタム環を開環しアミノカプロン酸種を形成 | 温度、圧力、反応開始の均一性 |
| 開環重合 | 一般に高温で平衡重合し、PA6鎖を形成 | 約240~280℃を目安に、滞留・水除去・不活性雰囲気を管理 |
| 脱揮・洗浄 | 未反応カプロラクタム、低分子量成分を低減 | 残留モノマー、臭気、抽出分 |
| ペレット化 | ストランド又は水中カットでペレット化 | 冷却、含水、異物 |
| コンパウンド | GF、難燃剤、熱安定剤、潤滑剤、顔料等を二軸押出で混練 | 繊維長、分散、熱履歴、揮発分 |
| 乾燥・包装 | 低含水率へ乾燥し防湿包装 | 吸湿再発防止、ロット管理 |
詳細な利用用途
| 用途分野 | 代表用途 | 適性・選定理由 | 主な注意点 |
|---|---|---|---|
| 自動車 | 吸気系、ファン、カバー、クリップ、ギア、チューブ | 耐油、耐摩耗、軽量、GF強化性 | 熱老化、冷却液、吸湿、燃料、振動 |
| 電気・電子 | コネクタ、端子台、コイルボビン、ケーブル部品 | 絶縁性、成形性、難燃グレード | 吸湿時電気特性、UL認定、CTI |
| 機械部品 | ギア、軸受、ブッシュ、ローラー | 耐摩耗、疲労、自己潤滑性 | PV値、相手材、吸湿寸法、クリープ |
| フィルム・包装 | 食品包装、多層フィルム、真空包装 | 耐ピンホール、酸素バリア、靭性 | 吸湿でバリア性変化、食品適合 |
| 繊維・モノフィラメント | 衣料、工業糸、ブラシ、釣糸 | 強度、耐摩耗、染色性 | 吸湿、紫外線、熱履歴 |
| 医療 | チューブ、部品、フィラメント | 靭性、加工性 | ISO 10993、USP、滅菌、抽出物はグレード確認 |
| 食品機械 | ギア、ガイド、ローラー | 耐摩耗、低騒音 | 食品接触証明、洗浄薬品、吸水 |
| 建築・設備 | ファスナー、固定具、配管補助部品 | 靭性、耐摩耗、成形性 | 屋外耐候、吸湿、難燃 |
| 3Dプリント | 治具、試作、機能部品 | 靭性、耐熱、耐摩耗 | 造形前乾燥、反り、吸湿後寸法 |
用途別選定
| 用途 | 適性 | 理由 | 主な注意点 |
|---|---|---|---|
| ギア・軸受・ブッシュ | ◎ | 耐摩耗、疲労、低騒音 | 吸湿寸法、PV値、相手材、潤滑 |
| ローラー・摺動板 | ◎ | 靭性と耐摩耗 | 摩耗粉、寸法、荷重 |
| ねじ・ボルト・ナット | ○ | 軽量、絶縁、耐食 | クリープ、締付トルク、吸湿 |
| ポンプ・バルブ部品 | ○ | 油・燃料・アルカリに比較的良好 | 酸、熱水、圧力、キャビテーション |
| チューブ・ホース | ◎ | 靭性、耐ピンホール、押出性 | 透過、燃料組成、加水分解 |
| タンク・大型厚肉品 | ○ | キャストPA6で大型品が可能 | 吸湿、残留応力、薬液 |
| フィルム・シート | ◎ | 靭性、ガスバリア、耐ピンホール | 吸湿時バリア低下 |
| 電気コネクタ | ○ | 強度、難燃グレード、成形性 | 吸湿電気特性、寸法、UL |
| 透明カバー・レンズ | × | 半透明で吸湿・結晶化の影響 | 光学用途には一般に不向き |
| 自動車エンジンルーム | ○ | 耐油、耐熱安定化・GF強化が可能 | 長期熱老化、冷却液、燃料 |
| 食品機械部品 | ○ | 耐摩耗、低騒音、食品適合材あり | 洗浄剤、吸水、溶出証明 |
| 医療機器部品 | △ | 医療グレードは存在 | 滅菌、抽出物、生体適合性 |
| 半導体・真空装置 | △ | 機械特性は利用可能 | 吸湿、アウトガス、粒子、清浄度 |
| 屋外部品 | △ | 耐候安定化・黒色材で対応可能 | UV、吸湿、凍結融解 |
| 接着剤・塗料 | × | 通常は成形材料である | 反応性PA又は粉体塗料等は別材料系 |
| 複合材料マトリックス | ◎ | GF・CFとの接着、熱可塑性リサイクル | 含浸、吸湿、界面、熱履歴 |
関連材料との比較
| 比較材料 | 特徴 | PA6との違い |
|---|---|---|
| ナイロン66(PA66) | 高融点、高剛性、耐熱性 | PA66は耐熱・高温剛性で有利。PA6は成形温度、靭性、コスト、表面外観で有利な場合がある。 |
| ポリアセタール(POM) | 低吸水、寸法安定、低摩擦 | POMは精密寸法と低摩擦で有利。PA6は耐摩耗、接着・染色性、フィルム・繊維用途で有利。 |
| PBT | 低吸水、電気特性、寸法安定 | PBTは吸湿寸法変化が小さい。PA6は靭性、耐摩耗、油中強度で有利な場合がある。 |
| PET | 高剛性、低吸水、ガスバリア | PETは寸法・電気特性で有利。PA6は成形性、靭性、耐摩耗で有利。 |
| PPA | 半芳香族PA、高耐熱、低吸水 | PPAは高温寸法安定性に優れるが、PA6は低コストで加工しやすい。 |
| PPS | 高耐熱、耐薬品、難燃、低吸水 | PPSは過酷な熱・薬品環境に有利。PA6は靭性、溶着性、コストで有利。 |
| MXD6ナイロン | 高剛性、低ガス透過、比較的低吸水 | MXD6はバリア・寸法安定で有利。PA6は靭性、汎用性、供給性で有利。 |
| ポリアミド(PA) | PA6、PA66、PA11、PA12等の総称 | PA6はその一種であり、ラクタム開環重合由来の構造と約220℃の融点を持つ。 |
代表的なメーカー
| メーカー | 代表製品・ブランド | 概要 |
|---|---|---|
| UBE株式会社 | UBE NYLON | ナイロン6の成形材料、フィルム、工業用途向けグレードを展開する。 |
| ユニチカ株式会社 | UNITIKA Nylon 6 | 非強化、高流動、耐衝撃、GF強化等のPA6グレードを展開する。 |
| 東レ株式会社 | AMILAN® | ナイロン樹脂として自動車、電気・電子、工業用途向けグレードを展開する。 |
| BASF | Ultramid® B | PA6系を含むエンジニアリングプラスチックを展開する。 |
| Envalior | Durethan® B | PA6系の非強化、強化、難燃、耐熱グレードを展開する。 |
| DOMO Chemicals | TECHNYL® / DOMAMID® | PA6系を含むポリアミド材料を展開する。 |
ブランド及び供給グレードは地域・時期により変わる。選定時はメーカーの最新TDS、SDS、UL認定、食品・医療適合書及び供給拠点を確認する。
接合・表面処理適性
| 方法 | 適性 | 実務上の要点 |
|---|---|---|
| 熱板・振動溶着 | ◎ | 乾燥状態、溶融量、バリ受け、GF配向を管理する。 |
| 超音波溶着 | ○ | 近距離エネルギーダイレクタが有効。吸湿とGF量で条件が変わる。 |
| レーザー溶着 | ○ | 透過材と吸収材の組合せ、顔料、肉厚を確認する。 |
| 高周波溶着 | △ | 適用性は配合・周波数・形状依存である。 |
| 接着剤接合 | △ | 脱脂、乾燥、プラズマ又はプライマー処理を推奨する。 |
| 機械締結・インサート | ○ | クリープ、吸湿膨張、ボス割れ、締付トルクを確認する。 |
| 塗装・印刷 | ○ | 表面清浄化、乾燥、コロナ・プラズマ処理で改善する。 |
| めっき・蒸着 | △ | 専用前処理と粗化、吸湿管理が必要である。 |
寸法精度・設計上の注意
- 吸湿により寸法が増加し、弾性率及び強度が低下するため、設計基準状態を明確にする。
- 成形収縮、結晶化度、肉厚、ゲート位置及びGF配向により異方性と反りが生じる。
- 短時間の引張強さを設計許容応力として使用せず、温度・湿度・時間を考慮したクリープデータと安全率を用いる。
- ウェルド、ノッチ、ねじボス、圧入部及び金属インサート周辺は応力集中と吸湿膨張を考慮する。
品質・成形不良及び注意点
| 不良・劣化現象 | 主な原因 | 発生条件・影響 | 予防策 | 推奨確認試験 |
|---|---|---|---|---|
| シルバーストリーク・気泡 | ペレット吸湿、揮発分 | 表面銀条、強度低下 | 除湿乾燥、防湿搬送 | 実成形、含水率測定 |
| 加水分解 | 水分と高温、酸・アルカリ | 分子量低下、脆化、粘度低下 | 乾燥、温度・滞留低減、安定化材 | MFR/粘度、熱水、85℃85%RH |
| 反り・寸法変化 | 結晶化、配向、吸湿、GF異方性 | 組立不良、ギア精度低下 | ゲート・肉厚・金型温度最適化、調湿条件統一 | 寸法、吸水、ヒートサイクル |
| ウェルド強度低下 | 低樹脂温度、ガス、GF配向 | 破断起点 | ベント、温度、速度、ゲート改善 | 実部品強度、疲労 |
| ガス焼け・黒点 | 過熱、長時間滞留、デッドスポット | 変色、臭気、炭化物 | パージ、滞留短縮、設備清掃 | 外観、GC-MS必要時 |
| 熱酸化劣化 | 高温・酸素・金属接触 | 黄変、脆化、強度低下 | 熱安定化材、温度低減 | 熱老化、引張保持率 |
| 紫外線劣化 | UVと酸素 | 退色、表面亀裂、脆化 | 耐候グレード、黒色化、遮光 | キセノンアーク |
| 摩耗・摩耗粉 | 高PV、粗い相手材、無潤滑 | 寸法損失、粉発生 | 摺動グレード、潤滑、相手材最適化 | 摩耗、摩擦係数、PV |
| 応力割れ・薬液劣化 | 残留応力と酸・フェノール・塩素系溶剤等 | クラック、破損 | アニール、応力低減、実薬品評価 | 定ひずみESC試験 |
| 金属インサート周辺割れ | 締結応力、吸湿寸法変化、急冷 | クラック、トルク低下 | ボス設計、予熱、圧入量管理 | トルク、温湿度サイクル |
| アウトガス・溶出 | 残留モノマー、低分子、添加剤 | 臭気、汚染、食品・医療不適合 | 低抽出グレード、洗浄、証明書確認 | GC-MS、溶出・抽出試験 |
法規制・認証
| 法規制・認証 | 一般的な扱い | 確認事項 |
|---|---|---|
| RoHS・REACH・SVHC | 適合可能なグレードが広く存在 | メーカー、色、添加剤、製造拠点ごとの最新証明書を確認 |
| ELV・TSCA・Proposition 65 | 用途・地域別に適合確認が必要 | 意図添加物、不純物、顔料、難燃剤を確認 |
| EU食品接触・FDA・日本食品衛生法 | 食品接触用途向けグレードが存在 | 接触食品、温度、時間、繰返し使用、溶出条件を確認 |
| USP Class VI・ISO 10993 | 医療用途向け特定グレードで評価例がある | 材料群全体の適合ではない。滅菌法・使用部位を確認 |
| UL 94・RTI・CTI | 認定グレードが存在 | グレード、色、厚さ、認定ファイルを確認 |
| PFAS関連規制 | PA6主鎖自体はフッ素を含まない | 摺動材、離型剤、加工助剤にフッ素系添加剤を含む可能性を確認 |
| リサイクル表示 | ISO 11469等で >PA6< 表示が用いられる | GF・難燃・充填材を付記し、異材混入を管理 |
環境・リサイクル性及び供給性
| 項目 | 評価・概要 | 注意点 |
|---|---|---|
| 熱可塑性・リサイクル | 再溶融によるマテリアルリサイクルが可能 | 乾燥、熱履歴、加水分解、異材・GF・難燃剤混入を管理 |
| ケミカルリサイクル | 解重合してカプロラクタム等を回収する技術が存在 | 回収純度、着色・添加剤、経済性に依存 |
| 再生材 | 用途限定で利用可能 | 分子量、色、臭気、異物、疲労・衝撃低下を確認 |
| 生分解性 | 一般的なPA6は生分解性プラスチックではない | バイオベースと生分解性を混同しない |
| 焼却 | 窒素を含み、燃焼条件によりNOx、CO、煙等が発生 | 適切な燃焼・排ガス処理が必要 |
| 価格区分 | 中価格~比較的低価格のエンプラ | 市況、数量、GF量、難燃、色で変動 |
| 供給性 | 国内外で高く、ペレット、板、丸棒、フィルム、チューブ等が入手可能 | 医療・食品・特殊色はMOQと納期を確認 |
推奨確認試験
- 吸水・寸法変化試験:23℃水中、23℃・50%RH、高温高湿等で質量、寸法、弾性率及び強度を測定する。
- 実薬品浸漬試験:実濃度・実温度・実時間で質量、寸法、外観、引張強度及び分子量変化を確認する。
- 応力負荷下の耐薬品試験:実使用応力又は定ひずみ治具を用い、クラック及び破断時間を確認する。
- 熱水・加水分解試験:80~100℃の温水又は85℃・85%RHで、粘度、強度、伸び及び寸法を追跡する。
- 熱老化・ヒートサイクル試験:最低使用温度から最高使用温度の繰返し後に物性保持率と締結部を確認する。
- クリープ・疲労試験:実温度、実湿度、実応力、目標寿命及び繰返し回数で評価する。
- 摩耗・摩擦試験:相手材、表面粗さ、荷重、速度、温度、湿度、潤滑条件を実機条件へ合わせる。
- 電気・難燃試験:吸湿前後の絶縁、CTI、UL 94相当試験を製品厚さと色で確認する。
- 食品・医療用途:実接触条件で溶出・抽出、臭気、滅菌耐久性及び必要な法規制適合を確認する。
- 実成形・実部品耐久試験:量産機、実金型、実乾燥、再生材比率、ウェルド及び組立応力を含めて確認する。
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