| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 材料名 | 軟質ウレタンフォーム |
| 略記号 | FPUF、PUF、PUフォーム、軟質PUフォーム |
| IUPAC | ポリウレタンは原料組成により構造が変わるため、単一のIUPAC名では表しにくい。代表的にはウレタン結合、すなわちカルバメート結合(-NH-CO-O-)を有する高分子発泡体である。 |
| 英語名 | Flexible Polyurethane Foam / Flexible PU Foam |
| 日本語名 | 軟質ポリウレタンフォーム、軟質PUフォーム、スポンジウレタン、ウレタンスポンジ、軟質発泡ウレタン |
| 分類 | 熱硬化性樹脂系発泡体、ポリウレタン系フォーム、発泡プラスチック |
| プラスチック分類 | 一般にはプラスチック系発泡材料に分類される。エンプラ、スーパーエンプラではなく、クッション性、吸音性、断熱性、軽量性を利用するフォーム材料である。 |
| 化学式または代表構造 | 代表構造:-R-NH-CO-O-R’-O-CO-NH-R-。実際にはポリオール、イソシアネート、発泡剤、水、触媒、整泡剤、添加剤により組成が変わる。 |
| CAS No. | ポリウレタンとしては 9009-54-5 が用いられることがある。ただし、軟質ウレタンフォームは配合物であり、製品ごとにCAS No.で一義的に表せない場合が多い。 |
| 構造・主成分 | ポリエーテルポリオールまたはポリエステルポリオールと、TDI、MDIなどのジイソシアネートを主原料とする。水との反応で発生するCO2や物理発泡剤によりセル構造を形成する。 |
| 主な用途 | 家具・寝具用クッション、自動車シート、吸音材、緩衝材、包装材、フィルター材、スポンジ、シール材、建築内装材、医療・介護用クッション材など。 |
概要
軟質ウレタンフォームは、ポリウレタン樹脂を発泡させた柔軟な多孔質材料である。一般に低密度で、圧縮変形に対する回復性、クッション性、吸音性、断熱性に優れる。家具、寝具、自動車内装、包装、建築、医療・介護分野など、荷重を受けながら柔軟性を必要とする用途で広く使用される。
原料にはポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、TDI、MDI、水、アミン触媒、金属触媒、シリコーン系整泡剤、難燃剤、着色剤などが用いられる。一般的にはポリエーテル系は耐加水分解性や低温柔軟性に優れ、ポリエステル系は引張強さ、耐油性、耐摩耗性に優れる傾向がある。ただし、実際の性能はフォーム密度、セル構造、架橋密度、原料配合、発泡条件に大きく依存する。
軟質ウレタンフォームは、射出成形用の熱可塑性樹脂ペレットとは異なり、原料液を混合して発泡・硬化させる反応成形材料である。そのため、材料選定では引張強さや曲げ弾性率だけでなく、密度、硬さ、反発弾性、圧縮永久ひずみ、通気性、セルサイズ、燃焼性、VOC、耐加水分解性、耐熱老化性などを確認する必要がある。
特徴
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 長所 | 軽量で柔軟性、クッション性、衝撃吸収性、吸音性、断熱性、加工性に優れる。密度や硬さを広い範囲で調整でき、用途に応じて低反発、高反発、難燃、帯電防止、低VOCなどのグレード設計が可能である。 |
| 短所 | 熱、紫外線、湿熱、酸化、加水分解により劣化する場合がある。強溶剤、芳香族炭化水素、ケトン、エステル、塩素系溶剤では膨潤、軟化、強度低下が起こりやすい。長期荷重ではへたり、圧縮永久ひずみが問題になることがある。 |
| 外観 | 一般に白色、淡黄色、灰色、黒色、着色品などがある。連続気泡型が多く、スポンジ状の柔らかい外観を示す。黄変はポリウレタン系材料で比較的起こりやすく、光、熱、酸化、NOxなどの影響を受ける。 |
| 耐熱性 | 連続使用温度は一般に70〜100℃程度が目安である。短時間では120℃前後まで使用される場合もあるが、圧縮応力、湿度、酸化雰囲気、難燃剤、密度により劣化速度が変わる。 |
| 耐薬品性 | 水、希薄な中性洗剤、短時間の低級アルコールには比較的耐える場合がある。一方で、強酸、強アルカリ、ケトン、エステル、芳香族炭化水素、塩素系溶剤には弱い傾向がある。ポリエステル系は加水分解に注意が必要である。 |
| 加工性 | スラブ発泡、モールド発泡、注入発泡、裁断、打抜き、スリット、貼合、ラミネート、熱圧縮加工などに適する。熱可塑性樹脂のような再溶融成形は基本的に困難である。 |
| 分類上の注意 | 軟質ウレタンフォームはポリウレタンの発泡体であるが、熱可塑性ポリウレタン(TPU)とは加工法、物性評価、耐熱性、耐溶剤性が異なる。また、硬質ウレタンフォームとは発泡構造、柔軟性、用途が大きく異なる。 |
構造式
代表的な反応と構造単位
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| ウレタン結合の生成 | R-N=C=O + R’-OH → R-NH-CO-O-R’ |
| 水発泡反応 | R-N=C=O + H2O → R-NH2 + CO2↑ |
| 尿素結合の生成 | R-N=C=O + R’-NH2 → R-NH-CO-NH-R’ |
| 代表的な構造単位 | -R-NH-CO-O-R’-O-CO-NH-R- |
| 化学式の表示 | 軟質ウレタンフォームは配合物であり、単一の分子式では表しにくい。白黒の構造式画像を作成する場合は、ウレタン結合 -NH-CO-O- と尿素結合 -NH-CO-NH- を中心に表示するのが実用的である。 |
| モノマーまたは構成単位 | ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、TDI、MDI、水、鎖延長剤、架橋剤、触媒、整泡剤など。 |
| 共重合体・変性グレード | ポリエーテル系、ポリエステル系、MDI系、TDI系、高反発、低反発、難燃、帯電防止、低VOC、抗菌、防カビ、耐加水分解、低臭気などのグレードがある。 |
軟質ウレタンフォームでは、ウレタン結合だけでなく、水発泡反応に由来する尿素結合や、架橋反応による三次元網目構造が性能に影響する。柔軟性は主にポリオール由来のソフトセグメントにより、強度や耐熱性はイソシアネート由来のハードセグメントや架橋密度により調整される。
種類
| 種類の名称 | 主成分または特徴 | 長所 | 短所 | 主な用途 |
|---|---|---|---|---|
| 汎用軟質ウレタンフォーム | ポリエーテルポリオールとTDI系原料を用いることが多い一般グレード | 軽量、安価、クッション性が良い | 耐熱性、耐候性、耐溶剤性には限界がある | 家具、寝具、包装材、雑貨、クッション材 |
| 高反発ウレタンフォーム | 弾性回復性を高めたフォーム | 反発弾性、座り心地、耐へたり性に優れる | 配合や密度により価格が高くなる | 自動車シート、椅子、マットレス、介護用クッション |
| 低反発ウレタンフォーム | 粘弾性を高め、ゆっくり回復するフォーム | 体圧分散性、フィット性、衝撃吸収性が良い | 温度依存性が大きく、低温で硬くなる場合がある | 枕、マットレス、医療・介護用パッド、保護材 |
| ポリエステル系ウレタンフォーム | ポリエステルポリオールを主成分とするフォーム | 引張強さ、耐摩耗性、耐油性が比較的良い | 湿熱条件で加水分解しやすい傾向がある | フィルター、研磨パッド、工業用スポンジ、シール材 |
| ポリエーテル系ウレタンフォーム | ポリエーテルポリオールを主成分とするフォーム | 耐加水分解性、柔軟性、低温特性に優れる | 耐油性や耐摩耗性はポリエステル系に劣る場合がある | 家具、寝具、自動車内装、包装材、吸音材 |
| 難燃ウレタンフォーム | 難燃剤や難燃ポリオールを配合したグレード | 燃焼性を抑えやすい | 機械物性、圧縮永久ひずみ、VOC、コストに影響する場合がある | 自動車、鉄道、建築内装、電気機器周辺材 |
| 帯電防止・導電性ウレタンフォーム | 帯電防止剤、カーボン系材料などを配合したフォーム | 静電気対策が可能 | 汚染性、導電安定性、湿度依存性を確認する必要がある | 電子部品包装、ESD対策材、緩衝材 |
| 低VOC・低臭気フォーム | 触媒、原料、添加剤を低揮発成分に調整したグレード | 車室内、寝具、室内用途に適する | 原料選定や硬化条件の管理が必要である | 自動車内装、家具、寝具、医療・介護用品 |
代表グレードの考え方
| 代表グレード | 主な設計項目 | 選定時の注意点 |
|---|---|---|
| 汎用 | 密度、硬さ、反発弾性、通気性 | 長期荷重、へたり、黄変を確認する。 |
| 耐熱 | 高架橋、耐熱原料、耐酸化処方 | 高温圧縮下の永久ひずみ、熱老化後の強度を確認する。 |
| 難燃 | 難燃剤、酸素指数、UL94、FMVSS、鉄道・建築規格 | 燃焼規格は厚み、密度、表皮材、積層構成で変わる。 |
| 摺動・耐摩耗 | ポリエステル系、表面処理、含浸処理 | 軟質フォーム単体では高荷重摺動部品には不向きである。 |
| 食品接触 | 原料管理、添加剤管理、抽出物、臭気 | 食品衛生法、FDA、EU規則など、用途地域ごとの適合確認が必要である。 |
| GF強化・CF強化 | 軟質フォームでは一般的ではない | ガラス繊維や炭素繊維で補強する用途は、通常は硬質PU、複合材、サンドイッチ材側で検討する。 |
成形加工
| 加工方法 | 適性 | 内容・注意点 |
|---|---|---|
| スラブ発泡 | ◎ | 連続またはバッチで大きなブロック状フォームを発泡し、裁断して使用する代表的な方法である。 |
| モールド発泡 | ◎ | 金型内で発泡・硬化させる方法で、自動車シート、成形クッション、複雑形状部品に適する。 |
| 注入発泡 | ◎ | 原料液を混合して型内や空間へ注入し、発泡硬化させる。混合比、液温、発泡倍率、硬化時間の管理が重要である。 |
| 射出成形 | × | 軟質ウレタンフォームは熱硬化性反応発泡材料であり、一般的な熱可塑性樹脂の射出成形には適さない。RIMやモールド発泡として扱う。 |
| 押出成形 | × | 再溶融押出による連続成形には基本的に不向きである。シート状品は発泡後にスライス、貼合、ラミネートして得ることが多い。 |
| ブロー成形 | × | 中空成形用の熱可塑性樹脂ではないため適さない。 |
| 圧縮成形 | △ | 発泡体の熱圧縮、圧縮加工、加熱プレスによる厚み調整や形状付与は可能である。ただし、セル潰れや硬さ変化に注意する。 |
| 真空成形 | × | 熱可塑性シートのような真空成形には適さない。表皮材と一体化する場合は貼合やインモールド発泡を用いる。 |
| 切削加工 | ○ | 低密度品は刃物加工、スライス、トリミング、CNCカットが可能である。寸法精度は密度、硬さ、セル構造に依存する。 |
| 打抜き加工 | ◎ | ガスケット、パッド、緩衝材、フィルター材などの量産加工に適する。 |
| 接着・貼合 | ◎ | 布、フィルム、不織布、皮革、ゴム、樹脂シートとの貼合が可能である。接着剤の溶剤による膨潤やVOCに注意する。 |
代表的な成形・発泡条件
| 項目 | 代表値・目安 | 備考 |
|---|---|---|
| 原料液温 | 20〜30℃ | ポリオール側、イソシアネート側の温度管理が発泡安定性に影響する。 |
| 金型温度 | 35〜65℃ | モールド発泡の目安である。製品厚み、密度、反応速度により調整する。 |
| 混合比 | NCO指数 90〜110 程度 | フォーム硬さ、耐熱性、圧縮永久ひずみ、発泡安定性に影響する。 |
| クリームタイム | 数秒〜数十秒 | 配合、触媒、温度により変わる。 |
| ライズタイム | 数十秒〜数分 | スラブ発泡、モールド発泡で管理項目となる。 |
| 脱型時間 | 3〜10分程度 | モールド発泡の目安である。厚肉品や低反発品では長くなる場合がある。 |
| 後硬化・養生 | 24〜72時間 | 物性安定、臭気低減、VOC低減、寸法安定のために行うことがある。 |
| 乾燥温度 | ペレット材料ではないため通常該当しない | 原料ポリオール中の水分は発泡反応に関与するため、配合設計上の管理対象である。 |
| シリンダー温度 | 該当しない | 一般的な射出成形用熱可塑性樹脂とは異なる。 |
| 成形収縮率 | 0.5〜3.0%程度 | 密度、金型温度、発泡倍率、セル構造、養生条件により変わる。 |
代表的な物性値又は機械的性質
| 項目 | 単位 | 軟質PUフォーム 汎用 | 高反発フォーム | 低反発フォーム | ポリエステル系フォーム | 備考 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 密度 | kg/m3 | 15〜40 | 30〜70 | 40〜90 | 20〜60 | フォーム材料では最重要項目の一つである。 |
| 比重 | – | 0.015〜0.040 | 0.030〜0.070 | 0.040〜0.090 | 0.020〜0.060 | 発泡倍率により大きく変わる。 |
| 引張強さ | kPa | 50〜200 | 100〜300 | 50〜180 | 150〜500 | 密度、セル構造、原料系に強く依存する。 |
| 伸び | % | 80〜250 | 100〜250 | 80〜200 | 100〜300 | ポリエステル系は強度が高い傾向がある。 |
| 曲げ弾性率 | – | 低い | 低い | 非常に低い | 低い | 軟質フォームでは曲げ弾性率よりも圧縮硬さ、反発弾性を評価することが多い。 |
| 25%圧縮硬さ | kPa | 1〜8 | 2〜12 | 0.5〜5 | 2〜12 | JIS、ISO、ASTMの試験条件により数値が変わる。 |
| 反発弾性 | % | 30〜55 | 50〜75 | 5〜25 | 25〜55 | 低反発フォームでは意図的に低く設計される。 |
| アイゾット衝撃強さ | – | 該当しにくい | 該当しにくい | 該当しにくい | 該当しにくい | 硬質成形品向けの評価であり、軟質フォームでは衝撃吸収性、落下衝撃、圧縮応力で評価する。 |
| 荷重たわみ温度 | – | 該当しにくい | 該当しにくい | 該当しにくい | 該当しにくい | 発泡体ではHDTよりも熱老化後の圧縮永久ひずみを確認する。 |
| 融点 | ℃ | 明確な融点なし | 明確な融点なし | 明確な融点なし | 明確な融点なし | 熱硬化性架橋構造を含むため、再溶融しにくい。 |
| ガラス転移温度 | ℃ | -60〜-20 | -60〜-20 | -30〜20 | -50〜0 | ソフトセグメントのTg目安である。低反発品は室温付近の粘弾性設計を行う場合がある。 |
| 連続使用温度 | ℃ | 70〜90 | 80〜100 | 60〜80 | 70〜90 | 荷重、湿度、酸素、難燃剤、圧縮率により変わる。 |
| 吸水率 | 質量% | 1〜5 | 1〜5 | 1〜8 | 1〜5 | 連続気泡体では水を保持しやすい。吸水率よりも吸水量、乾燥性、カビ、加水分解も確認する。 |
| 体積抵抗率 | Ω・cm | 109〜1014 | 109〜1014 | 109〜1014 | 109〜1014 | 帯電防止品、導電品では大きく低下する。 |
| 圧縮永久ひずみ | % | 5〜20 | 3〜15 | 5〜25 | 5〜20 | 温度、圧縮率、時間により変わる。シート、寝具、シール材で重要である。 |
| 酸素指数 | % | 18〜22 | 18〜22 | 18〜22 | 18〜22 | 難燃グレードでは23〜30%以上に設計される場合がある。 |
| UL94 | – | 規格外またはHB相当が多い | グレードによる | グレードによる | グレードによる | UL94は厚み、密度、試験片形状で結果が変わる。フォーム用燃焼規格を別途確認する。 |
上記物性値は代表値・目安であり、保証値ではない。軟質ウレタンフォームでは、密度、硬さ、圧縮永久ひずみ、反発弾性、通気性、燃焼性、VOC、臭気、耐湿熱性を個別に確認する必要がある。実使用では温度、湿度、荷重、圧縮率、応力、使用時間、薬品濃度、洗浄条件を考慮する。
耐薬品性
| 薬品分類 | 代表薬品 | 評価 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 酸類 | 希塩酸、希硫酸、酢酸 | △ | 短時間接触では使用できる場合があるが、強酸、高温、長時間では劣化しやすい。 |
| アルカリ類 | 水酸化ナトリウム、KOH、アンモニア水 | △〜× | 強アルカリや高温ではウレタン結合、エステル結合の劣化に注意する。 |
| 低級アルコール類 | エタノール、IPA、メタノール | ○〜△ | 短時間接触では比較的使用されるが、長時間浸漬では膨潤、硬さ変化、抽出に注意する。 |
| 高級アルコール類 | グリセリン、ベンジルアルコール、MMB | △ | 薬品の極性、温度、接触時間により膨潤や軟化が生じる場合がある。 |
| 芳香族炭化水素類 | トルエン、キシレン、エチルベンゼン | × | 膨潤、軟化、接着層の破壊が起こりやすい。 |
| 脂肪族炭化水素類 | ヘキサン、シクロヘキサン、ミネラルスピリット | △ | 短時間では大きな変化が少ない場合もあるが、油分吸収や膨潤に注意する。 |
| ケトン | アセトン、MEK、MIBK | × | 膨潤、軟化、溶解、接着不良が起こりやすく、洗浄溶剤としては不適な場合が多い。 |
| エステル | 酢酸エチル、酢酸ブチル | × | ウレタンフォームを膨潤、軟化させやすい。 |
| 塩素系溶剤 | ジクロロメタン、トリクロロエチレン、クロロホルム | × | 強い膨潤、軟化、劣化が生じやすい。 |
| 水・温水 | 水、温水、湿熱 | ○〜△ | ポリエーテル系は比較的良好である。ポリエステル系は加水分解に注意する。高温多湿では長期劣化が進む。 |
| 油 | 鉱物油、植物油、潤滑油 | △ | ポリエステル系は比較的耐油性が良い傾向があるが、長期接触では膨潤、重量変化、硬さ変化を確認する。 |
| 燃料 | ガソリン、軽油、灯油 | ×〜△ | 燃料吸収、膨潤、臭気、可燃性の問題がある。燃料系シールには通常不向きである。 |
| 洗剤・界面活性剤 | 中性洗剤、石けん水 | ○〜△ | 低濃度、短時間では使用されるが、洗浄後の乾燥性、残留成分、カビを確認する。 |
SP値(溶解度パラメータ)
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 軟質ウレタンフォームの代表的なSP値 | 約21〜24 MPa1/2 |
| 代表値としての設定 | 本ページでは、SP値差の計算用代表値として22.5 MPa1/2を用いる。 |
| 注意点 | SP値は溶解・膨潤の目安であり、耐薬品性を単独で判断する指標ではない。軟質ウレタンフォームでは、セル構造、架橋密度、ポリエーテル系かポリエステル系か、添加剤、温度、薬品濃度、浸漬時間、圧縮応力が結果に大きく影響する。 |
溶解性の目安
| SP値差 | 溶解・膨潤の目安 | 判定 |
|---|---|---|
| 0〜2 | 膨潤・軟化しやすい | × |
| 2〜5 | 条件により膨潤する | △ |
| 5〜8 | 短時間接触では比較的安定 | ○ |
| 8以上 | 溶解・膨潤しにくい | ◎ |
SP値から見た耐溶剤性
| 薬品名 | SP値 MPa1/2 | 軟質PUとの差 | SP値上の目安 | 実用上の評価 |
|---|---|---|---|---|
| 水 | 47.9 | 25.4 | ◎ | ○〜△。SP値差は大きいが、吸水、湿熱、加水分解に注意する。 |
| エタノール | 26.0 | 3.5 | △ | ○〜△。短時間拭き取り程度では使える場合がある。 |
| IPA | 23.5 | 1.0 | × | △。長時間接触では膨潤、硬さ変化を確認する。 |
| グリセリン | 36.2 | 13.7 | ◎ | ○〜△。高粘度液の保持、抽出、微生物汚染に注意する。 |
| MMB | 約23 | 約0.5 | × | △〜×。条件により膨潤、軟化に注意する。 |
| トルエン | 18.2 | 4.3 | △ | ×。芳香族溶剤は膨潤、軟化が起こりやすい。 |
| キシレン | 18.0 | 4.5 | △ | ×。長時間接触には不適である。 |
| n-ヘキサン | 14.9 | 7.6 | ○ | △。油分吸収、膨潤、可燃性に注意する。 |
| シクロヘキサン | 16.8 | 5.7 | ○ | △。短時間接触の確認が必要である。 |
| アセトン | 20.1 | 2.4 | △ | ×。ケトン類は膨潤、軟化、接着不良を起こしやすい。 |
| MEK | 19.0 | 3.5 | △ | ×。洗浄用途では避けることが多い。 |
| 酢酸エチル | 18.2 | 4.3 | △ | ×。エステル類は膨潤、軟化が起こりやすい。 |
| ジクロロメタン | 19.8 | 2.7 | △ | ×。塩素系溶剤は不適である。 |
| 鉱物油 | 15〜17 | 5.5〜7.5 | ○ | △。油種、温度、時間により重量変化、膨潤を確認する。 |
評価基準は、◎非常に良好、○概ね良好、△注意が必要、×不適である。SP値差が大きくても、水や湿熱のように加水分解や吸水が問題になる場合がある。また、SP値差が中程度でも、ケトン、エステル、芳香族炭化水素、塩素系溶剤は実用上不適となることが多い。
製法
| 工程 | 内容 |
|---|---|
| 原料 | ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、TDI、MDI、水、触媒、整泡剤、発泡剤、架橋剤、難燃剤、顔料、帯電防止剤、抗菌剤、防カビ剤などを用いる。 |
| 重合方法 | ポリオールとジイソシアネートの付加反応によりウレタン結合を形成する。水発泡ではイソシアネートと水が反応してCO2を発生し、同時に尿素結合が生成する。 |
| 発泡方法 | スラブ発泡、モールド発泡、注入発泡、連続発泡などがある。発泡倍率、セル構造、通気性、硬さは配合と発泡条件により調整する。 |
| ペレット化やコンパウンド | 軟質ウレタンフォームは一般にペレット化して再溶融成形する材料ではない。原料液を混合して反応発泡させる。端材の再利用は粉砕、チップ化、再結合フォームなどで行われる場合がある。 |
| 添加剤・充填材 | 難燃剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、抗菌剤、防カビ剤、顔料、フィラー、低VOC触媒などが用いられる。添加剤は燃焼性、臭気、圧縮永久ひずみ、耐熱性に影響する。 |
| 代表的な反応式 | イソシアネート + ポリオール:n O=C=N-R-N=C=O + n HO-R’-OH → [-NH-CO-O-R’-O-CO-NH-R-]n |
| 発泡反応式 | R-NCO + H2O → R-NH2 + CO2↑、R-NCO + R-NH2 → R-NH-CO-NH-R |
| 後加工 | スライス、裁断、打抜き、熱圧縮、貼合、ラミネート、表面処理、含浸、洗浄、乾燥、養生などを行う。 |
軟質ウレタンフォームの製造では、発泡反応とゲル化反応のバランスが重要である。発泡が速すぎるとセル破れ、収縮、粗大セルが発生しやすく、ゲル化が速すぎると発泡不足や密度ムラが起こる。触媒、整泡剤、水量、NCO指数、原料温度、金型温度を適切に管理する必要がある。
詳細な利用用途
| 分野 | 用途例 | 選定ポイント |
|---|---|---|
| 自動車 | シートクッション、ヘッドレスト、アームレスト、天井材、吸音材、制振材、内装パッド | 耐へたり性、難燃性、低VOC、低臭気、耐熱老化、耐湿熱性が重要である。 |
| 電気・電子 | 電子部品包装、緩衝材、帯電防止フォーム、シールパッド、吸音材 | 帯電防止性、アウトガス、イオン性不純物、難燃性、圧縮永久ひずみを確認する。 |
| 機械部品 | 防振材、吸音材、パッキン、シール材、フィルター材、ワイピング材 | 圧縮応力、復元性、耐油性、耐摩耗性、寸法安定性を確認する。 |
| 医療・介護 | 体圧分散マット、車椅子クッション、ポジショニング材、保護パッド | 低反発性、体圧分散、通気性、洗浄性、皮膚刺激性、抗菌・防カビ性を確認する。 |
| 食品機械・食品周辺 | 包装用緩衝材、搬送時保護材、軽接触パッド | 食品に直接接触する場合は、食品衛生法、FDA、EU規則などへの適合確認が必要である。 |
| 建築・設備 | 吸音材、断熱補助材、目地材、気密材、内装クッション材 | 難燃性、煙、有害ガス、耐湿性、カビ、長期圧縮変形を確認する。 |
| 家具・寝具 | ソファ、椅子、マットレス、枕、座布団、クッション | 密度、硬さ、反発弾性、通気性、耐へたり性、臭気、黄変を確認する。 |
| 包装・物流 | 緩衝材、保護パッド、ケース内装材、精密機器包装 | 衝撃吸収性、発塵、帯電防止性、耐久性、寸法加工性を確認する。 |
| フィルター | 空調フィルター、水処理用粗フィルター、吸液材、スポンジ | セルサイズ、通気性、耐水性、耐薬品性、洗浄性を確認する。 |
関連材料との比較
| 比較材料 | 特徴 | 軟質ウレタンフォームとの違い |
|---|---|---|
| 硬質ウレタンフォーム | 高発泡、独立気泡性が高く、断熱性に優れる。 | 硬質PUは断熱材や構造補助材向けで、軟質PUはクッション性、吸音性、柔軟性を重視する。 |
| 熱可塑性ポリウレタン(TPU) | 射出成形、押出成形が可能な熱可塑性エラストマーである。 | TPUは再溶融成形可能な固体樹脂であり、軟質PUフォームは反応発泡体である。 |
| ポリエチレンフォーム | 軽量で耐水性、耐薬品性に優れる発泡ポリエチレンである。 | PEフォームは耐水・耐薬品性に優れるが、PUフォームは柔軟性、反発弾性、体圧分散性の設計幅が広い。 |
| EVAフォーム | 柔軟性、耐水性、弾性に優れる発泡材料である。 | EVAはスポーツ用品、靴底、緩衝材に多く、PUフォームは寝具、家具、自動車シートに多い。 |
| ゴムスポンジ | EPDM、CR、NBRなどの発泡ゴムで、シール性や耐候性に優れるものがある。 | ゴムスポンジはシール、耐候、耐油用途に適する場合が多く、PUフォームはクッション、吸音、体圧分散に適する。 |
| シリコーンスポンジ | 耐熱性、耐寒性、電気絶縁性に優れる発泡シリコーンである。 | シリコーンスポンジは高温・低温用途に適するが、コストは高い。PUフォームは一般クッション用途でコストバランスに優れる。 |
| 軟質PVCフォーム | 柔軟性、耐候性、加工性を持つ発泡塩ビである。 | 軟質PVCフォームは耐候性やシート加工性に特徴があるが、可塑剤、燃焼時ガス、環境規制に注意する。 |
| EPDMフォーム | 耐候性、耐オゾン性、耐水性に優れる発泡ゴムである。 | 屋外シール、建築目地にはEPDMが有利な場合が多い。軟質PUフォームは屋外長期用途では紫外線劣化に注意する。 |
代表的なメーカー
| メーカー | 代表製品・ブランド | 概要 |
|---|---|---|
| 株式会社イノアックコーポレーション | モルトプレン、カラーフォームなどの代表例 | 日本のポリウレタンフォーム大手であり、軟質フォーム、発泡体、車両、家具、産業資材向け製品を扱う。 |
| 株式会社ブリヂストン | ウレタンフォーム関連製品の代表例 | 自動車、寝具、産業資材向けのポリウレタンフォーム製品を扱ってきた実績がある。用途別の採用可否は現行製品情報を確認する必要がある。 |
| Rogers Corporation | PORON | マイクロセルラーウレタンフォームで知られ、電子機器、シール、クッション、衝撃吸収用途に使用される。 |
| Recticel | Polyurethane foam solutions | 欧州を中心とするポリウレタンフォームメーカーで、寝具、工業材、断熱、クッション用途のフォームを扱う。 |
| BASF | Elastoflex、ポリウレタンシステムの代表例 | ポリウレタン原料、システム、フォーム技術を提供する大手化学メーカーである。 |
| Covestro | Desmodur、Desmophen、ポリウレタン原料の代表例 | イソシアネート、ポリオール、ポリウレタン原料を提供する大手化学メーカーである。 |
| Dow | VORANOL、VORANATE などの代表例 | ポリオール、イソシアネート、ポリウレタンシステム原料を提供する大手化学メーカーである。 |
| Huntsman | ポリウレタンシステム、MDI系原料の代表例 | ポリウレタン原料、システム、フォーム用途向け技術を扱う大手化学メーカーである。 |
法規制・規格上の注意
| 項目 | 確認内容 |
|---|---|
| RoHS | 電気・電子機器用途では、鉛、カドミウム、水銀、六価クロム、PBB、PBDE、フタル酸エステル類などの規制対象物質を確認する。 |
| REACH | 欧州向けではSVHC、制限物質、難燃剤、触媒、残留モノマー、添加剤の情報を確認する。 |
| 食品衛生 | 食品接触用途では、日本の食品衛生法、ポジティブリスト、FDA、EU規則など、地域ごとの適合性を確認する。 |
| 医療用途 | 皮膚接触、長期接触、滅菌、抽出物、細胞毒性、感作性、刺激性などを用途別に確認する。 |
| 難燃性 | UL94、酸素指数、FMVSS 302、鉄道・航空・建築関連規格など、用途に応じた燃焼規格を確認する。 |
| VOC・臭気 | 自動車内装、寝具、室内用途では、ホルムアルデヒド、アミン臭、VOC、FOG、アウトガスを確認する。 |
| リサイクル | 熱硬化性フォームであるため、熱可塑性樹脂のような単純な再溶融リサイクルは困難である。粉砕再利用、再結合フォーム、ケミカルリサイクルなどを検討する。 |
用途別選定と注意点
| 用途 | 推奨される確認項目 | 注意点 |
|---|---|---|
| ギア・軸受 | 通常は不向き | 軟質フォームは高荷重摺動部品には適さない。摺動部品にはPOM、PA66、PTFEなどを検討する。 |
| チューブ | 柔軟性、耐薬品性、圧縮復元性 | 連続気泡フォームは液体搬送チューブには不向きである。チューブ用途ではTPU、PVC、シリコーンゴムなどを検討する。 |
| 筐体 | 難燃性、クッション性、吸音性 | 構造筐体には不向きであるが、内部緩衝材、吸音材、シール材として使用される。 |
| フィルム | 該当しにくい | フィルム用途ではTPUフィルム、PUコーティング、不織布ラミネートなどを検討する。 |
| コネクタ周辺 | 圧縮永久ひずみ、難燃性、アウトガス、発塵 | 電子部品周辺では帯電防止性、イオン汚染、接点腐食、低VOCを確認する。 |
| シール・パッキン | 圧縮永久ひずみ、気密性、耐水性、耐薬品性 | 高い気密・水密が必要な場合は、独立気泡フォームやゴムスポンジを検討する。 |
| クッション・緩衝材 | 密度、硬さ、反発弾性、衝撃吸収、へたり | 長期荷重では圧縮永久ひずみと熱老化後の硬さ変化を確認する。 |
取り扱い上の注意点
- 加水分解:ポリエステル系ウレタンフォームは湿熱環境で加水分解しやすい傾向がある。高温多湿用途ではポリエーテル系や耐加水分解グレードを検討する。
- 応力割れ:硬質成形品のような応力割れよりも、フォームでは圧縮永久ひずみ、セル破壊、へたりが問題になりやすい。
- 吸湿・吸水:連続気泡フォームは水を保持しやすく、乾燥不良、カビ、臭気、重量増加が発生する場合がある。
- 熱劣化:高温、酸素、圧縮応力が重なると、黄変、硬化、脆化、圧縮永久ひずみ増加が起こりやすい。
- アウトガス:電子部品、自動車内装、寝具、医療用途ではVOC、アミン臭、低分子成分、フォギングを確認する。
- 紫外線劣化:屋外や窓際では黄変、粉化、強度低下が起こる場合がある。屋外用途では表皮材、遮光、耐候グレードを検討する。
- 難燃性:汎用品は燃えやすい場合がある。火気周辺、電気機器、車両、建築用途では必ず燃焼規格を確認する。
- 薬品接触:接着剤、洗浄剤、塗料、溶剤、油との接触では、膨潤、軟化、接着不良、臭気を確認する。
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