シリコーン樹脂

概要

項目 内容
材料名 シリコーン樹脂
略記号 SI、Silicone、Silicone Resin
IUPAC 単一構造の高分子ではないため、厳密なIUPAC名は一般に定まらない。代表的には poly(organosiloxane)、poly(dimethylsiloxane-co-methylphenylsiloxane) などの有機ポリシロキサン系高分子として表記される。
英語名 Silicone Resin、Polysiloxane Resin、Organosiloxane Resin、Methyl Silicone Resin、Methyl Phenyl Silicone Resin
日本語名 シリコーン樹脂、シリコン樹脂、有機シロキサン樹脂、ポリシロキサン樹脂、シリコーンレジン
分類 熱硬化性樹脂、シロキサン系樹脂、無機有機ハイブリッド樹脂、塗料・コーティング用樹脂、電気絶縁用樹脂
プラスチック分類 一般の熱可塑性プラスチック、エンジニアリング・プラスチック、スーパーエンジニアリング・プラスチックとは分類が異なり、硬化後は三次元架橋構造を持つ熱硬化性プラスチックとして扱われる。用途上は耐熱塗料、絶縁ワニス、離型コーティング、バインダー、樹脂改質剤として扱われることが多い。
化学式または代表構造 代表構造は RnSiO(4-n)/2 で表されるシロキサン網目構造である。Rは一般にメチル基、フェニル基、ビニル基、アルコキシ基、水酸基、有機変性基などである。
CAS No. シリコーン樹脂全体としては配合物、オリゴマー、架橋物であり、単一のCAS No.で扱われない場合が多い。代表例としてポリジメチルシロキサンは CAS No. 63148-62-9 が知られているが、シリコーン樹脂のグレードとは必ずしも一致しない。
構造・主成分 Si-O-Si結合を主骨格とし、メチル基、フェニル基、アルコキシ基、シラノール基などを有するポリシロキサン又はその硬化物である。T単位 RSiO3/2、Q単位 SiO4/2、D単位 R2SiO2/2、M単位 R3SiO1/2 の組み合わせにより、硬さ、柔軟性、耐熱性、相溶性が調整される。
主な用途 耐熱塗料、耐候性塗料、防湿絶縁コーティング、電気絶縁ワニス、離型コート、撥水処理剤、電子部品封止材、LED封止材、耐熱バインダー、建材コーティング、樹脂改質剤、難燃助剤、無機フィラー用バインダー

シリコーン樹脂(SI)は、Si-O-Si結合を主骨格とする有機ポリシロキサン系の熱硬化性樹脂である。炭素−炭素結合を主骨格とする一般的な有機樹脂と異なり、無機的なシロキサン骨格と有機置換基を併せ持つため、耐熱性、耐候性、電気絶縁性、撥水性、離型性に優れる材料として扱われる。

一般に、メチルシリコーン樹脂は硬く、撥水性、耐熱性、電気特性に優れる傾向がある。一方、フェニル基を導入したメチルフェニルシリコーン樹脂は、有機樹脂との相溶性、光沢、柔軟性、耐クラック性が改善される場合がある。さらに、エポキシ、アクリル、アルキド、ポリエステル、ウレタンなどで変性したグレードでは、密着性、塗膜硬度、耐薬品性、作業性を調整できる。

ただし、シリコーン樹脂は「シリコーンゴム」「シリコーンオイル」「シランカップリング剤」と混同されやすい。樹脂としてのシリコーンは、硬化後に比較的硬い三次元網目構造を形成する材料を指すことが多く、柔軟なエラストマーであるシリコーンゴムとは機械的性質、成形方法、用途が異なる。実使用では、樹脂固形分、溶剤種、水系又は溶剤系、官能基、焼付条件、膜厚、基材、下地処理、使用温度、薬品濃度、応力、接触時間を確認する必要がある。

特徴

項目 内容
長所 耐熱性、耐候性、紫外線安定性、電気絶縁性、撥水性、離型性、低表面エネルギー、耐湿性に優れる。グレードにより高硬度塗膜、柔軟塗膜、耐熱防食塗膜、絶縁ワニス、無機フィラー用バインダーとして使用できる。
短所 機械強度、靭性、耐摩耗性、密着性、耐溶剤膨潤性は一般の構造用樹脂より制約を受ける場合がある。硬化条件が不足すると耐熱性、耐薬品性、耐水性が低下しやすい。未硬化低分子、シロキサン揮発分、アウトガス、塗装はじき、接着阻害にも注意が必要である。
外観 硬化前は無色から淡黄色の液体、粘稠液、溶液、エマルション、フレーク、粉末などがある。硬化後は透明、半透明、白色、淡黄色、塗料配合では顔料色となる。フェニル含有量、架橋密度、フィラー、顔料により透明性や硬さが変わる。
耐熱性 一般に耐熱性は高く、硬化塗膜やバインダーとして200〜250℃程度の連続使用、短時間では300℃以上の耐熱用途に用いられる場合がある。耐熱上限は樹脂構造、フェニル含有量、顔料、無機フィラー、膜厚、空気中又は不活性雰囲気、熱サイクルにより大きく変わる。
耐薬品性 水、湿気、酸化劣化、紫外線には比較的強い。中性塩類、鉱物油、低級アルコールに対しては概ね安定な場合が多い。一方、強アルカリ、高温水蒸気、強酸、芳香族炭化水素、塩素系溶剤、シリコーンを膨潤させやすい炭化水素系溶剤では、膨潤、軟化、白化、密着低下が起こる場合がある。
加工性 一般的な射出成形用ペレットではなく、溶液、ワニス、エマルション、粉体、フレーク、コンパウンドとして塗布、含浸、焼付、注型、圧縮成形、粉体塗装、無機フィラーとの複合化に用いられることが多い。熱可塑性樹脂のような汎用射出成形性は限定的である。
分類上の注意 「シリコーン」と記載される材料には、シリコーンオイル、シリコーンゴム、シリコーンレジン、シラン、シリコーン変性樹脂が含まれる。材料選定では、樹脂かゴムか、硬化系か熱可塑系か、溶剤系か水系か、メチル系かフェニル系か、変性樹脂かを区別する必要がある。
難燃性 Si-O骨格を持つため一般の有機樹脂より燃焼時の炭化・シリカ化残渣を形成しやすく、難燃バインダーとして使用されることがある。ただし、UL94等級はグレード、厚み、配合、無機充填材量、硬化条件に依存するため、個別グレードのデータで確認する必要がある。
法規制 RoHS、REACH、食品接触、FDA、医療用途、電気電子用途では、樹脂本体だけでなく溶剤、触媒、低分子シロキサン、不純物、抽出物、硬化副生成物、添加剤を含めて確認する必要がある。食品接触や医療用途では、専用グレードの採用が前提となる。

構造式

シリコーン樹脂の代表構造単位 R = CH3、C6H5、CH=CH2、OH、OR など Si O Si R R R O−Si≡ 代表式:RSiO3/2、R2SiO2/2、SiO4/2 などの組み合わせにより三次元網目を形成する
代表的な構造単位
構造単位 一般式 内容
M単位 R3SiO1/2 末端基として作用し、分子量、反応性、粘度を調整する。オイル状、オリゴマー状材料で重要である。
D単位 R2SiO2/2 直鎖性、柔軟性を与える。シリコーンゴムや柔軟性付与グレードに多い。
T単位 RSiO3/2 三官能性単位であり、シリコーン樹脂の硬さ、耐熱性、塗膜形成性に大きく関係する。
Q単位 SiO4/2 無機シリカに近い四官能性単位であり、硬度、耐熱性、耐摩耗性を高める一方、脆さやクラックに注意が必要である。
モノマーまたは構成単位
構成成分 代表例 役割
クロロシラン又はアルコキシシラン CH3SiCl3、(CH3)2SiCl2、C6H5SiCl3、CH3Si(OCH3)3 加水分解、縮合によりシロキサン骨格を形成する原料である。
メチル基 −CH3 撥水性、離型性、低表面エネルギー、耐熱性に寄与する。
フェニル基 −C6H5 有機樹脂との相溶性、光沢、柔軟性、耐クラック性、屈折率を調整する。
シラノール基 −Si−OH 縮合硬化、基材密着、無機表面との反応に関係する。残存量が多いと吸湿、保存安定性、硬化挙動に影響する。
アルコキシ基 −Si−OCH3、−Si−OC2H5 湿気硬化、加水分解縮合、低温硬化に関与する。硬化時にアルコールを発生する場合がある。

シリコーン樹脂には、メチルシリコーン樹脂、メチルフェニルシリコーン樹脂、フェニルシリコーン樹脂、エポキシ変性シリコーン、アクリル変性シリコーン、アルキド変性シリコーン、水系シリコーンレジンなどがある。共重合又は変性により、硬化温度、溶剤溶解性、耐候性、柔軟性、密着性、耐薬品性、塗膜硬度が調整される。

種類

種類の名称 主成分または特徴 長所 短所 主な用途
メチルシリコーン樹脂 メチル基を主な有機置換基とするシロキサン樹脂である。 耐熱性、撥水性、電気絶縁性、硬度、離型性に優れる。 硬く脆くなりやすく、密着性や耐クラック性は配合設計に依存する。 耐熱塗料、絶縁ワニス、離型コート、防湿コート
メチルフェニルシリコーン樹脂 メチル基とフェニル基を含むシリコーン樹脂である。 相溶性、光沢、柔軟性、耐クラック性を調整しやすい。 フェニル含有量により撥水性、硬度、耐熱酸化性が変化する。 耐熱防食塗料、耐候性塗料、バインダー、樹脂改質
フェニルシリコーン樹脂 フェニル基比率が高いシリコーン樹脂である。 高屈折率、有機樹脂相溶性、耐熱塗膜性に優れる場合がある。 メチル系より撥水性や低表面エネルギーが変わる場合がある。 LED封止材、光学材料、耐熱塗料、樹脂改質
シリコーンワニス シリコーン樹脂を有機溶剤に溶解した塗布用材料である。 塗布、含浸、焼付に適し、膜厚制御がしやすい。 VOC、引火性、乾燥条件、残留溶剤、環境規制に注意が必要である。 電気絶縁ワニス、コイル含浸、基板防湿、耐熱塗料
水系シリコーンレジン 水分散型又は水溶性のシリコーン樹脂である。 VOC低減、作業環境改善、耐候性塗料への展開が可能である。 保存安定性、乾燥条件、基材濡れ、耐水性、低温造膜性に注意する。 建材コーティング、耐候性塗料、光触媒バインダー、環境対応塗料
エポキシ変性シリコーン エポキシ基又はエポキシ樹脂成分を導入した変性樹脂である。 密着性、耐薬品性、硬度、架橋反応性を改善しやすい。 硬化剤選定、黄変、内部応力、耐候性のバランスが必要である。 防食塗料、電子材料、接着、プライマー、ハードコート
アクリル変性シリコーン アクリル樹脂とシリコーン成分を複合化した樹脂である。 耐候性、光沢保持、塗装性、密着性のバランスを取りやすい。 純シリコーンより耐熱性や撥水性が低下する場合がある。 建築塗料、自動車補修塗料、耐候性トップコート
シリコーン粉体・フレーク樹脂 固体状又は粉末状のシリコーン樹脂である。 粉体塗料、難燃バインダー、樹脂改質、複合材料に使いやすい。 分散性、溶解性、溶融挙動、混練温度の管理が必要である。 粉体塗料、難燃助剤、成形材料バインダー、コンパウンド
代表グレード
グレード区分 特徴 選定時の注意点
汎用 標準的なメチル又はメチルフェニルシリコーン樹脂である。 硬化条件、溶剤、基材密着性、膜厚を確認する。
耐熱 高温塗料、マフラー塗料、焼付塗料、耐熱バインダー向けである。 連続温度、短時間温度、熱サイクル、顔料、無機フィラー、酸化雰囲気を確認する。
難燃 シリカ化残渣や無機フィラーとの併用により難燃性を付与する。 UL94、酸素指数、発煙性、厚み、配合比、電気特性を確認する。
GF強化・無機充填 ガラス繊維、ガラスクロス、シリカ、マイカ、アルミナなどと複合化する。 含浸性、硬化収縮、界面密着、熱膨張、脆さ、切削性を確認する。
摺動・離型 低表面エネルギー、非粘着性、滑り性を利用する。 耐摩耗性、転移、シリコーン汚染、再塗装性、接着阻害を確認する。
食品接触 食品接触用途向けに管理されたグレードである。 対象国法規、抽出試験、溶出成分、硬化条件、使用温度を個別に確認する。

成形加工

加工方法 適正 内容 注意点
射出成形 一般的なシリコーン樹脂では主用途ではない。特殊な粉末成形材料、BMC、熱硬化性コンパウンド、シリコーン系成形材料で限定的に適用される。 熱可塑性樹脂のような溶融流動性を前提にできない。硬化反応、金型温度、滞留、バリ、離型、後硬化を確認する。
押出成形 × 硬化型シリコーン樹脂単体では一般的な押出成形には不向きである。シリコーンゴム、シリコーン系チューブとは区別する必要がある。 樹脂ワニスや塗料は押出ではなく塗布、含浸、焼付で加工することが多い。
ブロー成形 × 熱可塑性中空成形材料ではないため、一般的なブロー成形には適さない。 中空部品用途では、他材料の表面コーティング又はライニングとして検討する。
圧縮成形 粉末樹脂、無機フィラー配合材、ガラス繊維含浸材、積層板、耐熱絶縁材料で適用される場合がある。 硬化温度、加圧時間、後硬化、揮発分抜け、充填材分散、割れを管理する。
真空成形 × シリコーン樹脂硬化物は熱可塑性シートのように再加熱成形する用途には一般に不向きである。 薄膜用途では、フィルム基材上のコーティングとして設計する。
切削加工 硬化樹脂単体は脆さが出やすいが、無機充填材入り成形体、積層板、複合材料では切削加工される場合がある。 欠け、粉じん、工具摩耗、熱によるクラック、寸法ばらつきに注意する。
塗布・スプレー シリコーン樹脂の代表的な加工方法である。耐熱塗料、防湿コート、撥水処理、離型コートで広く用いられる。 表面清浄度、脱脂、下塗り、塗布量、乾燥、焼付、ピンホール、はじきを管理する。
含浸・ワニス処理 コイル、ガラスクロス、マイカ、無機多孔体に含浸し、絶縁性、耐熱性、耐湿性を付与する。 粘度、固形分、脱泡、乾燥勾配、残留溶剤、焼付条件が重要である。
粉体塗装 固体シリコーン樹脂又はシリコーン変性粉体樹脂で耐熱塗膜を形成する場合がある。 溶融流動、焼付温度、顔料分散、塗膜クラック、エッジカバー性を確認する。
成形条件・加工条件の目安
項目 代表値・目安 備考
乾燥温度 40〜80℃ 粉末、フレーク、無機充填コンパウンドでは吸湿や揮発分を除く目的で乾燥する場合がある。溶液ワニスでは溶剤組成に従う。
シリンダー温度 一般値なし 熱可塑性樹脂のような標準射出成形温度は設定しにくい。成形材料の場合は個別グレードの硬化条件に従う。
金型温度 120〜180℃程度 圧縮成形、熱硬化性成形材料の目安である。硬化剤、触媒、厚み、充填材により変わる。
焼付温度 150〜250℃程度 耐熱塗料、絶縁ワニス、メチルシリコーン樹脂で多く用いられる範囲である。水系低温硬化タイプでは80〜150℃程度の短時間加熱で硬化が進む場合もある。
室温硬化 可能なグレードあり アルコキシシラン、シラノール縮合、触媒系により室温硬化できる場合がある。完全物性には加熱後硬化が必要な場合がある。
成形収縮率 0.2〜1.5%程度 圧縮成形材料、無機充填量、硬化収縮、揮発分、後硬化により変化する。塗膜では膜厚収縮、内部応力、クラックとして現れる。

代表的な物性値又は機械的性質

項目 単位 硬化シリコーン樹脂 無機充填・GF複合系 備考
密度 g/cm3 1.1〜1.4 1.5〜2.1 メチル系、フェニル系、無機フィラー、顔料、ガラス繊維量により変化する。
引張強さ MPa 20〜60 50〜150 硬化樹脂単体は脆さが出やすい。複合材では繊維方向、充填量、界面密着に依存する。
伸び % 1〜10 0.5〜5 高硬度塗膜では低伸びであり、柔軟タイプや変性グレードでは伸びが大きくなる場合がある。
曲げ弾性率 GPa 1.5〜4.0 5〜20 Q単位、T単位、無機充填材、ガラス繊維で高くなる。高弾性率化するとクラックリスクが増える。
アイゾット衝撃強さ kJ/m2 1〜5 2〜10 熱硬化性高硬度材料では衝撃性は高くない。靭性は変性樹脂、フィラー、繊維構成で調整する。
荷重たわみ温度 150〜250 200〜300 測定荷重、硬化度、充填材に依存する。高温での弾性率保持は樹脂構造により差が大きい。
融点 明確な融点なし 明確な融点なし 硬化後は三次元架橋構造であり、熱可塑性樹脂のような明確な融点は示さない。
ガラス転移温度 −50〜150 0〜200 メチル系、フェニル系、架橋密度、D単位量で幅が大きい。塗膜用では単一のTgで整理しにくい場合がある。
連続使用温度 200〜250 220〜300 代表目安である。短時間耐熱、塗料配合、無機顔料、空気中酸化、熱サイクルで評価が変わる。
吸水率 % 0.05〜0.5 0.05〜0.3 撥水性は高いが、シラノール残基、無機フィラー、界面、硬化不足があると吸水や白化が増える。
体積抵抗率 Ω・cm 1013〜1016 1012〜1016 電気絶縁用途で重要である。湿度、イオン性不純物、フィラー、硬化条件で変化する。
誘電率 2.7〜3.5 3.5〜6.0 周波数、温度、フィラーにより変化する。電子材料では誘電正接も確認する。
酸素指数 % 25〜35程度 30〜45程度 難燃性の目安である。UL94等級は厚み、配合、試験片形状に依存する。

上記の値は代表値又は目安であり、シリコーン樹脂の種類、官能基、硬化条件、フィラー量、ガラス繊維量、膜厚、測定方法により大きく変わる。特に塗料、ワニス、コーティング用途では、樹脂単体物性よりも塗膜硬度、密着性、耐熱サイクル、耐湿性、耐薬品性、アウトガス、基材との界面状態が実用上重要である。

耐薬品性

薬品分類 代表薬品 評価 注意点
酸類 希塩酸、希硫酸、酢酸 常温・低濃度では比較的安定な場合が多い。濃硫酸、濃硝酸、強酸化性酸、高温酸では劣化、白化、密着低下を確認する。
アルカリ類 水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア水 シロキサン結合は強アルカリで加水分解を受ける場合がある。高温、高濃度、長時間浸漬では注意が必要である。
低級アルコール類 メタノール、エタノール、IPA 短時間接触では概ね安定な場合が多い。未硬化膜、薄膜、応力部、アルコール混合洗浄剤では膨潤や密着低下を確認する。
高級アルコール類 グリセリン、1-ブタノール、MMB 極性、沸点、浸透性により挙動が変わる。高温長時間、界面活性剤併用では耐久試験が必要である。
芳香族炭化水素類 トルエン、キシレン、エチルベンゼン 未硬化樹脂や低架橋塗膜では溶解・膨潤しやすい。硬化塗膜でも膨潤、軟化、光沢変化を確認する。
脂肪族炭化水素類 ヘキサン、ヘプタン、ミネラルスピリット シリコーン系材料を膨潤させる場合がある。特に長時間浸漬、燃料、油剤、低分子炭化水素では評価が必要である。
ケトン アセトン、MEK、MIBK 硬化塗膜では短時間接触に耐える場合もあるが、未硬化樹脂や薄膜では軟化、膨潤、白化が起こる場合がある。
エステル 酢酸エチル、酢酸ブチル、DBE 溶剤型塗料で使用されることもあるが、硬化塗膜への長時間接触では膨潤、密着低下を確認する。
塩素系溶剤 ジクロロメタン、クロロホルム、トリクロロエチレン × 膨潤、軟化、溶解、抽出を起こす可能性が高い。洗浄用途では原則として実液浸漬試験が必要である。
水・温水 水、温水、湿気 撥水性と耐湿性は良い。ただし、未硬化、硬化不足、強アルカリ水、熱水、蒸気、シラノール残存、フィラー界面では白化や加水分解を確認する。
鉱物油、潤滑油、シリコーンオイル、植物油 鉱物油には概ね安定な場合が多いが、添加剤、硫黄成分、酸化劣化油、燃料油、高温条件では膨潤や汚染を確認する。
燃料 ガソリン、軽油、灯油、アルコール燃料 炭化水素により膨潤しやすい場合がある。燃料接触用途ではフッ素樹脂、フッ素ゴム、耐燃料性塗膜との比較評価が必要である。
界面活性剤 中性洗剤、アルカリ洗浄剤、乳化剤 単純な水より浸透性が高く、密着低下、白化、汚染、撥水性低下を起こす場合がある。洗浄条件で確認する。

評価記号は、◎非常に良好、○概ね良好、△注意が必要、×不適を示す。シリコーン樹脂の耐薬品性は、樹脂構造、架橋密度、硬化条件、膜厚、基材密着、顔料、フィラー、薬品濃度、温度、応力、接触時間により大きく変わるため、最終判断には実液浸漬、拭き取り、スポット、熱サイクル、密着性試験を併用する必要がある。

SP値(溶解度パラメータ)

シリコーン樹脂の代表的なSP値は、メチルシリコーン樹脂又はポリジメチルシロキサン系を基準にすると、おおよそ15.0〜17.5 MPa1/2程度が目安である。フェニル基を多く含むメチルフェニルシリコーン樹脂では、芳香族性が増すため18.0〜20.0 MPa1/2程度として扱われる場合がある。

対象 代表SP値 MPa1/2 備考
メチルシリコーン樹脂 15.5〜17.0 PDMS系、メチルポリシロキサン系の目安である。低表面エネルギーと架橋構造のため、SP値だけでは耐薬品性を判断しにくい。
メチルフェニルシリコーン樹脂 17.5〜19.5 フェニル基比率が高いほど芳香族溶剤との親和性が増す場合がある。
高架橋シリコーンレジン 16.0〜20.0 T単位、Q単位、シラノール量、有機変性成分により幅がある。
シリコーン変性有機樹脂 18.0〜24.0 アクリル、エポキシ、アルキド、ウレタンなどの有機樹脂成分の影響が大きい。

SP値は溶解性・膨潤性の一次スクリーニングには有効であるが、シリコーン樹脂の耐薬品性をSP値だけで判断することはできない。特に硬化塗膜では、架橋密度、残留溶剤、未反応シラノール、低分子シロキサン、基材密着、膜厚、薬品の浸透速度、温度、応力、接触時間が支配的になる場合がある。

溶解性の目安
SP値差 溶解・膨潤の目安 判定
0〜2 溶解、膨潤、軟化しやすい領域である。硬化前樹脂や低架橋塗膜では特に注意が必要である。 ×
2〜5 条件により膨潤する領域である。温度、時間、膜厚、応力により実用可否が変わる。
5〜8 短時間接触では比較的安定な場合が多い。ただし、界面活性剤、混合溶剤、加熱条件では確認が必要である。
8以上 溶解・膨潤しにくい領域である。ただし、化学反応、加水分解、酸化、アルカリ分解は別途評価する。
SP値から見た耐溶剤性

以下は、メチルシリコーン樹脂の代表SP値を16.0 MPa1/2として、代表的な薬品とのSP値差を概算した目安である。実使用では、硬化条件、架橋密度、膜厚、基材、温度、薬品濃度、応力、接触時間を含めて評価する必要がある。

薬品名 薬品SP値 MPa1/2 SP値差 評価 コメント
47.9 31.9 SP値差は大きい。撥水性は高いが、熱水、蒸気、強アルカリ水では加水分解や白化を確認する。
エタノール 26.0 10.0 短時間接触では比較的安定な場合が多い。混合溶剤や応力部では密着低下を確認する。
IPA 23.5 7.5 拭き取り洗浄で使用される場合がある。硬化不足膜では白化、軟化に注意する。
アセトン 20.0 4.0 硬化塗膜でも条件により膨潤、軟化する場合がある。長時間浸漬には注意する。
MEK 19.0 3.0 塗料溶剤として関与する場合がある。完全硬化後の耐擦り、耐浸漬で確認する。
酢酸エチル 18.6 2.6 SP値が近く、低架橋又は未硬化状態では膨潤しやすい。
トルエン 18.2 2.2 芳香族炭化水素はシリコーン系材料を膨潤させる場合がある。フェニル含有樹脂ではさらに注意する。
キシレン 18.0 2.0 シリコーンワニスの溶剤として使われることがある。硬化膜への長時間接触では評価が必要である。
ヘキサン 14.9 1.1 × SP値差が小さく、脂肪族炭化水素で膨潤しやすい場合がある。燃料や油剤では実液確認が必要である。
ヘプタン 15.3 0.7 × SP値上は非常に近い。架橋密度が高くても膨潤、寸法変化、物性低下を確認する。
ジクロロメタン 20.2 4.2 × 塩素系溶剤は強い膨潤、軟化、抽出を起こす可能性がある。
グリセリン 33.8 17.8 SP値差は大きい。高温、吸湿、添加剤、界面活性剤併用では確認する。

製法

シリコーン樹脂は、一般にクロロシラン又はアルコキシシランを原料とし、加水分解、シラノール生成、縮合反応により Si-O-Si 結合を形成して製造される。原料シランの官能基数と有機置換基を調整することで、直鎖状、分岐状、三次元網目状のポリシロキサン構造が得られる。

シリコーン樹脂の代表的な製法 原料シラン RSiCl3 / RSi(OR)3 加水分解 RSi(OH)3 を生成 縮合反応 Si-O-Si 結合形成 硬化・焼付 三次元網目化 代表反応式 RSiCl3 + 3H2O → RSi(OH)3 + 3HCl 2Si-OH → Si-O-Si + H2O
工程 内容 実務上の注意点
原料 メチルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、フェニルトリクロロシラン、メチルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシランなどを用いる。 原料シランの官能基数、メチル/フェニル比、アルコキシ基、塩素含有、純度により反応性と樹脂物性が変わる。
加水分解 クロロシラン又はアルコキシシランを水と反応させ、シラノール基を形成する。 クロロシランでは塩化水素が発生する。pH、水量、溶剤、温度、撹拌、発熱管理が重要である。
縮合 シラノール基同士、又はシラノール基とアルコキシ基が縮合し、Si-O-Si結合を形成する。 縮合度が高いほど耐熱性、硬度、耐溶剤性が高くなりやすいが、保存安定性や塗膜柔軟性は低下する場合がある。
樹脂化・調整 分子量、粘度、固形分、溶剤、官能基量、触媒量を調整し、ワニス、溶液、粉末、フレーク、水分散体にする。 ゲル化、粘度上昇、低分子シロキサン、残留溶剤、保存安定性を管理する。
ペレット化やコンパウンド 一般的な射出成形用ペレットは主流ではないが、粉末樹脂、無機充填コンパウンド、成形材料として設計される場合がある。 混練温度、フィラー分散、硬化開始温度、貯蔵安定性、粉じん、吸湿を確認する。
添加剤・充填材 シリカ、マイカ、アルミナ、ガラス繊維、顔料、触媒、密着付与剤、シランカップリング剤、難燃剤、レベリング剤を配合する。 耐熱性、線膨張、硬度、電気特性、色調、塗膜欠陥、アウトガス、法規制に影響する。
硬化 加熱、触媒、湿気、縮合反応により三次元網目構造を形成する。 硬化不足では耐薬品性、耐熱性、耐水性、密着性が低下する。過度な焼付では黄変、クラック、基材劣化が起こる場合がある。

詳細な利用用途

分野 主な用途 選定ポイント
自動車 耐熱塗料、マフラー塗料、エンジン周辺コーティング、電子部品保護、離型処理 耐熱サイクル、油、燃料、塩水、熱衝撃、密着性、アウトガスを確認する。
電気・電子 絶縁ワニス、基板防湿コート、コイル含浸、LED封止、センサー保護、パワー半導体周辺材料 体積抵抗率、誘電特性、耐湿性、イオン不純物、低分子シロキサン、腐食性ガス、耐熱性が重要である。
機械部品 離型コート、滑り性付与、耐熱バインダー、無機複合材料、耐熱ガスケット周辺材料 摩耗、荷重、摺動速度、油剤、転移、再塗装性、シリコーン汚染を確認する。
医療 医療機器部材、コーティング、封止材、光学部材の一部 医療用途向け専用グレードを選定し、生体適合性、抽出物、滅菌条件、低分子シロキサンを確認する。
食品機械 離型コート、耐熱コーティング、防湿処理、ベルト・ローラー周辺の表面処理 食品接触適合、洗浄剤、蒸気、油脂、摩耗粉、剥離、抽出成分を確認する。
建築・設備 耐候性塗料、撥水処理、外装材コーティング、光触媒バインダー、防汚コート 紫外線、雨水、アルカリ性基材、下地処理、汚染性、再塗装性、長期耐候性が重要である。
塗料・コーティング 耐熱塗料、耐候性トップコート、防食塗料、粉体塗料、ハードコート、離型コート 塗膜硬度、柔軟性、密着性、光沢保持、耐溶剤性、焼付条件、顔料分散を確認する。
複合材料 ガラスクロス含浸、マイカテープ、耐熱積層板、無機フィラー成形体、難燃バインダー 含浸性、空隙、硬化収縮、電気特性、耐熱老化、切削性、粉じんを確認する。
用途別選定 ギア、軸受、チューブ、筐体、フィルム、コネクタなどの樹脂部品では、シリコーン樹脂単体成形よりコーティング、封止、絶縁、表面機能付与として検討されることが多い。 構造部品として使う場合は、PEEKPPSポリイミドフッ素樹脂などとの比較が必要である。

関連材料との比較

比較材料 特徴 シリコーン樹脂との違い
エポキシ樹脂 接着性、機械強度、寸法安定性、電気絶縁性に優れる熱硬化性樹脂である。 エポキシ樹脂は密着性と機械強度に優れるが、耐候性、撥水性、高温酸化安定性ではシリコーン樹脂が有利な場合がある。
フェノール樹脂 耐熱性、難燃性、寸法安定性、電気絶縁性に優れる熱硬化性樹脂である。 フェノール樹脂は成形材料や摩擦材に強いが、耐候性、撥水性、柔軟な塗膜設計ではシリコーン樹脂が選ばれる場合がある。
不飽和ポリエステル樹脂 FRP用途で広く使用され、成形性とコストのバランスに優れる熱硬化性樹脂である。 不飽和ポリエステル樹脂は大型成形やFRPに適するが、耐熱塗膜、耐候性、撥水性、電気絶縁ワニスではシリコーン樹脂が有利な場合がある。
ポリウレタン 柔軟性、耐摩耗性、弾性、塗膜形成性に優れる材料群である。 ポリウレタンは柔軟性と耐摩耗性に優れるが、耐熱性、耐候性、撥水性ではシリコーン樹脂又はシリコーン変性品が有利な場合がある。
アルキド樹脂 塗料用樹脂として古くから使用され、作業性、光沢、顔料分散性に優れる。 アルキド樹脂は汎用塗料に適するが、屋外耐候性や耐熱性を高めるためにシリコーン変性アルキドが使われる場合がある。
フッ素樹脂 耐薬品性、非粘着性、耐熱性、低摩擦性に非常に優れる材料群である。 フッ素樹脂は耐薬品性と非粘着性が非常に高いが、塗膜バインダー、絶縁ワニス、撥水処理、樹脂改質ではシリコーン樹脂の方が設計しやすい場合がある。
ポリテトラフルオロエチレン 最高レベルの耐薬品性、低摩擦性、非粘着性を持つフッ素樹脂である。 PTFEは成形加工や接着が難しいが、シリコーン樹脂は塗布・焼付・含浸により表面機能を付与しやすい。
ポリイミド 高耐熱性、高機械強度、電気絶縁性に優れるスーパーエンプラ系材料である。 ポリイミドは構造部材、フィルム、精密部品に適するが、シリコーン樹脂は耐熱塗膜、防湿、撥水、離型、バインダー用途に適する。

代表的なメーカー

メーカー 代表製品・ブランド 概要
信越化学工業株式会社 KRシリーズ、X-40シリーズ、KRWシリーズなど シリコーンレジン、オリゴマー、水系シリコーンレジン、耐熱塗料用、絶縁コーティング用、樹脂改質用などを展開する代表的メーカーである。
Dow DOWSILシリーズ 塗料、コーティング、電気絶縁、耐熱、防湿、耐候用途向けのシリコーンレジン及びシリコーン中間体を展開する。
Wacker Chemie AG SILRESシリーズ メチルシリコーン、メチルフェニルシリコーン、水系レジン、粉末レジン、耐熱塗料用バインダーなどを展開する。
Momentive Performance Materials Silquest、SilForce、Silopren関連製品など シリコーン、シラン、樹脂改質、コーティング、電気電子用途の材料を展開する。用途によりシリコーンレジン又はシラン系材料として選定される。
Elkem Silicones SILCOLEASE、BLUESIL関連製品など シリコーン材料、離型コーティング、コーティング用シリコーン、樹脂改質用途の材料を展開する。
Gelest シロキサン、シラン、シリコーン樹脂中間体 研究開発用から工業用途まで、有機シリコン化合物、シラン、シロキサン、反応性シリコーン材料を供給する。

メーカー名、製品名、グレード構成は変更される場合がある。採用時には、最新の技術資料、安全データシート、食品接触・医療・電気電子関連の適合証明、輸出管理、RoHS、REACH、PFAS関連規制、低分子シロキサン管理値を確認する必要がある。

関連キーワード

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