ジアリルフタレート樹脂

概要

項目内容
材料名ジアリルフタレート樹脂
略記号DAP(Diallyl Phthalate)、DAIP(Diallyl Isophthalate)
IUPAC名Poly(diallyl phthalate)/Poly(diallyl isophthalate)
英語名Diallyl Phthalate Resin / Diallyl Isophthalate Resin
日本語名(別名)ジアリルフタレート樹脂、DAP樹脂、アリル樹脂(allyl resin)、不飽和ポリエステル系アリル樹脂
分類熱硬化性樹脂(アリル系樹脂)
プラスチック分類熱硬化性エンジニアリングプラスチック
化学式(代表構造単位) フタル酸ジアリルエステルの付加重合体。モノマー:C6H4(COOCH2CH=CH2)2
・DAP:オルト体(フタル酸ジアリル)
・DAIP:イソ(イソフタル酸ジアリル)
CAS No.DAP(モノマー):131-17-9 / DAIP(モノマー):1087-21-4
構造・主成分フタル酸(またはイソフタル酸)とアリルアルコール2分子のジエステルを付加重合・架橋硬化した三次元網目構造体
主な用途電気・電子コネクタ、半導体封止材、プリント基板、航空宇宙部品、精密機器部品

ジアリルフタレート樹脂(DAP樹脂)は、フタル酸ジアリルエステルまたはイソフタル酸ジアリルエステルをモノマーとし、過酸化物触媒によるラジカル重合で三次元架橋構造を形成する熱硬化性樹脂である。硬化物は優れた電気絶縁性・寸法安定性・耐熱性を示し、特に高周波特性と耐湿性の両立が求められる電気・電子分野で高い評価を得ている。

オルト体(DAP)とイソ体(DAIP)の2系統が工業的に使用される。DAIPはDAPよりも耐熱性・電気特性がさらに優れており、連続使用温度がDAP比で約20〜30℃高い。いずれも成形収縮率が極めて小さく(0.1〜0.3%)、寸法精度の要求が厳しいコネクタ・ソケット・プリント基板ピン類に多用される。

熱硬化性樹脂の中では比較的「流動性の高いモノマー前駆体」から出発する点が特徴であり、プリプレグ・BMC(バルクモールディングコンパウンド)・SMC形態での供給も可能である。医療機器・航空宇宙・防衛分野では信頼性の高さから長期使用される実績を持つ。

特徴

長所
  • 優れた電気絶縁性(体積抵抗率 1014〜1015 Ω·cm)
  • 高周波帯域での低誘電率・低誘電正接(比誘電率 3.5〜4.0、tan δ 0.01〜0.02)
  • 成形収縮率が極めて小さく(0.1〜0.3%)高精度成形が可能
  • 耐熱性が高い(DAP:連続使用温度 155℃、DAIP:175℃前後)
  • 吸水率が低く(0.1〜0.3%)、高湿環境での電気特性変化が小さい
  • 耐薬品性(酸・アルカリ・溶剤全般)が良好
  • アウトガスが少なく、半導体・真空機器周辺に適する
  • ガラス繊維・ミネラル充填により機械強度・耐熱性を向上可能
短所
  • 熱硬化性のため再成形・リサイクル不可
  • 成形サイクルが熱可塑性樹脂に比べ長い(硬化時間が必要)
  • 射出成形は可能だが条件管理が難しく、圧縮・トランスファ成形が主流
  • 原料(モノマー)の揮発性があり、作業環境管理が必要
  • 衝撃強さは一般に低い(脆性的な破壊挙動)
  • 他の熱硬化性樹脂(エポキシ等)と比べコストが高め
外観

成形品は乳白色〜象牙色が標準。充填材・着色剤により各種カラーリング可能。表面光沢は良好で平滑な仕上がりが得られる。

耐熱性

DAP:UL温度インデックス 130〜155℃、DAIP:155〜180℃。熱変形温度(荷重たわみ温度)は200℃超のグレードも存在する。

耐薬品性

酸・アルカリ・脂肪族炭化水素・油類に対して良好。ケトン・塩素系溶剤には条件により注意が必要。詳細は耐薬品性テーブル参照。

加工性

圧縮成形・トランスファ成形・射出成形が主体。BMC・プリプレグ形態での積層成形にも対応。切削加工は硬化物に対して可能だが粉塵管理が必要。

分類上の注意

「アリル樹脂」と総称される場合があるが、同じアリル系のジエチレングリコールビスアリルカーボネート(CR-39)とは用途・特性が大きく異なる。不飽和ポリエステル樹脂(UP)とは同じ「アリルエステル系」であるが、構造・特性・用途が異なるため混同に注意する。

構造式

以下にDAP(ジアリルフタレート)モノマーおよび硬化後のポリマー構造単位を示す。

ジアリルフタレート(DAPモノマー)構造式 C O O CH₂ CH CH₂ C O O CH₂ CH CH₂ 赤:カルボニル基(C=O)/青:ビニル基(CH=CH₂、重合部位) 硬化時:ビニル基が架橋反応→三次元網目構造形成 DAP vs DAIP 置換位置の違い ・DAP(フタル酸ジアリル):エステル基がベンゼン環の1,2位(オルト)に結合 ・DAIP(イソフタル酸ジアリル):エステル基がベンゼン環の1,3位(メタ)に結合 → DAIP はDAPより剛直な架橋構造となり、耐熱性・電気特性が向上する 構造単位:[-CH₂-CH(OOCΦCOOCH₂-)-]ₙ(Φ:フタリル基)

種類

種類 主成分・特徴 長所 短所 主な用途
DAP汎用グレード フタル酸ジアリル+GF・ミネラル充填 コスト低め、成形性良好、電気絶縁性高 DAIP比で耐熱性やや劣る コネクタ、スイッチ部品、電子機器ハウジング
DAIP高耐熱グレード イソフタル酸ジアリル+GF充填 耐熱性最高クラス(連続使用175℃)、電気特性優秀 DAP比でコスト高 航空宇宙・防衛部品、半導体関連、精密コネクタ
GF強化グレード ガラス繊維30〜60%充填 機械強度・剛性大幅向上、寸法安定性優秀 切削工具摩耗大、表面粗さやや増加 構造用電気部品、ソケット本体
ミネラル充填グレード 炭酸カルシウム・シリカ等充填 低収縮、コスト抑制、成形面精度良好 機械強度はGF品より劣る 端子台、絶縁部品
難燃グレード 難燃剤配合(ハロゲン系・無機系) UL94 V-0取得可、電気安全規格対応 難燃剤による物性・コスト影響あり 電源部品、安全規格対応電子機器
低揮発モノマーグレード 部分重合プレポリマーベース 作業環境安全性向上、臭気・揮発性低減 モノマー品より粘度高く取扱い注意 プリプレグ積層、BMC成形

成形加工

成形方法 適正 備考
圧縮成形 最も一般的。金型温度155〜170℃、圧力15〜40 MPa、硬化時間1〜3分/mm厚。粉末・顆粒状コンパウンドを使用
トランスファ成形 複雑形状・インサート成形に適する。流動性確保のため材料温度管理が重要
射出成形 可能だがスクリュー・バレル温度の管理が難しく、早期硬化に注意。専用スクリュー使用推奨
積層・プリプレグ成形 ガラスクロス含浸プリプレグを積層後、加熱加圧硬化。プリント基板・積層板の製造に適用
BMC(バルクモールディング) GF・充填材とのコンパウンド化により複雑形状対応可
押出成形 × 熱硬化性のため不可
ブロー成形 × 熱硬化性のため不可
真空成形 × 熱硬化性のため不可
切削加工 硬化物は脆いが切削可能。GF入りは工具摩耗大。粉塵吸引・換気管理必須
代表的な成形条件
条件項目 DAP(圧縮成形) DAIP(圧縮成形)
予熱温度80〜100℃90〜110℃
金型温度155〜165℃165〜175℃
成形圧力15〜35 MPa20〜40 MPa
硬化時間(目安)1〜2 min/mm厚1.5〜2.5 min/mm厚
後硬化(ポストキュア)150℃ × 2〜4h(推奨)160℃ × 2〜4h(推奨)
成形収縮率0.1〜0.3%0.1〜0.2%

代表的な物性値(機械的・熱的・電気的性質)

物性項目 単位 DAP汎用(GF30%) DAIP高耐熱(GF30%) DAP ミネラル充填 試験規格
密度g/cm³1.65〜1.801.70〜1.851.70〜1.90ISO 1183
引張強さMPa40〜7050〜8030〜50ISO 527
引張伸び%0.5〜1.00.5〜1.00.3〜0.8ISO 527
曲げ強さMPa80〜130100〜15060〜100ISO 178
曲げ弾性率GPa10〜1812〜208〜14ISO 178
アイゾット衝撃強さ(ノッチ付)kJ/m²5〜155〜123〜10ISO 180
荷重たわみ温度(1.8 MPa)180〜220200〜260160〜200ISO 75
連続使用温度(ULインデックス)130〜155155〜180130〜150UL746B
線膨張係数×10⁻⁵/℃1.5〜3.01.0〜2.52.0〜3.5ISO 11359
吸水率(23℃水中24h)%0.10〜0.250.08〜0.200.10〜0.30ISO 62
成形収縮率%0.1〜0.30.1〜0.20.1〜0.3ISO 294
体積抵抗率Ω·cm10¹³〜10¹⁵10¹⁴〜10¹⁵10¹³〜10¹⁴IEC 60093
表面抵抗率Ω10¹²〜10¹⁴10¹³〜10¹⁵10¹²〜10¹³IEC 60093
比誘電率(1 MHz)3.5〜4.53.3〜4.24.0〜5.5IEC 60250
誘電正接(tan δ、1 MHz)0.01〜0.030.008〜0.020.01〜0.04IEC 60250
絶縁破壊強さkV/mm10〜2012〜228〜16IEC 60243
難燃性UL94 V-0(グレードにより)UL94 V-0UL94 HB〜V-0UL94
酸素指数(OI)%28〜3830〜4025〜35ISO 4589

※上記物性値はいずれも代表値・目安であり、充填材の種類・配合量・硬化条件・後硬化条件により大きく変化する。実使用に際しては各メーカーのデータシートおよびサンプル評価で確認すること。

耐薬品性

薬品・溶剤 代表例・濃度 DAP DAIP 備考
希塩酸10%、室温長期浸漬では表面変化の可能性あり
濃塩酸35%、室温長期・高温では侵食リスク
希硫酸10%、室温概ね良好
濃硫酸98%、室温酸化分解リスクあり、長期不可
硝酸(希)10%、室温酸化性が強く注意
酢酸(希)10%、室温概ね良好
水酸化ナトリウム10%、室温強アルカリ高温長期では加水分解リスク
水酸化カリウム10%、室温NaOH同様
アンモニア水28%、室温一般に良好
エタノール99%、室温優れた耐性
イソプロパノール(IPA)99%、室温電子部品洗浄溶剤として問題なし
メタノール99%、室温概ね良好
グリセリン純品良好
ヘキサン(脂肪族炭化水素)純品良好
鉱物油・潤滑油室温〜80℃機械部品・電気機器に好適
トルエン(芳香族炭化水素)純品膨潤・軟化リスクあり、長期不可
キシレン純品同上
アセトン(ケトン)純品短時間接触は可、長期浸漬は不可
メチルエチルケトン(MEK)純品同上
酢酸エチル(エステル)純品SP値近接、膨潤リスクあり
塩化メチレン(塩素系)純品××侵食・膨潤、使用不可
トリクロロエチレン純品××使用不可
水(室温)吸水率低く安定
温水・熱水80〜100℃DAIP がより安定
水蒸気(スチーム)100℃以上長期・高圧スチームは注意
ガソリン・燃料油室温良好

※評価は室温・短〜中期浸漬の一般的な目安。高温・高濃度・長期接触では評価が変わる場合があり、実使用前に条件を確認の上、試験評価を推奨する。

SP値(溶解度パラメータ)
樹脂SP値 δ(MPa1/2備考
DAP樹脂(硬化物)19〜21推定値。架橋密度・充填材により変化
DAIP樹脂(硬化物)20〜22推定値

SP値のみで耐薬品性を判断するのは危険である。硬化樹脂は三次元架橋体であり、線形ポリマーと異なりSP値による溶解予測の精度が低い。実測試験による確認を必ず行うこと。詳細はホモポリマー・樹脂のSP値一覧を参照。

溶解性の目安(SP値差による)
SP値差(MPa1/2溶解・膨潤の目安判定
0〜2膨潤・軟化しやすい×
2〜5条件により膨潤する
5〜8短時間接触では比較的安定
8以上溶解・膨潤しにくい
SP値から見た代表的な溶剤との耐溶剤性
溶剤名 SP値(MPa1/2 SP値差(DAP基準δ=20) 評価 備考
ヘキサン14.95.1脂肪族系、良好
トルエン18.21.8×SP値近接、膨潤リスク
アセトン20.00×SP値一致、要注意
酢酸エチル18.61.4×膨潤リスク
塩化メチレン20.30.3×侵食リスク大
エタノール26.06.0SP値差大、良好
47.927.9吸水率低く安定
鉱物油15〜173〜5概ね良好

※評価基準:◎非常に良好、○概ね良好、△注意が必要、×不適。SP値差のみで評価しているため、実測試験による確認を必ず実施すること。

製法

原料
  • フタル酸無水物(または無水イソフタル酸):ベンゼン環骨格の供給源
  • アリルアルコール(CH₂=CH-CH₂OH):エステル化・ビニル基供給
  • 重合開始剤:有機過酸化物(ジクミルパーオキサイド、t-ブチルパーベンゾエート等)
  • 充填材:ガラス繊維、炭酸カルシウム、シリカ等
  • 離型剤、着色剤、安定剤(グレードにより)
代表的な反応式
DAP樹脂 製造プロセス(2段階反応) 【第1段階】エステル化反応:フタル酸無水物 + アリルアルコール → ジアリルフタレート(DAPモノマー) フタル酸無水物 C₆H₄(CO)₂O アリルアルコール × 2 2 CH₂=CH-CH₂OH 触媒・加熱 – 2H₂O ジアリルフタレート C₆H₄(COOCH₂CH=CH₂)₂ モノマー(液体) 【第2段階】ラジカル重合・架橋硬化:DAPモノマー → 三次元架橋ポリマー(硬化物) n C₆H₄(COOCH₂CH=CH₂)₂ DAPモノマー 有機過酸化物 加熱・加圧 三次元架橋ポリマー (不溶・不融の熱硬化物) ビニル基(-CH=CH₂)が相互に架橋結合 → エステル結合を側鎖に持つ密な網目構造 ※工業的にはモノマーを部分重合させたプレポリマー(粘稠液体〜固体)を粉砕してコンパウンドとし、  充填材・開始剤と混合して成形用材料(粉末・顆粒・BMC)として供給する。 フタル酸無水物 → エステル化 → DAPモノマー → 部分重合 → コンパウンド化 → 成形・硬化 → 製品
製造工程詳細
工程内容
エステル化フタル酸無水物とアリルアルコールを酸触媒存在下で加熱・縮合反応させ、DAPモノマーを合成する。副生水を除去しながら反応を進める
部分重合(プレポリマー化)DAPモノマーに少量の過酸化物開始剤を加え、制御された条件下で部分重合させることで粘稠液体〜固体のプレポリマーを得る。揮発性の抑制と取扱性向上が目的
粉砕・顆粒化固体プレポリマーを粉砕し、所定粒度の粉末または顆粒状にする
コンパウンド化ガラス繊維・ミネラル等の充填材、過酸化物硬化剤、離型剤、着色剤などと混合・混練してモールディングコンパウンドを製造する
成形・硬化圧縮・トランスファ・射出成形等で加熱加圧し、残留ビニル基の架橋反応により最終硬化物を得る。後硬化(ポストキュア)により機械・熱特性が向上する

詳細な利用用途

用途分野 具体的用途例 採用理由・ポイント
電気・電子 多ピンコネクタ、ICソケット、プリント基板ピン、スイッチ部品、リレー部品、端子台 高精度・低収縮、高絶縁性、高周波特性、耐湿性の複合要求に対応
半導体・精密機器 ICテストソケット、バーンインソケット、半導体封止周辺部品、ウエハキャリア 低アウトガス、高寸法安定性、耐熱サイクル性、半導体プロセスへの適合性
航空宇宙・防衛 航空機用電気コネクタ、レーダー絶縁部品、軍用電子機器部品 高信頼性、広温度域での安定性、耐振動・耐衝撃性(GF強化品)
自動車・産業機器 点火系部品、センサーハウジング、耐熱電気部品 エンジンルーム耐熱性、耐油性、耐振動
医療機器 医療用電気コネクタ、滅菌トレイ・治具、耐薬品容器部品 耐滅菌性(EOG・γ線)、化学的安定性、寸法安定性
光学・通信 光ファイバーコネクタ部品、光学絶縁部品 低誘電率、高精度寸法、低吸水率による光学特性の安定維持
積層板・プリント基板 高周波用プリント基板(DAP/DAIP含浸ガラスクロス積層板) 低誘電率・低誘電正接、高耐熱性、高絶縁信頼性

関連材料との比較

比較材料 特徴 DAP樹脂との違い DAP優位な用途
エポキシ樹脂(EP) 熱硬化性、接着性・絶縁性優秀、成形・封止・積層板に広用途 DAPより成形収縮率大きめ、吸水率高め。エポキシは接着・封止に強み 超低収縮・高精度コネクタ成形、低吸水率要求品
フェノール樹脂(PF) 最も汎用的な熱硬化性樹脂。低コスト、高剛性、耐熱性良好 PFはコスト面で優位だが吸水率高く、電気特性・寸法安定性でDAPに劣る 高精度電気部品、湿度変化環境での使用
メラミン樹脂(MF) 表面硬度高く耐汚染性優秀、食器・化粧板に多用 MFは耐熱性・電気特性でDAPより劣る。食品・日用品向けに特化 電気・電子精密部品全般
ユリア樹脂(UF) 熱硬化性、低コスト、硬質。吸水率高く電気部品には不向き 電気特性・耐湿性・耐熱性すべてDAPが優位 精密電気部品、高湿度環境での電気絶縁部品
不飽和ポリエステル樹脂(UP) ガラス繊維と複合して構造材料・FRPに広用途、低コスト UPは大型構造・FRP向け。DAPは精密小型部品・電気特性重視用途向け 精密コネクタ、半導体周辺、高周波部品
PPS(ポリフェニレンサルファイド) 熱可塑性スーパーエンプラ、耐熱・耐薬品性優秀、射出成形性良好 PPSは熱可塑性でリサイクル可、成形サイクル短い。DAPは超低収縮・低アウトガス面で優位 半導体テストソケット、低アウトガス要求部品
PEEK(ポリエーテルエーテルケトン) 熱可塑性スーパーエンプラ最高峰、連続使用250℃、優秀な機械・化学特性 PEEKは耐熱性・機械強度・靭性でDAP以上。ただしコストが格段に高い コスト感度の高い電気絶縁精密部品
BMI樹脂(ビスマレイミド) 熱硬化性高耐熱樹脂、航空宇宙CFRP用途の主役 BMIは耐熱性がさらに高く(連続200℃超)、主に複合材料用途。DAPはコネクタ成形向け 精密成形部品、コネクタ・ソケット類

代表的なメーカー

メーカー 代表製品・ブランド 概要
大阪ソーダ株式会社(旧大阪曹達) ダイソダップ(DAISODAP) 日本国内DAP・DAIPモノマーおよびモールディングコンパウンドの主要サプライヤー。電気・電子・航空宇宙向けに幅広いグレードを展開
昭和電工マテリアルズ(旧日立化成) 各種DAPコンパウンド 電気・電子用精密コネクタ向けDAP系コンパウンドを供給。現在は事業再編により供給体制変化の可能性あり(最新情報を確認のこと)
Rogers Corporation(米) 各種高周波積層板 高周波回路用プリント基板材料としてDAIP系積層板を含む製品ラインを展開
各コンパウンドメーカー(代表例) 充填材・難燃剤・強化材の組合せで多品種展開。実際の供給メーカーはグレード・地域により異なるため、最新のサプライヤー情報を確認することを推奨する

※メーカー・ブランド情報は変更・統合される場合がある。最新の供給状況は各社へ直接確認すること。

法規制・安全情報

規制・法令内容・注意点
RoHS指令硬化済み成形品は一般にRoHS準拠可能。ただし難燃剤にハロゲン系を含む場合は確認が必要
REACH規則DAPモノマーはSVHC候補に含まれていないが、残留モノマー管理・SDSの確認を要する
食品衛生法・FDA一般用途DAPコンパウンドは食品接触用途向け認可外の場合が多い。食品機械用途では専用グレード・事前確認が必須
UL認定UL94難燃グレード(V-0等)取得品が多く流通。使用グレードのULファイル番号確認を推奨
航空宇宙規格MIL規格・NAS規格等への適合品が存在。航空宇宙用途ではメーカー認定情報を確認のこと
作業環境DAPモノマーは揮発性・皮膚刺激性あり。取扱時は換気・保護具着用・SDSを遵守する
廃棄熱硬化性のため溶融リサイクル不可。産業廃棄物として適切に処理する

注意点・実使用上のポイント

  • アウトガス管理:残留モノマー・過酸化物分解物のアウトガスが問題になる場合は、後硬化(ポストキュア)条件の最適化および真空中・高温でのアウトガス試験を実施すること。
  • 靭性・衝撃:DAP硬化物は一般に脆く衝撃強さが低い。落下・衝撃が想定される用途ではGF強化グレードの選択と設計上のR付け・肉厚確保が重要。
  • 加水分解:エステル結合を有するため、高温・高湿・強アルカリ条件下での長期使用では加水分解による特性低下の可能性あり。スチーム滅菌繰返し用途は事前試験推奨。
  • 成形条件管理:硬化不足は機械・電気特性の低下を招く。金型温度・硬化時間・後硬化の各条件を厳格に管理すること。
  • 在庫・保管:プレポリマー・コンパウンドは過酸化物を含むため、冷暗所(推奨:5〜15℃)での保管が必要。高温での自然硬化に注意。

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