ポリエーテルケトン(PEK)は、芳香族環、エーテル結合及びケトン結合を主鎖に持つ半結晶性のスーパーエンジニアリング・プラスチックである。ここでは狭義のPEKを扱い、PEEK、PEKK等を含むPAEK総称とは区別する。
概要
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 材料名 | ポリエーテルケトン |
| 略記号 | PEK |
| IUPAC | poly(oxy-1,4-phenylene-carbonyl-1,4-phenylene)を代表表記とする。ただし実際の市販PEKは末端構造、分子量及び配列により厳密名が異なる。 |
| 英語名 | Polyetherketone / Poly(ether ketone) |
| 日本語名 | ポリエーテルケトン、PEK樹脂 |
| 分類 | 芳香族ポリエーテルケトン、PAEK系熱可塑性樹脂、半結晶性樹脂 |
| プラスチック分類 | スーパーエンジニアリング・プラスチック |
| 代表構造 | [–O–p-C6H4–CO–p-C6H4–]n |
| CAS No. | 単一の一般化は困難であり、メーカーSDS及び対象グレードで確認する。 |
| 構造・主成分 | 芳香族環、エーテル結合及びケトン結合からなる剛直な主鎖。PEEKよりケトン結合比率が高い代表構造を持つ。 |
| 主な用途 | 高温機械部品、航空宇宙部品、電気絶縁部品、半導体製造装置部品、摺動部品、シール、医療・食品機械用部品等 |
PEKはPAEK系の中でも高い融点及びガラス転移温度を示し、高温下の剛性、寸法安定性、耐疲労性及び耐薬品性を重視する用途に用いられる。非強化材でも高い強度を示し、GF又はCF強化により弾性率、荷重たわみ温度及びクリープ抵抗を大きく高めることができる。
一方、溶融温度が高く、一般に400℃前後の樹脂温度を必要とするため、成形設備、金型温度、乾燥、滞留時間及びパージ条件の管理が重要である。実使用ではグレード、結晶化度、温度、荷重、応力、薬品濃度、接触時間及び成形履歴を確認する必要がある。
特徴
| 区分 | 内容 |
|---|---|
| 長所 | 高耐熱、高温剛性、耐薬品性、耐加水分解性、耐疲労性、難燃性、低発煙性、耐摩耗性、電気絶縁性に優れる。 |
| 短所 | 材料価格が極めて高く、成形温度及び金型温度が高い。結晶化及び収縮の管理が必要であり、強酸、強酸化剤及び一部高温薬品には注意を要する。 |
| 外観 | 自然色は淡褐色からベージュ色で、一般に不透明。CF強化材は黒色が一般的である。 |
| 耐熱性 | Tgは約152~160℃、融点は約373℃が代表値。連続使用温度は用途、荷重及び認証により異なるが、概ね250℃級が目安となる。 |
| 耐薬品性 | 多くの有機溶剤、燃料、油、アルカリ及び水系薬品に強い。ただし濃硫酸等の強酸、強酸化剤及び高温高圧水蒸気では個別評価が必要である。 |
| 加工性 | 射出、押出、圧縮及び切削が可能。高温設備、十分な乾燥及び高温金型が必要である。 |
| 分類上の注意 | PEKは狭義の材料名である。PAEK、PEEK、PEKKと混同しない。 |
構造式

| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 代表的な構造単位 | [–O–p-C6H4–CO–p-C6H4–]n |
| 構造の特徴 | 芳香環による剛直性、エーテル結合による一定の分子運動性、ケトン結合による高い凝集力を併せ持つ。 |
| モノマー又は構成単位 | 芳香族ジオール塩とジハロゲン化ベンゾフェノン類等を用いる芳香族求核置換重縮合が代表的である。 |
| 共重合体・変性 | PEEK、PEKK、PEEKK、PEKEKK等のPAEK類縁体、GF、CF、PTFE、黒鉛、炭素系充填材等による強化・摺動グレードがある。 |
種類・代表グレード
| グレード区分 | 主な改質 | 代表的特徴 | 物性への影響 | 主用途 |
|---|---|---|---|---|
| 非強化・射出成形 | 無充填 | 高靱性、高耐熱、電気絶縁性 | 基準物性。密度約1.30 g/cm³ | 精密部品、絶縁部品、シール |
| 押出成形・高粘度 | 高分子量又は粘度調整 | 溶融強度を確保 | 押出安定性向上、流動性低下 | 棒、板、チューブ、電線被覆 |
| GF30 | ガラス繊維約30質量% | 高剛性、低収縮 | 弾性率とHDT向上、衝撃及び表面性は低下し得る | 構造部品、コネクタ |
| CF30 | 炭素繊維約30質量% | 極めて高い剛性、低CTE、耐摩耗 | 弾性率大幅向上、異方性増大 | 航空宇宙、摺動、精密機構 |
| 摺動 | PTFE、黒鉛、CF等 | 低摩擦、耐摩耗 | 摩擦係数低下、強度は配合依存 | 軸受、ブッシュ、シール |
| 難燃 | 本質難燃又は難燃設計 | 高温電気用途 | UL 94は厚さ・色・グレード依存 | 電気電子部品 |
| 食品・医療 | 原料及び製造管理 | 溶出、滅菌適性を管理 | 物性は対象規格対応グレードで確認 | 食品機械、医療部品 |
成形加工
| 加工方法 | 適性 | 理由・注意点 |
|---|---|---|
| 射出成形 | ◎ | 高温対応機、耐熱シリンダー及び高温金型が必要。結晶化不足と滞留劣化に注意する。 |
| 押出成形 | ◎ | 高粘度又は押出用グレードを用いる。ダイ温度、引取及び冷却条件を管理する。 |
| ブロー成形 | △ | 一般的用途は限定的。高溶融強度グレードと専用設備が必要である。 |
| 圧縮成形 | ○ | 粉末グレード及び厚肉素材に適する。加熱冷却時間が長い。 |
| 真空・圧空成形 | △ | 高温シート設備が必要。結晶化度と温度分布の管理が難しい。 |
| 3Dプリント | ○ | 高温ノズル、加熱チャンバー及び高温ベッドが必要。層間強度と結晶化を確認する。 |
| 切削加工 | ◎ | 板・丸棒から高精度加工が可能。発熱、残留応力、バリ及びアニールを管理する。 |
| 溶着 | ○ | 熱板、振動、レーザー等が候補。高融点のため設備能力と接合設計が必要である。 |
| 接着 | △ | 表面処理、プライマー及び高耐熱接着剤が必要となる場合が多い。 |
| 塗装・印刷 | △ | 表面洗浄、粗化、プラズマ又はプライマー処理を検討する。 |
代表的な射出成形条件
| 項目 | 単位 | 代表範囲 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 予備乾燥温度 | ℃ | 120~150 | メーカー推奨を優先する。 |
| 乾燥時間 | h | 3~5 | 残留水分0.02%以下を一つの目安とする。 |
| シリンダー温度・供給部 | ℃ | 380~385 | グレード及び成形機により調整する。 |
| シリンダー温度・圧縮部 | ℃ | 382~390 | 局所過熱を避ける。 |
| シリンダー温度・計量部 | ℃ | 385~395 | 非強化と強化材で異なる。 |
| ノズル温度 | ℃ | 388~400 | ノズル詰まり及び冷却固化に注意する。 |
| 樹脂温度 | ℃ | 400~420 | 長時間滞留を避ける。 |
| 金型温度 | ℃ | 180~220 | 高結晶化度と表面性を得るには高温金型が一般的である。 |
| 成形収縮率・流動方向 | % | 0.8~1.2 | 非強化の目安。CF30では大幅に低下する。 |
| 成形収縮率・直角方向 | % | 1.0~1.4 | 肉厚及びゲートで変動する。 |
| アニール | - | 条件依存 | 寸法安定性を重視する厚肉品では検討する。 |
代表的な物性値又は機械的性質
下表の標準値は非強化PEKの代表値であり、主として23℃、乾燥又は成形直後の公表値を基準とする。グレード、結晶化度、試験片厚さ及び規格により変動する。
| 項目 | 単位 | 下限 | 代表値 | 上限 | 試験規格・条件 | 材料状態・備考 | 信頼度 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 密度 | g/cm³ | 1.29 | 1.30 | 1.31 | ISO 1183 | 非強化・半結晶 | A |
| 吸水率・飽和23℃ | % | 0.5 | 0.6 | 0.7 | ISO 62 | 非強化、飽和 | A |
| 引張強さ・降伏 | MPa | 100 | 110 | 115 | ISO 527、23℃ | 非強化 | A |
| 引張弾性率 | GPa | 4.2 | 4.3 | 4.4 | ISO 527、23℃ | 非強化 | A |
| 引張破断伸び | % | 10 | 15 | 20 | ISO 527、23℃ | 流動性・成形条件依存 | A |
| 曲げ強さ | MPa | 165 | 170 | 175 | ISO 178、23℃ | 非強化 | A |
| 曲げ弾性率 | GPa | 4.0 | 4.2 | 4.3 | ISO 178、23℃ | 非強化 | A |
| アイゾット衝撃・ノッチ付き | kJ/m² | 4.5 | 5.5 | 6.5 | ISO 180/A、23℃ | ASTM値と単純比較しない | A |
| ガラス転移温度 | ℃ | 152 | 160 | 160 | ISO 11357-2 | onset~midpoint | A |
| 融点 | ℃ | 370 | 373 | 375 | ISO 11357-3 | 半結晶性 | A |
| 荷重たわみ温度・1.80 MPa | ℃ | 150 | 160 | 170 | 代表値 | 結晶化度・試験片依存 | C |
| 連続使用温度 | ℃ | 240 | 250 | 260 | 用途別評価 | 長期強度・認証依存 | B |
| 熱伝導率 | W/(m・K) | 0.25 | 0.29 | 0.35 | 代表値 | 非強化 | C |
| 体積抵抗率 | Ω・cm | 1×1015 | 1×1016 | 1×1017 | 代表値、乾燥状態 | 温湿度依存 | B |
| 絶縁破壊強さ | kV/mm | 20 | 23 | 25 | IEC 60243、厚さ依存 | 非強化又はGF系代表 | B |
| UL 94 | 等級 | - | V-0相当例あり | - | 厚さ・色・グレード依存 | 認証グレードで確認 | B |
強化グレードの代表比較
| 項目 | 単位 | 非強化PEK | GF30 PEK | CF30 PEK | 備考 |
|---|---|---|---|---|---|
| 密度 | g/cm³ | 1.30 | 1.53 | 1.41 | 代表値 |
| 引張弾性率 | GPa | 4.3 | 12 | 28 | 繊維配向により異方性が大きい |
| 引張強さ | MPa | 100~115 | 約170 | 約220 | グレード及び試験方向依存 |
| 成形収縮率・流動方向 | % | 約1.0 | 約0.3 | 約0.1 | 代表例 |
| 飽和吸水率・23℃ | % | 約0.6 | 約0.5 | 約0.5 | ISO 62代表例 |
耐薬品性
評価は室温、無応力、短時間から中期接触を基本とする一般傾向である。高温、濃厚薬品、長時間浸漬、残留応力及び繰返し荷重では評価が低下し得る。
| 分類 | 薬品名 | 濃度 | 温度 | 接触条件 | 評価 | 主な劣化形態 | 備考 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 水 | 純水 | - | 23℃ | 浸漬 | ◎ | 影響小 | 高温水では時間依存 |
| 温水・熱水 | 水 | - | 80~100℃ | 長時間 | ○ | 吸水、寸法変化 | 高圧蒸気は個別確認 |
| 水蒸気 | 飽和蒸気 | - | 121~134℃ | 滅菌 | ○ | 結晶化・加水分解評価 | 回数依存 |
| 塩酸 | HCl | 10%以下 | 23℃ | 浸漬 | ○ | 変色・強度変化に注意 | 濃度と温度依存 |
| 硫酸 | H₂SO₄ | 希薄 | 23℃ | 短時間 | △ | 表面変化 | 濃硫酸は×寄り |
| 濃硫酸 | H₂SO₄ | 濃厚 | 23℃ | 浸漬 | × | 溶解又は著しい劣化 | 代表的な危険薬品 |
| 硝酸 | HNO₃ | 希薄 | 23℃ | 短時間 | △ | 酸化劣化 | 濃度・温度依存 |
| 水酸化ナトリウム | NaOH | 10% | 23℃ | 浸漬 | ◎ | 影響小 | 高温濃厚では確認 |
| エタノール | C₂H₅OH | 99%以下 | 23℃ | 浸漬 | ◎ | 影響小 | 応力下も確認 |
| IPA | 2-プロパノール | 99%以下 | 23℃ | 浸漬 | ◎ | 影響小 | - |
| グリセリン | 多価アルコール | - | 23℃ | 浸漬 | ◎ | 影響小 | 高温時確認 |
| MMB | 3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール | - | 23℃ | 接触 | ○ | 膨潤可能性 | 実液試験推奨 |
| アセトン | ケトン | - | 23℃ | 浸漬 | ◎ | 一般に影響小 | 高温・応力下確認 |
| MEK | ケトン | - | 23℃ | 浸漬 | ◎ | 一般に影響小 | - |
| 酢酸エチル | エステル | - | 23℃ | 浸漬 | ◎ | 一般に影響小 | - |
| トルエン | 芳香族炭化水素 | - | 23℃ | 浸漬 | ◎ | 一般に影響小 | 高温時確認 |
| ヘキサン | 脂肪族炭化水素 | - | 23℃ | 浸漬 | ◎ | 一般に影響小 | - |
| ジクロロメタン | 塩素系溶剤 | - | 23℃ | 浸漬 | ○ | 条件により膨潤 | 長期試験推奨 |
| ガソリン | 燃料 | 市販相当 | 23℃ | 浸漬 | ◎ | 影響小 | 添加剤差を確認 |
| 潤滑油 | 鉱油・合成油 | - | 23~150℃ | 浸漬 | ◎ | 影響小 | 添加剤と温度依存 |
| ブレーキ液 | グリコール系 | - | 23~100℃ | 浸漬 | ○ | 吸液・寸法変化 | 実液確認 |
| 次亜塩素酸Na | 酸化剤 | 低濃度 | 23℃ | 短時間 | ○ | 酸化・変色 | 高濃度高温は△ |
| 過酸化水素 | 酸化剤 | 低~中濃度 | 23℃ | 短時間 | ○ | 酸化劣化 | 濃度・温度依存 |
SP値(溶解度パラメータ)
PEKのHildebrand SP値は公開値が限られ、PAEK類縁体からみて概ね18~21 MPa1/2程度が参考範囲である。ただし高結晶性、高い融点及び強い分子間力のため、SP値が近い溶剤でも室温では溶解しない場合が多い。これは推定・参考範囲であり、比較用確定値としては扱わない。
溶解性の目安
| SP値差 Δδ | 溶解・膨潤の目安 | 判定 |
|---|---|---|
| 0~2 | 膨潤・軟化しやすい可能性がある。ただしPEKでは結晶性及び高融点の影響が大きい。 | × |
| 2~5 | 条件により膨潤する可能性がある。 | △ |
| 5~8 | 短時間接触では比較的安定な場合が多い。 | ○ |
| 8以上 | 溶解・膨潤しにくい傾向である。 | ◎ |
SP値から見た耐溶剤性
| 溶剤 | SP値 MPa1/2 | PEKとの差の目安 | SP評価 | 実用上の補正 |
|---|---|---|---|---|
| トルエン | 18.2 | 0~3 | × | 実際には室温で良好なことが多く、結晶性効果が支配的である。 |
| 酢酸エチル | 18.6 | 0~3 | × | 一般に耐性は高いが長期・高温は確認する。 |
| MEK | 19.0 | 0~3 | × | SP単独では過大に危険側となる。 |
| アセトン | 20.0 | 0~2 | × | 室温では一般に良好。 |
| ジクロロメタン | 20.3 | 0~2 | × | 長期又は応力下では膨潤を確認する。 |
| IPA | 23.5 | 3~6 | △ | 一般に良好。 |
| エタノール | 26.0 | 5~8 | ○ | 一般に良好。 |
| 水 | 47.9 | 27以上 | ◎ | 室温では良好。熱水・蒸気は別評価。 |
SP値は熱力学的親和性の一指標にすぎず、PEKの耐薬品性は結晶化度、拡散速度、温度、応力、酸化反応、加水分解及び薬品純度に左右される。実薬品による質量変化、寸法変化、外観、引張保持率及び応力負荷試験を推奨する。
製法

| 工程 | 内容 | 管理上の要点 |
|---|---|---|
| 原料精製 | 芳香族ジオール類又はその塩、ジハロゲン化芳香族ケトン類を高純度化する。 | 水分、金属イオン及び官能基当量を管理する。 |
| 重縮合 | 高沸点極性溶媒中で芳香族求核置換重縮合を行う。 | 温度、塩基量、末端基及び分子量を制御する。 |
| 回収・洗浄 | ポリマーを析出・ろ過し、溶媒及び無機塩を除去する。 | 残留イオン、溶媒及び低分子分を低減する。 |
| 乾燥 | 高温減圧又は不活性雰囲気で乾燥する。 | 酸化、変色及び残留水分を管理する。 |
| コンパウンド | GF、CF、PTFE、黒鉛、安定剤等を溶融混練する。 | 400℃級での分散、繊維長保持及び滞留時間を管理する。 |
| ペレット化 | ストランド又は水中カットで成形材料化する。 | 異物、黒点、粒度及び乾燥状態を管理する。 |
代表反応は、芳香族ジオール塩とジフルオロベンゾフェノン類等との求核芳香族置換重縮合である。実際の反応経路及びモノマー配列はメーカー技術に依存するため、上図は概念式である。
詳細な利用用途
| 用途分野 | 適性 | 代表用途 | 選定理由 | 注意点 |
|---|---|---|---|---|
| 航空宇宙 | ◎ | ブラケット、クランプ、電装部品、複合材料マトリックス | 高温強度、難燃、低発煙、軽量化 | 航空規格、疲労、FST及び品質保証を確認 |
| 自動車 | ◎ | エンジン周辺、電動化部品、センサー、シール | 耐熱、耐油、寸法安定 | 熱サイクル、燃料、冷却液及びクリープを確認 |
| 電気・電子 | ◎ | コネクタ、ソケット、絶縁部品 | 高温絶縁、難燃、低吸水 | CTI、薄肉流動、認証を確認 |
| 半導体装置 | ◎ | ウェハ搬送、治具、真空部品 | 耐薬品、低アウトガス、寸法安定 | 純度、摩耗粉、溶出、真空データを確認 |
| 機械部品 | ◎ | ギア、軸受、ブッシュ、ローラー | 疲労、摩耗、高温剛性 | 相手材、PV値、潤滑条件を確認 |
| 医療 | ○ | 滅菌部品、器具、インプラント周辺部品 | 耐熱水、滅菌、強度 | 医療専用グレード、ISO 10993、滅菌回数を確認 |
| 食品機械 | ○ | バルブ、ポンプ、摺動部品 | 耐熱、耐薬品、低吸水 | 食品接触証明、洗浄薬品、摩耗粉を確認 |
| 建築・設備 | △ | 高温設備部品、特殊絶縁部品 | 耐熱・難燃 | 価格と施工性から限定用途 |
| フィルム・チューブ | ○ | 高温絶縁、流体チューブ | 耐熱、耐薬品 | 押出グレード、肉厚、曲げ疲労を確認 |
用途別選定
| 用途 | 適性 | 理由 | 確認事項 |
|---|---|---|---|
| ギア | ◎ | 高温強度と疲労性に優れる | 歯元応力、潤滑、摩耗試験 |
| 軸受・ブッシュ | ◎ | 摺動グレードが豊富 | PV値、相手材、温度 |
| ポンプ・バルブ | ◎ | 耐薬品性と寸法安定性 | 実液、圧力、シール設計 |
| シール・ガスケット | ○ | 高温及び薬品環境に対応 | 圧縮永久変形、相手面 |
| チューブ・配管 | ○ | 高温流体に使用可能 | 耐圧、曲げ、接続部 |
| 電気コネクタ | ◎ | 高温絶縁と難燃性 | 薄肉流動、CTI、UL |
| 透明カバー・レンズ | × | 一般に不透明 | 透明性が必要ならPEI等を検討 |
| 自動車外装 | △ | 耐熱性は高い | 耐候、塗装、コスト |
| 滅菌部品 | ○ | 蒸気滅菌に対応し得る | 回数、寸法、強度保持 |
| 半導体装置 | ◎ | 低アウトガス・耐薬品 | 超高純度グレードを確認 |
| 塗料・コーティング | △ | 粉体又は特殊被覆に使用可能 | 密着、焼成温度、膜欠陥 |
| 複合材料マトリックス | ◎ | 高温熱可塑複合材に適する | 含浸性、結晶化、界面 |
関連材料との比較
| 比較材料 | 特徴 | PEKとの違い |
|---|---|---|
| ポリエーテルエーテルケトン(PEEK) | PAEKで最も流通量が多く、成形データ及び形状材が豊富。 | PEKは一般にTg及びTmが高く高温剛性に有利だが、成形温度と加工難度も高い。 |
| ポリエーテルケトンケトン(PEKK) | T/I比により結晶化速度と非晶性を調整でき、3Dプリントや複合材に用いられる。 | PEKKは配列設計の自由度が高く、PEKはより単純なエーテル/ケトン配列の代表である。 |
| ポリアリールエーテルケトン(PAEK) | PEEK、PEK、PEKK等を含む材料群。 | PEKはPAEK群の一構成材料である。 |
| ポリフェニレンサルファイド(PPS) | 耐薬品、難燃、寸法安定性に優れ、比較的低コスト。 | PEKは靱性、高温強度、疲労性で有利だが価格と成形温度が高い。 |
| ポリエーテルイミド(PEI) | 非晶性、透明性、難燃性及び成形収縮の小ささが特徴。 | PEKは耐薬品性及び耐疲労性で有利。PEIは透明性と成形性で有利。 |
| ポリアミドイミド(PAI) | 高温強度、耐摩耗及びクリープ特性に優れる。 | PAIは成形後硬化等が必要な場合があり、PEKは熱可塑成形性に優れる。 |
| ポリイミド(PI) | 極限耐熱、フィルム及び絶縁用途に強い。 | PEKは溶融成形及び耐薬品性のバランスに優れる。 |
| 金属材料 | 高剛性、熱伝導、耐圧及び加工実績に優れる。 | PEKは軽量、電気絶縁、耐薬品及び一体成形で有利だが、設計許容応力は温度・時間依存である。 |
代表的なメーカー
| メーカー | 代表製品・ブランド | 概要 |
|---|---|---|
| Victrex plc | VICTREX HT™ Polymer | 非強化、GF30、CF30、粉末、射出及び押出用PEKグレードを展開する代表的メーカーである。 |
| 高機能樹脂素材加工各社 | PEK板、丸棒、切削部品 | 一次ポリマーを用いた形状材及び加工品が供給される。供給元、原料グレード及び証明書を確認する。 |
メーカー及びブランドの供給状況、食品接触、医療、UL、RoHS、REACH等の適合は、グレード、色、添加剤、製造拠点及び用途により異なる。最新のTDS、SDS、認証書及び適合宣言を確認する必要がある。
法規制・認証
| 項目 | 一般的な位置付け | 確認事項 |
|---|---|---|
| RoHS・REACH・SVHC | 適合グレードが存在する。 | 対象グレード、色、添加剤及び最新証明書を確認する。 |
| FDA・EU食品接触・日本食品衛生法 | 食品接触用途向けグレードが存在する。 | 使用温度、食品種、接触時間、溶出条件を確認する。 |
| USP Class VI・ISO 10993 | 医療用途向けグレードで対応例がある。 | 材料名だけで適合を断定せず、製造変更管理を含めて確認する。 |
| UL認証 | 難燃及び電気特性の認定グレードがある。 | ULファイル、色、厚さ、温度指数を確認する。 |
| PFAS関連 | PEK本体はフッ素樹脂ではないが、摺動グレードにPTFE等を含む場合がある。 | 配合、用途国及び将来規制を個別確認する。 |
注意点・劣化及び故障モード
| 劣化現象 | 主な原因 | 発生条件 | 影響 | 予防策 | 推奨確認試験 |
|---|---|---|---|---|---|
| 熱酸化劣化 | 長時間高温、酸素、局所過熱 | 成形滞留、高温連続使用 | 変色、脆化、強度低下 | 滞留短縮、適正温度、熱安定グレード | 熱老化、TGA、強度保持率 |
| 結晶化不足 | 低い金型温度、急冷 | 厚薄差、低温金型 | 寸法変化、耐熱低下 | 高温金型、アニール | DSC、寸法変化、HDT |
| 反り・異方性 | 収縮差、繊維配向 | GF・CF強化、偏肉 | 寸法不良、割れ | ゲート最適化、均一肉厚 | 実成形、CTE、反り測定 |
| 応力割れ | 残留応力と薬品 | 圧入、ねじ締結、溶剤接触 | クラック、漏れ | 応力低減、R付与、アニール | 定ひずみESC、実液浸漬 |
| クリープ | 長時間荷重、高温 | 締結、シール、圧入 | 変形、締付力低下 | 許容応力低減、GF/CF化 | 高温クリープ |
| 摩耗 | 高PV、粗い相手材、無潤滑 | 軸受、ギア | 摩耗粉、寸法低下 | 摺動グレード、潤滑、表面最適化 | 摩耗・摩擦係数測定 |
| アウトガス | 残留低分子、添加剤 | 真空、高温 | 汚染、接触不良 | 高純度グレード、ベーク | TML/CVCM、GC-MS |
| 滅菌劣化 | 蒸気、薬品、放射線 | 医療・食品用途 | 変色、分子量低下 | 専用グレード、回数制限 | 反復滅菌、強度・寸法測定 |
推奨確認試験
- 実薬品浸漬試験:使用濃度、使用温度及び予定時間以上で、質量、寸法、外観及び強度保持率を確認する。
- 応力負荷下ESC試験:実部品相当の残留応力又は定ひずみを付与し、薬品接触下でクラック発生を確認する。
- 高温クリープ・疲労試験:最大温度、設計荷重及び寿命相当時間又は繰返し回数で評価する。
- 実成形試験:乾燥、樹脂温度、金型温度、滞留、収縮、反り、ウェルド及び結晶化度を確認する。
- 用途に応じ、熱水・蒸気滅菌、アウトガス、摩耗、難燃、電気絶縁、溶出及び実部品耐久試験を追加する。
比較用評価スコア
| 評価項目 | スコア | 理由 |
|---|---|---|
| 引張強度 | 5 | 非強化でも100 MPa級であり、高温保持性にも優れる。 |
| 剛性 | 5 | 非強化約4.3 GPa、CF30では約28 GPaの代表例がある。 |
| 衝撃強度 | 3 | 高性能樹脂として良好だが、ノッチ及び低温条件に依存する。 |
| 耐熱性 | 5 | Tg約160℃、Tm約373℃で、250℃級の連続使用候補となる。 |
| 耐薬品性 | 5 | 多くの溶剤、油、燃料及びアルカリに強い。 |
| 耐加水分解性 | 5 | PA等より良好で、蒸気用途にも用いられる。 |
| 寸法安定性 | 4 | 低吸水だが半結晶性収縮及び繊維異方性を管理する必要がある。 |
| 摺動性 | 4 | 摺動配合で非常に良好。非強化材は条件依存。 |
| 電気絶縁性 | 5 | 高温でも高い絶縁性を持つ。 |
| 難燃性 | 5 | 本質難燃性及び低発煙性に優れるが認証はグレード依存。 |
| 成形加工性 | 2 | 400℃級の成形温度と高温金型を要する。 |
| 切削加工性 | 4 | 形状材から高精度加工可能。発熱と残留応力に注意。 |
| 接着性 | 2 | 表面処理及び高性能接着剤が必要となりやすい。 |
| リサイクル性 | 3 | 熱可塑性で再溶融可能だが、高温履歴と品質分別が課題。 |
| 価格優位性 | 1 | 極めて高価格であり、性能価値が成立する用途向け。 |
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