概要
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 材料名 | エポキシ樹脂 |
| 略記号 | EP、Epoxy |
| IUPAC | エポキシ樹脂は単一高分子ではなく、エポキシ基を持つ主剤と硬化剤からなる熱硬化性樹脂の総称であるため、厳密な単一IUPAC名は定義しにくい。代表例として、ビスフェノールA型エポキシ樹脂は bisphenol A diglycidyl ether 系樹脂である。 |
| 英語名 | Epoxy Resin、Epoxide Resin |
| 日本語名 | エポキシ樹脂、エポキシ系樹脂、エポキシ接着剤、エポキシ封止材、エポキシ塗料、エポキシマトリックス樹脂 |
| 分類 | 熱硬化性樹脂、接着・注型・塗料・封止・複合材料用樹脂 |
| プラスチック分類 | 熱硬化性プラスチック。用途上は汎用熱硬化性樹脂から高耐熱電子材料、CFRP用マトリックス樹脂まで幅広い。 |
| 化学式または代表構造 | 代表例:ビスフェノールA型エポキシ樹脂 HO-C6H4-C(CH3)2-C6H4-OH とエピクロロヒドリン由来のグリシジルエーテル構造を持つ。硬化後は三次元架橋構造となる。 |
| CAS No. | エポキシ樹脂全体としては配合物又はオリゴマーであり、単一のCAS No.で扱われない場合が多い。代表例として、ビスフェノールA型エポキシ樹脂 CAS No. 25068-38-6、ビスフェノールAジグリシジルエーテル CAS No. 1675-54-3 が知られている。 |
| 構造・主成分 | エポキシ基を持つ主剤、アミン系・酸無水物系・フェノール系などの硬化剤、硬化促進剤、反応性希釈剤、充填材、難燃剤、顔料、シランカップリング剤などから構成される。 |
| 主な用途 | 接着剤、電子部品封止材、半導体封止材、プリント基板、絶縁材料、塗料、床材、FRP、CFRP、注型品、補修材、土木建築材料、複合材料マトリックス樹脂 |
エポキシ樹脂は、分子中にエポキシ基を持つ主剤を硬化剤で反応させ、三次元架橋構造を形成する熱硬化性樹脂である。一般に、接着性、電気絶縁性、耐薬品性、寸法安定性、低硬化収縮性が良好であり、金属、ガラス、セラミックス、コンクリート、炭素繊維、ガラス繊維などとの組み合わせで広く使用される。
代表的な主剤はビスフェノールA型、ビスフェノールF型、ノボラック型、脂環式、グリシジルアミン型などである。硬化剤にはアミン、酸無水物、フェノール、イミダゾール、ジシアンジアミドなどが使われ、硬化条件、架橋密度、充填材、可とう化成分により、耐熱性、靭性、耐薬品性、電気特性、接着性が大きく変化する。
材料選定では、エポキシ樹脂という名称だけで判断せず、主剤の種類、硬化剤、硬化温度、硬化時間、ガラス転移温度、充填材量、吸湿、残留応力、薬品接触条件を確認する必要がある。特に温水、強アルカリ、強酸、ケトン、エステル、塩素系溶剤、屋外紫外線、熱衝撃、界面剥離には注意が必要である。
特徴
長所
- 金属、ガラス、セラミックス、コンクリート、繊維材料に対する接着性が一般に良好である。
- 硬化収縮が比較的小さく、寸法安定性、注型精度、封止信頼性に優れる。
- 電気絶縁性、耐トラッキング性、誘電特性が良好なグレードが多い。
- 耐水性、耐油性、耐溶剤性、耐酸性、耐アルカリ性はグレードにより良好である。
- シリカ、アルミナ、水酸化アルミニウム、ガラス繊維、炭素繊維などを配合しやすい。
- 常温硬化、加熱硬化、潜在性硬化、UV硬化、粉体塗装、封止成形など多様な加工形態がある。
- CFRP、GFRP、プリント基板、半導体封止材など高信頼性用途で実績が多い。
短所
- 硬化後は再溶融できず、熱可塑性樹脂のような再成形はできない。
- 未改質の硬化物は硬く脆い場合があり、衝撃、曲げ、熱衝撃でクラックが発生することがある。
- 屋外では紫外線により黄変、白亜化、光沢低下が生じやすく、耐候用途では上塗りや変性グレードが必要である。
- 硬化不足、配合比ずれ、混合不良により、未硬化、べたつき、耐薬品性低下、接着不良が起こる。
- アミン系硬化剤、反応性希釈剤、エポキシモノマーは皮膚感作性を示す場合があり、作業環境管理が必要である。
- 温水、蒸気、強アルカリ、強酸、極性溶剤では、加水分解、膨潤、界面剥離が生じる場合がある。
外観
未硬化のエポキシ主剤は、一般に無色透明から淡黄色、又は褐色の粘性液体、半固体、固形樹脂である。硬化剤や充填材を加えた配合物では、白色、灰色、黒色、緑色、透明、半透明など用途に応じて外観が異なる。硬化物は透明から不透明まで幅広く、電子封止材や複合材料では無機充填材や繊維補強材により外観が大きく変化する。
耐熱性
一般的なビスフェノールA型エポキシの硬化物は、ガラス転移温度が約60~150℃程度の範囲にあることが多い。酸無水物硬化、ノボラック型、グリシジルアミン型、高耐熱硬化剤、シアネートエステル変性、BMI変性などでは、Tgが150~250℃以上になる場合もある。ただし、実使用温度はTg、荷重、応力、吸湿、熱サイクル、充填材量により変化する。
耐薬品性
硬化したエポキシ樹脂は、一般に水、油、燃料、希酸、希アルカリ、多くの塩類水溶液に対して比較的安定である。一方で、アセトン、MEK、酢酸エチル、芳香族炭化水素、塩素系溶剤、強酸、強アルカリ、温水・蒸気長期接触では、膨潤、軟化、白化、クラック、接着界面の剥離が生じる場合がある。耐薬品性は硬化剤、架橋密度、充填材、後硬化条件、膜厚、応力状態に強く依存する。
加工性
エポキシ樹脂は、液状注型、接着、塗装、含浸、積層、RTM、プリプレグ、粉体塗装、トランスファー成形、圧縮成形などに適用される。熱可塑性樹脂のような一般的な射出成形や押出成形とは異なり、硬化反応を伴う加工であるため、ポットライフ、ゲルタイム、発熱、硬化収縮、脱泡、後硬化を管理する必要がある。
分類上の注意
エポキシ樹脂は熱硬化性樹脂であるが、用途上は接着剤、塗料、電気絶縁材料、電子封止材、複合材料用マトリックス樹脂、土木建築材料として分類されることも多い。単に「EP」と表記されていても、ビスフェノールA型、ノボラック型、脂環式、可とう化型、難燃型、シリカ高充填型では性質が大きく異なる。
構造式

エポキシ基がアミン・酸無水物などで架橋した網目構造。構造中の官能基、結晶性、架橋密度、芳香族骨格、充填材の有無により、耐熱性、耐薬品性、機械的性質、成形性が変化する。
エポキシ樹脂の代表構造は、エポキシ基を持つ主剤と硬化剤が反応して三次元架橋構造を形成する形で表される。代表例として、ビスフェノールA型エポキシ樹脂の基本骨格は下記のように表記できる。
| 項目 | 構造・内容 |
|---|---|
| 代表的な構造単位 | -CH2-CH(OH)-CH2-O-Ar-C(CH3)2-Ar-O-CH2-CH(OH)-CH2- |
| エポキシ基 | 三員環構造:-CH-CH2-O- の環状エーテル構造。アミン、酸無水物、フェノール、水酸基などと反応する。 |
| 代表モノマー又は構成単位 | ビスフェノールA、ビスフェノールF、エピクロロヒドリン、フェノールノボラック、クレゾールノボラック、脂環式エポキシ化合物、グリシジルアミン化合物など。 |
| 硬化反応の概念 | エポキシ基 + アミン活性水素 → β-ヒドロキシアミン構造 エポキシ基 + 酸無水物 → エステル結合を含む架橋構造 |
| 変性グレード | 可とう化エポキシ、ゴム変性エポキシ、ウレタン変性エポキシ、シリコーン変性エポキシ、リン系難燃エポキシ、ノボラック型高耐熱エポキシ、脂環式透明エポキシなどがある。 |
構造式を文字で表す場合、ビスフェノールA型エポキシ樹脂は一般に「DGEBA」と表記される。DGEBAは Bisphenol A Diglycidyl Ether の略であり、エポキシ当量、分子量、n数、塩素含有量、不純物、粘度によりグレードが区別される。
種類
| 種類の名称 | 主成分または特徴 | 長所 | 短所 | 主な用途 |
|---|---|---|---|---|
| ビスフェノールA型エポキシ | DGEBAを主成分とする最も代表的なエポキシ樹脂 | 接着性、電気特性、耐薬品性、価格バランスが良い | 耐熱性、耐候性、靭性はグレードにより限界がある | 接着剤、塗料、注型、FRP、電気絶縁材料 |
| ビスフェノールF型エポキシ | 低粘度で作業性に優れるエポキシ樹脂 | 含浸性、流動性、充填材配合性が良い | 耐熱性や機械物性は配合に依存する | 塗料、接着剤、積層、注型、床材 |
| ノボラック型エポキシ | 多官能エポキシ基を持つ高架橋密度タイプ | 耐熱性、耐薬品性、耐湿信頼性を高めやすい | 硬く脆くなりやすく、粘度が高い場合がある | 半導体封止材、耐熱接着剤、プリント基板、耐食ライニング |
| 脂環式エポキシ | 脂環式骨格を持つ透明性、電気特性に優れるタイプ | 透明性、耐候性、低イオン性、電気特性が良い | 硬化系が限定される場合があり、衝撃性に注意 | LED封止、電子材料、光学材料、電気絶縁材料 |
| グリシジルアミン型エポキシ | 多官能で高耐熱、高強度化しやすいタイプ | 高Tg、高弾性率、高耐熱複合材料に適する | 高価で、作業性、脆さ、吸湿管理が課題となる | 航空宇宙CFRP、耐熱複合材料、高性能接着剤 |
| 可とう化エポキシ | 柔軟骨格、ゴム成分、ウレタン成分などを導入したタイプ | 靭性、耐衝撃性、剥離接着性、熱衝撃性を改善しやすい | 耐熱性、硬度、耐溶剤性が低下する場合がある | 構造用接着剤、補修材、封止材、床材 |
| 難燃エポキシ | リン系難燃、臭素系難燃、無機充填材などを配合したタイプ | UL94 V-0相当を狙いやすく、電子材料に適する | 誘電特性、吸湿、加工性、規制対応の確認が必要 | プリント基板、電気電子部品、封止材 |
| シリカ高充填エポキシ | 溶融シリカ、球状シリカ、アルミナなどを高充填したタイプ | 低熱膨張、低収縮、寸法安定性、耐湿性を改善しやすい | 高粘度、流動性低下、界面接着、摩耗性に注意 | 半導体封止材、電子部品封止、精密注型 |
| 食品接触・低溶出グレード | 規制対応、低抽出、低臭気を考慮した塗料・接着剤系 | 食品設備、缶内面塗料、水道関連で使用検討される | 各国法規、溶出、残留モノマー、硬化条件の確認が必須 | 食品機械、タンクライニング、缶内面塗料、水処理設備 |
成形加工
エポキシ樹脂は、硬化反応により成形・固化する熱硬化性樹脂である。一般的な熱可塑性樹脂の射出成形、押出成形、ブロー成形とは加工概念が異なり、液状樹脂の注型、塗布、含浸、積層、封止成形、圧縮成形、トランスファー成形が中心となる。
| 加工方法 | 適正 | 内容 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 射出成形 | △ | 一般的な熱可塑性射出成形には不向きである。ただし、エポキシモールディングコンパウンドではトランスファー成形又は特殊成形が用いられる。 | 硬化反応、ゲル化、金型汚れ、バリ、硬化収縮を管理する。 |
| 押出成形 | × | 硬化後に再溶融しないため、一般的な連続押出成形には適さない。 | 粉体塗料、プリプレグ、樹脂フィルムなどは別工程で製造される。 |
| ブロー成形 | × | 溶融パリソンを膨らませる熱可塑性樹脂向け成形であり、エポキシ樹脂には一般に適用しない。 | 中空品は注型、FRP、ライニング、積層で設計する。 |
| 圧縮成形 | ○ | BMC、SMC、プリプレグ、積層板、電子材料で用いられる。 | 加熱温度、圧力、硬化時間、脱泡、充填材配向を管理する。 |
| トランスファー成形 | ◎ | 半導体封止材、電子部品封止材で代表的に用いられる。 | 流動性、ゲルタイム、ワイヤ流れ、ボイド、後硬化が重要である。 |
| 注型 | ◎ | 電気絶縁部品、治具、透明部品、試作部品、ポッティングに適する。 | 混合比、脱泡、発熱、肉厚、硬化収縮、クラックに注意する。 |
| 真空成形 | × | 熱可塑性シートの成形法であり、硬化済みエポキシ樹脂には一般に適用しない。 | 複合材では真空バッグ成形、オートクレーブ成形、RTMを用いる。 |
| RTM・VaRTM | ◎ | ガラス繊維、炭素繊維に低粘度エポキシを含浸して複合材料を作る。 | 粘度、含浸性、ポットライフ、硬化発熱、ボイドを管理する。 |
| 積層・プリプレグ成形 | ◎ | CFRP、GFRP、プリント基板、構造材で用いられる。 | 保管温度、タック、ドレープ性、硬化サイクル、残留応力が重要である。 |
| 切削加工 | ○ | 硬化物、積層板、注型板、封止品、治具を切削加工できる。 | 脆性破壊、欠け、粉じん、繊維強化材の工具摩耗に注意する。 |
代表的な成形条件
| 項目 | 代表条件 | 備考 |
|---|---|---|
| 液状エポキシの予備乾燥 | 通常は乾燥よりも吸湿管理、密閉保管を重視 | 吸湿した硬化剤や充填材はボイド、白化、硬化不良の原因となる。 |
| 充填材の乾燥 | 80~120℃ × 2~4時間程度 | シリカ、アルミナ、ガラス繊維などは水分管理が重要である。 |
| 混合温度 | 20~60℃程度 | 粘度低下のため加温する場合があるが、ポットライフ短縮に注意する。 |
| 常温硬化 | 20~25℃ × 数時間~数日 | アミン硬化系で多い。完全物性には後硬化が必要な場合がある。 |
| 加熱硬化 | 80~180℃ × 0.5~4時間程度 | 硬化剤、厚み、充填材、用途により大きく異なる。 |
| 後硬化 | 120~200℃ × 1~8時間程度 | Tg、耐熱性、耐薬品性、寸法安定性を高める目的で行う。 |
| トランスファー成形温度 | 160~180℃程度 | 半導体封止材ではグレード指定条件を優先する。 |
| 金型温度 | 80~180℃程度 | 注型、圧縮、封止、プリプレグ成形で条件が異なる。 |
| 成形収縮率 | 0.1~1.0%程度 | 無充填では大きく、シリカ高充填や繊維強化では小さくなる。 |
代表的な物性値又は機械的性質
下表は代表値であり、実際の数値は主剤、硬化剤、硬化度、後硬化条件、充填材、繊維含有率、試験温度、吸湿状態により大きく変化する。設計値にはメーカー物性表と実使用条件での試験結果を用いる必要がある。
| 項目 | 単位 | 無充填硬化物 | シリカ充填エポキシ | GF強化エポキシ | CF強化エポキシ | 備考 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 密度 | g/cm3 | 1.10~1.25 | 1.6~2.1 | 1.7~2.0 | 1.4~1.7 | 充填材、繊維量で大きく変化する。 |
| 引張強さ | MPa | 40~90 | 40~100 | 150~500 | 500~1500以上 | 複合材は繊維方向で値が大きく変わる。 |
| 伸び | % | 1~8 | 0.5~3 | 1~4 | 0.5~2 | 未改質品は脆い傾向がある。 |
| 曲げ弾性率 | GPa | 2.0~4.0 | 5~20 | 10~30 | 50~150以上 | シリカ、ガラス繊維、炭素繊維で高弾性化する。 |
| アイゾット衝撃強さ | kJ/m2 | 1~10 | 1~8 | 5~30 | 5~50 | 靭性改質、繊維配向、ノッチ形状に依存する。 |
| 荷重たわみ温度 | ℃ | 80~180 | 120~220 | 130~250 | 150~250以上 | Tg、硬化度、荷重に強く依存する。 |
| ガラス転移温度 | ℃ | 60~180 | 100~200 | 120~220 | 120~250以上 | 高耐熱グレードでは250℃級もある。 |
| 連続使用温度 | ℃ | 80~150 | 100~180 | 120~180 | 120~200以上 | 荷重、雰囲気、湿度、要求寿命により異なる。 |
| 吸水率 | % | 0.1~1.0 | 0.05~0.5 | 0.1~0.8 | 0.1~0.8 | 吸湿によりTg低下、絶縁低下、界面劣化が起こる場合がある。 |
| 体積抵抗率 | Ω・cm | 1014~1016 | 1013~1016 | 1012~1015 | 導電性あり | CF強化では導電性を示す。吸湿、イオン不純物で低下する。 |
| 線膨張係数 | ×10-5/K | 4~8 | 1~4 | 1~3 | 方向により大きく異なる | 電子封止材では低CTE化が重要である。 |
| 熱伝導率 | W/m・K | 0.2~0.4 | 0.5~3.0 | 0.3~1.0 | 方向により1以上 | アルミナ、BN、窒化アルミなどで高熱伝導化できる。 |
| 難燃性 | UL94 | HB~V-0相当 | V-0相当品あり | V-0相当品あり | 用途により異なる | リン系、臭素系、無機充填材で調整される。 |
| 酸素指数 | % | 20~30程度 | 25~40程度 | 25~40程度 | 条件により異なる | 難燃剤、充填材、硬化系に依存する。 |
耐薬品性
下表は一般的な硬化エポキシ樹脂の目安である。耐薬品性は、ビスフェノールA型、ノボラック型、脂環式、可とう化型、硬化剤、硬化度、後硬化、膜厚、薬品濃度、温度、応力、接触時間、基材との密着性により変化する。耐食ライニング、床材、接着用途では、浸漬試験、接着強度試験、外観観察、重量変化、膨潤率を確認する必要がある。
| 薬品分類 | 代表薬品 | 評価 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 酸類 | 希塩酸、希硫酸、リン酸、酢酸 | ○ | 希酸には比較的安定な場合が多いが、濃酸、酸化性酸、高温では劣化する。 |
| 強酸・酸化性酸 | 濃硫酸、濃硝酸、クロム酸、過酸化水素高濃度 | △~× | 酸化分解、表面劣化、白化、クラックに注意する。 |
| アルカリ類 | 水酸化ナトリウム、KOH、炭酸ナトリウム、アンモニア水 | ○~△ | 常温希アルカリでは比較的安定な場合があるが、高濃度・高温では劣化する。 |
| 低級アルコール類 | メタノール、エタノール、IPA | ○~△ | 短時間接触は比較的良好な場合が多いが、長期浸漬では膨潤や白化に注意する。 |
| 高級アルコール類 | ブタノール、グリセリン、MMB、ベンジルアルコール | ○~△ | ベンジルアルコールなどはエポキシを膨潤させる場合がある。 |
| 芳香族炭化水素類 | トルエン、キシレン、エチルベンゼン | △ | 膨潤、軟化、接着界面劣化が起こる場合がある。塗膜では特に注意する。 |
| 脂肪族炭化水素類 | ヘキサン、ヘプタン、ミネラルスピリット | ○ | 一般に比較的良好であるが、添加剤抽出や応力割れを確認する。 |
| ケトン | アセトン、MEK、MIBK、シクロヘキサノン | △~× | SP値が近く、膨潤、軟化、塗膜リフティングが起こりやすい。 |
| エステル | 酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル | △~× | 溶剤接触時間が長いと膨潤、白化、接着低下が生じる場合がある。 |
| 塩素系溶剤 | ジクロロメタン、クロロホルム、トリクロロエチレン | △~× | 強い膨潤、軟化、応力割れを起こす場合がある。 |
| 水・温水 | 水、温水、蒸気、塩水 | ○~△ | 常温水は良好な場合が多いが、温水・蒸気・長期浸漬では吸水、Tg低下、界面剥離に注意する。 |
| 油 | 鉱物油、潤滑油、動植物油、作動油 | ◎~○ | 一般に良好であるが、添加剤、酸化油、エステル系油では確認が必要である。 |
| 燃料 | ガソリン、軽油、灯油、アルコール混合燃料 | ○~△ | 芳香族分、アルコール分、添加剤により膨潤や接着低下が起こる場合がある。 |
| 洗剤・界面活性剤 | アルカリ洗剤、中性洗剤、脱脂剤 | ○~△ | pH、界面活性剤、キレート剤、温度、接触時間で評価する必要がある。 |
SP値(溶解度パラメータ)
エポキシ樹脂硬化物の代表的なSP値は、一般に約19~23 MPa1/2程度が目安である。ビスフェノールA型エポキシ硬化物では約20~22 MPa1/2程度として扱われることが多い。ただし、エポキシ樹脂は架橋構造であり、熱可塑性樹脂のように単純な溶解ではなく、膨潤、軟化、抽出、界面剥離、クラックとして現れる場合が多い。
SP値は溶剤との親和性を評価する有効な指標であるが、耐薬品性をSP値だけで判断することはできない。特にエポキシ樹脂では、架橋密度、硬化剤、Tg、吸水、加水分解、酸・アルカリ反応性、酸化性、溶剤の拡散速度、応力、膜厚、接着界面が実使用耐久性を左右する。
溶解性の目安
| SP値差 | 溶解・膨潤の目安 | 判定 |
|---|---|---|
| 0~2 | 膨潤・軟化しやすい | × |
| 2~5 | 条件により膨潤する | △ |
| 5~8 | 短時間接触では比較的安定 | ○ |
| 8以上 | 溶解・膨潤しにくい | ◎ |
SP値から見た耐溶剤性
下表では、エポキシ樹脂硬化物の代表SP値を21 MPa1/2と仮定して、代表溶剤とのSP値差を示す。実際には硬化物は架橋しているため、SP値差が小さくても完全溶解せず、膨潤、軟化、クラック、接着低下として現れる場合が多い。
| 薬品名 | 代表SP値 MPa1/2 | EPとの差 | 評価 | 実務上の注意 |
|---|---|---|---|---|
| 水 | 47.9 | 26.9 | ○~△ | SP差は大きいが、吸水、温水、界面剥離には注意する。 |
| メタノール | 29.6 | 8.6 | ○~△ | 短時間は比較的良好な場合があるが、長期浸漬は確認する。 |
| エタノール | 26.0 | 5.0 | ○~△ | 膨潤、白化、抽出、接着低下を確認する。 |
| IPA | 23.5 | 2.5 | △ | 接触時間が長い場合、膨潤や塗膜軟化に注意する。 |
| アセトン | 20.0 | 1.0 | × | 膨潤、軟化、塗膜リフティングが起こりやすい。 |
| MEK | 19.0 | 2.0 | ×~△ | 塗膜、接着剤、薄膜では特に注意する。 |
| 酢酸エチル | 18.6 | 2.4 | △~× | 長期接触では膨潤、白化、接着低下が起こる場合がある。 |
| トルエン | 18.2 | 2.8 | △ | 芳香族溶剤として膨潤、軟化に注意する。 |
| キシレン | 18.0 | 3.0 | △ | 塗料、床材、ライニングでは実液試験が必要である。 |
| ヘキサン | 14.9 | 6.1 | ○ | 比較的良好な場合が多いが、燃料組成や添加剤を確認する。 |
| ジクロロメタン | 20.2 | 0.8 | × | 強い膨潤、軟化を起こしやすい。 |
| NMP | 23.0 | 2.0 | △~× | 高極性溶剤であり、耐性確認が必要である。 |
評価基準:◎非常に良好、○概ね良好、△注意が必要、×不適である。SP値差は初期スクリーニングには有効であるが、エポキシ樹脂の実使用では、温度、濃度、接触時間、膜厚、残留応力、硬化度、基材密着性を含めた評価が必要である。
製法
代表的な反応式
エポキシ樹脂は、末端にエポキシ基を持ち、開環反応によって生成するもので、工業的に利用されているものは主としてエピクロロヒドリンと多価フェノール、多価アルコールなどとの反応性生物である。
エピクロロヒドリンと多価フェノールとの反応は、60~120℃で水酸化ナトリウムその他の触媒を用いて行う。
反応は比較的温和な条件で行われ収率も高い。
ビスフェノールA1モルとエピクロロヒドリン2モル以下で反応させる。(下図)
エピクロロヒドリンとビスフェノールAの配合量、反応条件などを変えることにより、平均分子量350~7,000の異なる樹脂が得られる。
- ビスフェノールA型エポキシ樹脂の主剤生成反応は、概念的には下記のように表される。
- ビスフェノールA + エピクロロヒドリン → ビスフェノールAジグリシジルエーテル + 副生成塩
- HO-Ar-C(CH3)2-Ar-OH + 2 Cl-CH2-CH-CH2-O → エポキシ基を持つ DGEBA 型主剤

アミン硬化の基本反応は、エポキシ基の開環付加反応である。
エポキシ基 + R-NH2 → β-ヒドロキシアミン構造 → 三次元架橋構造
エポキシの開環重合

エポキシの硬化反応

酸無水物によるエステル化

エポキシ樹脂の各種構造
エポキシ樹脂の各種構造

酸無水物硬化では、エポキシ基と酸無水物が反応してエステル結合を含む架橋構造を形成する。酸無水物硬化系は、電気絶縁材料、注型材料、耐熱材料で使用されることが多い。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 原料 | ビスフェノールA、ビスフェノールF、フェノールノボラック、クレゾールノボラック、エピクロロヒドリン、脂環式エポキシ化合物、グリシジルアミン化合物など。 |
| 主剤の製造 | フェノール性水酸基を持つ化合物とエピクロロヒドリンを反応させ、脱塩化水素によりグリシジルエーテル型エポキシ樹脂を得る。 |
| 硬化方法 | アミン硬化、酸無水物硬化、フェノール硬化、イミダゾール硬化、ジシアンジアミド硬化、カチオン硬化などがある。 |
| ペレット化やコンパウンド | 半導体封止材、粉体塗料、BMC、プリプレグでは、エポキシ樹脂、硬化剤、充填材、顔料、難燃剤、離型剤、カップリング剤などを混練し、粉砕、ペレット化、シート化する。 |
| 添加剤・充填材 | シリカ、アルミナ、水酸化アルミニウム、炭酸カルシウム、ガラス繊維、炭素繊維、ゴム粒子、難燃剤、反応性希釈剤、消泡剤、レベリング剤、シランカップリング剤などが用いられる。 |
| 後硬化 | 硬化度、Tg、耐熱性、耐薬品性、寸法安定性を高めるため、加熱後硬化を行う場合がある。 |
詳細な利用用途
| 用途分野 | 具体例 | 採用理由 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 自動車 | 構造用接着剤、電装部品封止、CFRP部材、補修材、塗料、床材 | 接着性、耐油性、電気絶縁性、複合材料適性が良い | 熱サイクル、振動、燃料、湿熱、衝撃を確認する。 |
| 電気・電子 | 半導体封止材、ポッティング材、絶縁注型、トランス、コイル、プリント基板 | 絶縁性、低収縮、耐湿信頼性、低CTE化が可能 | 吸湿、イオン不純物、アウトガス、熱膨張差、クラックに注意する。 |
| 機械部品 | 治具、注型部品、補修材、耐摩耗ライニング、摺動部材の接着 | 寸法安定性、接着性、充填材配合性が良い | 衝撃、摩耗、熱、油、薬品接触を確認する。 |
| 医療 | 医療機器部品の接着、電子部品封止、分析機器部材 | 接着性、絶縁性、寸法安定性を利用する | 生体適合性、滅菌、溶出、FDA、ISO 10993など用途別確認が必要である。 |
| 食品機械 | 床塗り、タンクライニング、補修材、設備接着、缶内面塗料 | 耐水性、耐油性、密着性、耐摩耗性が良い | 食品衛生、溶出、洗剤、熱水、アルカリ洗浄への耐性確認が必要である。 |
| 建築・設備 | 床材、防食ライニング、コンクリート補修、アンカー、接着、重防食塗料 | コンクリート接着性、耐薬品性、耐摩耗性が良い | 下地水分、アルカリ、温度、紫外線、上塗り適性に注意する。 |
| 複合材料 | CFRP、GFRP、プリプレグ、RTM、航空宇宙部材、スポーツ用品 | 繊維との接着性、強度、耐疲労性、低収縮性が良い | 硬化サイクル、ボイド、繊維含浸、層間破壊、吸湿を管理する。 |
| 塗料・コーティング | 防食塗料、床塗料、粉体塗料、プライマー、缶内面塗料 | 密着性、耐薬品性、耐摩耗性、防食性が良い | 屋外耐候性、チョーキング、上塗り、溶剤接触に注意する。 |
関連材料との比較
| 比較材料 | 特徴 | エポキシ樹脂との違い |
|---|---|---|
| 不飽和ポリエステル樹脂 | FRP用途で多く、常温硬化しやすく、コストが低い。 | エポキシ樹脂の方が一般に接着性、低収縮性、機械強度、耐疲労性に優れるが、コストと作業性では不飽和ポリエステルが有利な場合がある。 |
| フェノール樹脂 | 耐熱性、難燃性、耐火性に優れる熱硬化性樹脂である。 | フェノール樹脂は耐火性に優れるが、エポキシ樹脂は接着性、電気絶縁性、複合材料適性に優れる場合が多い。 |
| ポリウレタン | 柔軟性、弾性、耐摩耗性、発泡性に優れる材料である。 | ポリウレタンは柔軟・弾性用途に向き、エポキシ樹脂は硬質、高接着、低収縮、電気絶縁用途に向く。 |
| ビニルエステル樹脂 | エポキシ骨格と不飽和ポリエステルの作業性を組み合わせた耐食FRP用樹脂である。 | ビニルエステルは耐食FRPで使いやすいが、精密接着や電子封止ではエポキシ樹脂が選ばれることが多い。 |
| シアネートエステル樹脂 | 低誘電、高耐熱、高周波特性に優れる熱硬化性樹脂である。 | シアネートエステルは高周波・高耐熱用途で有利だが、コストと汎用性ではエポキシ樹脂が有利である。 |
| ビスマレイミド樹脂 | 高耐熱、高Tgの航空宇宙・電子材料向け熱硬化性樹脂である。 | ビスマレイミドは高温性能に優れるが、エポキシ樹脂は接着性、加工性、コスト、汎用性に優れる。 |
| ポリイミド | 極めて高い耐熱性、耐薬品性、電気特性を持つスーパーエンプラである。 | ポリイミドは高温耐久性に優れるが、エポキシ樹脂は接着、封止、塗装、複合材料マトリックス用途で使いやすい。 |
| ポリフェニレンサルファイド | 耐熱性、耐薬品性、難燃性に優れる結晶性スーパーエンプラである。 | PPSは射出成形部品に向く熱可塑性樹脂であり、エポキシ樹脂は硬化型の接着、封止、塗膜、複合材料用途に向く。 |
代表的なメーカー
下表は、エポキシ樹脂又はエポキシ系材料の代表的な実在メーカー例である。取り扱いグレード、ブランド、供給地域、用途範囲は時期により変わるため、採用時には各社の最新資料で確認する必要がある。
| メーカー | 代表製品・ブランド | 概要 |
|---|---|---|
| 三菱ケミカル | jER™ | ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、ノボラック型などのエポキシ樹脂で知られる。 |
| DIC | EPICLON 代表例 | 液状、固形、特殊エポキシ、電子材料、塗料、接着用途向けの樹脂を展開している。 |
| 日鉄ケミカル&マテリアル | エポキシ樹脂製品 代表例 | 電子材料、複合材料、機能性樹脂分野向けのエポキシ系材料を扱う。 |
| 住友ベークライト | SUMIKON EME 代表例 | 半導体封止材、電子材料、熱硬化性樹脂成形材料で実績がある。 |
| Huntsman | Araldite 代表例 | 接着剤、複合材料、電気絶縁、工業材料向けのエポキシ系製品を展開している。 |
| Olin | D.E.R.、D.E.N. 代表例 | 液状エポキシ、ノボラック型エポキシなどの基礎樹脂を供給する世界的メーカーである。 |
| Westlake Epoxy | EPIKOTE、EPIKURE 代表例 | エポキシ主剤、硬化剤、特殊エポキシを扱う大手メーカーである。 |
| Kukdo Chemical | YD、YDF、YDCN 代表例 | 汎用から特殊エポキシまで幅広いエポキシ樹脂を供給している。 |
| Aditya Birla Chemicals | EPOTEC 代表例 | 液状エポキシ、固形エポキシ、硬化剤などを展開している。 |
| ナガセケムテックス | 特殊エポキシ材料 代表例 | 電子材料、接着、封止、光学用途などの機能性エポキシ材料を扱う。 |
法規制・安全性・実使用上の注意
| 項目 | 確認内容 | 注意点 |
|---|---|---|
| RoHS | 鉛、水銀、カドミウム、六価クロム、PBB、PBDE、フタル酸エステル類など | 難燃剤、顔料、充填材、添加剤由来の規制物質を確認する。 |
| REACH | SVHC、制限物質、登録状況 | ビスフェノールA、反応性希釈剤、硬化剤、難燃剤の確認が必要である。 |
| 食品衛生 | 食品接触用途、缶内面塗料、設備ライニング | 各国規制、溶出、硬化条件、残留モノマー、使用温度を確認する。 |
| FDA | 食品接触、医療関連、間接添加物 | 該当用途に適合したグレードと証明書を確認する。 |
| 医療用途 | 生体適合性、滅菌、抽出物、溶出物 | ISO 10993、USP Class VIなど用途別評価が必要である。 |
| 作業安全 | 皮膚感作性、眼刺激性、揮発成分、粉じん | 手袋、保護眼鏡、換気、SDS確認、混合時の発熱管理が必要である。 |
| アウトガス | 残留モノマー、硬化剤、低分子成分、吸湿水分 | 電子、真空、光学用途ではTML、CVCM、イオン性不純物を確認する。 |
用途別選定の目安
| 用途 | 推奨されるグレード傾向 | 重視する特性 | 確認試験 |
|---|---|---|---|
| 構造用接着 | 靭性改質エポキシ、二液型、加熱硬化型 | せん断接着、剥離接着、耐衝撃、耐湿熱 | 引張せん断、Tピール、湿熱後強度、熱サイクル |
| 電子封止 | シリカ高充填、低イオン、低応力、難燃グレード | 絶縁性、低CTE、耐湿信頼性、流動性 | HAST、PCT、リフロー、イオン分析、ボイド観察 |
| 防食塗料 | ビスフェノールA型、ノボラック型、変性エポキシ | 密着性、耐薬品性、耐水性、耐摩耗性 | 浸漬、塩水噴霧、クロスカット、付着性、薬品スポット |
| 床材 | 二液常温硬化、低臭気、耐摩耗、耐薬品グレード | 耐摩耗、耐油、耐薬品、下地密着 | 摩耗、耐薬品、引張接着、下地水分、硬度 |
| チューブ・ライニング | 耐食エポキシ、ノボラック型、ガラスフレーク配合 | 耐酸、耐アルカリ、耐溶剤、耐温水 | 実液浸漬、膨潤率、重量変化、曲げ、ピンホール検査 |
| 筐体・注型品 | 低収縮、難燃、低発熱、充填材配合グレード | 寸法安定性、絶縁性、外観、クラック抑制 | 硬化発熱、寸法、絶縁、熱衝撃、外観 |
| フィルム・プリプレグ | 潜在性硬化、Bステージ、低流動又は制御流動グレード | タック、保存安定性、硬化性、接着性 | DSC、ゲルタイム、粘弾性、ラミネート評価 |
| コネクタ・絶縁部品 | 難燃、低吸湿、低イオン、寸法安定グレード | 絶縁性、耐熱性、難燃性、寸法精度 | UL94、絶縁抵抗、耐電圧、吸湿後評価 |
関連キーワード
エポキシ樹脂 熱硬化性樹脂 不飽和ポリエステル樹脂 フェノール樹脂 ポリウレタン CFRP ポリイミド PPS PEEK ビニルエステル樹脂 シアネートエステル樹脂 半導体封止材 エポキシ接着剤 エポキシ塗料 SP値 耐薬品性