| 材料名 | 塩素化ポリエーテル |
|---|---|
| 略記号 | CP Ether |
| 英語名 | Chlorinated Polyether |
| 分類 | 熱可塑性樹脂、耐薬品性樹脂、塩素系樹脂 |
| 基本構造 | 塩素を含むポリエーテル系高分子 |
| 主な種類 | 標準塩素化ポリエーテル、耐薬品グレード、成形用グレード |
| 主な用途 | 薬液機器部品、配管部品、バルブ、ポンプ部品、耐食部品 |
塩素化ポリエーテル(CP Ether)は、熱可塑性樹脂、耐薬品性樹脂、塩素系樹脂に分類される材料である。 塩素を含むポリエーテル系高分子を基本構造または代表構造とし、薬液機器部品、配管部品、バルブ、ポンプ部品、耐食部品などに使用される。
特徴
- 耐候性にすぐれている。
- 耐薬品性にすぐれている。
- 塩素を含むポリエーテル系の耐薬品性樹脂である
- 酸、アルカリ、塩類に対する耐性を持つ
- 耐水性、寸法安定性が良い
- 現在は流通量が少なく、代替材料としてPVDF、PPS、PVC、PTFEなどが検討される
- 熱安定性や加工性には注意が必要である
長所
- 耐薬品性が良い
- 耐水性が良い
- 寸法安定性が良い
- 電気特性が比較的良い
短所
- 流通量が少ない
- 高温加工時の分解に注意が必要である
- 強溶剤には確認が必要である
- 代替材料選定が必要な場合が多い
成形加工
塩素化ポリエーテルの加工性は、樹脂の種類、分子量、充填材、硬化系、添加剤、成形温度により大きく変化する。 成形時には乾燥、熱分解、残留応力、結晶化、硬化条件、離型性を確認する必要がある。
| 加工方法 | 適性 | 主な製品例 |
|---|---|---|
| 射出成形 | ○ | 成形材料グレードで対応する。複雑形状部品、機構部品、電気電子部品に使用する |
| 押出成形 | ○ | シート、フィルム、チューブ、棒材、板材に使用する |
| 圧縮成形 | △〜○ | 熱硬化性樹脂や高耐熱材、切削素材で使用する |
| 注型・含浸 | △〜○ | 熱硬化性樹脂、塗料、ワニス、複合材料で使用する |
| 切削加工 | ○ | 板材、丸棒、精密部品、治具に使用する |
| 接着・塗装 | △ | 材料の表面性により表面処理や専用接着剤が必要である |
構造式

塩素化ポリエーテルの構造は、材料分類、重合方法、共重合成分、充填材の有無により変化する。 構造中の極性基、芳香環、フッ素原子、シロキサン結合、イミド結合、エステル結合などが、耐熱性、耐薬品性、機械特性、吸水性、電気特性に影響する。
種類
標準塩素化ポリエーテル
| 名称 | 標準塩素化ポリエーテル |
|---|---|
| 構成 | 塩素化ポリエーテルの用途別または改質グレードである |
| 特徴 | 塩素化ポリエーテルの基本特性を用途に合わせて調整したグレードである |
| 主な用途 | 薬液機器部品、配管部品、バルブ、ポンプ部品、耐食部品 |
特徴
- 用途に応じて物性を調整したグレードである
- 標準品と比較して耐熱性、耐薬品性、機械特性、成形性のいずれかを改善する
- 実使用条件ではメーカーグレードごとのデータ確認が必要である
耐薬品グレード
| 名称 | 耐薬品グレード |
|---|---|
| 構成 | 塩素化ポリエーテルの用途別または改質グレードである |
| 特徴 | 塩素化ポリエーテルの基本特性を用途に合わせて調整したグレードである |
| 主な用途 | 薬液機器部品、配管部品、バルブ、ポンプ部品、耐食部品 |
特徴
- 用途に応じて物性を調整したグレードである
- 標準品と比較して耐熱性、耐薬品性、機械特性、成形性のいずれかを改善する
- 実使用条件ではメーカーグレードごとのデータ確認が必要である
成形用グレード
| 名称 | 成形用グレード |
|---|---|
| 構成 | 塩素化ポリエーテルの用途別または改質グレードである |
| 特徴 | 塩素化ポリエーテルの基本特性を用途に合わせて調整したグレードである |
| 主な用途 | 薬液機器部品、配管部品、バルブ、ポンプ部品、耐食部品 |
特徴
- 用途に応じて物性を調整したグレードである
- 標準品と比較して耐熱性、耐薬品性、機械特性、成形性のいずれかを改善する
- 実使用条件ではメーカーグレードごとのデータ確認が必要である
代表的な物性値又は機械的性質
| 性質 | 単位 | 標準 |
|---|---|---|
| 比重 | – | 1.4 |
| 吸水率 | % | 0.01 |
| 引張強さ | MPa | 41 |
| 引張伸び | % | 130 |
| 曲げ強さ | MPa | 35 |
| アイゾット衝撃強さ (ノッチ付き) | J/m | 20 |
| ロックウェル硬さ | Rスケール | R100 |
| 荷重たわみ温度 (18.2MPa) | ℃ | 210 |
| 熱膨張率 | ×10-5/℃ | 11 |
| 成形収縮率 | % | 0.6 |
耐薬品性
塩素化ポリエーテルの耐薬品性は、樹脂構造、温度、濃度、接触時間、応力状態、グレード、充填材により変化する。 下表は一般的な目安であり、薬液タンク、配管、洗浄治具、食品・医療用途では実使用条件で確認する必要がある。
| 薬品・溶剤 | 耐性 | 備考 |
|---|---|---|
| 水 | ○ | 材料種により吸水、加水分解、白化に注意が必要である |
| 弱酸 | ○ | 多くの場合で短期使用は可能である |
| 強酸 | △〜× | 樹脂構造により劣化、分解、膨潤が起こる |
| 弱アルカリ | ○〜△ | 材料により安定性が異なる |
| 強アルカリ | △〜× | エステル、イミド、アミド、カーボネート系では注意が必要である |
| アルコール | ○〜△ | 応力下ではクラックや膨潤に注意する |
| アセトン | △〜× | 非晶性樹脂や極性樹脂では膨潤・溶解しやすい |
| MEK | △〜× | 溶剤種、温度、応力条件で影響が大きい |
| トルエン | △ | 芳香族溶剤に弱い材料では膨潤・クラックが起こる |
| 塩素系溶剤 | △〜× | 多くの樹脂で膨潤・溶解・クラックに注意が必要である |
| 油・燃料 | ○〜△ | ポリオレフィン系、ポリアミド系などでは比較的良い場合がある |
更に詳しくはプラスチックの耐薬品性一覧表を参照。
SP値(溶解度パラメータ)
塩素化ポリエーテルのSP値は、約19〜22 MPa1/2が目安である。 SP値が近い溶剤では膨潤や溶解が起こりやすいが、結晶性、架橋構造、水素結合、分子量、充填材、温度の影響も大きいため、SP値は一次判断として扱う必要がある。
| 項目 | SP値(δ) MPa1/2 | 備考 |
|---|---|---|
| 塩素化ポリエーテル(標準グレード) | 20.0 | 耐酸・耐アルカリ性に優れるが、芳香族溶剤及び塩素系溶剤には注意が必要である。 |
| 塩素化ポリエーテル GF20 (ガラス繊維20%) | 20.3 | 寸法安定性及び耐クリープ性が向上する。耐溶剤性は標準材と同等レベルである。 |
| 塩素化ポリエーテル GF30 (ガラス繊維30%) | 20.5 | 高剛性タイプである。極性溶剤に対する膨潤がやや抑制される。 |
| 塩素化ポリエーテル CF15 (炭素繊維15%) | 19.8 | 導電性及び摺動性を付与したグレードである。非極性溶剤への耐性に優れる。 |
| 塩素化ポリエーテル 耐熱改質タイプ | 20.7 | 高温環境下での耐薬品性が向上している。ケトン系溶剤には長期接触を避ける必要がある。 |
溶解性の目安
| Δδ | 挙動 |
|---|---|
| 0〜2 | 溶解しやすい |
| 2〜5 | 膨潤・軟化 |
| 5以上 | 溶解しにくい |
SP値から見た耐溶剤性
| 溶剤名 | SP値(δ) MPa1/2 | 耐性評価 | 特徴・注意事項 |
|---|---|---|---|
| 水 | 47.9 | ◎ | 吸水率は低く、寸法変化は小さい。 |
| メタノール | 29.7 | ○ | 短時間接触では問題ないが、長期浸漬では膨潤の可能性がある。 |
| エタノール | 26.0 | ○ | 一般的な洗浄用途には適用可能である。 |
| アセトン | 20.3 | △ | SP値が近いため膨潤及び軟化に注意が必要である。 |
| MEK(メチルエチルケトン) | 19.0 | △ | 応力割れを生じる可能性があるため注意が必要である。 |
| トルエン | 18.2 | × | 膨潤及び溶解傾向が強く、使用は推奨されない。 |
| キシレン | 18.0 | × | 芳香族溶剤であり、長時間接触で著しい劣化を生じる。 |
| 酢酸エチル | 18.6 | △ | 短時間では使用可能であるが、長期接触には不向きである。 |
| n-ヘキサン | 14.9 | ◎ | 非極性溶剤に対しては比較的安定である。 |
| 塩化メチレン | 20.2 | × | 急激な膨潤及び溶解を引き起こす可能性が高い。 |
※耐溶剤性評価は、塩素化ポリエーテルのSP値中央値(約20 MPa1/2)を基準としている。
※◎:非常に良好 ○:概ね良好 △:注意が必要 ×:不適
※特にアセトン、MEK、トルエン、塩化メチレンなど、SP値が近い溶剤及び塩素系・芳香族溶剤には注意が必要である。
実務上の注意
- SP値は溶解性の目安であり、耐久性そのものではない
- 結晶性樹脂や熱硬化性樹脂では、SP値が近くても溶解しにくい場合がある
- 非晶性樹脂では、応力クラックが耐薬品性の主要問題になりやすい
- 実使用では温度、濃度、接触時間、応力、成形残留応力を確認する必要がある
製法
塩素化ポリエーテルは、ペンタエリトリトールを環化して3,3-ビス(クロメチル)オキサシクロブタンを生成させて開環重合させて製造する。

実用材料では、添加剤、充填材、安定剤、難燃剤、可塑剤、強化繊維などを配合して性能を調整する。
| 製法 | 特徴 | 主な製品形態 |
|---|---|---|
| 重合・重縮合 | 基本ポリマーを合成する | ベース樹脂 |
| 共重合・変性 | 耐熱性、柔軟性、耐薬品性、成形性を調整する | 改質グレード |
| コンパウンド | ガラス繊維、難燃剤、安定剤、潤滑剤などを配合する | 成形材料 |
| 成形・硬化 | 熱可塑性樹脂は溶融成形、熱硬化性樹脂は加熱硬化する | 最終成形品 |
詳細な利用用途
電気・電子用途
- コネクタ
- スイッチ部品
- 絶縁部品
- 筐体
- 高周波部品
自動車・輸送用途
- 内外装部品
- 機構部品
- 耐熱部品
- 摺動部品
- 燃料・配管関連部品
工業用途
- ギア
- 治具
- ライニング
- シール材
- 機械カバー
包装・生活用品用途
- フィルム
- 容器
- シート
- 日用品
- 保護部材
関連材料との比較
代表的なメーカー
| メーカー | 代表的な製品・商品名 | 備考 |
|---|---|---|
| 代表メーカー | 旧製品系が多く、現在はPVDF、PPS、PTFEメーカー材への代替が中心 | 材料・グレードにより供給状況が異なる |
| 国内外コンパウンダー | 各種改質グレード | GF強化、難燃、摺動、耐候グレード |
| 成形材料メーカー | 用途別グレード | メーカー物性表で確認が必要である |