ポリイミド

概要

材料名ポリイミド
略記号PI
英語名Polyimide
分類スーパーエンプラ、熱硬化又は熱可塑性イミド系樹脂
構造・主成分芳香族イミド結合を主鎖に持つ高耐熱樹脂
主な用途フィルム、絶縁材、耐熱部品、航空宇宙、半導体工程材

ポリイミドは、芳香族イミド結合を主鎖に持つ高耐熱樹脂である。極めて高い耐熱性、電気特性、耐放射線性、寸法安定性。

材料選定では、加工性が難しく高価、強アルカリに注意。用途、温度、荷重、薬品、成形方法に応じてグレードを選定する必要がある。

特徴

  • 耐熱性が高く、200℃の環境下の引張強さは120MPaと強い。
  • 電気的特性は、300℃まで変化のない特性を持つ。
  • 最大耐熱温度が815℃と言われている。
  • 熱膨張率が2.0×10-5(ASTM-D696)とかなり小さい。
  • 耐放射線性、寸法安定性がある。
  • 熱伝導率が高い。
  • 耐燃性がある。
  • 耐有機溶剤にはすぐれている。
  • 濃い酸、アルカリには侵される。
  • 加工性が難しく高価。
  • グレード、充填材、共重合成分、硬化条件により物性が大きく変化する。
  • 実使用では温度、湿度、応力、薬品接触時間を含めて評価する必要がある。
  • 耐熱性のある電気関連に使用されている。
長所
  • 極めて高い耐熱性、電気特性、耐放射線性、寸法安定性
  • 用途に応じたグレード展開がある。
  • 金属、ガラス、汎用樹脂の代替材料として使える場合がある。
短所
  • 加工性が難しく高価、強アルカリに注意
  • 高温、応力、薬品、吸水、添加剤の影響で性能が変化する。
  • 量産前にはメーカー物性表と実使用条件での確認が必要である。
成形加工

ポリイミドの加工性は種類とグレードにより異なる。熱可塑性樹脂では射出成形・押出成形が中心となり、熱硬化性樹脂では注型、圧縮、積層、硬化成形が中心となる。

加工方法適性主な製品例
射出成形グレードにより成形部品、電気電子部品、機械部品に使用する
押出成形シート、フィルム、チューブ、板材に使用する
圧縮・注型・硬化成形△〜◎熱硬化性樹脂や高粘度材料では主要加工法となる
切削加工丸棒、板材、試作部品、治具に使用する

構造式

ポリイミド化学式

芳香族イミド環を含む剛直な高分子構造。構造中の官能基、結晶性、架橋密度、芳香族骨格、充填材の有無により、耐熱性、耐薬品性、機械的性質、成形性が変化する。

種類

標準グレード
名称標準ポリイミド
構成芳香族イミド結合を主鎖に持つ高耐熱樹脂
特徴極めて高い耐熱性、電気特性、耐放射線性、寸法安定性
主な用途フィルム、絶縁材、耐熱部品、航空宇宙、半導体工程材
特徴
  • 標準的な物性バランスを持つ。
  • 汎用的な成形・加工用途に使いやすい。
強化・改質グレード
名称強化・改質ポリイミド
構成ガラス繊維、炭素繊維、難燃剤、耐候剤、潤滑剤、共重合成分などで改質したグレード
特徴剛性、耐熱性、耐候性、難燃性、摺動性、寸法安定性などを改善する
主な用途電気電子部品、自動車部品、機械部品、構造部品、機能部材
特徴
  • 標準グレードより特定性能を高めた材料である。
  • 充填材により比重、成形収縮、異方性、耐薬品性が変化する。

代表的な物性値又は機械的性質

項目単位標準PIGF強化PICF強化PI熱可塑性PI
比重なし1.35〜1.451.50〜1.751.35〜1.551.30〜1.45
引張強さMPa70〜120100〜180120〜22080〜150
引張伸び%5〜502〜101〜810〜80
曲げ強さMPa120〜200180〜300200〜350130〜220
曲げ弾性率GPa2.5〜4.56〜1210〜252.5〜5.0
圧縮強さMPa150〜300200〜400250〜500150〜300
アイゾット衝撃強さ
ノッチ付き
kJ/m23〜84〜103〜85〜12
ロックウェル硬さなしM90〜M115M100〜M120M105〜M125M90〜M115
ガラス転移温度250〜400以上250〜400以上250〜400以上240〜330
融点明確な融点なし明確な融点なし明確な融点なしグレード依存
連続使用温度220〜300240〜320240〜320200〜260
荷重たわみ温度250〜350以上280〜360以上280〜360以上200〜300
線膨張係数×10-5/K2〜51〜30.5〜23〜6
成形収縮率%0.2〜0.80.1〜0.50.1〜0.40.3〜1.0
吸水率%0.2〜1.50.2〜1.00.1〜0.80.2〜1.2
体積固有抵抗Ω・cm1015〜10171014〜1016102〜1081015〜1017
絶縁破壊強さkV/mm15〜3010〜25導電グレードは低下15〜30
比誘電率なし3.2〜3.83.5〜4.5導電性により変動3.2〜3.8
誘電正接なし0.002〜0.010.003〜0.015導電性により変動0.002〜0.01
熱伝導率W/m・K0.2〜0.40.3〜0.80.5〜2.00.2〜0.4
難燃性UL94V-0相当V-0相当V-0相当V-0相当
耐薬品性なし○〜◎○〜◎○〜◎○〜◎
耐放射線性なし○〜◎
耐候性なし○〜◎○〜◎○〜◎○〜◎
透明性なし黄色〜褐色透明/不透明不透明不透明黄色〜褐色透明/不透明
特性比較
性質単位ポリイミドフィルム
(カプトン)
ポリエステルフィルム
(マイラー)
比重
(25℃)
1.421.39
引張強さ
(25℃)
MPa175160
引張強さ
(200℃)
MPa12050
引張伸び
(25℃)
%70100
引張伸び
(200℃)
%90
絶縁破壊強さ
(25℃)
kV/mm280280
絶縁破壊強さ
(200℃)
kV/mm240200
誘電率
(25℃)
1033.53.1
誘電率
(200℃)
1033.0
体積固有抵抗
(25℃)
Ω・cm10141018
体積固有抵抗
(200℃)
Ω・cm10181011
ポリイミド熱劣化比較
温度(℃)熱劣化寿命熱劣化寿命
ポリイミドフィルムポリエステルフィルム
(マイラー)
200無限1ヶ月
2508年溶解
2751年
3003ヵ月
40012時間

耐薬品性

多くの溶剤に強い。強アルカリや加水分解条件に注意。

薬品・溶剤耐性備考
多くは常温で比較的安定であるが、吸水・加水分解型材料では注意する
△〜○強酸では劣化する材料がある
アルカリ△〜○ポリエステル、PC、熱硬化性樹脂では高温・高濃度に注意する
アルコール○〜△応力クラックや膨潤は材料により異なる
ケトン△〜×非晶性樹脂や塗料系樹脂では膨潤・溶解に注意する
芳香族溶剤△〜×膨潤、白化、クラックの可能性がある
油・燃料○〜△ポリアミド、POM、PBT、PPS、PEEKなどは比較的良好な場合が多い

更に詳しくはプラスチックの耐薬品性一覧表を参照。

SP値(溶解度パラメータ)

ポリイミドのSP値はグレード、結晶化度、架橋密度、充填材により変動する。溶解性はSP値だけでなく、温度、応力、薬品濃度、接触時間で判断する必要がある。

材料SP値(δ)特徴
ポリイミド(PI)約22〜26 MPa1/2超耐熱性、耐薬品性、電気特性を持つ芳香族高機能樹脂である
熱可塑性ポリイミド(TPI)約21〜25 MPa1/2溶融成形可能な高耐熱ポリイミドである
ポリアミドイミド(PAI)約23〜27 MPa1/2高強度、高耐熱、耐摩耗性を持つスーパーエンプラである
溶解性の目安
Δδ挙動
0〜2溶解しやすい
2〜5膨潤・軟化
5以上溶解しにくい
SP値から見る耐溶剤性
溶媒・薬品SP値(δ)
MPa1/2
耐性備考
47.9耐加水分解性は比較的高い
熱水47.9○〜◎高温長期では物性低下に注意が必要である
エタノール26.0アルコール系には強い
IPA23.5一般的な洗浄用途に使用可能である
メタノール29.7短期では安定である
アセトン19.9多くのPIは比較的安定である
MEK19.0高温長期では確認が必要である
酢酸エチル18.6架橋度や結晶性で差が出る
THF18.5一部PIでは膨潤する場合がある
クロロホルム19.0△〜×塩素系溶剤では影響を受ける場合がある
ジクロロメタン20.2△〜×長時間では膨潤やクラックの可能性がある
トルエン18.2芳香族溶剤には比較的強い
キシレン18.0高温長期を除き安定である
ヘキサン14.9脂肪族炭化水素には安定である
ガソリン15〜18程度耐燃料性は高い
鉱物油15〜17程度耐油性に優れる
フェノール24〜25△〜×高極性芳香族化合物では影響を受ける場合がある
NMP23.1×PI前駆体溶媒として使用されるほど溶解性が高い
DMF24.8×高極性アミド系溶剤であり影響が大きい
DMAc22.7×PI前駆体溶媒として用いられる
希酸一般的な酸には比較的強い
濃硫酸高極性△〜×一部PIは濃硫酸に溶解する
弱アルカリ○〜◎短期では比較的安定である
強アルカリ△〜×イミド結合の加水分解に注意する
次亜塩素酸ナトリウム酸化劣化する可能性がある
過酸化水素高濃度酸化剤では注意が必要である

◎:非常に良好 ○:概ね良好 △:注意が必要 ×:不適

実務上の注意
  • SP値は溶解・膨潤予測の一次判断であり、耐久性そのものではない。
  • 成形残留応力がある場合は、短時間の薬品接触でもクラックが発生する場合がある。
  • 最終判断は実使用条件での浸漬試験、応力負荷試験、温度サイクル試験で行う。

製法

ジアミンと酸二無水物からポリアミック酸を経てイミド化。

詳細な利用用途

代表用途
  • フィルム
  • 絶縁材
  • 耐熱部品
  • 航空宇宙
  • 半導体工程材
工業用途
  • 電気電子部品
  • 自動車部品
  • 機械部品
  • 耐熱・耐薬品部材
  • フィルム、シート、塗料、接着、複合材用途

関連材料との比較

比較材料違い選定ポイント
PVCポリイミドはPVCとは耐熱性、成形性、耐薬品性、価格帯が異なる難燃・低コストならPVC、高機能用途なら対象材料を検討する
PCPCは透明性と耐衝撃性に優れる透明防護用途ではPC、高耐薬品・高耐熱用途では他材料を検討する
PBTPBTは成形性と電気特性に優れる電装部品ではPBT、より高耐熱用途ではスーパーエンプラを選ぶ
PEEKPEEKは高耐熱・高耐薬品の代表材料である最高性能が必要ならPEEK、コスト重視なら汎用エンプラを検討する

代表的なメーカー

メーカー代表的な製品・商品名備考
DuPont Kapton/Vespel代表グレード又は関連製品詳細はメーカー技術資料で確認する
宇部 UPILEX代表グレード又は関連製品詳細はメーカー技術資料で確認する
カネカ Apical代表グレード又は関連製品詳細はメーカー技術資料で確認する

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