アルキド樹脂

概要

材料名アルキド樹脂
略記号ALK
英語名Alkyd Resin
分類熱硬化性又は塗料用ポリエステル樹脂
構造・主成分多塩基酸と多価アルコールから得られる高分子エステル
主な用途塗料、焼付塗料、建材塗装、金属塗装、木工塗料

アルキド樹脂は、多塩基酸と多価アルコールから得られる高分子エステルである。塗膜形成性、光沢、密着性、顔料分散性、塗料適性が良い。

材料選定では、耐アルカリ性・耐水性・乾燥性は油長や変性で変化。用途、温度、荷重、薬品、成形方法に応じてグレードを選定する必要がある。

特徴

  • 塗膜形成性、光沢、密着性、顔料分散性、塗料適性が良い
  • 耐アルカリ性・耐水性・乾燥性は油長や変性で変化
  • グレード、充填材、共重合成分、硬化条件により物性が大きく変化する。
  • 実使用では温度、湿度、応力、薬品接触時間を含めて評価する必要がある。
(1) 純グリセリンフタル酸樹脂
  • 未変性型:利用価値がないといわれている。
  • ロジン変性型:無水フタル酸の一部をロジンで置換したもので、 ワニス、ラッカーに使用されている。
  • 乾性油脂肪酸変性型:空気により酸化乾燥するのもので、各種ワニスとして用いられている。

(2) 樹脂変性フタル酸樹脂(油変性アルキド)
  • フェノール樹脂変性型:初期乾燥が速い。
    ◎成形材料としては、フタル酸にマレイン酸を添加して不飽和結合を作る。
    ◎ ビニルモノマーと過酸化ベンゾイルで硬化させる樹脂も製造される。
    ◎この樹脂には、4つの状態に分けられる。
    ※粒状(木綿、ガラス短繊維を添加した中強度アルキド樹脂)
    ※パテ状(エンキャップ)
    ※ 繊維状(ガラス繊維の多く入った樹脂)
    ※ロープ状(パテ状に似ているがガラス繊維を含み、流れが良いので自動的に成形できる。)
長所
  • 塗膜形成性、光沢、密着性、顔料分散性、塗料適性が良い
  • 用途に応じたグレード展開がある。
  • 金属、ガラス、汎用樹脂の代替材料として使える場合がある。
短所
  • 耐アルカリ性・耐水性・乾燥性は油長や変性で変化
  • 高温、応力、薬品、吸水、添加剤の影響で性能が変化する。
  • 量産前にはメーカー物性表と実使用条件での確認が必要である。
成形加工

アルキド樹脂の加工性は種類とグレードにより異なる。熱可塑性樹脂では射出成形・押出成形が中心となり、熱硬化性樹脂では注型、圧縮、積層、硬化成形が中心となる。

化学

加工方法適性主な製品例
射出成形グレードにより成形部品、電気電子部品、機械部品に使用する
押出成形シート、フィルム、チューブ、板材に使用する
圧縮・注型・硬化成形△〜◎熱硬化性樹脂や高粘度材料では主要加工法となる
切削加工丸棒、板材、試作部品、治具に使用する

構造式

アルキド樹脂の構造式
アルキド樹脂の代表構造:ポリエステル骨格に脂肪酸や乾性油成分を含む構造
アルキド樹脂

ポリエステル骨格に脂肪酸や乾性油成分を含む構造。構造中の官能基、結晶性、架橋密度、芳香族骨格、充填材の有無により、耐熱性、耐薬品性、機械的性質、成形性が変化する。

種類

標準グレード
名称標準アルキド樹脂
構成多塩基酸と多価アルコールから得られる高分子エステル
特徴塗膜形成性、光沢、密着性、顔料分散性、塗料適性が良い
主な用途塗料、焼付塗料、建材塗装、金属塗装、木工塗料
特徴
  • 標準的な物性バランスを持つ。
  • 汎用的な成形・加工用途に使いやすい。
強化・改質グレード
名称強化・改質アルキド樹脂
構成ガラス繊維、炭素繊維、難燃剤、耐候剤、潤滑剤、共重合成分などで改質したグレード
特徴剛性、耐熱性、耐候性、難燃性、摺動性、寸法安定性などを改善する
主な用途電気電子部品、自動車部品、機械部品、構造部品、機能部材
特徴
  • 標準グレードより特定性能を高めた材料である。
  • 充填材により比重、成形収縮、異方性、耐薬品性が変化する。

代表的な物性値又は機械的性質

項目単位短油性
アルキド樹脂
中油性
アルキド樹脂
長油性
アルキド樹脂
変性
アルキド樹脂
比重なし1.10〜1.251.00〜1.150.95〜1.101.00〜1.25
引張強さMPa25〜6015〜455〜2520〜70
引張伸び%1〜105〜5020〜2005〜100
曲げ強さMPa40〜9025〜7010〜4030〜100
曲げ弾性率GPa1.5〜3.50.8〜2.50.1〜1.01.0〜4.0
鉛筆硬度なしH〜3HHB〜2H6B〜HBHB〜4H
ロックウェル硬さなしM40〜M80M20〜M60測定困難〜M30M30〜M90
ガラス転移温度40〜800〜50-40〜200〜100
軟化温度80〜14050〜11030〜8060〜160
連続使用温度80〜12070〜11050〜9080〜150
耐衝撃性なし△〜○○〜◎
付着性なし○〜◎
柔軟性なし○〜◎
乾燥性なし△〜○○〜◎
光沢なし○〜◎○〜◎
耐水性なし△〜○○〜◎
耐薬品性なし△〜○△〜○○〜◎
耐溶剤性なし△〜○○〜◎
耐候性なし△〜○○〜◎
耐黄変性なし△〜○△〜○○〜◎
電気絶縁性なし△〜○
透明性なし透明〜淡黄色透明透明〜淡黄色透明淡黄色透明〜褐色透明透明〜不透明
樹脂変性フタル酸樹脂(油変性アルキド)
項目単位パテ状ロープ状
比重なし2.0~2.2
成形温度130~165
成形圧力MPa2.8~5.64.2~7
引張強さMPa21~3535~70(繊維状)
熱膨張率×10-5 /℃1.5~40

耐薬品性

水・弱酸は配合依存。強アルカリで加水分解に注意。

薬品・溶剤耐性備考
多くは常温で比較的安定であるが、吸水・加水分解型材料では注意する
△〜○強酸では劣化する材料がある
アルカリ△〜○ポリエステル、PC、熱硬化性樹脂では高温・高濃度に注意する
アルコール○〜△応力クラックや膨潤は材料により異なる
ケトン△〜×非晶性樹脂や塗料系樹脂では膨潤・溶解に注意する
芳香族溶剤△〜×膨潤、白化、クラックの可能性がある
油・燃料○〜△ポリアミド、POM、PBT、PPS、PEEKなどは比較的良好な場合が多い

更に詳しくはプラスチックの耐薬品性一覧表を参照。

SP値(溶解度パラメータ)

アルキド樹脂のSP値はグレード、結晶化度、架橋密度、充填材により変動する。溶解性はSP値だけでなく、温度、応力、薬品濃度、接触時間で判断する必要がある。

材料SP値(δ)特徴
長油性アルキド樹脂約17〜19 MPa1/2柔軟性、刷毛塗り性、耐候性に優れる
中油性アルキド樹脂約18〜20 MPa1/2乾燥性と柔軟性のバランスが良い
短油性アルキド樹脂約19〜22 MPa1/2高硬度、高光沢、速乾性に優れる
メラミン変性アルキド樹脂約20〜23 MPa1/2耐熱性、耐薬品性、耐溶剤性を向上させたタイプである
溶解性の目安
Δδ挙動
0〜2溶解しやすい
2〜5膨潤・軟化
5以上溶解しにくい
SP値から見た耐溶剤性
溶媒・薬品SP値(δ)
MPa1/2
耐性備考
47.9短期耐水性は比較的良好である
熱水47.9長期では加水分解する場合がある
エタノール26.0短期では比較的安定である
IPA23.5一般洗浄用途には耐える
メタノール29.7△〜○長期では軟化する場合がある
アセトン19.9×ケトン系溶剤で溶解や膨潤しやすい
MEK19.0×塗膜が侵されやすい
酢酸エチル18.6△〜×長時間で膨潤や軟化する
THF18.5×強い溶解性を示す
クロロホルム19.0×塩素系溶剤に弱い
ジクロロメタン20.2×溶解や膨潤が発生する
トルエン18.2芳香族溶剤で軟化する場合がある
キシレン18.0長時間接触で膨潤する
ヘキサン14.9脂肪族炭化水素には比較的強い
ガソリン15〜18程度短期では比較的安定である
鉱物油15〜17程度○〜◎耐油性は比較的良好である
フェノール24〜25×高極性芳香族化合物に弱い
DMF24.8×高極性溶剤で溶解する場合がある
NMP23.1×塗膜が軟化・膨潤する
希酸弱酸には比較的安定である
濃硫酸高極性×加水分解や炭化を生じる
弱アルカリ徐々に加水分解する場合がある
強アルカリ×エステル結合が加水分解される
次亜塩素酸ナトリウム酸化劣化を起こす場合がある
過酸化水素高濃度では酸化劣化する

◎:非常に良好 ○:概ね良好 △:注意が必要 ×:不適

実務上の注意
  • SP値は溶解・膨潤予測の一次判断であり、耐久性そのものではない。
  • 成形残留応力がある場合は、短時間の薬品接触でもクラックが発生する場合がある。
  • 最終判断は実使用条件での浸漬試験、応力負荷試験、温度サイクル試験で行う。

製法

多塩基酸、多価アルコール、脂肪酸・油を縮合する。

詳細な利用用途

代表用途
  • 塗料
  • 焼付塗料
  • 建材塗装
  • 金属塗装
  • 木工塗料
工業用途
  • 電気電子部品
  • 自動車部品
  • 機械部品
  • 耐熱・耐薬品部材
  • フィルム、シート、塗料、接着、複合材用途

関連材料との比較

比較材料違い選定ポイント
PVCアルキド樹脂はPVCとは耐熱性、成形性、耐薬品性、価格帯が異なる難燃・低コストならPVC、高機能用途なら対象材料を検討する
PCPCは透明性と耐衝撃性に優れる透明防護用途ではPC、高耐薬品・高耐熱用途では他材料を検討する
PBTPBTは成形性と電気特性に優れる電装部品ではPBT、より高耐熱用途ではスーパーエンプラを選ぶ
PEEKPEEKは高耐熱・高耐薬品の代表材料である最高性能が必要ならPEEK、コスト重視なら汎用エンプラを検討する

代表的なメーカー

メーカー代表的な製品・商品名備考
DIC代表グレード又は関連製品詳細はメーカー技術資料で確認する
日立化成系代表グレード又は関連製品詳細はメーカー技術資料で確認する
Arkema代表グレード又は関連製品詳細はメーカー技術資料で確認する
Allnex代表グレード又は関連製品詳細はメーカー技術資料で確認する
Polynt代表グレード又は関連製品詳細はメーカー技術資料で確認する

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