パラキシリレン

概要

項目内容
材料名パラキシリレン系樹脂
略記号PPX(poly(p-xylylene))。実務ではParylene N、C、D、HTなどのグレード名で呼ばれることが多い。
IUPACpoly(1,4-xylylene) または poly(p-xylylene)
英語名Poly(p-xylylene), Parylene
日本語名ポリ(p-キシリレン)、ポリパラキシリレン、パリレン
分類芳香族炭化水素系ポリマー、真空蒸着重合型コンフォーマルコーティング
プラスチック分類特殊機能性プラスチック。一般的な射出成形用エンプラやスーパーエンプラとは用途・加工法が異なる。
代表構造[–CH2–C6H4–CH2–]n
CAS No.Parylene N:一般に26022-14-2として扱われる例がある。置換体は別CASとなるため、SDSで個別確認が必要である。
構造・主成分p-キシリレン単位が連鎖した半結晶性ポリマー。芳香環上の塩素置換やメチレン部のフッ素置換により、バリア性、耐熱性、誘電特性などを調整する。
主な用途電子基板、センサー、MEMS、コイル、磁性部品、医療機器、カテーテル、金属防食、微細構造保護、低摩擦表面。

パラキシリレンは、一般にパリレンと呼ばれるポリ(p-キシリレン)系樹脂の基本骨格を指す名称である。代表的な無置換タイプはParylene Nであり、芳香環を塩素置換したParylene CおよびD、フッ素置換したParylene HT/AF系などが実用化されている。

通常の射出成形用ペレットとは異なり、主に[2.2]パラシクロファン系ダイマーを減圧下で気化・熱分解し、生成したp-キシリレンモノマーを基材表面で直接重合させる。溶剤塗布ではないため、複雑形状、微細隙間、実装基板、MEMS、細線、コイルなどに比較的均一な膜厚で成膜しやすい。

膜は一般に透明から半透明であり、電気絶縁、防湿、ガスバリア、耐薬品、低摩擦、防食などの機能を付与する。一方、膜性能はグレードだけでなく、膜厚、基材、前処理、端部形状、成膜条件、温度、湿度、薬品濃度、荷重、応力、使用時間に大きく左右される。

特徴

項目内容
長所溶剤を用いない気相成膜、複雑形状への高い追従性、薄膜での電気絶縁性、防湿性、耐薬品性、低摩擦性、生体適合グレードの存在。
短所専用真空装置が必要で、成膜はバッチ処理が中心である。膜の再加工・除去が難しく、紫外線、酸素存在下の高温、密着不良、ピンホール、膜端部からの浸入に注意が必要である。
外観一般に無色透明から淡色の薄膜。膜厚、結晶化、基材粗さ、熱履歴により透明性や光沢が変化する。
耐熱性Parylene Cは空気中で概ね80~100℃級、Parylene Nは60~80℃級、Dは100℃級、フッ素系HTはより高温域に対応する例がある。実用上限は膜厚、酸素、荷重、時間で変化する。
耐薬品性水、希酸、希アルカリ、油類、多くの有機溶剤に比較的安定であるが、長時間浸漬、高温、応力、強酸化剤、ハロゲン系薬品では個別評価が必要である。
加工性通常の溶融成形ではなく、ダイマーの気化、熱分解、基材表面での蒸着重合により成膜する。マスキング、表面前処理、膜厚管理、治具設計が重要である。
分類上の注意「パラキシリレン」は反応中間体名や骨格名としても使われる。材料ページでは実用材料であるポリ(p-キシリレン)系、すなわちパリレン系コーティングとして整理する。

構造式

パラキシリレン系樹脂PPXの代表構造式

代表的な構造単位

無置換のParylene Nは、–CH2–C6H4–CH2–を繰返し単位とする。芳香環のpara位をメチレン鎖が連結するため、主鎖中に芳香環を含む直鎖状ポリマーとなる。

モノマーまたは構成単位

成膜工程では、[2.2]パラシクロファン系ダイマーを熱分解して反応性の高いp-キシリレン中間体を生成し、基材表面で重合させる。Parylene CおよびDは芳香環に塩素を、Parylene HT/AF系は主にフッ素を導入した誘導体である。

共重合体・変性グレード

反応性官能基を導入したパリレン、異種ダイマーを併用した共重合系、表面固定化用途向けのアミノ基・カルボキシ基含有系などが研究・実用化されている。一般的な物性や法規制適合は、置換基と成膜条件により大きく変化する。

種類・代表グレード

種類・代表グレード主成分・特徴長所短所主な用途
Parylene N無置換ポリ(p-キシリレン)低誘電率、隙間への浸透性、柔軟性防湿性はCより低い場合があり、空気中高温・UVに注意電子部品、微細構造、絶縁膜
Parylene C芳香環にClを1個有する置換体防湿性、絶縁性、成膜性、コストのバランスが良い高温酸化、UV、除膜性に注意基板、コイル、センサー、一般防湿
Parylene D芳香環にClを2個有する置換体Cより高温域に対応しやすい原料・成膜条件の制約、流通性高温電子部品、特殊保護膜
Parylene HT/AF系フッ素置換パラキシリレン系高温安定性、低誘電率、低摩擦、低吸水高価格、成膜効率、密着管理航空宇宙、半導体、真空、高温センサー
反応性・機能化パリレンアミノ基、カルボキシ基、アルキン基などを導入した誘導体表面固定化、バイオ機能化、接着性設計材料・工程の標準化が限定的バイオセンサー、研究用途、機能性界面

成形加工

加工方法適性理由・主な注意点
真空蒸着重合主加工法である。ダイマー気化、熱分解、室温付近での蒸着重合により均一薄膜を形成する。
射出成形×一般的なペレット溶融成形材料ではない。
押出成形×高分子量・不溶不融に近い性質のため一般的ではない。
ブロー成形×一般的な成形法ではない。
圧縮成形×厚肉バルク材の成形には通常用いない。
真空成形×シートを再加熱して賦形する材料ではない。
切削加工厚膜や自立膜の微細加工例はあるが、一般部品加工には不向きである。
レーザー加工局所除膜・パターニングに利用できるが、熱影響、残渣、基材損傷を確認する。
接着低反応性表面のため、プラズマ、コロナ、プライマー、表面粗化などが必要となる場合がある。
塗装・印刷表面処理後は可能であるが、未処理膜では密着性が不足しやすい。
代表的な成膜条件
項目単位一般的な目安注意点
予備乾燥基材と治具を十分乾燥吸着水は密着性、真空到達、ピンホールに影響する。
ダイマー気化温度約100~180ダイマー種と装置により異なる。
熱分解温度約550~750置換体、流量、滞留時間により最適値が異なる。
成膜室温度約15~35通常は基材を積極加熱せず成膜する。
真空度Pa数Pa~数十Pa程度装置方式と膜質により異なる。
代表膜厚µm0.1~50電子用途では数µm~数十µmが多い。
成膜速度µm/h装置・条件依存膜厚分布とダイマー利用効率を確認する。

代表的な物性値又は機械的性質

以下は主にParylene N、C、D、HTの公開代表値を比較して整理した目安である。比較機能ではParylene C相当を代表値として扱う項目があるが、数値は膜厚、成膜条件、熱履歴、試験法、基材の影響を受ける。

項目単位代表値代表範囲条件・規格材料状態・備考信頼度
密度g/cm³1.291.10~1.42代表資料比較Parylene N~D。Cの代表値は約1.29A
比重無次元1.291.10~1.4223℃目安グレード依存B
吸水率・24時間%0.06<0.01~0.10ASTM D570相当の公開例膜厚・試験片条件依存B
引張強さ・破断MPa6948~76薄膜引張、代表資料N、C、D、HTで差があるB
引張弾性率GPa2.82.4~3.0薄膜、室温目安成膜条件・結晶化度依存B
引張破断伸び%200150~250薄膜、室温目安膜厚・欠陥・熱履歴依存B
硬度ロックウェルR8080~122ASTM D785相当の公開例HTは高い例があるB
動摩擦係数無次元0.290.13~0.31乾燥、代表例相手材、荷重、速度依存B
ガラス転移温度データなし一般化困難測定法・グレード依存結晶性および熱履歴の影響が大きいC
融点290290~>500代表資料C:約290、N:約420、D:約380、HT:>500A
連続使用温度8060~350空気中の一般目安C:約80、N:約60、D:約100、HT:約350B
短時間耐熱温度10080~450一般目安酸素濃度、時間、膜厚で変化B
熱伝導率W/(m・K)0.0840.084~0.12625℃代表例C~N。膜構造で変化B
線膨張係数10⁻⁵/K3.53.5~6.925℃付近Nは約6.9、Cは約3.5B
体積抵抗率Ω・cm1×10161015~1017乾燥、室温目安膜厚、湿度、欠陥依存B
絶縁破壊強さkV/mm220200~280薄膜代表例試験法・膜厚依存B
比誘電率・1 kHz無次元3.152.5~3.151 kHz目安HT/Nは低め、Cは高めB
誘電正接・1 kHz無次元0.020.0002~0.021 kHz目安グレード・周波数依存C
UL 94燃焼性等級グレード依存データなし認証グレードで確認材料名のみで断定不可C
難燃性

パリレン系のUL 94等級は材料名だけで一律に決まらない。グレード、膜厚、基材、試験片構成、色、添加剤、成膜条件を含む認証条件を確認する必要がある。塩素含有のCおよびDと、ハロゲンフリーのN、フッ素系HTでは燃焼挙動と規制上の扱いが異なる。

寸法精度・設計特性
  • 薄膜であるため基材寸法への影響は小さいが、数µm単位の公差部品では膜厚を設計寸法へ組み込む必要がある。
  • 鋭角部、深い穴、接触面、マスキング境界では膜厚分布が変化する。
  • 基材との線膨張係数差により、温度サイクルで膜応力、クラック、剥離が発生する場合がある。
  • 短時間の引張物性を、そのまま長期耐久や設計許容応力へ使用しない。
品質・成膜不良
不良主な原因主な対策
ピンホール異物、膜厚不足、ガス放出、鋭角部基材洗浄、真空乾燥、膜厚増加、治具最適化
密着不良油分、水分、離型剤、低表面エネルギー脱脂、プラズマ、コロナ、適切なシランプライマー
膜厚むら治具遮蔽、搭載密度、流れ不均一基材配置、回転治具、供給条件の見直し
白化・曇り粗面、結晶化、厚膜、熱履歴膜厚・熱処理・基材表面の見直し
クラック過大膜厚、基材変形、熱膨張差膜厚最適化、角R、応力緩和、グレード選定
マスキング不良密封不足、剥離時の膜引き専用マスキング、切れ目設計、剥離手順管理

耐薬品性

評価は一般的なパリレン薄膜の傾向であり、Parylene N、C、D、HTで異なる。実使用では、薬品濃度、温度、接触時間、浸漬または飛沫、応力、膜厚、基材、端部処理、前処理を含めて確認する。

薬品・環境濃度・条件評価主な劣化形態・理由備考
23℃、長時間浸漬吸水が小さく、膜自体への影響は一般に小さい端面・欠陥から基材側へ浸入し得る
温水60~80℃、長時間温度上昇で透過・界面剥離が進みやすい膜厚と密着性を確認
塩水・海水3.5% NaCl、23℃防食バリアとして有効な場合が多いピンホール、端部処理が重要
塩酸10%、23℃一般に比較的安定高温・高濃度では個別試験
硫酸10%、23℃希薄条件では比較的安定濃硫酸・高温は注意
硝酸10%、23℃酸化性により変色・劣化の可能性濃度と温度の影響が大きい
水酸化ナトリウム10%、23℃一般に比較的安定高温濃厚液は確認
エタノール99%、23℃膨潤が小さい場合が多い長時間浸漬では重量・寸法確認
IPA99%、23℃一般に良好残留応力・界面密着を確認
グリセリン23℃多価アルコールに比較的安定温度上昇時は透過を確認
MMB23℃グリコールエーテル系であり長時間接触に注意膜厚・グレード依存
トルエン23℃室温では溶解しにくいが長時間で膨潤の可能性高温・薄膜は注意
n-ヘキサン23℃脂肪族炭化水素に比較的安定油中添加剤の影響を別途確認
アセトン23℃一般に溶解しにくい界面・基材への浸透に注意
酢酸エチル23℃膜は比較的安定長時間接触で膨潤確認
ジクロロメタン23℃ハロゲン系溶剤は膨潤・透過に注意膜除去工程に使われる場合もあり個別確認
潤滑油23~100℃油に対するバリア・低摩擦用途がある添加剤、温度、圧力依存
燃料23~60℃炭化水素系燃料に比較的安定な場合がある芳香族分、含酸素燃料、温度を確認
次亜塩素酸ナトリウム200~1000 ppm、23℃酸化剤であり長期暴露に注意濃度、pH、紫外線併用を確認
過酸化水素3%、23℃酸化劣化や界面影響の可能性医療洗浄・滅菌条件では実試験必須
SP値(溶解度パラメータ)

ポリ(p-キシリレン)系の代表的なSP値は、資料と推算方法により差があるが、概ね19~21 MPa1/2程度を参考範囲として扱う。置換基、結晶化度、分子量、薄膜構造により変化するため、単一値での断定は避けるべきである。

パリレンは高分子量、半結晶性、架橋に近い不溶挙動、薄膜界面の影響を受けるため、SP値差だけで耐薬品性を判断できない。酸化、加水分解、界面剥離、透過、添加剤抽出、基材の環境応力割れも考慮する必要がある。

溶解性の目安
SP値差 Δδ溶解・膨潤の目安判定
0~2膨潤・軟化しやすい×
2~5条件により膨潤する
5~8短時間接触では比較的安定
8以上溶解・膨潤しにくい
SP値から見た耐溶剤性

以下はPPXの代表SP値を20 MPa1/2と仮定した参考計算である。実測耐薬品性とは一致しない場合があり、特にパリレンでは結晶性、分子運動性、膜厚、透過性、界面密着が支配的となる。

溶剤SP値 MPa1/2PPXとの差の目安評価注意点
n-ヘキサン14.9約4~5実際には結晶性と不溶性により良好な場合がある
トルエン18.2約1~2×SP差だけでは膨潤リスクが高く見える
酢酸エチル18.6約1~2×長時間・高温で確認
MEK19.0約1以下×膜と界面の両方を評価
アセトン19.9約1×実測では耐える場合もありSP単独判定不可
IPA23.5約4~5一般に実使用性は比較的良い
エタノール26.0約6~7長時間浸漬を確認
47.9約28~29透過と界面剥離は別評価

製法

パラキシリレン系コーティングPPXの製造工程

工程内容主な管理項目
原料準備[2.2]パラシクロファンまたは置換ダイマーを精製し、必要量を秤量する。純度、水分、異物、保管履歴
気化減圧下でダイマーを加熱し、蒸気として反応系へ導入する。気化温度、供給速度、真空度
熱分解高温部でダイマーを開裂させ、反応性p-キシリレンモノマーを生成する。熱分解温度、滞留時間、配管温度
蒸着重合室温付近の基材表面でモノマーが吸着し、連鎖重合して薄膜を形成する。基材温度、真空度、膜厚、治具・回転
前処理・密着向上洗浄、乾燥、プラズマ、シラン系プライマーなどを用いる場合がある。表面汚染、濡れ性、基材耐熱性
後処理・検査マスキング除去、膜厚測定、外観、ピンホール、絶縁、密着、漏れ試験を行う。膜厚分布、欠陥、端部、再現性
代表的な反応式

[2.2]パラシクロファン誘導体 → 2 p-キシリレン誘導体 → [–CH2–C6H4–CH2–]n

実際には、ダイマーの昇華・気化、熱分解、モノマー輸送、基材表面への吸着、連鎖成長が連続的に進行する。溶剤や通常の重合触媒を基本的に必要としないことが特徴である。

添加剤・充填材・強化材

一般的な射出成形樹脂のようにGFやCFをコンパウンドする材料ではない。機能付与は、置換基設計、共重合、積層膜、プラズマ処理、プライマー、無機薄膜とのハイブリッド化、膜厚制御によって行うことが多い。

詳細な利用用途

分野代表用途適性選定理由・注意点
電気・電子基板、コイル、センサー、磁性部品、コネクタ保護薄膜絶縁、防湿、複雑形状追従。リワーク性と端部密封を確認。
半導体・MEMSMEMS、微細電極、ゲート絶縁、パッケージ保護低温成膜とコンフォーマル性。パーティクル、アウトガス、膜応力を管理。
医療カテーテル、ガイドワイヤ、インプラント機器表面低摩擦、生体適合グレードの存在。ISO 10993、USP Class VI、滅菌耐久を個別確認。
自動車センサー、電子制御基板、燃料・湿気環境部品防湿、防食、薄膜化。温度サイクル、燃料組成、振動を確認。
航空宇宙・防衛高信頼電子部品、真空・高温センサーHT系の耐熱・低アウトガスが有利。規格適合と長期真空特性を確認。
機械部品微小摺動面、ばね、細線、刃物、ノズル低摩擦、防食、寸法影響が小さい。摩耗寿命と剥離を確認。
食品機械センサー、計測部品、局所防食食品接触適合グレードと洗浄薬品耐久の確認が必要。
建築・設備特殊センサー、腐食環境の小型部品大面積・屋外UV・コスト面で限定的。
用途別選定
用途適性理由・注意点
ギア・軸受・ブッシュバルク材ではなく表面低摩擦膜として限定的に有効。摩耗寿命を確認。
チューブ・ホース内外面バリア、低摩擦、生体適合用途に使われる。屈曲耐久と膜均一性を確認。
フィルム・シート自立膜は可能だが、一般包装フィルムとしては高コスト。
電気コネクタ・絶縁部品薄膜絶縁と防湿に適する。接点部のマスキングが必要。
電子部品筐体局所防湿・防食に有効。大面積ではコストと真空槽サイズが制約。
透明カバー・レンズ薄膜透明性はあるが、散乱、干渉色、UV劣化を確認。
燃料系部品センサー・微小部品の保護に有効な場合がある。燃料組成と温度を確認。
医療機器部品適合グレードと工程管理が前提。滅菌・生体安全性・抽出物を確認。
半導体製造装置部品絶縁、防食、低粒子化に有効。高純度・アウトガス評価が必要。
真空装置部品HT系や高純度膜が候補。TML、CVCM、脱ガスを確認。
建築・屋外部品UV、面積、コストにより限定的。
接着剤・塗料×PPX自体を液状接着剤・塗料として使う材料ではない。
コーティング主要用途である。複雑形状に均一な薄膜を形成しやすい。
複合材料マトリックス×一般的なFRPマトリックス用途には用いない。

関連材料との比較

比較材料特徴PPXとの違い
ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)耐薬品性、低摩擦、耐熱性に優れる。PTFEはバルク成形材・フィルムとして利用しやすい。PPXは気相成膜で複雑形状へ薄く均一に形成しやすい。
ポリイミド(PI)高耐熱、電気絶縁、フィルム用途に優れる。PIはフィルムや成形品として使われる。PPXは室温付近での蒸着重合と高いコンフォーマル性が特徴である。
ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)高強度、高耐熱、耐薬品性に優れるスーパーエンプラ。PEEKは構造部品向け溶融成形材。PPXは数µm~数十µmの表面保護膜向けである。
ポリフェニレンサルファイド(PPS)耐熱、耐薬品、難燃、寸法安定性に優れる。PPSは射出成形部品向け。PPXは薄膜絶縁・防湿と微細隙間への被覆性に優れる。
ポリフッ化ビニリデン(PVDF)耐薬品、耐候、圧電性、成膜性を持つフッ素樹脂。PVDFは溶融・溶液加工が可能。PPXは無溶剤の真空蒸着重合で成膜する。
ポリエチレンテレフタレート(PET)透明フィルム、絶縁、包装用途で汎用性が高い。PETは基材フィルムとして安価である。PPXは被覆対象へ直接成膜し、ピンホールの少ない保護膜を形成しやすい。
エポキシ樹脂接着、封止、含浸、厚膜形成に優れる。エポキシは液状塗布・硬化で厚膜化しやすい。PPXは薄膜、低温、気相成膜で微細構造への追従性が高い。
比較用評価スコア

スコアは材料群としての一般的傾向を5段階で示したものであり、特定グレードの最高性能を表すものではない。

評価項目スコア評価理由
引張強度3薄膜として十分な強度を持つが、構造材用途ではない。
剛性3一般的な樹脂薄膜相当であり、グレード差がある。
衝撃強度3柔軟な膜であるが、膜厚・基材・欠陥に依存する。
耐熱性3N/Cは中程度、D/HTは高い。材料群全体では中程度と評価する。
耐薬品性4多くの薬品に比較的安定であるが、酸化剤・高温・長時間条件では確認が必要。
耐候性2N/C/Dは紫外線による黄変・劣化に注意。HT系は改善される。
低吸水性5吸水率が小さく、防湿膜として優れる。
摺動性4低摩擦グレードがあり、微小摺動用途に有効。
電気絶縁性5薄膜で高い絶縁破壊強さと体積抵抗率を示す。
成形加工性2専用真空蒸着設備が必要で、一般成形には不向き。
接着性2未処理膜は接着・印刷が難しく、表面処理を要する場合がある。
リサイクル性1基材上の薄膜であり、分離回収が困難。
価格優位性1一般塗料や樹脂フィルムより高コストであることが多い。

代表的なメーカー

メーカー・事業者代表製品・ブランド概要
KISCO株式会社/第三化成株式会社diX®高純度パリレン材料およびコーティングサービスを展開する国内企業グループ。
Specialty Coating Systems, Inc.SCS Parylene N、C、D、HTなどパリレン原料、成膜装置、コーティングサービスをグローバルに展開する。
Curtiss-Wright Surface TechnologiesParylene coating services航空宇宙、医療、電子など向けのパリレンコーティングサービスを提供する。
法規制・認証
法規制・認証項目一般的な扱い確認事項
RoHS適合可能なグレード・工程が存在する。原料、残留不純物、下地処理、製造拠点の証明書を確認する。
REACH・SVHC個別製品で確認が必要である。ダイマー、添加剤、プライマー、洗浄剤を含めてSDS・宣言書を確認する。
FDA食品接触食品接触用途に使用可能な事例はあるが、材料名だけでは適合を断定できない。グレード、膜厚、接触食品、温度、時間、用途区分を確認する。
日本の食品衛生法個別確認が必要である。ポジティブリスト、溶出、基材、接着促進剤を確認する。
USP Class VI・ISO 10993医療用途向け適合グレード・評価実績が存在する。完成品での生物学的安全性、滅菌法、残留物、製造変更管理を確認する。
UL認証認証グレード・システムが存在する場合がある。膜厚、基材、色、工程を含む認証条件を確認する。
PFAS関連規制N、C、Dはフッ素系ではないが、HT/AF系はフッ素化材料である。対象法令の定義、用途、地域、含有情報を確認する。
環境・リサイクル性

パリレン膜は熱可塑性高分子に分類されるが、実用上は基材上に極薄膜として形成され、分離してマテリアルリサイクルすることは困難である。廃棄・焼却時は、Parylene CおよびDでは塩素、HT/AF系ではフッ素を含むため、地域の法令、排ガス処理、基材の材質を含めて評価する。バイオベースや生分解性材料として一般化することはできない。

価格・供給性
項目相対評価・傾向
価格区分高価格~極めて高価格。材料費だけでなく、真空成膜設備、治具、マスキング、前処理、検査費を含む。
国内入手性コーティングサービス経由で入手しやすい。原料ダイマー単体の少量調達は用途・純度により制約がある。
供給形態ダイマー、成膜受託、装置、技術ライセンス、完成コーティング部品。
少量試作対応可能な事業者があるが、最小ロット、治具費、マスキング費を確認する。
特注グレード機能化パリレン、特殊膜厚、部分成膜、積層膜は個別検討となる。
注意点・劣化故障モード
劣化現象主な原因発生しやすい条件影響予防策推奨確認試験
密着不良・剥離油分、水分、離型剤、低表面エネルギー、前処理不足高湿度、温度サイクル、薬液浸漬バリア性低下、端部からの浸入洗浄、乾燥、プラズマ、適切なプライマー、端部設計クロスカット、90°ピール、高温高湿後密着
ピンホール・膜切れ異物、鋭角、影、膜厚不足、治具不良微細突起、深い凹部、複雑なマスキング絶縁破壊、腐食、漏れ清浄化、治具最適化、膜厚管理、多方向成膜絶縁破壊、リーク、蛍光浸透、顕微鏡観察
熱酸化劣化酸素存在下の長時間加熱C/N系の高温連続使用黄変、脆化、クラック、絶縁低下耐熱グレード選定、温度低減、酸素遮断熱老化、TGA、FT-IR、絶縁抵抗
紫外線劣化芳香族骨格の光酸化屋外、UVランプ近傍黄変、脆化、密着低下遮光、トップコート、HT系検討キセノンアーク、UV促進耐候
環境応力・界面割れ基材残留応力、熱膨張差、機械変形曲げ部、圧入部、急激な温度変化クラック、剥離、局所腐食応力緩和、膜厚最適化、角R設計曲げ耐久、ヒートサイクル、応力負荷薬液試験
摩耗・膜消失摺動、粒子、相手材粗さ高荷重、高速度、無潤滑摩擦増加、基材露出、粉発生膜厚・グレード選定、表面粗さ管理往復摺動、摩耗量、摩擦係数
アウトガス未反応物、吸着物、前処理残渣真空、高温、半導体・宇宙用途汚染、光学曇り、電気不良高純度原料、真空ベーク、工程管理TML/CVCM、GC-MS、昇温脱離
推奨確認試験
  • 実薬品浸漬試験:実使用濃度、温度、時間で重量変化、外観、膜厚、密着、絶縁を確認する。
  • 高温高湿試験:85℃・85%RHなどを参考に、端部からの浸入、絶縁抵抗、腐食、剥離を確認する。
  • 熱老化試験:使用上限温度付近で500~2000時間程度の外観、質量、伸び、絶縁を追跡する。
  • ヒートサイクル試験:低温から高温までの繰返しで、線膨張差によるクラックと剥離を確認する。
  • 摩耗試験:相手材、荷重、速度、温度、潤滑条件を実機に合わせる。
  • 溶着・接着性試験:表面処理条件ごとに初期および湿熱後の接着強度を確認する。
  • アウトガス試験:真空・半導体・宇宙用途ではTML、CVCM、GC-MS、昇温脱離を確認する。
  • 実成膜・実部品耐久試験:治具、マスキング、膜厚分布、端部、ねじ部、可動部を含む完成品で評価する。

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