概要
| 材料名 | ポリ酢酸ビニル |
| 略記号 | PVAc(PVAcと表記。単に「PVA」と略される資料もあるが、ポリビニルアルコールのPVAと混同しやすいため注意) |
| IUPAC名 | Poly(ethenyl acetate) |
| 英語名 | Polyvinyl Acetate / Poly(vinyl acetate) |
| 日本語名(別名) | ポリ酢酸ビニル、酢酸ビニル樹脂、PVAc樹脂(別名として「酢ビ樹脂」「酢ビエマルション」とも呼ばれる。けん化物はポリビニルアルコール(PVA/ポバール)と呼ばれ別材料) |
| 分類 | ビニル系樹脂(熱可塑性樹脂) |
| プラスチック分類 | 汎用プラスチックに位置づけられるが、単体の成形材料としての流通は少なく、実質的には接着剤・塗料・繊維加工剤用エマルション樹脂として工業的に大量使用される特殊な位置付けの材料である |
| 化学式(繰り返し単位) | -[CH2-CH(OCOCH3)]n- |
| CAS No. | 9003-20-7(重合体)/108-05-4(モノマー:酢酸ビニル) |
| 構造・主成分 | 酢酸ビニルモノマーをラジカル重合して得られる非晶性の熱可塑性ポリマー。主鎖は炭素-炭素単結合、側鎖にアセトキシ基(-O-CO-CH3)を持つ |
| 主な用途 | 木工用・紙工用接着剤、水性塗料(エマルションペイント)用バインダー、繊維加工剤・不織布バインダー、紙加工・サイジング剤、チューインガムベース、ポリビニルアルコール(PVA)製造用中間体 など |
ポリ酢酸ビニル(PVAc)は、酢酸ビニルモノマーをラジカル重合して得られる非晶性の熱可塑性ポリマーである。一般にポリ塩化ビニル(PVC)やポリスチレン(PS)と並ぶ古くからのビニル系樹脂の一つであるが、実用上は射出成形や押出成形によって単体の「成形品」として使われることはほとんどなく、水中に分散させたエマルション(乳濁液)の形態で接着剤や水性塗料、繊維・紙加工剤のバインダー樹脂として大量に使用される点が最大の特徴である。
側鎖のアセトキシ基による高い極性から、木材、紙、ガラス、コンクリートなどの多孔質・極性基材への濡れ性・接着性に優れる一方、エステル結合を持つため耐水性・耐加水分解性には制約があり、屋外や高湿環境での長期使用にはグレード選定と用途設計上の配慮が必要である。一般に「木工用ボンド」に代表される白色系水性接着剤の主原料として広く認知されている。
また、ポリ酢酸ビニルをけん化(アルカリ加水分解)することでポリビニルアルコール(PVA/ポバール)が得られる。PVAcとPVAは名称・略号が類似し混同されやすいが、PVAcは疎水性寄りの非水溶性樹脂であるのに対し、PVAは水溶性樹脂であり、両者は明確に異なる材料である点に注意を要する。本ページでは酢酸ビニル単独重合体を中心に解説し、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)や酢酸ビニル系共重合エマルション(VAE)についても種類の項で比較的に触れる。
特徴
| 長所 |
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| 短所 |
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| 外観 | 無色~乳白色。エマルションは白色の乳濁液、乾燥固形樹脂は無色~淡黄色透明の樹脂状またはガラス状固体である |
| 耐熱性 | 一般に低い部類に属する。ガラス転移温度(Tg)はグレードにより約28~45℃と室温付近にあり、可塑剤の有無・共重合成分によって大きく変動する(グレード依存、詳細は物性値表を参照) |
| 耐薬品性 | アルコール・ケトン等の極性有機溶剤に溶解・膨潤しやすく、アルカリによるけん化を受けやすい。耐油性は比較的良好であるが、耐水性・耐熱水性は劣る(詳細は耐薬品性の項を参照) |
| 加工性 | 水系エマルションとしての取り扱い性は良好で、刷毛塗り・スプレー・含浸・ロールコートなど各種塗工方式に適応する。固形樹脂としての射出成形・押出成形は一般的ではなく、工業的な実績は限定的である |
| 分類上の注意 | 「PVA」の略号がポリビニルアルコールと共用されるため、資料参照時は必ずPVAcかPVA(PVAL、PVOH)かを確認する必要がある。また「酢ビ」という呼称がPVAc単独重合体だけでなくエチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)や各種酢ビ系共重合エマルションを指す場合があるため、成分・共重合比の確認が必要である |
構造式
代表的な構造単位
ポリ酢酸ビニルは、モノマーである酢酸ビニル(CH2=CH-O-CO-CH3)がラジカル重合し、主鎖の炭素-炭素単結合に沿って側鎖にアセトキシ基(-O-CO-CH3)が付加した構造を持つ。立体規則性は一般にアタクチックであり、結晶化しにくいため非晶性樹脂として扱われる。
モノマーまたは構成単位
| モノマー名 | 酢酸ビニル(Vinyl Acetate、VAc) |
| 分子式 | C4H6O2 |
| 分子量 | 86.09 |
| CAS No. | 108-05-4 |
| 常温での状態 | 無色透明の可燃性液体(沸点 約72℃) |
共重合体・変性グレード
酢酸ビニルは各種モノマーと共重合しやすく、目的物性に応じて多様な共重合体・変性グレードが工業化されている。代表例は次のとおりである。
- エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA、VAE):耐水性・柔軟性・耐凍結融解性を向上させたエマルション。塗料・接着剤・不織布バインダーに広く使用される
- 酢酸ビニル-アクリル酸エステル共重合体:耐候性・耐水性を改善したエマルション塗料用バインダー
- 酢酸ビニル-バーサチック酸ビニルエステル共重合体(VeoVa系):耐水性・耐アルカリ性を高めたグレード
- 可塑化PVAc:フタル酸エステル系や非フタル酸系可塑剤を配合し、低温柔軟性・造膜性を向上させたグレード
これらは呼称上「酢ビ系樹脂」と総称されることが多いが、共重合成分・共重合比によって耐水性・耐候性・造膜温度が大きく異なるため、材料選定時にはグレードごとのデータシート確認が必須である。
種類・代表グレード
| 種類 | 主成分・特徴 | 長所 | 短所 | 主な用途 |
|---|---|---|---|---|
| PVAcホモポリマー・エマルション(一般汎用グレード) | 酢酸ビニル単独重合体、水中分散のエマルション | 接着性・造膜性が良好、安価 | 耐水性・耐凍結融解性に劣る | 木工用ボンド、紙工用接着剤、一般水性塗料 |
| 可塑化PVAcエマルション(軟質グレード) | 可塑剤配合により最低造膜温度(MFT)を低下 | 低温での造膜性・柔軟性に優れる | 可塑剤のブリードアウトの可能性 | 紙加工、繊維加工、シーラント用途 |
| EVA(エチレン酢酸ビニル共重合エマルション、VAE) | エチレンを共重合し可塑剤フリー化・耐水性向上 | 耐水性・耐凍結融解性・柔軟性に優れる | PVAcホモポリマーより高価な場合がある | 耐水接着剤、外装用塗料、不織布バインダー |
| 酢酸ビニル-アクリル系共重合エマルション | アクリル酸エステルとの共重合で耐候性を改善 | 耐候性・耐アルカリ性が比較的良好 | EVAよりコスト高となる場合がある | 建築用エマルションペイント(下位グレード) |
| PVAc固形樹脂(溶液重合品・トルエン可溶タイプ等) | 溶液重合により得られる固形の酢ビ樹脂 | 印刷インキ・接着剤の樹脂分として配合しやすい | 単独での構造材利用は少ない | グラビアインキバインダー、ホットメルト接着剤原料の一部 |
| 再乳化用粉末樹脂(RDP:Redispersible Powder) | エマルションをスプレードライして粉末化したもの | セメント系材料への配合・貯蔵性に優れる | 再乳化時の分散安定性に注意が必要 | タイル用接着モルタル、セルフレベリング材などのポリマーセメント系建材 |
一般に「PVAc」の名称でくくられる製品群は、実際には上記のようにホモポリマーからエチレン・アクリル系との共重合体まで幅が広く、耐水性・柔軟性・造膜温度が製品ごとに大きく異なる。用途選定にあたっては、可塑剤の有無、共重合成分、固形分濃度、粒子径、最低造膜温度(MFT)をメーカー技術資料で確認することが推奨される。
成形加工
| 加工方法 | 適性 | 備考 |
|---|---|---|
| 射出成形 | × | 一般に工業化された射出成形グレードは確認できず、単体の成形品用途は一般化困難である |
| 押出成形(シート・フィルム) | △ | 可塑化した固形樹脂での試験的な押出は可能だが、耐熱性・耐水性の制約から工業的な主用途ではない |
| ブロー成形 | × | 一般的な工業グレードなし |
| 圧縮成形 | × | 一般的な工業グレードなし |
| 真空成形 | × | 一般的な工業グレードなし |
| 塗工・含浸(エマルション) | ◎ | 刷毛塗り、ロールコート、スプレー、含浸、グラビアコートなど各種水系塗工方式に対応。PVAcの主要な適用形態である |
| 接着(水系接着剤として) | ◎ | 木材・紙・繊維などの多孔質基材への接着用途で広く使用される |
| 印刷(グラビアインキバインダー) | ○ | 溶液重合品がインキ用樹脂として使用される場合がある |
| 切削加工 | × | 単体固形樹脂としての流通が少なく一般化困難 |
PVAcは工業的には「成形材料」としてではなく「水系エマルションによる塗工・接着・バインダー材料」として使用される点が、他の熱可塑性プラスチックと大きく異なる。射出成形・押出成形などの通常の熱可塑性樹脂成形プロセスへの適用は一般的でないため、本ページの成形加工に関する評価は主に塗工・接着プロセスを基準としている。
代表的な物性値又は機械的性質
PVAcは工業的に成形品として流通することが少ないため、JIS・ISO等の標準的な成形片による物性データは限定的である。以下は主として文献値・エマルション乾燥塗膜の参考値であり、いずれも代表値・目安として扱う必要がある。データ信頼度が低い項目は備考に「文献値・規格試験によるものではない」旨を付記した。
物理的性質
| 項目 | 単位 | 代表値・代表範囲 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 密度 | g/cm³ | 1.17~1.19 | 非強化・無可塑剤の固形樹脂の文献値。可塑剤配合により変動する |
| ガラス転移温度(Tg) | ℃ | 28~45 | グレード(分子量・可塑剤の有無)により大きく変動。データ信頼度C~D |
| 融点 | ℃ | 該当なし | 非晶性樹脂のため明確な融点を示さない |
| 連続使用温度 | ℃ | データなし | UL746B等の公的な連続使用温度評価は一般化困難(用途がエマルション・接着剤中心のため) |
| 吸水率 | % | グレード依存 | 親水性のアセトキシ基を持つため吸水性は比較的高いが、標準試験片での公的データは確認できない |
| 最低造膜温度(MFT) | ℃ | 0~18(グレードによる代表範囲) | エマルション製品にとって重要な管理値。可塑剤・共重合成分で調整される |
力学的性質(乾燥塗膜・キャストフィルムの参考値)
| 項目 | 単位 | 代表値・代表範囲 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 引張強さ(破断) | MPa | 10~30 | キャストフィルムの文献参考値。試験規格・試験片形状が資料により不明確。データ信頼度D |
| 引張破断伸び | % | 数十~数百(グレード依存) | 可塑剤・共重合成分の影響が非常に大きく、一般化困難 |
| 引張弾性率 | GPa | データなし | 公的な標準試験データを確認できない |
| 曲げ弾性率 | GPa | 該当なし | 固形成形品としての流通がなく評価対象外 |
| アイゾット衝撃強さ | kJ/m² | 該当なし | 成形品評価が一般化困難のため対象外 |
| 荷重たわみ温度(HDT) | ℃ | 該当なし | 成形品評価が一般化困難のため対象外 |
上表のとおり、PVAcは一般的なエンプラ・汎用プラスチックのような標準試験片による力学物性データの蓄積が乏しい。これは工業的な使用形態が「固形成形品」ではなく「エマルション塗膜・接着層」であることに起因する。実務での材料評価・材料比較には、引張強さ等の一般物性値よりも、後述する接着強さ、耐水性、造膜温度、粘度、固形分濃度などのエマルション特有の管理値を用いることが適切である。
エマルション製品としての代表管理値(参考)
| 項目 | 単位 | 代表値・代表範囲 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 固形分濃度 | % | 45~55(一般グレード) | 用途・メーカーにより30~60%程度まで幅がある |
| 粘度(B型粘度計) | mPa・s | 数百~数万 | グレード・固形分・せん断速度により大きく変動 |
| pH | - | 4~6(代表範囲) | 保護コロイド・乳化剤の種類により変動 |
| 平均粒子径 | μm | 1~3(代表範囲) | グレードにより異なる。データ信頼度C |
耐薬品性
PVAcは非晶性かつ極性の高いエステル系ポリマーであるため、耐薬品性はエステル結合の加水分解感受性(特にアルカリ)と、極性有機溶剤への溶解性の両面から評価する必要がある。SP値差だけでなく、けん化・可塑剤抽出などの化学的要因も考慮すること。以下は代表的な薬品群に対する定性的な目安であり、実使用ではグレード、温度、濃度、接触時間、応力の有無を個別に確認する必要がある。
| 薬品群 | 評価 | 備考・主な劣化形態 |
|---|---|---|
| 酸類(希塩酸・希硫酸等) | ○ | 希薄な無機酸には比較的安定だが、濃酸・高温では加水分解が進行する場合がある |
| アルカリ類(NaOH、KOH等) | × | エステル結合がけん化を受け、ポリビニルアルコール類似構造へと変化し強度・接着力が低下する。PVAをけん化生成する反応そのものがこの弱点を示す |
| 低級アルコール類(エタノール、IPA等) | △ | 膨潤・軟化しやすい。SP値が近く相溶性が高い |
| 高級アルコール類(グリセリン等) | ○ | 低級アルコールよりは影響が小さいが、可塑化・軟化の可能性がある |
| 芳香族炭化水素類(トルエン、キシレン等) | △ | 樹脂グレードによっては溶解・膨潤する(溶液重合品はトルエン可溶タイプもある) |
| 脂肪族炭化水素類(ヘキサン等) | ◎ | 極性が低く相溶性が乏しいため、比較的安定である |
| ケトン類(アセトン、MEK等) | × | 溶解・膨潤しやすい。SP値が近接する代表的な溶剤である |
| エステル類(酢酸エチル等) | × | 自身がエステル系ポリマーであるため相溶性が高く、溶解・膨潤しやすい |
| 塩素系溶剤(トリクロロエチレン等) | △ | グレードにより膨潤する場合がある |
| 水・温水 | △ | ホモポリマーグレードは耐水性に乏しく、長期浸漬・温水暴露で強度低下・白化が生じやすい(EVA等の共重合により改善) |
| 油類(鉱物油・食用油等) | ○ | 極性が低い油類には比較的安定であるが、可塑剤含有グレードでは可塑剤抽出に注意 |
SP値(溶解度パラメータ)
PVAcの溶解度パラメータ(δ)は、文献によりおよそ19~22 MPa1/2の範囲で報告されている。この値は極性有機溶剤(ケトン類・エステル類・一部のアルコール類)と近接するため、これらの薬品に対しては溶解・膨潤が生じやすい。SP値はあくまで無極性・分散力を中心とした簡易的な目安であり、水素結合性や極性項を分離したHSP(Hansen溶解度パラメータ)による評価がより精度が高い。SP値のみで耐薬品性を判断せず、実際の浸漬試験による確認が推奨される。
溶解性の目安
| SP値差(MPa1/2) | 溶解・膨潤の目安 | 判定 |
|---|---|---|
| 0~2 | 膨潤・軟化しやすい | × |
| 2~5 | 条件により膨潤する | △ |
| 5~8 | 短時間接触では比較的安定 | ○ |
| 8以上 | 溶解・膨潤しにくい | ◎ |
SP値から見た耐溶剤性
| 薬品名 | 薬品SP値(MPa1/2) | PVAcとのSP値差(目安) | 評価 | 備考 |
|---|---|---|---|---|
| アセトン | 約20.3 | 0~2程度 | × | 代表的な溶解溶剤 |
| 酢酸エチル | 約18.2 | 1~3程度 | × | 同種のエステル基による高い相溶性 |
| メタノール | 約29.6 | 7~10程度 | ○ | 膨潤する場合があるが溶解性は限定的 |
| トルエン | 約18.2 | 1~4程度 | △ | グレードにより膨潤・部分溶解 |
| n-ヘキサン | 約14.9 | 4~7程度 | ○ | 極性差が大きく比較的安定 |
| 水 | 約47.8 | 26~29程度 | ◎(溶解性の観点) | SP値差は大きいが、加水分解・吸水による物性低下は別要因として考慮が必要 |
評価基準:◎非常に良好、○概ね良好、△注意が必要、×不適。SP値差のみで耐薬品性を判断できない点、特に水についてはSP値差が大きくても加水分解・吸水劣化のリスクが別途存在する点に留意する。
製法
| 原料 | 酢酸ビニルモノマー(酢酸とアセチレン、または酢酸とエチレンから工業的に製造される)、水、重合開始剤、乳化剤・保護コロイド(乳化重合の場合) |
| 重合方法 | 工業的には乳化重合(懸濁水中でのラジカル重合)が主流であり、50~80℃程度の温度域で過硫酸塩やアゾ系開始剤を用いて重合される。固形樹脂用途には溶液重合法も用いられる |
| ペレット化・コンパウンド | エマルション製品はそのまま液状で出荷されることが多く、固形樹脂として使用する場合は押出・造粒によりペレット化される。再乳化用途では噴霧乾燥(スプレードライ)により粉末樹脂化される |
| 添加剤・充填材 | 可塑剤(低温造膜性の付与)、消泡剤、防腐剤、増粘剤、乳化剤・保護コロイド(ポリビニルアルコール等)が代表的に配合される |
代表的な重合反応式
酢酸ビニルモノマーのラジカル重合による繰り返し単位生成は、次のように表される(模式的な反応式)。
n(CH2=CH-OCOCH3) -[開始剤・50~80℃、水中乳化重合]→ -[CH2-CH(OCOCH3)]n-
一般化が困難な工業プロセス全体(未反応モノマー除去、共重合成分の導入、後処理)については上図のフロー図を代表的な工程として示した。実際の工程条件はメーカー・製品グレードにより異なる。
詳細な利用用途
| 分野 | 具体的用途 |
|---|---|
| 建築・木工 | 木工用接着剤(いわゆる「木工用ボンド」)、集成材用接着剤、内装用エマルションペイントのバインダー樹脂 |
| 紙・製紙 | 紙工用接着剤、紙のサイジング剤、段ボール・紙管用接着剤、感圧紙・ラベル用バインダー |
| 繊維・不織布 | 不織布バインダー、繊維加工剤(サイジング剤)、接着芯地用バインダー |
| 建材(セメント系) | 再乳化用粉末樹脂(RDP)としてタイル用接着モルタル、セルフレベリング材、外壁補修材などのポリマーセメント系建材に配合 |
| 印刷・包装 | グラビアインキ用バインダー樹脂(固形樹脂グレード) |
| 食品関連 | チューインガムベースの一成分として使用される例がある(食品接触用途は個別グレードの適合確認が必須) |
| 塗料 | 水性エマルションペイント(内装壁用が中心。屋外用途はEVA・アクリル系共重合グレードが用いられることが多い) |
関連材料との比較
| 比較材料 | 特徴 | PVAcとの違い |
|---|---|---|
| ポリビニルアルコール(PVA/ポバール) | PVAcをけん化して得られる水溶性ポリマー。フィルム・繊維(ビニロン)・水溶性包装材に使用 | PVAcが疎水性寄りで非水溶性であるのに対し、PVAは水溶性樹脂である点が本質的に異なる。名称・略号が類似するため混同注意 |
| エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA) | 酢酸ビニルにエチレンを共重合したエラストマー的樹脂。柔軟性・耐水性・耐候性に優れる | PVAcホモポリマーより耐水性・柔軟性・耐凍結融解性が高く、フィルム・発泡体・ホットメルト接着剤など固形樹脂用途にも展開される |
| ポリビニルブチラール(PVB) | PVAをブチルアルデヒドでアセタール化した樹脂。合わせガラス用中間膜が代表用途 | PVAcより高い接着性・耐衝撃性を持つ中間膜用途に特化しており、製造工程(PVA経由)が異なる |
| アクリル樹脂エマルション(アクリルエマルション) | アクリル酸エステル系モノマーを乳化重合したエマルション樹脂 | PVAcより耐候性・耐水性・耐アルカリ性に優れる傾向があり、屋外用塗料・接着剤で優位。一般にPVAcよりコスト高 |
| スチレン-ブタジエンゴムラテックス(SBRラテックス) | スチレンとブタジエンを共重合したゴム系エマルション | PVAcよりゴム弾性・耐水性に優れるが、耐候性(黄変)や接着性のバランスはPVAcと異なる特性を持つ |
| ユリア樹脂(UF) | 尿素とホルムアルデヒドを縮合した熱硬化性接着剤樹脂 | PVAcが熱可塑性の水系エマルションであるのに対し、UFは熱硬化性であり、木材加工分野では耐水性・接着強度に優れるが硬化にホルムアルデヒド管理が必要 |
| メラミン樹脂(MF) | メラミンとホルムアルデヒドを縮合した熱硬化性樹脂 | PVAcより耐水性・耐熱性に優れる熱硬化性接着剤であり、耐水合板・化粧板用途で使い分けられる |
| ポリ塩化ビニル(PVC)ペーストレジン | 可塑化して使用する塩化ビニル樹脂ペースト | 同じビニル系樹脂であるが、PVCは耐水性・難燃性に優れコーティング・床材用途が中心であり、PVAcとは主用途が異なる |
代表的なメーカー
| メーカー | 代表製品・ブランド | 概要 |
|---|---|---|
| Wacker Chemie AG(独) | Vinnapas(ビナパス)シリーズ | 酢酸ビニル系ポリマー分散液・再乳化用粉末樹脂(VAE系含む)を世界的に展開する大手化学メーカー |
| Celanese Corporation(米) | Vinac、Elvace 等 | 酢酸ビニルモノマー・ポリマーの主要サプライヤーの一つ |
| 日信化学工業株式会社 | ビニブラン(Vinybran)シリーズ | 酢酸ビニル系・EVA系エマルションを製造する国内メーカー。接着剤・塗料・建材用途に幅広く供給 |
| コニシ株式会社 | 木工用ボンド等の接着剤製品 | PVAcエマルションを主原料とする代表的な民生用・工業用接着剤メーカー(樹脂原料メーカーではなく最終製品メーカーとしての代表例) |
上記は代表例であり、酢酸ビニル系エマルションは国内外の多数の化学メーカーが製造している。実際の材料選定にあたっては、各社の最新の技術データシート(TDS)・安全データシート(SDS)を確認することを推奨する。
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