テトラフルオロエチレン・エチレン共重合体

概要

項目内容
材料名テトラフルオロエチレン・エチレン共重合体
略記号ETFE
IUPAC系名称poly(ethylene-co-tetrafluoroethylene)
英語名Ethylene Tetrafluoroethylene Copolymer
日本語名・別名エチレン・テトラフルオロエチレン共重合体、エチレン四フッ化エチレン共重合体、ETFE樹脂
分類熱可塑性フッ素樹脂、半結晶性共重合体
プラスチック分類高機能プラスチック。用途上はスーパーエンプラ相当として扱われることがある。
代表組成式(C4H4F4)n。実際の共重合比や少量コモノマーはグレードにより異なる。
CAS No.25038-71-5が代表例として用いられるが、市販グレードの組成により確認が必要である。
構造・主成分テトラフルオロエチレン(TFE)とエチレンを主成分とする交互性の高い共重合体である。
主な用途電線被覆、チューブ、ホース、フィルム、建築膜材、太陽電池部材、薬液配管、ライニング、粉体塗装、電気絶縁部品。

ETFEは、TFE由来の耐薬品性、耐候性、電気絶縁性と、エチレン由来の機械強度、耐衝撃性、溶融成形性を併せ持つ熱可塑性フッ素樹脂である。PTFEと異なり通常の溶融加工が可能であり、射出成形、押出成形、フィルム成形、電線被覆、粉体塗装などに適用できる。

一般に密度は約1.70~1.76 g/cm³、融点は約250~280℃、連続使用温度は約150℃を目安とする。低温特性、耐屈曲性、耐放射線性、耐候性にも優れ、透明又は半透明フィルムは建築膜材や太陽電池関連に利用される。

一方、低表面エネルギーのため未処理状態では接着、塗装、印刷が難しい。高温滞留時の分解、腐食性分解ガス、成形収縮、結晶化、応力下での薬液透過などにも注意が必要である。実使用では、グレード、温度、濃度、荷重、応力、湿度、時間、試験片形状および成形条件を確認する必要がある。

特徴

長所
  • 酸、アルカリ、アルコール、炭化水素、油類などに対して一般に優れた耐薬品性を示す。
  • 耐候性、耐紫外線性、低温衝撃性、耐屈曲性に優れる。
  • PTFEより溶融成形しやすく、射出、押出、フィルム、ブロー、粉体塗装に対応できる。
  • 吸水率が低く、電気絶縁性および高周波特性が比較的安定している。
  • フィルムでは高い光線透過率と軽量性を両立できる。
短所
  • 一般樹脂と比べて材料価格および成形温度が高い。
  • 表面エネルギーが低く、未処理では接着、塗装、印刷が難しい。
  • 高温・高荷重ではクリープ変形が問題となる場合がある。
  • 特殊な強酸化剤、溶融アルカリ金属、フッ素ガス、三フッ化塩素などには不適となる。
  • 高温滞留や局所過熱により腐食性分解ガスを生じる可能性がある。
外観

自然色は白色から半透明であり、薄膜では透明性が高い。着色、導電、強化、無機充填グレードでは不透明又は黒色となる。

耐熱性

標準ETFEの融点は一般に約250~280℃、連続使用温度は約150℃が目安である。低融点変性ETFEでは融点が低下する一方、特定グレードでは耐熱性や加工幅が調整されている。

耐薬品性

多くの酸、アルカリ、有機溶剤、油および燃料に耐えるが、高温、高濃度、応力、長時間、透過を伴う条件では個別評価が必要である。

加工性

溶融成形可能であるが、樹脂温度が高く、滞留管理、耐食性設備、適切なパージおよび換気が必要である。

分類上の注意

ETFEは熱可塑性フッ素樹脂であり、厳密には芳香族系スーパーエンプラとは異なる。材料選定上は「溶融成形可能な高機能フッ素樹脂」として整理するのが適切である。

構造式

ETFEの代表構造と構成モノマー

代表的な構造単位
項目内容
代表表記-[-CH2-CH2-CF2-CF2-]-n
主鎖炭素-炭素結合からなる半結晶性ポリマーである。
TFE由来部位-CF2-CF2-。耐薬品性、耐候性、難燃性、低誘電性に寄与する。
エチレン由来部位-CH2-CH2-。機械強度、耐屈曲性および溶融加工性に寄与する。
モノマーまたは構成単位
構成成分化学式主な役割
テトラフルオロエチレンCF2=CF2耐薬品性、耐候性、難燃性、電気特性を付与する。
エチレンCH2=CH2靱性、機械強度、成形加工性を付与する。
少量コモノマーグレード依存融点、応力割れ性、流動性、接着性などを調整する場合がある。

種類・代表グレード

種類主成分又は特徴長所短所主な用途
非強化・標準グレード標準的な分子量と溶融流動性耐薬品性、靱性、絶縁性のバランスが良い。高剛性用途では変形に注意する。射出部品、電線被覆、チューブ
押出・高粘度グレード溶融強度と耐ストレスクラック性を重視チューブ、被覆、フィルムの連続成形に適する。射出流動性が低い場合がある。チューブ、ホース、電線、フィルム
高流動グレード薄肉射出成形向け微細部や薄肉部へ充填しやすい。長期クリープ、耐ストレスクラック性を確認する。コネクタ、薄肉絶縁部品
低融点ETFE融点又は加工温度を低下させた変性品複合化、接着層、低温加工に有利である。標準ETFEと耐熱性が異なる。積層フィルム、電線、接着層
フィルムグレード透明性、膜厚均一性、耐候性を重視軽量、高透過、屋外耐久性に優れる。傷、クリープ、接合部設計に注意する。建築膜、太陽電池、離型フィルム
粉体塗装グレード粉体粒径と溶融流動性を調整厚膜ライニング、防食、非粘着化が可能である。ピンホール、基材前処理、焼付条件が重要である。タンク、配管、反応槽、ロール
導電・帯電防止グレードカーボンブラック等を配合静電気対策、燃料系用途に適する。透明性、絶縁性、伸びが低下する。燃料チューブ、搬送部品
CF強化グレード炭素繊維を代表的に10~20質量%程度配合する例がある。剛性、寸法安定性、耐摩耗性が向上する。伸び、絶縁性、表面平滑性が低下する。ポンプ、軸受、精密部品
食品・医療用途向け抽出物、添加剤、製造管理を用途規格に合わせる。クリーン性、耐薬品性、低吸水性を活用できる。材料名だけでは規制適合を判断できない。食品機械、分析機器、医療チューブ

成形加工

加工方法適性理由主な注意点
射出成形薄肉絶縁部品、継手、バルブ部品に適する。高温成形、滞留、腐食性分解ガス、金型温度、収縮を管理する。
押出成形電線被覆、チューブ、ホース、シートに適する。ダイスウェル、メルトフラクチャー、肉厚偏差、冷却条件を管理する。
ブロー成形専用グレードでは中空成形が可能である。パリソン保持性、肉厚分布、結晶化を確認する。
インフレーション成形フィルム用高溶融強度グレードで適用可能である。バブル安定性と高温設備が必要である。
Tダイフィルム成形透明フィルム、離型フィルム、膜材に適する。膜厚、ゲル、異物、熱履歴を管理する。
真空・圧空成形シート又はフィルムの熱成形が可能である。加熱均一性、結晶化、スプリングバックを確認する。
圧縮成形厚板、特殊形状、試験片に適用できる。ボイド、内部応力、冷却速度に注意する。
回転成形粉体グレードでライニングや中空品に適用される。粒径、溶融融合、ピンホールを管理する。
3Dプリント特殊装置・材料では可能である。高温ノズル、反り、層間接着、分解ガス対策が必要である。
切削加工板、丸棒、成形素材から加工できる。熱変形、バリ、クリープ、寸法回復を考慮する。
溶着・ヒートシール熱板、熱風、インパルス、レーザー等が適用可能である。温度、圧力、時間、表面汚染、結晶化を管理する。
接着表面処理後は接着できる。コロナ、プラズマ、化学処理、専用プライマーが必要である。
塗装・印刷表面改質後に可能である。未処理面では密着しにくい。
めっき特殊な前処理により可能な場合がある。密着耐久性と薬液処理による劣化を確認する。
成形条件の一般的な目安
項目代表範囲単位注意点
予備乾燥通常は不要~必要時実施ETFE自体は低吸水であるが、保管中の結露、汚染、フィラー吸湿を除くためグレード資料を確認する。
乾燥温度100~150必要時の一般的目安。粉体、着色、充填グレードでは個別指定を優先する。
乾燥時間2~6hホッパー滞留時間および包装開封後の環境による。
シリンダー温度280~340標準ETFEの一般的範囲。低融点グレードは低温側となる。
ノズル温度290~330ドロール、固化、局所過熱を避ける。
金型温度80~160結晶化、表面性、収縮、ウェルド強度に影響する。
成形収縮率・流動方向1.5~3.5%肉厚、金型温度、保圧、結晶化度、充填材により大きく変わる。
成形収縮率・流動直角方向1.5~4.0%非強化材でも流動履歴と冷却差により異方性が生じる。
滞留時間短く管理高温長時間滞留を避け、停止時はメーカー推奨樹脂でパージする。

上記は材料群としての一般的な目安であり、特定グレードの保証条件ではない。実際にはメーカーの成形条件表、成形機仕様、製品形状、肉厚、金型構造を優先する。

代表的な物性値又は機械的性質

非強化・標準グレードの代表値
項目単位下限代表値上限試験・状態備考
密度g/cm³1.701.721.7623℃結晶化度、共重合比、充填材で変動する。
比重1.701.721.7623℃密度と実質的に同等の代表範囲である。
吸水率・24時間%0.000.020.0323℃水中極めて低い。0.00は実測ゼロではなく下限表示上の便宜を避けるため、ACF登録時は下限を空欄としてもよい。
引張強さ・破断MPa40455523℃、非強化フィルム代表例では約41 MPa。
引張弾性率GPa0.81.11.423℃、非強化試験規格と成形履歴で差がある。
引張破断伸び%20030050023℃、非強化高靱性であるが、フィラー配合で大きく低下する。
曲げ弾性率GPa0.81.01.423℃フィルム代表例では約0.83 GPa。
アイゾット衝撃強さ・ノッチ付きkJ/m²データなし破壊せずの場合ありデータなし規格依存NBを数値化しない。低温ではグレード差を確認する。
荷重たわみ温度・0.45 MPa9095105代表値グレード、試験片、熱履歴により変わる。
荷重たわみ温度・1.80 MPa657590代表値高荷重下では連続使用温度より低くなる。
融点250267280DSC共重合比および変性により変動する。
ガラス転移温度一般化困難約80約110測定法依存文献差が大きいため設計値には用いない。
連続使用温度130150180グレード依存標準品は約150℃が目安。高耐熱変性品は個別確認する。
低温使用限界-200-100用途依存機械特性、衝撃、シール性を個別評価する。
熱伝導率W/(m・K)0.170.240.2523℃付近フィルム代表例0.24 W/(m・K)。
比熱J/(g・K)1.01.171.323℃付近温度依存性がある。
動摩擦係数0.200.250.30フィルム対鋼相手材、粗さ、荷重、速度、潤滑で大きく変わる。
体積抵抗率Ω・cm1×10¹⁶1×10¹⁷乾燥、非強化導電グレードには適用しない。
絶縁破壊強さkV/mm2050160厚さ依存0.025 mmフィルムの代表例で160 kV/mm。厚物へ単純適用しない。
比誘電率・1 kHz2.52.62.725℃周波数、温度、添加剤で変動する。
誘電正接・1 kHz0.00050.00070.001025℃フィルム代表例。
限界酸素指数%303235代表範囲UL 94等級とは別指標である。
屈折率1.391.401.41透明フィルム厚さ、結晶化、表面状態で変わる。
全光線透過率%859095薄膜膜厚、表面、結晶化、色に依存する。
強化・改質グレードの代表的傾向
グレード引張強さ曲げ弾性率破断伸び備考
標準非強化40~55 MPa0.8~1.4 GPa200~500%比較基準。グレードと成形条件で変動する。
CF強化60~90 MPa4~8 GPa5~50%繊維含有率、配向、界面処理により幅が大きい。絶縁性は低下する。
導電グレードグレード依存上昇する場合あり低下するカーボンブラック量により抵抗率と機械特性が変わる。
低融点変性グレード依存グレード依存グレード依存加工温度と接着性を改善するが、標準ETFEの物性を流用しない。
燃焼性・難燃性

ETFEはフッ素含有量が高く、一般に難燃性を示す。UL 94 V-0を取得したグレードが存在するが、材料群全体の認証ではない。試験片厚さ、色、添加剤、製造拠点を含め、個別のUL Yellow Card又はメーカー証明を確認する必要がある。

比較用評価スコア
評価項目スコア評価理由
引張強度4非強化フッ素樹脂として高い。
剛性3標準的であり、高温では低下する。
衝撃強度5低温を含め高靱性である。
耐熱性4150℃級であるが、PFA、PTFEより低い。
耐薬品性5大部分の酸、アルカリ、溶剤に優れる。
耐候性5屋外膜材で長期使用される。
寸法安定性3低吸水であるが、結晶化収縮と熱膨張を考慮する。
摺動性4低摩擦であるが、PTFEほどではない。
電気絶縁性5低誘電率、高抵抗率で安定している。
成形加工性4溶融加工可能であるが高温設備が必要である。
接着性1未処理面は接着困難である。
価格優位性1一般樹脂より高価である。

耐薬品性

薬品分類代表薬品濃度温度接触条件評価主な劣化形態備考
純水、水道水任意23℃長時間浸漬影響小低吸水である。
温水・熱水温水、熱水80~150℃長時間クリープ、透過圧力、応力、熱サイクルを確認する。
無機酸塩酸、硫酸、リン酸希薄~濃厚23~80℃浸漬通常は影響小高温濃厚条件では個別確認する。
強酸化性酸濃硝酸、発煙硫酸、クロム酸混液高濃度高温長時間酸化、変色、表面劣化濃度、温度、圧力、応力を含め実液試験を行う。
有機酸酢酸、クエン酸、乳酸各種23~80℃浸漬影響小高温濃酢酸は透過を確認する。
強アルカリNaOH、KOH10~50%23~100℃浸漬影響小溶融アルカリ金属は不適である。
弱アルカリアンモニア水、炭酸塩各種23~80℃浸漬影響小高圧アンモニア等は透過を確認する。
低級アルコールメタノール、エタノール、IPA100%23~80℃浸漬わずかな透過一般に良好である。
多価アルコールグリセリン、エチレングリコール100%23~100℃浸漬影響小冷却液用途では添加剤も評価する。
グリコールエーテルMMB、ブチルセロソルブ100%23~80℃浸漬透過、軽微な膨潤高温長時間では確認する。
ケトンアセトン、MEK、MIBK100%23~80℃浸漬透過、わずかな膨潤応力下、高温、長時間では実液試験を行う。
エステル酢酸エチル、酢酸ブチル100%23~80℃浸漬透過、膨潤温度上昇で影響が増す場合がある。
エーテルTHF、ジエチルエーテル100%23~60℃浸漬透過、膨潤THFは高温長時間を確認する。
芳香族炭化水素ベンゼン、トルエン、キシレン100%23~80℃浸漬透過、軽微な膨潤燃料混合物は実液評価する。
脂肪族炭化水素ヘキサン、ヘプタン、イソオクタン100%23~80℃浸漬影響小、透過燃料用途では透過率を確認する。
ハロゲン化炭化水素ジクロロメタン、クロロホルム100%23~60℃浸漬透過、膨潤高温長時間および圧力下を確認する。
燃料ガソリン、軽油、航空燃料実燃料23~100℃長時間透過、体積変化添加剤、アルコール混合、圧力を含め評価する。
潤滑油・作動油鉱油、PAO、エステル油100%23~150℃長時間添加剤抽出、透過油種と温度により差がある。
ブレーキ液グリコール系実液23~120℃長時間透過規格液で確認する。
界面活性剤中性、アニオン、ノニオン洗浄剤実使用濃度23~80℃反復洗浄表面汚染配合助剤、酸化剤、温度を確認する。
次亜塩素酸塩次亜塩素酸ナトリウム100~5000 ppm23~60℃反復・浸漬酸化、変色有効塩素、pH、温度、紫外線を確認する。
過酸化物過酸化水素3~35%23~80℃浸漬酸化、表面変化高濃度・高温では実液試験を行う。
塩水・海水NaCl水溶液、海水0.9~飽和23~80℃長時間影響小金属インサートの腐食に注意する。
食品油植物油、動物油100%23~120℃接触影響小食品接触適合は個別グレード証明を確認する。

評価は一般的な材料群の目安であり、保証値ではない。耐薬品性はSP値差だけでなく、酸化、反応性、透過、結晶化度、残留応力、荷重、温度、濃度、時間、圧力および添加剤抽出によって決まる。

SP値(溶解度パラメータ)

ETFEの単一のHildebrand SP値は資料差が大きく、共重合比と結晶性の影響も受ける。代表的な参考範囲として約17~20 MPa1/2程度が挙げられるが、一般化には注意が必要である。フッ素樹脂は通常溶媒に溶解しにくく、単純なSP値近接だけでは実際の溶解・膨潤を説明できない。

溶解性の目安
SP値差溶解・膨潤の目安判定
0~2膨潤・軟化しやすい可能性がある。×
2~5条件により膨潤する可能性がある。
5~8短時間接触では比較的安定する可能性がある。
8以上溶解・膨潤しにくい可能性がある。
SP値から見た耐溶剤性
溶剤代表SP値
MPa1/2
ETFEとの差の目安評価実務上の注意
n-ヘキサン14.9約2~5SP値差だけでは膨潤を過大評価する場合がある。
トルエン18.2約0~2実際には一般に耐性を示すが、高温透過を確認する。
酢酸エチル18.6約0~3長時間・高温で膨潤を確認する。
MEK19.0約0~2SP近接でも高結晶性とフッ素化構造により溶解しにくい。
アセトン19.9約0~3応力、高温、長時間では実液確認する。
IPA23.5約4~7一般に良好である。
エタノール26.0約6~9一般に良好である。
47.9約28以上低吸水であるが、高温高圧水は別途評価する。

上表はHildebrand SP値による概略である。ETFEのような半結晶性フッ素樹脂では、結晶相、分子間相互作用、溶媒の極性・水素結合、温度、圧力、応力、透過性が支配的となるため、SP値のみで耐薬品性を判定してはならない。

製法

ETFEの代表的な製造工程

原料

主原料はテトラフルオロエチレン(TFE)およびエチレンである。グレードにより、融点、流動性、応力割れ性、接着性を調整するため少量コモノマーを導入する場合がある。

重合方法

代表的には高圧下でのラジカル共重合が用いられ、溶液、懸濁、乳化又はこれらに類する工業プロセスが採用される。TFEとエチレンの反応性差および組成ドリフトを制御するため、モノマー供給、温度、圧力、開始剤濃度を管理する。

代表反応式

n CF2=CF2 + n CH2=CH2 → -[-CF2-CF2-CH2-CH2-]-n

上式は代表化した模式式であり、実際の市販ETFEは完全な1:1交互共重合体に限定されず、共重合比および少量コモノマーがグレードにより異なる。

ペレット化・コンパウンド

重合後のポリマーは未反応モノマーを除去し、洗浄、乾燥、安定化した後、溶融混練してペレット化する。導電、帯電防止、摺動、強化、着色用途では、カーボンブラック、炭素繊維、顔料、安定剤等を配合する。粉体塗装用では粒径分布、流動性、溶融融合性を制御する。

詳細な利用用途

用途分野代表用途適性選定理由・注意点
自動車燃料チューブ、電線被覆、センサー配線耐燃料性、耐熱性、電気絶縁性を活用する。透過規制と屈曲寿命を確認する。
電気・電子電線、ケーブル、コネクタ、絶縁フィルム低誘電、低吸水、耐熱、難燃性に優れる。
半導体薬液チューブ、継手、容器、ライニング耐薬品性に優れる。金属溶出、粒子、透過、純度は専用グレードで確認する。
化学設備配管、バルブ、ポンプ、タンクライニング耐酸・耐アルカリ性に優れる。高温高圧、透過、ピンホールを確認する。
建築屋根膜、外装膜、クッション膜透明性、耐候性、軽量性に優れる。クリープ、接合部、火災規制を確認する。
太陽電池・エネルギーフロントシート、バックシート、保護膜紫外線透過、耐候性、絶縁性を活用する。
食品機械チューブ、搬送部品、非粘着被覆低付着性と耐洗浄性に優れる。食品接触証明を個別確認する。
医療チューブ、カテーテル部材、分析機器耐薬品性、低吸水性を活用する。生体適合性、滅菌耐久性は個別グレードで確認する。
機械部品軸受、ブッシュ、ローラー、ポンプ部品低摩擦、耐薬品性を活用する。高荷重ではCF強化や他材を比較する。
コーティング反応槽、ロール、金属部品の粉体塗装防食、非粘着、耐薬品性を付与する。基材前処理と焼付管理が重要である。
用途別選定
用途適性理由と注意点
ギア耐薬品性は高いが、剛性とクリープを考慮する。強化グレードを検討する。
軸受・ブッシュ低摩擦である。PV値、摩耗粉、相手材を実機評価する。
ポンプ・バルブ部品耐薬品性と靱性に優れる。圧力、温度、透過を確認する。
シール・ガスケット耐薬品性は高いが、弾性回復はエラストマーより低い。
チューブ・ホース代表用途である。屈曲、透過、継手保持力を確認する。
フィルム・シート透明性、耐候性、熱溶着性に優れる。
ボトル・容器専用ブローグレードが必要となる場合がある。
透明カバー・レンズ透過性は高いが、光学歪みと表面傷を確認する。
エンジンルーム部品熱、油、燃料に強い。連続荷重と振動を確認する。
屋外部品耐候性に非常に優れる。
接着剤・塗料樹脂×通常の溶剤には溶けにくい。低融点接着グレードや粉体用途は別途可能である。
複合材料マトリックス耐薬品マトリックスとして有用であるが、繊維界面接着と高温加工が課題である。
注意点・劣化・故障モード
劣化現象主な原因発生しやすい条件外観・性能への影響予防策推奨確認試験
クリープ変形長期荷重、高温高温、締結、内圧寸法変化、シール低下応力低減、肉厚確保、強化材検討使用温度・荷重で1000 h以上のクリープ試験
膨潤・透過有機溶剤、燃料高温、高圧、長時間寸法変化、重量増加、透過損失肉厚、バリア構造、温度低減実液浸漬、重量・寸法・透過率測定
熱分解局所過熱、長時間滞留成形停止、デッドスポット変色、黒点、ガス、金型腐食滞留短縮、適切なパージ、換気実成形試験、揮発ガス・外観確認
接着剥離低表面エネルギー未処理、汚染、熱水塗膜・接着層剥離プラズマ、コロナ、化学処理、専用プライマー初期・熱水後・湿熱後の剥離強度試験
反り・寸法ばらつき結晶化差、冷却差厚肉、偏肉、高金型温度差平面度低下、嵌合不良均一肉厚、冷却均一化、保圧最適化成形収縮率、ヒートサイクル寸法測定
表面傷・摩耗摺動、異物無潤滑、高荷重白化、摩耗粉、透明性低下表面保護、強化・摺動グレード実相手材で摩耗・摩擦試験
放射線劣化高線量放射線電子線、γ線の高累積線量架橋又は脆化、色変化線量管理、用途別グレード選定実滅菌線量で引張・伸び保持率測定
品質・成形不良
不良材料側要因成形条件側要因主な対策
黒点・変色汚染、劣化樹脂混入高温滞留、デッドスポット清掃、滞留短縮、温度低減、適切なパージ。
ガス焼け分解ガス、揮発分高射出速度、ベント不足ベント改善、速度調整、乾燥・清浄化。
ウェルドライン高結晶化、流動端温度低下金型温度不足、流路不均衡金型温度、樹脂温度、ゲート位置を最適化する。
反り結晶化収縮、異方性冷却差、偏肉、保圧不均一肉厚均一化、冷却回路改善、保圧最適化。
メルトフラクチャー高粘度せん断速度過大、ダイ設計不適押出速度低減、温度調整、ダイ入口形状改善。
ピンホール粉体汚染、粒径不適焼付不足、基材ガス基材脱脂・予熱、膜厚管理、焼付条件最適化。
接着不良低表面エネルギー表面処理不足、汚染処理条件管理、濡れ張力確認、プライマー適用。
法規制・認証
項目一般的な状況確認事項
RoHS・ELV適合可能なグレードが一般的である。色、添加剤、充填材、製造拠点別の証明書を確認する。
REACH・SVHC個別確認が必要である。最新SVHC候補物質、添加剤、輸入者義務を確認する。
PFAS関連規制ETFEはフッ素系高分子であり影響を受ける可能性がある。国・地域・用途別の定義、免除、報告義務、将来規制を最新資料で確認する。
FDA食品接触適合グレードが存在する。使用温度、食品種、接触時間、色、添加剤を含む適合証明を確認する。
日本の食品衛生法・ポジティブリスト適合可能なグレードが存在する。樹脂、添加剤、用途区分およびメーカー証明を確認する。
USP Class VI・ISO 10993医療用途向けグレードで評価例がある。材料名だけでは適合しない。最終製品と滅菌条件を含め確認する。
UL認証V-0等の認証グレードが存在する。厚さ、色、温度指数、製造拠点をYellow Cardで確認する。
TSCA・Proposition 65個別グレード・供給地域で確認する。添加剤、残留物、用途、輸入条件を確認する。
環境・リサイクル性

ETFEは熱可塑性であり、清浄な単一材スクラップは再溶融利用できる可能性がある。ただし、高温加工による熱履歴、異物、着色、強化材、分子量低下、用途規制により再生利用は制限される。フッ素を含むため、一般廃棄物としての焼却や不適切な熱処理は避け、専門的な回収・処理方法を確認する。バイオベース材又は生分解性材料ではない。

価格・供給性
項目一般的評価
価格区分高価格。PTFE、PFA、FEP、PVDFとの比較はグレード、量、形状で変わる。
国内入手性主要フッ素樹脂メーカー、商社、加工メーカーから入手可能である。
供給形態ペレット、粉体、フィルム、シート、チューブ、電線、被覆加工品。
少量購入フィルム、チューブ、板材は比較的入手しやすいが、特殊ペレットは最小購入量が大きい場合がある。
特注グレード色、導電性、接着性、厚さ、表面処理は特注又は受注生産となる場合がある。

関連材料との比較

比較材料特徴ETFEとの違い
ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)最高水準の耐薬品性、耐熱性、低摩擦性。PTFEは耐熱・低摩擦で優れるが通常の溶融成形が困難である。ETFEは機械強度と溶融加工性に優れる。
パーフルオロアルコキシアルカン樹脂(PFA)PTFEに近い耐薬品性と溶融成形性。PFAは高温耐薬品性で優れる。ETFEは靱性、耐衝撃性、コストバランスで有利な場合がある。
テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)透明性、電気特性、低摩擦性に優れる。FEPはより軟質で加工温度が低い。ETFEは強度、耐摩耗、耐候膜材に強い。
エチレン・クロロトリフルオロエチレン共重合体(ECTFE)耐薬品性、低透過性、防食ライニングに優れる。ECTFEは塩素を含み、厚膜防食や低透過性で選ばれる。ETFEは低温靱性、フィルム、電線、建築膜材で優れる。
ポリフッ化ビニリデン(PVDF)機械強度、耐候性、加工性、比較的良いコスト。PVDFは高極性溶剤、強アルカリ、アミンに注意が必要である。ETFEは耐薬品範囲と低温靱性で優れる。
ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)ガスバリア性、低温特性、寸法安定性。PCTFEはガスバリアと精密部品に強い。ETFEは耐屈曲、溶融加工、フィルム強度で優れる。
ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)高剛性、高耐熱、耐疲労性に優れる。PEEKは構造部品の高温剛性に優れる。ETFEは耐候性、低摩擦、耐薬品フィルム・チューブに優れる。
フッ素樹脂フッ素系高分子の総称。ETFEはその中でも溶融加工性、靱性、透明フィルム用途に特徴を持つ。

代表的なメーカー

メーカー代表製品・ブランド概要
AGC株式会社Fluon® ETFE、Fluon® LM-ETFEペレット、粉体、フィルムを展開し、電線、チューブ、ライニング、建築膜材等に使用される。
ダイキン工業株式会社NEOFLON™ ETFE成形材料、電線被覆、チューブ、フィルム等の用途向けに展開される。最新の国内供給グレードはメーカーへ確認する。
The Chemours CompanyTefzel™ ETFEフィルム、電線、工業用途向けで実績がある。
3MDyneon™ ETFE系製品過去にETFE系フッ素樹脂を展開してきた。現在の供給状況と製品継続性は地域・時期ごとに確認する。

関連キーワード

ETFEフッ素樹脂PTFEPFAFEPECTFEPVDFPCTFEテトラフルオロエチレンエチレン共重合体建築膜材電線被覆耐薬品性SP値環境応力割れ

推奨確認試験
  • 実薬品浸漬試験:実濃度、最低・最高使用温度、予定接触時間で重量、寸法、外観、引張保持率を測定する。
  • 応力負荷下耐薬品試験:実部品の残留応力および使用応力を模擬し、割れ、白化、膨潤を確認する。
  • クリープ試験:使用温度・設計応力で少なくとも1000時間、重要部品では寿命外挿に必要な複数温度・複数応力で実施する。
  • ヒートサイクル試験:最低使用温度から最高使用温度まで、接合部、インサート、膜材溶着部を含めて繰返す。
  • 耐候試験:キセノンアーク又は実暴露により、光線透過率、ヘーズ、強度、色差を確認する。
  • 溶着・接着試験:初期、熱水後、高温高湿後、薬液浸漬後の剥離又は引張せん断強度を確認する。
  • 透過試験:燃料、溶剤、ガス、薬液について実温度・実圧力で透過率を測定する。
  • 実成形試験:黒点、ガス、ウェルド、反り、収縮、表面性、分解ガスおよび設備腐食を確認する。

最終的な材料選定では、対象グレードの最新技術資料、法規制証明、試験規格、温度、濃度、荷重、応力、湿度、使用時間、成形条件および実部品評価を確認する必要がある。

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