ポリ塩化ビニル
概要
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 材料名 | ポリ塩化ビニル |
| 略記号 | PVC、塩ビ、塩化ビニル樹脂 |
| IUPAC | poly(1-chloroethylene)、poly(chloroethene) |
| 英語名 | Polyvinyl Chloride |
| 日本語名 | ポリ塩化ビニル、塩化ビニル樹脂、塩ビ樹脂、PVC樹脂 |
| 分類 | 熱可塑性樹脂、非晶性樹脂、ビニル系樹脂、塩素含有樹脂 |
| プラスチック分類 | 汎用プラスチック |
| 化学式または代表構造 | (C2H3Cl)n、−CH2−CHCl− の繰り返し構造 |
| CAS No. | 9002-86-2 |
| 構造・主成分 | 塩化ビニルモノマーを重合した高分子であり、側鎖に塩素原子を持つビニル系ポリマーである。 |
| 主な用途 | 配管、継手、雨どい、窓枠、床材、壁紙、電線被覆、フィルム、シート、ホース、医療用チューブ、カード、日用品など |
ポリ塩化ビニル(PVC)は、塩化ビニルモノマーを重合して得られる代表的な汎用プラスチックである。一般に塩ビと呼ばれ、硬質PVCと軟質PVCに大きく分けられる。硬質PVCは配管、板、継手、建材などに使用され、軟質PVCは可塑剤を配合することで柔軟性を付与し、電線被覆、ホース、シート、フィルム、医療用チューブなどに使用される。
PVCは分子中に塩素を含むため、一般的なポリオレフィン系樹脂に比べて難燃性が高く、耐薬品性、耐候性、電気絶縁性、成形加工性のバランスに優れる。一方で、熱安定性は高くなく、成形時には熱分解による塩化水素の発生を抑えるため、安定剤、滑剤、加工助剤などを適切に配合する必要がある。
材料選定では、硬質か軟質か、可塑剤の種類と量、耐熱グレード、耐候グレード、難燃性、食品接触適合性、医療適合性、RoHS・REACH対応、成形履歴、使用温度、荷重、応力、薬品濃度、接触時間を確認する必要がある。特に軟質PVCでは可塑剤移行、抽出、べたつき、低温柔軟性、耐油性、アウトガスに注意が必要である。
特徴
長所
- 難燃性が高く、自己消火性を示すグレードが多い。
- 酸、アルカリ、水、塩類水溶液に対する耐薬品性が比較的良好である。
- 硬質から軟質まで、可塑剤や配合設計により幅広い硬さに調整できる。
- 押出成形、射出成形、カレンダー成形、ブロー成形、真空成形、溶接、接着などの加工方法に対応しやすい。
- 建材、配管、電線、フィルム、医療部材などで長い使用実績がある。
- 比重は高いが、機械強度、耐候性、コストのバランスが良い。
短所
- 熱安定性に制限があり、成形温度が高すぎると脱塩化水素反応により変色、劣化、腐食性ガス発生を生じる。
- ケトン、エステル、芳香族炭化水素、塩素系溶剤、THF、シクロヘキサノンなどでは膨潤、軟化、溶解を生じやすい。
- 軟質PVCでは可塑剤の移行、抽出、耐油性低下、汚染、アウトガスが問題になる場合がある。
- 低温では硬質PVCが脆化しやすく、衝撃用途では耐衝撃グレードや改質グレードを検討する必要がある。
- 燃焼時には塩化水素ガス、煙、腐食性成分の発生に注意が必要である。
外観
未着色の硬質PVCは一般に透明から半透明または乳白色である。配合剤、安定剤、顔料、充填材、可塑剤の種類により、透明、白色、不透明、着色品、艶あり、艶消しなどに調整できる。軟質PVCは透明性を持たせやすいが、可塑剤、安定剤、充填材の影響により透明性や黄変性が変化する。
耐熱性
PVCは非晶性樹脂であり、明確な融点は持たない。ガラス転移温度は一般に約75〜85℃程度である。硬質PVCの連続使用温度は目安として50〜60℃程度、耐熱グレードでは60〜70℃程度まで使用される場合がある。塩素化PVC(CPVC)は塩素含有量を高めた材料であり、PVCより耐熱性が高く、温水配管や耐熱配管用途に用いられる。
耐薬品性
PVCは酸、アルカリ、塩類水溶液、アルコール、水、油類に対して比較的安定である。一方、ケトン、エステル、芳香族炭化水素、塩素系溶剤、環状エーテル、強酸化性薬品、高温薬液では膨潤、軟化、溶解、劣化を生じる場合がある。実使用では、温度、濃度、接触時間、応力、可塑剤の有無を含めて確認する必要がある。
加工性
PVCは射出成形、押出成形、カレンダー成形、ブロー成形、真空成形、溶接、接着、切削加工に対応できる。ただし熱分解しやすいため、成形温度、滞留時間、せん断発熱、金型温度、安定剤配合の管理が重要である。一般に成形機や金型には耐腐食性を考慮することが望ましい。
分類上の注意
PVCは汎用プラスチックに分類されるが、配合設計の自由度が非常に高いため、硬質PVC、軟質PVC、ペーストPVC、耐衝撃PVC、耐熱PVC、CPVC、PVCアロイなどで性質が大きく異なる。単にPVCと表記されていても、可塑剤、安定剤、充填材、難燃剤、加工助剤、顔料の配合により、硬さ、耐熱性、耐薬品性、耐候性、法規制適合性が変わる。
構造式
構造式

- ポリ塩化ビニルはラジカル重合しやすく、光や放射線によっても重合するが、工業的重合方法としては、過酸化物などを用いた乳化重合や懸濁重合が行われている。
- 化学構造は、モノマー分子の頭尾結合からなる直鎖状分子で、塩素分子は1つおきに炭素に規則正しく結合している。
- 結晶性が、高密度ポリエチレンやポリプロピレンなどと比べて悪い理由は、主鎖を軸として塩素原子が各方向に不規則に分布しているためであり(アタクチックポリマー)、また重合時に生成する分岐、二重結合などの化学構造の不均一な部分を含んでいるためである。

| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 化学式の画像 | 画像タグは使用せず、白黒構造式の代替表記として「−[CH2−CH(Cl)]−n」を示す。 |
| 代表的な構造単位 | −CH2−CHCl− |
| モノマー | 塩化ビニル、CH2=CHCl |
| 重合体 | n CH2=CHCl → −[CH2−CHCl]−n |
| 共重合体・変性グレード | 塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、耐衝撃改質PVC、塩素化PVC(CPVC)、ペーストPVC、軟質PVC、PVCアロイなどがある。 |
PVCはビニル系ポリマーであり、主鎖は炭素−炭素結合で構成され、側鎖に塩素原子を持つ。この塩素原子の影響により、ポリエチレンやポリプロピレンと比較して極性が高く、難燃性、接着性、印刷性、耐油性に特徴を持つ。一方で、熱分解時には脱塩化水素反応を起こしやすいため、熱安定剤を含む配合設計が重要である。
種類
| 種類の名称 | 主成分または特徴 | 長所 | 短所 | 主な用途 |
|---|---|---|---|---|
| 硬質PVC | PVCを主体とし、可塑剤をほとんど含まない硬質グレード | 剛性、耐薬品性、難燃性、寸法安定性が良い | 低温衝撃性、耐熱性、熱分解に注意が必要 | 配管、継手、板、ダクト、窓枠、雨どい、建材 |
| 軟質PVC | PVCに可塑剤を配合し、柔軟性を付与した材料 | 柔軟性、透明性、加工性、電気絶縁性に優れる | 可塑剤移行、抽出、耐油性、アウトガスに注意 | 電線被覆、ホース、チューブ、シート、フィルム、医療部材 |
| ペーストPVC | 微粒子PVCを可塑剤に分散したペースト加工用材料 | コーティング、ディッピング、スラッシュ成形に適する | 配合管理、ゲル化条件、可塑剤移行に注意 | 手袋、壁紙、床材、合成皮革、玩具、コーティング材 |
| 耐衝撃PVC | ゴム系改質剤やアクリル系改質剤を配合したPVC | 硬質PVCより衝撃強度を高めやすい | 剛性、耐熱性、透明性が低下する場合がある | 外装材、窓枠、建材、ケース、配管部材 |
| 耐熱PVC | 高重合度PVC、耐熱配合、安定剤設計を行ったグレード | 標準PVCより熱変形しにくい | 加工温度範囲が狭く、成形条件管理が必要 | 温水周辺部材、電線被覆、建材、工業部品 |
| 塩素化PVC | PVCを塩素化し、塩素含有量を高めた材料 | 耐熱性、耐薬品性、難燃性が高い | 加工性、衝撃性、コストに注意 | 温水配管、薬液配管、工業用配管、継手 |
| GF強化PVC | PVCにガラス繊維や無機充填材を配合した強化材料 | 剛性、寸法安定性、耐クリープ性を高めやすい | 比重増加、衝撃性低下、成形摩耗に注意 | 構造部材、工業用部品、電気部品、板材 |
| PVCアロイ | PVCとABS、NBR、アクリル系樹脂などを組み合わせた材料 | 耐衝撃性、成形性、耐油性、柔軟性を調整できる | 相溶性、耐熱性、法規制、配合差に注意 | ホース、シート、工業部品、電線、筐体部品 |
代表グレード
| グレード区分 | 特徴 | 選定時の注意点 | 主な用途 |
|---|---|---|---|
| 汎用硬質グレード | 標準的な硬質PVCで、剛性、耐薬品性、難燃性のバランスが良い | 低温衝撃、高温変形、熱分解に注意 | 配管、板、継手、ダクト、建材 |
| 耐熱グレード | 耐熱安定剤、高重合度樹脂、CPVCなどにより耐熱性を高めたグレード | 加工温度範囲が狭く、滞留時間管理が必要 | 温水配管、電線被覆、耐熱シート |
| 難燃グレード | PVC自体の塩素含有により難燃性が高く、配合によりUL94 V-0相当を狙うことがある | 煙、腐食性ガス、添加剤規制を確認する | 電線被覆、電気部品、建材 |
| GF強化グレード | ガラス繊維や無機充填材により剛性、寸法安定性を高めたグレード | 比重、摩耗、ウェルド強度、成形機摩耗に注意 | 構造部品、工業部材、板材 |
| 摺動グレード | 滑剤、PTFE、シリコーン、ワックスなどを配合する場合がある | 摩耗粉、相手材、荷重、温度、薬品接触を確認する | ガイド、レール、摺動部材、搬送部品 |
| 食品接触グレード | 食品接触用途に適した樹脂、可塑剤、安定剤、添加剤を用いたグレード | 日本の食品衛生法、ポジティブリスト、FDA、EU規則などを用途別に確認する | 包装フィルム、食品用チューブ、容器、パッキン |
| 医療グレード | 医療用途向けに抽出物、可塑剤、滅菌適性、生体適合性を管理したグレード | 可塑剤、EOG滅菌、γ線滅菌、ISO 10993、USP Class VIなどを確認する | チューブ、バッグ、カテーテル、医療用部材 |
成形加工
| 成形加工法 | 適性 | 内容 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 射出成形 | ○ | 継手、電気部品、小型部品、筐体部品などに用いられる。 | 熱分解、滞留、せん断発熱、金型腐食に注意する。 |
| 押出成形 | ◎ | パイプ、異形押出、シート、フィルム、電線被覆に広く用いられる。 | ゲル化、溶融粘度、温度分布、引取条件を管理する。 |
| ブロー成形 | ○ | ボトル、容器、中空成形品に用いられる。 | 熱安定性、パリソン強度、透明性、食品接触適合性を確認する。 |
| 圧縮成形 | △ | 板材、厚物、特殊配合品で用いられる場合がある。 | 一般の量産成形では押出、射出、カレンダー成形が多い。 |
| 真空成形 | ○ | 硬質PVCシート、軟質PVCシートからトレー、カバー、内装材を成形する。 | シートの残留応力、加熱温度、白化、角部肉薄に注意する。 |
| カレンダー成形 | ◎ | 軟質PVCシート、フィルム、床材、壁紙、レザーに多用される。 | 配合、可塑剤、ゲル化、厚み精度、表面外観を管理する。 |
| ペースト加工 | ◎ | ディッピング、コーティング、スラッシュ成形、発泡壁紙などに用いられる。 | 粘度、ゲル化温度、可塑剤、発泡剤、離型性を管理する。 |
| 切削加工 | ○ | 硬質PVC板、丸棒、ブロックの切削、穴あけ、フライス加工が可能である。 | 発熱、バリ、応力白化、低温割れに注意する。 |
| 溶接・接着 | ◎ | 熱風溶接、溶剤接着、接着剤接合が比較的容易である。 | 溶剤クラック、残留応力、接着剤の法規制を確認する。 |
成形条件
| 項目 | 代表条件 | 備考 |
|---|---|---|
| 乾燥温度 | 通常は不要、必要に応じて50〜70℃で1〜3時間程度 | 吸水率は低いが、表面水分、配合剤、リサイクル材混入時は乾燥する場合がある。 |
| シリンダー温度 | 150〜190℃程度 | 硬質PVCの射出・押出の目安である。高温滞留により分解しやすい。 |
| ダイス温度 | 160〜190℃程度 | 押出ではゲル化状態、外観、寸法安定性に影響する。 |
| 金型温度 | 20〜60℃程度 | 外観、寸法、サイクル、残留応力により調整する。 |
| 成形収縮率 | 0.2〜0.6%程度 | 硬質PVCの目安である。軟質、充填材、繊維強化、成形条件で変化する。 |
| 滞留時間 | 短く管理する | 長時間滞留は変色、焼け、塩化水素発生、金型腐食の原因となる。 |
| スクリュー・金型 | 耐腐食仕様が望ましい | 熱分解ガス、添加剤、酸性成分による腐食に注意する。 |
代表的な物性値又は機械的性質
| 項目 | 単位 | 硬質PVC | 軟質PVC | CPVC | GF強化PVC | 備考 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 密度 | g/cm3 | 1.35〜1.45 | 1.15〜1.60 | 1.50〜1.60 | 1.45〜1.75 | 可塑剤、充填材、難燃剤、繊維量で変化する。 |
| 引張強さ | MPa | 40〜60 | 10〜30 | 50〜70 | 60〜100 | 硬質では比較的高い。軟質は可塑剤量で大きく変化する。 |
| 伸び | % | 20〜80 | 150〜400 | 20〜60 | 5〜30 | 軟質PVCは柔軟性が高い。 |
| 曲げ弾性率 | MPa | 2,400〜3,500 | 10〜500 | 2,500〜4,000 | 4,000〜8,000 | 硬質PVCは剛性が高く、GF強化でさらに上昇する。 |
| アイゾット衝撃強さ | kJ/m2 | 2〜10 | 破断しにくい場合あり | 2〜8 | 3〜15 | 耐衝撃グレードでは大きく向上する。 |
| 荷重たわみ温度 | ℃ | 60〜80 | 40〜70 | 90〜110 | 70〜100 | 荷重、試験条件、配合により変化する。 |
| 融点またはガラス転移温度 | ℃ | Tg 75〜85 | Tgは可塑剤により低下 | Tg 100〜120程度 | Tg 75〜90程度 | PVCは非晶性であり、明確な融点は示さない。 |
| 連続使用温度 | ℃ | 50〜60 | 50〜70 | 80〜95 | 60〜80 | 荷重、薬品、応力、時間により使用可能温度は変わる。 |
| 吸水率 | % | 0.04〜0.20 | 0.10〜0.50 | 0.04〜0.20 | 0.05〜0.30 | PA系樹脂に比べ吸水は小さい。 |
| 体積抵抗率 | Ω・cm | 1013〜1016 | 1010〜1015 | 1013〜1016 | 1012〜1015 | 可塑剤、帯電防止剤、湿度で変化する。 |
| 酸素指数 | % | 45前後 | 20〜35程度 | 50以上の場合あり | 配合による | 硬質PVCは難燃性が高い。軟質PVCは可塑剤により低下することがある。 |
吸水率
PVCの吸水率は一般に低く、寸法変化や物性低下に対する水分影響は、PA、PU、PBT、PETなどの吸湿や加水分解を考慮する材料に比べて小さい。ただし、軟質PVC、発泡PVC、充填材配合品、可塑剤配合品では、配合剤や空隙構造の影響により水分、洗剤、油、可塑剤抽出の影響を受ける場合がある。
難燃性
| 項目 | 内容 | 注意点 |
|---|---|---|
| 燃焼性 | 硬質PVCは塩素含有により自己消火性を示しやすい。 | 配合、厚み、可塑剤量、発泡状態で変化する。 |
| UL94 | 硬質PVCではV-0相当を満たすグレードがある。 | 認証はグレード、厚み、色、成形条件ごとに確認する。 |
| 酸素指数 | 硬質PVCは約45%前後が目安であり、一般的なPE、PP、PSより高い。 | 軟質PVCでは可塑剤の種類と量により低下する場合がある。 |
| 燃焼時の発生物 | 塩化水素、煙、すす、腐食性ガスを生じる可能性がある。 | 閉鎖空間、電気電子機器、鉄道、建材用途では規格確認が必要である。 |
耐薬品性
| 薬品分類 | 代表薬品 | 硬質PVC | 軟質PVC | 備考 |
|---|---|---|---|---|
| 酸類 | 塩酸、希硫酸、リン酸、酢酸水溶液 | ◎ | ○ | 濃硝酸、発煙硫酸、強酸化性酸、高温酸では劣化に注意する。 |
| アルカリ類 | 水酸化ナトリウム、KOH、アンモニア水 | ◎ | ○ | 高温高濃度では配合剤や可塑剤の影響を確認する。 |
| 低級アルコール類 | エタノール、IPA、メタノール | ○ | △〜○ | 軟質PVCでは可塑剤抽出、白化、硬化に注意する。 |
| 高級アルコール類 | グリセリン、ベンジルアルコール、MMB | ○ | △ | 極性や可塑剤との相溶性により膨潤する場合がある。 |
| 芳香族炭化水素類 | トルエン、キシレン、ベンゼン | △〜× | × | 膨潤、軟化、可塑剤抽出が起こりやすい。 |
| 脂肪族炭化水素類 | ヘキサン、ヘプタン、ミネラルスピリット | ○ | △ | 軟質PVCでは可塑剤抽出により硬化することがある。 |
| ケトン | アセトン、MEK、MIBK、シクロヘキサノン | × | × | 溶解、膨潤、応力割れを生じやすい。 |
| エステル | 酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エステル | △〜× | × | 溶解、軟化、可塑剤移行に注意する。 |
| 塩素系溶剤 | クロロホルム、ジクロロメタン、トリクロロエチレン | × | × | 溶解または激しい膨潤を生じる場合がある。 |
| 環状エーテル | THF、ジオキサン | × | × | PVCを溶解しやすい代表的な溶剤である。 |
| 水・温水 | 水、温水、塩水 | ◎ | ○ | 温水では耐熱性、可塑剤抽出、長期クリープを確認する。 |
| 油 | 鉱物油、植物油、潤滑油 | ○ | △ | 軟質PVCでは油による可塑剤抽出、膨潤、硬化に注意する。 |
| 燃料 | ガソリン、軽油、灯油 | △ | × | 燃料ホース用途では専用配合や他材料を検討する。 |
SP値(溶解度パラメータ)
| 材料 | SP値 δ | 単位 | 備考 |
|---|---|---|---|
| ポリ塩化ビニル(PVC) | 約19〜22 | MPa1/2 | 文献値では約9.4〜10.8 (cal/cm3)1/2 程度として示されることが多い。MPa1/2換算では約19〜22である。 |
| 硬質PVC | 約19〜21 | MPa1/2 | 可塑剤が少ないため、PVC本来の極性が反映されやすい。 |
| 軟質PVC | 配合により変化 | MPa1/2 | 可塑剤、充填材、安定剤により見かけの耐溶剤性が大きく変化する。 |
SP値は溶解、膨潤、可塑剤移行の傾向を推定する目安である。ただし、PVCの耐薬品性はSP値だけでは判断できない。結晶性の有無、分子量、配合剤、可塑剤、温度、薬品濃度、応力、接触時間、成形時の残留応力が大きく影響する。
溶解性の目安
| SP値差 | 溶解・膨潤の目安 | 判定 |
|---|---|---|
| 0〜2 | 膨潤・軟化しやすい | × |
| 2〜5 | 条件により膨潤する | △ |
| 5〜8 | 短時間接触では比較的安定 | ○ |
| 8以上 | 溶解・膨潤しにくい | ◎ |
SP値から見た耐溶剤性
| 薬品名 | SP値 δ | 単位 | PVCとの差 | 評価 | 備考 |
|---|---|---|---|---|---|
| 水 | 47.9 | MPa1/2 | 約26〜29 | ◎ | SP値差が大きく、硬質PVCは水に安定である。 |
| エタノール | 26.0 | MPa1/2 | 約4〜7 | ○ | 硬質PVCは比較的安定であるが、軟質PVCでは可塑剤抽出に注意する。 |
| IPA | 23.5 | MPa1/2 | 約1.5〜4.5 | △〜○ | 短時間接触では使用されることがあるが、軟質PVCでは確認が必要である。 |
| アセトン | 20.0 | MPa1/2 | 約0〜2 | × | 膨潤、軟化、応力割れを生じやすい。 |
| MEK | 19.0 | MPa1/2 | 約0〜3 | × | PVCに対して強い溶剤性を示す。 |
| 酢酸エチル | 18.2 | MPa1/2 | 約1〜4 | × | 膨潤、軟化、溶解に注意する。 |
| トルエン | 18.2 | MPa1/2 | 約1〜4 | △〜× | 硬質PVCでも膨潤しやすく、軟質PVCでは不適である。 |
| キシレン | 18.0 | MPa1/2 | 約1〜4 | △〜× | 高温や長時間接触では膨潤、可塑剤抽出を生じる。 |
| ヘキサン | 14.9 | MPa1/2 | 約4〜7 | ○〜△ | 硬質PVCは比較的安定であるが、軟質PVCでは可塑剤抽出に注意する。 |
| クロロホルム | 18.9 | MPa1/2 | 約0〜3 | × | 塩素系溶剤はPVCに対して強い膨潤・溶解性を示す。 |
| THF | 18.6 | MPa1/2 | 約0〜3 | × | PVCを溶解しやすい代表的な溶剤である。 |
| シクロヘキサノン | 20.3 | MPa1/2 | 約0〜2 | × | PVC用溶剤接着剤などで利用されることがある。 |
評価基準は、◎非常に良好、○概ね良好、△注意が必要、×不適である。SP値差が小さい溶剤でも、実際の溶解性は水素結合性、極性、拡散性、分子サイズ、温度、PVCの配合によって変わる。特に軟質PVCでは、樹脂本体の溶解だけでなく、可塑剤の抽出、移行、膨潤、硬化を評価する必要がある。
製法
原料
PVCの主原料は塩化ビニルモノマーである。塩化ビニルモノマーは、一般にエチレンと塩素から二塩化エチレンを製造し、これを熱分解して得られる。塩素原料を含むため、PVCは他の炭化水素系汎用樹脂に比べて石油由来炭素の比率が低い材料として扱われることがある。
代表的な反応式
| 工程 | 反応式 | 内容 |
|---|---|---|
| 二塩化エチレンの生成 | CH2=CH2 + Cl2 → ClCH2−CH2Cl | エチレンに塩素を付加し、二塩化エチレンを得る。 |
| 塩化ビニルモノマーの生成 | ClCH2−CH2Cl → CH2=CHCl + HCl | 二塩化エチレンを熱分解し、塩化ビニルモノマーを得る。 |
| 重合 | n CH2=CHCl → −[CH2−CHCl]−n | 塩化ビニルモノマーをラジカル重合し、PVCを得る。 |
重合方法
- 懸濁重合:汎用PVC樹脂の主流であり、粉末状PVCとして得られる。
- 乳化重合:ペーストPVCや特殊用途向けに用いられる。
- 塊状重合:水を使わず高純度のPVCを得る方法として用いられる場合がある。
- 微粒子重合:ペースト加工、コーティング、ディッピング用途で使用される。
ペレット化やコンパウンド
PVCは単独樹脂として使用されるよりも、安定剤、滑剤、加工助剤、可塑剤、衝撃改質剤、充填材、顔料、難燃助剤、発泡剤などを配合したコンパウンドとして使用されることが多い。硬質PVCでは熱安定剤、滑剤、加工助剤、衝撃改質剤が重要であり、軟質PVCでは可塑剤、安定剤、充填材、顔料、難燃剤の選定が重要である。
添加剤、充填材、強化材
- 安定剤:Ca-Zn系、有機スズ系などが用途に応じて使われる。鉛系、カドミウム系は規制対応が重要である。
- 可塑剤:フタル酸エステル系、アジピン酸エステル系、トリメリット酸エステル系、ポリエステル系などがある。
- 充填材:炭酸カルシウム、タルク、クレー、シリカなどが用いられる。
- 強化材:ガラス繊維、無機繊維、ガラスフレークなどが用いられる場合がある。
- 加工助剤:アクリル系加工助剤、滑剤、ワックスなどによりゲル化性、流動性、表面外観を調整する。
詳細な利用用途
| 分野 | 用途例 | 採用理由 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 自動車 | ワイヤーハーネス被覆、内装表皮、マット、シール材、チューブ | 柔軟性、難燃性、耐摩耗性、加工性、コスト | 可塑剤移行、VOC、フォギング、耐熱老化、低温性を確認する。 |
| 電気・電子 | 電線被覆、ケーブル、絶縁チューブ、配線ダクト、端子カバー | 電気絶縁性、難燃性、柔軟性、耐薬品性 | UL規格、RoHS、ハロゲン規制、煙・腐食性ガスを確認する。 |
| 機械部品 | 薬液タンク、ダクト、ライニング、カバー、配管、継手 | 耐酸性、耐アルカリ性、溶接性、加工性 | 高温薬液、有機溶剤、応力割れ、長期クリープに注意する。 |
| 医療 | 輸液チューブ、血液バッグ、カテーテル、医療用シート | 透明性、柔軟性、高周波溶着性、実績 | 可塑剤、生体適合性、滅菌適性、抽出物、医療規格を確認する。 |
| 食品機械・包装 | 食品包装フィルム、容器、チューブ、パッキン、カーテン | 透明性、柔軟性、加工性、シール性 | 食品衛生法、FDA、可塑剤、添加剤、移行量を確認する。 |
| 建築・設備 | 給排水管、雨どい、窓枠、床材、壁紙、波板、サイディング | 耐候性、難燃性、耐薬品性、耐久性、施工性 | 熱膨張、紫外線、低温衝撃、火災時の煙、法規格を確認する。 |
| 日用品 | カード、ケース、玩具、文具、シート、バッグ、マット | 成形性、印刷性、透明性、柔軟性、コスト | 可塑剤、皮膚接触、臭気、耐候性、経時硬化を確認する。 |
| 工業資材 | ホース、帆布、テント、ベルト、保護カバー、透明カーテン | 柔軟性、耐候性、難燃性、加工性 | 屋外使用、油接触、可塑剤移行、寒冷地脆化に注意する。 |
用途別選定
| 用途 | 適したPVCグレード | 選定ポイント | 代替候補 |
|---|---|---|---|
| ギア | 硬質PVC、GF強化PVC | 軽荷重、低速、耐薬品用途に限定して検討する。 | POM、PA、PBT、PEEK |
| 軸受 | 摺動配合PVC | 摩擦熱、摩耗粉、相手材、潤滑条件を確認する。 | PTFE、POM、UHMWPE、PA |
| チューブ | 軟質PVC、医療グレード、食品接触グレード | 柔軟性、透明性、可塑剤、抽出物、滅菌適性を確認する。 | シリコーン、TPE、PU、PE |
| 筐体 | 硬質PVC、耐衝撃PVC | 難燃性、耐薬品性、屋外耐候性を重視する。 | ABS、PC、PC/ABS、PP |
| フィルム | 軟質PVC、硬質透明PVC、カレンダー用PVC | 透明性、柔軟性、シール性、食品接触、可塑剤移行を確認する。 | PE、PP、PET、PETG |
| コネクタ | 硬質PVC、難燃PVC | 電気絶縁性、難燃性、寸法安定性、耐熱性を確認する。 | PBT、PA66、PC、PPS |
| 配管 | 硬質PVC、CPVC | 薬液、圧力、温度、長期クリープ、規格適合性を確認する。 | PE、PP、PVDF、ステンレス |
法規制
| 規制・規格 | 確認項目 | 注意点 |
|---|---|---|
| RoHS | 鉛、カドミウム、水銀、六価クロム、PBB、PBDE、フタル酸エステル類など | PVC自体ではなく、安定剤、顔料、可塑剤、難燃剤の適合確認が重要である。 |
| REACH | SVHC、可塑剤、安定剤、添加剤、残留モノマー | DEHP、DBP、BBP、DIBPなどのフタル酸エステルは用途制限に注意する。 |
| 食品衛生 | 食品接触材料、ポジティブリスト、移行試験、添加剤 | 食品用途では樹脂、可塑剤、安定剤、印刷インキ、接着剤を含めて確認する。 |
| FDA | 食品接触用途、医療用途、添加剤適合性 | 米国向けでは用途別の該当規則、グレード証明、移行試験を確認する。 |
| 医療用途 | ISO 10993、USP Class VI、滅菌適性、抽出物 | 可塑剤、安定剤、溶出物、EOG残留、γ線劣化を確認する。 |
| 建材・防火 | 防火性能、煙、ガス、建築基準、JIS、ASTM、EN規格 | 用途地域、建築部位、厚み、表面材により要求が異なる。 |
注意点
- 加水分解はPETやPBTほど大きな問題ではないが、高温水、薬液、可塑剤抽出により物性低下する場合がある。
- 応力割れは、溶剤、接着剤、残留応力、切削加工、曲げ加工で発生する場合がある。
- 吸湿による寸法変化は小さいが、表面水分、充填材、発泡構造、配合剤の吸湿には注意する。
- 熱劣化では脱塩化水素、変色、脆化、金型腐食、ガス発生が問題となる。
- アウトガスは、軟質PVCの可塑剤、安定剤、添加剤、残留モノマー、分解生成物に由来する場合がある。
- 軟質PVCでは可塑剤移行により、接触相手材の汚染、粘着、硬化、寸法変化を生じることがある。
- 屋外使用では紫外線、熱、雨水、酸性雨、汚染物質、顔料、安定剤の組み合わせを確認する必要がある。
関連材料との比較
| 比較材料 | 特徴 | 対象材料との違い |
|---|---|---|
| ポリエチレン(PE) | 軽量、低吸水、耐薬品性、低温特性に優れるポリオレフィンである。 | PVCはPEより比重が高いが、難燃性、接着性、印刷性に優れる。PEは耐溶剤性、柔軟性、低温性に優れる。 |
| ポリプロピレン(PP) | 軽量、耐熱性、耐薬品性、成形性に優れる汎用樹脂である。 | PVCはPPより難燃性と寸法安定性に優れる場合がある。PPは比重が低く、耐熱性と耐疲労性に優れる。 |
| ポリスチレン(PS) | 透明性、剛性、成形性に優れるスチレン系樹脂である。 | PVCはPSより耐薬品性、難燃性、耐候性に優れる傾向がある。PSは透明性と成形サイクルで有利な場合がある。 |
| ABS樹脂 | 耐衝撃性、外観性、めっき性、成形性に優れる樹脂である。 | PVCはABSより耐薬品性と難燃性に優れる場合がある。ABSは耐衝撃性、外観、筐体用途で使いやすい。 |
| アクリル樹脂(PMMA) | 透明性、表面硬度、耐候性に優れる透明樹脂である。 | PVCは柔軟化しやすく難燃性が高い。PMMAは透明性、光学性、耐候性に優れるが、衝撃や溶剤に注意が必要である。 |
| ポリカーボネート(PC) | 透明性、耐衝撃性、耐熱性に優れるエンジニアリングプラスチックである。 | PVCはコスト、難燃性、薬液配管で有利な場合がある。PCは耐衝撃性と耐熱性が高いが、アルカリや溶剤に注意が必要である。 |
| PETG樹脂 | 透明性、耐衝撃性、熱成形性に優れるグリコール変性ポリエステルである。 | PVC代替透明シートとして検討されることがある。PETGは非塩素系で透明性と熱成形性に優れるが、PVCは難燃性と柔軟化設計で有利である。 |
| ポリ塩化ビニリデン(PVDC) | 酸素・水蒸気バリア性が高い塩素系樹脂である。 | PVCは建材、配管、電線、汎用成形で広く使われる。PVDCは包装バリア用途で特徴を持つ。 |
代表的なメーカー
| メーカー | 代表製品・ブランド | 概要 |
|---|---|---|
| 信越化学工業株式会社 | ストレートポリマー、高重合度ポリマー、GR-PVCシリーズなど | 塩化ビニル樹脂を展開する大手メーカーであり、硬質用途、軟質用途、各種コンパウンド用途に使用されるPVC樹脂を供給している。 |
| 株式会社カネカ | カネビニール® | 塩化ビニル樹脂、塩ビ−酢ビ系ポリマー、高重合度グレードなどを展開している。建材、電線、レザー、包装、産業資材などに用いられる。 |
| 東ソー株式会社 | リューロンペースト® | ペースト塩ビを展開しており、壁紙、床材、自動車、手袋、レザー、玩具などのペースト加工用途で使用される。 |
| Westlake Corporation | Westlake PVC resin | 北米を中心にPVC樹脂、塩ビ関連材料を展開するメーカーである。配管、建材、電線、フィルムなどの用途に供給される。 |
| Orbia Polymer Solutions(Vestolit) | Vestolit PVC | PVC樹脂、ペーストPVC、特殊PVCを展開するメーカーであり、建材、床材、コーティング、医療、工業用途に使用される。 |
| INEOS Inovyn | INOVYN PVC | 欧州のPVCメーカーであり、サスペンションPVC、エマルジョンPVC、特殊用途向けPVCを展開している。 |
| Formosa Plastics Corporation | Formolon® PVC | 汎用PVC樹脂を展開するメーカーであり、パイプ、フィルム、シート、電線、建材などに使用される。 |
関連キーワード
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製法
PVCは塩化ビニルモノマーのラジカル重合により製造されます。 主に懸濁重合、乳化重合、塊状重合が用いられる。
- ポリ塩化ビニルは、沸点-13.9℃、融点-157.7℃であり、常温では気体である。
- 工業的製法は、アセチレンを原料とする方法とエチレンを原料にする方法の2通りある。
- アセチレンを原料とする場合、150~200℃に加熱したアセチレンと塩化水素の混合気体を触媒(塩化水銀(Ⅱ)を吸収させた活性炭)に接触させると反応してポリ塩化ビニルが生成する。

- エチレンを原料とする場合、エチレンを塩素化して二酸化エタンを作り、この二酸化エタンを熱分解することでポリ塩化ビニルを生成する。

- 副生する塩化水素は、アセチレンと反応させて塩化ビニルにするか、オキシクロリネーションに用いる。
- オキシクロリネーション法は、塩化水素と酸素で塩素化を行う反応であり、これをエチレンに適用すると二酸化エタンが生成する。
詳細な利用用途
建材
- 配管
- サッシ
- 床材
電気用途
- 電線被覆
包装
- フィルム
- 食品包装
用途別に見るPVCタイプ選定
| 用途 | 推奨PVC | 理由 |
|---|---|---|
| 配管・建材 | 硬質PVC | 剛性・耐薬品性・寸法安定性が高い |
| 電線被覆 | 軟質PVC | 柔軟性・絶縁性に優れる |
| フィルム・シート | 軟質PVC | 可塑剤により柔軟加工可能 |
| 化学タンク | 硬質PVC | 耐薬品性・耐久性が高い |
| 医療チューブ | 軟質PVC | 柔軟性と加工性 |
関連材料との比較
代表的なメーカー
| メーカー | 製品 |
|---|---|
| 信越化学 | SHINTECH PVC |
| 住友化学 | 住友PVC |
| カネカ | Kane Vinyl |
| Westlake | Westlake PVC |