| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 材料名 | 押出発泡ポリスチレン |
| 略記号 | XPS |
| IUPAC | Poly(1-phenylethene) を主成分とする発泡体 |
| 英語名 | Extruded Polystyrene Foam / Extruded Polystyrene Insulation |
| 日本語名 | 押出発泡ポリスチレン、押出法ポリスチレンフォーム、押出法ポリスチレンフォーム断熱材、XPSフォーム |
| 分類 | 発泡プラスチック、断熱材、熱可塑性樹脂発泡体 |
| プラスチック分類 | プラスチック |
| 化学式または代表構造 | 主成分であるポリスチレンの繰り返し単位:[-CH2-CH(C6H5)-]n |
| CAS No. | 9003-53-6(ポリスチレンとして) |
| 構造・主成分 | ポリスチレンを主成分とし、独立気泡構造を持つ硬質発泡体である。発泡剤、難燃剤、気泡調整剤、着色剤などを含む場合がある。 |
| 主な用途 | 建築用断熱材、基礎断熱材、屋根断熱材、床断熱材、土木用軽量盛土材、保冷・保温部材、芯材、模型材など |
概要
押出発泡ポリスチレンは、ポリスチレン樹脂を押出機内で溶融し、発泡剤を混合して連続的に発泡・成形した硬質発泡プラスチックである。一般にはXPSと略記され、建築分野では押出法ポリスチレンフォーム断熱材として広く用いられる。ビーズ法発泡ポリスチレンであるEPSとは製法と気泡構造が異なり、XPSは板状で均一な独立気泡構造を形成しやすい。
XPSは低い熱伝導率、低吸水性、比較的高い圧縮強さを持つことが特徴である。特に水分の影響を受けやすい床、基礎、屋根、土木用途などで使用されることが多い。ただし、主成分はポリスチレンであるため、耐熱性は高くなく、芳香族炭化水素、ケトン、エステル、塩素系溶剤などでは膨潤、軟化、溶解が起こりやすい。
物性は密度、発泡倍率、気泡径、表皮層の有無、難燃処方、添加剤、製品規格により変化する。断熱材として使用する場合は、熱伝導率だけでなく、圧縮荷重、吸水条件、施工部位、火気、接着剤・塗料・防水材との相性を確認する必要がある。
特徴
長所
- 独立気泡構造により、一般に断熱性が高い。
- 吸水量が小さく、湿潤環境でも断熱性能が低下しにくい。
- 発泡体としては圧縮強さが比較的高く、床、基礎、屋根、土木用途に使いやすい。
- 板状製品として寸法精度を得やすく、切断、敷設、施工が容易である。
- 軽量であり、運搬・施工時の作業性に優れる。
- ポリスチレン系材料であるため、一般的なプラスチック加工技術を応用しやすい。
短所
- 耐熱性は高くなく、高温環境では変形、収縮、軟化が起こることがある。
- 可燃性材料であり、難燃グレードであっても不燃材料ではない。
- 芳香族炭化水素、ケトン、エステル、塩素系溶剤などに弱い。
- 紫外線に長期間さらされると表面劣化、粉化、変色が起こることがある。
- 強い点荷重、長期荷重、高温下荷重ではクリープ変形に注意が必要である。
- 有機溶剤を含む接着剤、塗料、防水材、シーリング材との接触では事前確認が必要である。
外観
一般に板状の硬質発泡体であり、表面は平滑なもの、スキン層を持つもの、凹凸加工を施したものなどがある。色は青、緑、ピンク、黄色、銀色など製品・メーカーにより異なる。発泡倍率が高いため軽量で、切断面には細かな独立気泡が見られる。
耐熱性
主成分であるポリスチレンのガラス転移温度はおおむね90〜105℃であるが、発泡体としての実用耐熱温度はこれより低くなる。建築用XPSでは、一般に連続使用温度は60〜70℃程度を目安とすることが多い。高温下では寸法変化、反り、収縮、圧縮クリープが起こる可能性があるため、屋根、防水層直下、温水配管周辺などでは製品規格を確認する必要がある。
耐薬品性
酸、アルカリ、水、低級アルコールに対しては比較的安定な場合が多い。一方で、トルエン、キシレン、スチレン、ガソリン、アセトン、MEK、酢酸エチル、ジクロロメタンなど、ポリスチレンに近い溶解性を示す薬品では膨潤、軟化、溶解が起こりやすい。実使用では濃度、温度、接触時間、応力、製品表面状態を確認する必要がある。
加工性
XPSは切断、溝加工、穴あけ、熱線カットなどの二次加工が容易である。熱可塑性樹脂であるため熱で軟化するが、発泡体であるため再溶融成形には適さない。接着には水系接着剤、変成シリコーン系、ウレタン系などが用いられる場合があるが、溶剤型接着剤は溶剤により発泡体を侵すことがある。
分類上の注意
押出発泡ポリスチレンは、樹脂分類上はポリスチレン系の発泡体である。建築材料としては断熱材、発泡プラスチック、フォーム材に分類される。ビーズ法発泡ポリスチレン、発泡スチロール、スチレンボードと混同されることがあるが、XPSは押出法で連続成形される板状発泡体であり、EPSとは気泡構造、吸水性、圧縮特性、用途が異なる。
構造式
代表的な構造単位
押出発泡ポリスチレンの主成分はポリスチレンであり、代表的な繰り返し単位は次のように表される。
[-CH2-CH(C6H5)-]n
モノマーまたは構成単位
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 主モノマー | スチレン |
| スチレンの化学式 | C8H8 |
| ポリマー主鎖 | 炭素−炭素結合からなるビニルポリマー主鎖 |
| 側鎖 | フェニル基(C6H5) |
| 発泡構造 | 独立気泡構造。気泡中の空気または発泡ガスにより低熱伝導率を示す。 |
共重合体や変性グレード
一般的なXPSはポリスチレンを主成分とするが、物性調整のためにスチレン系共重合体、耐衝撃性ポリスチレン、難燃剤、気泡調整剤、赤外線遮蔽材、無機充填材などを含む場合がある。高断熱グレードでは気泡構造、発泡剤、赤外線遮蔽成分を調整し、熱伝導率を低くした製品がある。
種類
| 種類の名称 | 主成分または特徴 | 長所 | 短所 | 主な用途 |
|---|---|---|---|---|
| 一般XPS断熱材 | ポリスチレンを主成分とする標準的な押出発泡板 | 断熱性、低吸水性、施工性のバランスが良い | 耐熱性、耐溶剤性、耐火性には限界がある | 床断熱、壁断熱、屋根断熱、一般建築断熱 |
| 高断熱XPS | 気泡構造、発泡剤、赤外線遮蔽材などを調整したグレード | 薄い厚みでも断熱性能を確保しやすい | 標準品より高価になりやすい | 高断熱住宅、外張断熱、屋根、基礎 |
| 高圧縮強度XPS | 密度や気泡構造を調整し、圧縮強さを高めたグレード | 荷重を受ける部位に使いやすい | 長期荷重ではクリープ設計が必要である | 床下、土間下、駐車場下、冷凍倉庫床、土木用盛土 |
| 難燃XPS | 難燃剤を配合した建築用グレード | 燃焼性規格に適合する製品がある | 不燃材料ではなく、火気・高温には注意が必要である | 建築断熱、設備断熱、内外装下地 |
| 表面加工XPS | 表面に溝、粗面、スキン層、面材などを付与した製品 | 接着性、施工性、排水性、寸法安定性を調整できる | 加工仕様により用途が限定される | 外張断熱、防水下地、パネル芯材、複合板 |
| 土木用XPS | 軽量性、圧縮特性を重視した大型ブロック・板材 | 地盤荷重の低減、施工性向上に有効である | 耐火、耐溶剤、長期圧縮クリープに注意が必要である | 軽量盛土、擁壁裏込め、道路、橋台背面、埋設構造物周辺 |
成形加工
| 加工方法 | 適性 | 内容 |
|---|---|---|
| 射出成形 | × | XPS製品自体は発泡板であり、射出成形には適さない。原料ポリスチレンは射出成形可能である。 |
| 押出成形 | ◎ | 代表的な製法である。ポリスチレンを溶融し、発泡剤を混合してダイから押し出し、板状に発泡成形する。 |
| ブロー成形 | × | 中空成形用材料ではなく、一般に適用されない。 |
| 圧縮成形 | △ | 発泡体の二次加圧加工は可能な場合があるが、気泡破壊や厚み変化が起こりやすい。 |
| 真空成形 | △ | 薄板化した特殊なスチレン系発泡シートでは可能な場合があるが、建築用XPS板には一般的でない。 |
| 切削加工 | ◎ | カッター、のこ、ルーター、熱線などで切断・加工しやすい。粉じん、熱変形、静電気に注意する。 |
| 熱線カット | ◎ | 模型、断熱材加工、曲面加工などに用いられる。加熱時の分解ガスや換気に注意する。 |
| 接着 | ○ | 水系、無溶剤系、変成シリコーン系などを選定する。溶剤型接着剤では膨潤・溶解を確認する必要がある。 |
| 塗装 | △ | 水系塗料は使用しやすいが、有機溶剤系塗料では表面が侵される場合がある。 |
代表的な物性値又は機械的性質
| 項目 | 単位 | 代表値・目安 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 密度 | kg/m3 | 20〜45 | 建築用断熱材では20〜35 kg/m3程度が多い。高圧縮グレードでは高くなる。 |
| 引張強さ | MPa | 0.2〜0.8 | 発泡倍率、スキン層、方向により大きく変化する。 |
| 伸び | % | 1〜5 | 硬質発泡体であり、大きな伸びは期待しにくい。 |
| 曲げ強さ | MPa | 0.20〜0.40 | JIS規格品では20〜25 N/cm2以上などの規格値が用いられる。 |
| 曲げ弾性率 | MPa | 10〜40 | 発泡体としての見掛け値である。原料PSの値とは異なる。 |
| アイゾット衝撃強さ | kJ/m2 | 発泡体としては規格化されにくい | 硬質発泡体であり、衝撃により割れ、欠け、局部破壊が起こることがある。 |
| 圧縮強さ | MPa | 0.16〜0.70 | 一般建築用では0.16〜0.20 MPa程度、高圧縮グレードでは0.30 MPa以上のものがある。 |
| 荷重たわみ温度 | ℃ | 70〜90 | 発泡体では荷重、厚み、拘束条件により変形挙動が変わる。 |
| 融点またはガラス転移温度 | ℃ | 90〜105 | 主成分ポリスチレンのガラス転移温度の目安である。明確な融点は持たない非晶性樹脂である。 |
| 連続使用温度 | ℃ | -50〜70 | 実用上は70℃以下を目安とすることが多い。製品規格を確認する必要がある。 |
| 熱伝導率 | W/(m・K) | 0.022〜0.036 | 高断熱グレードでは0.022〜0.024 W/(m・K)程度、一般品では0.028〜0.036 W/(m・K)程度が目安である。 |
| 吸水量 | g/100cm2またはvol% | 0.01〜0.3 | 試験方法により単位が異なる。独立気泡構造のため一般に低吸水である。 |
| 透湿係数 | ng/(m2・s・Pa) | 50〜150 | 厚み、スキン層、製品により異なる。 |
| 体積抵抗率 | Ω・cm | 1014〜1017 | 乾燥状態では電気絶縁性が高い。帯電には注意が必要である。 |
| 燃焼性 | – | 難燃グレードあり | 難燃規格に適合する製品があるが、不燃材料ではない。 |
代表的なグレード比較
| 材料・グレード | 密度目安 | 圧縮強さ目安 | 熱伝導率目安 | 特徴 |
|---|---|---|---|---|
| 一般XPS | 20〜30 kg/m3 | 0.16〜0.20 MPa | 0.028〜0.036 W/(m・K) | 建築断熱材として標準的な物性範囲である。 |
| 高断熱XPS | 25〜40 kg/m3 | 0.20 MPa前後 | 0.022〜0.024 W/(m・K) | 薄肉化、高断熱化を目的とする。 |
| 高圧縮XPS | 30〜45 kg/m3 | 0.30〜0.70 MPa | 0.028〜0.036 W/(m・K) | 床下、土木、冷凍倉庫床など荷重用途に使われる。 |
| EPS | 10〜40 kg/m3 | 0.05〜0.30 MPa | 0.034〜0.043 W/(m・K) | ビーズ発泡体であり、軽量性、緩衝性に優れる。 |
| 硬質ウレタンフォーム | 25〜60 kg/m3 | 0.10〜0.30 MPa | 0.020〜0.026 W/(m・K) | 断熱性が高いが、吸水・燃焼・施工条件に注意が必要である。 |
耐薬品性
| 薬品分類 | 代表薬品 | 評価 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 酸類 | 希塩酸、希硫酸、酢酸水溶液 | ○ | 常温・低濃度では比較的安定である。濃硝酸、発煙硫酸など強酸化性酸は避ける。 |
| アルカリ類 | 水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、石灰水 | ○ | 常温では比較的安定である。高温・高濃度では確認が必要である。 |
| 低級アルコール類 | メタノール、エタノール、IPA | ○ | 短時間接触では比較的安定であるが、混合溶剤では注意が必要である。 |
| 高級アルコール類 | グリセリン、ベンジルアルコール、MMB | △ | 薬品により差が大きい。ベンジルアルコールなど芳香族性を持つものは膨潤に注意する。 |
| 芳香族炭化水素類 | トルエン、キシレン、エチルベンゼン、スチレン | × | ポリスチレンを膨潤・溶解しやすい。接触は避ける。 |
| 脂肪族炭化水素類 | ヘキサン、ヘプタン、灯油、ガソリン | △〜× | ヘキサンは短時間では限定的な場合があるが、ガソリン、灯油、混合炭化水素では膨潤・軟化に注意する。 |
| ケトン | アセトン、MEK、MIBK | × | 急速に膨潤・溶解することがある。洗浄剤、塗料、接着剤中の溶剤に注意する。 |
| エステル | 酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル | × | ポリスチレンに対する溶解性が高いものが多い。 |
| 塩素系溶剤 | ジクロロメタン、クロロホルム、トリクロロエチレン | × | 溶解・膨潤が著しいため使用しない。 |
| 水・温水 | 水、雨水、温水 | ◎〜○ | 低吸水性である。ただし、高温水、長期浸漬、凍結融解、接合部からの浸水には注意する。 |
| 油 | 鉱物油、潤滑油、動植物油 | △ | 油の種類、添加剤、温度により膨潤する場合がある。長期接触では確認が必要である。 |
| 防水材・塗料 | アスファルト系、ウレタン系、エポキシ系、溶剤型塗料 | △〜× | 配合溶剤により発泡体を侵す場合がある。直接接触前に必ず適合性を確認する。 |
SP値(溶解度パラメータ)
| 項目 | SP値(δ) MPa1/2 | 備考 |
|---|---|---|
| 押出発泡ポリスチレン | 18.5〜19.0 | 主成分であるポリスチレンの代表値を基準とした目安である。 |
| ポリスチレン | 18.6 | 非晶性ポリマーであり、芳香族溶剤や一部エステル・ケトンに溶解しやすい。 |
SP値は溶解・膨潤の傾向を把握するための目安である。実際の耐薬品性は、発泡倍率、独立気泡率、表皮層、温度、濃度、接触時間、応力、添加剤、薬品の混合組成により変化する。特にXPSでは、表面が一部侵されるだけでも強度や断熱性能に影響する場合がある。
溶解性の目安
| SP値差 | 溶解・膨潤の目安 | 判定 |
|---|---|---|
| 0〜2 | 膨潤・軟化しやすい | × |
| 2〜5 | 条件により膨潤する | △ |
| 5〜8 | 短時間接触では比較的安定 | ○ |
| 8以上 | 溶解・膨潤しにくい | ◎ |
SP値から見た耐溶剤性
押出発泡ポリスチレンのSP値は、主成分であるポリスチレンの代表値として18.6 MPa1/2を基準にする。SP値が近い溶剤では、膨潤、軟化、溶解のリスクが高くなる。ただし、アルコール類のようにSP値差が小さくても水素結合性や極性の影響により実際の溶解性が低い場合があるため、SP値だけで判断してはならない。
| 薬品名 | SP値(δ) MPa1/2 | XPSとの差 | 評価 | 備考 |
|---|---|---|---|---|
| 水 | 47.9 | 29.3 | ◎ | 低吸水性であり、常温水には比較的安定である。 |
| メタノール | 29.6 | 11.0 | ○ | 短時間接触では比較的安定である。 |
| エタノール | 26.5 | 7.9 | ○ | 純アルコールでは比較的安定な場合が多い。 |
| IPA | 23.5 | 4.9 | ○〜△ | SP値差は中程度であり、長時間接触や混合溶剤では確認が必要である。 |
| アセトン | 19.9 | 1.3 | × | 膨潤・溶解しやすく、洗浄用途には適さない。 |
| MEK | 19.0 | 0.4 | × | ポリスチレンを侵しやすい。 |
| 酢酸エチル | 18.2 | 0.4 | × | 接着剤、塗料、防水材中の溶剤として注意が必要である。 |
| トルエン | 18.2 | 0.4 | × | 芳香族炭化水素であり、溶解・膨潤リスクが高い。 |
| キシレン | 18.0 | 0.6 | × | 塗料・シンナーに含まれる場合があり、直接接触は避ける。 |
| ジクロロメタン | 20.2 | 1.6 | × | 短時間でも発泡体を侵す可能性が高い。 |
| クロロホルム | 18.7 | 0.1 | × | ポリスチレンに対する溶解性が非常に高い。 |
| ヘキサン | 14.9 | 3.7 | △ | 脂肪族炭化水素であり、短時間では限定的な場合もあるが、膨潤確認が必要である。 |
| 灯油 | 16前後 | 2〜3 | △〜× | 混合炭化水素であり、長期接触では軟化・膨潤に注意する。 |
| グリセリン | 33.8 | 15.2 | ◎〜○ | 常温では比較的影響が小さい。 |
評価基準:◎非常に良好、○概ね良好、△注意が必要、×不適。上表はSP値を基準にした目安であり、実際の使用では薬品濃度、温度、接触時間、応力、施工条件、接着剤・塗料・防水材の配合溶剤を確認する必要がある。
製法
原料
- 主原料:ポリスチレン樹脂
- 発泡剤:炭化水素、二酸化炭素、代替フロン系発泡剤など。現在はノンフロン化された製品が多い。
- 添加剤:難燃剤、気泡調整剤、核剤、安定剤、着色剤、赤外線遮蔽材など
- 必要に応じて、リサイクルポリスチレンや改質樹脂が配合される場合がある。
重合方法
XPSの主成分であるポリスチレンは、スチレンモノマーのラジカル重合により製造される。代表的な重合反応は次のように表される。
n CH2=CH-C6H5 → [-CH2-CH(C6H5)-]n
押出発泡工程
| 工程 | 内容 |
|---|---|
| 原料供給 | ポリスチレンペレット、添加剤、必要に応じてリサイクル材を押出機に供給する。 |
| 溶融混練 | 押出機内でポリスチレンを加熱溶融し、添加剤を均一に分散させる。 |
| 発泡剤注入 | 溶融樹脂に発泡剤を高圧で注入し、均一に混合する。 |
| 冷却・圧力制御 | 発泡に適した粘度と温度に調整する。気泡径や独立気泡率に影響する重要工程である。 |
| ダイ押出 | スリットダイから押し出す際に圧力が低下し、発泡剤が膨張してフォーム構造を形成する。 |
| 厚み調整・引取 | サイジング装置や引取装置で板厚、幅、表面状態を調整する。 |
| 熟成 | 気泡内ガスの置換、寸法安定化を行う。製品により一定期間の養生が必要である。 |
| 切断・加工 | 規定寸法に切断し、必要に応じて面取り、溝加工、表面加工、面材貼合を行う。 |
ペレット化やコンパウンド
XPSの製造では、原料ポリスチレンペレットに難燃剤、核剤、着色剤、赤外線遮蔽材などをドライブレンドまたはマスターバッチとして配合することが多い。高断熱グレードでは気泡径、発泡倍率、ガス組成、赤外線遮蔽成分の設計が重要である。
添加剤、充填材、強化材
建築用XPSでは、燃焼性規格に対応するため難燃剤が使用されることがある。また、熱線輻射を低減する目的でカーボン系、無機系、金属酸化物系などの赤外線遮蔽材が用いられる場合がある。GFやCFで補強する一般的な繊維強化プラスチックとは異なり、XPSでは独立気泡構造と発泡倍率の制御が物性設計の中心となる。
詳細な利用用途
| 分野 | 用途 | 採用理由 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 自動車 | 断熱部材、吸音・軽量芯材、治具、模型材 | 軽量、加工性、断熱性 | 耐熱、耐溶剤、燃焼性を確認する。 |
| 電気・電子 | 梱包用スペーサー、断熱補助材、試作治具 | 軽量、絶縁性、切削加工性 | 静電気、発塵、難燃性、温度条件に注意する。 |
| 機械部品 | 断熱スペーサー、軽量芯材、仮設治具 | 断熱性、軽量性、加工性 | 構造強度部材には一般に適さない。圧縮クリープを考慮する。 |
| 医療 | 保温用補助材、梱包材、試作モデル | 軽量、加工性、断熱性 | 滅菌条件、清浄性、薬品接触には注意が必要である。 |
| 食品機械 | 保冷・保温部材、低温室周辺の断熱材 | 低吸水性、断熱性、加工性 | 食品接触、洗浄剤、耐熱性、防火区画を確認する。 |
| 建築・設備 | 床断熱、壁断熱、屋根断熱、基礎断熱、外張断熱 | 低熱伝導率、低吸水性、圧縮強さ、施工性 | 防火、シロアリ、紫外線、接着剤・防水材との相性を確認する。 |
| 土木 | 軽量盛土、擁壁裏込め、道路、橋台背面、凍上対策 | 軽量、低吸水性、圧縮特性、施工性 | 長期荷重、クリープ、浮力、耐薬品性、火気管理が重要である。 |
| 冷凍・冷蔵 | 冷凍倉庫床、冷蔵庫断熱、低温設備断熱 | 低吸水性、低温での断熱性能、圧縮強さ | 床荷重、凍結融解、水蒸気バリア、接合部処理を確認する。 |
| 模型・造形 | 建築模型、モックアップ、芯材、サインベース | 切削性、熱線加工性、軽量性 | 溶剤系塗料、接着剤、熱変形に注意する。 |
関連材料との比較
| 比較材料 | 特徴 | 対象材料との違い |
|---|---|---|
| ポリスチレン | 透明性、成形性、剛性に優れる非晶性樹脂である。 | XPSはポリスチレンを発泡させた材料であり、軽量・断熱性は高いが、強度や表面硬度は低下する。 |
| ビーズ法発泡ポリスチレン | 発泡ビーズを型内成形した軽量発泡体である。 | XPSは押出発泡で連続板状に成形され、一般に低吸水性と圧縮特性に優れる。 |
| 耐衝撃性ポリスチレン | ゴム成分で耐衝撃性を改良したポリスチレンである。 | XPSは発泡体であり、断熱性と軽量性を重視する。HIPSは成形品の耐衝撃性を重視する。 |
| ABS樹脂 | 耐衝撃性、外観、成形性に優れる汎用エンプラ的な材料である。 | ABSは構造部品に使いやすいが、断熱材としての軽量発泡性能はXPSが優れる。 |
| 硬質ウレタンフォーム | 低熱伝導率を持つ硬質発泡断熱材である。 | 硬質ウレタンフォームは断熱性が高いが、吸水、燃焼、施工方法、コストの比較が必要である。XPSは板状施工と低吸水性に強みがある。 |
| フェノールフォーム | 断熱性と耐火性に優れる熱硬化性発泡体である。 | フェノールフォームは高断熱・耐火用途で有利な場合があるが、脆さや吸水条件に注意する。XPSは切断性と耐水性が扱いやすい。 |
| グラスウール | 無機繊維系断熱材であり、不燃性、吸音性に優れる。 | XPSは低吸水性と圧縮強さに優れる。グラスウールは不燃性と吸音性に優れるが、施工時の防湿設計が重要である。 |
| ロックウール | 無機繊維系断熱材で、防火性、吸音性に優れる。 | XPSは水分に強く荷重部位に使いやすい。ロックウールは防火・吸音性を重視する用途に向く。 |
代表的なメーカー
| メーカー | 代表製品・ブランド | 概要 |
|---|---|---|
| デュポン・スタイロ株式会社 | スタイロフォーム | 日本国内で押出法ポリスチレンフォーム断熱材を展開する主要メーカーの一つである。建築用、土木用、冷凍・冷蔵用などのグレードがある。 |
| 株式会社カネカ | カネライトフォーム | 住宅、建築、土木向けのXPS断熱材を展開している。高断熱品や用途別グレードがある。 |
| 株式会社JSP | ミラフォーム、ミラフォームΛ | 発泡プラスチックメーカーであり、建築用XPS断熱材を展開している。高断熱グレードもある。 |
| DuPont | Styrofoam Brand XPS | 海外でXPS断熱材を展開する代表的メーカーである。建築外皮、基礎、屋根、パネル芯材などに用いられる。 |
| Owens Corning | FOAMULAR | 北米を中心にXPS断熱材を展開する代表的メーカーである。圧縮強度別の製品群がある。 |
| Ravago | RAVATHERM XPS | 欧州などでXPS断熱材を展開するメーカーである。屋根、床、基礎、土木用途向け製品がある。 |
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