アクリルメラミン樹脂

材料名アクリルメラミン樹脂
略記号AM、アクリルメラミン、アクリルメラミン塗料樹脂
英語名Acrylic Melamine Resin、Acrylic-Melamine Coating Resin
分類熱硬化性樹脂、塗料用樹脂、アミノ樹脂架橋型アクリル樹脂
構造・主成分水酸基含有アクリル樹脂とメラミン樹脂を加熱硬化させた架橋樹脂
主な用途自動車塗装、金属塗装、家電塗装、建材塗装、工業用焼付塗料

アクリルメラミン樹脂は、水酸基含有アクリル樹脂をメラミン樹脂で架橋した熱硬化性の塗膜形成樹脂である。硬度、光沢、耐候性、耐薬品性、耐汚染性、密着性のバランスが良く、自動車、金属、家電、建材などの焼付塗装に広く使用される。

材料選定では、アクリル樹脂の組成、メラミン樹脂の種類、架橋密度、顔料、添加剤、焼付条件により、硬度、柔軟性、耐溶剤性、耐候性が大きく変化する。用途、基材、塗膜厚、硬化温度、薬品接触条件に応じてグレードを選定する必要がある。

特徴

  • 高光沢で外観性に優れる。
  • 耐候性、耐黄変性、耐汚染性が比較的良好である。
  • メラミン架橋により、硬度、耐溶剤性、耐薬品性を高めやすい。
  • 焼付硬化により緻密な架橋塗膜を形成する。
  • 柔軟性、密着性、耐チッピング性はアクリル骨格、架橋密度、可塑成分により調整される。
  • 酸、アルカリ、強溶剤、高温水、長期浸漬では劣化、白化、膨潤、密着低下が生じる場合がある。
長所
  • 光沢、透明性、色調保持性が良い。
  • 耐候性と耐薬品性のバランスが良い。
  • 焼付塗装により硬い塗膜を得やすい。
  • 金属、プラスチック、建材などの表面保護に適する。
  • 顔料、添加剤、架橋剤により性能設計しやすい。
短所
  • 一般に加熱硬化が必要であり、低温硬化用途には制約がある。
  • 過度な架橋では脆くなり、衝撃性や曲げ追従性が低下する。
  • 強酸、強アルカリ、ケトン系、エステル系、芳香族溶剤には注意が必要である。
  • 塗膜性能は膜厚、焼付温度、焼付時間、下地処理の影響を受ける。
成形加工

アクリルメラミン樹脂は一般的な射出成形材料ではなく、主に塗料・コーティング用途で使用される。加工は塗装、乾燥、焼付硬化が中心となる。

加工方法適正主な製品例
スプレー塗装自動車外装、金属部品、家電外装、工業製品
ロールコートプレコートメタル、建材、鋼板
ディップ塗装小型金属部品、治具、工業部品
焼付硬化高硬度塗膜、耐薬品性塗膜、耐候性塗膜
常温乾燥×〜△通常は架橋不足となりやすく、専用設計が必要である

構造式

アクリルメラミン樹脂は、水酸基含有アクリル樹脂中の水酸基と、メチロール化又はアルキルエーテル化メラミン樹脂が加熱により縮合し、エーテル結合を介して三次元架橋構造を形成する。

水酸基含有アクリル樹脂:
−[CH2−C(R)(COOR')]m−[CH2−C(R)(COO−R''−OH)]n−

メラミン樹脂:
メラミン核 −N−CH2OR

基本硬化反応:
Acrylic−OH + Melamine−CH2OR
        → Acrylic−O−CH2−Melamine + ROH

この架橋構造により、硬度、耐溶剤性、耐薬品性、耐熱性が向上する。一方で、架橋密度が高すぎる場合は柔軟性や耐衝撃性が低下する。

種類

標準アクリルメラミン樹脂
名称標準アクリルメラミン樹脂
構成水酸基含有アクリル樹脂とメラミン樹脂の焼付硬化系
特徴硬度、光沢、耐候性、耐薬品性のバランスが良い
主な用途金属塗装、家電、工業用塗装、一般焼付塗料
特徴
  • もっとも一般的な焼付塗料用樹脂である。
  • 硬度、外観、耐薬品性のバランスを取りやすい。
高耐候アクリルメラミン樹脂
名称高耐候アクリルメラミン樹脂
構成高耐候性アクリル樹脂、メラミン樹脂、紫外線吸収剤、光安定剤
特徴光沢保持性、色調保持性、屋外耐久性が良い
主な用途自動車外装、建材外装、屋外金属部品
特徴
  • 屋外での変色、チョーキング、光沢低下を抑えやすい。
  • 長期屋外用途では塗膜厚、顔料、下塗りとの組合せが重要である。
高硬度アクリルメラミン樹脂
名称高硬度アクリルメラミン樹脂
構成高水酸基価アクリル樹脂と高架橋型メラミン樹脂
特徴鉛筆硬度、耐擦傷性、耐溶剤性に優れる
主な用途家電外装、金属パネル、耐擦傷コーティング
特徴
  • 硬い塗膜を形成しやすい。
  • 過度な硬化では割れ、密着低下、曲げ追従性低下に注意する。
柔軟性アクリルメラミン樹脂
名称柔軟性アクリルメラミン樹脂
構成柔軟性アクリル樹脂、低架橋型メラミン樹脂、可とう性成分
特徴曲げ性、密着性、耐チッピング性を重視する
主な用途自動車部品、薄板金属、曲げ加工材、プレコート鋼板
特徴
  • 硬度よりも曲げ追従性、密着性を重視したグレードである。
  • 耐溶剤性は高硬度グレードよりやや低下する場合がある。

代表的な物性値又は機械的性質

性質単位標準グレード高硬度グレード高耐候グレード柔軟性グレード
外観透明〜淡黄色透明〜淡黄色透明〜淡黄色透明〜淡黄色
比重1.15〜1.251.18〜1.281.15〜1.251.10〜1.22
鉛筆硬度H〜2H2H〜4HH〜3HHB〜H
引張強さMPa30〜6040〜7030〜6020〜45
破断伸び%3〜101〜53〜1010〜30
ガラス転移温度60〜10080〜12070〜11030〜80
耐熱性120〜150130〜160120〜150100〜140
耐溶剤性○〜◎△〜○
耐候性

耐薬品性

アクリルメラミン樹脂は、架橋塗膜としては水、アルコール、油、弱酸、弱アルカリに比較的安定である。ケトン、エステル、芳香族炭化水素、強酸、強アルカリでは膨潤、白化、軟化、密着低下が起こる場合がある。

薬品・溶剤耐性備考
常温では比較的安定であるが、高温水、長期浸漬では白化や密着低下に注意する。
弱酸○〜△短時間では比較的安定であるが、強酸や高温条件では劣化する。
弱アルカリ△〜○アルカリ洗浄剤では光沢低下や白化に注意する。
アルコールエタノール、IPAには比較的安定である。
ケトン△〜×アセトン、MEKでは軟化、膨潤、塗膜損傷が起こりやすい。
エステル△〜×酢酸エチル、酢酸ブチルでは塗膜が侵されやすい。
芳香族溶剤トルエン、キシレンでは膨潤や光沢変化に注意する。
油・燃料○〜△短時間接触では比較的良好であるが、燃料、添加剤、温度で変化する。

更に詳しくはプラスチックの耐薬品性一覧表を参照。

SP値(溶解度パラメータ)

アクリルメラミン樹脂のSP値は、アクリル樹脂組成、メラミン架橋密度、顔料、添加剤、硬化条件により変動する。塗膜状態では単純な溶解よりも、膨潤、白化、軟化、密着低下として現れることが多い。

SP値(溶解度パラメータ)
項目SP値(δ)MPa1/2備考
アクリルメラミン樹脂(標準)19.5〜21.5硬度、耐候性、耐薬品性のバランスが良い。
アクリルメラミン樹脂(高硬度)20.0〜22.5架橋密度が高く、耐溶剤性は比較的良好である。
アクリルメラミン樹脂(高耐候)19.0〜21.5屋外耐候性を重視したグレードである。
アクリルメラミン樹脂(柔軟性)18.5〜20.5柔軟性を高めた設計で、強溶剤にはやや弱くなる場合がある。
顔料入りアクリルメラミン塗膜19.0〜22.0顔料、フィラー、添加剤により見かけの耐溶剤性が変化する。
溶解性の目安
SP値差溶解性・膨潤性の目安
0〜2膨潤、軟化、溶解が起こりやすい。
2〜5膨潤、白化、光沢低下に注意する。
5以上比較的影響は小さいが、温度、応力、接触時間により劣化する場合がある。
SP値から見た耐溶剤性
SP値から見た耐溶剤性
薬品・溶剤SP値(δ)MPa1/2SP値差評価備考
47.927.4SP値差は大きいが、高温水や長期浸漬では白化、密着低下に注意する。
メタノール29.79.2短時間では比較的安定である。
エタノール26.05.5一般的な清拭用途では比較的良好である。
IPA(イソプロパノール)23.53.0○〜△長時間接触では光沢変化や軟化に注意する。
アセトン20.00.5×SP値が近く、塗膜の軟化、膨潤、溶解が起こりやすい。
MEK(メチルエチルケトン)19.01.5×塗膜を侵しやすい代表的溶剤である。
酢酸エチル18.61.9×エステル系溶剤であり、膨潤、白化、密着低下に注意する。
酢酸ブチル17.43.1△〜×塗料用溶剤として使用されるため、未硬化又は硬化不足塗膜では特に注意する。
トルエン18.22.3芳香族溶剤であり、膨潤や光沢変化を起こす場合がある。
キシレン18.02.5高温、長時間接触では塗膜が軟化しやすい。
ガソリン14〜164.5〜6.5○〜△短時間では比較的良好であるが、添加剤や長期接触に注意する。
DMF(ジメチルホルムアミド)24.84.3△〜×極性が高く、架橋塗膜にも浸透しやすい。
NMP(N-メチル-2-ピロリドン)23.12.6×強い膨潤、軟化を生じる可能性が高い。
水酸化ナトリウム水溶液47付近26.5SP値差は大きいが、アルカリ劣化や加水分解に注意する。
硫酸35以上14.5以上×強酸により塗膜劣化、変色、密着低下が起こる。

※SP値差は、アクリルメラミン樹脂(標準)の中央値20.5MPa1/2を基準として算出している。

◎:非常に良好 ○:概ね良好 △:注意が必要 ×:不適

特に注意する溶剤は、アセトン、MEK、酢酸エチル、酢酸ブチル、NMP、DMF、トルエン、キシレンである。これらは塗膜の軟化、膨潤、白化、光沢低下、密着低下を起こしやすいため、実使用条件で確認する必要がある。

製法

アクリルメラミン樹脂は、まず水酸基含有アクリル樹脂をラジカル重合で製造し、これにメラミン樹脂を配合する。塗装後、加熱により水酸基とメラミン樹脂のアルコキシメチル基が縮合し、架橋塗膜を形成する。

アクリルモノマー + 水酸基含有アクリルモノマー
        → 水酸基含有アクリル樹脂

水酸基含有アクリル樹脂 + アルキルエーテル化メラミン樹脂
        → アクリルメラミン架橋樹脂 + アルコール
  • アクリル樹脂の水酸基価が高いほど架橋点が増え、硬度と耐溶剤性が向上しやすい。
  • メラミン樹脂量が多いほど硬化性は高まるが、脆さや黄変に注意する。
  • 酸触媒、焼付温度、焼付時間により硬化度が変化する。

詳細な利用用途

  • 自動車外装用トップコート、クリヤーコート
  • 自動車部品、二輪部品、金属外装部品
  • 家電外装、照明器具、事務機器
  • 建材用塗装鋼板、アルミ建材、金属パネル
  • 工業用焼付塗料、機械部品、金属容器
  • 耐汚染性、耐薬品性、耐擦傷性を必要とするコーティング

関連材料との比較

比較材料特徴アクリルメラミン樹脂との違い
アクリル樹脂透明性、耐候性に優れる熱可塑性樹脂である。アクリルメラミン樹脂は、アクリル樹脂をメラミンで架橋した熱硬化性塗膜であり、耐溶剤性と硬度が高い。
メラミン樹脂硬度、耐熱性、耐薬品性に優れる熱硬化性樹脂である。アクリルメラミン樹脂では、メラミン樹脂は主に架橋剤として機能する。
エポキシ樹脂密着性、防食性、耐薬品性に優れる。エポキシ樹脂は防食性に優れるが、屋外耐候性ではアクリルメラミン樹脂が有利な場合が多い。
ポリウレタン樹脂柔軟性、耐摩耗性、低温特性に優れる。ポリウレタン樹脂は柔軟性に優れ、アクリルメラミン樹脂は焼付硬化による硬度と外観性に優れる。
ポリエステル樹脂塗料、成形材料、繊維、フィルムなどに使用される。ポリエステルメラミン塗膜は加工性に優れる場合があり、アクリルメラミン塗膜は耐候性、光沢保持性に優れる場合が多い。
ポリビニリデンフルオライド耐候性、耐薬品性に優れるフッ素樹脂である。PVDF系塗膜は耐候性と耐薬品性に非常に優れるが、アクリルメラミン樹脂は外観、硬度、コストバランスに優れる。

代表的なメーカー

メーカー主な関連製品・分野備考
DICアクリル樹脂、塗料用樹脂、工業用コーティング材料焼付塗料、工業塗料向け樹脂を扱う。
三菱ケミカルアクリル系材料、コーティング関連材料アクリル樹脂関連材料を展開する。
日本ペイント自動車塗料、工業用塗料アクリルメラミン系を含む焼付塗料を扱う。
関西ペイント自動車塗料、工業用塗料、建材塗料金属、車両、建材向け塗料を展開する。
BASF塗料用樹脂、添加剤、架橋剤自動車、工業塗料向け材料を扱う。
allnexアクリル樹脂、メラミン架橋剤、塗料用樹脂工業用コーティング樹脂の代表的メーカーである。


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