概要
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 材料名 | フッ素ゴム |
| 略記号 | FKM(ASTM D1418)、FPM(ISO 1629で用いられる表記) |
| IUPAC | 単一化合物ではなく、フッ化ビニリデンを主要構成単位とするフッ素系共重合エラストマー群である。 |
| 英語名 | Fluoroelastomer、Fluorocarbon rubber |
| 日本語名 | フッ素ゴム、フルオロエラストマー、フルオロカーボンゴム |
| 分類 | 合成ゴム、フッ素系エラストマー、耐熱・耐油・耐薬品性ゴム |
| プラスチック分類 | プラスチックではなく高機能合成ゴムに分類される。熱硬化性エラストマーとして使用されることが多い。 |
| 化学式または代表構造 | VDF/HFP系:-[CH2-CF2]m-[CF2-CF(CF3)]n- |
| CAS No. | FKM全体を一つのCAS No.で表すことは困難である。共重合組成、硬化点モノマー及び製品形態により異なる。 |
| 構造・主成分 | VDF、HFP、TFE、PMVE等の共重合体。実用品は加硫剤、受酸剤、充填材、加工助剤等を含む配合物である。 |
| 主な用途 | Oリング、オイルシール、ガスケット、ダイヤフラム、ホース、燃料系シール、半導体・化学装置用シール、電線被覆。 |
フッ素ゴムは、炭素-フッ素結合を多く含む高機能合成ゴムであり、一般に耐熱性、耐油性、耐燃料性、耐候性及び低ガス透過性に優れる。代表的なFKMはフッ化ビニリデン(VDF)とヘキサフルオロプロピレン(HFP)の共重合体であり、テトラフルオロエチレン(TFE)やパーフルオロメチルビニルエーテル(PMVE)等を共重合して性能を調整する。
実際のシール材はベースポリマー単体ではなく、カーボンブラック、受酸剤、加硫剤、加工助剤等を含む配合物である。したがって、同じFKM表記でも、フッ素含有率、モノマー組成、加硫系、硬度、充填材、ポストキュア条件により、低温性、圧縮永久ひずみ、耐薬品性及び抽出特性が大きく異なる。
材料選定では、薬品名だけでなく、濃度、温度、圧力、接触時間、応力、動静区分、シール形状、相手材表面、減圧速度及び要求寿命を確認する必要がある。特にケトン、エステル、エーテル、アミン、アンモニア、強アルカリ、熱水及び蒸気では、標準FKMを一律に適用してはならない。
特徴
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 長所 | 耐熱性、耐油性、耐燃料性、耐候性、耐オゾン性、低ガス透過性に優れる。高温の鉱物油、燃料、芳香族炭化水素に対して有力である。 |
| 短所 | 低温柔軟性は一般的なNBR、シリコーンゴム等より劣る場合がある。ケトン、エステル、エーテル、低分子有機酸、アミン、アンモニア、強アルカリ、熱水・蒸気には標準FKMが不適となる場合がある。 |
| 外観 | 未配合ポリマーは乳白色から淡色のガム状である。実用配合物はカーボンブラックにより黒色が多いが、着色配合も存在する。 |
| 耐熱性 | 一般的な連続使用温度の目安は約200℃であり、配合・加硫系により230℃級まで使用される場合がある。短時間ではさらに高温に耐えるグレードもある。 |
| 耐薬品性 | 油、燃料、脂肪族・芳香族炭化水素、多くの無機酸に良好である。一方、極性溶剤、塩基性薬品、蒸気は組成及び加硫系への依存が大きい。 |
| 加工性 | 圧縮、トランスファー、射出、押出が可能である。混練、一次加硫、二次加硫、金型汚染、離型、収縮管理が重要である。 |
| 分類上の注意 | FKMは材料群であり、二元系、三元系、低温系、耐塩基系、過酸化物加硫系等を同一性能として扱わない。FFKM及びFEPMは別分類である。 |
構造式
代表的なVDF/HFP二元共重合体の繰返し構造と、主要なモノマー及び組成区分を以下に示す。モノマー配列は統計的であり、実際のポリマーには硬化点モノマー、分岐、末端基等が含まれる。

| 構成要素 | 化学式・役割 |
|---|---|
| フッ化ビニリデン(VDF) | CH2=CF2。FKMにゴム弾性、架橋反応性及び加工性を与える主要モノマーである。 |
| ヘキサフルオロプロピレン(HFP) | CF2=CF-CF3。結晶化を抑制し、フッ素含有率及び耐薬品性を調整する。 |
| テトラフルオロエチレン(TFE) | CF2=CF2。フッ素含有率、耐熱性、耐薬品性、燃料透過性を調整する。 |
| パーフルオロメチルビニルエーテル(PMVE) | CF2=CF-O-CF3。低温柔軟性や極性流体適性を調整する。 |
| 硬化点モノマー | 臭素、ヨウ素又はニトリル等を含む少量共重合成分。過酸化物加硫等の架橋点を導入する。 |
種類・代表グレード
| 種類・グレード区分 | 主成分又は特徴 | 長所 | 短所 | 主な用途 |
|---|---|---|---|---|
| Type 1:VDF/HFP二元系 | フッ素含有率約66質量%級。代表的な汎用FKM。 | 耐熱・耐油・加工性のバランスが良い。 | 低温性、含酸素燃料、塩基・蒸気に限界がある。 | 一般Oリング、オイルシール、ガスケット |
| Type 2:VDF/HFP/TFE三元系 | フッ素含有率約68~71質量%級。 | 燃料・溶剤透過性が低く、耐薬品性を高めやすい。 | 低温柔軟性が低下しやすい。 | 燃料系シール、化学装置 |
| Type 3:VDF/TFE/PMVE系 | 低温柔軟性と極性流体への適性を調整した系。 | 低温シール性、含酸素燃料への適性を得やすい。 | 一般系より高価で、配合依存性が大きい。 | 低温燃料系、航空宇宙 |
| Type 5:VDF/HFP/TFE/PMVE系 | 四元系。耐薬品性、低温性、加工性を調整。 | 性能バランスを広く設計できる。 | グレード差が大きく、一般化しにくい。 | 高機能シール、燃料・化学用途 |
| 過酸化物加硫FKM | 硬化点モノマーを含むポリマーを過酸化物で架橋。 | 蒸気、酸、燃料、薬品への耐性を改善できる場合がある。 | ポストキュア条件と共架橋剤管理が重要。 | 高温水、薬液、燃料系 |
| ビスフェノール加硫FKM | 代表的な商用加硫系。 | 圧縮永久ひずみ、加工性、金型成形性のバランスが良い。 | 塩基、蒸気、特定薬品では過酸化物系が有利な場合がある。 | 一般シール、オイルシール |
| 低温グレード | PMVE等の導入でTgを低下。 | -30℃級以下のシール性を狙える。 | 耐熱・耐薬品性とのトレードオフがある。 | 寒冷地、自動車、航空宇宙 |
| 食品・医療・高純度グレード | 配合剤、抽出物、金属成分を管理。 | 低抽出、清浄性、規制適合を狙える。 | 適合は特定グレード・色・製造拠点単位で確認が必要。 | 食品機械、製薬、半導体 |
成形加工
| 加工方法 | 適性 | 理由・主な注意点 |
|---|---|---|
| 圧縮成形 | ◎ | FKMの代表的加工法。厚肉品、Oリング、ガスケットに適する。加硫時間とエア抜きを管理する。 |
| トランスファー成形 | ◎ | 複雑形状やインサート成形に適する。スコーチ、ランナー滞留に注意する。 |
| 射出成形 | ○ | 射出対応コンパウンドで量産性が高い。樹脂ではなくゴム射出条件で管理する。 |
| 押出成形 | ○ | ホース、チューブ、電線被覆に適する。押出安定性と連続加硫設備が必要である。 |
| ブロー成形 | × | 一般的な熱可塑性ブロー成形には適さない。 |
| 真空成形・圧空成形 | × | 加硫ゴムであり、一般的な熱可塑シート成形には適さない。 |
| カレンダー加工 | ○ | シートや積層材に利用できる。粘着性、厚み、気泡を管理する。 |
| 切削加工 | △ | 加硫ゴムの精密切削は変形しやすい。研削、冷却、治具固定が必要である。 |
| 接着・ライニング | △ | 低表面エネルギーと配合剤の影響を受ける。専用プライマー、金属接着系、表面処理を使用する。 |
| 3Dプリント | △ | 一般的ではない。特殊な光硬化・ペースト・熱可塑性フッ素エラストマー系に限定される。 |
代表的な成形条件
| 項目 | 単位 | 一般的な目安 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 予備乾燥 | - | 通常不要~必要に応じ実施 | コンパウンドの保管状態、吸湿、異物混入、スコーチ性を確認する。 |
| コンパウンド予熱 | ℃ | 40~80 | 成形流動性改善に用いる場合があるが、スコーチに注意する。 |
| 金型温度 | ℃ | 160~190 | 加硫系、製品厚さ、射出・圧縮方式により調整する。 |
| 一次加硫時間 | min | 3~20 | 肉厚、金型温度、加硫曲線により決定する。 |
| 射出圧力 | MPa | 50~150 | ゴム射出機及び製品形状により変動する。 |
| 二次加硫温度 | ℃ | 180~250 | 段階昇温を採用する場合がある。配合及び要求特性に従う。 |
| 二次加硫時間 | h | 4~24 | 大型品、低抽出用途、圧縮永久ひずみ要求で長くなる場合がある。 |
| 成形収縮率 | % | 1.5~4.0 | 流動方向、肉厚、ポストキュア、硬度、金型拘束で変わる。 |
| 推奨肉厚 | mm | グレード依存 | 厚肉では内部加硫、ボイド、温度勾配を確認する。 |
| 滞留時間 | - | 最小化 | 高温滞留によるスコーチ、ガス、金型汚染を避ける。 |
上記は材料群としての一般的な目安である。実際にはコンパウンドメーカーの加硫曲線、ムーニースコーチ、最適加硫時間、金型構造及び製品厚さに基づいて設定する。
代表的な物性値又は機械的性質
以下は非発泡の加硫FKM配合物についての代表範囲である。ベースポリマー単体、未加硫コンパウンド、特定メーカーの特定グレードを混在させていない。数値は硬度、充填材、加硫系、二次加硫、試験規格及び温度により変動する。
物理的性質
| 項目 | 単位 | 代表値 | 代表範囲 | 試験規格 | 試験条件・材料状態 | 備考 | 信頼度 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 密度 | g/cm3 | 1.75 | 1.70~1.90 | ASTM D792相当 | 23℃、加硫配合物 | 充填材・フッ素含有率で変動 | B |
| 比重 | 無次元 | 1.80 | 1.70~1.90 | ASTM D297相当 | 23℃、加硫配合物 | 未配合ポリマーではなく実用配合物の目安 | B |
| 吸水率・24時間 | % | 0.2 | 0.1~0.5 | 代表値、規格不明 | 23℃水、24 h | 配合及び加硫系依存 | C |
| 硬度 | Shore A | 75 | 55~90 | ASTM D2240相当 | 23℃ | シール材では70~90が多い | B |
| 成形収縮率 | % | 2.5 | 1.5~4.0 | 金型成形目安 | 一次・二次加硫後 | 配合、肉厚、金型温度で変動 | C |
| 線膨張係数 | 10-5/K | 16 | 12~20 | 代表値、規格不明 | 加硫配合物 | 金属より大きく拘束設計が必要 | C |
| ガス透過性 | - | データなし | グレード依存 | - | - | 一般に他の多くのゴムより低い | C |
機械的性質
| 項目 | 単位 | 代表値 | 代表範囲 | 試験規格 | 試験条件・材料状態 | 備考 | 信頼度 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 引張強さ・破断 | MPa | 12 | 8~20 | ISO 37又はASTM D412相当 | 23℃、加硫配合物 | 配合、硬度、加硫条件で変動 | B |
| 引張破断伸び | % | 200 | 100~300 | ISO 37又はASTM D412相当 | 23℃、加硫配合物 | 高硬度・高充填で低下 | B |
| 100%引張応力 | MPa | 5 | 3~10 | ISO 37又はASTM D412相当 | 23℃ | 硬度と架橋密度に依存 | B |
| 引張弾性率 | GPa | データなし | 一般化困難 | - | - | ゴムでは100%引張応力等を用いる方が実務的 | - |
| 引裂強さ | kN/m | 25 | 15~40 | ISO 34又はASTM D624相当 | 23℃ | 配合及び試験片形状依存 | B |
| 圧縮永久ひずみ | % | 20 | 10~40 | ASTM D395 Method B相当 | 200℃×70 hの目安 | 断面、圧縮率、加硫系で大幅変動 | C |
| 反発弾性 | % | 20 | 10~35 | 代表値、規格不明 | 23℃ | 一般に低~中程度 | C |
| アイゾット衝撃強さ | kJ/m2 | 該当なし | 該当なし | - | - | 加硫ゴムでは通常、引裂・反発・低温試験を用いる | - |
熱的性質
| 項目 | 単位 | 代表値 | 代表範囲 | 試験規格 | 試験条件・材料状態 | 備考 | 信頼度 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| ガラス転移温度 | ℃ | -18 | -30~-5 | DSC又はDMA相当 | ベースポリマー | 低温系ではさらに低い場合がある | B |
| 融点 | ℃ | 該当なし | 該当なし | - | 架橋後 | 熱硬化性エラストマーとして明確な融点を持たない | - |
| 連続使用温度 | ℃ | 200 | 180~230 | 長期耐熱目安 | 空気中 | 媒体、応力、寿命基準で変わる | B |
| 短時間耐熱温度 | ℃ | 250 | 230~300 | 短時間目安 | 空気中 | 時間と物性保持基準を明記して確認 | C |
| 低温使用限界 | ℃ | -20 | -35~-10 | シール用途目安 | 無負荷~動的 | 低温専用グレードは-40℃級も存在 | B |
| 熱伝導率 | W/(m・K) | 0.21 | 0.18~0.25 | 代表値、規格不明 | 23℃、加硫配合物 | 充填材で変動 | B |
| HDT・0.45 MPa | ℃ | 該当なし | 該当なし | - | - | 熱可塑性樹脂用指標であり加硫ゴムには通常適用しない | - |
| ビカット軟化温度 | ℃ | 該当なし | 該当なし | - | - | 加硫ゴムには通常適用しない | - |
電気的性質・燃焼性
| 項目 | 単位 | 代表値 | 代表範囲 | 試験規格 | 試験条件・材料状態 | 備考 | 信頼度 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 体積抵抗率 | Ω・cm | 1×1013 | 1×1010~1×1015 | ASTM D257相当 | 23℃、乾燥 | カーボンブラック配合では大幅低下 | C |
| 絶縁破壊強さ | kV/mm | 15 | 10~25 | IEC 60243相当 | 厚さ依存 | 配合及び電極条件で変動 | C |
| 比誘電率・1 kHz | 無次元 | 7 | 5~12 | IEC 60250相当 | 23℃、1 kHz | フッ素含有率・充填材依存 | C |
| 誘電正接・1 kHz | 無次元 | 0.03 | 0.01~0.08 | IEC 60250相当 | 23℃、1 kHz | 周波数・温度依存 | C |
| UL 94燃焼性 | 等級 | グレード依存 | データなし | UL 94 | 厚さ・色依存 | 自己消火性傾向はあるが材料群として等級を断定しない | - |
| 限界酸素指数 | % | データなし | グレード依存 | ISO 4589相当 | - | 配合物ごとに確認 | - |
寸法精度・設計特性
| 設計項目 | 一般的傾向 | 設計上の注意 |
|---|---|---|
| 成形収縮 | 一般の熱可塑性樹脂より大きく、ポストキュアでも追加収縮する。 | 金型寸法は配合物、硬度、加硫条件、製品肉厚ごとに補正する。 |
| 熱膨張 | 金属より大きい。 | 溝充填率、熱膨張余裕、押出し隙間、バックアップリングを検討する。 |
| 圧縮永久ひずみ | 高温・長時間で増加する。 | 短時間引張物性ではなく、実温度・実媒体で圧縮永久ひずみを評価する。 |
| 低温硬化 | Tg付近で急速に弾性復元が低下する。 | TR10、低温圧縮永久ひずみ、リーク試験を使用する。 |
| 急減圧損傷 | 高圧ガスが内部に溶解し、減圧時にブリスターや亀裂を生じる場合がある。 | 減圧速度、断面径、ガス種、圧力、温度を含むAED/RGD試験を行う。 |
| 設計許容応力 | 短時間の引張強さをそのまま使用できない。 | 温度、時間、クリープ、応力緩和、薬品膨潤を含む安全率を設定する。 |
比較用評価スコア
| 評価項目 | スコア | 評価理由 |
|---|---|---|
| 引張強度 | 3 | 一般的な加硫ゴムとして標準~良好である。 |
| 剛性 | 2 | 柔軟なエラストマーであり構造剛性用途ではない。 |
| 衝撃強度 | 4 | ゴム弾性により衝撃吸収性を持つが、低温では硬化する。 |
| 耐熱性 | 5 | 一般ゴムの中で非常に優れる。 |
| 低温特性 | 2 | 標準FKMは弱点である。低温専用グレードで改善可能。 |
| 耐薬品性 | 4 | 油・燃料・炭化水素・多くの酸に優れるが、ケトン・エステル・塩基等に弱い。 |
| 耐候性 | 5 | オゾン、紫外線、酸化老化に非常に優れる。 |
| 耐加水分解性 | 3 | 常温水は良好だが高温水・蒸気はグレード依存。 |
| 寸法安定性 | 4 | 低膨潤媒体では良好だが、熱膨張と圧縮永久ひずみに注意。 |
| 低吸水性 | 4 | 常温吸水は小さい。 |
| 摺動性 | 3 | シール用途には適するが、摩耗は配合・潤滑条件依存。 |
| 電気絶縁性 | 3 | 絶縁配合は可能だが、カーボンブラック配合では抵抗率が低下。 |
| 難燃性 | 4 | 自己消火性傾向を持つがUL等級はグレード単位で確認。 |
| 透明性 | 1 | 一般配合物は黒色又は不透明。 |
| 成形加工性 | 3 | ゴム成形技術が必要で、ポストキュアを伴う場合が多い。 |
| 切削加工性 | 2 | 弾性変形により精密切削が難しい。 |
| 接着性 | 2 | 専用接着剤、プライマー、表面処理が必要。 |
| リサイクル性 | 1 | 架橋ゴムでありマテリアルリサイクルは限定的。 |
| 価格優位性 | 1 | 高価格~極めて高価格の高機能ゴムである。 |
耐薬品性
以下は一般的な加硫FKMの目安である。薬品濃度、温度、接触時間、圧力、応力、加硫系、硬度、配合剤及び製品断面により評価は変化する。特に高温、蒸気、混合溶剤、燃料添加剤、酸化剤及び動的シールでは、実部品による浸漬・圧縮・リーク試験を行う必要がある。
| 薬品分類・薬品名 | 濃度 | 温度 | 接触時間・方法 | 応力 | 評価 | 主な劣化形態 | 備考 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 水 | 純水 | 23℃ | 168 h浸漬 | 無 | ○ | 標準FKMでは概ね安定 | 熱水・蒸気は別評価とする。 |
| 温水・熱水 | 純水 | 80~100℃ | 168 h以上 | 無 | △ | 膨潤、圧縮永久ひずみ、加水分解性配合剤の影響 | 過酸化物加硫・耐蒸気グレードを検討。 |
| 水蒸気 | 飽和蒸気 | 150~190℃ | 70 h以上 | 有・無 | △ | 体積変化、強度低下 | 標準FKMは不向きな場合が多い。専用グレードで実測する。 |
| 塩酸 | 10~37% | 23~80℃ | 168 h | 無 | ○ | 一般に影響小 | 高温濃酸は加硫系と配合を確認。 |
| 硫酸 | 10~98% | 23~80℃ | 168 h | 無 | ○ | 一般に影響小 | 発煙硫酸、高温では個別確認。 |
| 硝酸 | 10~60% | 23~80℃ | 168 h | 無 | △ | 酸化、硬化、体積変化 | 濃度・温度依存が大きい。 |
| 酢酸 | 氷酢酸を含む | 23℃ | 70~168 h | 無 | × | 著しい膨潤を生じる場合がある | 低分子有機酸は標準FKMの弱点。 |
| 水酸化ナトリウム | 10~20% | 23~80℃ | 168 h | 無 | △ | 脱フッ化水素、架橋劣化の懸念 | 耐塩基専用FKM又はFEPM、FFKMを検討。 |
| アンモニア水・アミン | 希薄~濃厚 | 23~80℃ | 168 h | 無 | × | 塩基攻撃、膨潤、硬化 | 標準FKMには一般に不適。 |
| メタノール | 原液 | 23~40℃ | 168 h | 無 | △ | 膨潤、燃料混合系で体積変化 | 低温・含酸素燃料対応グレードを選定。 |
| エタノール・IPA | 原液 | 23℃ | 168 h | 無 | ○ | 比較的安定だが抽出・膨潤の可能性 | 高温・燃料混合では要確認。 |
| グリセリン | 原液 | 23~80℃ | 168 h | 無 | ○ | 一般に影響小 | 高温では配合剤抽出を確認。 |
| MMB等グリコールエーテル | 原液 | 23℃ | 168 h | 無 | △ | 膨潤の可能性 | エーテル・アルコール双方の相互作用を確認。 |
| アセトン・MEK | 原液 | 23℃ | 168 h | 無 | × | 著しい膨潤、軟化 | 標準FKMの代表的な不適溶剤。 |
| 酢酸エチル | 原液 | 23℃ | 168 h | 無 | × | 著しい膨潤 | エステル類は一般に不適。 |
| ジエチルエーテル・THF | 原液 | 23℃ | 168 h | 無 | × | 膨潤、軟化 | エーテル類はグレード差を確認。 |
| トルエン・キシレン | 原液 | 23℃ | 168 h | 無 | ◎ | 一般に小さい体積変化 | 高温・応力下では確認。 |
| ヘキサン・ヘプタン | 原液 | 23℃ | 168 h | 無 | ◎ | 一般に影響小 | 低分子炭化水素の透過は別評価。 |
| 塩化メチレン・クロロホルム | 原液 | 23℃ | 168 h | 無 | △ | 膨潤の可能性 | ハロゲン化溶剤は種類別に確認。 |
| ガソリン・軽油 | 市販燃料 | 23~80℃ | 168 h以上 | 有・無 | ◎ | 耐燃料性に優れる | エタノール、メタノール、バイオ成分混合率で変わる。 |
| 鉱物油・潤滑油 | 市販品 | 100~200℃ | 168 h以上 | 有 | ◎ | 耐油性に優れる | 添加剤、酸化油、硫黄化合物を確認。 |
| リン酸エステル作動油 | 市販品 | 23~120℃ | 168 h | 有 | △ | 膨潤の可能性 | EPDM、専用FKM等と比較する。 |
| グリコール系ブレーキ液 | 市販品 | 23~120℃ | 168 h | 有 | × | 膨潤、軟化 | EPDMが一般に優位。 |
| 次亜塩素酸ナトリウム | 0.05~5% | 23~60℃ | 168 h | 無 | △ | 酸化、硬化、配合剤劣化 | 有効塩素、pH、温度で確認。 |
| 過酸化水素 | 3~35% | 23~60℃ | 168 h | 無 | △ | 酸化劣化の可能性 | 高濃度・高温ではFFKM等を検討。 |
| 海水・塩水 | 3.5%程度 | 23~80℃ | 168 h以上 | 無 | ○ | 一般に影響小 | 金属接着界面や補強材腐食を確認。 |
SP値(溶解度パラメータ)
FKMのHildebrand型SP値は共重合組成及び換算方法により差があり、代表範囲は約17~20 MPa1/2、比較用代表値は18.6 MPa1/2程度を目安とする。ただし、FKMは架橋ゴムであり、溶解よりも膨潤、可塑化、添加剤抽出、架橋劣化又は化学反応として現れる。SP値だけで耐薬品性を決定してはならない。
溶解性の目安
| SP値差 Δδ | 溶解・膨潤の目安 | 判定 |
|---|---|---|
| 0~2 | 膨潤・軟化しやすい | × |
| 2~5 | 条件により膨潤する | △ |
| 5~8 | 短時間接触では比較的安定 | ○ |
| 8以上 | 溶解・膨潤しにくい | ◎ |
SP値から見た耐溶剤性
| 薬品名 | 薬品のSP値 MPa1/2 | FKMとの差 | SP差による判定 | 実務上の注意 |
|---|---|---|---|---|
| n-ヘキサン | 14.9 | 3.7 | △ | 実際のFKMは炭化水素に良好であり、SP差だけでは過小評価となる。 |
| トルエン | 18.2 | 0.4 | × | SP上は近いが、架橋FKMでは一般に耐性が高い。 |
| アセトン | 20.0 | 1.4 | × | 実際にも著しい膨潤を生じやすい。 |
| MEK | 19.0 | 0.4 | × | 実際にも不適となりやすい。 |
| 酢酸エチル | 18.6 | 0.0 | × | 実際にもエステル類は膨潤しやすい。 |
| メタノール | 29.6 | 11.0 | ◎ | SP差は大きいが、低分子・極性・燃料混合で膨潤する場合がある。 |
| エタノール | 26.0 | 7.4 | ○ | 一般に比較的良好だが高温・混合燃料で確認する。 |
| IPA | 23.5 | 4.9 | △ | 短時間は概ね良好な場合が多い。 |
| 水 | 47.9 | 29.3 | ◎ | 常温水には良好でも高温蒸気は別機構で劣化し得る。 |
| ジクロロメタン | 20.3 | 1.7 | × | ハロゲン化溶剤では分子サイズと拡散性も重要。 |
SP差による判定と実際の耐薬品性が一致しない例がある。トルエンはFKMのSP値に近いが、架橋構造と高フッ素化により一般に良好な耐性を示す。一方、メタノールはSP差が大きくても、低分子極性液体として燃料混合系で膨潤を生じる場合がある。Hansen溶解度パラメータ、分子体積、拡散係数、架橋密度、化学反応性及び温度を併せて評価する。
環境応力・シール故障モード
| 劣化現象 | 主な原因 | 発生しやすい条件 | 影響 | 予防策 | 推奨確認試験 |
|---|---|---|---|---|---|
| 膨潤・軟化 | ケトン、エステル、エーテル等の浸透 | 高温、長時間、低架橋密度 | 寸法増加、押出し、硬度低下、リーク | 薬液適合グレード又はFFKM等へ変更 | 実液浸漬、体積変化、硬度、引張保持率 |
| 硬化・脆化 | 熱酸化、酸化剤、過度のポストキュア | 高温空気、酸化性薬品 | 亀裂、シール力低下 | 耐熱配合、温度低減、寿命交換 | 熱老化、圧縮永久ひずみ、亀裂観察 |
| 架橋劣化 | 強塩基、アミン、アンモニア | 高温塩基性環境 | 軟化、表面荒れ、強度低下 | 耐塩基FKM、FEPM、FFKMを比較 | 浸漬、FTIR、質量・体積、圧縮試験 |
| 蒸気劣化 | 高温水、加水分解性配合剤、脱フッ化反応 | 150℃以上の蒸気、圧力変動 | 膨潤、強度低下、永久ひずみ | 過酸化物加硫耐蒸気グレードを選定 | 蒸気曝露、圧縮永久ひずみ、リーク |
| 急減圧損傷 | 高圧ガスの溶解と急速脱離 | CO2、天然ガス、高圧、厚肉断面 | 内部亀裂、ブリスター | RGD対応配合、断面最適化、減圧制御 | NORSOK M-710、ISO 23936等を参考にAED試験 |
| 接着界面剥離 | 金属表面汚染、プライマー不適、熱膨張差 | 高温薬液、繰返し変形 | シール剥離、腐食進行 | 表面処理、専用接着系、界面設計 | 剥離強度、熱サイクル、薬液浸漬 |
| アウトガス・抽出 | 残留加硫物、加工助剤、低分子分 | 真空、高温、高純度工程 | 汚染、成膜不良、分析バックグラウンド | 高純度配合、十分なポストキュア、洗浄 | TML/CVCM、GC-MS、抽出物、真空ベーク |
製法
| 工程 | 内容 |
|---|---|
| 原料 | VDF、HFP、TFE、PMVE、硬化点モノマー、連鎖移動剤、開始剤、乳化剤等。 |
| 重合方法 | 一般に水系乳化重合又は懸濁重合を用い、圧力、温度、モノマー供給比、分子量、末端基を制御する。 |
| 回収 | 得られたラテックスを凝析し、洗浄、脱水、乾燥してベースポリマーを得る。残留乳化剤、金属イオン、低分子分を用途に応じて管理する。 |
| 配合・コンパウンド | カーボンブラック、シリカ、酸化マグネシウム、水酸化カルシウム等の受酸剤、加硫剤、共架橋剤、加工助剤、着色剤を混練する。 |
| 加硫 | ビスフェノール系、過酸化物系、ジアミン系等を使用する。一次加硫後に二次加硫を行い、圧縮永久ひずみ、耐熱性、抽出物、臭気を安定化する場合が多い。 |
| 製品化 | Oリング、シール、ホース等へ成形し、バリ仕上げ、洗浄、検査、必要に応じクリーン処理を行う。 |

代表的な二元系FKMの重合反応は、m CH2=CF2 + n CF2=CF-CF3 → -[CH2-CF2]m-[CF2-CF(CF3)]n-と表せる。ただし、実際の重合体はランダム配列、分岐、硬化点モノマー及び末端基を含み、単純な一種類の構造式だけでは表せない。
品質・成形不良
| 不良 | 材料側の主因 | 成形条件側の主因 | 主な対策 |
|---|---|---|---|
| 加硫不足 | 加硫剤不足、受酸剤不均一、混練不良 | 金型温度不足、時間不足 | 加硫曲線確認、混練分散改善、温度・時間見直し |
| スコーチ | 早期加硫、保管劣化 | 高温滞留、過大せん断 | 低温保管、滞留短縮、スクリュー条件見直し |
| ボイド・気泡 | 水分、揮発分、空気巻込み | エア抜き不足、昇温急過ぎ | 材料保管、真空成形、ベント、段階加熱 |
| バリ | 低粘度、過加硫前流動 | 型締め不足、金型摩耗 | コンパウンド粘度、型締め、パーティング面管理 |
| ウェルド・接合線弱化 | 流動性不足、表面汚染 | ゲート配置不適、温度不足 | ゲート設計、金型温度、材料予熱 |
| 離型不良 | 粘着性、離型剤不足 | 金型表面粗さ、過加硫 | 内部離型剤、金型処理、離型タイミング最適化 |
| 寸法外れ | 収縮ばらつき、配合ばらつき | 温度分布、ポストキュア差 | ロット管理、金型補正、加硫・後加硫標準化 |
| 金型汚染 | 低分子分、加硫残渣、加工助剤 | 高温長時間、清掃不足 | 配合見直し、計画洗浄、離型剤最小化 |
| 変色 | 酸化、着色剤耐熱不足 | 過熱、長時間ポストキュア | 耐熱顔料、雰囲気・温度管理 |
詳細な利用用途
| 用途分野 | 適性 | 代表用途 | 選定上の注意 |
|---|---|---|---|
| 自動車・輸送 | ◎ | 燃料系Oリング、インジェクターシール、オイルシール、ターボ周辺ホース | 高温燃料、バイオ燃料、酸化油、低温始動を確認。 |
| 航空宇宙 | ○ | 燃料・潤滑油系シール、作動系シール | 低温、減圧、難燃、航空規格、寿命管理が必要。 |
| 石油・ガス | ◎ | バルブ、ポンプ、ダウンホールシール | H2S、急減圧、爆発的減圧、アミンを確認。 |
| 化学装置 | ○ | ポンプ、バルブ、ガスケット、ダイヤフラム | ケトン、エステル、塩基、蒸気では材質変更が必要な場合がある。 |
| 半導体製造装置 | ○ | 真空シール、薬液・ガス系シール | 金属・粒子・アウトガス管理では高純度FKM又はFFKMを選ぶ。 |
| 食品機械 | △ | 高温油系シール、ガスケット | 食品接触適合、抽出物、洗浄薬品、蒸気滅菌を個別確認。 |
| 医療・製薬 | △ | 装置シール、ポンプ部品 | ISO 10993、USP Class VI、滅菌耐性は特定グレードのみ。 |
| 電気・電子 | ○ | 耐熱電線被覆、コネクタシール | 導電性配合と絶縁配合を区別する。 |
| 建築・設備 | △ | 高温設備用シール、特殊ガスケット | 一般建築ではコスト過剰となる場合がある。 |
| コーティング・ライニング | ○ | 金属・繊維・ゴム表面の耐薬品被覆 | ラテックス、溶液、接着性、膜厚、ピンホールを管理。 |
用途適性は材料群としての一般的評価である。実使用では、グレード、硬度、加硫系、温度、濃度、圧力、荷重、応力、湿度、使用時間、滅菌、洗浄、法規制及び交換周期を確認する。
接合・表面処理適性
| 方法 | 適性 | 注意点 |
|---|---|---|
| 金属接着・加硫接着 | ○ | 専用接着剤又はプライマー、脱脂、ブラスト、化成処理、加硫条件の整合が必要。 |
| 接着剤接合 | △ | 低表面エネルギーと配合剤移行により難しい。プラズマ、化学処理、専用プライマーを検討。 |
| 機械締結 | ○ | 過大締付け、クリープ、応力緩和、押出し隙間を管理する。 |
| コロナ・プラズマ処理 | ○ | 表面活性化は可能だが経時失活するため、処理後速やかに接着・印刷する。 |
| 塗装・印刷 | △ | 専用インキ、表面処理、ポストキュア後の汚染除去が必要。 |
| 熱溶着 | × | 架橋FKMは熱可塑溶融しない。熱可塑性フッ素エラストマーは別途評価する。 |
法規制・認証
| 項目 | 一般的な位置付け | 確認事項 |
|---|---|---|
| RoHS・ELV | 適合可能なグレードが存在する。 | 配合剤、顔料、金属化合物、製造拠点ごとの証明書を確認する。 |
| REACH・SVHC | 登録・適合状況は供給者及び用途で確認する。 | SVHC候補物質、加工助剤、不純物、更新時点を確認する。 |
| PFAS関連規制 | FKMはフッ素化高分子であり、規制議論の影響を受け得る。 | 国・地域・用途別の最新法令、除外、報告義務、廃棄条件を確認する。 |
| FDA食品接触 | 適合グレードが存在する場合がある。 | 21 CFR該当条項、配合色、抽出条件、最終製品適合を確認する。 |
| 日本の食品衛生法 | ポジティブリスト制度への個別確認が必要。 | ゴム製器具・容器包装としての材質規格、溶出、用途温度を確認する。 |
| USP Class VI・ISO 10993 | 医療向け特定グレードで対応例がある。 | 材料名だけでは医療適合を断定せず、滅菌方法と生物学的評価を確認する。 |
| UL認証 | 特定コンパウンドで認証される場合がある。 | ファイル番号、色、厚さ、製造拠点、用途区分を確認する。 |
| NORSOK M-710・ISO 23936 | 石油・ガス用途の特定配合で評価される。 | 媒体、圧力、温度、急減圧条件、試験報告書を確認する。 |
環境・リサイクル性、価格・供給性
| 項目 | 評価・概要 | 注意点 |
|---|---|---|
| 熱可塑性・熱硬化性 | 一般的な加硫FKMは熱硬化性エラストマー。 | 再溶融成形はできない。未加硫端材と加硫済み端材を区別する。 |
| マテリアルリサイクル | 限定的。粉砕材利用、脱架橋、再生配合は用途が限られる。 | シール性能、清浄性、規制用途では再生材使用が難しい。 |
| ケミカルリサイクル | 研究・限定実施段階。 | フッ素回収、処理コスト、品質保証が課題。 |
| 焼却・熱回収 | 専用設備と排ガス処理が必要。 | 不適切な高温分解では腐食性・有害性を持つフッ素系分解物が生じ得る。 |
| 生分解性 | 一般に生分解性を持たない。 | 環境放出を避け、管理された回収・処理を行う。 |
| 価格区分 | 高価格~極めて高価格。 | フッ素含有率、特殊モノマー、配合、認証、購入量で大きく変動する。 |
| 国内入手性 | 標準FKMは比較的良好。特殊低温・高純度・耐塩基品は限定的。 | 最小ロット、納期、コンパウンド供給か成形品供給かを確認する。 |
| 供給形態 | ベースポリマー、プレコンパウンド、完成コンパウンド、シート、Oリング、成形品、ラテックス。 | 加硫系と加工設備の適合を確認する。 |
関連材料との比較
| 比較材料 | 特徴 | フッ素ゴムとの違い |
|---|---|---|
| ニトリルゴム(NBR) | 耐油性と機械特性に優れ、比較的低価格。 | FKMは耐熱、耐候、燃料・芳香族溶剤耐性で優位。NBRは低温性と価格で有利な場合がある。 |
| エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM) | 耐水、蒸気、希酸・希アルカリ、耐候性に優れる。 | FKMは油・燃料に優れるが、蒸気、ブレーキ液、強塩基ではEPDMが有利な場合がある。 |
| シリコーンゴム(VMQ) | 耐熱、耐寒、電気特性に優れる。 | FKMは耐油・耐燃料・低ガス透過で優位。VMQは低温柔軟性で優位。 |
| クロロプレンゴム(CR) | 耐候、難燃、耐油のバランスが良い。 | FKMは高温・燃料・薬品に優れるが高価である。 |
| クロロスルフォン化ポリエチレン(CSM) | 耐候性、耐オゾン性、耐薬品性を持つ。 | FKMは高温油・燃料に優れる。CSMはシート・ライニングとコスト面で有利な場合がある。 |
| ポリテトラフルオロエチレン(PTFE) | 極めて広い耐薬品性と低摩擦性を持つ硬質フッ素樹脂。 | PTFEは弾性シール性に乏しく、FKMは弾性復元と密封性に優れる。 |
| PFA | 溶融成形可能で、PTFEに近い耐薬品性を持つ。 | PFAは耐薬品ライニングに優れ、FKMはOリング等の弾性シールに適する。 |
| フッ素樹脂 | PTFE、PFA、FEP、ETFE、PVDF等の総称。 | FKMはゴム弾性を持つフッ素系材料であり、熱可塑性フッ素樹脂とは成形法と設計方法が異なる。 |
代表的なメーカー
| メーカー | 代表製品・ブランド | 概要 |
|---|---|---|
| ダイキン工業株式会社 | DAI-EL | 二元系、三元系、過酸化物加硫、低温、ラテックス、熱可塑性フッ素エラストマー等を展開する。 |
| The Chemours Company | Viton™ | FKMの代表的ブランド。自動車、化学、石油・ガス、航空宇宙等向けに各種タイプを展開する。 |
| Syensqo | Tecnoflon® | 旧Solvay Specialty Polymers系のFKM・FFKMブランド。ビスフェノール加硫、過酸化物加硫、特殊グレードを展開する。 |
| AGC株式会社 | AFLAS® | 主にTFE/プロピレン系FEPMブランドであり、標準FKMとは別分類である。耐塩基・耐蒸気用途の比較候補として挙げられる。 |
| Gujarat Fluorochemicals Limited | Fluonox® | FKMベースポリマー及びコンパウンドを展開する。採用時は地域供給、グレード、認証を確認する。 |
ブランド及び供給体制は再編、地域、時期により変わる。採用時にはメーカー又は正規販売会社の最新技術資料、安全データシート、規制証明書及び供給状況を確認する。
注意点と推奨確認試験
| 確認対象 | 推奨試験 | 確認条件の例 |
|---|---|---|
| 薬品適合性 | 実薬品浸漬試験 | 実濃度、実温度、168~1000 h。質量、体積、硬度、引張、外観を測定。 |
| シール性能 | 圧縮永久ひずみ・リーク試験 | 実溝形状、実圧縮率、実媒体、実温度、圧力サイクル。 |
| 低温性 | TR10、低温圧縮、低温リーク | 最低使用温度、保持時間、昇降温速度、動静区分を再現。 |
| 蒸気・熱水 | 蒸気曝露・熱水浸漬 | 温度、圧力、乾湿サイクル、500~1000 hを用途に応じ設定。 |
| 急減圧 | AED/RGD試験 | 実ガス組成、圧力、温度、飽和時間、減圧速度、繰返し回数。 |
| 長期耐熱 | 熱老化・応力緩和 | 使用温度以上の促進条件と実使用温度で相関を確認。 |
| 接着界面 | 剥離・せん断・熱サイクル | 金属前処理、接着剤、薬品、-40~200℃等の温度サイクル。 |
| 高純度・真空 | 抽出物・アウトガス試験 | 溶媒抽出、イオンクロマト、GC-MS、TML/CVCM、真空ベーク。 |
| 食品・医療 | 溶出・滅菌耐久・生物学的評価 | 接触食品、温度、時間、蒸気・EtO・放射線等の滅菌回数。 |
| 実成形性 | 実成形試験 | 加硫曲線、金型温度、流動、バリ、収縮、ポストキュア、量産ばらつき。 |
関連キーワード
ゴム類 フッ素樹脂 ニトリルゴム EPDM シリコーンゴム PTFE PFA FEP PVDF エラストマーの耐薬品性 FKM FPM フルオロエラストマー VDF HFP Oリング 圧縮永久ひずみ 急減圧損傷 ASTM D1418 ISO 1629