ポリシクロへキシレン・ジメチレン・テレフタレート

材料名ポリシクロへキシレン・ジメチレン・テレフタレート
ポリ-1,4- シクロヘキサン・ジメチレン・テレフタレート
略記号PCT
英語名Polycyclohexylene Dimethylene Terephthalate
分類熱可塑性ポリエステル、結晶性樹脂、耐熱透明樹脂
基本構造シクロヘキサンジメタノールとテレフタル酸由来のポリエステル構造
主な種類標準PCT、GF強化PCT、透明PCT、耐熱PCT
主な用途用途は後述の詳細な利用用途に整理する

ポリシクロへキシレン・ジメチレン・テレフタレート(PCT)は、熱可塑性ポリエステル、結晶性樹脂、耐熱透明樹脂に分類される材料である。 PETより耐熱性が高く、透明性、耐薬品性、寸法安定性に優れる。電装部品、容器、フィルムに使用される。

特徴

  • PETより耐熱性が高く、透明性、耐薬品性、寸法安定性に優れる
  • 電装部品、容器、フィルムに使用される
  • 熱可塑性ポリエステル
  • 比重:1.24~1.27
  • 高い耐熱性(フタル酸エステル系では最高)
  • 特性はポリエチレンテレフタレート(PET)に似ている。
  • PETに比べガラス転移温度、結晶溶融温度が高い
  • PETでは使用できない耐熱性の必要な場所でPETの代わりで使用される。
  • 蒸気によって加水分解される。
  • 水分の少ない場所限定で使用する必要がある。
  • 高価
  • コポリマータイプは、透明性が高い
  • 材料特性はグレード、添加剤、架橋、充填材、分子量により変化する
  • 耐薬品性は温度、濃度、接触時間、応力状態で変化する
  • メーカー物性表と実使用試験による確認が重要である
長所
  • 用途に応じた物性設計が可能である
  • 材料固有の耐熱性、耐薬品性、機械特性、柔軟性、透明性などを活用できる
  • 成形品、フィルム、シート、複合材料、コーティングなどに展開できる
  • 改質、共重合、充填材配合により性能を調整できる
短所
  • 耐薬品性、耐熱性、耐候性はグレードにより大きく異なる
  • 成形条件や硬化条件の管理が必要である
  • 応力、温度、薬品濃度により劣化挙動が変わる
  • 採用時にはメーカー資料と実使用試験で確認する必要がある
成形加工

ポリシクロへキシレン・ジメチレン・テレフタレートの加工性は、熱可塑性、熱硬化性、ゴム、複合材料の分類により異なる。 熱可塑性材料では溶融成形、熱硬化性材料では加熱硬化、ゴムでは混練・加硫、複合材料では含浸・積層・硬化が基本となる。

加工方法適性主な製品例
射出成形熱可塑性グレードの成形品、機構部品、筐体、精密部品
押出成形フィルム、シート、チューブ、板材、丸棒
圧縮成形△〜○ゴム、熱硬化性樹脂、複合材料、切削素材
注型・含浸△〜○熱硬化性樹脂、光学樹脂、FRP、コーティング
切削加工板材、丸棒、治具、精密部品
接着・塗装表面処理、プライマー、専用接着剤が必要な場合がある

構造式

PCT構造

構造の基本は、シクロヘキサンジメタノールとテレフタル酸由来のポリエステル構造である。 既存サイト内の構造部分と同じ考え方で、主鎖、側鎖、官能基、共重合成分、架橋構造、充填材の有無が、耐熱性、耐薬品性、機械特性、吸水性、透明性、電気特性に影響する。

種類

標準PCT
名称標準PCT
構成ポリシクロへキシレン・ジメチレン・テレフタレートの用途別または改質グレードである
特徴ポリシクロへキシレン・ジメチレン・テレフタレートの基本特性を用途に合わせて調整したタイプである
主な用途成形品、部品、フィルム、シート、複合材料、改質材など
特徴
  • 標準品に対して用途別に物性を調整した材料である
  • 耐熱性、耐薬品性、柔軟性、強度、成形性、外観性のいずれかを改善する
  • 採用時にはメーカーグレードごとの物性表を確認する必要がある
GF強化PCT
名称GF強化PCT
構成ポリシクロへキシレン・ジメチレン・テレフタレートの用途別または改質グレードである
特徴ポリシクロへキシレン・ジメチレン・テレフタレートの基本特性を用途に合わせて調整したタイプである
主な用途成形品、部品、フィルム、シート、複合材料、改質材など
特徴
  • 標準品に対して用途別に物性を調整した材料である
  • 耐熱性、耐薬品性、柔軟性、強度、成形性、外観性のいずれかを改善する
  • 採用時にはメーカーグレードごとの物性表を確認する必要がある
透明PCT
名称透明PCT
構成ポリシクロへキシレン・ジメチレン・テレフタレートの用途別または改質グレードである
特徴ポリシクロへキシレン・ジメチレン・テレフタレートの基本特性を用途に合わせて調整したタイプである
主な用途成形品、部品、フィルム、シート、複合材料、改質材など
特徴
  • 標準品に対して用途別に物性を調整した材料である
  • 耐熱性、耐薬品性、柔軟性、強度、成形性、外観性のいずれかを改善する
  • 採用時にはメーカーグレードごとの物性表を確認する必要がある
耐熱PCT
名称耐熱PCT
構成ポリシクロへキシレン・ジメチレン・テレフタレートの用途別または改質グレードである
特徴ポリシクロへキシレン・ジメチレン・テレフタレートの基本特性を用途に合わせて調整したタイプである
主な用途成形品、部品、フィルム、シート、複合材料、改質材など
特徴
  • 標準品に対して用途別に物性を調整した材料である
  • 耐熱性、耐薬品性、柔軟性、強度、成形性、外観性のいずれかを改善する
  • 採用時にはメーカーグレードごとの物性表を確認する必要がある

代表的な物性値又は機械的性質

項目単位代表値・範囲備考
密度・比重1.39~1.63GF強化・難燃グレードで高くなる
引張強さMPa99~120ASTM D638、破断時の代表値である
引張破断伸び%2.0~2.8高剛性で伸びは小さい
曲げ強さMPa140~180GF強化グレードで高い
曲げ弾性率MPa5,900~9,600高剛性材料である
アイゾット衝撃強さJ/m45~11023℃、ノッチ付きの代表値である
非ノッチ衝撃強さJ/m430~950強靭化グレードで高くなる
荷重たわみ温度234~2621.8MPa荷重時の代表値である
融点約285高耐熱性ポリエステルである
成形収縮率 流動方向%約0.32mm厚、GF強化グレードの目安である
成形収縮率 直角方向%約0.8繊維配向により異方性が出る
難燃性UL94HB~V-0難燃グレードではV-0が可能である

耐薬品性

ポリシクロへキシレン・ジメチレン・テレフタレートの耐薬品性は、温度、濃度、接触時間、応力、分子量、架橋密度、添加剤、充填材により変化する。 下表は一般的な材料特性として、英語圏の材料データシートで示される傾向と日本企業の物性表で用いられる実用表現を合わせて整理した目安である。

薬品・溶剤耐性備考
○〜△吸水、加水分解、白化、物性変化の有無を確認する
弱酸○〜△多くの場合で短期使用は可能だが、樹脂構造に依存する
強酸△〜×分解、膨潤、架橋劣化、加水分解に注意する
弱アルカリ○〜△材料により安定性が異なる
強アルカリ△〜×エステル、アミド、カーボネート、イミド系では注意が必要である
アルコール○〜△応力下ではクラックや膨潤に注意する
アセトン△〜×非晶性樹脂、極性樹脂、ゴムでは膨潤・溶解に注意する
MEK△〜×強溶媒となる材料が多い
トルエン△〜×芳香族溶剤に弱い材料では膨潤・溶解する
塩素系溶剤△〜×多くの樹脂で膨潤、溶解、クラックに注意する
油・燃料○〜△ゴム系、ポリオレフィン系、ポリアミド系で傾向が異なる

更に詳しくはプラスチックの耐薬品性一覧表を参照。

SP値(溶解度パラメータ)

ポリシクロへキシレン・ジメチレン・テレフタレートのSP値は、約20〜22 MPa1/2が目安である。 ただし、ゴム、熱硬化性樹脂、結晶性樹脂、複合材料では、SP値が近くても直ちに溶解するとは限らない。 一次判断としてSP値を使い、実際には浸漬試験、重量変化、寸法変化、外観、機械強度変化で評価する必要がある。

項目SP値(δ)
MPa1/2
備考
PCT 標準グレード20.8~21.6高結晶性ポリエステルであり、芳香族炭化水素や塩素系溶剤に対して比較的安定である
PCT GF30%20.5~21.3ガラス繊維強化により溶剤膨潤が抑制され、寸法安定性が向上する
PCT GF40%20.3~21.1高剛性化により有機溶剤による応力割れが低減する傾向がある
PCT CF強化20.2~21.0炭素繊維添加により耐薬品性と耐熱性が向上する
PCT 難燃グレード21.0~21.8難燃剤の種類により極性が変化し、一部溶剤に対する耐性が低下する場合がある
PCT 高耐熱グレード20.7~21.5高結晶化設計により耐溶剤性が向上する傾向がある
溶解性の目安
Δδ挙動
0〜2溶解しやすい
2〜5膨潤・軟化
5以上溶解しにくい
SP値から見た耐溶剤性
溶剤名SP値(δ)
MPa1/2
耐性評価備考
47.9吸水は小さく、常温では安定である
メタノール29.7短時間接触では比較的安定である
エタノール26.0一般用途では良好な耐性を示す
イソプロピルアルコール23.5長期接触や高温で応力割れに注意が必要である
アセトン20.3×PCTのSP値に近く、膨潤やクラック発生の可能性が高い
MEK(メチルエチルケトン)19.0×ケトン系溶剤は強い影響を与える
トルエン18.2高温や応力負荷条件で膨潤する場合がある
キシレン18.0長時間接触では寸法変化に注意が必要である
酢酸エチル18.6エステル系溶剤は表面劣化を生じる場合がある
ジクロロメタン20.2×急激な膨潤や白化を生じやすい
n-ヘキサン14.9脂肪族炭化水素には比較的強い
ガソリン14.5~15.5短期使用では安定性が高い
エンジンオイル16~17自動車用途で広く利用される
苛性ソーダ水溶液48前後高濃度・高温条件では加水分解に注意が必要である
硫酸40以上濃酸条件では分解や脆化が進行する場合がある

PCTのSP値中央値(約21 MPa1/2)を基準として耐溶剤性を評価している。

◎:非常に良好 ○:概ね良好 △:注意が必要 ×:不適

※アセトン、MEK、ジクロロメタンなど、PCTのSP値に近い溶剤は膨潤・白化・応力割れを引き起こしやすいため特に注意が必要である。

※高温環境および残留応力が存在する状態では、通常問題ない溶剤でも環境応力割れを生じる場合がある。

実務上の注意
  • SP値は溶解性予測の入口であり、耐久性評価そのものではない
  • 架橋樹脂やゴムでは溶解ではなく膨潤として現れる場合が多い
  • 結晶性樹脂では温度上昇により急に膨潤・溶解しやすくなる場合がある
  • 応力下ではSP値差が大きい溶剤でもクラックが起こる場合がある

製法

テレフタル酸またはDMTとシクロヘキサンジメタノールを重縮合する。

PCT

実用材料では、重合後に安定剤、可塑剤、架橋剤、充填材、ガラス繊維、炭素繊維、難燃剤、顔料などを配合して、用途別の物性に調整する。

工程内容備考
基本反応テレフタル酸またはDMTとシクロヘキサンジメタノールを重縮合する。
基本反応:TPA + CHDM → PCT + H2O
代表的な合成・製造経路である
改質・共重合柔軟性、耐熱性、耐薬品性、透明性を調整する用途別グレード
コンパウンド充填材、安定剤、難燃剤、着色剤を配合する成形材料
成形・硬化熱可塑成形、加硫、架橋、注型、含浸、硬化を行う最終製品

詳細な利用用途

電気・電子用途
  • コネクタ
  • 絶縁部品
  • スイッチ部品
  • 筐体
  • 保護材
自動車・輸送用途
  • シール材
  • ホース
  • 内外装部品
  • 機構部品
  • 耐候部品
包装・フィルム用途
  • フィルム
  • シート
  • 容器
  • ラミネート材
  • シール層
工業・機械用途
  • ギア
  • 軸受
  • 治具
  • ライニング
  • 複合材料部品
光学・医療・特殊用途
  • レンズ
  • 医療部材
  • 透明部品
  • コーティング
  • 特殊機能材料

関連材料との比較

比較材料違い選定ポイント
ナイロンポリアミド系材料は耐摩耗性と靭性に優れる耐摩耗・機械部品では比較対象にする
ポリオキシメチレン低摩擦、寸法安定性、機構部品に強いギアや摺動部品で比較する
シクロオレフィン・コポリマー透明性、低吸水、低複屈折に優れる医療・光学用途で比較する
ポリビニリデンフルオライドフッ素樹脂で耐薬品性と成形性のバランスが良い薬液配管や電池用途で比較する
ポリ乳酸バイオマス由来で透明性と剛性を持つ環境対応用途で比較する

代表的なメーカー

メーカー代表的な製品・商品名備考
Eastman代表グレード・用途別材料供給グレードはメーカー資料で確認する
SK Chemicals代表グレード・用途別材料供給グレードはメーカー資料で確認する
Celanese代表グレード・用途別材料供給グレードはメーカー資料で確認する
ポリエステル系メーカー代表グレード・用途別材料供給グレードはメーカー資料で確認する
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