| 材料名 | アイオノマー |
|---|---|
| 略記号 | IO |
| 英語名 | Ionomer Resin |
| 分類 | 熱可塑性樹脂、ポリオレフィン系樹脂、イオン架橋樹脂 |
| 基本構造 | エチレン・アクリル酸共重合体の金属イオン中和構造 |
| 主な種類 | Na型アイオノマー、Zn型アイオノマー、透明アイオノマー、高反発アイオノマー |
| 主な用途 | ゴルフボールカバー、食品包装、シール層、化粧品容器、チューブ、成形品 |
アイオノマー(IO)は、熱可塑性樹脂、ポリオレフィン系樹脂、イオン架橋樹脂に分類される材料である。 エチレン・アクリル酸共重合体の金属イオン中和構造を基本構造または代表構造とし、ゴルフボールカバー、食品包装、シール層、化粧品容器、チューブ、成形品などに使用される。
特徴
- アイオノマー樹脂は、ポリエチレンユニット(E)とアクリル酸ユニット(A)を有するポリマーを金属(M)で架橋した樹脂
- アクリル酸ユニット(A)と金属(M)の結合がイオン的であるため、アイオノマーと呼ばれている。
- アクリル酸ユニット(A)の含有量と金属(M)の種類を変化させることでいろいろな特性を持った樹脂が制作できる。
- アクリル酸ユニットと金属の結合がイオン的であるため特有の強靭性を持つ
- 透明性、柔軟性、耐衝撃性、ヒートシール性に優れる
- ゴルフボールカバーや包装フィルムに使用される
- 酸・アルカリや極性溶剤ではグレードにより影響を受ける
長所
- 透明性がある
- 耐衝撃性が高い
- 低温シール性が良い
- 柔軟性がある
- 耐摩耗性が良い
短所
- 耐熱性は高くない
- 強アルカリや強酸には注意が必要である
- 高温で変形しやすい
- 価格はPEより高い
成形加工
アイオノマーの加工性は、樹脂の種類、分子量、充填材、硬化系、添加剤、成形温度により大きく変化する。 成形時には乾燥、熱分解、残留応力、結晶化、硬化条件、離型性を確認する必要がある。
| 加工方法 | 適性 | 主な製品例 |
|---|---|---|
| 射出成形 | ○ | 成形材料グレードで対応する。複雑形状部品、機構部品、電気電子部品に使用する |
| 押出成形 | ○ | シート、フィルム、チューブ、棒材、板材に使用する |
| 圧縮成形 | △〜○ | 熱硬化性樹脂や高耐熱材、切削素材で使用する |
| 注型・含浸 | △〜○ | 熱硬化性樹脂、塗料、ワニス、複合材料で使用する |
| 切削加工 | ○ | 板材、丸棒、精密部品、治具に使用する |
| 接着・塗装 | △ | 材料の表面性により表面処理や専用接着剤が必要である |
構造式

アイオノマーの構造は、材料分類、重合方法、共重合成分、充填材の有無により変化する。 構造中の極性基、芳香環、フッ素原子、シロキサン結合、イミド結合、エステル結合などが、耐熱性、耐薬品性、機械特性、吸水性、電気特性に影響する。
種類
Na型アイオノマー
| 名称 | Na型アイオノマー |
|---|---|
| 構成 | アイオノマーの用途別または改質グレードである |
| 特徴 | アイオノマーの基本特性を用途に合わせて調整したグレードである |
| 主な用途 | ゴルフボールカバー、食品包装、シール層、化粧品容器、チューブ、成形品 |
特徴
- 用途に応じて物性を調整したグレードである
- 標準品と比較して耐熱性、耐薬品性、機械特性、成形性のいずれかを改善する
- 実使用条件ではメーカーグレードごとのデータ確認が必要である
Zn型アイオノマー
| 名称 | Zn型アイオノマー |
|---|---|
| 構成 | アイオノマーの用途別または改質グレードである |
| 特徴 | アイオノマーの基本特性を用途に合わせて調整したグレードである |
| 主な用途 | ゴルフボールカバー、食品包装、シール層、化粧品容器、チューブ、成形品 |
特徴
- 用途に応じて物性を調整したグレードである
- 標準品と比較して耐熱性、耐薬品性、機械特性、成形性のいずれかを改善する
- 実使用条件ではメーカーグレードごとのデータ確認が必要である
透明アイオノマー
| 名称 | 透明アイオノマー |
|---|---|
| 構成 | アイオノマーの用途別または改質グレードである |
| 特徴 | アイオノマーの基本特性を用途に合わせて調整したグレードである |
| 主な用途 | ゴルフボールカバー、食品包装、シール層、化粧品容器、チューブ、成形品 |
特徴
- 用途に応じて物性を調整したグレードである
- 標準品と比較して耐熱性、耐薬品性、機械特性、成形性のいずれかを改善する
- 実使用条件ではメーカーグレードごとのデータ確認が必要である
高反発アイオノマー
| 名称 | 高反発アイオノマー |
|---|---|
| 構成 | アイオノマーの用途別または改質グレードである |
| 特徴 | アイオノマーの基本特性を用途に合わせて調整したグレードである |
| 主な用途 | ゴルフボールカバー、食品包装、シール層、化粧品容器、チューブ、成形品 |
特徴
- 用途に応じて物性を調整したグレードである
- 標準品と比較して耐熱性、耐薬品性、機械特性、成形性のいずれかを改善する
- 実使用条件ではメーカーグレードごとのデータ確認が必要である
代表的な物性値又は機械的性質
| 性質 | 単位 | 標準グレード | 高透明・軟質グレード | 高剛性グレード |
|---|---|---|---|---|
| 比重 | – | 0.94 ~ 0.96 | 0.93 ~ 0.95 | 0.95 ~ 0.97 |
| 引張強さ | MPa | 23 ~ 33 | 20 ~ 28 | 28 ~ 38 |
| 引張降伏強さ | MPa | 12 ~ 16 | 10 ~ 14 | 14 ~ 18 |
| 引張伸び | % | 300 ~ 500 | 400 ~ 600 | 250 ~ 450 |
| 曲げ弾性率 | GPa | 0.20 ~ 0.35 | 0.12 ~ 0.25 | 0.35 ~ 0.70 |
| アイゾット衝撃強さ (ノッチ付き) | kJ/m² | 破壊せず ~ 高い | 破壊せず ~ 高い | 10 ~ 40 |
| 硬さ | ショアD | 55 ~ 66 | 45 ~ 60 | 60 ~ 70 |
| 融点 | ℃ | 85 ~ 100 | 80 ~ 95 | 90 ~ 105 |
| 荷重たわみ温度 | ℃ | 40 ~ 60 | 35 ~ 55 | 50 ~ 70 |
| メルトフローレート | g/10min | 1 ~ 10 | 1 ~ 15 | 0.5 ~ 8 |
| 吸水率 | % | 0.01 ~ 0.1 | 0.01 ~ 0.1 | 0.01 ~ 0.1 |
| 透明性 | – | 良好 | 非常に良好 | 半透明~不透明 |
耐薬品性
アイオノマーの耐薬品性は、樹脂構造、温度、濃度、接触時間、応力状態、グレード、充填材により変化する。 下表は一般的な目安であり、薬液タンク、配管、洗浄治具、食品・医療用途では実使用条件で確認する必要がある。
| 薬品・溶剤 | 耐性 | 備考 |
|---|---|---|
| 水 | ○ | 材料種により吸水、加水分解、白化に注意が必要である |
| 弱酸 | ○ | 多くの場合で短期使用は可能である |
| 強酸 | △〜× | 樹脂構造により劣化、分解、膨潤が起こる |
| 弱アルカリ | ○〜△ | 材料により安定性が異なる |
| 強アルカリ | △〜× | エステル、イミド、アミド、カーボネート系では注意が必要である |
| アルコール | ○〜△ | 応力下ではクラックや膨潤に注意する |
| アセトン | △〜× | 非晶性樹脂や極性樹脂では膨潤・溶解しやすい |
| MEK | △〜× | 溶剤種、温度、応力条件で影響が大きい |
| トルエン | △ | 芳香族溶剤に弱い材料では膨潤・クラックが起こる |
| 塩素系溶剤 | △〜× | 多くの樹脂で膨潤・溶解・クラックに注意が必要である |
| 油・燃料 | ○〜△ | ポリオレフィン系、ポリアミド系などでは比較的良い場合がある |
更に詳しくはプラスチックの耐薬品性一覧表を参照。
SP値(溶解度パラメータ)
アイオノマーのSP値は、約17〜20 MPa1/2が目安である。 SP値が近い溶剤では膨潤や溶解が起こりやすいが、結晶性、架橋構造、水素結合、分子量、充填材、温度の影響も大きいため、SP値は一次判断として扱う必要がある。
アイオノマー(IO)のSP値(溶解度パラメータ)
| 項目 | SP値(δ) MPa1/2 | 備考 |
|---|---|---|
| 標準グレード | 17.2 ~ 18.0 | エチレン系樹脂の中では極性が高く、耐油性・耐摩耗性に優れる。アルコール類や極性溶剤に対しては膨潤しやすい傾向がある。 |
| Naイオン型 | 17.8 ~ 18.5 | ナトリウム中和型であり、イオン結合性が高く、耐溶剤性と剛性が向上する。極性溶媒への耐性は比較的高い。 |
| Znイオン型 | 17.0 ~ 17.8 | 亜鉛中和型であり、柔軟性と透明性のバランスに優れる。芳香族溶剤には注意が必要である。 |
| 高透明 | 16.8 ~ 17.5 | 透明性を重視したグレードであり、比較的軟質である。炭化水素系溶剤に対しては一定の耐性を示す。 |
| 高剛性 | 18.0 ~ 18.8 | 高中和度タイプであり、耐薬品性・耐傷性が向上している。ケトン系やエステル系溶剤には注意が必要である。 |
| GF強化 | 18.0 ~ 19.0 | ガラス繊維添加により寸法安定性と耐薬品性が向上する。界面部からの溶剤浸透には注意が必要である。 |
溶解性の目安
| Δδ | 挙動 |
|---|---|
| 0〜2 | 溶解しやすい |
| 2〜5 | 膨潤・軟化 |
| 5以上 | 溶解しにくい |
SP値から見た耐溶剤性
| 溶剤名 | SP値(δ) MPa1/2 | 耐溶剤性 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 水 | 47.8 | ◎ | 吸水はあるが、通常環境では大きな劣化は少ない。 |
| メタノール | 29.7 | △ | 長期接触で膨潤や白化が発生しやすい。 |
| エタノール | 26.0 | ○ | 短時間では安定するが、高温条件では注意が必要である。 |
| IPA(イソプロピルアルコール) | 23.5 | ○ | 一般用途では使用可能であるが、応力部ではクラックに注意する。 |
| アセトン | 20.3 | △ | SP値が近く、膨潤・軟化が起こる場合がある。 |
| MEK | 19.0 | △ | 表面軟化や応力割れの危険性がある。 |
| 酢酸エチル | 18.6 | △ | SP値が近く、長時間接触で膨潤しやすい。 |
| トルエン | 18.2 | × | 膨潤・変形の危険性が高い。 |
| キシレン | 18.0 | × | 芳香族炭化水素により著しい膨潤を生じる場合がある。 |
| n-ヘキサン | 14.9 | ◎ | 非極性であり、比較的安定である。 |
| ミネラルオイル | 14 ~ 16 | ◎ | 耐油性は比較的良好である。 |
◎:非常に良好 ○:概ね良好 △:注意が必要 ×:不適
※耐溶剤性は、アイオノマーのSP値中央値(約18 MPa1/2)を基準として、溶剤とのSP値差から推定した一般的傾向である。実際の耐性は、中和金属種、酸含有量、添加剤、成形条件、温度、応力状態によって変化する。
※特にトルエン、キシレン、MEK、アセトン、酢酸エチルなど、SP値が近い溶剤は膨潤・白化・応力割れを発生させやすいため注意が必要である。高温環境や長時間接触では劣化が加速する。
SP値は、溶剤と高分子の親和性評価に利用され、一般的にSP値差が小さいほど溶解・膨潤しやすい傾向を示す。
実務上の注意
- SP値は溶解性の目安であり、耐久性そのものではない
- 結晶性樹脂や熱硬化性樹脂では、SP値が近くても溶解しにくい場合がある
- 非晶性樹脂では、応力クラックが耐薬品性の主要問題になりやすい
- 実使用では温度、濃度、接触時間、応力、成形残留応力を確認する必要がある
製法
アイオノマーは、対応するモノマーの重合、重縮合、付加反応、共重合、架橋反応、コンパウンドなどにより製造される。 実用材料では、添加剤、充填材、安定剤、難燃剤、可塑剤、強化繊維などを配合して性能を調整する。
| 製法 | 特徴 | 主な製品形態 |
|---|---|---|
| 重合・重縮合 | 基本ポリマーを合成する | ベース樹脂 |
| 共重合・変性 | 耐熱性、柔軟性、耐薬品性、成形性を調整する | 改質グレード |
| コンパウンド | ガラス繊維、難燃剤、安定剤、潤滑剤などを配合する | 成形材料 |
| 成形・硬化 | 熱可塑性樹脂は溶融成形、熱硬化性樹脂は加熱硬化する | 最終成形品 |
詳細な利用用途
電気・電子用途
- コネクタ
- スイッチ部品
- 絶縁部品
- 筐体
- 高周波部品
自動車・輸送用途
- 内外装部品
- 機構部品
- 耐熱部品
- 摺動部品
- 燃料・配管関連部品
工業用途
- ギア
- 治具
- ライニング
- シール材
- 機械カバー
包装・生活用品用途
- フィルム
- 容器
- シート
- 日用品
- 保護部材
関連材料との比較
代表的なメーカー
| メーカー | 代表的な製品・商品名 | 備考 |
|---|---|---|
| 代表メーカー | DuPont、Dow、三井・ダウ ポリケミカル、SK、旭化成 | 材料・グレードにより供給状況が異なる |
| 国内外コンパウンダー | 各種改質グレード | GF強化、難燃、摺動、耐候グレード |
| 成形材料メーカー | 用途別グレード | メーカー物性表で確認が必要である |