概要
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 材料名 | アイオノマー |
| 略記号 | ―(一般略号なし。代表品:Surlyn、Himilan など) |
| IUPAC名 | エチレン-メタクリル酸共重合体金属塩(代表例) Ethylene–methacrylic acid copolymer, metal salt |
| 英語名 | Ionomer resin / Ionic polymer |
| 日本語名(別名) | アイオノマー樹脂、イオン性ポリマー、アイオノマーポリエチレン |
| 分類 | 熱可塑性樹脂 |
| プラスチック分類 | 変性ポリオレフィン系(エンジニアリング用途展開品) |
| 代表化学式(構造単位) | -(CH₂CH₂)ₘ-(CH₂C(CH₃)(COO⁻M⁺))ₙ- (M:Na、Zn など金属カチオン) |
| CAS No. | 25053-53-6(エチレン-メタクリル酸亜鉛塩、代表例) |
| 構造・主成分 | エチレンとメタクリル酸(またはアクリル酸)の共重合体に、Na・Zn・Mg などの金属イオンでイオン架橋(クラスター形成)した構造を持つ。 |
| 主な用途 | ゴルフボールカバー、食品包装フィルム・多層フィルム、ラミネート接着層、靴底・スポーツ用品、医療包装、ホットメルト接着剤 |
アイオノマーは、ポリオレフィン主鎖(主にポリエチレン)にカルボン酸基(メタクリル酸またはアクリル酸由来)を共重合させ、その酸基の一部をナトリウム(Na)、亜鉛(Zn)、マグネシウム(Mg)などの金属イオンで中和・架橋した熱可塑性樹脂である。1964年にデュポン社がSurlynの商品名で上市して以降、広く工業利用されるようになった。
イオン性架橋(イオンクラスター)は加熱により可逆的に解離するため、通常の熱可塑性樹脂と同様の溶融成形・リサイクルが可能でありながら、室温では擬似的な架橋ネットワークによって優れた透明性・靭性・耐衝撃性・接着性を示す。この「可逆的架橋」という特性がアイオノマーの最大の特長である。
金属カチオンの種類(Na型、Zn型、Mg型)と中和度(酸基の何%を金属塩にするか)、共重合体中のメタクリル酸含量によって、剛性・衝撃強さ・透明性・溶融流動性・接着性のバランスを幅広く調整できる。グレード設計の自由度が高く、フィルム・射出成形・押出コーティングなど多様な加工法に対応する。
特徴
長所
- 優れた耐衝撃性・靭性(低温域でも維持)
- 高い透明性(ヘーズ低値)
- 金属・紙・PE・PET・ナイロンなどへの優秀な接着性(ヒートシール性)
- ガスバリア性はないが、油脂・香料バリアに有効
- 耐摩耗性・反発弾性が高い(ゴルフボール用途の根拠)
- 熱可塑性でリサイクル可能(可逆的イオン架橋)
- FDA承認グレードあり(食品接触可)
- 耐薬品性(酸・アルコール系)がPEより良好
短所
- 耐熱温度は比較的低い(連続使用:一般に80~90℃前後)
- 強溶剤(芳香族炭化水素、塩素系)に対する耐性は低い
- 純粋なガスバリア性はEVOH・PVdCに劣る
- コストはLLDPEより高い
- 吸湿によりヒートシール特性が変化する場合がある
- UV耐性が低く、屋外長期使用には安定剤が必要
外観
透明〜半透明。フィルムグレードでは高い透明性を示す。射出成形品でも光沢のある外観が得られる。
耐熱性
融点(Tm)はグレードにより約85〜100℃。連続使用温度は一般に70〜90℃程度。高温ではイオンクラスターが解離し軟化する。熱変形温度(HDT)は40〜60℃程度(1.82 MPa荷重)。
耐薬品性
希酸・希アルカリ・脂肪族炭化水素・アルコール類には比較的良好。芳香族溶剤・ケトン・塩素系溶剤には膨潤・溶解するため不適。油脂類には良好な耐性を示す。
加工性
溶融流動性が良好で射出成形・押出成形・インフレーション成形・押出コーティングに適する。加工前の乾燥(80℃×4〜6h)推奨グレードあり。
分類上の注意
アイオノマーはポリオレフィン系の変性樹脂であり、JIS・ISO上の固定略号は設定されていない。市場では商品名(Surlyn・Himilan・Iotek など)で識別されることが多い。「イオン架橋ポリエチレン」と呼ばれることもあるが、架橋PEとは別物であり加熱溶融が可能である点で区別される。
構造式
アイオノマーの代表的な繰り返し単位(エチレン-メタクリル酸共重合体のNa中和型)を以下に示す。
上図左:エチレン(m)とメタクリル酸金属塩(n)の共重合体繰り返し単位。右:金属イオン(Na⁺)が複数の分子鎖のカルボキシレート基(COO⁻)を橋かけするイオンクラスターの模式図。
モノマー組成はグレードにより異なるが、代表的なエチレン/メタクリル酸系では、メタクリル酸含量は質量比で約4〜20%、中和度(金属塩化率)は15〜70%程度が多い。中和度が高いほどイオン架橋が強まり、剛性・靭性・融点が上昇するが、溶融流動性は低下する傾向にある。
種類
| 種類 | 主成分・特徴 | 長所 | 短所 | 主な用途 |
|---|---|---|---|---|
| Na型アイオノマー (ナトリウム中和型) |
エチレン-MAA共重合体をNaで中和。剛性・透明性高め | 透明性◎、剛性○、ヒートシール性○ | 耐湿性やや劣る | 食品包装フィルム、多層ラミネート |
| Zn型アイオノマー (亜鉛中和型) |
亜鉛イオンで中和。靭性・反発弾性優れる | 耐衝撃性◎、反発弾性◎、耐湿性○ | 透明性やや低め | ゴルフボールカバー、スポーツ用品 |
| Mg型アイオノマー (マグネシウム中和型) |
Mg中和。Na・Zn中間的特性。溶融流動性良好 | 加工性○、バランス型 | コスト高め | フィルム、押出コーティング |
| 高MAA含量グレード (高酸型) |
メタクリル酸含量15〜20%。剛性・強度高め | 剛性・硬度◎ | 溶融粘度高め、加工条件要注意 | 硬質フィルム、射出成形品 |
| 低MAA含量グレード (軟質型) |
メタクリル酸含量4〜8%。柔軟性・透明性重視 | 柔軟性◎、透明性○ | 剛性低め | 医療・食品包材内層、接着層 |
| GF強化グレード | ガラス繊維配合。剛性・耐熱性向上 | 剛性・HDT向上 | 透明性消失、衝撃吸収性低下 | 構造部品(限定用途) |
成形加工
| 成形法 | 適性 | 備考 |
|---|---|---|
| 射出成形 | ◎ | 汎用グレードで良好。シリンダー温度目安:200〜240℃、金型温度:10〜40℃ |
| 押出成形(フィルム・シート) | ◎ | インフレーション・Tダイ共に対応。包装フィルム用途の主流 |
| 押出コーティング | ◎ | 紙・アルミ・PETへのコーティング層として多用 |
| ブロー成形 | ○ | グレード選定要。溶融強度の確保が必要 |
| 真空・圧空成形 | ○ | シート成形可。延伸特性良好 |
| 圧縮成形 | △ | 可能だが用途限定的 |
| 切削加工 | △ | 軟質で切削精度を出しにくい。研磨・ルーター加工程度 |
| 溶接・接着 | ◎ | ヒートシール性が極めて高い。熱板・超音波溶接も可能 |
成形条件(射出成形・代表値)
| 項目 | 推奨条件(目安) | 備考 |
|---|---|---|
| 乾燥温度 | 70〜80℃ × 4〜6時間 | 吸湿グレードは必須。Na型は特に注意 |
| シリンダー温度 | 200〜250℃ | グレード・MFRにより調整 |
| 金型温度 | 10〜40℃ | 透明性重視なら低め |
| 射出速度 | 中速〜高速 | ゲート部の発熱に注意 |
| スクリュー圧縮比 | 2.5〜3.5 | 標準PE用スクリューで対応可 |
| 成形収縮率 | 0.5〜2.0% | 肉厚・グレードにより変動 |
代表的な物性値(機械的性質)
| 物性項目 | 単位 | Na型 汎用 |
Zn型 高靭性 |
高MAA型 硬質 |
GF強化 (20%) |
|---|---|---|---|---|---|
| 密度 | g/cm³ | 0.93〜0.96 | 0.94〜0.96 | 0.95〜0.97 | 1.10〜1.15 |
| メルトフローレート(MFR) | g/10min | 1〜14 | 1〜8 | 0.7〜3 | — |
| 引張強さ(破断) | MPa | 20〜38 | 25〜40 | 35〜50 | 60〜80 |
| 引張伸び(破断) | % | 300〜500 | 400〜600 | 200〜400 | 50〜150 |
| 曲げ弾性率 | MPa | 200〜400 | 180〜350 | 350〜500 | 900〜1500 |
| アイゾット衝撃強さ(ノッチ付) | J/m | 破断なし〜900 | 破断なし | 500〜破断なし | 100〜250 |
| ショアD硬度 | — | 55〜65 | 55〜65 | 62〜70 | 70〜75 |
| 荷重たわみ温度(HDT) (1.82 MPa) | ℃ | 40〜55 | 40〜55 | 50〜65 | 80〜100 |
| 融点(Tm) | ℃ | 85〜98 | 88〜100 | 90〜102 | 90〜102 |
| 連続使用温度(目安) | ℃ | 70〜85 | 70〜85 | 75〜90 | 90〜110 |
| 吸水率(23℃×24h) | % | 0.1〜0.5 | 0.1〜0.3 | 0.2〜0.6 | 0.2〜0.5 |
| 体積抵抗率 | Ω·cm | 10¹⁴〜10¹⁶ | 10¹⁴〜10¹⁶ | 10¹⁴〜10¹⁵ | 10¹³〜10¹⁵ |
| 透明性(ヘーズ、2mm厚) | % | 3〜8 | 5〜15 | 4〜10 | 不透明 |
| 成形収縮率 | % | 0.5〜2.0 | 0.5〜2.0 | 0.5〜1.5 | 0.3〜0.8 |
※上記数値はいずれも代表・目安値。実際の選定にあたっては、グレード固有のデータシートおよびメーカー技術資料を参照すること。
耐薬品性
| 薬品・溶剤 | 代表物質 | 評価 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 希塩酸(10%以下) | HCl aq. | ○ | 短時間接触では概ね安定。長期接触は要確認 |
| 希硫酸(10%以下) | H₂SO₄ aq. | ○ | 同上。金属イオン溶出の可能性あり(高温時) |
| 濃酸類 | 濃HCl、濃H₂SO₄ | × | 加水分解・膨潤リスク大 |
| 希NaOH(10%以下) | NaOH aq. | △ | アルカリによるエステル結合加水分解注意 |
| 濃アルカリ | NaOH 30%以上 | × | 急速劣化。不適 |
| 低級アルコール | エタノール、IPA | ○ | 室温では概ね安定。高温・長期は要試験 |
| 高級アルコール | グリセリン | ◎ | 良好 |
| 脂肪族炭化水素 | ヘキサン、ヘプタン | ○ | PE系のため比較的安定 |
| 芳香族炭化水素 | トルエン、キシレン | × | 膨潤・溶解リスク大。不適 |
| ケトン類 | アセトン、MEK | × | 膨潤・溶解リスク大 |
| エステル類 | 酢酸エチル | × | 膨潤リスク大 |
| 塩素系溶剤 | 塩化メチレン、TCE | × | 不適 |
| 水(常温) | 純水・水道水 | ◎ | 良好 |
| 温水(70℃以下) | 温水 | ○ | 概ね安定。80℃以上は軟化注意 |
| 動植物油脂 | 大豆油、オリーブ油 | ◎ | 良好。油脂バリア性に優れる |
| 燃料(ガソリン) | ガソリン | △ | 芳香族分を含むため膨潤注意 |
| 界面活性剤水溶液 | 洗剤、シャンプー | ○ | 一般的な使用濃度では安定 |
評価基準:◎非常に良好、○概ね良好、△注意が必要、×不適(実使用は試験により確認のこと)
SP値(溶解度パラメータ)
| 材料 | SP値(δ) MPa1/2 | 備考 |
|---|---|---|
| アイオノマー(エチレン-MAA系) | 16〜19 | MAAモル分率・中和度により変動 |
| 参考:LDPE | 15.8〜16.8 | — |
| 参考:ナイロン6(PA6) | 22.5〜27.8 | — |
SP値のみで耐薬品性を完全に判断することはできない。アイオノマーの場合、イオンクラスター構造・中和度・金属イオン種により実際の耐薬品性は変化する。SP値はあくまで傾向の参考値として扱い、実際の使用環境に即した浸漬試験・長期暴露試験による確認を推奨する。
溶解性の目安(SP値差による)
| SP値差(δ差) MPa1/2 | 溶解・膨潤の目安 | 判定 |
|---|---|---|
| 0〜2 | 膨潤・軟化しやすい | × |
| 2〜5 | 条件により膨潤する | △ |
| 5〜8 | 短時間接触では比較的安定 | ○ |
| 8以上 | 溶解・膨潤しにくい | ◎ |
SP値から見た耐溶剤性(代表薬品との比較)
| 溶剤名 | 溶剤SP値 MPa1/2 | δ差 (目安) | 評価 | 備考 |
|---|---|---|---|---|
| 水 | 47.9 | 約29〜32 | ◎ | 極性差大。良好 |
| エタノール | 26.0 | 約7〜10 | ○ | 短時間は安定 |
| IPA | 23.6 | 約5〜8 | ○ | 概ね安定 |
| アセトン | 20.0 | 約1〜4 | × | 膨潤リスク大 |
| 酢酸エチル | 18.6 | 約0〜3 | × | SP値近接、不適 |
| トルエン | 18.2 | 約0〜1 | × | SP値ほぼ一致、溶解リスク大 |
| ヘキサン | 14.9 | 約1〜4 | ○ | 非極性側。概ね安定 |
| 塩化メチレン | 19.8 | 約1〜3 | × | 不適 |
| グリセリン | 36.2 | 約17〜20 | ◎ | 良好 |
※δ差はアイオノマーのSP値16〜19 MPa1/2を基準とした概算値。実使用では必ず浸漬試験・重量変化測定による確認を行うこと。
製法
アイオノマーの製造は大きく「共重合→中和」の2段階工程からなる。
1. エチレン-メタクリル酸(MAA)共重合体の合成
高圧ラジカル重合法(オートクレーブ法またはチューブ法)によって、エチレンとメタクリル酸(または一部アクリル酸)を共重合する。反応条件は温度150〜300℃、圧力100〜300 MPa(超高圧)が一般的(推測値を含む)。
2. 金属イオンによる中和(イオン架橋形成)
得られたE-MAA共重合体を、金属の水酸化物または酢酸塩(NaOH、Zn(OH)₂、酢酸亜鉛など)と溶融混練し、カルボキシル基(COOH)の一部を金属塩(COO⁻M⁺)に中和する。中和は押出機(二軸押出機)中で行われるのが一般的である。
3. ペレット化・後処理
中和後、ストランドカットまたはアンダーウォーターカッターによりペレット化する。必要に応じて滑剤・酸化防止剤・UV安定剤・帯電防止剤などを配合してコンパウンドグレードとする。食品接触用グレードでは使用添加剤が食品衛生法・FDA規制に適合したものに限定される。
詳細な利用用途
| 分野 | 具体的用途 | 採用理由・特徴 |
|---|---|---|
| 食品包装 | 多層フィルムのシーラント層、真空包装袋、チーズ・肉・魚介包材、スキンパック、ラミネートフィルム | ヒートシール性・耐油性・透明性・食品衛生対応(FDA/食品衛生法)が主要採用要因 |
| スポーツ用品 | ゴルフボールカバー(最大消費分野)、スキー靴インナー、スポーツシューズ中底・アウトソール | Zn型の反発弾性・耐摩耗性・低温靭性。ゴルフボールでは1970年代以降デファクト素材 |
| 医療・製薬包装 | ブリスターパック基材・シーラント、医療器具包装、クリーンルーム対応フィルム | 低溶出性・化学的安定性・ヒートシール性・透明性。ISO 11607適合グレードあり |
| 工業用フィルム・シート | 保護フィルム、インターリーフ、工程紙貼合、表面保護シート | タック性(自己粘着性)と剥離性のバランス、透明性 |
| 射出成形品 | 歯ブラシハンドル、キャップ・クロージャー、スポーツ用品部品、靴部品 | 耐衝撃性・透明性・意匠性・低温特性 |
| ラミネート・コーティング | 紙・板紙・アルミ箔へのラミネート層、飲料用紙カップの防水層 | PEより優れた接着性・ヒートシール性。多材料積層に貢献 |
| 自動車 | 内装クッション材(一部)、ウェザーストリップ接着補助層(限定用途) | 耐衝撃性・接着補助。主流用途ではないが検討される |
| 太陽電池 | モジュール封止フィルム(EVA代替の一部用途、限定グレード) | 接着性・透明性・耐候性(安定剤配合グレード) |
関連材料との比較
| 比較材料 | 主な特徴 | アイオノマーとの違い | 主な用途 |
|---|---|---|---|
| LLDPE (線状低密度PE) |
柔軟性・耐衝撃性良好。安価。ヒートシール性あり | イオン架橋なし。ヒートシール温度域が広い。透明性・接着性・剛性はアイオノマーに劣る | フィルム・包装袋・農業用 |
| EVOH (エチレン-ビニルアルコール) |
高いガスバリア性。食品包装での主力バリア層 | ガスバリア性はEVOHが圧倒的優位。アイオノマーはバリア性なし。用途が補完的 | 食品バリア包装 |
| EVA (エチレン-酢酸ビニル) |
柔軟性・透明性・低温特性良好。接着性あり | EVAはイオン架橋なし。耐熱性・剛性・ヒートシール強度はアイオノマーが優位 | フィルム・ホットメルト・太陽電池封止 |
| TPE (熱可塑性エラストマー) |
ゴム弾性・軽量・リサイクル可能 | TPEは圧縮永久ひずみ・耐熱性が優れる機種あり。アイオノマーは透明性・ヒートシール性優位 | 軟質成形品・シール材 |
| PP (ポリプロピレン) |
耐熱性・剛性・耐薬品性。汎用安価 | PPは耐熱性・剛性優位。アイオノマーは低温衝撃性・透明性・ヒートシール性優位 | 汎用成形・容器・フィルム |
| PBT (ポリブチレンテレフタレート) |
耐熱性・剛性・耐薬品性(エンプラ) | PBTはエンプラ領域で耐熱・強度優位。アイオノマーは柔軟性・ヒートシール性優位 | 電子部品・自動車部品 |
| 架橋PE (XLPE) |
化学架橋による優れた耐熱性・耐クリープ性 | XLPEは溶融成形不可(熱硬化的)。アイオノマーは可逆架橋でリサイクル可能 | 電線被覆・配管 |
代表的なメーカー
| メーカー | 代表ブランド | 概要 |
|---|---|---|
| The Chemours Company (旧デュポン) |
Surlyn® | 世界初のアイオノマー(1964年)。ゴルフボールカバー・食品包装用途でグローバルリーダー。Na型・Zn型多数のグレードラインナップ |
| 三井・ダウ ポリケミカル (現:三井化学) |
Himilan®(ハイミラン) | 国産アイオノマーの代表ブランド。食品包装・スポーツ用品向け幅広いグレード展開。デュポンとのライセンスを経て独自展開 |
| ExxonMobil Chemical | Iotek® | Na型・Zn型アイオノマー。フィルム・ラミネート用途向け。押出コーティンググレードが充実 |
| SK Global Chemical | SK Ionomer | 韓国系サプライヤー。フィルム・包装用途グレードを展開(推測を含む) |
※メーカー・ブランド情報は2024年時点の公開情報に基づく代表例。ライセンス・供給体制は変更される場合があるため、最新情報はメーカーへ直接確認すること。
難燃性・法規制
| 規制・規格 | 内容 |
|---|---|
| UL94難燃性 | 標準グレードはHB(水平燃焼)。難燃グレードは一般にラインナップされていない場合が多い。難燃性が必要な用途では他材料を検討すること |
| 酸素指数(LOI) | 17〜19%程度(推定値)。自己消火性はない |
| 食品衛生法(日本) | 食品接触グレードは厚生労働省告示・食品安全委員会の規定に適合するグレードを選定 |
| FDA(米国) | 21 CFR §177.1330(エチレン-メタクリル酸共重合体)に基づく食品接触許可。グレードにより適用範囲が異なる |
| RoHS指令 | 含有規制物質(鉛・カドミウム・水銀・六価クロム・PBB・PBDE)は非含有。Na・Zn型は規制対象外金属。規制遵守の確認はサプライヤーに要確認 |
| REACH規則 | SVHCリスト対象物質の非含有確認が必要。標準グレードでは通常問題なし。添加剤由来のSVHCに注意 |
| ISO 11607 | 医療器具包装用途グレードでISO 11607適合性を確認すること |
注意点・トラブル対策
| 注意事項 | 内容・対策 |
|---|---|
| 吸湿・乾燥管理 | Na型はZn型より吸湿しやすい。成形前の乾燥(70〜80℃×4〜6h)を怠るとシルバーストリーク・発泡の原因となる。フィルム用途では吸湿によるヒートシール強度低下に注意 |
| 耐熱限界 | 連続使用は70〜90℃が上限目安。イオンクラスターは80℃以上で急速に解離し始め、クリープ・変形が加速する。高温用途には不適 |
| UV劣化 | UV安定剤未添加グレードは屋外長期使用で黄変・脆化する。屋外用途には安定剤配合グレードを選定すること |
| 金属イオン溶出 | 食品・医療用途では金属イオン(Na、Zn)の微量溶出の可能性を考慮し、コンプライアンスグレードを使用すること |
| 溶剤・芳香族接触 | トルエン・ケトン・エステル・塩素系溶剤との接触は厳禁。洗浄や接触環境の確認が必要 |
| スクリュー腐食 | 長時間滞留・過加熱(250℃超)では分解ガス(微量有機酸)が発生し、金属腐食の原因となる。適切な成形温度・滞留時間管理が重要 |