概要
| 材料名 | ポリカーボネート |
|---|---|
| 略記号 | PC |
| 英語名 | Polycarbonate |
| 分類 | エンジニアリングプラスチック、熱可塑性樹脂、非晶性樹脂、透明樹脂、芳香族ポリカーボネート |
| 代表構造 | ビスフェノールA型ポリカーボネート |
| 主な種類 | 標準PC、耐候PC、難燃PC、光学PC、GF強化PC、PC/ABS、PC/PBT |
| 主な用途 | 透明カバー、レンズ、ヘルメット、電気電子部品、自動車部品、医療部品、建材 |
ポリカーボネート(PC)は、分子内にカーボネート結合を持つ熱可塑性エンジニアリングプラスチックである。 既存ページでは、一般に二価のヒドロキシ化合物と炭酸との縮合によってつくられるポリエステルの一種であり、工業的にはビスフェノールAタイプの非晶性芳香族ポリカーボネートが主流であると整理されている。
化学
PCは、透明性、耐衝撃性、耐熱性、寸法安定性、電気絶縁性に優れる材料である。 特に透明樹脂の中では耐衝撃性が非常に高く、防護カバー、レンズ、ヘルメット、照明部品、電気電子部品、自動車部品などに広く使用される。
一方で、耐薬品性には注意が必要であり、アルカリ、有機溶剤、芳香族溶剤、ケトン系溶剤、応力下でのアルコール接触により、白化、膨潤、応力クラックが発生する場合がある。
特徴
- ビスフェノールAタイプの非晶性芳香族ポリカーボネートが工業的主流である
- 透明性が高い
- 耐衝撃性が非常に高い
- 耐熱性が比較的高い
- 寸法安定性が良い
- 電気絶縁性が良い
- 自己消火性を持つグレードが多い
- 成形加工性が良い
- 低温でも衝撃強度を維持しやすい
- 耐候性は標準グレードでは十分でない場合があり、屋外用途では耐候グレードが用いられる
- 耐薬品性は高くなく、アルカリ、有機溶剤、芳香族溶剤に注意が必要である
- 成形残留応力があると、アルコールや洗浄剤でもクラックを生じる場合がある
- 表面硬度はPMMAより低く、傷が付きやすい
長所
- 透明性が高い
- 耐衝撃性が非常に高い
- 耐熱性が比較的高い
- 寸法安定性が良い
- 電気絶縁性に優れる
- 低温衝撃性に優れる
- 難燃グレードを選択しやすい
- 射出成形、押出成形、ブロー成形に対応できる
- 金属やガラスの代替材料として使用できる
短所
- 耐薬品性が低い
- アルカリに弱い
- 有機溶剤により膨潤、白化、クラックが起こりやすい
- 応力下で溶剤クラックを起こしやすい
- 表面硬度が低く、傷が付きやすい
- 耐候性は標準グレードでは不十分な場合がある
- 成形時の乾燥が不十分だと加水分解や外観不良が起こる
- PMMAより透明性、耐擦傷性、耐候性では劣る場合がある
成形加工
PCは射出成形、押出成形、ブロー成形、真空成形、切削加工に対応する。 吸湿した状態で高温成形すると加水分解やシルバー、気泡、物性低下を起こすため、成形前乾燥が重要である。 透明品では残留応力、ウェルド、焼け、白化、異物管理が特に重要である。
ミネラルウォーター
| 加工方法 | 適性 | 主な製品例 |
|---|---|---|
| 射出成形 | ◎ | レンズ、カバー、電気電子部品、自動車部品、医療部品、筐体 |
| 押出成形 | ◎ | シート、板材、フィルム、パイプ、異形材 |
| ブロー成形 | ○ | ボトル、容器、透明中空部品 |
| 真空成形 | ○ | 透明カバー、保護カバー、建材部品、照明カバー |
| 熱曲げ加工 | ○ | 板材カバー、機械カバー、防護板 |
| 切削加工 | ○ | 透明板加工品、治具、試作部品、機械部品 |
| 接着 | △ | 専用接着剤や溶剤選定が必要である |
| 塗装・ハードコート | ○ | 耐擦傷性向上、耐候性向上、加飾部品 |
構造式

ポリカーボネートは、主鎖中にカーボネート結合(−O−CO−O−)を持つ高分子である。 工業的に最も多く使用されるものは、ビスフェノールA由来の芳香族ポリカーボネートである。
芳香環を含む剛直な構造により、PCは高い耐衝撃性、透明性、耐熱性、寸法安定性を示す。 一方で、カーボネート結合はアルカリや高温高湿条件で加水分解を受けやすく、薬品接触や応力状態ではクラックが発生する場合がある。
種類
標準PC
| 名称 | 標準ポリカーボネート |
|---|---|
| 構造 | ビスフェノールA型芳香族ポリカーボネート |
| 特徴 | 透明性、耐衝撃性、耐熱性、成形性のバランスが良い |
| 主な用途 | 透明カバー、機械カバー、レンズ、筐体、一般成形品 |
特徴
- 最も一般的なPCである
- 透明性と耐衝撃性に優れる
- 射出成形、押出成形に適する
- 耐薬品性と耐候性には注意が必要である
耐候PC
| 名称 | 耐候ポリカーボネート |
|---|---|
| 構成 | 紫外線吸収剤、光安定剤、表面処理などにより耐候性を高めたPC |
| 特徴 | 屋外での黄変、脆化、物性低下を抑える |
| 主な用途 | 屋外カバー、建材、看板、車両窓、照明カバー |
特徴
- 標準PCより屋外耐久性が高い
- 紫外線による黄変を抑える
- 屋外透明板材に使用される
- 長期屋外用途ではハードコートとの併用が有効である
難燃PC
| 名称 | 難燃ポリカーボネート |
|---|---|
| 構成 | 難燃剤を配合したPC |
| 特徴 | 自己消火性、電気電子用途への適性を高めた材料 |
| 主な用途 | 電気電子筐体、電装部品、コネクタ、OA機器部品 |
特徴
- UL94 V-0相当を狙う用途で使われる
- 電気電子部品に適する
- 透明難燃グレードも存在する
- 難燃剤により透明性や機械特性が変化する場合がある
光学PC
| 名称 | 光学ポリカーボネート |
|---|---|
| 構成 | 光学用途向けに異物、複屈折、黄変、低分子成分を管理したPC |
| 特徴 | 透明性、耐衝撃性、光学成形性に優れる |
| 主な用途 | レンズ、導光部品、光ディスク、光学カバー、医療透明部品 |
特徴
- 高透明性を持つ
- 耐衝撃性が高い
- 光学成形では残留応力と複屈折の管理が重要である
- PMMAより耐衝撃性が高い
GF強化PC
| 名称 | ガラス繊維強化ポリカーボネート |
|---|---|
| 構成 | PCにガラス繊維を配合した強化グレード |
| 特徴 | 剛性、寸法安定性、耐クリープ性、荷重たわみ温度を向上できる |
| 主な用途 | 構造部品、電気電子部品、機械部品、自動車部品 |
特徴
- 剛性が大きく向上する
- 寸法安定性が改善される
- 透明性は失われる
- 成形収縮の異方性に注意が必要である
PC/ABS
| 名称 | PC/ABSアロイ |
|---|---|
| 構成 | PCとABS樹脂のポリマーアロイ |
| 特徴 | PCの耐衝撃性・耐熱性とABSの成形性・外観性を併せ持つ |
| 主な用途 | 自動車内装部品、OA機器筐体、電気電子筐体、外装部品 |
特徴
- PCより成形性が良い
- ABSより耐熱性と耐衝撃性が高い
- 外観部品に適する
- 耐薬品性はPC成分とABS成分の両方の影響を受ける
PC/PBT
| 名称 | PC/PBTアロイ |
|---|---|
| 構成 | PCとPBTのポリマーアロイ |
| 特徴 | 耐薬品性、耐衝撃性、寸法安定性のバランスを高めた材料 |
| 主な用途 | 自動車外装部品、バンパー周辺部品、電装部品、耐薬品性が必要な筐体 |
特徴
- PC単体より耐薬品性を改善しやすい
- 耐衝撃性を維持しやすい
- 自動車用途に適する
- 加水分解や成形条件の管理が必要である
代表的な物性値又は機械的性質
| 項目 | 単位 | 標準PC | 難燃PC | GF強化PC | PC/ABS |
|---|---|---|---|---|---|
| 比重 | なし | 1.19〜1.22 | 1.20〜1.25 | 1.30〜1.50 | 1.10〜1.18 |
| 光線透過率 | % | 約85〜90 | 透明グレードで高い | 不透明 | 不透明 |
| ガラス転移温度 | ℃ | 約145〜150 | 約145〜150 | 約145〜150 | 約120〜140 |
| 荷重たわみ温度 | ℃ | 120〜140 | 115〜135 | 140〜150 | 95〜125 |
| 引張強さ | MPa | 55〜70 | 55〜70 | 80〜130 | 45〜65 |
| 引張弾性率 | GPa | 2.0〜2.5 | 2.0〜2.6 | 5.0〜9.0 | 2.0〜2.8 |
| 曲げ強さ | MPa | 85〜100 | 80〜100 | 120〜180 | 70〜100 |
| アイゾット衝撃強さ | J/m | 非常に高い | 高い | 中〜高 | 高い |
| ロックウェル硬さ | なし | R115〜R125 | R110〜R125 | R120以上 | R100〜R120 |
| 成形収縮率 | % | 0.5〜0.8 | 0.5〜0.8 | 0.1〜0.4 | 0.4〜0.7 |
| 吸水率 | % | 0.15〜0.35 | 0.15〜0.35 | 0.15〜0.35 | 0.2〜0.4 |
耐薬品性
PCは透明性、耐衝撃性、耐熱性に優れる一方で、耐薬品性には注意が必要な材料である。 アルカリ、ケトン、エステル、芳香族溶剤、塩素系溶剤では膨潤、白化、クラック、分解が起こりやすい。 特に成形残留応力がある部品では、アルコールや洗浄剤でも応力クラックが発生する場合がある。
| 薬品・溶剤 | 耐性 | 備考 |
|---|---|---|
| 水 | ○ | 常温では比較的安定であるが、高温水や蒸気では加水分解に注意が必要である |
| 弱酸 | ○ | 比較的安定である |
| 強酸 | △ | 濃度、温度、接触時間により劣化する場合がある |
| 弱アルカリ | △ | 加水分解に注意が必要である |
| 強アルカリ | × | カーボネート結合が分解しやすい |
| アルコール | △ | 無応力では短期耐える場合があるが、応力下ではクラックに注意が必要である |
| アセトン | × | 白化、クラック、溶解が起こりやすい |
| MEK | × | 強く侵されやすい |
| 酢酸エチル | × | 膨潤またはクラックを起こしやすい |
| トルエン | △〜× | 膨潤、白化、クラックに注意が必要である |
| キシレン | △〜× | 長時間接触で影響が大きい |
| THF | × | 強い影響を受ける |
| 塩素系溶剤 | × | 膨潤、クラック、溶解に注意が必要である |
| ガソリン | △ | 長時間接触や応力下では注意が必要である |
| 次亜塩素酸ナトリウム | △〜× | 酸化劣化や応力クラックに注意が必要である |
更に詳しくはプラスチックの耐薬品性一覧表を参照。
SP値(溶解度パラメータ)
PCは芳香族骨格とカーボネート結合を持つ非晶性ポリマーであり、SP値が近い有機溶剤や極性溶剤に影響を受けやすい。 耐薬品性評価では、SP値だけでなく、成形残留応力、接触時間、温度、薬品濃度を考慮する必要がある。
| 材料 | SP値(δ) | 特徴 |
|---|---|---|
| ポリカーボネート(PC) | 約19〜20 MPa1/2 | 非晶性芳香族樹脂であり、ケトン、エステル、芳香族溶剤に影響を受けやすい |
| 溶媒 | SP値 | 挙動 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 水 | 約47.9 MPa1/2 | ○(常温安定) | 高温水では加水分解に注意が必要である |
| エタノール | 約26.0 MPa1/2 | △ | 応力下ではクラックに注意が必要である |
| IPA | 約23.5 MPa1/2 | △ | PCの応力クラック原因になりやすい |
| アセトン | 約19.9 MPa1/2 | × | 白化、クラック、溶解が起こりやすい |
| MEK | 約19.0 MPa1/2 | × | 強溶媒側である |
| 酢酸エチル | 約18.6 MPa1/2 | × | 膨潤やクラックが起こりやすい |
| トルエン | 約18.2 MPa1/2 | △〜× | 長時間接触で膨潤や白化が起こる場合がある |
| THF | 約18.5 MPa1/2 | × | 強い影響を受ける |
実務上の注意
- PCはアセトン、MEK、THF、酢酸エチルに弱い
- IPAやエタノールでも、成形残留応力がある場合はクラックが発生することがある
- アルカリ洗浄剤は加水分解や白化の原因になる場合がある
- 透明品ではわずかなクラックや白化が外観不良になる
- 薬品接触用途ではPC/PBT、PCTG、PET、PMMA、COCなどとの比較が必要である
製法
PCは、一般に二価フェノール化合物と炭酸誘導体を反応させて製造される。 工業的には、ビスフェノールAを原料とする芳香族ポリカーボネートが主流である。 代表的な製法には、ホスゲン法、エステル交換法、非ホスゲン法の3つの方法がある。
製法1:ホスゲン法
ビスフェノールAとホスゲンを反応させて作る

製法2:非ホスゲン法
ビスフェノールAのアルカリ水溶液とホスゲンの塩化メチレン溶液との界面重縮合による方法
製法3:エステル交換法(別名 溶解法)
ビスフェノールAとジフェニルカーボネートを高温・減圧下で製造されたもの。この方法で製造されたポリカーボネートは、ホスゲン法に比べて分子量分布が狭くなっている。

| 製法 | 特徴 | 主な製品形態 |
|---|---|---|
| 界面重合法 | ビスフェノールAとホスゲンを反応させる従来法である | 高分子量PC、成形材料 |
| エステル交換法 | ビスフェノールAとジフェニルカーボネートを溶融重縮合する | 成形材料、光学材料 |
| 非ホスゲン法 | ホスゲンを用いずに製造する環境対応型プロセスである | 汎用PC、光学PC |
| コンパウンド | 難燃剤、UV吸収剤、ガラス繊維、着色剤などを配合する | 難燃PC、耐候PC、GF強化PC |
| ポリマーアロイ化 | ABS、PBT、PETなどとブレンドして特性を調整する | PC/ABS、PC/PBT、PC/PET |
詳細な利用用途
透明部品・光学用途
- レンズ
- 透明カバー
- 導光部品
- 光ディスク
- 照明カバー
- 保護カバー
- 表示窓
安全・防護用途
- ヘルメット
- 防護面
- ゴーグル
- 機械安全カバー
- 防弾窓材
- 防護パネル
電気・電子用途
- 電気電子筐体
- コネクタ
- スイッチ部品
- リレー部品
- 絶縁部品
- OA機器部品
- バッテリーケース
自動車用途
- ヘッドランプレンズ
- 内装部品
- メーターパネル
- ピラー部品
- サンルーフ部品
- 外装加飾部品
- PC/ABS内装部品
建材・屋外用途
- ポリカーボネート板
- カーポート屋根材
- 採光板
- 温室パネル
- 防音壁
- 看板カバー
医療・食品用途
- 医療機器部品
- 透明医療部材
- 滅菌容器
- ウォータータンク
- 食品容器
- 哺乳瓶用途
工業用途
- 機械カバー
- 治具
- 透明配管カバー
- ギア
- ローラー
- 構造部品
関連材料との比較
| 比較材料 | PCとの違い | 選定ポイント |
|---|---|---|
| PMMA | PMMAは透明性、耐候性、表面硬度に優れる。PCは耐衝撃性と耐熱性に優れる | 屋外透明・耐擦傷ならPMMA、高衝撃透明用途ならPC |
| PET | PETは耐薬品性、ガスバリア性、食品包装適性に優れる。PCは耐衝撃性に優れる | ボトル・包装ならPET、防護透明部品ならPC |
| ABS | ABSは外観性、塗装性、成形性に優れる。PCは透明性、耐衝撃性、耐熱性に優れる | 筐体外観ならABS、高衝撃・透明ならPC |
| AS | ASは透明性と硬度があるが、PCは耐衝撃性が大幅に高い | 透明硬質容器ならAS、防護透明材ならPC |
| PS | PSは安価で透明性があるが、PCは耐衝撃性と耐熱性が高い | 低コスト透明品ならPS、高耐衝撃ならPC |
| PVC | PVCは耐薬品性、難燃性、低コスト性に優れる。PCは透明性、耐衝撃性、耐熱性に優れる | 配管・薬品用途ならPVC、防護透明部材ならPC |
| PBT | PBTは耐薬品性と電気特性に優れる。PCは耐衝撃性と透明性に優れる | 電装部品ならPBT、透明・高衝撃ならPC |
| POM | POMは摺動性と耐疲労性に優れる。PCは透明性と耐衝撃性に優れる | ギア・摺動ならPOM、透明防護ならPC |
代表的なメーカー
| メーカー | 代表的な製品・商品名 | 備考 |
|---|---|---|
| 三菱エンジニアリングプラスチックス | ユーピロン、ノバレックス | PC、PCアロイ、光学・電装用途 |
| 住化ポリカーボネート | カリバー | PC樹脂、シート・成形用途 |
| 帝人 | パンライト、マルチロン | PC、PCアロイ、フィルム・成形材料 |
| 出光興産 | タフロン | PC成形材料、光学用途 |
| Covestro | Makrolon | 世界的なPCブランド |
| SABIC | LEXAN、CYCOLOY | PC、PC/ABSアロイ |
| LG Chem | LUPOY PC | PC、PCアロイ |
| LOTTE Chemical | INFINO | PC、PCアロイ |
| Trinseo | CALIBRE | PC樹脂、透明・耐衝撃用途 |
| Ensinger | TECANAT | PC板材、丸棒、切削加工用素材 |

