概要
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 材料名 | 長繊維強化ポリプロピレン |
| 略記号 | LGF-PP、LFT-PP、PP-LGF、LFRT-PP |
| IUPAC | poly(propene) をマトリックス樹脂とする長繊維強化複合材料 |
| 英語名 | Long Glass Fiber Reinforced Polypropylene、Long Fiber Reinforced Polypropylene、Long Fiber Thermoplastic Polypropylene |
| 日本語名 | 長ガラス繊維強化ポリプロピレン、長繊維強化PP、長繊維熱可塑性ポリプロピレン、LFT-PP |
| 分類 | ポリオレフィン系複合材料、繊維強化熱可塑性樹脂、長繊維強化熱可塑性樹脂 |
| プラスチック分類 | ベース樹脂は汎用プラスチックであるが、長繊維強化により構造部材向けエンプラ代替材料として扱われる場合がある |
| 化学式または代表構造 | PP構成単位:[-CH2-CH(CH3)-]n + 長ガラス繊維、炭素繊維、無機充填材、相溶化剤など |
| CAS No. | ポリプロピレン:9003-07-0。長繊維強化ポリプロピレンは複合材料であり、単一CAS No.で管理されない場合が多い |
| 構造・主成分 | ポリプロピレンをマトリックス樹脂とし、一般に10mm前後の長繊維をペレット中に保持した複合材料である。実成形品では繊維長、配向、繊維含有率、成形条件により物性が変化する |
| 主な用途 | 自動車構造部品、フロントエンドモジュール、インストルメントパネル支持部材、シート部品、バッテリーケース、ファン、電動工具筐体、家電構造部材、産業機械部品 |
長繊維強化ポリプロピレンは、ポリプロピレンを母材とし、ガラス繊維や炭素繊維などの長繊維で補強した熱可塑性複合材料である。一般的な短繊維強化PPに比べ、成形品中に残存する繊維長が長くなりやすく、剛性、耐衝撃性、クリープ特性、寸法安定性、荷重たわみ温度が向上する傾向がある。
代表的には長ガラス繊維強化PPが多く、LGF-PP、LFT-PP、PP-LGFなどの略称で表される。ポリプロピレン単体より高い機械的強度を持ちながら、比重は金属や一部エンジニアリングプラスチックより低いため、自動車軽量化部品や構造部材の金属代替、PA・PBT系材料の代替候補として検討される。
ただし、長繊維強化ポリプロピレンの性能は、繊維含有率、繊維長、繊維配向、相溶化剤、PPのホモポリマー・ブロック共重合体の違い、成形時のせん断条件に大きく影響される。実使用では、グレード、温度、薬品濃度、荷重、応力、使用時間、成形品形状を確認したうえで選定する必要がある。
特徴
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 長所 | 軽量、高剛性、高衝撃性、クリープ特性、寸法安定性、耐薬品性、成形サイクル性に優れる。金属代替やPA、PBT、短繊維GF-PPの代替に使われる場合がある |
| 短所 | 成形時の繊維折損、繊維配向による異方性、外観の繊維浮き、ウェルド部強度低下、低温衝撃性、耐候性、難燃性、塗装・接着性に注意が必要である |
| 外観 | 自然色、白色、黒色、灰色など。ガラス繊維強化品ではやや不透明で、表面に繊維模様や流動痕が出る場合がある |
| 耐熱性 | PP単体より荷重たわみ温度が高い。GF30〜50%では荷重たわみ温度が120〜160℃程度まで向上する場合があるが、長期使用温度は酸化劣化、荷重、環境に依存する |
| 耐薬品性 | PP由来の耐酸、耐アルカリ、耐水、耐油性を示す。芳香族炭化水素、塩素系溶剤、一部の酸化性薬品、燃料、界面活性剤を含む環境では膨潤、応力割れ、強度低下に注意する |
| 加工性 | 射出成形が中心である。長繊維の折損を抑えるため、過度なせん断、高背圧、高速スクリュー、狭いゲート設計は避けることが望ましい |
| 分類上の注意 | ベース樹脂はPPであり、化学的にはポリオレフィン系樹脂である。一方、用途上は構造用複合材料、繊維強化エンプラ代替材料として扱われることがある |
| 難燃性 | 標準グレードは自己消火性に乏しい。難燃グレードではUL94 HB、V-2、V-0相当を狙うものがあるが、繊維量、肉厚、添加剤により異なる |
| 法規制 | RoHS、REACH、ELV、食品接触、FDA、医療用途などはグレードごとの確認が必要である。自動車用途ではIMDS登録や低VOC、低臭気グレードが指定される場合がある |
| 注意点 | 繊維配向による反り、成形収縮率の方向差、ウェルド部強度、ノッチ感受性、熱酸化劣化、アウトガス、リサイクル時の繊維長低下に注意する |
構造式
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 化学式の画像 | 画像タグは使用しない。構造は白黒表示相当として、MS Pゴシックで読みやすい表記にする: CH2=CH-CH3 → [-CH2-CH(CH3)-]n + 長繊維 |
| 代表的な構造単位 | ポリプロピレン構成単位:[-CH2-CH(CH3)-]n |
| モノマーまたは構成単位 | プロピレン、長ガラス繊維、炭素繊維、相溶化剤、酸化防止剤、耐候剤、難燃剤、着色剤など |
| 代表的な複合構造 | PPマトリックス中に長繊維が分散し、繊維表面とPPの界面をカップリング剤や無水マレイン酸変性PPなどで補強する構造である |
| 共重合体・変性グレード | ホモPP系、ブロック共重合PP系、耐衝撃改良系、耐熱安定化系、UV安定化系、難燃系、低VOC系、摺動改良系、食品接触対応系などがある |
長繊維強化ポリプロピレンは、ポリプロピレンの重合反応そのものと、長繊維を含むコンパウンド工程を組み合わせた材料である。ポリプロピレンの基本反応は、プロピレンの付加重合であり、代表式は n CH2=CH-CH3 → [-CH2-CH(CH3)-]n で表される。
種類
| 種類の名称 | 主成分または特徴 | 長所 | 短所 | 主な用途 |
|---|---|---|---|---|
| LGF-PP標準グレード | PP+長ガラス繊維20〜40% | 剛性、衝撃性、コストのバランスが良い | 外観、繊維配向、ウェルド強度に注意 | 自動車構造部品、家電構造部材、機械部品 |
| 高剛性LGF-PP | 長ガラス繊維40〜60%程度 | 曲げ弾性率、HDT、寸法安定性が高い | 比重が上がり、流動性と衝撃靭性が低下する場合がある | フロントエンドモジュール、バッテリートレー、支持部材 |
| 耐衝撃LGF-PP | ブロックPP、エラストマー改質、長繊維補強 | 低温衝撃性、実部品破壊抵抗が改善しやすい | 剛性、耐熱性が標準高剛性品より下がる場合がある | シート部品、内装構造部品、電動工具筐体 |
| 耐熱安定化LGF-PP | 長繊維+熱安定剤、酸化防止剤 | 高温使用時の強度保持、熱老化性が改善される | 長期耐熱性はPA、PBT、PPSより低い場合が多い | エンジン周辺部品、ファン、ブラケット |
| 難燃LGF-PP | 長繊維+難燃剤、必要に応じて難燃助剤 | UL94 V-0相当を狙えるグレードがある | 流動性、衝撃性、リサイクル性、電気特性に影響する場合がある | 電池ケース、電装筐体、電気部品 |
| CF強化PP | PP+長炭素繊維または炭素繊維 | 軽量、高剛性、低線膨張、導電性付与が可能 | 高コストで、外観、導電性管理、摩耗性に注意 | 軽量構造部材、導電部品、搬送治具 |
| 食品接触対応グレード | 食品接触規制に対応した原料・添加剤を使用 | 軽量、耐水、耐薬品、洗浄性が良い | 使用温度、洗浄薬品、繊維露出、摩耗粉に注意 | 食品機械部品、搬送部材、トレー、治具 |
代表グレード
| グレード区分 | 代表的な内容 | 選定上の注意 |
|---|---|---|
| 汎用 | 長ガラス繊維20〜30%程度、標準PPマトリックス | 一般構造部品向け。剛性、衝撃性、流動性のバランスで選定する |
| 耐熱 | 熱安定剤、酸化防止剤、耐熱PPを使用 | HDTだけでなく、連続使用温度、熱老化後物性を確認する |
| 難燃 | ハロゲン系または非ハロゲン系難燃剤を配合 | UL94の肉厚、色、電気特性、環境規制を確認する |
| GF強化 | 長ガラス繊維20〜60%程度 | 繊維量が増えるほど剛性は上がるが、流動性、外観、比重、成形機摩耗に注意する |
| CF強化 | 炭素繊維を用いた高剛性・導電グレード | 高コストであり、導電性、摩耗、繊維露出を確認する |
| 摺動 | PTFE、シリコーン、潤滑剤、特殊フィラーを併用する場合がある | 相手材摩耗、繊維露出、摩擦熱、グリース適合性を確認する |
| 食品接触 | 食品衛生、FDA、EU規制などを考慮したグレード | 最終用途、温度、接触時間、洗浄薬品、摩耗粉管理が必要である |
成形加工
| 成形加工法 | 適性 | 備考 |
|---|---|---|
| 射出成形 | ◎ | 最も一般的である。繊維折損を抑えるスクリュー、ゲート、背圧、射出速度の設定が重要である |
| 押出成形 | ○ | シート、プロファイル、コンパウンドに使用される。長繊維保持と分散の管理が必要である |
| ブロー成形 | △ | 標準的な中空成形には制約が多い。専用グレード、短繊維系、特殊設計で検討する |
| 圧縮成形 | ○ | GMT、LFT-D、シート状材料では適用される。大面積構造材に向く場合がある |
| 真空成形 | △ | 押出シートや連続繊維シートでは可能な場合があるが、深絞り性、繊維配向、表面外観に注意する |
| 切削加工 | ○ | 試作や治具に可能である。繊維による工具摩耗、バリ、毛羽立ちに注意する |
| 溶着 | △ | 超音波溶着、振動溶着、熱板溶着を検討できるが、繊維配向と添加剤により条件が変わる |
| 接着 | △ | PPは低表面エネルギーで接着しにくい。表面処理、プライマー、機械的固定を検討する |
| 3Dプリント | △ | 短繊維・長繊維フィラメントがあるが、量産用LFT-PPとは物性、繊維長、異方性が異なる |
成形条件
| 項目 | 代表条件 | 備考 |
|---|---|---|
| 乾燥温度 | 通常は不要〜80℃×2〜4時間程度 | PPは低吸水であるが、保管状態、添加剤、ガラス繊維表面処理により予備乾燥が推奨される場合がある |
| シリンダー温度 | 190〜240℃程度 | グレードにより180〜260℃程度。過度な高温は熱劣化、臭気、繊維界面劣化の原因となる |
| 金型温度 | 30〜80℃程度 | 寸法安定性、表面外観、結晶化、反りを見ながら調整する |
| スクリュー回転数 | 低〜中速 | 長繊維の折損を抑えるため、過度なせん断を避ける |
| 背圧 | 低め | 混練不足と繊維折損のバランスを取る。高背圧は残存繊維長を短くする場合がある |
| ゲート設計 | 大きめのゲートが望ましい | ピンゲートや狭いゲートは繊維折損、圧力損失、ウェルド強度低下の原因となる |
| 成形収縮率 | 0.2〜1.0%程度 | 流動方向と直角方向で差が出る。繊維量、繊維配向、肉厚、金型温度で変化する |
代表的な物性値又は機械的性質
| 項目 | 単位 | 未強化PP | 短繊維GF-PP 30% | 長繊維GF-PP 30% | 長繊維GF-PP 40〜50% | CF強化PP | 備考 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 密度 | g/cm3 | 0.90〜0.91 | 1.10〜1.25 | 1.08〜1.15 | 1.20〜1.35 | 1.05〜1.25 | 繊維含有率により増加する |
| 引張強さ | MPa | 25〜40 | 60〜110 | 80〜130 | 100〜160 | 80〜180 | 繊維配向、ウェルド、試験片方向に依存する |
| 伸び | % | 100〜600 | 2〜5 | 2〜6 | 1.5〜4 | 1〜5 | 強化材により延性は低下する |
| 曲げ弾性率 | GPa | 1.0〜1.8 | 4〜7 | 5〜9 | 8〜12 | 6〜15 | 長繊維、高繊維量ほど高くなる傾向がある |
| アイゾット衝撃強さ | kJ/m2 | 2〜8 | 4〜12 | 8〜30 | 8〜25 | 5〜20 | ノッチ付き。低温では大きく低下する場合がある |
| 荷重たわみ温度 | ℃ | 50〜100 | 100〜145 | 120〜155 | 140〜165 | 120〜160 | 0.45MPaまたは1.8MPaで値が異なる |
| 融点 | ℃ | 160〜170 | 160〜170 | 160〜170 | 160〜170 | 160〜170 | PPマトリックスに由来する |
| ガラス転移温度 | ℃ | -10前後 | -10前後 | -10前後 | -10前後 | -10前後 | 低温衝撃性の評価が必要である |
| 連続使用温度 | ℃ | 80〜100 | 90〜110 | 100〜120 | 105〜125 | 100〜125 | 熱老化、荷重、酸化、薬品接触で変化する |
| 吸水率 | % | 0.01〜0.03 | 0.02〜0.08 | 0.02〜0.08 | 0.03〜0.10 | 0.02〜0.08 | PA、PBT、PET、PUより低吸水で寸法変化が小さい傾向がある |
| 体積抵抗率 | Ω・cm | 1016以上 | 1014〜1016 | 1014〜1016 | 1013〜1016 | 102〜108 | CF強化や導電フィラー配合では導電性を示す |
| 線膨張係数 | ×10-5/℃ | 8〜12 | 3〜6 | 2〜5 | 1.5〜4 | 1〜4 | 繊維配向方向で異方性がある |
| 難燃性 | UL94 | HB程度 | HB程度 | HB程度 | HB程度 | HB程度 | 難燃グレードではV-2、V-0相当が設定される場合がある |
上記は代表値の目安であり、保証値ではない。長繊維強化ポリプロピレンは、実部品中の繊維長、流動方向、ウェルド位置、肉厚、ゲート位置、リブ形状、試験片切り出し方向により物性が大きく変化する。設計では、カタログ値だけでなく、実成形品での曲げ、衝撃、クリープ、熱老化、耐薬品性を確認することが望ましい。
耐薬品性
| 薬品分類 | 代表薬品 | 評価 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 酸類 | 塩酸、希硫酸、酢酸、リン酸 | ◎〜○ | 一般に良好である。ただし濃硫酸、硝酸、酸化性酸では劣化する場合がある |
| アルカリ類 | 水酸化ナトリウム、KOH、炭酸ナトリウム、アンモニア水 | ◎ | PP由来で耐アルカリ性は良好である。高温、濃厚条件では長期確認が必要である |
| 低級アルコール類 | メタノール、エタノール、IPA | ◎〜○ | 短時間接触では比較的安定である。応力下や高温では確認が必要である |
| 高級アルコール類 | グリセリン、ベンジルアルコール、MMB、ブチルアルコール | ○〜△ | 多価アルコールは比較的良好な場合が多いが、芳香族アルコールやグリコールエーテル類では膨潤確認が必要である |
| 芳香族炭化水素類 | トルエン、キシレン、エチルベンゼン | △〜× | SP値が近く、膨潤、軟化、応力割れを起こす場合がある |
| 脂肪族炭化水素類 | ヘキサン、ヘプタン、ミネラルスピリット、灯油 | △ | 短時間では使用できる場合があるが、燃料、油、応力、温度条件で膨潤することがある |
| ケトン | アセトン、MEK、MIBK | ○〜△ | 常温短時間では比較的安定な場合があるが、応力下、混合溶剤、長時間接触では確認が必要である |
| エステル | 酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エステル | ○〜△ | 短時間では良好な場合があるが、芳香族溶剤や炭化水素との混合では注意する |
| 塩素系溶剤 | ジクロロメタン、クロロホルム、トリクロロエチレン | × | 膨潤、軟化、応力割れを起こしやすいため原則として避ける |
| 水・温水 | 水道水、純水、温水 | ◎ | 低吸水で寸法変化は小さい。高温温水、塩素、洗浄剤、長時間では添加剤や界面劣化を確認する |
| 油 | 鉱物油、動植物油、潤滑油、作動油 | ○〜△ | 油種、添加剤、温度により膨潤する場合がある。燃料油や芳香族成分を含む油では注意する |
| 酸化剤 | 次亜塩素酸ナトリウム、過酸化水素、濃硝酸 | △〜× | PPの酸化劣化、繊維界面劣化、強度低下を起こす場合がある |
| 界面活性剤・洗剤 | アルカリ洗浄剤、中性洗剤、脱脂剤 | ○〜△ | 一般に良好な場合が多いが、溶剤配合、強アルカリ、高温、応力下では確認が必要である |
耐薬品性は、温度、濃度、接触時間、応力、成形ひずみ、繊維露出、添加剤、表面処理により変化する。特に燃料、油、芳香族溶剤、塩素系溶剤、強酸化剤、界面活性剤を含む洗浄剤では、実液浸せき試験、応力負荷試験、熱老化試験を行うことが望ましい。
SP値(溶解度パラメータ)
| 項目 | 値 | 備考 |
|---|---|---|
| 長繊維強化ポリプロピレンの代表SP値 | 約16〜18 MPa1/2 | マトリックスであるPPの値を基準とする。長ガラス繊維は無機成分であり、溶解性評価ではPP相の影響が大きい |
| PP単体の代表SP値 | 約16.0〜17.0 MPa1/2 | 文献、測定法、結晶化度、温度により差がある |
| 評価上の注意 | SP値は目安 | SP値だけで耐薬品性は判断できない。結晶性、拡散速度、温度、応力、添加剤、繊維界面、酸化反応を併せて評価する必要がある |
溶解性の目安
| SP値差 | 溶解・膨潤の目安 | 判定 |
|---|---|---|
| 0〜2 | 膨潤・軟化しやすい | × |
| 2〜5 | 条件により膨潤する | △ |
| 5〜8 | 短時間接触では比較的安定 | ○ |
| 8以上 | 溶解・膨潤しにくい | ◎ |
SP値から見た耐溶剤性
| 薬品名 | 代表SP値 MPa1/2 | PPとの差 | 評価 | 注意点 |
|---|---|---|---|---|
| ヘキサン | 14.9 | 約1〜2 | △ | SP値は近い。常温短時間では耐える場合があるが、膨潤に注意する |
| トルエン | 18.2 | 約1〜2 | ×〜△ | 芳香族炭化水素はPPを膨潤させやすい |
| キシレン | 18.0 | 約1〜2 | ×〜△ | 高温、長時間、応力下では不適となりやすい |
| 灯油 | 約16〜17 | 約0〜1 | △ | 燃料・油成分により膨潤する場合がある |
| アセトン | 19.9 | 約3〜4 | ○〜△ | 短時間では比較的安定な場合があるが、応力割れ確認が必要である |
| MEK | 19.0 | 約2〜3 | ○〜△ | 混合溶剤では評価が変わる |
| 酢酸エチル | 18.6 | 約2 | ○〜△ | 高温、長時間、応力下では膨潤確認が必要である |
| エタノール | 26.0 | 約9〜10 | ◎〜○ | 一般に良好であるが、添加剤抽出や応力下は確認する |
| IPA | 23.5 | 約6〜7 | ○ | 短時間接触では比較的安定である |
| 水 | 47.9 | 約31 | ◎ | PP相は水に対して非常に安定である |
| ジクロロメタン | 20.2 | 約3〜4 | × | 塩素系溶剤は膨潤、応力割れのリスクが高い |
| グリセリン | 約33〜36 | 約17〜20 | ◎〜○ | 一般に良好であるが、高温長時間では確認する |
評価基準は、◎非常に良好、○概ね良好、△注意が必要、×不適である。SP値差による判定は、非反応性溶剤に対する膨潤傾向の初期目安であり、酸化剤、強酸、強アルカリ、界面活性剤、燃料、油、混合溶剤では実液評価を優先する必要がある。
製法
| 工程 | 内容 | 注意点 |
|---|---|---|
| 原料 | プロピレン、ポリプロピレン樹脂、長ガラス繊維、炭素繊維、相溶化剤、酸化防止剤、耐候剤、難燃剤、着色剤など | PPの分子量、MFR、ホモ・ブロック共重合、繊維表面処理が物性に影響する |
| 重合方法 | プロピレンをチーグラー・ナッタ触媒またはメタロセン触媒などで付加重合し、PP樹脂を得る | 立体規則性、結晶化度、MFR、耐衝撃性によりグレード特性が変わる |
| 代表反応式 | n CH2=CH-CH3 → [-CH2-CH(CH3)-]n | 長繊維強化は重合反応ではなく、重合後の複合化工程で行われる |
| ペレット化 | 引抜含浸法、ワイヤーコーティング法、二軸押出コンパウンド法などで、繊維をPP中に含浸させてペレット化する | 長繊維ペレットではペレット長と繊維長がほぼ同程度になる設計が多い |
| コンパウンド | PP、長繊維、添加剤、着色剤を配合し、繊維分散と界面接着を調整する | 過度な混練は繊維折損を招くため、分散と繊維長保持のバランスが重要である |
| 添加剤 | 無水マレイン酸変性PP、酸化防止剤、ヒンダードアミン系光安定剤、紫外線吸収剤、難燃剤、滑剤、帯電防止剤など | 添加剤は耐熱性、VOC、臭気、食品接触、電気特性に影響する |
| 成形 | 射出成形、圧縮成形、LFT-D、GMT成形など | 成形中の繊維折損、繊維配向、ウェルド部、反りを管理する |
長繊維強化ポリプロピレンの製法では、PPの重合、長繊維への樹脂含浸、ペレット切断、射出成形または圧縮成形の各工程が重要である。特に、成形品中にどの程度の繊維長が残るかが、剛性、衝撃性、クリープ、寸法安定性に大きく関係する。
詳細な利用用途
| 分野 | 代表用途 | 選定理由 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 自動車 | フロントエンドモジュール、シートフレーム、インストルメントパネル支持部材、アンダーカバー、バッテリーケース、ファン、ブラケット | 軽量、高剛性、耐衝撃性、成形一体化、金属代替性 | 熱老化、衝突安全、低温衝撃、VOC、寸法安定性、リサイクル性を確認する |
| 電気・電子 | 電池ケース、配電箱、電装筐体、コネクタ周辺部材、ファン部品 | 軽量、剛性、電気絶縁性、難燃グレードの選択が可能 | UL94、CTI、発煙性、難燃剤、発熱部品との距離を確認する |
| 機械部品 | ギア、レバー、ハンドル、フレーム、搬送治具、支持部材 | 高剛性、耐薬品、低吸水、量産成形性 | 摺動摩耗、繊維露出、相手材攻撃性、クリープを確認する |
| 医療 | 装置筐体、搬送部材、非インプラント部品、機器内部構造材 | 軽量、耐薬品、寸法安定性 | 滅菌条件、生体適合、抽出物、薬機規制は専用グレードで確認する |
| 食品機械 | 搬送部品、カバー、洗浄周辺部材、治具、トレー | 低吸水、耐アルカリ、耐洗浄剤、軽量 | 食品接触適合、摩耗粉、繊維露出、高温洗浄、次亜塩素酸系薬品に注意する |
| 建築・設備 | 配電部材、設備カバー、ダクト部材、支持具、屋外部品 | 軽量、耐水、耐薬品、成形性 | 耐候性、難燃性、長期荷重、熱変形を確認する |
| 家電・工具 | 掃除機部品、洗濯機部品、電動工具筐体、ファン、モーター周辺部品 | 衝撃性、剛性、コスト、量産性 | 落下衝撃、発熱、騒音、振動、外観を確認する |
| 用途別選定 | ギア、軸受、チューブ、筐体、フィルム、コネクタ、構造フレーム | ギア・軸受は摺動グレード、筐体は耐衝撃・難燃、コネクタは電気特性と寸法精度を重視する | チューブやフィルム用途では長繊維の適用性が低い場合が多く、PP単体や短繊維系を検討する |
関連材料との比較
| 比較材料 | 特徴 | 対象材料との違い |
|---|---|---|
| ポリプロピレン(PP) | 軽量で耐薬品性、成形性、コストに優れる汎用プラスチック | 長繊維強化PPはPPより剛性、衝撃性、HDT、クリープ特性に優れるが、比重、コスト、外観、成形収縮の異方性は増加する |
| [[短繊維ガラス強化ポリプロピレン]] | 短繊維ガラスを配合したPP複合材料 | 短繊維GF-PPは流動性と成形性に優れる場合がある。長繊維強化PPは衝撃性、クリープ、実部品強度で有利な場合がある |
| ナイロン6(PA6) | 靭性、耐摩耗性、機械的強度に優れるポリアミド | LGF-PPは低吸水、軽量、耐薬品性で有利な場合がある。PA6は耐摩耗性、油中使用、靭性で有利な場合がある |
| ナイロン66(PA66) | PA6より融点と耐熱性が高いポリアミド | PA66-GFは高温強度で有利な場合がある。LGF-PPは低比重、低吸水、成形時の寸法安定性、コストで有利な場合がある |
| GF-PBT | 電気特性、寸法安定性、耐薬品性に優れるガラス繊維強化ポリエステル | GF-PBTはコネクタ、電装部品で有利な場合がある。LGF-PPは軽量、低吸水、耐アルカリ、コストで有利な場合がある |
| ポリアセタール(POM) | 低摩擦、耐摩耗性、寸法安定性、耐疲労性に優れる | POMは摺動部品や精密ギアで有利である。LGF-PPは大型構造部材、軽量化、耐薬品用途で有利な場合がある |
| ABS樹脂 | 外観性、耐衝撃性、塗装性、めっき性に優れるスチレン系樹脂 | ABSは外観部品に向く。LGF-PPは構造強度、軽量性、耐薬品性で有利だが、塗装・接着性と外観はABSに劣る場合がある |
| ポリカーボネート(PC) | 透明性、耐衝撃性、耐熱性に優れる非晶性エンプラ | PCは透明・高衝撃用途に適する。LGF-PPは低比重、耐薬品、構造部材のコストバランスで有利な場合がある |
| ポリフェニレンサルファイド(PPS) | 耐熱性、耐薬品性、難燃性、寸法安定性に優れるスーパーエンプラ | PPSは高温・薬品環境で有利である。LGF-PPは低コスト、軽量、成形サイクル、大型部品で有利な場合がある |
| 金属材料 | アルミ、鋼板、マグネシウムなど高剛性・高耐熱の構造材料 | LGF-PPは軽量化、部品一体化、腐食回避に有利な場合があるが、絶対剛性、耐熱性、ねじ締結強度、長期クリープでは金属に劣る |
代表的なメーカー
| メーカー | 代表製品・ブランド | 概要 |
|---|---|---|
| SABIC | STAMAX | 長ガラス繊維強化PPの代表的ブランドであり、自動車構造部品、電装部品、軽量化部材向けに使用される |
| Celanese | Celstran、Compel | 長繊維強化熱可塑性樹脂を展開するメーカーであり、PP-GF、PP-CFなどの長繊維複合材料を扱う |
| 三井化学グループ | 長ガラス繊維強化ポリプロピレン関連グレード | 自動車用途を中心にPPコンパウンド、長繊維強化PPを展開する。グレード名は用途・地域により確認が必要である |
| Avient | Complēt Long Fiber Reinforced Thermoplastics など | 長繊維強化熱可塑性コンパウンドを展開する材料メーカーであり、構造部材、輸送機器、産業用途向けに使用される |
| RTP Company | Long Fiber Thermoplastic Compounds | カスタムコンパウンドを含む長繊維強化熱可塑性樹脂を扱うメーカーである。用途に応じた配合設計が行われる |
| Daicel | プラストロン系長繊維強化熱可塑性樹脂など | 長繊維強化熱可塑性樹脂を展開する国内メーカーの一つである。対象樹脂、繊維種、グレードは用途ごとに確認する |
| LOTTE Chemical | 長繊維強化PP関連グレード | PPコンパウンド、長繊維強化材料を展開するメーカーであり、自動車・電気電子用途で検討される |
| KINGFA | 長繊維強化PP関連グレード | 自動車、電気電子、産業用途向けの長繊維強化熱可塑性材料を展開するメーカーである |
代表メーカー・ブランドは、地域、販売代理店、グレード統廃合により変わる場合がある。採用時には最新版の技術資料、SDS、成形条件表、規制適合証明、供給体制を確認する必要がある。
法規制・安全性
| 項目 | 確認内容 | 注意点 |
|---|---|---|
| RoHS | 鉛、カドミウム、水銀、六価クロム、特定臭素系難燃剤、フタル酸エステル類など | 標準PPは対応しやすいが、難燃剤、着色剤、再生材を含む場合は個別確認が必要である |
| REACH | SVHC、制限物質、登録状況 | 添加剤、難燃剤、繊維表面処理剤、着色剤の確認が必要である |
| 食品衛生 | 日本の食品衛生法、ポジティブリスト、溶出試験 | 食品接触用途ではグレード指定と最終製品試験が必要である |
| FDA | 米国食品接触用途への適合性 | PP、添加剤、ガラス繊維処理剤、着色剤のすべてを確認する |
| 医療用途 | ISO 10993、USP Class VI、滅菌適合性など | 一般グレードを医療用途へ転用しない。医療対応グレードで確認する |
| 自動車 | ELV、IMDS、低VOC、臭気、フォギング | 内装用途では低VOC・低臭気要求がある。リサイクル材使用時は特に確認する |
選定時の注意点
- 長繊維強化ポリプロピレンは、同じ繊維含有率でも成形条件により残存繊維長が変化し、実部品物性が変わる。
- 流動方向と直角方向で収縮率、線膨張係数、強度が異なるため、大型部品では反り解析と試作評価が重要である。
- ウェルド部は繊維が連続しにくく、衝撃強度や疲労強度が低下する場合がある。
- PPは低吸水であるが、ガラス繊維表面や添加剤の影響により、長期温水、洗浄剤、薬品環境では強度低下を確認する。
- 芳香族炭化水素、塩素系溶剤、燃料、油、強酸化剤では膨潤、応力割れ、界面劣化に注意する。
- 高温長期使用では熱酸化劣化が問題となるため、HDTだけでなく連続使用温度、熱老化後強度、クリープを確認する。
- 摺動用途では繊維露出により相手材を摩耗させる場合がある。
- 難燃グレードでは、UL94の肉厚、色、トラッキング性、発煙性、規制適合を確認する。
- リサイクル時は再溶融により繊維長が短くなり、衝撃性や剛性が低下する場合がある。
- アウトガス、臭気、VOCが問題となる用途では、低VOCグレードと実成形品での評価が必要である。
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