短繊維ガラス強化ポリプロピレン

概要

項目内容
材料名短繊維ガラス強化ポリプロピレン
略記号GF-PP、PP-GF、SGF-PP、PP-GF30など
IUPACpoly(propene) を主成分とするガラス短繊維強化複合材料
英語名Short Glass Fiber Reinforced Polypropylene、Short Glass Fiber Filled Polypropylene
日本語名短繊維ガラス強化PP、ガラス短繊維強化ポリプロピレン、ガラス繊維強化PP、GF強化PP
分類熱可塑性樹脂複合材料、ガラス繊維強化プラスチック、ポリオレフィン系強化材料
プラスチック分類汎用プラスチックをベースとする強化グレードであるが、物性面ではエンプラ代替として扱われることがある
化学式または代表構造PPマトリックス:[-CH2-CH(CH3)-]n、強化材:SiO2、Al2O3、CaOなどを主成分とするEガラス繊維
CAS No.ポリプロピレン:9003-07-0。短繊維ガラス強化PPは複合材料であり、単一CAS No.で管理されない場合が多い
構造・主成分ポリプロピレン樹脂に短繊維ガラス、無水マレイン酸変性PPなどの相溶化剤、安定剤、必要に応じて難燃剤、摺動材、着色剤を配合したコンパウンドである
主な用途自動車部品、電装部品、構造部品、家電部品、ポンプ部品、ファン、ブラケット、ハウジング、機械カバー、搬送部品

短繊維ガラス強化ポリプロピレンは、ポリプロピレンを母材とし、短く切断されたガラス繊維を配合して剛性、寸法安定性、耐熱性、耐クリープ性を高めた熱可塑性複合材料である。一般にガラス繊維量は10〜40質量%程度が多く、30%配合品はPP-GF30として代表的に扱われる。

非強化PPに比べて曲げ弾性率、荷重たわみ温度、成形収縮の低減に優れるため、金属部品やポリアミドポリブチレンテレフタレートなどのエンプラ代替として検討されることがある。一方で、繊維配向による異方性、外観性、ウェルド強度、衝撃性、繊維浮き、金型摩耗には注意が必要である。

PP由来の低吸水性と耐薬品性を持つため、水、アルカリ、油類に対して比較的安定である。ただし、芳香族炭化水素、塩素系溶剤、強酸化性薬品、高温下の燃料、界面活性剤を含む薬液では、膨潤、応力割れ、界面劣化が起こる場合がある。実使用ではグレード、温度、濃度、荷重、応力、使用時間を確認する必要がある。

特徴

長所
  • 非強化PPより剛性、曲げ強さ、荷重たわみ温度が高い。
  • 吸水率が低く、PA系材料より寸法変化が小さい場合が多い。
  • 比重が比較的低く、金属やGF強化エンプラに対して軽量化しやすい。
  • 射出成形性が良く、量産部品に適用しやすい。
  • 耐アルカリ性、耐水性、耐油性が比較的良好である。
  • コストと性能のバランスが良く、自動車部品で採用されやすい。
  • 相溶化剤によりガラス繊維とPPの界面接着を改善できる。
短所
  • 繊維配向により成形収縮、強度、反りに異方性が出やすい。
  • 非強化PPより比重が高く、成形品表面に繊維浮きが出る場合がある。
  • 低温衝撃性やノッチ付き衝撃性は、配合や繊維量により低下することがある。
  • ウェルド部ではガラス繊維が連続しにくく、強度低下に注意が必要である。
  • 強酸化性薬品、芳香族溶剤、塩素系溶剤には注意が必要である。
  • ガラス繊維によりスクリュー、シリンダー、金型の摩耗が進みやすい。
  • 難燃性は標準グレードでは高くなく、必要に応じて難燃グレードを選定する。
外観

一般に自然色は乳白色から灰白色、不透明である。黒色、灰色、着色グレードも多い。ガラス繊維量が多い場合や成形条件が不適切な場合、表面に繊維浮き、フローマーク、シルバー、ウェルドラインが現れやすい。

耐熱性

PPの融点は一般に約160〜170℃であり、短繊維ガラス強化により荷重たわみ温度と高温剛性が向上する。PP-GF30では荷重たわみ温度が120〜160℃程度となるグレードが多い。ただし、連続使用温度は酸化劣化、荷重、応力、安定剤、環境条件により変化するため、一般には100〜120℃程度を目安として確認する。

耐薬品性

水、塩類水溶液、アルカリ、低級アルコール、油類には比較的安定である。一方で、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素、ガソリン、塩素系溶剤、強酸化性薬品では膨潤、軟化、応力割れを生じる場合がある。ガラス繊維界面や添加剤の影響もあるため、耐薬品性はPP単体と完全には一致しない。

加工性

射出成形が最も一般的である。押出成形も可能であるが、繊維の破断、分散、配向、表面外観に注意する。短繊維配合材はシート成形や真空成形よりも、射出成形によるリブ付き構造部品に適する場合が多い。

分類上の注意

短繊維ガラス強化PPは、ベース樹脂としては汎用プラスチックであるポリプロピレンに属する。しかし、ガラス繊維強化により剛性、耐熱性、寸法安定性が大きく向上するため、実務上はエンプラ代替材料、軽量構造用コンパウンド、ガラス繊維強化プラスチックの一種として扱われることがある。

構造式

化学式の画像

画像タグは使用せず、HTML本文内では以下のように代表構造を文字式で表記する。

項目代表構造
PPの繰返し単位[-CH2-CH(CH3)-]n
プロピレンモノマーCH2=CH-CH3
ガラス繊維主成分SiO2、Al2O3、CaO、MgOなどを含む無機ガラス
界面相溶化剤の代表例無水マレイン酸変性ポリプロピレン、MAPP
代表的な構造単位

短繊維ガラス強化PPの基本構造は、結晶性ポリプロピレンの連続相に、数百μmから数mm程度のガラス短繊維が分散した複合構造である。射出成形では流動方向に繊維が配向しやすく、強度、弾性率、収縮率、反りに方向性が現れる。

モノマーまたは構成単位
  • モノマー:プロピレン CH2=CH-CH3
  • ポリマー:ポリプロピレン [-CH2-CH(CH3)-]n
  • 強化材:Eガラス短繊維、表面処理ガラス繊維
  • 界面改質材:無水マレイン酸変性PPなど
  • 添加剤:酸化防止剤、熱安定剤、滑剤、難燃剤、紫外線吸収剤、着色剤など
共重合体や変性グレード

母材にはホモPP、ブロックPP、耐衝撃PP、ランダムPPなどが使用される。剛性と耐熱性を重視する場合はホモPP系、衝撃性を重視する場合はブロックPP系が選ばれることが多い。ガラス繊維との密着性を高めるため、無水マレイン酸変性PPを加えたグレードが一般的である。

種類

種類の名称主成分または特徴長所短所主な用途
PP-GF10ガラス繊維約10%配合流動性、成形性、外観性のバランスが良い剛性向上は限定的である家電部品、軽荷重ブラケット、小型ケース
PP-GF20ガラス繊維約20%配合剛性、寸法安定性、成形性のバランスが良い繊維配向による反りに注意が必要である自動車内外装部品、電装ケース、ファン
PP-GF30ガラス繊維約30%配合の代表グレード高剛性、高HDT、耐クリープ性に優れる外観、ウェルド強度、金型摩耗に注意する構造部品、ブラケット、ポンプ部品、機械カバー
PP-GF40ガラス繊維約40%配合剛性と寸法安定性がさらに高い流動性低下、反り、繊維浮きが出やすい高剛性部品、金属代替部品、支持部材
耐熱GF強化PP熱安定剤、耐熱PP、ガラス繊維を組み合わせたグレード高温剛性、熱老化性が改善される長期高温では酸化劣化を確認する必要があるエンジン周辺部品、温水周辺部品、電装部品
難燃GF強化PP難燃剤を配合したガラス繊維強化PPUL94 V-0相当を狙えるグレードがある耐衝撃性、流動性、耐候性が低下する場合がある電気・電子部品、筐体、端子台周辺部品
摺動GF強化PPPTFE、シリコーン、潤滑剤などを併用する場合がある摩擦係数や摩耗を改善しやすい相手材摩耗、添加剤のブリードに注意する摺動ガイド、ローラー、低荷重ギア、搬送部品
食品接触対応GF強化PP食品接触用途に対応する原料・添加剤を選定したグレード低吸水で洗浄環境に使いやすい場合がある適用法規、抽出試験、洗浄薬品への耐性確認が必要である食品機械部品、治具、搬送部品、カバー

成形加工

成形加工法適性内容
射出成形最も一般的な加工法である。リブ、ボス、ブラケット、ハウジングなどの量産成形に適する。
押出成形シート、板、異形押出で適用される場合がある。繊維破断、分散、表面外観に注意する。
ブロー成形特殊グレードでは可能な場合があるが、繊維配向、パリソン安定性、表面外観の管理が難しい。
圧縮成形短繊維ペレットでは一般的ではない。シート状材料やスタンパブル材では検討される。
真空成形押出シートを用いる場合に限定的に可能である。深絞りでは繊維配向と白化に注意する。
切削加工試作や追加工は可能である。ガラス繊維により工具摩耗が大きく、バリや繊維露出に注意する。
溶着超音波溶着、振動溶着、熱板溶着が可能な場合がある。繊維量と界面状態により強度が変わる。
接着PPは低表面エネルギーで接着しにくい。表面処理、プライマー、接着剤選定が必要である。
二色成形・インサート成形金属インサートや他材料との複合化に使われる。熱膨張差と残留応力に注意する。
代表的な成形条件
項目代表範囲備考
乾燥温度通常は不要、必要時80〜100℃PP自体は吸水が少ないが、表面水分や保管状態により予備乾燥する場合がある
乾燥時間1〜3時間程度開封後の吸湿、結露、ガラス繊維表面水分がある場合の目安である
シリンダー温度190〜240℃グレード、流動性、繊維量により調整する
ノズル温度200〜240℃過熱滞留による酸化劣化、ガス、黒点に注意する
金型温度30〜80℃寸法安定性、外観、結晶化、反りに影響する
成形収縮率流動方向0.2〜0.8%、直角方向0.6〜1.5%程度繊維配向により異方性が大きい。金型設計時に実測確認が必要である
背圧低〜中程度過度な混練は繊維破断を招く場合がある
スクリュー耐摩耗仕様が望ましいガラス繊維により摩耗が進みやすい

代表的な物性値又は機械的性質

以下は代表値の目安であり、保証値ではない。短繊維ガラス強化PPは、ガラス繊維量、母材PP、相溶化剤、繊維長、成形条件、試験片の繊維配向により物性が大きく変化する。

項目単位非強化PPPP-GF20PP-GF30PP-GF40備考
密度g/cm30.90〜0.911.03〜1.081.12〜1.181.22〜1.30ガラス繊維量により増加する
引張強さMPa25〜4050〜8070〜11085〜130流動方向で高くなりやすい
伸び%100〜500以上2〜51.5〜41〜3ガラス繊維配合で低下する
曲げ強さMPa35〜5570〜110100〜150120〜180構造部品では重要な指標である
曲げ弾性率MPa1,200〜1,8003,500〜5,5005,000〜8,0007,000〜10,000繊維量の影響が大きい
アイゾット衝撃強さkJ/m23〜104〜105〜125〜15ノッチ付き。耐衝撃改良グレードでは高くなる
荷重たわみ温度60〜100110〜145130〜160145〜165荷重条件により大きく変わる
融点160〜170160〜170160〜170160〜170母材PPに依存する
ガラス転移温度-10〜0程度-10〜0程度-10〜0程度-10〜0程度PP相の目安である
連続使用温度80〜10090〜110100〜120100〜125荷重、空気中酸化、安定剤により変化する
吸水率%0.01〜0.030.02〜0.050.02〜0.060.03〜0.08PA、PBT、PET、PUより低吸水である場合が多い
線膨張係数10-5/K10〜154〜93〜72〜6方向性がある
体積抵抗率Ω・cm1015以上1014〜10161014〜10161014〜1016絶縁材料として扱われることが多い
難燃性UL94HB相当が多いHB相当が多いHB相当が多いHB相当が多い難燃グレードではV-2、V-0相当を狙う場合がある
酸素指数%17〜19程度18〜21程度18〜22程度18〜22程度標準グレードは燃えやすい側である
GF、CF、その他複合材との比較
材料密度目安剛性耐熱性特徴
非強化PP0.90〜0.91低〜中軽量、低コスト、耐薬品性が良いが、構造剛性は限定的である
短繊維GF強化PP1.03〜1.30中〜高中〜高射出成形向けで、剛性とコストのバランスが良い
長繊維GF強化PP1.05〜1.35中〜高短繊維より衝撃性、疲労性、クリープ性に優れる場合がある
タルク充填PP1.00〜1.20寸法安定性、外観、コストに優れるが、GFほど高剛性ではない
短繊維CF強化PP1.00〜1.20中〜高軽量高剛性で導電性を付与しやすいが、コストが高い
GF強化PA61.30〜1.45靭性、耐摩耗性に優れるが、吸水による寸法変化に注意する
GF強化PBT1.45〜1.65電気特性、寸法安定性に優れるが、比重とコストは高めである

耐薬品性

短繊維ガラス強化PPの耐薬品性は、母材PPの耐薬品性に大きく依存する。ただし、ガラス繊維表面処理剤、相溶化剤、難燃剤、顔料、残留応力、ウェルド部、繊維露出部により、実際の耐久性は変わる。下表は常温付近、短時間から中期接触における目安である。

薬品分類代表薬品評価注意点
酸類希塩酸、希硫酸、酢酸、クエン酸希酸には比較的安定である。濃硫酸、硝酸、クロム酸など強酸化性酸は不適である
アルカリ類水酸化ナトリウム、NaOH、水酸化カリウム、KOH、炭酸ナトリウムPPはアルカリに強い。高温・高濃度では添加剤やガラス繊維界面への影響を確認する
低級アルコール類メタノール、エタノール、IPA常温では比較的安定である。応力下や長期浸漬では確認が必要である
高級アルコール類グリセリン、ベンジルアルコール、MMB多価アルコールには比較的安定であるが、芳香族アルコールや高温では注意する
芳香族炭化水素類トルエン、キシレン、エチルベンゼン膨潤、軟化、応力割れの可能性がある。高温では不適となる場合が多い
脂肪族炭化水素類ヘキサン、ヘプタン、灯油、ガソリン油類には比較的安定だが、燃料や低分子炭化水素では膨潤しやすい場合がある
ケトンアセトン、MEK、MIBK○〜△短時間接触では比較的安定な場合があるが、応力、温度、混合溶剤で評価が変わる
エステル酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エステル○〜△低温短時間では耐える場合がある。高温、長期浸漬、応力下では確認する
塩素系溶剤ジクロロメタン、クロロホルム、トリクロロエチレン×膨潤、軟化、クラックが発生しやすい。洗浄用途では避けるのが一般的である
水・温水水、純水、温水、塩水◎〜○吸水は少ない。高温水、蒸気、長期荷重下では酸化劣化や界面影響を確認する
鉱物油、潤滑油、動植物油、シリコーンオイル多くの油には比較的安定である。添加剤、燃料混入、高温では膨潤確認が必要である
界面活性剤水溶液洗剤、脱脂剤、アルカリ洗浄液○〜△PPは比較的安定であるが、応力割れ、添加剤抽出、ガラス界面への影響を確認する
酸化剤次亜塩素酸ナトリウム、過酸化水素、硝酸△〜×濃度、pH、温度により酸化劣化が進む。長期接触は避けるのが望ましい
SP値(溶解度パラメータ)

短繊維ガラス強化PPのSP値は、母材であるポリプロピレンの値を基準に考えるのが一般的である。代表的なポリプロピレンのSP値は約16〜18 MPa1/2であり、短繊維ガラス強化PPでは樹脂相の溶解・膨潤挙動が主に支配する。ただし、ガラス繊維、相溶化剤、添加剤を含む複合材料であるため、単一のSP値で耐薬品性を判断することはできない。

材料代表SP値 δ単位備考
ポリプロピレン約16〜18MPa1/2結晶化度、立体規則性、グレードにより変動する
短繊維ガラス強化PP約16〜18MPa1/2樹脂相の目安である。無機ガラス繊維を含むため、実効値としては扱いに注意する
無水マレイン酸変性PP配合品約17〜19MPa1/2極性成分によりやや高く見積もられる場合がある

SP値は溶解・膨潤の目安にはなるが、結晶性、分子量、ガラス繊維界面、薬品の拡散速度、温度、応力、接触時間、薬品濃度、混合溶剤効果を反映しない。特にGF強化PPでは、成形品の残留応力やウェルド部から薬品劣化が進む場合がある。

溶解性の目安
SP値差溶解・膨潤の目安判定
0〜2膨潤・軟化しやすい×
2〜5条件により膨潤する
5〜8短時間接触では比較的安定
8以上溶解・膨潤しにくい
SP値から見た耐溶剤性

下表では短繊維ガラス強化PPの代表SP値を17 MPa1/2として、代表溶剤とのSP値差を概算した。評価はSP値差に基づく便宜的な目安であり、実際の耐薬品性とは一致しない場合がある。

薬品名代表SP値 δ単位PP-GFとの差評価備考
ヘキサン約14.9MPa1/2約2.1SP値は近く、膨潤に注意する
トルエン約18.2MPa1/2約1.2×芳香族溶剤で膨潤・応力割れに注意する
キシレン約18.0MPa1/2約1.0×高温や長時間接触では不適となりやすい
酢酸エチル約18.2MPa1/2約1.2SP値は近いが、PPは結晶性のため短時間では耐える場合がある
MEK約19.0MPa1/2約2.0応力下、混合溶剤、高温では注意する
アセトン約20.0MPa1/2約3.0○〜△短時間接触では比較的安定な場合がある
IPA約23.5MPa1/2約6.5常温では比較的安定である
エタノール約26.0MPa1/2約9.0常温では良好であることが多い
約47.9MPa1/2約30.9吸水は少ないが、高温水では酸化劣化を確認する
ジクロロメタン約20.2MPa1/2約3.2×SP値差だけでは良好に見えても、実際には膨潤・クラックに注意する

評価基準:◎非常に良好、○概ね良好、△注意が必要、×不適である。SP値差が大きくても、強酸化性、浸透性、応力割れ性、温度条件により不適となる場合がある。

製法

原料
  • プロピレンモノマー
  • ポリプロピレン樹脂ペレット
  • 短繊維ガラスまたはチョップドストランド
  • 無水マレイン酸変性PPなどの相溶化剤
  • 酸化防止剤、熱安定剤、滑剤、核剤、着色剤、難燃剤など
重合方法

ポリプロピレンは、プロピレンをチーグラー・ナッタ触媒やメタロセン触媒などにより配位重合して製造される。短繊維ガラス強化PPでは、重合後のPPをベース樹脂として用い、別工程でガラス繊維と溶融混練するのが一般的である。

工程内容
基本重合反応n CH2=CH-CH3 → [-CH2-CH(CH3)-]n
ガラス繊維表面処理シラン処理やサイジングにより、PPとの界面接着や分散性を改善する
溶融混練二軸押出機などでPP、ガラス繊維、相溶化剤、添加剤を混練する
ペレット化ストランドカットまたは水中カットにより射出成形用ペレットにする
成形加工射出成形を中心に、用途に応じた金型温度、保圧、ゲート設計で成形する
ペレット化やコンパウンド

短繊維GF強化PPは、押出混練中にガラス繊維が短く切断され、成形品中では繊維長がさらに短くなる場合が多い。繊維長が短くなるほど流動性や外観は改善しやすいが、強度、衝撃性、疲労性、耐クリープ性は低下する場合がある。

添加剤、充填材、強化材

ガラス繊維とPPは極性が大きく異なるため、界面接着を高める目的で無水マレイン酸変性PPを使用することが多い。用途により、タルク、ミネラル、難燃剤、耐候剤、摺動改良剤、帯電防止剤、導電性フィラーを併用することもある。

詳細な利用用途

分野主な用途選定理由注意点
自動車ブラケット、ファン、エアダクト、バッテリー周辺部品、ペダル周辺部品、シート部品軽量、高剛性、低吸水、コストバランスが良い熱老化、クリープ、燃料・オイル接触、振動疲労を確認する
電気・電子筐体、コネクタ周辺部品、端子台、スイッチ部品、配電部品寸法安定性、絶縁性、低吸水性がある難燃性、トラッキング、UL規格、熱変形を確認する
機械部品カバー、ギア、低荷重軸受、ローラー、ガイド、治具剛性、耐薬品性、軽量性を得やすい摺動用途では相手材摩耗、摩擦熱、ガラス繊維露出に注意する
医療医療機器筐体、非体内接触部品、搬送治具低吸水、成形性、耐薬品性が利用される場合がある医療グレード、滅菌方法、生体適合性、抽出物確認が必要である
食品機械搬送部品、カバー、ガイド、洗浄周辺部品、治具水、アルカリ洗浄液、油に比較的強い食品接触法規、洗浄剤、熱水、摩耗粉、ガラス繊維露出を確認する
建築・設備配管支持部品、設備カバー、換気部品、ポンプ周辺部品軽量、耐水、耐薬品性がある屋外では紫外線劣化、熱変形、長期荷重を確認する
家電ファン、モーター周辺部品、フレーム、構造リブ付き部品高剛性、成形性、コスト面で有利な場合がある外観、反り、異音、耐熱性、難燃性を確認する
産業資材パレット部品、搬送機部品、固定具、ホルダー軽量で耐薬品性があり、射出成形で量産しやすい衝撃荷重、クリープ、屋外劣化、洗浄薬品を確認する
用途別選定
用途推奨される方向性確認事項
ギア摺動改良グレード、低GF量グレード摩耗、騒音、相手材攻撃性、潤滑条件
軸受・ガイド摺動グレード、耐摩耗グレード荷重、速度、摩擦熱、摩耗粉、ガラス繊維露出
チューブ一般には非強化PPや柔軟PPが適するGF強化材は柔軟性や曲げ加工性に制限がある
筐体PP-GF20〜GF30、難燃グレード反り、外観、ウェルド、UL94、寸法精度
フィルム一般には非強化PP、OPP、CPPが適する短繊維GF強化PPはフィルム用途には通常不向きである
コネクタ難燃GF強化PPまたはPBT、PA、PPSとの比較検討耐熱、寸法精度、難燃性、電気特性、リフロー条件
法規制・規格上の注意
項目確認内容
RoHS鉛、カドミウム、六価クロム、PBB、PBDE、フタル酸エステル類などの制限物質を確認する
REACHSVHC、制限物質、難燃剤、添加剤、顔料の該当性を確認する
食品衛生食品接触用途では日本の食品衛生法、ポジティブリスト、溶出試験への適合確認が必要である
FDA米国食品接触用途では対象グレードのFDA適合性をメーカー資料で確認する
医療用途ISO 10993、生体適合性、滅菌耐性、抽出物、変更管理を確認する
UL94標準GF強化PPはHB相当が多い。電気用途ではV-2、V-0など必要等級を確認する
注意点
  • 加水分解はPAやPBTほど問題になりにくいが、高温水や薬品中では界面劣化を確認する必要がある。
  • 応力割れは芳香族溶剤、塩素系溶剤、油剤、洗浄剤で発生する場合がある。
  • 吸湿は少ないが、ペレット結露や保管中の表面水分はシルバーやガスの原因となる。
  • 熱劣化は高温滞留、酸素、銅系金属、紫外線で進みやすい。
  • アウトガスは添加剤、難燃剤、成形時の過熱劣化により発生する場合がある。
  • ガラス繊維の露出により、相手材摩耗、皮膚刺激、表面粗さが問題となる場合がある。
  • ウェルド部、リブ根元、ゲート周辺では応力集中と繊維配向に注意する。

関連材料との比較

比較材料特徴対象材料との違い
ポリプロピレン軽量、低コスト、耐薬品性に優れる汎用樹脂である短繊維GF強化PPは剛性、HDT、寸法安定性が高いが、比重と異方性が増える
ガラス繊維強化プラスチックガラス繊維で強化した複合材料の総称である短繊維GF強化PPは熱可塑性GFRPの一種であり、射出成形量産に適する
ナイロン6靭性、耐摩耗性、機械強度に優れるポリアミドであるGF強化PPは吸水が少なく軽量であるが、耐摩耗性や耐熱性ではPA6が有利な場合がある
ポリアミドPA6、PA66、PA6T、PA9Tなどを含むエンプラ系材料であるGF強化PPは低吸水・低比重・コストで有利な場合があるが、高温強度ではGF強化PAが有利な場合がある
ポリブチレンテレフタレート電気特性、寸法安定性、耐薬品性に優れる結晶性ポリエステルであるGF強化PPは軽量で低吸水だが、コネクタ精度や耐熱性ではGF強化PBTが有利な場合がある
ポリフェニレンサルファイド高耐熱、耐薬品、寸法安定性に優れるスーパーエンプラであるGF強化PPはコストと軽量性で有利だが、耐熱性、難燃性、薬品耐性ではPPSが大きく上回る
炭素繊維強化プラスチック炭素繊維により高剛性、高強度、軽量性を得る複合材料であるGF強化PPは安価で絶縁性を維持しやすい。CFRPは高剛性・導電性・軽量性で優れるが高価である
エンジニアリング・プラスチックPOM、PA、PC、PBT、m-PPEなどの機械特性に優れる樹脂群であるGF強化PPはエンプラではないが、用途によってはエンプラ代替として軽量化とコスト低減を狙える

代表的なメーカー

下表は短繊維またはガラス繊維強化PP系コンパウンドを扱う実在メーカーの代表例である。グレード名、供給地域、法規制適合、物性値は時期により変わるため、採用時にはメーカーの最新データシートで確認する必要がある。

メーカー代表製品・ブランド概要
プライムポリマープライムポリプロ、GFPP系グレード日本国内でPPおよびPPコンパウンドを展開する主要メーカーの一つである。短繊維ガラス強化PPの物性表が公開されている。
SABICSABIC PP Compounds、STAMAXガラス繊維強化PPコンパウンドを展開する大手化学メーカーである。短繊維および長繊維系のPP材料を扱う。
LyondellBasellHostacom、Hifax、Moplen系PPコンパウンド自動車用途を含むPPコンパウンドを広く展開するグローバルメーカーである。
BorealisDaplen、Fibremod自動車向けPPコンパウンドや繊維強化PPを展開する欧州系メーカーである。
AvientOnForce、Edgetekなどのエンジニアード材料各種熱可塑性コンパウンドを扱い、PPベースの強化グレードも展開する。
RTP CompanyRTP PP Compoundsカスタムコンパウンドを得意とし、ガラス繊維強化、難燃、摺動、導電などのPP系材料を扱う。
Asahi Kasei Plastics North AmericaThermylenePPコンパウンドの代表ブランドを展開し、自動車・産業用途向けの強化PP材料を扱う。
Kingfa強化PPコンパウンド各種ガラス繊維強化PPを含む樹脂コンパウンドをグローバルに展開するメーカーである。

関連キーワード

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