概要
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 材料名 | 繊維強化プラスチック |
| 略記号 | FRP |
| IUPAC | 単一化合物ではないため、IUPAC名は特定されない。繊維と樹脂から構成される複合材料である。 |
| 英語名 | Fiber Reinforced Plastic / Fiber Reinforced Polymer |
| 日本語名 | 繊維強化プラスチック、繊維強化樹脂、強化プラスチック、繊維強化複合材料 |
| 分類 | 複合材料、繊維強化プラスチック、熱硬化性樹脂系複合材料、熱可塑性樹脂系複合材料 |
| プラスチック分類 | 複合材料である。母材樹脂により、汎用プラスチック系、エンジニアリング・プラスチック系、スーパーエンジニアリング・プラスチック系に分けられる。 |
| 化学式または代表構造 | FRP = 強化繊維 + マトリックス樹脂。代表例:ガラス繊維 SiO2系 + 不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、エポキシ樹脂など。 |
| CAS No. | FRP全体として一般的なCAS No.は特定されない。ガラス繊維、樹脂、硬化剤、添加剤など構成成分ごとに管理される。 |
| 構造・主成分 | ガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維、玄武岩繊維、天然繊維などを、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリアミド、ポリプロピレン、PPS、PEEKなどの樹脂で一体化した材料である。 |
| 主な用途 | 浴槽、浄化槽、薬液タンク、配管、ダクト、船舶、自動車部品、電気絶縁部品、建築部材、風力発電ブレード、スポーツ用品、産業機械部品など。 |
FRPは、繊維を補強材とし、樹脂を母材として複合化した材料である。一般に、単一の樹脂材料ではなく、繊維の種類、繊維含有率、繊維配向、積層構成、樹脂の種類、硬化条件、成形方法により物性が大きく変化する。
最も一般的なFRPは、ガラス繊維を補強材とするガラス繊維強化プラスチック(GFRP)である。高強度、高弾性率、軽量化を重視する用途では炭素繊維強化プラスチック(CFRP)が用いられ、耐衝撃性や振動減衰性を重視する用途ではアラミド繊維強化プラスチック(AFRP)が用いられる。
FRPは金属材料に比べて軽量で、耐食性、比強度、電気絶縁性、成形自由度に優れる。一方で、層間はく離、吸水、クリープ、紫外線劣化、熱劣化、応力割れ、アウトガス、リサイクル性には注意が必要である。実使用では、グレード、温度、濃度、荷重、応力、使用時間、屋外暴露、繰返し荷重を確認する必要がある。
特徴
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 長所 | 軽量であり、比強度、比剛性、耐食性、電気絶縁性、成形自由度に優れる。大型成形、一体成形、複雑形状にも適する。 |
| 短所 | 繊維方向による異方性、層間はく離、衝撃損傷、切削時の粉じん、紫外線劣化、吸水、熱劣化、リサイクル性に注意が必要である。 |
| 外観 | 白色、淡色、黒色、黄褐色、不透明、半透明、着色品などがある。GFRPは白色から淡色、CFRPは黒色、AFRPは黄褐色を示すことが多い。 |
| 耐熱性 | 母材樹脂に依存する。不飽和ポリエステル系は中程度、エポキシ系やフェノール系は比較的高く、PPS、PEEKなどの熱可塑性スーパーエンプラ系は高温用途に適する。 |
| 耐薬品性 | 母材樹脂に大きく依存する。耐食用途ではビニルエステル樹脂系や耐食不飽和ポリエステル樹脂系が使われる。薬品濃度、温度、応力、接触時間により評価が変わる。 |
| 加工性 | ハンドレイアップ、スプレーアップ、RTM、SMC、BMC、引抜成形、フィラメントワインディング、圧縮成形などに対応する。熱可塑性FRPでは射出成形、押出成形、熱プレスも行われる。 |
| 分類上の注意 | FRPは材料の総称であり、GFRP、CFRP、AFRP、BFRP、熱可塑性FRP、熱硬化性FRPなどを含む。物性値は代表値であり、設計には個別グレードのデータ確認が必要である。 |
構造式
FRPは単一の高分子ではないため、厳密な意味での一つの構造式は存在しない。構造は、繊維とマトリックス樹脂からなる複合構造として表す。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 化学式の画像 | 画像タグは使用しない。白黒図として表す場合は、MS Pゴシックなどの日本語ゴシック体で「強化繊維 + マトリックス樹脂 → FRP」と模式的に作図するのが実用的である。 |
| 代表的な構造単位 | 強化繊維:ガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維など。マトリックス樹脂:不飽和ポリエステル、ビニルエステル、エポキシ、フェノール、PP、PA、PBT、PPS、PEEKなど。 |
| モノマーまたは構成単位 | 不飽和ポリエステル系では多価アルコールと不飽和二塩基酸からなるポリエステル鎖を、スチレンなどで架橋する。エポキシ系ではエポキシ基とアミン、酸無水物、フェノール系硬化剤などが反応する。 |
| 共重合体や変性グレード | 耐食ビニルエステル系、難燃FRP、低収縮FRP、耐熱FRP、GF強化、CF強化、摺動グレード、食品接触対応グレード、熱可塑性連続繊維強化グレードなどがある。 |
代表的な模式表記は次の通りである。
FRP:[強化繊維] + [マトリックス樹脂] → 繊維強化プラスチック
GFRP:SiO2系ガラス繊維 + 不飽和ポリエステル樹脂 / ビニルエステル樹脂 / エポキシ樹脂
CFRP:C繊維 + エポキシ樹脂 / PPS / PEEK / PAなど
不飽和ポリエステルFRPの模式構造:
HO-R-OH + HOOC-R’-COOH → [-O-R-O-CO-R’-CO-]n + H2O
不飽和ポリエステル + スチレン + 強化繊維 → 架橋硬化FRP
種類
| 種類の名称 | 主成分または特徴 | 長所 | 短所 | 主な用途 |
|---|---|---|---|---|
| GFRP | ガラス繊維 + 不飽和ポリエステル、ビニルエステル、エポキシなど | コスト、耐食性、電気絶縁性、成形性に優れる | CFRPより比強度・比剛性は低い。切削粉じんに注意 | 浴槽、タンク、浄化槽、船舶、建材、電気部品 |
| CFRP | 炭素繊維 + エポキシ、PPS、PEEK、PAなど | 高比強度、高比剛性、低熱膨張、疲労特性に優れる | 高価。導電性、電食、衝撃損傷に注意 | 航空宇宙、自動車、ロボット、スポーツ用品、治具 |
| AFRP | アラミド繊維 + エポキシ、ビニルエステルなど | 軽量、耐衝撃性、振動減衰性、耐疲労性に優れる | 圧縮強度、吸湿、紫外線劣化、切削性に注意 | 防護材、スポーツ用品、航空機内装、補強材 |
| BFRP | 玄武岩繊維 + 熱硬化性樹脂又は熱可塑性樹脂 | 耐熱性、耐薬品性、電気絶縁性が比較的良い | 流通性、規格データ、実績はGFRPより限定される | 土木補強、建材補強、耐食部材 |
| NFRP | 天然繊維 + PP、PLA、不飽和ポリエステルなど | 軽量、低環境負荷、意匠性に優れる場合がある | 吸湿、寸法変化、耐熱性、長期耐久性に注意 | 自動車内装、家具、建材、日用品 |
| 熱硬化性FRP | 繊維 + UP、VE、EP、PFなど | 大型成形、耐食性、耐熱性、寸法安定性に優れる | 再溶融できない。硬化条件、リサイクル性に注意 | タンク、配管、船舶、構造材、電気絶縁材 |
| 熱可塑性FRP | 繊維 + PP、PA、PBT、PPS、PEEKなど | 成形サイクル、溶着性、耐衝撃性、リサイクル性に優れる | 含浸性、成形温度、繊維配向制御に注意 | 自動車部品、電気部品、機械部品、航空機内装 |
代表グレード
| グレード区分 | 主な構成 | 特徴 | 主な用途 |
|---|---|---|---|
| 汎用 | ガラス繊維 + 不飽和ポリエステル樹脂 | コスト、成形性、耐水性、耐食性のバランスが良い | 浴槽、浄化槽、カバー、建築部材 |
| 耐食 | ガラス繊維 + ビニルエステル樹脂、耐食不飽和ポリエステル樹脂 | 酸、塩類、薬液に対する耐性を重視する | 薬液タンク、スクラバー、配管、ダクト |
| 耐熱 | ガラス繊維又は炭素繊維 + エポキシ、フェノール、BMI、PPS、PEEKなど | 高温下での強度保持と寸法安定性を重視する | 電気部品、治具、航空宇宙、産業機械 |
| 難燃 | 難燃性樹脂、フェノール樹脂、難燃剤、無機充填材など | UL94、酸素指数、発煙性を考慮したグレード | 電気筐体、鉄道車両、建築内装、船舶内装 |
| GF強化 | PP、PA、PBT、PET、PPSなど + ガラス繊維 | 剛性、耐熱性、寸法安定性を向上させる | コネクタ、ブラケット、ギア、筐体 |
| CF強化 | PA、PC、PPS、PEEK、エポキシなど + 炭素繊維 | 高強度、高剛性、低熱膨張、導電性を付与する | 軽量構造部品、搬送治具、ロボット部品 |
| 摺動 | 熱可塑性樹脂 + 繊維 + PTFE、黒鉛、シリコーン系添加剤など | 摩擦、摩耗、寸法安定性を重視する | 軸受、ギア、摺動プレート、搬送部品 |
| 食品接触 | 法規制対応樹脂 + ガラス繊維など | 食品衛生、FDA、EU規則などへの適合確認が必要である | 食品機械部品、搬送部品、カバー、治具 |
SMCとBMC
SMCとBMCは、いずれも主に熱硬化性樹脂を用いたFRP成形材料である。一般に、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、ガラス繊維、充填材、低収縮剤、離型剤、硬化剤、顔料などを配合して成形する。SMCはシート状成形材料、BMCはバルク状又は塊状成形材料であり、量産用FRPとして自動車、電気部品、設備部品に広く用いられる。
SMCとBMCの違い
| 項目 | SMC | BMC |
|---|---|---|
| 名称 | Sheet Molding Compound | Bulk Molding Compound |
| 日本語名 | シートモールディングコンパウンド、シート状成形材料 | バルクモールディングコンパウンド、塊状成形材料 |
| 形態 | シート状 | ペースト状、塊状、団子状、ペレット状に近い形態 |
| 繊維長 | 一般にBMCより長い。25〜50mm程度が多い | 一般に短い。3〜12mm程度が多い |
| 強度・剛性 | 比較的高い | SMCより低い場合が多いが、寸法精度や成形性に優れる |
| 流動性 | 中程度 | 高い |
| 成形方法 | 主に圧縮成形 | 圧縮成形、トランスファー成形、射出成形 |
| 外観 | 大型外装部品に適する。A級外観グレードもある | 小型・複雑形状部品に適する |
| 主な用途 | 自動車外板、浴槽、電気筐体、建築パネル、大型カバー | ブレーカー部品、端子台、モーター部品、電気絶縁部品、小型機構部品 |
| 設計上の注意 | 流動方向、繊維配向、ウェルド、反り、成形圧力を考慮する | 繊維長が短くなりやすく、強度方向性、バリ、金型摩耗を確認する |
SMC・BMCの関係性と比較
| 比較項目 | SMCが有利な場合 | BMCが有利な場合 |
|---|---|---|
| 大型部品 | ◎ 大型パネルや外装部品に適する | △ 小型から中型部品が中心である |
| 複雑形状 | ○ 条件により対応可能 | ◎ 流動性が高く、複雑形状に適する |
| 機械強度 | ◎ 繊維長を確保しやすい | ○ 一般にSMCより低いが、設計により実用的な強度を得られる |
| 寸法精度 | ○ 大型品では反り管理が重要である | ◎ 小型精密部品で安定しやすい |
| 電気絶縁部品 | ○ 大型絶縁板、筐体に適する | ◎ 端子台、遮断器、コイルボビンなどに適する |
| 量産性 | ◎ 圧縮成形で大型量産に適する | ◎ 射出成形やトランスファー成形で小型量産に適する |
| 材料設計 | 低収縮、低比重、高強度、耐熱、難燃などの設計が可能 | 高流動、電気絶縁、耐アーク、難燃、寸法安定などの設計が可能 |
成形加工
| 成形加工法 | 適性 | 内容・注意点 |
|---|---|---|
| 射出成形 | ○ | 短繊維GF、短繊維CFを含む熱可塑性FRPやBMCで用いられる。繊維折損、異方性、反り、金型摩耗に注意する。 |
| 押出成形 | ○ | 熱可塑性FRPのシート、板、棒、プロファイル成形に用いられる。繊維配向と含浸状態を管理する。 |
| ブロー成形 | △ | 短繊維強化熱可塑性材料では一部可能であるが、繊維配向、肉厚均一性、外観に制約がある。 |
| 圧縮成形 | ◎ | SMC、BMC、プリプレグ、熱可塑性スタンパブルシートに適する。大型部品、構造部品に使われる。 |
| 真空成形 | △ | 熱可塑性FRPシートでは条件により可能である。深絞り、繊維露出、白化、層間はく離に注意する。 |
| 切削加工 | ○ | 加工可能であるが、工具摩耗、繊維の毛羽立ち、層間はく離、粉じん対策が必要である。 |
| ハンドレイアップ | ◎ | 大型品、少量生産、補修に適する。気泡、樹脂量、硬化条件の管理が重要である。 |
| スプレーアップ | ○ | チョップドストランドと樹脂を吹き付ける成形法である。大型成形に適するが、繊維配向はランダムになりやすい。 |
| RTM成形 | ◎ | 繊維プリフォームに樹脂を注入して成形する。外観、寸法精度、両面平滑性に優れる。 |
| フィラメントワインディング | ◎ | タンク、圧力容器、パイプなど円筒形状に適する。繊維角度設計が重要である。 |
| 引抜成形 | ◎ | 棒材、板材、形材など一定断面品に適する。繊維方向強度が高いが、横方向強度には注意が必要である。 |
成形条件
| 項目 | 代表条件 | 備考 |
|---|---|---|
| 乾燥温度 | 熱可塑性FRP:80〜160℃程度 | PA、PBT、PET、PPS、PEEK系では吸湿や加水分解防止のため乾燥が重要である。 |
| シリンダー温度 | PP系:180〜240℃、PA系:240〜300℃、PBT/PET系:240〜290℃、PPS系:300〜340℃、PEEK系:360〜400℃程度 | 短繊維強化熱可塑性FRPの目安である。繊維量、滞留時間、せん断発熱を確認する。 |
| 金型温度 | PP系:30〜80℃、PA系:60〜100℃、PBT/PET系:80〜140℃、PPS/PEEK系:130〜200℃程度 | 結晶化、寸法安定性、反り、外観に影響する。 |
| 成形収縮率 | 0.1〜1.5%程度 | 繊維方向では小さく、直角方向では大きくなる。繊維含有率、流動方向、金型条件により異方性が生じる。 |
| SMC/BMC成形温度 | 120〜170℃程度 | 熱硬化性成形材料の目安である。硬化時間、金型温度、材料熟成度、部品厚みを確認する。 |
| 熱硬化性FRP硬化条件 | 常温硬化〜150℃程度 | 不飽和ポリエステル、ビニルエステル、エポキシ、フェノールなどで条件が異なる。後硬化により耐熱性や耐薬品性が改善される場合がある。 |
| 含浸条件 | 樹脂粘度、圧力、真空度、繊維目付に依存 | ボイド、ドライスポット、樹脂リッチ、繊維うねりを避ける必要がある。 |
代表的な物性値又は機械的性質
| 項目 | 単位 | GFRP | CFRP | AFRP | SMC | BMC | GF強化熱可塑性FRP | 備考 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 密度 | g/cm3 | 1.6〜2.0 | 1.4〜1.7 | 1.2〜1.5 | 1.7〜2.0 | 1.7〜2.1 | 1.2〜1.8 | 繊維種、樹脂量、充填材、空隙率により変化する。 |
| 引張強さ | MPa | 100〜600 | 500〜2000 | 400〜1200 | 50〜180 | 40〜120 | 80〜300 | 連続繊維方向では高く、短繊維やランダム配向では低めになる。 |
| 伸び | % | 1〜5 | 0.5〜2 | 2〜5 | 0.5〜2 | 0.5〜2 | 1〜4 | 繊維方向、樹脂靭性、積層構成に依存する。 |
| 曲げ弾性率 | GPa | 7〜30 | 40〜150 | 15〜60 | 8〜18 | 7〜15 | 5〜25 | CFRPは高弾性率グレードでさらに高くなる。 |
| アイゾット衝撃強さ | kJ/m2 | 20〜100 | 20〜150 | 50〜200 | 10〜60 | 5〜40 | 5〜50 | ノッチ、繊維方向、層間強度により大きく変化する。 |
| 荷重たわみ温度 | ℃ | 120〜250 | 120〜300 | 100〜250 | 180〜250 | 180〜250 | 120〜300 | 母材樹脂、繊維含有率、充填材に依存する。 |
| 融点またはガラス転移温度 | ℃ | Tg 70〜180程度 | Tg 120〜250程度 | Tg 100〜220程度 | Tg 100〜180程度 | Tg 100〜180程度 | 母材樹脂に依存 | 熱硬化性FRPは明確な融点を持たない。熱可塑性FRPは母材樹脂の融点に依存する。 |
| 連続使用温度 | ℃ | 80〜150 | 120〜250 | 100〜180 | 120〜180 | 120〜180 | 80〜260 | 長期荷重、湿熱、薬品接触を考慮する。 |
| 吸水率 | % | 0.1〜1.0 | 0.1〜1.5 | 0.5〜5.0 | 0.1〜0.5 | 0.1〜0.5 | 0.05〜2.0 | PA、PBT、PET、PU、アラミド繊維、天然繊維では吸湿影響が重要である。 |
| 体積抵抗率 | Ω・cm | 1012〜1016 | 100〜106 | 1012〜1015 | 1012〜1016 | 1012〜1016 | 108〜1016 | CFRPは導電性を示す。GFRP、SMC、BMCは電気絶縁用途に使われやすい。 |
耐薬品性
FRPの耐薬品性は、主にマトリックス樹脂に支配される。耐食用途では、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂などが用いられる。実使用では、薬品濃度、温度、浸漬時間、応力、積層構成、表面樹脂層、ゲルコート、後硬化条件を確認する必要がある。
| 薬品分類 | 代表薬品 | GFRP/UP | GFRP/VE | CFRP/EP | 熱可塑性FRP | 備考 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 酸類 | 塩酸、希硫酸、リン酸 | ○ | ◎ | ○ | ○ | 濃硫酸、硝酸、クロム酸などの酸化性酸では樹脂選定が重要である。 |
| アルカリ類 | NaOH、KOH、水酸化ナトリウム水溶液 | △ | ○ | ○ | ○ | 不飽和ポリエステル系はアルカリ加水分解に注意する。 |
| 低級アルコール類 | メタノール、エタノール、IPA | ○ | ○ | ○ | ○ | 長時間浸漬や高温では膨潤を確認する。 |
| 高級アルコール類 | グリセリン、ベンジルアルコール、MMB | ○ | ○ | △〜○ | △〜○ | 溶剤性を持つ高沸点アルコールでは樹脂により差が出る。 |
| 芳香族炭化水素類 | トルエン、キシレン、エチルベンゼン | △ | △〜○ | △ | △ | 膨潤、軟化、クラックに注意する。 |
| 脂肪族炭化水素類 | ヘキサン、ヘプタン、灯油 | ○ | ○ | ○ | ○ | 燃料油用途では添加剤、温度、透過、膨潤を確認する。 |
| ケトン | アセトン、MEK、MIBK | ×〜△ | △ | △ | △〜× | 多くの樹脂で膨潤、軟化、応力割れが起こりやすい。 |
| エステル | 酢酸エチル、酢酸ブチル | ×〜△ | △ | △ | △〜× | 塗料溶剤、洗浄剤用途では実液評価が必要である。 |
| 塩素系溶剤 | ジクロロメタン、トリクロロエチレン、クロロホルム | × | ×〜△ | ×〜△ | ×〜△ | 膨潤、軟化、樹脂割れを生じやすい。 |
| 水・温水 | 水、温水、海水 | ○ | ◎ | ○ | ○ | 温水、熱水、加圧水では吸水、加水分解、白化を確認する。 |
| 油 | 鉱物油、潤滑油、動植物油 | ○ | ○ | ○ | ○ | 添加剤、酸化劣化油、高温油では実使用条件で確認する。 |
| 燃料 | ガソリン、軽油、アルコール混合燃料 | △〜○ | ○ | ○ | △〜○ | 燃料組成、透過、膨潤、導電性、静電気を確認する。 |
SP値(溶解度パラメータ)
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| SP値の単位 | MPa1/2 |
| 対象材料の代表的なSP値 | FRP全体としては単一のSP値を持たない。母材樹脂の代表値として、不飽和ポリエステル樹脂は約19〜22 MPa1/2、ビニルエステル樹脂は約19〜22 MPa1/2、エポキシ樹脂は約20〜23 MPa1/2を目安とする。 |
| 注意点 | SP値は溶解・膨潤傾向の目安であり、架橋密度、結晶性、繊維含有率、界面接着、薬品濃度、温度、応力、接触時間を反映しない。耐薬品性は実液試験で確認する必要がある。 |
溶解性の目安
| SP値差 | 溶解・膨潤の目安 | 判定 |
|---|---|---|
| 0〜2 | 膨潤・軟化しやすい | × |
| 2〜5 | 条件により膨潤する | △ |
| 5〜8 | 短時間接触では比較的安定 | ○ |
| 8以上 | 溶解・膨潤しにくい | ◎ |
SP値から見た耐溶剤性
以下は、FRP母材樹脂の代表値を20.5 MPa1/2と仮定した場合の目安である。FRPは架橋樹脂や繊維強化により、単純なSP値差だけでは溶解性を判断できない。特にケトン、エステル、塩素系溶剤、芳香族炭化水素では、応力割れ、界面劣化、膨潤、白化を確認する必要がある。
| 薬品名 | SP値 MPa1/2 | SP値差 | 評価 | 備考 |
|---|---|---|---|---|
| 水 | 47.9 | 27.4 | ◎ | SP値上は膨潤しにくいが、吸水、温水劣化、加水分解は別途確認する。 |
| エタノール | 26.0 | 5.5 | ○ | 短時間接触では比較的安定な場合が多い。 |
| IPA | 23.5 | 3.0 | △ | 長時間浸漬や高温では膨潤を確認する。 |
| アセトン | 20.0 | 0.5 | × | 膨潤、軟化、クラックの可能性がある。 |
| MEK | 19.0 | 1.5 | × | 塗料溶剤として強く作用する場合がある。 |
| 酢酸エチル | 18.6 | 1.9 | × | 樹脂により膨潤、表面軟化が起こる。 |
| トルエン | 18.2 | 2.3 | △ | 芳香族炭化水素は樹脂膨潤に注意する。 |
| キシレン | 18.0 | 2.5 | △ | 長時間接触では物性低下を確認する。 |
| ヘキサン | 14.9 | 5.6 | ○ | 油、燃料用途では添加剤や温度を確認する。 |
| ジクロロメタン | 20.2 | 0.3 | × | 多くの樹脂に対して強い溶剤性を示す。 |
| グリセリン | 33.8 | 13.3 | ◎ | SP値上は安定側だが、温度、含水、添加物を確認する。 |
| 灯油 | 16.0前後 | 4.5 | △〜○ | 燃料・油用途では透過、膨潤、静電気を評価する。 |
評価基準:◎非常に良好、○概ね良好、△注意が必要、×不適。実使用では、薬品濃度、温度、荷重、応力、使用時間、洗浄頻度、紫外線、表面損傷を含めて確認する必要がある。
製法
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 原料 | 強化繊維、マトリックス樹脂、硬化剤、開始剤、促進剤、充填材、低収縮剤、顔料、難燃剤、離型剤、カップリング剤などを用いる。 |
| 重合方法 | 熱硬化性FRPでは、成形中又は成形後に架橋硬化反応を行う。熱可塑性FRPでは、あらかじめ重合された樹脂を溶融含浸、押出、射出、プレスなどで成形する。 |
| ペレット化やコンパウンド | 短繊維強化熱可塑性FRPでは、押出機で樹脂と繊維を混練し、ペレット化して射出成形に用いる。長繊維強化グレードでは、繊維長保持が重要である。 |
| 添加剤・充填材 | 炭酸カルシウム、タルク、シリカ、アルミナ、水酸化アルミニウム、難燃剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、帯電防止剤、摺動材などが使われる。 |
| 強化材 | ガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維、玄武岩繊維、天然繊維、織物、マット、ロービング、チョップドストランド、UD材などが使われる。 |
| 代表的な工程 | 繊維配置 → 樹脂含浸 → 脱泡 → 成形 → 硬化又は冷却固化 → 後硬化 → トリミング → 検査の順で行われる。 |
代表的な反応式又は工程式は次のように表される。
不飽和ポリエステルFRP:
多価アルコール + 不飽和二塩基酸 → 不飽和ポリエステル + H2O
不飽和ポリエステル + スチレン + ガラス繊維 → 架橋硬化FRP
エポキシFRP:
エポキシ樹脂 + アミン硬化剤 + 強化繊維 → 三次元架橋エポキシFRP
熱可塑性FRP:
熱可塑性樹脂ペレット + 強化繊維 → 溶融混練又は含浸 → 冷却固化FRP
SMC製造工程:
樹脂ペースト + ガラス繊維 + 充填材 + 添加剤 → シート化 → 熟成 → 圧縮成形 → 熱硬化
BMC製造工程:
樹脂ペースト + 短繊維 + 充填材 + 添加剤 → 混練 → バルク化 → 圧縮成形又は射出成形 → 熱硬化
詳細な利用用途
| 分野 | 用途例 | 選定理由 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 自動車 | 外装パネル、アンダーカバー、バンパービーム、シート構造材、ブラケット、電池ケース | 軽量化、剛性、耐食性、部品一体化 | 衝突特性、燃焼性、リサイクル、量産サイクルを確認する。 |
| 電気・電子 | 絶縁板、端子台、配電盤部品、プリント基板、コネクタ、筐体 | 電気絶縁性、耐熱性、寸法安定性、難燃性 | UL94、CTI、耐トラッキング性、吸湿を確認する。 |
| 機械部品 | ギア、軸受、搬送治具、ロボットアーム、カバー、プレート | 軽量、剛性、耐摩耗性、低熱膨張 | 繊維方向、摩耗粉、相手材攻撃性、切削端面を確認する。 |
| 医療 | X線透過部材、義肢装具、手術台部材、医療機器カバー | 軽量、高剛性、X線透過性、寸法安定性 | 生体適合性、滅菌条件、アウトガス、薬液清拭耐性を確認する。 |
| 食品機械 | 搬送部品、カバー、タンク、配管、治具 | 耐食性、軽量、成形自由度、洗浄性 | 食品衛生、FDA、洗浄剤、熱水、アルカリ、破片混入対策を確認する。 |
| 建築・設備 | 屋根材、壁材、グレーチング、手すり、ダクト、薬液タンク、浄化槽 | 耐食性、耐候性、軽量、施工性 | 紫外線、難燃性、クリープ、風荷重、積雪荷重を確認する。 |
| 船舶・海洋 | 船体、デッキ、マスト、カバー、浮体、海水配管 | 耐水性、耐食性、軽量、一体成形性 | 浸透、吸水、疲労、塩害、補修性を確認する。 |
| 化学プラント | 薬液タンク、スクラバー、配管、ダクト、ライニング | 耐薬品性、耐食性、大型成形性 | 薬品濃度、温度、内圧、負圧、浸透、樹脂選定を確認する。 |
| 風力発電 | ブレード、ナセルカバー、補強部材 | 軽量、高剛性、疲労特性、大型成形性 | 疲労、落雷、紫外線、温湿度、補修性を確認する。 |
難燃性
| 項目 | 内容 | 注意点 |
|---|---|---|
| UL94 | 難燃グレードではHB、V-2、V-1、V-0相当が設定される場合がある。 | 板厚、樹脂、繊維量、難燃剤、顔料により等級が変わる。 |
| 酸素指数 | 一般FRPは樹脂により変化する。フェノール系や難燃処方では高くなる傾向がある。 | 酸素指数だけでは発煙性、有毒ガス、燃焼滴下を判断できない。 |
| 発煙性 | フェノール系FRPは低発煙用途で検討されることがある。 | 鉄道、船舶、建築用途では個別規格への適合確認が必要である。 |
| 難燃処方 | ハロゲン系、リン系、無機系、水酸化アルミニウムなどが用いられる。 | 機械物性、耐水性、成形性、環境規制への影響を確認する。 |
法規制
| 規制・規格 | 確認内容 | 注意点 |
|---|---|---|
| RoHS | 鉛、カドミウム、水銀、六価クロム、PBB、PBDE、フタル酸エステル類など | 顔料、難燃剤、添加剤、離型剤を含めて確認する。 |
| REACH | SVHC、制限物質、樹脂成分、添加剤、残留モノマー | 輸出用途では最新のSVHCリスト確認が必要である。 |
| 食品衛生 | 食品接触材料としての適合性、溶出、添加剤 | 日本の食品衛生法、ポジティブリスト、使用条件を確認する。 |
| FDA | 米国食品接触用途での樹脂、添加剤、使用条件 | FRP全体ではなく、構成材料と用途条件ごとに確認する。 |
| 医療用途 | ISO 10993、滅菌耐性、抽出物、アウトガス | 医療グレードとして供給される材料か確認する。 |
| 建築・鉄道・船舶規格 | 難燃性、発煙性、機械強度、耐候性 | 用途地域、法令、認証制度により要求が異なる。 |
用途別選定
| 用途 | 推奨されるFRP系材料 | 選定ポイント |
|---|---|---|
| ギア | 短繊維GF強化PA、PBT、PPS、PEEK | 摩耗、寸法安定性、吸湿、騒音、相手材攻撃性を確認する。 |
| 軸受 | GF又はCF強化摺動グレード、PTFE充填グレード | 摩擦係数、PV値、潤滑条件、摩耗粉を確認する。 |
| チューブ・配管 | GFRP/VE、GFRP/UP、熱可塑性FRP | 薬品、温度、圧力、透過、接合方法を確認する。 |
| 筐体 | SMC、BMC、GF強化PBT、GF強化PA、難燃FRP | 難燃性、寸法安定性、外観、電気絶縁性を確認する。 |
| フィルム・シート | 熱可塑性FRPシート、連続繊維強化シート | 成形温度、層間密着、曲げ加工性、白化を確認する。 |
| コネクタ | GF強化PBT、GF強化PET、GF強化PPS、LCP系複合材 | 耐熱性、寸法精度、はんだ耐熱、吸湿、トラッキング性を確認する。 |
| 薬液タンク | GFRP/VE、耐食GFRP/UP | 薬品濃度、温度、内圧、ライニング、耐浸透性を確認する。 |
| 構造部材 | CFRP、GFRP引抜材、連続繊維熱可塑性FRP | 繊維方向、疲労、接合、層間せん断、衝撃損傷を確認する。 |
注意点
- FRPは繊維方向と直角方向で強度、剛性、熱膨張、収縮率が異なる異方性材料である。
- 層間はく離、ボイド、ドライスポット、樹脂リッチ部は強度低下の原因となる。
- 熱硬化性FRPは再溶融できないため、補修、廃棄、リサイクルの計画が必要である。
- PA、PBT、PET、PU、天然繊維系では吸水、加水分解、寸法変化に注意する。
- 屋外用途では紫外線、雨水、温湿度サイクル、表面チョーキング、ゲルコート劣化を確認する。
- 薬品用途では、SP値だけでなく、濃度、温度、応力、接触時間、洗浄条件を含めて評価する。
- 切削、穴あけ、研磨では繊維粉じんが発生するため、集じん、保護具、端面処理が必要である。
- CFRPは導電性があり、電食、短絡、静電気、電磁波特性を考慮する。
- 熱劣化、アウトガス、残留スチレン、硬化不良は、食品、医療、電子部品用途で問題となる場合がある。
- SMC、BMCでは成形時の硬化不足、バリ、ウェルド、繊維配向、低収縮剤由来の外観不良を確認する。
関連材料との比較
| 比較材料 | 特徴 | 対象材料との違い |
|---|---|---|
| ガラス繊維強化プラスチック(GFRP) | ガラス繊維を用いた代表的なFRPである。 | FRPの中で最も汎用性が高く、コストと性能のバランスが良い。 |
| 炭素繊維強化プラスチック(CFRP) | 炭素繊維を用いた高強度・高剛性の複合材料である。 | GFRPより軽量・高剛性だが高価で、導電性を示す。 |
| アラミド繊維強化プラスチック(AFRP) | アラミド繊維を用いた耐衝撃性に優れる複合材料である。 | 衝撃吸収性に優れるが、吸湿、紫外線、圧縮強度に注意する。 |
| 不飽和ポリエステル樹脂 | FRP用として広く使われる熱硬化性樹脂である。 | FRPの母材樹脂の一つであり、単体では繊維補強による高強度は得にくい。 |
| エポキシ樹脂 | 接着性、耐薬品性、寸法安定性に優れる熱硬化性樹脂である。 | CFRPや高性能GFRPの母材として使われ、低収縮で高性能化しやすい。 |
| SMC | シート状のFRP成形材料であり、圧縮成形に適する。 | FRPの成形材料の一種であり、大型外装部品や構造部品に向く。 |
| BMC | バルク状のFRP成形材料であり、圧縮成形、射出成形、トランスファー成形に適する。 | FRPの成形材料の一種であり、小型複雑形状部品や電気絶縁部品に向く。 |
| 短繊維ガラス強化ポリプロピレン | PPに短繊維ガラスを配合した軽量強化樹脂である。 | 熱硬化性FRPより成形サイクルとリサイクル性に優れるが、耐熱性は母材PPに制約される。 |
代表的なメーカー
| メーカー | 代表製品・ブランド | 概要 |
|---|---|---|
| 東レ株式会社 | TORAYCA | 炭素繊維及び複合材料の主要メーカーであり、CFRP用途で広く使用される。 |
| 三菱ケミカル株式会社 | 炭素繊維、複合材料関連製品 | 炭素繊維、樹脂、複合材料分野を扱い、CFRP用途で検討される。 |
| 帝人株式会社 | Tenax、アラミド繊維関連製品 | 炭素繊維、アラミド繊維、複合材料を展開し、軽量構造用途で使用される。 |
| 三菱ガス化学株式会社 | UPICA | 不飽和ポリエステル樹脂を展開しており、FRP成形品、人工大理石、難燃用途などで使用される。 |
| ジャパンコンポジット株式会社 | 不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂 | FRP用樹脂、耐食樹脂、成形材料を扱う国内メーカーである。 |
| 日鉄ケミカル&マテリアル株式会社 | エポキシ樹脂、複合材料関連製品 | エポキシ樹脂、炭素材料、複合材料分野で実績がある。 |
| Owens Corning | ガラス繊維、複合材料用補強材 | ガラス繊維補強材の世界的メーカーであり、GFRP用途で広く使用される。 |
| Jushi Group | ガラス繊維、ロービング、チョップドストランド | ガラス繊維補強材を大規模に供給するメーカーである。 |
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