概要
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 材料名 | ポリブチレンサクシネートアジペート |
| 略記号 | PBSA、PBS-A、Poly(butylene succinate-co-adipate) |
| IUPAC | Poly(oxybutane-1,4-diyloxycarbonylbutane-1,4-dicarbonyl-co-oxybutane-1,4-diyloxycarbonylethane-1,2-dicarbonyl) と表記される場合がある。実用上はコポリエステルであり、単一の繰返し単位だけでは表しにくい。 |
| 英語名 | Polybutylene Succinate Adipate、Poly(butylene succinate-co-butylene adipate)、Poly(butylene succinate-co-adipate) |
| 日本語名 | ポリブチレンサクシネートアジペート、ポリブチレンサクシネート・アジペート共重合体、ポリブチレンサクシネート-co-ブチレンアジペート、PBS系脂肪族ポリエステル |
| 分類 | 脂肪族ポリエステル、生分解性プラスチック、バイオマスプラスチック系材料、熱可塑性樹脂 |
| プラスチック分類 | 汎用プラスチック系の生分解性樹脂、結晶性熱可塑性樹脂 |
| 化学式または代表構造 | 代表構造:[-O-(CH2)4-O-CO-(CH2)2-CO-]x[-O-(CH2)4-O-CO-(CH2)4-CO-]y |
| CAS No. | 67423-06-7 が PBSA 樹脂のCASとして記載される場合がある。ただし、共重合組成、末端構造、分子量、添加剤により扱いが異なるため、実務ではSDSで確認する必要がある。 |
| 構造・主成分 | 1,4-ブタンジオール、コハク酸またはコハク酸誘導体、アジピン酸またはアジピン酸誘導体からなる脂肪族コポリエステルである。 |
| 主な用途 | 生分解性フィルム、袋、農業用マルチフィルム、コンポスト対応包装、ラミネート、押出シート、発泡体、ブレンド改質材、繊維、不織布、射出成形品など |
ポリブチレンサクシネートアジペート(PBSA)は、ポリブチレンサクシネート(PBS)にブチレンアジペート成分を共重合した脂肪族ポリエステルである。PBSより柔軟性、伸び、低温特性を付与しやすく、生分解性フィルム、袋、農業用資材、包装材料などで使用される。
PBSAは、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンアジペートテレフタレート、ポリ乳酸などと同じく、環境対応材料として扱われることが多い。一般にPBSAはPLAより柔軟で、PBSより融点が低く、低温での折り曲げ性やフィルム加工性に優れる方向に設計される。
ただし、PBSAの物性はサクシネート成分とアジペート成分の比率、分子量、分岐構造、結晶化度、添加剤、ブレンド材により大きく変化する。実使用ではグレード、成形条件、使用温度、荷重、応力、湿度、薬品濃度、接触時間、生分解条件を確認する必要がある。
特徴
長所
- 柔軟性、伸び、耐折り曲げ性が比較的良好である。
- 脂肪族ポリエステルであり、条件により生分解性、コンポスト性を示す。
- 押出フィルム、インフレーション、キャストフィルム、ラミネートなどの加工に使いやすいグレードがある。
- PLAに比べて脆さを改善しやすく、ブレンド改質材として使われる場合がある。
- 低温でも柔軟性を保持しやすく、袋、フィルム、シート用途に適する。
短所
- 耐熱性は高くなく、高温下では軟化、変形、クリープが問題となる場合がある。
- ポリエステル系であるため、加水分解、アルカリ分解、高温高湿下での分子量低下に注意が必要である。
- 芳香族炭化水素、塩素系溶剤、一部エステル、ケトン類では膨潤または軟化が起こる場合がある。
- 一般的な石油由来汎用樹脂に比べて材料価格が高い場合が多い。
- 生分解性は土壌、堆肥、海水、温度、湿度、微生物環境、厚み、配合により大きく変化する。
外観
一般に乳白色から半透明のペレット、フィルム、シートとして供給される。グレードにより透明性、ヘイズ、光沢、ブロッキング性、滑り性は異なる。充填材、着色剤、バイオマスフィラー、澱粉、PLA、PBATなどとのブレンドでは外観が大きく変化する。
耐熱性
PBSAの融点は組成により変化するが、代表値として80〜110℃程度である。アジペート成分が増えると融点や剛性は低下しやすく、柔軟性や低温特性は向上しやすい。連続使用温度は実用上50〜70℃程度を目安とすることが多いが、荷重、厚み、結晶化度、成形条件により異なる。
耐薬品性
水、低濃度酸、一部アルコール、油類に対しては短時間接触で比較的安定な場合がある。一方、強アルカリ、高温水、加水分解を促進する薬液、芳香族炭化水素、塩素系溶剤、エステル、ケトンには注意が必要である。耐薬品性はSP値だけでは判断できず、結晶化度、薬品濃度、温度、応力、接触時間で変化する。
加工性
射出成形、押出成形、インフレーションフィルム、キャストフィルム、押出ラミネート、シート成形、発泡成形などに対応するグレードがある。ポリエステル系であるため、成形前乾燥と熱履歴管理が重要であり、過度な滞留、過熱、水分混入では分子量低下、ゲル、臭気、物性低下が起こる場合がある。
分類上の注意
PBSAはPBSの一種またはPBS系コポリエステルとして扱われることがあるが、PBSホモポリマーとは融点、柔軟性、結晶化挙動、フィルム加工性が異なる。また、PBATは芳香族テレフタレート成分を含む脂肪族・芳香族共重合ポリエステルであり、PBSAとは構造上区別する必要がある。
構造式
化学式の画像
構造式を画像化する場合は、白黒表示で、文字部分をMS Pゴシック相当とし、下記の代表構造を基準に作図する。
HOOC-(CH2)2-COOH + HOOC-(CH2)4-COOH + HO-(CH2)4-OH → [-O-(CH2)4-O-CO-(CH2)2-CO-]x[-O-(CH2)4-O-CO-(CH2)4-CO-]y + H2O
代表的な構造単位
| 構造単位 | 代表構造 | 特徴 |
|---|---|---|
| ブチレンサクシネート単位 | [-O-(CH2)4-O-CO-(CH2)2-CO-] | PBS由来の結晶性、剛性、耐熱性に寄与する。 |
| ブチレンアジペート単位 | [-O-(CH2)4-O-CO-(CH2)4-CO-] | 柔軟性、伸び、低温特性、フィルム適性に寄与する。 |
モノマーまたは構成単位
- 1,4-ブタンジオール
- コハク酸、コハク酸ジメチルなどのコハク酸誘導体
- アジピン酸、アジピン酸ジメチルなどのアジピン酸誘導体
- 必要に応じて分岐剤、鎖延長剤、安定剤、滑剤、アンチブロッキング剤、結晶核剤などが使用される場合がある。
共重合体や変性グレード
PBSAは共重合比率により、PBSに近い高融点・高剛性タイプから、アジペート成分を多く含む柔軟タイプまで設計される。さらにPLA、PBAT、澱粉、炭酸カルシウム、タルク、セルロース系フィラー、天然繊維などとのブレンドまたはコンパウンドにより、剛性、柔軟性、コスト、成形性、生分解速度を調整することがある。
種類
| 種類の名称 | 主成分または特徴 | 長所 | 短所 | 主な用途 |
|---|---|---|---|---|
| 標準PBSA | サクシネート成分とアジペート成分を含む脂肪族コポリエステル | 柔軟性、成形性、生分解性のバランスが良い。 | 耐熱性、剛性はPBSや一部エンプラより低い。 | フィルム、袋、シート、ラミネート |
| 高サクシネートPBSA | PBS成分比率が高いグレード | 融点、剛性、耐熱性を高めやすい。 | 柔軟性、低温折り曲げ性は低下する場合がある。 | 射出成形品、シート、耐熱性を必要とする包装 |
| 高アジペートPBSA | アジペート成分比率が高い柔軟グレード | 伸び、柔軟性、低温特性に優れる。 | 融点、剛性、荷重下耐熱性が低下しやすい。 | 軟質フィルム、袋、農業用フィルム |
| フィルム用PBSA | 押出、インフレーション、キャストフィルム向けに溶融粘度を調整したグレード | 薄膜化、ヒートシール、柔軟性を設計しやすい。 | ブロッキング、滑り性、厚みムラの管理が必要である。 | コンポスト袋、食品包装、農業用マルチ |
| 射出成形用PBSA | 流動性、結晶化、離型性を調整したグレード | 成形品への展開が可能である。 | 寸法精度、耐熱性、剛性はグレード依存が大きい。 | 日用品、カトラリー、容器、部品試作 |
| PLAブレンドPBSA | PLAにPBSAを配合し、柔軟性や耐衝撃性を改善した材料 | PLAの脆さを改善しやすい。 | 相溶性、透明性、耐熱性、結晶化制御が課題となる。 | 包装、シート、成形品、コンポスト対応製品 |
| フィラー充填PBSA | タルク、炭酸カルシウム、澱粉、セルロース、天然繊維などを配合 | 剛性、コスト、成形安定性を調整しやすい。 | 伸び、衝撃性、外観、分解挙動が変化する。 | シート、成形品、農業資材、日用品 |
| 食品接触対応グレード | 食品包装用途を想定したグレード | 包装材、ラミネート材に適用しやすい。 | 国、用途、接触条件により法規制確認が必要である。 | 食品包装、袋、紙ラミネート、容器 |
成形加工
| 加工方法 | 適性 | 内容 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 射出成形 | ○ | 流動性を調整したグレードで日用品、容器、小物部品に使用される。 | 乾燥、金型温度、結晶化、離型性、滞留時間の管理が必要である。 |
| 押出成形 | ◎ | フィルム、シート、チューブ、ラミネートに適する。 | 溶融粘度、吐出安定性、冷却条件、分解抑制を確認する。 |
| インフレーションフィルム | ◎ | 袋、農業用フィルム、コンポスト袋に使用される。 | ブロッキング、滑り性、バブル安定性、シール性の調整が必要である。 |
| キャストフィルム | ◎ | 薄膜、ラミネート、包装材に使用される。 | 冷却ロール温度、結晶化、ヘイズ、巻取張力を管理する。 |
| ブロー成形 | △ | グレードにより小型容器などで検討される。 | 溶融張力、パリソン安定性、肉厚制御に注意する。 |
| 押出ラミネート | ○ | 紙、他樹脂、フィルムとの複合化に使用される。 | 接着性、熱シール性、耐水性、加工温度を確認する。 |
| 真空成形 | ○ | シートグレードでトレー、容器、包装材に使用できる場合がある。 | 加熱温度範囲が狭い場合があり、ドローダウンに注意する。 |
| 圧縮成形 | △ | 試験片、シート、研究用途で使用される。 | 量産性は押出、射出に劣る。 |
| 発泡成形 | ○ | 発泡シート、緩衝材、軽量成形品で検討される。 | 溶融張力、発泡剤、結晶化、セル安定性を調整する必要がある。 |
| 切削加工 | △ | 試作、評価片、厚板加工で対応できる場合がある。 | 軟質グレードではバリ、変形、熱による軟化に注意する。 |
代表的な成形条件
| 項目 | 代表条件 | 備考 |
|---|---|---|
| 乾燥温度 | 60〜80℃ | 2〜5時間程度を目安とする。水分が多いと加水分解による分子量低下が起こる場合がある。 |
| シリンダー温度 | 140〜180℃ | グレード、MFR、成形法により調整する。過度な高温滞留は避ける。 |
| ダイス温度 | 140〜180℃ | 押出フィルム、シートでは吐出安定性と外観を確認する。 |
| 金型温度 | 20〜60℃ | 結晶化、サイクル、収縮、反りに影響する。 |
| 成形収縮率 | 0.8〜2.0%程度 | 結晶化度、肉厚、金型温度、流動方向により変化する。 |
| 推奨水分管理 | 低水分状態で成形 | ポリエステル系材料であるため、未乾燥ペレットの使用は避ける。 |
代表的な物性値又は機械的性質
| 項目 | 単位 | PBSA 標準グレード | PBSA フィルム用柔軟グレード | PBSA フィラー充填グレード | 備考 |
|---|---|---|---|---|---|
| 密度 | g/cm3 | 1.22〜1.26 | 1.22〜1.25 | 1.25〜1.45 | 充填材量により増加する。 |
| 引張強さ | MPa | 20〜35 | 15〜30 | 20〜40 | 分子量、結晶化度、配向により変化する。 |
| 伸び | % | 200〜600 | 400〜800 | 20〜300 | フィラー充填で低下しやすい。 |
| 曲げ弾性率 | MPa | 200〜700 | 100〜400 | 700〜2000 | PBSAは柔軟性を重視した設計が多い。 |
| アイゾット衝撃強さ | kJ/m2 | 5〜30 | 10〜破断せず | 3〜20 | 試験片形状、ノッチ、温度に依存する。 |
| 荷重たわみ温度 | ℃ | 45〜75 | 35〜60 | 60〜90 | 荷重条件、結晶化度、フィラーにより変化する。 |
| 融点 | ℃ | 80〜110 | 75〜100 | 80〜110 | アジペート成分が多いほど低下しやすい。 |
| ガラス転移温度 | ℃ | -45〜-25 | -55〜-35 | -45〜-25 | 低温柔軟性に影響する。 |
| 連続使用温度 | ℃ | 50〜70 | 40〜60 | 60〜80 | 荷重下では低めに設定する。 |
| 吸水率 | % | 0.2〜0.8 | 0.2〜0.8 | 0.3〜1.5 | 23℃水中または平衡吸水の目安。フィラー、澱粉配合で増加しやすい。 |
| 体積抵抗率 | Ω・cm | 1013〜1016 | 1013〜1016 | 1010〜1015 | 帯電防止剤、吸湿、充填材で低下する。 |
| 酸素指数 | % | 20〜23程度 | 20〜23程度 | 21〜26程度 | 難燃性は高くない。難燃グレードでは配合により変化する。 |
| UL94 | 等級 | HB相当が多い | HB相当が多い | HB〜V-2相当の場合あり | 難燃認証はグレードごとに確認する。 |
代表グレードの考え方
| 代表グレード | 特徴 | 確認項目 |
|---|---|---|
| 汎用 | 標準的な成形性と柔軟性を持つ。 | 融点、MFR、引張物性、成形条件 |
| 耐熱 | 高サクシネート比率、結晶化促進、フィラー充填などで耐熱性を調整する。 | HDT、収縮、反り、熱変形、クリープ |
| 難燃 | 難燃剤を配合したグレード。一般品は難燃性が高くない。 | UL94、酸素指数、発煙性、法規制 |
| GF強化 | ガラス繊維により剛性、寸法安定性を改善する。 | 繊維配向、外観、金型摩耗、分解性への影響 |
| 摺動 | 潤滑剤、ワックス、低摩擦添加剤を配合する場合がある。 | 摩耗、相手材、温度、荷重、食品接触適合性 |
| 食品接触 | 食品包装、紙ラミネート、袋向けの規制対応グレード。 | 食品衛生法、FDA、EU規制、移行試験、接触条件 |
耐薬品性
| 薬品分類 | 代表薬品 | 評価 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 酸類 | 希塩酸、希硫酸、酢酸水溶液 | ○ | 低濃度、常温、短時間では比較的安定な場合がある。高温、強酸、長時間では加水分解に注意する。 |
| 強酸・酸化性酸 | 濃硫酸、硝酸、クロム酸 | × | 分解、酸化、物性低下のリスクが高い。 |
| アルカリ類 | 水酸化ナトリウム、KOH、アルカリ洗浄剤 | △〜× | ポリエステル結合がアルカリ加水分解を受けやすい。高温、高濃度では不適である。 |
| 低級アルコール類 | メタノール、エタノール、IPA | ○ | 常温短時間では大きな変化が出にくい場合があるが、応力下や長時間では確認が必要である。 |
| 高級アルコール類 | ブタノール、グリセリン、MMB | ○〜△ | 溶剤の極性、温度、配合剤により膨潤や軟化が起こる場合がある。 |
| 芳香族炭化水素類 | トルエン、キシレン、エチルベンゼン | △〜× | 膨潤、軟化、応力割れの可能性がある。 |
| 脂肪族炭化水素類 | ヘキサン、ヘプタン、ミネラルスピリット | ○〜△ | 短時間では比較的安定な場合があるが、油分、可塑化、長時間接触に注意する。 |
| ケトン | アセトン、MEK、MIBK | △〜× | 軟化、膨潤、表面荒れが起こる場合がある。 |
| エステル | 酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル | △〜× | SP値が近く、膨潤または溶解リスクがある。 |
| 塩素系溶剤 | ジクロロメタン、クロロホルム、トリクロロエチレン | × | 溶解、膨潤、急激な物性低下が起こる場合がある。 |
| 水・温水 | 水道水、純水、温水 | ○〜△ | 常温水では比較的安定な場合があるが、温水、高温高湿、長期接触では加水分解に注意する。 |
| 油 | 植物油、鉱物油、機械油 | ○〜△ | 油種、添加剤、温度、長時間接触により膨潤する場合がある。 |
| 燃料 | ガソリン、軽油、アルコール混合燃料 | △〜× | 燃料成分により膨潤、軟化、抽出が起こる可能性がある。 |
| 界面活性剤水溶液 | 洗剤、乳化剤、食品工場用洗浄剤 | △ | アルカリ、溶剤、温度を含む場合は加水分解や応力割れに注意する。 |
SP値(溶解度パラメータ)
PBSAの代表的なSP値(δ)は、20〜21 MPa1/2程度を目安とする。PBS、PBSA、PLA、PCLなどの生分解性ポリエステルは、文献や測定法により値に差があるが、概ね20 MPa1/2前後として扱われることが多い。
SP値は溶解・膨潤の一次目安として有用であるが、PBSAの耐薬品性は結晶化度、分子量、共重合比率、添加剤、フィラー、温度、薬品濃度、応力、接触時間に強く依存する。したがって、SP値だけで耐薬品性を判断してはならない。
溶解性の目安
| SP値差 | 溶解・膨潤の目安 | 判定 |
|---|---|---|
| 0〜2 | 膨潤・軟化しやすい | × |
| 2〜5 | 条件により膨潤する | △ |
| 5〜8 | 短時間接触では比較的安定 | ○ |
| 8以上 | 溶解・膨潤しにくい | ◎ |
SP値から見た耐溶剤性
| 薬品名 | 代表SP値 MPa1/2 | PBSAとの差 | 評価 | 備考 |
|---|---|---|---|---|
| 水 | 47.9 | 約27 | ○ | SP差は大きいが、温水や高温高湿では加水分解に注意する。 |
| メタノール | 29.7 | 約9 | ○ | 常温短時間では比較的安定な場合がある。 |
| エタノール | 26.0 | 約5〜6 | ○ | 長時間、応力下、混合溶剤では確認が必要である。 |
| IPA | 23.5 | 約3 | △ | 条件により膨潤や白化が起こる可能性がある。 |
| アセトン | 20.0 | 約0〜1 | × | SP値が近く、膨潤・軟化リスクが高い。 |
| MEK | 19.0 | 約1〜2 | × | 短時間でも表面変化が起こる場合がある。 |
| 酢酸エチル | 18.6 | 約2 | △〜× | エステル系溶剤であり、膨潤、軟化に注意する。 |
| トルエン | 18.2 | 約2〜3 | △〜× | 芳香族炭化水素では膨潤の可能性がある。 |
| キシレン | 18.0 | 約2〜3 | △〜× | 高温、長時間接触では不適となる場合がある。 |
| ヘキサン | 14.9 | 約5〜6 | ○〜△ | SP差はあるが、油分や長時間接触では確認する。 |
| ジクロロメタン | 20.2 | 約0〜1 | × | 溶解、膨潤リスクが高い。 |
| クロロホルム | 19.0 | 約1〜2 | × | PBSA、PBS系ポリエステルを溶解または強く膨潤させる可能性がある。 |
| グリセリン | 33.8 | 約13 | ○ | SP差は大きいが、吸湿、温度、混合物では確認が必要である。 |
評価基準:◎非常に良好、○概ね良好、△注意が必要、×不適。上表は代表値による目安であり、実使用ではグレード、薬品濃度、温度、応力、接触時間、成形品厚みを含めて確認する必要がある。
製法
原料
- 1,4-ブタンジオール
- コハク酸、コハク酸ジメチルなど
- アジピン酸、アジピン酸ジメチルなど
- 触媒、熱安定剤、酸化防止剤、滑剤、アンチブロッキング剤、結晶核剤など
重合方法
PBSAは、一般にエステル化またはエステル交換反応の後、減圧下での溶融重縮合により製造される。高分子量化のために、反応後半で水またはアルコールを除去しながら重合を進める。必要に応じて分岐剤、鎖延長剤、反応押出を利用する場合がある。
代表的な反応式
x HOOC-(CH2)2-COOH + y HOOC-(CH2)4-COOH + (x+y) HO-(CH2)4-OH → [-O-(CH2)4-O-CO-(CH2)2-CO-]x[-O-(CH2)4-O-CO-(CH2)4-CO-]y + 2(x+y) H2O
ペレット化やコンパウンド
重合後のPBSAは、押出機でストランドまたは水中カットによりペレット化される。用途に応じて、滑剤、アンチブロッキング剤、加水分解抑制剤、酸化防止剤、結晶核剤、帯電防止剤、フィラー、澱粉、PLA、PBATなどを配合してコンパウンド化される。
添加剤、充填材、強化材
| 配合材料 | 目的 | 注意点 |
|---|---|---|
| 滑剤・アンチブロッキング剤 | フィルムの巻取性、開口性、滑り性を改善する。 | 印刷性、ヒートシール性、食品接触適合性を確認する。 |
| 結晶核剤 | 結晶化速度、耐熱性、成形サイクルを改善する。 | 透明性、収縮、反りに影響する。 |
| 加水分解抑制剤 | 高温高湿下での分子量低下を抑える。 | 食品、医療、環境認証用途では適合性を確認する。 |
| タルク・炭酸カルシウム | 剛性、寸法安定性、コスト、結晶化を調整する。 | 伸び、衝撃性、生分解挙動が変化する。 |
| 澱粉・天然繊維・セルロース | バイオマス度、剛性、生分解性、コストを調整する。 | 吸水、外観、臭気、熱安定性に注意する。 |
| ガラス繊維 | 剛性、耐熱性、寸法安定性を改善する。 | 柔軟性、生分解性、外観、金型摩耗に影響する。 |
詳細な利用用途
| 分野 | 用途例 | 選定理由 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 包装 | コンポスト袋、軟包装、フィルム、ラミネート、紙コート | 柔軟性、生分解性、ヒートシール性を利用する。 | 水蒸気バリア、酸素バリア、耐熱性、食品接触規制を確認する。 |
| 農業 | 農業用マルチフィルム、育苗ポット、クリップ | 使用後の回収負担低減や土壌分解性を狙う。 | 土壌条件、厚み、分解速度、機械強度、紫外線劣化を確認する。 |
| 食品機械・食品包装 | 袋、トレー、紙ラミネート、簡易容器 | 柔軟性と環境対応性を利用する。 | 食品衛生法、FDA、EU適合、油脂食品、熱充填条件を確認する。 |
| 日用品 | カトラリー、容器、雑貨、園芸用品 | 生分解性、成形性、柔軟性を利用する。 | 耐熱性、剛性、寸法安定性、落下衝撃を確認する。 |
| 電気・電子 | 一時使用部材、包装材、緩衝材 | 環境配慮包装として検討される。 | 難燃性、絶縁性、長期耐久性、アウトガス、帯電を確認する。 |
| 自動車 | 包装材、保護フィルム、一時使用部材、内装補助材 | 環境対応材料として検討される。 | 高温車内、耐候性、臭気、フォギング、耐薬品性を確認する。 |
| 医療・衛生 | 不織布、衛生材料、試験・研究用部材 | 柔軟性、成形性、生分解性を利用する場合がある。 | 滅菌、溶出、医療規格、長期安定性を確認する。 |
| 建築・設備 | 養生フィルム、一時保護材、包装材 | 短期使用と廃棄性の改善を狙う。 | 耐候性、耐熱性、引裂強度、屋外分解挙動を確認する。 |
| ブレンド改質 | PLA改質、澱粉系樹脂改質、PBATとの配合 | 柔軟性、耐衝撃性、加工性を調整する。 | 相溶性、分散、透明性、機械特性、認証範囲を確認する。 |
関連材料との比較
| 比較材料 | 特徴 | 対象材料との違い |
|---|---|---|
| ポリブチレンサクシネート(PBS) | コハク酸と1,4-ブタンジオールからなる脂肪族ポリエステルである。 | PBSAはPBSに比べて柔軟性と伸びを高めやすいが、融点と剛性は低下しやすい。 |
| ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT) | 脂肪族アジペート成分と芳香族テレフタレート成分を含む生分解性ポリエステルである。 | PBATは芳香族成分を含み、柔軟フィルム用途で広く使われる。PBSAは脂肪族ポリエステルであり、構造と分解挙動が異なる。 |
| ポリ乳酸(PLA) | 乳酸由来の生分解性ポリエステルで、透明性と剛性に優れる。 | PLAは硬く脆い傾向がある。PBSAは柔軟性、伸び、低温特性で有利な場合が多い。 |
| ポリヒドロキシアルカン酸(PHA) | 微生物が産生する生分解性ポリエステルである。 | PHAは生物由来性や海洋分解性で注目されるが、加工窓やコストに課題がある。PBSAは押出フィルム加工で扱いやすいグレードがある。 |
| ポリカプロラクトン(PCL) | 低融点で柔軟な脂肪族ポリエステルである。 | PCLはさらに低融点で柔らかい。PBSAはPCLより耐熱性を高めやすいが、PBSより柔軟な位置付けである。 |
| デンプン系プラスチック | 澱粉を主成分または配合成分とする生分解性材料である。 | 澱粉系材料は吸水や湿度依存が大きい場合がある。PBSAはポリエステル系の成形性と柔軟性を活かしやすい。 |
| ポリエチレン(PE) | 軽量、柔軟、耐水、耐薬品性に優れる汎用ポリオレフィンである。 | PEは耐水性、コスト、量産性に優れるが、一般に生分解性はない。PBSAは環境対応用途で選定される。 |
| ポリプロピレン(PP) | 軽量で剛性と耐熱性に優れる汎用ポリオレフィンである。 | PPは耐熱性と剛性で有利だが、生分解性は一般にない。PBSAは柔軟フィルム、コンポスト対応用途で比較される。 |
代表的なメーカー
| メーカー | 代表製品・ブランド | 概要 |
|---|---|---|
| 三菱ケミカルグループ / PTT MCC Biochem | BioPBS 代表例 | PBSおよびPBS系生分解性ポリエステルの代表的な供給元として知られる。グレードによりフィルム、紙ラミネート、射出成形用途などに展開される。 |
| Showa Highpolymer / 昭和電工系 | Bionolle 代表例 | PBS、PBSA系脂肪族ポリエステルの初期商業化ブランドとして知られる。現在の供給状況は変更されているため、実務では現行メーカー資料で確認する必要がある。 |
| Xinjiang Blue Ridge Tunhe Chemical Industry | PBSA 代表グレード | 中国系の生分解性ポリエステルメーカーとして、PBSA、PBS、PBATなどの製品群を展開している。 |
| Kingfa Sci. & Tech. | 生分解性ポリエステルコンパウンド 代表例 | 生分解性樹脂コンパウンド、フィルム、成形材料を展開するメーカーであり、PBSA系またはPBS系ブレンド材料が扱われる場合がある。 |
| 研究用試薬・材料供給会社 | Poly(butylene succinate-co-butylene adipate) 研究用グレード | 試験、研究、材料評価用としてPBSA樹脂が販売される場合がある。量産用途では工業グレード、規格、法規制適合を別途確認する。 |
法規制・規格上の注意
| 項目 | 確認内容 | 注意点 |
|---|---|---|
| RoHS | 鉛、カドミウム、水銀、六価クロム、特定臭素系難燃剤、フタル酸エステル類など | 樹脂単体だけでなく、添加剤、顔料、フィラーを含めて確認する。 |
| REACH | SVHC、登録物質、制限物質 | 欧州向け用途では最新のSDSと適合証明を確認する。 |
| 食品衛生 | 日本の食品衛生法、ポジティブリスト、溶出試験 | 食品接触用途ではグレード、添加剤、接触食品、温度、時間を確認する。 |
| FDA | 米国食品接触規制への適合 | 食品包装向けグレードであっても、用途範囲と条件を確認する。 |
| 医療用途 | 生体適合性、滅菌、溶出、抽出物、品質管理 | 一般工業グレードを医療用途へ転用してはならない。 |
| コンポスト認証 | EN 13432、ASTM D6400、OK compost、各地域認証 | 樹脂名だけでなく、最終製品の厚み、配合、着色、印刷を含めて認証範囲を確認する。 |
| 難燃性 | UL94、酸素指数、建材規制 | PBSA一般品は難燃性が高くないため、電気・電子用途ではグレード確認が必要である。 |
用途別選定の注意点
| 用途 | 重視する特性 | 注意点 |
|---|---|---|
| フィルム | 伸び、引裂強さ、ヒートシール性、ブロッキング性 | 滑剤、アンチブロッキング剤、厚み、巻取条件を確認する。 |
| 袋 | 低温柔軟性、耐突刺し、シール強度 | 内容物、水分、油分、保管温度、破袋リスクを確認する。 |
| チューブ | 柔軟性、押出安定性、耐薬品性 | 水、油、洗浄剤、可塑化、長期クリープを確認する。 |
| 筐体 | 剛性、耐熱性、寸法安定性 | PBSA単独では剛性不足となる場合があり、フィラーやブレンドが必要となる。 |
| コネクタ | 耐熱性、絶縁性、寸法安定性、難燃性 | 一般にPBSAは高耐熱コネクタ用途には不向きであり、PBT、PA、PPSなどと比較する。 |
| ギア・軸受 | 耐摩耗性、剛性、クリープ、寸法安定性 | PBSAは柔軟材料であり、一般的な摺動機械部品には慎重な評価が必要である。 |
| 食品包装 | 食品接触適合、シール性、臭気、溶出 | 油脂食品、電子レンジ、熱充填、長期保存には実包装試験が必要である。 |
注意点
- PBSAはポリエステル系であるため、成形前乾燥を行い、加水分解による分子量低下を防ぐ必要がある。
- 高温、高湿、アルカリ、洗浄剤、温水との長期接触では加水分解が進行する場合がある。
- 応力が加わった状態で溶剤、油、界面活性剤と接触すると、膨潤、白化、応力割れ、寸法変化が起こる場合がある。
- PBSAの生分解性は環境条件に依存し、自然環境で必ず短期間に消失するとは限らない。
- 耐熱性はPBT、PET、PA、PPなどより低い場合が多く、荷重下高温用途には不向きなことがある。
- 難燃性が要求される電気・電子用途では、UL94、酸素指数、トラッキング性をグレード単位で確認する。
- 食品、医療、玩具、化粧品包装では、樹脂だけでなく添加剤、顔料、印刷インキ、接着剤、ラミネート材を含めて法規制を確認する。
- アウトガス、臭気、移行成分は包装用途、自動車内装、電子部品包装で問題になる場合がある。
関連キーワード
PBSA ポリブチレンサクシネートアジペート ポリブチレンサクシネート・アジペート共重合体 生分解性プラスチック バイオマスプラスチック 脂肪族ポリエステル PBS PBAT PLA PHA PCL コンポスト対応樹脂 農業用マルチフィルム 生分解性フィルム 食品包装材料