概要
| 材料名 | ポリスチレン |
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| 略記号 | PS、GPPS、HIPS、SPS |
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| 英語名 | Polystyrene |
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| 分類 | 汎用プラスチック、熱可塑性樹脂、非晶性樹脂、スチレン系樹脂 |
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| 化学式 | (C8H8)n |
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| 構成単位 | −CH2−CH(C6H5)− |
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| 主な種類 | GPPS、HIPS、SPS、発泡PS |
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ポリスチレン(PS)は、スチレンを重合して得られる代表的な汎用プラスチックである。 一般用ポリスチレン(GPPS)は非晶性で透明性に優れ、成形性、寸法安定性、電気絶縁性が良好である。
一方で、GPPSは衝撃強度が低いため、ポリブタジエンなどのゴム成分を加えた高衝撃ポリスチレン(HIPS)として使用されることも多い。 また、メタロセン触媒などにより得られるシンジオタクチックポリスチレン(SPS)は、通常のPSより耐熱性、耐薬品性に優れる特殊グレードである。
ポリ塩化ビニル(PVC)と比較すると、PSは熱安定性と成形性に優れるが、耐溶剤性、耐衝撃性、耐候性には弱点がある。
特徴
- 硬質で透明性に優れる
- 屈折率が高く、透明部品や光学用途に利用される
- 流動性が良く、成形加工性に優れる
- 成形時の熱安定性が良好である
- 電気絶縁性に優れる
- 酸、アルカリ、塩類などの無機薬品には比較的安定である
- ケトン、エステル、芳香族炭化水素、塩素化炭化水素には溶解しやすい
- GPPSは透明性が高いが衝撃強度が低い
- HIPSは耐衝撃性が高いが、透明性と硬度は低下する
- SPSは耐熱性、耐薬品性、寸法安定性に優れる
- 紫外線に弱く、屋外用途では劣化しやすい
- 燃焼時にはすすを出し、スチレン系特有の臭気を発生する
長所
- 透明性が高い
- 剛性が高い
- 成形性が非常に良い
- 寸法安定性が良い
- 電気絶縁性に優れる
- 着色性、印刷性が良い
- コストが低く、大量生産に向く
- GPPS、HIPS、発泡PSなど用途に応じた使い分けができる
短所
- GPPSは衝撃に弱く、割れやすい
- 耐熱性は高くない
- 耐摩耗性は低い
- 耐候性が低く、紫外線で劣化しやすい
- 芳香族溶剤、ケトン、エステル、塩素系溶剤に弱い
- 応力がかかった状態では溶剤クラックを起こしやすい
- 可燃性であり、燃焼時にすすを発生する
成形加工
ポリスチレンは、熱可塑性樹脂の中でも成形しやすい材料の一つである。 流動性が高く、射出成形、押出成形、発泡成形、真空成形などに広く使用される。
| 加工方法 | 適性 | 主な製品例 |
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| 射出成形 | ◎ | ケース、容器、文具、家電部品、透明部品 |
| 押出成形 | ◎ | シート、フィルム、発泡シート |
| 真空成形 | ◎ | 食品トレー、カップ、包装容器 |
| 発泡成形 | ◎ | 発泡スチロール、断熱材、緩衝材、魚箱 |
| ブロー成形 | △ | 特殊容器 |
| 切削加工 | ○ | 試作部品、治具、透明板材 |
構造式
ポリスチレンの基本構造:−CH2−CH(C6H5)−
ポリスチレンの主鎖とフェニル基の模式図
ポリスチレンは、主鎖にフェニル基を持つビニル系高分子である。 市販の一般的なポリスチレンは、ほとんどが頭尾結合を主体とする非晶性樹脂であり、透明性と寸法安定性に優れる。
分岐は比較的多く、通常のGPPSは完全に無定形に近い樹脂である。 一方、シンジオタクチックポリスチレン(SPS)は立体規則性を持つ結晶性ポリスチレンであり、通常の非晶性PSより耐熱性と機械的強度に優れる。
種類
GPPS(一般用ポリスチレン)
| 名称 | General Purpose Polystyrene |
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| 略記号 | GPPS |
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| 構造 | スチレン単独重合体 |
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| 特徴 | 透明性、剛性、成形性が高い |
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| 主な用途 | 透明容器、ケース、文具、食品容器、光学部品 |
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特徴
- 透明性が高い
- 硬質で剛性がある
- 寸法安定性が良い
- 衝撃強度が低く、割れやすい
HIPS(高衝撃ポリスチレン)
| 名称 | High Impact Polystyrene |
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| 略記号 | HIPS |
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| 構造 | PSにゴム成分を分散させた耐衝撃グレード |
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| 特徴 | 耐衝撃性が高いが透明性は低い |
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| 主な用途 | 家電筐体、食品トレー、冷蔵庫内装、玩具、日用品 |
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特徴
- GPPSより耐衝撃性が高い
- 半透明から不透明である
- 硬度と引張強度はGPPSより低下する
- 家電・包装用途で多く使用される
SPS(シンジオタクチックポリスチレン)
| 名称 | Syndiotactic Polystyrene |
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| 略記号 | SPS |
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| 構造 | フェニル基が規則的に交互配列した結晶性PS |
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| 特徴 | 耐熱性、耐薬品性、寸法安定性に優れる |
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| 主な用途 | 電気・電子部品、自動車部品、耐熱部品 |
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特徴
- 通常の非晶性PSより耐熱性が高い
- 耐薬品性が高い
- 結晶性を持つ
- スーパーエンプラに近い用途で使われる場合がある
発泡ポリスチレン
| 名称 | Expanded Polystyrene / Extruded Polystyrene |
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| 略記号 | EPS、XPS |
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| 構造 | PSを発泡させた軽量材料 |
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| 特徴 | 軽量性、断熱性、緩衝性に優れる |
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| 主な用途 | 断熱材、緩衝材、魚箱、食品容器 |
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特徴
- 非常に軽量である
- 断熱性に優れる
- 緩衝性がある
- 耐溶剤性、耐熱性は低い
代表的な物性値又は機械的性質
| 項目 | 単位 | GPPS | HIPS | ASコポリマー | SPS |
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| 比重 | なし | 1.04〜1.09 | 1.04〜1.10 | 1.075〜1.10 | 約1.01〜1.05 |
| 吸水率 | % | 0.03〜0.1 | 0.05〜0.6 | 0.2〜0.3 | 低い |
| 引張強さ | MPa | 35〜84 | 10〜49 | 69〜84 | 50〜70 |
| 引張伸び | % | 1.0〜2.5 | 2〜80 | 1.5〜3.5 | 数%〜数十% |
| 曲げ強さ | MPa | 61〜98 | 35〜70 | 98〜130 | 80〜120 |
| アイゾット衝撃強さ | J/m | 14〜22 | 28〜600 | 20〜28 | 中程度 |
| ロックウェル硬さ | なし | M65〜80 | M35〜70 | M80〜90 | 高い |
| 連続耐熱温度 | ℃ | 60〜77 | 60〜79 | 60〜90 | 100℃以上 |
| 荷重たわみ温度 | ℃ | 約82〜96 | 約75〜96 | 約88〜102 | 高い |
| 体積固有抵抗 | Ω・cm | >1016 | >1016 | >1016 | 高い |
| 透明性 | なし | 透明 | 半透明〜不透明 | 透明 | 不透明〜半透明 |
耐薬品性
ポリスチレンは、酸、アルカリ、塩類などの無機薬品には比較的良好な耐性を示す。 一方で、ケトン、エステル、芳香族炭化水素、塩素化炭化水素には弱く、膨潤または溶解しやすい。
| 薬品・溶剤 | 耐性 | 備考 |
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| 水 | ○ | 吸水は小さく、短期使用では安定である |
| 酸 | ○ | 希酸には比較的安定である |
| アルカリ | ○ | 無機アルカリには比較的安定である |
| 塩類 | ◎ | 塩水、無機塩類には比較的安定である |
| アルコール | △ | 条件により白化、クラックの可能性がある |
| アセトン | × | 溶解する |
| MEK | × | 溶解または著しく膨潤する |
| トルエン | ◎(溶解側) | PSをよく溶解する代表溶媒である |
| キシレン | ◎(溶解側) | PSを溶解しやすい |
| THF | × | 溶解する |
| 塩素系溶剤 | × | 膨潤または溶解する |
更に詳しくはプラスチックの耐薬品性一覧表を参照
SP値(溶解度パラメータ)
ポリスチレンは芳香環を持つ非晶性樹脂であり、芳香族溶媒との親和性が高い。 SP値が近いトルエン、ベンゼン、キシレンなどには溶解しやすい。
| 材料 | SP値(δ) | 特徴 |
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| ポリスチレン(PS) | 約18.0〜19.0 MPa1/2 | 芳香族溶媒との相性が高い |
| 溶媒 | SP値 | 挙動 | 備考 |
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| トルエン | 18.2 | ◎(溶解) | PSをよく溶解する |
| キシレン | 18.0 | ◎(溶解) | 膨潤〜溶解 |
| THF | 18.5 | ◎(溶解) | 強溶媒である |
| アセトン | 19.9 | ○〜◎(膨潤〜溶解) | 条件により溶解する |
| エタノール | 26.0 | △(限定的) | 単独では溶解しにくいがクラックに注意 |
| 水 | 47.9 | ◎(耐性側) | 不溶である |
実務上の注意
- PSはトルエン、キシレン、THFなどで溶解しやすい
- アセトン、MEKなどのケトン系にも弱い
- 応力がある成形品では溶剤クラックが発生しやすい
- HIPSはゴム成分を含むため、GPPSとは耐溶剤性が異なる場合がある
- SPSは通常PSより耐薬品性に優れる
製法
ポリスチレンは、スチレンモノマーを重合して製造される。 スチレンは、ベンゼンとエチレンからエチルベンゼンを合成し、これを脱水素して得られる。
| 種類 | 製法 | 特徴 |
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| GPPS | スチレンのラジカル重合 | 透明で硬質な一般用PSが得られる |
| HIPS | ポリブタジエン存在下でスチレンを重合 | ゴム相が分散し、耐衝撃性が向上する |
| SPS | メタロセン触媒などによる立体規則性重合 | 結晶性を持ち、耐熱性と耐薬品性が向上する |
| 発泡PS | 発泡剤を用いて発泡成形 | 軽量性、断熱性、緩衝性を付与する |
詳細な利用用途
包装・食品容器用途
- 食品用トレー
- カップ
- どんぶり容器
- 乳酸菌飲料容器
- ディスポーザブルカップ
- シュリンクラベル
家電・OA機器用途
- テレビ筐体
- エアコン部品
- OA機器ハウジング
- 照明機器部品
- 冷蔵庫内透明部品
日用品・文具用途
- ボールペン部品
- 文具・事務用品
- 家庭用品
- 台所用品
- 玩具
- 家具部品
発泡用途
光学・透明部品用途
- 透明ケース
- レンズ付きフィルム部品
- 表示部品
- 透明カバー
関連材料との比較
| 比較材料 | PSとの違い | 選定ポイント |
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| PVC | PVCは難燃性と耐候性に優れる。PSは成形性と透明性に優れる | 難燃・建材用途ならPVC、透明成形品ならPS |
| PMMA | PMMAは透明性と耐候性が高い。PSは安価で成形性が良い | 光学品質ならPMMA、低コスト透明部品ならPS |
| ABS | ABSは耐衝撃性と外観性に優れる。PSは透明性と成形性に優れる | 筐体用途ならABS、透明容器ならPS |
| PET | PETは耐薬品性、透明性、ガスバリア性に優れる。PSは成形性と剛性に優れる | 飲料容器ならPET、食品トレーならPS |
| PP | PPは耐薬品性と耐熱性に優れる。PSは透明性と剛性に優れる | 耐薬品性ならPP、透明性ならPS |
| PE | PEは柔軟性、耐薬品性、低温性に優れる。PSは剛性と透明性に優れる | 柔軟容器ならPE、硬質透明品ならPS |
代表的なメーカー
| メーカー | 代表的な商品名・グレード例 | 備考 |
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| PSジャパン | PSJポリスチレン各種グレード | GPPS、HIPSなど |
| DIC | ディックスチレン系材料 | スチレン系樹脂、発泡材料関連 |
| 東洋スチレン | トーヨースチロール | GPPS、HIPS、特殊PS |
| INEOS Styrolution | Styrolution PS、HIPS | 世界的なスチレン系樹脂メーカー |
| Trinseo | STYRON、MAGNUMなど | PS、ABS系材料 |
| SABIC | SABIC PS | 汎用、包装、成形用途 |
| TotalEnergies | Crystal、Impact PS | GPPS、HIPS用途 |