概要
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 材料名 | アクリル樹脂 |
| 略記号 | PMMA |
| IUPAC | Poly(methyl 2-methylprop-2-enoate) |
| 英語名 | Polymethyl Methacrylate、Poly(methyl methacrylate)、Acrylic Resin、Methacrylate Resin |
| 日本語名 | アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリメチルメタクリレート、メタクリル酸メチル樹脂 |
| 分類 | 熱可塑性樹脂、非晶性樹脂、透明樹脂、アクリル系樹脂 |
| プラスチック分類 | 汎用プラスチック。ただし、光学用途・耐候用途では機能性透明樹脂として扱われることが多い |
| 化学式または代表構造 | (C5H8O2)n、代表構造:−[CH2−C(CH3)(COOCH3)]n− |
| CAS No. | 9011-14-7(PMMAとして一般に知られるCAS No.) |
| 構造・主成分 | メタクリル酸メチル(MMA)を主成分とする重合体である。用途により、メチルメタクリレート系共重合体、耐衝撃改質グレード、耐熱グレード、架橋アクリル、アクリル系エラストマー改質品などがある |
| 主な用途 | 透明板、看板、照明カバー、レンズ、導光板、ディスプレイ部材、車両ランプレンズ、医療・分析機器部品、建材、装飾部品、塗料・コーティング、接着剤、人工大理石、歯科材料など |
アクリル樹脂は、一般にメタクリル酸メチルを主成分として重合して得られる透明性に優れた熱可塑性樹脂である。代表的な材料はポリメチルメタクリレート(PMMA)であり、透明プラスチックの中でも光線透過率、耐候性、表面硬度、外観性に優れる材料として広く使用される。
PMMAは非晶性樹脂であり、結晶性樹脂のような明確な融点は持たず、ガラス転移温度付近から軟化する。一般的な連続使用温度は70〜90℃程度が目安であり、耐熱グレードではこれより高い温度域で使用できる場合がある。ただし、耐熱性はポリカーボネート(PC)や一部のエンジニアリングプラスチックより低い。
材料選定では、透明性、耐候性、表面硬度を重視する場合に有力候補となる。一方で、耐衝撃性、耐溶剤性、耐応力割れ性には注意が必要である。特にアルコール、ケトン、エステル、芳香族炭化水素、塩素系溶剤、油脂、洗浄剤、接着剤、塗料との接触では、グレード、温度、濃度、接触時間、成形残留応力を確認する必要がある。
特徴
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 長所 | 透明性が非常に高い。耐候性、表面硬度、光沢、着色性、寸法安定性、電気絶縁性に優れる。屋外透明部材、光学部材、装飾部品に適する |
| 短所 | 衝撃に弱く、割れやすいグレードがある。ケトン、エステル、芳香族溶剤、塩素系溶剤に弱い。応力割れ、クラック、燃焼性、熱変形に注意が必要である |
| 外観 | 無色透明が基本である。着色透明、不透明、拡散、耐候、光学、マット調などのグレードがある |
| 耐熱性 | 標準グレードでは荷重たわみ温度が85〜105℃程度、連続使用温度は70〜90℃程度が目安である。耐熱グレードでは100℃前後以上の用途に使われる場合があるが、荷重、応力、時間に依存する |
| 耐薬品性 | 水、弱酸、弱アルカリ、脂肪族炭化水素、一部の油に比較的安定である。一方、アセトン、MEK、酢酸エチル、トルエン、クロロホルム、ジクロロメタンなどには溶解・膨潤・白化・クラックを起こしやすい |
| 加工性 | 射出成形、押出成形、キャスト板、切削、レーザー加工、熱曲げ、真空成形に対応できる。乾燥、金型温度、残留応力管理が外観とクラック防止に重要である |
| 分類上の注意 | 「アクリル樹脂」は広義にはアクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、アクリル共重合体、塗料用アクリル、粘着剤用アクリルも含む場合がある。成形材料としてはPMMAを指すことが多い |
| 代表グレード | 汎用透明、押出板、キャスト板、射出成形、光学、導光、耐熱、耐衝撃、耐候、拡散、難燃、摺動改質、食品接触適合グレードなど |
| 難燃性 | 標準PMMAは燃えやすく、UL94ではHB相当となることが多い。難燃グレードも存在するが、透明性、機械物性、成形性、規格適合性は個別確認が必要である |
| 法規制 | RoHS、REACH、食品接触、FDA、医療用途、玩具、電気用品、建材用途では、樹脂単体ではなくグレード、添加剤、着色剤、残留モノマー、製造履歴、証明書を確認する必要がある |
| 注意点 | 応力割れ、溶剤クラック、熱変形、燃焼性、擦傷、成形時のシルバー、気泡、焼け、乾燥不足、接着剤による白化に注意する |
構造式

アクリル樹脂の代表であるPMMAは、メタクリル酸メチルを重合した高分子である。 主鎖にメチル基とメタクリル酸エステル基を持つため、剛性、透明性、表面硬度、耐候性に優れる。
PMMAは非晶性樹脂であり、結晶による光散乱が少ないため高い透明性を示す。 また、芳香環を持たないため紫外線による黄変が比較的少なく、屋外透明部材として使いやすい。
| 項目 | 構造・内容 |
|---|---|
| 代表的な構造単位 | −[CH2−C(CH3)(COOCH3)]n− |
| 繰り返し単位の化学式 | C5H8O2 |
| ポリマー化学式 | (C5H8O2)n |
| モノマー | メタクリル酸メチル、Methyl methacrylate、MMA、CH2=C(CH3)COOCH3 |
| 構造上の特徴 | 主鎖は炭素−炭素結合で構成され、側鎖にメチル基とメチルエステル基を持つ。非晶性で透明性が高く、エステル基によりポリオレフィンより極性が高い |
| 共重合体・変性グレード | MMAを主成分とし、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、スチレン系成分、無水マレイン酸系成分、ゴム成分などを共重合・ブレンドして、耐熱性、耐衝撃性、成形性、耐候性、接着性を調整する場合がある |
基本的な重合反応は、メタクリル酸メチルのビニル基が付加重合してポリメチルメタクリレートを形成する反応である。
n CH2=C(CH3)COOCH3 → −[CH2−C(CH3)(COOCH3)]n−
種類
| 種類の名称 | 主成分または特徴 | 長所 | 短所 | 主な用途 |
|---|---|---|---|---|
| 汎用PMMA | MMAを主成分とする標準透明グレード | 透明性、耐候性、表面硬度、外観性が良い | 衝撃に弱く、溶剤クラックに注意が必要である | 透明成形品、カバー、装飾部品、銘板 |
| 押出板用PMMA | 押出成形で板状に加工するグレード | 板厚精度、生産性、二次加工性に優れる | キャスト板より耐溶剤性、耐熱性、内部応力で劣る場合がある | 看板、ディスプレイ、建材、照明カバー |
| キャスト板PMMA | MMAを型内で重合させる板材 | 透明性、耐候性、耐溶剤性、板厚ラインアップに優れる | 生産性は押出板より低く、板厚ばらつきが出る場合がある | 大型看板、水槽、厚板部材、装飾板 |
| 光学グレードPMMA | 低異物、低黄変、光学特性を重視したグレード | 高透明、低ヘイズ、導光性、成形外観が良い | 成形条件、乾燥、金型汚れ、異物管理が厳しい | レンズ、導光板、液晶関連部材、センサー窓 |
| 耐衝撃PMMA | ゴム成分やアクリル系改質剤で衝撃性を高めたグレード | 割れにくく、成形品の破損リスクを下げやすい | 透明性、表面硬度、耐熱性が標準品より低下する場合がある | 家電部品、車両部品、保護カバー、筐体 |
| 耐熱PMMA | 共重合や分子設計により耐熱性を高めたグレード | 標準PMMAより熱変形を抑えやすい | 流動性、靭性、成形条件が制限される場合がある | 車載ランプ、照明部品、光学部品 |
| 難燃PMMA | 難燃剤または難燃設計を導入したグレード | 電気電子用途で難燃規格に対応できる場合がある | 透明性、耐候性、機械物性、成形外観に影響する場合がある | 照明周辺部品、電気電子カバー、内装部品 |
| アクリル系塗料・コーティング樹脂 | アクリル酸エステル、メタクリル酸エステルを主成分とする塗料用樹脂 | 耐候性、光沢保持性、透明性、密着性の設計自由度が高い | 成形用PMMAとは物性、分子量、溶解性、硬化方式が異なる | 自動車塗料、建材塗料、保護コート、粘着剤、インキ |
成形加工
| 加工方法 | 適性 | 内容・注意点 |
|---|---|---|
| 射出成形 | ◎ | 透明部品、光学部品、外装部品に適する。乾燥不足によるシルバー、気泡、白濁、成形応力によるクラックに注意する |
| 押出成形 | ◎ | 板、シート、棒、パイプに使用される。押出板は二次加工しやすいが、内部応力と耐溶剤性を確認する |
| ブロー成形 | △ | 一般的な中空容器用途では限定的である。透明中空品ではグレード、溶融強度、設備条件の確認が必要である |
| 圧縮成形 | △ | 一般的な熱可塑性PMMAの量産成形では主流ではない。特殊な板材、積層、熱成形用途では条件により検討される |
| 真空成形・圧空成形 | ○ | シート、板材のカバー、表示部材、成形トレーに使用できる。加熱ムラ、白化、肉厚低下、残留応力に注意する |
| 切削加工 | ◎ | 板、丸棒、ブロックの切削に適する。割れ、欠け、発熱、溶着、クラックを防ぐため、工具、送り、冷却条件を調整する |
| レーザー加工 | ◎ | 切断、彫刻に適する。端面はきれいに仕上がりやすいが、焦げ、発煙、熱影響、応力割れに注意する |
| 接着・溶剤接着 | ○ | 専用接着剤や溶剤系接着が用いられる。白化、気泡、クラック、接着剤のはみ出し、応力集中に注意する |
| 塗装・印刷 | ○ | 表面性が良く、印刷・塗装に使いやすい。溶剤選定、密着性、クラック、耐候性、インキ残留溶剤を確認する |
代表的な成形条件
| 項目 | 代表条件 | 備考 |
|---|---|---|
| 予備乾燥 | 70〜90℃、3〜5時間 | 吸湿量は大きくないが、透明外観用途では乾燥管理が重要である |
| シリンダー温度 | 200〜260℃ | グレード、流動性、肉厚、成形機により調整する |
| 金型温度 | 40〜80℃ | 光学部品や外観部品では高めに設定して転写性と残留応力を調整する場合がある |
| 成形収縮率 | 0.2〜0.8%程度 | 非晶性樹脂のため比較的小さい。肉厚、ゲート、保圧、金型温度で変動する |
| 樹脂温度管理 | 過熱滞留を避ける | 黄変、焼け、ガス、分子量低下、外観不良の原因になる |
| 残留応力対策 | 必要に応じてアニール | 溶剤接触、接着、塗装、屋外使用では応力割れ対策として有効な場合がある |
代表的な物性値又は機械的性質
| 項目 | 単位 | 標準PMMA | 耐衝撃PMMA | 耐熱PMMA | 備考 |
|---|---|---|---|---|---|
| 密度 | g/cm3 | 1.17〜1.20 | 1.15〜1.20 | 1.17〜1.21 | 代表値であり、添加剤、ゴム改質、充填材で変動する |
| 引張強さ | MPa | 55〜80 | 40〜65 | 60〜85 | 標準品は剛性が高いが、衝撃改質品は強度が低下する場合がある |
| 伸び | % | 2〜10 | 10〜50 | 2〜8 | 破断伸びは試験片、成形条件、グレード差が大きい |
| 曲げ弾性率 | GPa | 2.4〜3.3 | 1.6〜2.8 | 2.5〜3.5 | 透明樹脂の中では剛性が高い部類である |
| アイゾット衝撃強さ | kJ/m2 | 1〜3 | 4〜15 | 1〜4 | ノッチ付きの代表範囲。標準品は切欠きに弱い |
| 荷重たわみ温度 | ℃ | 85〜105 | 75〜95 | 100〜120 | 荷重条件により値が変わる。実使用では荷重、肉厚、時間を確認する |
| 融点 | ℃ | 明確な融点なし | 明確な融点なし | 明確な融点なし | 非晶性樹脂である |
| ガラス転移温度 | ℃ | 100〜115 | 90〜110 | 110〜125 | 代表値であり、共重合組成や分子量で変動する |
| 連続使用温度 | ℃ | 70〜90 | 60〜85 | 85〜105 | 目安である。荷重、応力、薬品接触、屋外曝露で低下する場合がある |
| 吸水率 | % | 0.2〜0.4 | 0.2〜0.5 | 0.2〜0.4 | 24時間浸漬の代表範囲。PA系より低いが光学用途では管理が必要である |
| 体積抵抗率 | Ω・cm | 1014〜1016 | 1013〜1016 | 1014〜1016 | 電気絶縁性は良好である。湿度、添加剤、帯電防止処方で変動する |
| 全光線透過率 | % | 90〜93 | 85〜92 | 88〜92 | 透明性が高い。板厚、着色、拡散剤、表面状態で変わる |
| 線膨張係数 | ×10-5/K | 6〜9 | 7〜10 | 6〜9 | 金属やガラスとの組み合わせでは熱膨張差に注意する |
| UL94難燃性 | 等級 | HB相当が多い | HB相当が多い | HB相当が多い | 難燃グレードは個別確認が必要である |
| 酸素指数 | % | 17〜18程度 | 17〜19程度 | 17〜19程度 | 代表目安。PMMAは燃焼しやすい樹脂である |
PMMAでは、GF強化やCF強化はナイロン6(PA6)、ナイロン66(PA66)、PBT、PCほど一般的ではない。透明性を重視する材料であるため、充填材を入れると透明性、外観、光学特性が大きく変化する。複合化する場合は、透明性より寸法安定性、摺動性、剛性、熱変形抑制を優先する特殊設計と考えるのが実務的である。
耐薬品性
| 薬品分類 | 代表薬品 | 評価 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 酸類 | 希塩酸、希硫酸、酢酸水溶液 | ○ | 低濃度・常温では比較的安定である。高濃度、長時間、高温では白化、強度低下、表面荒れを確認する |
| 強酸・酸化性酸 | 濃硫酸、濃硝酸、クロム酸 | × | 劣化、変色、クラック、分解のリスクが高い |
| アルカリ類 | 水酸化ナトリウム、KOH、アンモニア水 | △ | 低濃度・短時間では使用できる場合があるが、エステル基の加水分解や応力割れに注意する |
| 低級アルコール類 | メタノール、エタノール、IPA | △ | 短時間接触では使用できる場合があるが、応力がある成形品ではクラック、白化、膨潤を生じる場合がある |
| 高級アルコール類 | グリセリン、ベンジルアルコール、MMB | △〜○ | 分子量、極性、温度により差がある。グリセリンは比較的安定な場合が多いが、ベンジルアルコールや一部グリコールエーテルは注意が必要である |
| 芳香族炭化水素類 | トルエン、キシレン、エチルベンゼン | × | 膨潤、軟化、溶解、応力割れを起こしやすい |
| 脂肪族炭化水素類 | ヘキサン、ヘプタン、ミネラルスピリット | ○ | 比較的安定な場合が多いが、添加剤、油分、芳香族混入、長時間接触では確認が必要である |
| ケトン | アセトン、MEK、MIBK | × | PMMAを溶解・膨潤しやすい。接着剤や洗浄剤に含まれる場合は特に注意する |
| エステル | 酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル | × | 溶解、膨潤、白化、応力割れを起こしやすい |
| 塩素系溶剤 | ジクロロメタン、クロロホルム、トリクロロエチレン | × | 強い溶解性を示す場合が多い。使用は避けるのが基本である |
| 水・温水 | 水、温水、純水 | ○ | 常温水には比較的安定である。温水、蒸気、長期浸漬では吸水、白化、寸法変化、応力割れを確認する |
| 油 | 鉱物油、植物油、潤滑油、動物油脂 | ○〜△ | 油種、添加剤、芳香族成分、界面活性剤、温度で変わる。洗浄剤を含む油脂環境では試験が必要である |
| 燃料 | ガソリン、軽油、灯油、アルコール混合燃料 | △〜× | 芳香族成分やアルコールにより膨潤・クラックのリスクがある。燃料接触部材には慎重に判断する |
| 界面活性剤・洗剤 | 中性洗剤、アルカリ洗剤、溶剤系洗浄剤 | △ | 界面活性剤、アルカリ、溶剤、温度、応力の組み合わせで環境応力割れを起こす場合がある |
SP値(溶解度パラメータ)
| 材料 | 代表的なSP値 δ MPa1/2 | 備考 |
|---|---|---|
| アクリル樹脂(PMMA) | 約18.6〜19.4 | 代表値である。測定法、文献、温度、分子量、共重合組成、添加剤により変動する |
SP値は、ポリマーと溶剤の親和性を推定するための有用な指標である。ただし、SP値だけで耐薬品性を判断することはできない。実際の耐薬品性は、結晶性・非晶性、分子量、架橋、添加剤、残留応力、温度、濃度、接触時間、薬品の混合組成、拡散速度、揮発速度、表面処理、成形履歴に大きく影響される。
溶解性の目安
| SP値差 Δδ | 溶解・膨潤の目安 | 判定 |
|---|---|---|
| 0〜2 | 膨潤・軟化しやすい | × |
| 2〜5 | 条件により膨潤する | △ |
| 5〜8 | 短時間接触では比較的安定 | ○ |
| 8以上 | 溶解・膨潤しにくい | ◎ |
SP値から見た耐溶剤性
PMMAの代表SP値を19.0 MPa1/2として、代表溶剤とのSP値差を目安として整理する。評価はSP値差に基づく一次推定であり、実際の耐薬品性とは一致しない場合がある。
| 薬品名 | 代表SP値 δ MPa1/2 | PMMAとの差 | SP値上の評価 | 実務上の注意 |
|---|---|---|---|---|
| 水 | 約47.9 | 約28.9 | ◎ | SP値上は溶解しにくい。温水、長期浸漬、応力下では吸水や白化を確認する |
| メタノール | 約29.7 | 約10.7 | ◎ | SP値差は大きいが、低級アルコールは応力割れを起こす場合がある |
| エタノール | 約26.0 | 約7.0 | ○ | 消毒用アルコールでは濃度、接触時間、拭き取り応力、成形応力に注意する |
| IPA | 約23.5 | 約4.5 | △ | 洗浄用途ではクラック、白化、応力割れを試験で確認する |
| アセトン | 約20.3 | 約1.3 | × | 溶解・膨潤しやすく、洗浄剤としての使用は避ける |
| MEK | 約19.0 | 約0.0 | × | PMMAに非常に影響しやすい。接着、塗装、洗浄で注意する |
| 酢酸エチル | 約18.2 | 約0.8 | × | 溶解・膨潤・クラックのリスクが高い |
| 酢酸ブチル | 約17.4 | 約1.6 | × | 塗料溶剤として含まれることがあり、表面荒れや白化に注意する |
| トルエン | 約18.2 | 約0.8 | × | 芳香族溶剤であり、膨潤・応力割れを起こしやすい |
| キシレン | 約18.0 | 約1.0 | × | 塗料、インキ、洗浄剤に含まれる場合は避ける |
| n-ヘキサン | 約14.9 | 約4.1 | △ | SP値上は注意域だが、実際には比較的安定な場合が多い。混合溶剤では確認が必要である |
| シクロヘキサン | 約16.8 | 約2.2 | △ | 長時間接触、応力下、混合溶剤では膨潤を確認する |
| ジクロロメタン | 約20.2 | 約1.2 | × | 強い溶解性を示す代表的な溶剤である |
| クロロホルム | 約19.0 | 約0.0 | × | PMMAに対して強い溶解性を示す場合が多い |
| グリセリン | 約33〜36 | 約14〜17 | ◎ | SP値上は安定側であるが、添加剤、温度、吸湿条件を確認する |
| MMB | 約22〜24 | 約3〜5 | △ | グリコールエーテル系は樹脂への影響が出る場合があり、実液試験が必要である |
評価基準:◎非常に良好、○概ね良好、△注意が必要、×不適。なお、SP値差が大きくても、アルコール類や界面活性剤のように環境応力割れを誘発する場合があるため、実使用では必ず薬品浸漬、拭き取り、応力負荷、温度サイクルを組み合わせて確認する必要がある。
製法
アクリル樹脂は、主にメタクリル酸メチル(MMA)を重合して製造される。 製品形態により、塊状重合、懸濁重合、乳化重合、注型重合などが用いられる。 板材ではキャスト法、成形材料ではペレット化された射出成形グレードが使用される。

アセトンシアンヒドリン法

エスカンビア法
| 工程 | 内容 | 注意点 |
|---|---|---|
| 原料 | 主原料はメタクリル酸メチル(MMA)である。用途により、他のメタクリル酸エステル、アクリル酸エステル、架橋性モノマー、耐熱性付与成分、改質剤を併用する | 残留モノマー、重合禁止剤、純度、水分、色相、異物管理が重要である |
| 重合方法 | 塊状重合、懸濁重合、乳化重合、溶液重合などが用いられる。成形材料用ペレットでは懸濁重合や塊状重合由来の材料が使われることが多い | 分子量、分子量分布、残留モノマー、透明性、熱安定性に影響する |
| 基本反応式 | n CH2=C(CH3)COOCH3 → −[CH2−C(CH3)(COOCH3)]n− | ラジカル重合が基本である。開始剤、温度、重合速度で分子量と残留成分が変わる |
| ペレット化 | 重合後のポリマーを脱揮、混練、押出、ペレット化する。透明グレードでは異物、ゲル、焼け、黄変を厳しく管理する | 光学用途ではクリーンな工程管理が必要である |
| コンパウンド | 紫外線吸収剤、酸化防止剤、滑剤、帯電防止剤、着色剤、拡散剤、耐衝撃改質剤、難燃剤などを配合する場合がある | 添加剤は透明性、耐候性、食品接触、医療適合、アウトガス、耐薬品性に影響する |
| キャスト板製造 | MMAまたはシロップ状原料を型内で重合し、板状に成形する | 重合収縮、気泡、厚み精度、残留モノマー、内部応力を管理する |
| 押出板製造 | PMMAペレットを押出機で溶融し、Tダイやロールで板・シート化する | 生産性に優れるが、押出応力、熱履歴、表面欠点、寸法安定性を確認する |
詳細な利用用途
| 用途分野 | 代表用途 | 採用理由 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 自動車 | テールランプ、メーターカバー、エンブレム、装飾部品、透明カバー | 透明性、耐候性、外観性、着色性に優れる | 耐熱性、耐衝撃性、洗車薬品、燃料、ワックス、屋外曝露を確認する |
| 電気・電子 | 表示窓、LEDレンズ、導光板、照明カバー、センサー窓、透明筐体 | 光学特性、寸法安定性、電気絶縁性が良い | 難燃性、熱変形、アウトガス、静電気、溶剤拭き取りに注意する |
| 機械部品 | 透明カバー、点検窓、保護板、治具、表示部品 | 透明性と切削加工性が良く、内部確認用部材に使いやすい | 衝撃、締結応力、薬品、切削クラック、熱変形を確認する |
| 医療・分析機器 | 透明ケース、試験器具、セル、分析機器窓、ディスポ部品 | 透明性、成形性、外観、比較的良好な寸法安定性 | 滅菌方法、アルコール、薬液、残留モノマー、グレードの医療適合性を確認する |
| 食品機械・食品接触 | 透明カバー、表示窓、飛散防止カバー、保護板 | 視認性が高く、清掃状態を確認しやすい | 食品接触適合、洗剤、アルカリ洗浄、アルコール消毒、熱水、油脂を確認する |
| 建築・設備 | 看板、採光板、間仕切り、照明カバー、防風板、装飾パネル | 耐候性、透明性、軽量性、加工性に優れる | 燃焼性、熱膨張、締結応力、屋外汚染、清掃溶剤、法規制を確認する |
| 広告・ディスプレイ | サイン、POP、展示ケース、ショーケース、銘板 | 光沢、透明性、着色性、レーザー加工性が良い | 傷、静電気、清掃薬品、接着白化、屋外黄変を確認する |
| 塗料・コーティング | アクリル塗料、クリヤーコート、建材塗料、自動車補修塗料、UV硬化系アクリル | 耐候性、光沢保持、透明性、硬度、密着設計の自由度が高い | 成形用PMMAとは異なる設計である。溶剤、硬化方式、架橋密度、基材密着性を確認する |
関連材料との比較
| 比較材料 | 特徴 | アクリル樹脂との違い |
|---|---|---|
| ポリカーボネート(PC) | 透明性、耐衝撃性、耐熱性に優れるエンジニアリングプラスチックである | PCは衝撃と耐熱性で優れるが、PMMAは表面硬度、耐候性、光学透明性、耐擦傷性で有利な場合がある |
| ABS樹脂 | 耐衝撃性、成形性、外観性、塗装性に優れるスチレン系樹脂である | ABSは不透明筐体向きで、PMMAは透明部品向きである。屋外耐候性はPMMAが有利な場合が多い |
| AS樹脂 | 透明性、剛性、耐薬品性を持つスチレン・アクリロニトリル共重合体である | ASは成形性と耐薬品性のバランスが良いが、PMMAは透明性、耐候性、表面硬度で優れる場合が多い |
| ポリスチレン(PS) | 透明性、成形性、低コストに優れる汎用プラスチックである | PSは安価で成形しやすいが、PMMAは耐候性、透明性、表面硬度で優れる。耐衝撃性はグレードにより異なる |
| ポリ塩化ビニル(PVC) | 難燃性、耐薬品性、成形加工性に優れる塩素系樹脂である | PVCは難燃性と耐薬品性で有利だが、PMMAは透明性、光沢、耐候性、外観性で有利である |
| PETG樹脂 | 透明性、耐衝撃性、成形性、二次加工性に優れる非晶性ポリエステル系透明樹脂である | PETGは衝撃性と熱成形性で有利な場合があるが、PMMAは耐候性、表面硬度、剛性で有利な場合がある |
| PCTG樹脂 | 透明性、耐衝撃性、耐薬品性を改良したコポリエステル系透明樹脂である | PCTGは薬品性や衝撃性を重視する用途で候補となる。PMMAは屋外耐候性、硬さ、光学外観で選ばれやすい |
| ジアリルカーボネート樹脂(CR-39系) | 眼鏡レンズなどに使われる熱硬化性透明樹脂である | ジアリルカーボネート樹脂はレンズ用途で耐擦傷性や光学特性が重視される。PMMAは熱可塑性で成形・加工自由度が高い |
代表的なメーカー
| メーカー | 代表製品・ブランド | 概要 |
|---|---|---|
| 三菱ケミカルグループ | アクリペット、アクリライトなど | PMMA成形材料、アクリル板、光学・一般用途のアクリル樹脂で知られる。グレードにより用途、認証、物性は異なる |
| 住友化学 | スミペックスなど | PMMA系材料、アクリル板、光学用途、透明部材用途に関連する製品を扱う代表的メーカーの一つである |
| クラレ | パラペットなど | PMMA成形材料の代表的メーカーの一つであり、透明材料、光学用途、一般成形用途で使用される |
| 旭化成 | デルペットなど | PMMA系成形材料の代表例がある。透明性、成形性、用途適合性はグレードごとに確認する必要がある |
| Röhm | PLEXIGLAS、PLEXIMIDなど | PMMAおよびメタクリル系材料の世界的メーカーである。透明材料、耐熱、光学、成形材料などの代表例がある |
| Trinseo | ALTUGLASなど | PMMA成形材料、アクリル板、透明材料分野の代表的メーカーの一つである |
| SABIC | アクリル系透明材料の関連グレード | 透明樹脂、エンジニアリングプラスチックを扱うメーカーである。PMMA単体の採用可否は地域、グレード、供給形態を確認する |
メーカー名、ブランド名、グレード名は、販売地域、事業移管、商流、グレード統廃合により変わる場合がある。実際の採用では、最新版のカタログ、SDS、食品接触証明、RoHS・REACH証明、ULカード、医療用途適合資料を確認する必要がある。
用途別選定
| 用途 | 推奨されるPMMA系グレード | 比較候補 | 確認すべき評価 |
|---|---|---|---|
| 透明カバー | 汎用透明、耐衝撃、耐候 | PC、PETG | 落下衝撃、薬品拭き取り、屋外曝露、締結クラック |
| レンズ・光学部品 | 光学グレード、低異物グレード | PC、COC、COP | 透過率、ヘイズ、複屈折、黄変、アウトガス、金型転写 |
| 導光板 | 導光グレード、光学PMMA | PC、MS樹脂 | 輝度、黄変、吸水、反り、異物、熱履歴 |
| 筐体 | 耐衝撃PMMA、着色PMMA | ABS、PC、PC/ABS | 衝撃、爪嵌合、難燃性、塗装性、薬品性 |
| フィルム・シート | 押出シート、耐候シート、拡散シート | PETG、PVC、PC | 熱成形性、白化、残留応力、耐擦傷、屋外曝露 |
| 食品機械の透明窓 | 食品接触適合グレード、耐薬品確認済みグレード | PC、PETG | 食品接触証明、アルカリ洗浄、アルコール、熱水、油脂、割れ |
| 摺動部品 | 摺動改質グレード | POM、PA、PTFE系材料 | 摩耗、摩擦係数、発熱、相手材攻撃性、粉塵 |
注意点
- PMMAは透明性、耐候性、表面硬度に優れるが、耐衝撃性は標準グレードでは高くない。落下、衝突、ねじ締結、爪嵌合がある用途では耐衝撃グレードまたはPCなどの比較が必要である。
- ケトン、エステル、芳香族炭化水素、塩素系溶剤には弱い。塗料、接着剤、洗浄剤、インキ、油脂、薬液が接触する場合は実液試験が必要である。
- アルコール拭き取りでは、短時間では問題が見えにくくても、成形応力、締結応力、曲げ応力がある部分でクラックが発生する場合がある。
- 非晶性樹脂であるため、明確な融点はなく、Tg付近から剛性低下が大きくなる。荷重がかかる部品ではHDTだけでなく、クリープ、長期熱変形を確認する必要がある。
- 標準PMMAは燃焼しやすい。照明、電気電子、建材、車両内装ではUL94、酸素指数、発煙性、法規制を確認する。
- 吸水率は大きくないが、光学用途では微小な吸湿、乾燥不足、成形ガス、アウトガス、金型汚れが外観不良につながる。
- 屋外耐候性は良好であるが、紫外線、熱、湿度、汚染物質、洗剤、機械応力の複合劣化では黄変、クラック、表面劣化が起こる場合がある。
推奨試験
| 目的 | 推奨試験 | 確認項目 |
|---|---|---|
| 透明性確認 | 全光線透過率、ヘイズ、黄色度、外観検査 | 透明性、白化、黄変、異物、ウェルド、シルバー |
| 耐薬品性確認 | 実液浸漬、拭き取り試験、応力負荷浸漬 | 重量変化、寸法変化、白化、クラック、強度低下 |
| 応力割れ確認 | 曲げ治具、締結状態、接着状態での薬品接触試験 | クラック発生時間、白化、破断、外観変化 |
| 耐候性確認 | 促進耐候、屋外曝露、紫外線照射、温湿度サイクル | 黄変、光沢低下、ヘイズ増加、クラック、強度低下 |
| 耐熱性確認 | HDT、熱老化、クリープ、温度サイクル | 変形、寸法変化、応力緩和、光学特性変化 |
| 難燃性確認 | UL94、酸素指数、燃焼試験 | 燃焼性、滴下、自己消火性、規格適合 |
| 食品・医療用途確認 | 溶出、抽出、残留モノマー、SDS・証明書確認 | 食品衛生、FDA、医療適合、REACH、RoHS、添加剤情報 |
関連キーワード
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