概要
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 材料名 | ポリアリレート |
| 略記号 | PAR |
| IUPAC | poly(arylene ester)を基本とする芳香族ポリエステル系高分子である。代表例として、ビスフェノールA骨格とテレフタル酸/イソフタル酸骨格を含むポリアリレートがある。 |
| 英語名 | Polyarylate、Polyarylate Resin、Aromatic Polyester |
| 日本語名 | ポリアリレート、ポリアリレート樹脂、芳香族ポリエステル樹脂、全芳香族ポリエステル系樹脂 |
| 分類 | 芳香族ポリエステル系樹脂、非晶性熱可塑性樹脂、高耐熱透明樹脂 |
| プラスチック分類 | エンジニアリング・プラスチックからスーパーエンジニアリング・プラスチックに近い高耐熱樹脂として扱われる場合がある。 |
| 化学式または代表構造 | 代表構造:[-O-Ar-O-CO-Ar’-CO-]n ビスフェノールA型の代表例:[-O-C6H4-C(CH3)2-C6H4-O-CO-C6H4-CO-]n |
| CAS No. | ポリアリレートは組成によりCAS No.が異なる。ビスフェノールA型ポリアリレートでは代表例として25766-59-0が参照される場合があるが、共重合比、末端構造、グレードにより確認が必要である。 |
| 構造・主成分 | 芳香族ジオールと芳香族ジカルボン酸成分からなるエステル結合を主鎖に持つ。代表的にはビスフェノールA、テレフタル酸、イソフタル酸などを構成単位とする。 |
| 主な用途 | 透明耐熱部品、電気・電子部品、精密機器部品、照明部品、光学部品、耐熱フィルム、食品・日用品部品、自動車部品、ばね性を利用する成形部品など。 |
ポリアリレート(PAR)は、芳香族骨格とエステル結合を主鎖に持つ高耐熱の熱可塑性樹脂である。一般的な代表グレードは非晶性で、透明性、耐熱性、寸法安定性、弾性回復性、耐候性に優れる材料として知られている。
構造的にはポリエチレンテレフタレート(PET)やポリブチレンテレフタレート(PBT)と同じ芳香族ポリエステル系に分類されるが、PARは主鎖中に剛直な芳香族成分を多く含むため、ガラス転移温度が高く、透明性を維持しながら耐熱性を高めやすい点が特徴である。
一方で、エステル結合を持つため、高温高湿、強酸、強アルカリ、加水分解条件では劣化に注意が必要である。また、非晶性樹脂であるため、溶剤による膨潤、白化、応力割れはグレード、成形残留応力、温度、接触時間により大きく変化する。実使用ではメーカー物性表、成形条件、薬品濃度、荷重、応力、使用時間を確認する必要がある。
特徴
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 長所 | 透明性、耐熱性、寸法安定性、弾性回復性、耐クリープ性、耐候性、電気絶縁性に優れる。標準グレードでは透明高耐熱部品に使用しやすい。 |
| 短所 | 価格は汎用樹脂や一般エンプラより高い。高温高湿、強酸、強アルカリ、加水分解条件、ケトン、エステル、塩素系溶剤、芳香族溶剤には注意が必要である。 |
| 外観 | 一般に透明から淡黄色透明である。グレード、添加剤、難燃剤、ガラス繊維、着色により透明性や外観は変化する。 |
| 耐熱性 | ガラス転移温度は代表値で約190℃前後、荷重たわみ温度は標準グレードで約170〜175℃程度が目安である。連続使用温度は一般に130〜150℃程度が目安であるが、荷重、雰囲気、寿命要求により変化する。 |
| 耐薬品性 | 油、脂肪族炭化水素、一部のアルコール、水には比較的安定な場合がある。一方、強酸、強アルカリ、高温水、ケトン、エステル、芳香族炭化水素、塩素系溶剤では膨潤、白化、クラック、加水分解に注意する。 |
| 加工性 | 射出成形を中心に、押出、フィルム化、切削加工が可能なグレードがある。吸湿による成形不良や加水分解を避けるため、成形前乾燥が重要である。 |
| 分類上の注意 | ポリアリレートは単一構造の樹脂名ではなく、芳香族ポリエステル系樹脂の総称として使われる場合がある。液晶ポリマー(LCP)や全芳香族ポリエステルと混同されることがあるため、非晶性PAR、フィルム用PAR、液晶性芳香族ポリエステルは分けて扱う必要がある。 |
| 難燃性 | グレードによりUL94 V-0相当の難燃グレードがある。透明性、流動性、電気特性、耐熱性は難燃剤や添加剤の影響を受ける。 |
| 法規制 | RoHS、REACH、食品接触、FDA、医療用途への適合は樹脂名だけでは判断できない。グレード、着色剤、添加剤、製造ロット、用途条件ごとの証明書確認が必要である。 |
| 注意点 | 加水分解、応力割れ、吸湿、熱劣化、アウトガス、成形時の乾燥不足、金型汚染、滞留劣化に注意する。透明部品では微小な白化、黄変、ヘイズ上昇も評価対象となる。 |
構造式

芳香族ポリエステル骨格。構造中の官能基、結晶性、架橋密度、芳香族骨格、充填材の有無により、耐熱性、耐薬品性、機械的性質、成形性が変化する。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 代表的な構造単位 | [-O-Ar-O-CO-Ar’-CO-]n |
| ビスフェノールA型の代表構造 | [-O-C6H4-C(CH3)2-C6H4-O-CO-C6H4-CO-]n |
| モノマーまたは構成単位 | ビスフェノールA、テレフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸クロリド、イソフタル酸クロリドなどが代表的な構成単位である。 |
| 構造上の特徴 | 芳香族環により主鎖剛直性が高く、ガラス転移温度、寸法安定性、耐熱性が高くなりやすい。エステル結合を持つため、加水分解条件では注意が必要である。 |
| 共重合体・変性グレード | テレフタル酸/イソフタル酸比率、ビスフェノール成分、末端基、難燃剤、ガラス繊維、摺動材、耐候剤、流動改良剤により、透明性、流動性、耐熱性、機械強度、難燃性が調整される。 |
種類
| 種類の名称 | 主成分または特徴 | 長所 | 短所 | 主な用途 |
|---|---|---|---|---|
| 標準ポリアリレート | 非晶性の芳香族ポリエステル系樹脂 | 透明性、耐熱性、寸法安定性、弾性回復性のバランスが良い。 | 溶剤応力割れ、加水分解、高温成形条件に注意が必要である。 | 透明耐熱部品、精密部品、電気・電子部品、日用品部品 |
| 耐熱グレード | 高Tg設計、耐熱安定化、耐熱フィルム用など | 高温環境で寸法変化が小さく、透明耐熱用途に使いやすい。 | 流動性、成形サイクル、価格、黄変に注意する。 | 耐熱フィルム、照明部品、電気絶縁部品、光学周辺部品 |
| 難燃グレード | 難燃剤または難燃設計を付与したグレード | UL94 V-0相当のグレードがあり、電気・電子部品に適用しやすい。 | 透明性、流動性、耐衝撃性、ブリード、電気特性は添加剤により変化する。 | コネクタ、電装部品、絶縁部品、筐体部品 |
| GF強化ポリアリレート | ガラス繊維を配合した強化グレード | 剛性、荷重たわみ温度、寸法安定性、耐クリープ性を高めやすい。 | 透明性は低下する。成形異方性、反り、ウエルド強度、工具摩耗に注意する。 | 構造部品、精密機構部品、自動車部品、電気部品 |
| 摺動グレード | PTFE、シリコーン、潤滑剤、無機フィラーなどを配合する場合がある。 | 摩擦係数、耐摩耗性、異音対策を改善しやすい。 | 強度、透明性、接着性、塗装性、食品接触適合はグレード確認が必要である。 | ギア、軸受、摺動レバー、カム、精密機構部品 |
| フィルムグレード | 透明性、耐熱性、寸法安定性を重視した押出・フィルム用グレード | 耐熱透明フィルム、絶縁フィルム、保護フィルムに使いやすい。 | 厚み精度、残留溶剤、表面欠点、熱収縮、ヘイズ管理が重要である。 | 耐熱フィルム、電気絶縁フィルム、光学周辺フィルム |
| 食品接触対応グレード | 食品接触用途向けに管理されたグレード | 耐熱透明性を活かした食品関連部品に検討できる。 | 日本の食品衛生、FDA、EU規制への適合はグレード単位で証明書確認が必要である。 | 食品機械部品、耐熱容器部材、日用品部品 |
成形加工
| 加工方法 | 適正 | 内容 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 射出成形 | ◎ | 最も一般的な加工方法である。透明耐熱部品、電気・電子部品、精密部品に適用される。 | 成形前乾燥、滞留劣化、金型温度、ゲート設計、ウエルド、残留応力管理が重要である。 |
| 押出成形 | ○ | シート、フィルム、チューブ、プロファイル用途で検討される。 | グレード選定、乾燥、吐出安定性、厚み精度、熱履歴管理が必要である。 |
| ブロー成形 | △ | 特殊グレードでは検討可能な場合があるが、一般的には主用途ではない。 | 溶融張力、温度窓、透明性、肉厚分布の確認が必要である。 |
| 圧縮成形 | △ | 板材、試験片、特殊成形で使われる場合がある。 | 熱可塑性PARでは射出・押出が中心であり、量産性は用途により限定される。 |
| 真空成形 | △ | シートグレードでは熱成形用途に検討される。 | 加熱温度、シート厚み、ドローダウン、白化、内部応力、寸法安定性を確認する。 |
| 切削加工 | ○ | 試作部品、治具、少量部品に対応できる。 | 切削熱、クラック、バリ、透明部品の白化、寸法変化に注意する。 |
| 接着・溶着 | △ | 接着剤、溶剤、プラズマ処理、表面処理により接合を検討する。 | 溶剤クラック、応力割れ、透明性低下、接着剤のアウトガスに注意する。 |
| 塗装・印刷 | ○〜△ | 表面処理やプライマーにより塗装・印刷できる場合がある。 | 密着性、溶剤攻撃、熱履歴、耐候性、耐薬品性を実部品で確認する。 |
代表的な成形条件
| 項目 | 代表範囲 | 備考 |
|---|---|---|
| 乾燥温度 | 120〜140℃ | 吸湿による加水分解、シルバー、気泡、物性低下を避けるため、成形前乾燥が必要である。 |
| 乾燥時間 | 4〜6時間程度 | ペレット水分、乾燥機性能、ホッパー滞留時間により変化する。 |
| シリンダー温度 | 320〜380℃程度 | グレードにより推奨温度が異なる。高温滞留による黄変、分解、アウトガスに注意する。 |
| 金型温度 | 80〜140℃程度 | 外観、寸法安定性、内部応力、ウエルド強度に影響する。 |
| 成形収縮率 | 非強化:約0.4〜0.8% GF強化:約0.2〜0.5% | 流動方向、直角方向、肉厚、ゲート、保圧、繊維配向により変化する。 |
| 滞留管理 | 短時間管理が望ましい | 高温成形樹脂であるため、長時間滞留は黄変、分子量低下、ガス発生の原因となる。 |
代表的な物性値又は機械的性質
| 項目 | 単位 | 非強化PAR | GF強化PAR代表例 | 備考 |
|---|---|---|---|---|
| 密度 | g/cm3 | 約1.20〜1.22 | 約1.35〜1.45 | ガラス繊維、無機フィラー、難燃剤により増加する。 |
| 引張強さ | MPa | 約65〜80 | 約110〜160 | 乾燥状態、試験温度、繊維配向により変化する。 |
| 伸び | % | 約30〜100 | 約2〜5 | 非強化品は比較的じん性を示すが、GF強化では伸びが小さくなる。 |
| 曲げ弾性率 | GPa | 約2.2〜2.7 | 約6.0〜9.0 | GF強化により大きく向上する。 |
| アイゾット衝撃強さ | J/m | 約50〜150 | 約40〜100 | ノッチ条件、試験温度、グレードにより差が大きい。 |
| 荷重たわみ温度 | ℃ | 約170〜175 | 約185〜200 | 1.82MPa条件の代表値である。荷重条件により変化する。 |
| ガラス転移温度 | ℃ | 約185〜195 | 約185〜195 | 非晶性PARでは明確な融点を持たず、Tg付近から軟化する。 |
| 融点 | ℃ | 明確な融点なし | 明確な融点なし | 代表的な非晶性ポリアリレートの場合である。液晶性芳香族ポリエステルとは区別する。 |
| 連続使用温度 | ℃ | 約130〜150 | 約140〜160 | 寿命、荷重、空気中、湿熱、電気用途、認証条件により異なる。 |
| 吸水率 | % | 約0.2〜0.4 | 約0.2〜0.5 | 23℃水中24時間などの代表値である。吸湿は寸法、成形性、加水分解に影響する。 |
| 体積抵抗率 | Ω・cm | 約1015〜1017 | 約1014〜1016 | 湿度、温度、添加剤、繊維、難燃剤により変化する。 |
| 線膨張係数 | ×10-5/K | 約5〜7 | 約2〜4 | GF強化では繊維配向により異方性が大きくなる。 |
| 酸素指数 | % | 約30前後 | グレードによる | 難燃性はグレードにより異なる。UL94は必ず個別グレードで確認する。 |
| UL94 | 等級 | HB〜V-0相当のグレードあり | V-0相当のグレードあり | 厚み、色、添加剤、認証ファイルで確認する必要がある。 |
耐薬品性
ポリアリレートの耐薬品性は、非晶性樹脂であること、エステル結合を持つこと、芳香族骨格を多く含むことにより決まる。油類、一部のアルコール、脂肪族炭化水素には比較的安定な場合があるが、ケトン、エステル、芳香族炭化水素、塩素系溶剤、強酸、強アルカリ、高温水には注意が必要である。特に成形残留応力が高い透明部品では、短時間接触でも白化や応力割れを生じる場合がある。
| 薬品分類 | 代表薬品 | 評価 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 酸類 | 希塩酸、希硫酸、酢酸 | ○〜△ | 常温・低濃度では使用可能な場合がある。高濃度、強酸、高温、長時間では加水分解や物性低下に注意する。 |
| 強酸・酸化性酸 | 濃硫酸、濃硝酸、クロム酸 | × | 化学劣化、変色、割れ、分子量低下の可能性が高い。原則として避ける。 |
| アルカリ類 | NaOH、KOH、水酸化ナトリウム水溶液 | △〜× | エステル結合の加水分解に注意する。高温、高濃度、長時間接触では不適となる場合が多い。 |
| 低級アルコール類 | メタノール、エタノール、IPA | ○〜△ | 短時間接触では比較的安定な場合があるが、応力部、透明部品、長時間浸漬では白化やクラックを確認する。 |
| 高級アルコール類 | グリセリン、ベンジルアルコール、MMB | ○〜△ | 分子量、極性、温度により膨潤性が変わる。MMBなどの洗浄剤成分は配合系で評価する必要がある。 |
| 芳香族炭化水素類 | トルエン、キシレン、エチルベンゼン | △〜× | SP値が近く、非晶性PARでは膨潤、軟化、白化、応力割れを起こす可能性がある。 |
| 脂肪族炭化水素類 | ヘキサン、ヘプタン、イソパラフィン | ○〜◎ | 一般に比較的安定な場合が多い。ただし燃料油、添加剤、温度、応力条件では確認が必要である。 |
| ケトン | アセトン、MEK、MIBK、シクロヘキサノン | × | 膨潤、軟化、クラック、表面白化を起こしやすい。洗浄剤、塗料、接着剤溶剤としての接触に注意する。 |
| エステル | 酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル | △〜× | 溶剤性が強く、膨潤や応力割れの原因となる場合がある。塗装・印刷工程では特に確認する。 |
| 塩素系溶剤 | ジクロロメタン、クロロホルム、トリクロロエチレン | × | 非晶性樹脂を強く侵す場合が多く、原則として避ける。短時間でもクラックや溶解の可能性がある。 |
| 水・温水 | 水、温水、蒸気 | ○〜△ | 常温水では比較的安定な場合がある。高温水、蒸気、高湿熱では加水分解、寸法変化、透明性低下に注意する。 |
| 油 | 鉱物油、潤滑油、シリコーン油、植物油 | ○〜◎ | 一般に比較的良好な場合が多い。添加剤、酸化劣化油、温度、応力下での確認が必要である。 |
| 燃料 | ガソリン、軽油、灯油、アルコール混合燃料 | ○〜△ | 脂肪族成分には比較的安定な場合があるが、芳香族成分、アルコール、添加剤、温度により変化する。 |
| 洗剤・界面活性剤 | 中性洗剤、アルカリ洗浄剤、溶剤系洗浄剤 | ○〜× | pH、界面活性剤、キレート剤、溶剤、温度、濃度、接触時間を含めた実液評価が必要である。 |
SP値(溶解度パラメータ)
| 材料 | 代表SP値 δ MPa1/2 | 備考 |
|---|---|---|
| ポリアリレート(PAR) | 約20.5〜22.5 | 代表的な推定範囲である。構成モノマー、共重合比、分子量、添加剤、測定・推算法により変動する。 |
| 非強化PAR | 約21.0〜22.0 | 透明非晶性グレードの目安である。 |
| GF強化PAR | 約20.5〜22.0 | 樹脂相のSP値が支配的であるが、ガラス繊維、カップリング剤、難燃剤、潤滑剤の影響を受ける。 |
SP値は溶解・膨潤の目安として有用であるが、ポリアリレートの耐薬品性をSP値だけで判断することはできない。実際には、非晶性か結晶性か、Tgとの差、溶剤拡散、薬品のpH、加水分解性、温度、濃度、接触時間、成形残留応力、荷重、表面処理、添加剤の影響を含めて判断する必要がある。
溶解性の目安
| SP値差 | 溶解・膨潤の目安 | 判定 |
|---|---|---|
| 0〜2 | 膨潤・軟化しやすい | × |
| 2〜5 | 条件により膨潤する | △ |
| 5〜8 | 短時間接触では比較的安定 | ○ |
| 8以上 | 溶解・膨潤しにくい | ◎ |
SP値から見た耐溶剤性
以下は、ポリアリレートの代表SP値を約21.5 MPa1/2として見た目安である。実際の耐薬品性はSP値差だけでなく、HSP、結晶性、Tg、拡散係数、温度、濃度、接触時間、応力、成形履歴に大きく依存する。
| 薬品名 | 代表SP値 | 単位 | PARとの差 | 評価 | コメント |
|---|---|---|---|---|---|
| 水 | 約47.9 | MPa1/2 | 約26.4 | ○〜△ | SP値差は大きいが、高温水・蒸気では加水分解に注意する。 |
| メタノール | 約29.6 | MPa1/2 | 約8.1 | ○〜△ | 短時間では比較的安定な場合があるが、応力部では確認が必要である。 |
| エタノール | 約26.0 | MPa1/2 | 約4.5 | △ | 条件により白化、クラック、膨潤の可能性がある。 |
| IPA | 約23.5 | MPa1/2 | 約2.0 | △ | SP値差は小さい。応力割れ評価が必要である。 |
| アセトン | 約19.9 | MPa1/2 | 約1.6 | × | 膨潤、軟化、クラックを起こしやすい。 |
| MEK | 約19.0 | MPa1/2 | 約2.5 | × | 塗料・接着剤溶剤として接触する場合は特に不適になりやすい。 |
| 酢酸エチル | 約18.6 | MPa1/2 | 約2.9 | △〜× | 膨潤や応力割れの可能性がある。 |
| トルエン | 約18.2 | MPa1/2 | 約3.3 | △〜× | 芳香族溶剤であり、非晶性PARでは注意が必要である。 |
| キシレン | 約18.0 | MPa1/2 | 約3.5 | △〜× | 長時間接触や応力下では膨潤、白化を確認する。 |
| ヘキサン | 約14.9 | MPa1/2 | 約6.6 | ○ | 短時間接触では比較的安定な場合が多い。 |
| シクロヘキサン | 約16.8 | MPa1/2 | 約4.7 | △〜○ | 脂環式炭化水素であり、温度と接触時間を確認する。 |
| ジクロロメタン | 約20.2 | MPa1/2 | 約1.3 | × | SP値が近く、強い溶剤性を示すため不適である。 |
| 鉱物油 | 約16〜18 | MPa1/2 | 約3.5〜5.5 | ○〜◎ | 一般に良好な場合が多いが、添加剤、酸化劣化油、高温条件では確認する。 |
| 評価 | 意味 |
|---|---|
| ◎ | 非常に良好。一般に溶解・膨潤しにくいが、長期使用では確認が必要である。 |
| ○ | 概ね良好。短時間接触や低温条件では使用できる場合が多い。 |
| △ | 注意が必要。温度、濃度、応力、接触時間により膨潤、白化、クラックが発生する場合がある。 |
| × | 不適。溶解、膨潤、応力割れ、加水分解、物性低下の可能性が高い。 |
製法
ビスフェノール類と芳香族ジカルボン酸誘導体を重縮合。

| 工程 | 内容 | 注意点 |
|---|---|---|
| 原料 | 芳香族ジオール成分としてビスフェノールAなど、芳香族ジカルボン酸成分としてテレフタル酸、イソフタル酸、またはそれらの酸クロリド、エステル誘導体を用いる。 | モノマー純度、異性体比率、末端基、触媒、残留塩素、残留溶媒が透明性、色相、分子量、熱安定性に影響する。 |
| 重合方法 | 界面重縮合、溶液重縮合、溶融重縮合などが用いられる。代表的にはビスフェノールA塩と芳香族ジカルボン酸クロリドの重縮合によりエステル結合を形成する。 | 高分子量化、色相、ゲル、未反応物、分子量分布、熱安定性を制御する必要がある。 |
| 代表的な反応式 | n HO-Ar-OH + n ClCO-Ar’-COCl → [-O-Ar-O-CO-Ar’-CO-]n + 2n HCl | 実際の工業プロセスでは酸受容体、溶媒、触媒、相間移動条件、洗浄工程などが関与する。 |
| ビスフェノールA型の例 | n HO-C6H4-C(CH3)2-C6H4-OH + n ClCO-C6H4-COCl → [-O-C6H4-C(CH3)2-C6H4-O-CO-C6H4-CO-]n + 2n HCl | テレフタル酸クロリド、イソフタル酸クロリドの混合により透明性、Tg、流動性、機械特性を調整する場合がある。 |
| ペレット化 | 重合後、洗浄、脱揮、乾燥、押出、ペレット化を行う。 | 水分、残留溶媒、低分子量成分、熱履歴は成形時のガス、黄変、物性低下に影響する。 |
| コンパウンド | 難燃剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、離型剤、滑剤、ガラス繊維、無機フィラー、着色剤などを配合する。 | 透明性、耐熱性、耐薬品性、難燃性、電気特性、食品接触適合は添加剤により変化する。 |
| 品質管理 | 分子量、粘度、色相、透明性、灰分、水分、熱安定性、機械物性、異物を管理する。 | 透明用途では微小異物、ゲル、黒点、ヘイズ、黄変が問題となる。 |
詳細な利用用途
| 用途分野 | 具体例 | 採用理由 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 自動車 | ランプ周辺部品、センサー部品、電装部品、精密機構部品、内装小物部品 | 耐熱性、寸法安定性、耐候性、透明性、弾性回復性を活かせる。 | 燃料、油、洗浄剤、熱サイクル、振動、応力割れを確認する。 |
| 電気・電子 | コネクタ、リレー部品、スイッチ部品、絶縁部品、LED周辺部品、耐熱透明カバー | 高Tg、寸法安定性、電気絶縁性、難燃グレードの選択肢がある。 | UL認証、CTI、難燃性、リフロー熱、アウトガス、イオン性不純物を確認する。 |
| 機械部品 | ギア、カム、ばね部品、レバー、軸受、精密治具 | 弾性回復性、耐クリープ性、寸法安定性、耐摩耗性を活かせる。 | 摺動摩耗、相手材、潤滑油、温度上昇、疲労、応力集中を評価する。 |
| 医療 | 医療機器部品、透明部品、診断機器部品 | 透明性、耐熱性、寸法安定性が必要な部品に検討できる。 | 生体適合性、滅菌方法、薬液耐性、抽出物、規格適合はグレード単位で確認する。 |
| 食品機械 | 透明カバー、機構部品、耐熱部品、搬送周辺部品 | 透明性、耐熱性、油への耐性を利用できる場合がある。 | 食品衛生法、FDA、洗浄剤、アルカリ洗浄、熱水、蒸気、潤滑油を確認する。 |
| 建築・設備 | 照明カバー、透明耐熱部材、設備機器部品 | 透明性、耐候性、耐熱性、寸法安定性が有効である。 | 屋外暴露、紫外線、薬品洗浄、熱変形、難燃規制を確認する。 |
| フィルム・シート | 耐熱透明フィルム、電気絶縁フィルム、保護フィルム、光学周辺フィルム | 透明性、高Tg、寸法安定性、耐熱性を活かせる。 | 熱収縮、ヘイズ、表面欠点、溶剤残留、コーティング密着性を確認する。 |
| 用途別選定 | ギア、軸受、チューブ、筐体、フィルム、コネクタ、透明カバー | 透明耐熱性と機械特性を両立したい場合に候補となる。 | 摺動用途は摺動グレード、電気用途は難燃・電気認証グレード、食品用途は食品接触対応グレードを選ぶ必要がある。 |
関連材料との比較
| 比較材料 | 特徴 | 対象材料との違い |
|---|---|---|
| ポリカーボネート(PC) | 透明性、耐衝撃性、成形性に優れる代表的な透明エンプラである。 | PARはPCより耐熱性、耐候性、弾性回復性で有利な場合がある。一方、PCは耐衝撃性、材料入手性、グレード展開、コストで有利な場合が多い。 |
| ポリエチレンテレフタレート(PET) | 結晶性芳香族ポリエステルであり、ボトル、フィルム、繊維、成形部品に広く使用される。 | PARは非晶性で透明耐熱性が高い。PETは結晶化により耐薬品性や剛性を高めやすく、コストと汎用性で有利である。 |
| ポリブチレンテレフタレート(PBT) | 成形性、寸法安定性、電気特性に優れる結晶性ポリエステル系エンプラである。 | PARは透明性と高Tgで有利である。PBTは結晶性、射出成形性、耐薬品性、電装部品用途の実績で有利な場合が多い。 |
| ポリブチレンナフタレート(PBN) | ナフタレン環を含む結晶性芳香族ポリエステルであり、耐熱性、耐摩耗性、バリア性が高い。 | PARは非晶性透明高耐熱樹脂として使われる。PBNは結晶性で、摺動性、バリア性、耐薬品性を重視する用途に向く。 |
| ポリエーテルイミド(PEI) | 非晶性のスーパーエンプラであり、高耐熱性、難燃性、電気特性に優れる。 | PEIはさらに高い耐熱性、難燃性、電気用途実績で有利な場合がある。PARは透明性、弾性回復性、耐候性、ポリエステル系設計を活かす用途で検討される。 |
| ポリフェニレンサルファイド(PPS) | 結晶性スーパーエンプラであり、耐熱性、耐薬品性、難燃性、寸法安定性に優れる。 | PPSは耐薬品性と高温部品で有利であるが、一般に透明性はない。PARは透明耐熱部品に使いやすい。 |
| アクリル樹脂(PMMA) | 透明性、耐候性、表面硬度に優れる汎用透明樹脂である。 | PARはPMMAより耐熱性と靭性で有利な場合がある。PMMAは透明性、表面硬度、価格、光学用途の実績で有利である。 |
| エンジニアリングプラスチック | PA、POM、PC、PBT、PET、PPS、PEIなどを含む高機能プラスチック群である。 | PARは透明性と高耐熱性を両立する特殊な芳香族ポリエステル系材料として位置付けられる。 |
代表的なメーカー
| メーカー | 代表製品・ブランド | 概要 |
|---|---|---|
| ユニチカ株式会社 | Uポリマー、U-Polymer、UNIFINER | ポリアリレート樹脂の代表的メーカーである。透明性、耐熱性、弾性回復性、耐候性を特徴とする成形材料やフィルム用途がある。 |
| その他コンパウンダー・加工メーカー | 代表例:PAR系コンパウンド、フィルム、シート、成形材料 | メーカー名、ブランド名、供給可否は時期や地域により変わるため、実際の採用時にはグレード、供給元、認証、長期供給性を確認する必要がある。 |
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