シクロオレフィン・コポリマー

材料名シクロオレフィン・コポリマー
環状オレフィン・コポリマー
エチレン・シクロオレフィン・コポリマー
略記号COC
英語名Cyclo Olefin Copolymer
分類熱可塑性樹脂、非晶性透明樹脂、環状オレフィン系樹脂
基本構造ノルボルネン類とエチレンなどの共重合構造
主な種類標準COC、高耐熱COC、医療用COC、光学COC、フィルム用COC
主な用途用途は後述の詳細な利用用途に整理する

シクロオレフィン・コポリマー(COC)は、熱可塑性樹脂、非晶性透明樹脂、環状オレフィン系樹脂に分類される材料である。 高透明、低吸水、低複屈折、高寸法安定性を持つ。医療容器、光学部品、フィルムに使用される。

特徴

  • 高透明(アクリル樹脂と同等の透明性)
  • 複屈折が低い
  • 高アッベ数
  • 低吸水性
  • 高い耐水蒸気性
  • 剛性が高い
  • 耐熱性が良い
  • 光学部品として、優れた特性を有している
  • 水溶性化学薬品、酸、アルカリ、極性有機物質に対して優れている
  • 易カット性能
  • 流動性が高い
  • 成形しやすい(高寸法安定性)
  • 医療容器、光学部品、フィルムに使用される
  • 材料特性はグレード、添加剤、架橋、充填材、分子量により変化する
  • 耐薬品性は温度、濃度、接触時間、応力状態で変化する
  • メーカー物性表と実使用試験による確認が重要である
長所
  • 用途に応じた物性設計が可能である
  • 材料固有の耐熱性、耐薬品性、機械特性、柔軟性、透明性などを活用できる
  • 成形品、フィルム、シート、複合材料、コーティングなどに展開できる
  • 改質、共重合、充填材配合により性能を調整できる
短所
  • 耐薬品性、耐熱性、耐候性はグレードにより大きく異なる
  • 成形条件や硬化条件の管理が必要である
  • 応力、温度、薬品濃度により劣化挙動が変わる
  • 採用時にはメーカー資料と実使用試験で確認する必要がある
成形加工

シクロオレフィン・コポリマーの加工性は、熱可塑性、熱硬化性、ゴム、複合材料の分類により異なる。 熱可塑性材料では溶融成形、熱硬化性材料では加熱硬化、ゴムでは混練・加硫、複合材料では含浸・積層・硬化が基本となる。

加工方法適性主な製品例
射出成形熱可塑性グレードの成形品、機構部品、筐体、精密部品
押出成形フィルム、シート、チューブ、板材、丸棒
圧縮成形△〜○ゴム、熱硬化性樹脂、複合材料、切削素材
注型・含浸△〜○熱硬化性樹脂、光学樹脂、FRP、コーティング
切削加工板材、丸棒、治具、精密部品
接着・塗装表面処理、プライマー、専用接着剤が必要な場合がある

構造式

エチレンシクロオレフィンコポリマー構造

構造の基本は、ノルボルネン類とエチレンなどの共重合構造である。 既存サイト内の構造部分と同じ考え方で、主鎖、側鎖、官能基、共重合成分、架橋構造、充填材の有無が、耐熱性、耐薬品性、機械特性、吸水性、透明性、電気特性に影響する。

種類

標準COC
名称標準COC
構成シクロオレフィン・コポリマーの用途別または改質グレードである
特徴シクロオレフィン・コポリマーの基本特性を用途に合わせて調整したタイプである
主な用途成形品、部品、フィルム、シート、複合材料、改質材など
特徴
  • 標準品に対して用途別に物性を調整した材料である
  • 耐熱性、耐薬品性、柔軟性、強度、成形性、外観性のいずれかを改善する
  • 採用時にはメーカーグレードごとの物性表を確認する必要がある
高耐熱COC
名称高耐熱COC
構成シクロオレフィン・コポリマーの用途別または改質グレードである
特徴シクロオレフィン・コポリマーの基本特性を用途に合わせて調整したタイプである
主な用途成形品、部品、フィルム、シート、複合材料、改質材など
特徴
  • 標準品に対して用途別に物性を調整した材料である
  • 耐熱性、耐薬品性、柔軟性、強度、成形性、外観性のいずれかを改善する
  • 採用時にはメーカーグレードごとの物性表を確認する必要がある
医療用COC
名称医療用COC
構成シクロオレフィン・コポリマーの用途別または改質グレードである
特徴シクロオレフィン・コポリマーの基本特性を用途に合わせて調整したタイプである
主な用途成形品、部品、フィルム、シート、複合材料、改質材など
特徴
  • 標準品に対して用途別に物性を調整した材料である
  • 耐熱性、耐薬品性、柔軟性、強度、成形性、外観性のいずれかを改善する
  • 採用時にはメーカーグレードごとの物性表を確認する必要がある
光学COC
名称光学COC
構成シクロオレフィン・コポリマーの用途別または改質グレードである
特徴シクロオレフィン・コポリマーの基本特性を用途に合わせて調整したタイプである
主な用途成形品、部品、フィルム、シート、複合材料、改質材など
特徴
  • 標準品に対して用途別に物性を調整した材料である
  • 耐熱性、耐薬品性、柔軟性、強度、成形性、外観性のいずれかを改善する
  • 採用時にはメーカーグレードごとの物性表を確認する必要がある
フィルム用COC
名称フィルム用COC
構成シクロオレフィン・コポリマーの用途別または改質グレードである
特徴シクロオレフィン・コポリマーの基本特性を用途に合わせて調整したタイプである
主な用途成形品、部品、フィルム、シート、複合材料、改質材など
特徴
  • 標準品に対して用途別に物性を調整した材料である
  • 耐熱性、耐薬品性、柔軟性、強度、成形性、外観性のいずれかを改善する
  • 採用時にはメーカーグレードごとの物性表を確認する必要がある

代表的な物性値又は機械的性質

項目単位代表値・範囲備考
比重なし1.01 ~ 1.08非晶性ポリオレフィン系で、PCやPMMAより軽量である。
光線透過率%90 ~ 92透明性が高く、光学部品・医療容器に使用される。
屈折率なし1.52 ~ 1.54光学用途に適する。複屈折が小さいグレードが多い。
ガラス転移温度70 ~ 180環状オレフィン含有量により耐熱性が変化する。
荷重たわみ温度70 ~ 170高耐熱グレードでは高温用途に対応可能である。
引張強さMPa50 ~ 80透明樹脂としては比較的高い強度を有する。
引張弾性率GPa2.1 ~ 3.2剛性はPCやPMMAに近い範囲である。
曲げ強さMPa80 ~ 120成形品の寸法安定性に優れる。
曲げ弾性率GPa2.1 ~ 3.2高剛性で、薄肉成形品にも適用しやすい。
アイゾット衝撃強さkJ/m²2 ~ 25グレード差が大きい。耐衝撃用途ではグレード選定が重要である。
吸水率%0.01 以下 ~ 0.02極めて低吸水で、寸法安定性・電気特性に優れる。
成形収縮率%0.5 ~ 0.7精密成形に適する。
誘電率なし2.3 ~ 2.4低誘電材料として電子・高周波用途に適する。
体積抵抗率Ω・cm1016 ~ 1017絶縁性が高い。

耐薬品性

シクロオレフィン・コポリマーの耐薬品性は、温度、濃度、接触時間、応力、分子量、架橋密度、添加剤、充填材により変化する。 下表は一般的な材料特性として、英語圏の材料データシートで示される傾向と日本企業の物性表で用いられる実用表現を合わせて整理した目安である。

薬品・溶剤耐性備考
○〜△吸水、加水分解、白化、物性変化の有無を確認する
弱酸○〜△多くの場合で短期使用は可能だが、樹脂構造に依存する
強酸△〜×分解、膨潤、架橋劣化、加水分解に注意する
弱アルカリ○〜△材料により安定性が異なる
強アルカリ△〜×エステル、アミド、カーボネート、イミド系では注意が必要である
アルコール○〜△応力下ではクラックや膨潤に注意する
アセトン△〜×非晶性樹脂、極性樹脂、ゴムでは膨潤・溶解に注意する
MEK△〜×強溶媒となる材料が多い
トルエン△〜×芳香族溶剤に弱い材料では膨潤・溶解する
塩素系溶剤△〜×多くの樹脂で膨潤、溶解、クラックに注意する
油・燃料○〜△ゴム系、ポリオレフィン系、ポリアミド系で傾向が異なる

更に詳しくはプラスチックの耐薬品性一覧表を参照。

SP値(溶解度パラメータ)

シクロオレフィン・コポリマーのSP値は、約16〜18 MPa1/2が目安である。 ただし、ゴム、熱硬化性樹脂、結晶性樹脂、複合材料では、SP値が近くても直ちに溶解するとは限らない。 一次判断としてSP値を使い、実際には浸漬試験、重量変化、寸法変化、外観、機械強度変化で評価する必要がある。

項目SP値(δ)
MPa1/2
備考
COC(標準グレード)16.8 ~ 17.5非極性寄りの透明樹脂であり、低吸水・高透明性を有する。アルコールや水には比較的安定である。
COC(高耐熱グレード)17.0 ~ 17.8ノルボルネン含有率増加により耐熱性が向上する。芳香族溶剤には注意が必要である。
COP(シクロオレフィンポリマー)16.7 ~ 17.3COCに近いSP値を持つ。低極性であり、低誘電・低吸湿性に優れる。
COC GF強化グレード17.0 ~ 18.0ガラス繊維充填により寸法安定性が向上する。樹脂相自体の耐溶剤性は大きく変わらない。
COC 光学グレード16.8 ~ 17.2低複屈折・高透明用途向けである。光学用途では有機溶剤によるクラックに注意が必要である。

COC/COPは低吸水・高透明・高寸法安定性を特徴とする透明樹脂であり、アルコールや水系薬品には比較的安定である一方、芳香族炭化水素や塩素系溶剤、強溶解性溶剤では環境応力割れや白化が発生しやすい。

溶解性の目安
Δδ挙動
0〜2溶解しやすい
2〜5膨潤・軟化
5以上溶解しにくい
SP値から見た耐溶剤性
溶剤名SP値(δ)
MPa1/2
耐溶剤性備考
47.9COCは低吸水性であり、水による寸法変化は極めて小さい。
メタノール29.7短時間接触では比較的安定である。
エタノール26.0医療・分析用途でも使用例が多い。
イソプロピルアルコール(IPA)23.5洗浄用途で使用されるが、応力集中部では白化に注意が必要である。
アセトン20.0SP値が近く、膨潤・クラックが発生しやすい。
MEK(メチルエチルケトン)19.0長時間接触で白化・応力割れの可能性がある。
酢酸エチル18.2COCのSP値に近く、膨潤しやすい。
トルエン18.2×非極性芳香族溶剤であり、COC/COPへ大きな影響を与える。
キシレン18.0×膨潤・クラック発生リスクが高い。
クロロホルム19.0×塩素系溶剤であり、短時間でも損傷しやすい。
THF(テトラヒドロフラン)18.5×強い溶解性を持ち、COCを著しく侵す。
DMF(ジメチルホルムアミド)24.8×高極性溶剤であり、長時間接触は不適である。
ヘキサン14.9脂肪族炭化水素に対しては比較的安定である。
鉱物油15 ~ 16一般的な油脂には比較的良好な耐性を示す。

※耐溶剤性評価はCOC/COPのSP値中央値(約17.2 MPa1/2)を基準として、SP値差および一般的な化学的相互作用を考慮した目安である。

◎:非常に良好 ○:概ね良好 △:注意が必要 ×:不適

特にトルエン、キシレン、THF、クロロホルム、アセトンなどのSP値が近い有機溶剤では、環境応力割れ(ESC)、白化、膨潤、クラックが発生しやすいため注意が必要である。特に光学用途では微細クラックでも性能低下につながるため、溶剤洗浄は慎重に行う必要がある。

実務上の注意
  • SP値は溶解性予測の入口であり、耐久性評価そのものではない
  • 架橋樹脂やゴムでは溶解ではなく膨潤として現れる場合が多い
  • 結晶性樹脂では温度上昇により急に膨潤・溶解しやすくなる場合がある
  • 応力下ではSP値差が大きい溶剤でもクラックが起こる場合がある

製法

エチレンと環状オレフィンをメタロセン触媒などで共重合する。

基本反応:エチレン + 環状オレフィン + → COC共重合体。

実用材料では、重合後に安定剤、可塑剤、架橋剤、充填材、ガラス繊維、炭素繊維、難燃剤、顔料などを配合して、用途別の物性に調整する。

エチレンシクロオレフィンコポリマー
工程内容備考
基本反応環状オレフィンとエチレンをメタロセン触媒などで共重合する。基本反応:環状オレフィン + エチレン → COC共重合体代表的な合成・製造経路である
改質・共重合柔軟性、耐熱性、耐薬品性、透明性を調整する用途別グレード
コンパウンド充填材、安定剤、難燃剤、着色剤を配合する成形材料
成形・硬化熱可塑成形、加硫、架橋、注型、含浸、硬化を行う最終製品

詳細な利用用途

電気・電子用途
  • コネクタ
  • 絶縁部品
  • スイッチ部品
  • 筐体
  • 保護材
自動車・輸送用途
  • シール材
  • ホース
  • 内外装部品
  • 機構部品
  • 耐候部品
包装・フィルム用途
  • フィルム
  • シート
  • 容器
  • ラミネート材
  • シール層
工業・機械用途
  • ギア
  • 軸受
  • 治具
  • ライニング
  • 複合材料部品
光学・医療・特殊用途
  • レンズ
  • 医療部材
  • 透明部品
  • コーティング
  • 特殊機能材料

関連材料との比較

比較材料違い選定ポイント
ナイロンポリアミド系材料は耐摩耗性と靭性に優れる耐摩耗・機械部品では比較対象にする
ポリオキシメチレン低摩擦、寸法安定性、機構部品に強いギアや摺動部品で比較する
シクロオレフィン・コポリマー透明性、低吸水、低複屈折に優れる医療・光学用途で比較する
ポリビニリデンフルオライドフッ素樹脂で耐薬品性と成形性のバランスが良い薬液配管や電池用途で比較する
ポリ乳酸バイオマス由来で透明性と剛性を持つ環境対応用途で比較する

代表的なメーカー

メーカー代表的な製品・商品名備考
TOPAS Advanced Polymers代表グレード・用途別材料供給グレードはメーカー資料で確認する
三井化学代表グレード・用途別材料供給グレードはメーカー資料で確認する
Zeon代表グレード・用途別材料供給グレードはメーカー資料で確認する
JSR代表グレード・用途別材料供給グレードはメーカー資料で確認する
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