ポリブテン-1

材料名ポリブテン-1、ポリブチレン
略記号PB-1
英語名Polybutene-1
分類ポリオレフィン系樹脂、結晶性熱可塑性樹脂
基本構造−CH2−CH(C2H5)−
主な種類PB-1ホモポリマー、PB-1コポリマー、配管用PB、フィルム用PB
主な用途用途は後述の詳細な利用用途に整理する

ポリブテン-1(PB-1)は、ポリオレフィン系樹脂、結晶性熱可塑性樹脂に分類されるアイソタクチック・ポリマー材料である。 ポリブチレンと同義である。柔軟性、耐クリープ性、耐熱水性、ヒートシール性に優れる。

包装材、フィルムやシートのシーラント材、ホットメルト接着剤などの改質用途の他、耐環境応力亀裂特性が優れているため、給湯給水用パイプや床暖房用パイプ、給湯貯蔵タンクなど高温下の耐クリープ性が要求される用途で使用されている。

特徴

  • ポリブチレンと同義である
  • 柔軟性、耐クリープ性、耐熱水性、ヒートシール性に優れる
  • 結晶性の樹脂である。
  • 優れた高温耐クリープ性
  • 湿潤下の耐摩耗性
  • 優れた 耐環境応力亀裂(Environmental stress cracking resistance=ESCR) 特性
  • 優れた圧縮永久歪
  • 遅結晶化速度
  • 高せん断下の粘度低下
  • 強度が高い
  • 耐摩擦性にすぐれている。
  • 耐ストレスクラッキング性にすぐれている。
  • 耐酸性、耐アルカリ性が良い
  • 加水分解されない。
  • PE との非相溶性
  • PP との相溶性
  • 特性は、ポリプロピレン(PP)に近い。
  • 荷重たわみ温度は、ポリプロピレン(PP)より高い。
  • ポリエチレン(PE)とブレンドして使用される。
  • 材料特性はグレード、添加剤、架橋、充填材、分子量により変化する
  • 耐薬品性は温度、濃度、接触時間、応力状態で変化する
  • メーカー物性表と実使用試験による確認が重要である
長所
  • 用途に応じた物性設計が可能である
  • 材料固有の耐熱性、耐薬品性、機械特性、柔軟性、透明性などを活用できる
  • 成形品、フィルム、シート、複合材料、コーティングなどに展開できる
  • 改質、共重合、充填材配合により性能を調整できる
短所
  • 耐薬品性、耐熱性、耐候性はグレードにより大きく異なる
  • 成形条件や硬化条件の管理が必要である
  • 応力、温度、薬品濃度により劣化挙動が変わる
  • 採用時にはメーカー資料と実使用試験で確認する必要がある
成形加工

ポリブテン-1の加工性は、熱可塑性、熱硬化性、ゴム、複合材料の分類により異なる。 熱可塑性材料では溶融成形、熱硬化性材料では加熱硬化、ゴムでは混練・加硫、複合材料では含浸・積層・硬化が基本となる。

加工方法適性主な製品例
射出成形熱可塑性グレードの成形品、機構部品、筐体、精密部品
押出成形フィルム、シート、チューブ、板材、丸棒
圧縮成形△〜○ゴム、熱硬化性樹脂、複合材料、切削素材
注型・含浸△〜○熱硬化性樹脂、光学樹脂、FRP、コーティング
切削加工板材、丸棒、治具、精密部品
接着・塗装表面処理、プライマー、専用接着剤が必要な場合がある

構造式

ポリブチレン

構造の基本は、−CH2−CH(C2H5)−である。 既存サイト内の構造部分と同じ考え方で、主鎖、側鎖、官能基、共重合成分、架橋構造、充填材の有無が、耐熱性、耐薬品性、機械特性、吸水性、透明性、電気特性に影響する。

種類

PB-1ホモポリマー
名称PB-1ホモポリマー
構成ポリブテン-1の用途別または改質グレードである
特徴ポリブテン-1の基本特性を用途に合わせて調整したタイプである
主な用途成形品、部品、フィルム、シート、複合材料、改質材など
特徴
  • 標準品に対して用途別に物性を調整した材料である
  • 耐熱性、耐薬品性、柔軟性、強度、成形性、外観性のいずれかを改善する
  • 採用時にはメーカーグレードごとの物性表を確認する必要がある
PB-1コポリマー
名称PB-1コポリマー
構成ポリブテン-1の用途別または改質グレードである
特徴ポリブテン-1の基本特性を用途に合わせて調整したタイプである
主な用途成形品、部品、フィルム、シート、複合材料、改質材など
特徴
  • 標準品に対して用途別に物性を調整した材料である
  • 耐熱性、耐薬品性、柔軟性、強度、成形性、外観性のいずれかを改善する
  • 採用時にはメーカーグレードごとの物性表を確認する必要がある
配管用PB
名称配管用PB
構成ポリブテン-1の用途別または改質グレードである
特徴ポリブテン-1の基本特性を用途に合わせて調整したタイプである
主な用途成形品、部品、フィルム、シート、複合材料、改質材など
特徴
  • 標準品に対して用途別に物性を調整した材料である
  • 耐熱性、耐薬品性、柔軟性、強度、成形性、外観性のいずれかを改善する
  • 採用時にはメーカーグレードごとの物性表を確認する必要がある
フィルム用PB
名称フィルム用PB
構成ポリブテン-1の用途別または改質グレードである
特徴ポリブテン-1の基本特性を用途に合わせて調整したタイプである
主な用途成形品、部品、フィルム、シート、複合材料、改質材など
特徴
  • 標準品に対して用途別に物性を調整した材料である
  • 耐熱性、耐薬品性、柔軟性、強度、成形性、外観性のいずれかを改善する
  • 採用時にはメーカーグレードごとの物性表を確認する必要がある

代表的な物性値又は機械的性質

項目単位代表値・範囲備考
密度g/cm³0.91~0.95ポリオレフィン系樹脂として軽量である。
引張強さMPa19~36グレード、結晶化状態、成形条件により変動する。
引張伸び%300程度柔軟性が高く、破断伸びが大きい。
曲げ弾性率MPa290~450PEとPPの中間的な柔軟性を示す。
ノッチ付き衝撃強さkJ/m²破壊せず耐衝撃性に優れる。
融点117~135結晶形により融点が変化する。
連続使用温度~95温水配管、フィルム、ホットメルト用途に使用される。
ガラス転移温度-25~-17低温でも比較的柔軟性を保持する。
線膨張係数×10-6/K約130金属に比べ熱膨張は大きい。
吸水率%<0.03非極性ポリオレフィンであり吸水性は低い。
熱伝導率W/(m・K)約0.22樹脂材料として一般的な低熱伝導性を示す。
耐薬品性良好酸、アルカリ、油脂、脂肪族炭化水素に比較的強いが、芳香族炭化水素・ハロゲン化炭化水素には注意が必要である。

耐薬品性

ポリブテン-1の耐薬品性は、温度、濃度、接触時間、応力、分子量、架橋密度、添加剤、充填材により変化する。 下表は一般的な材料特性として、英語圏の材料データシートで示される傾向と日本企業の物性表で用いられる実用表現を合わせて整理した目安である。

薬品・溶剤耐性備考
○〜△吸水、加水分解、白化、物性変化の有無を確認する
弱酸○〜△多くの場合で短期使用は可能だが、樹脂構造に依存する
強酸△〜×分解、膨潤、架橋劣化、加水分解に注意する
弱アルカリ○〜△材料により安定性が異なる
強アルカリ△〜×エステル、アミド、カーボネート、イミド系では注意が必要である
アルコール○〜△応力下ではクラックや膨潤に注意する
アセトン△〜×非晶性樹脂、極性樹脂、ゴムでは膨潤・溶解に注意する
MEK△〜×強溶媒となる材料が多い
トルエン△〜×芳香族溶剤に弱い材料では膨潤・溶解する
塩素系溶剤△〜×多くの樹脂で膨潤、溶解、クラックに注意する
油・燃料○〜△ゴム系、ポリオレフィン系、ポリアミド系で傾向が異なる

更に詳しくはプラスチックの耐薬品性一覧表を参照。

SP値(溶解度パラメータ)

ポリブテン-1のSP値は、約16〜17 MPa1/2が目安である。 ただし、ゴム、熱硬化性樹脂、結晶性樹脂、複合材料では、SP値が近くても直ちに溶解するとは限らない。 一次判断としてSP値を使い、実際には浸漬試験、重量変化、寸法変化、外観、機械強度変化で評価する必要がある。

項目SP値(δ)
MPa1/2
備考
標準グレード16.0~16.6非極性ポリオレフィン系であり、耐水性・耐薬品性に優れる。脂肪族炭化水素には膨潤しやすい。
高結晶グレード16.2~16.8結晶化度向上により耐溶剤性が若干向上する傾向がある。
GF強化(GF20~30%)16.5~17.2ガラス繊維強化により寸法安定性と耐応力割れ性が向上する。
無機フィラー添加16.4~17.0炭酸カルシウムやタルク添加により溶剤浸透性が低下する場合がある。
エラストマー改質品15.8~16.5柔軟性向上タイプであり、炭化水素系溶剤に対する膨潤がやや増加する。
溶解性の目安
Δδ挙動
0〜2溶解しやすい
2〜5膨潤・軟化
5以上溶解しにくい
SP値から見た耐溶剤性
溶剤名SP値(δ)
MPa1/2
耐溶剤性備考
47.9非極性樹脂であり吸水は極めて少ない。
メタノール29.7短時間接触ではほぼ影響を受けない。
エタノール26.0アルコール類には比較的安定である。
IPA(イソプロピルアルコール)23.5常温では良好な耐性を示す。
アセトン20.3長時間接触では表面軟化の可能性がある。
MEK(メチルエチルケトン)19.0膨潤や応力割れに注意が必要である。
酢酸エチル18.2PB-1のSP値に近く膨潤しやすい。
トルエン18.2×著しい膨潤・軟化を生じやすい。
キシレン18.0×長時間接触で溶解傾向を示す。
n-ヘキサン14.9脂肪族炭化水素で膨潤しやすい。
シクロヘキサン16.8×SP値が非常に近く強い膨潤を起こしやすい。
灯油15~16長時間浸漬では膨潤や軟化の可能性がある。
水酸化ナトリウム水溶液アルカリには比較的安定である。
塩酸希酸環境では良好な耐性を示す。

◎:非常に良好  ○:概ね良好  △:注意が必要  ×:不適

※耐溶剤性評価は、ポリブテン-1のSP値中央値(約16.4 MPa1/2)を基準としている。溶剤とのSP値差が小さいほど膨潤・軟化・溶解リスクが高くなる傾向がある。

※特にトルエン、キシレン、シクロヘキサン、酢酸エチルなどSP値が近い溶剤は、応力割れや大きな膨潤を生じやすいため注意が必要である。

実務上の注意
  • SP値は溶解性予測の入口であり、耐久性評価そのものではない
  • 架橋樹脂やゴムでは溶解ではなく膨潤として現れる場合が多い
  • 結晶性樹脂では温度上昇により急に膨潤・溶解しやすくなる場合がある
  • 応力下ではSP値差が大きい溶剤でもクラックが起こる場合がある

製法

1-ブテンをチーグラー・ナッタ触媒で配位重合する。

ポリブチレン

実用材料では、重合後に安定剤、可塑剤、架橋剤、充填材、ガラス繊維、炭素繊維、難燃剤、顔料などを配合して、用途別の物性に調整する。

成型加工時に溶融状態から効果する際に、FormⅡと呼ばれる不安定な結晶状態を形成し、時間の経過によって安定したFormⅠの結晶状態に変態する。そのため、成型加工後は結晶が安定するまでに2~3日の時間を要する。

工程内容備考
基本反応1-ブテンを配位重合する。
基本反応:n CH2=CHCH2CH3 → PB-1
代表的な合成・製造経路である
改質・共重合柔軟性、耐熱性、耐薬品性、透明性を調整する用途別グレード
コンパウンド充填材、安定剤、難燃剤、着色剤を配合する成形材料
成形・硬化熱可塑成形、加硫、架橋、注型、含浸、硬化を行う最終製品

詳細な利用用途

電気・電子用途
  • コネクタ
  • 絶縁部品
  • スイッチ部品
  • 筐体
  • 保護材
自動車・輸送用途
  • シール材
  • ホース
  • 内外装部品
  • 機構部品
  • 耐候部品
包装・フィルム用途
  • フィルム
  • シート
  • 容器
  • ラミネート材
  • シール層
工業・機械用途
  • ギア
  • 軸受
  • 治具
  • ライニング
  • 複合材料部品
光学・医療・特殊用途
  • レンズ
  • 医療部材
  • 透明部品
  • コーティング
  • 特殊機能材料

関連材料との比較

比較材料違い選定ポイント
ポリアミドポリアミド系材料は耐摩耗性と靭性に優れる耐摩耗・機械部品では比較対象にする
ポリオキシメチレン低摩擦、寸法安定性、機構部品に強いギアや摺動部品で比較する
シクロオレフィン・コポリマー透明性、低吸水、低複屈折に優れる医療・光学用途で比較する
ポリビニリデンフルオライドフッ素樹脂で耐薬品性と成形性のバランスが良い薬液配管や電池用途で比較する
ポリ乳酸バイオマス由来で透明性と剛性を持つ環境対応用途で比較する

代表的なメーカー

メーカー代表的な製品・商品名備考
LyondellBasell代表グレード・用途別材料供給グレードはメーカー資料で確認する
三井化学代表グレード・用途別材料供給グレードはメーカー資料で確認する
ポリオレフィンメーカー代表グレード・用途別材料供給グレードはメーカー資料で確認する

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