ポリエーテルイミド

概要

材料名ポリエーテルイミド
略記号PEI
英語名Polyetherimide
分類非晶性スーパーエンプラ、熱可塑性樹脂
構造・主成分イミド結合とエーテル結合を持つ芳香族高分子
主な用途医療滅菌部品、電気電子部品、航空機内装、コネクタ

ポリエーテルイミドは、イミド結合とエーテル結合を持つ芳香族高分子である。高強度、高耐熱、難燃、低発煙、耐スチーム性、透明琥珀色、射出成形可能。

材料選定では、強アルカリや一部溶剤に注意、価格が高い。用途、温度、荷重、薬品、成形方法に応じてグレードを選定する必要がある。

特徴

  • 機械的性質が高く、常温で引張強さが100MPa以上、曲げ弾性率が3.4GPaなどエンジニアリング・プラスチックの中で最も高い値を示す。
  • 耐熱性にすぐれ、高温下でも機械的強度が高く、荷重たわみ温度は190℃で、ガラス繊維を強化するとさらに高くすることが出来る。
  • 難燃剤無添加で難燃性があり、酸素指数は47以上である。
  • 燃焼時の発煙はきわめて少なく、腐食性・有毒性ガスを発生しない。
  • 耐薬品性は、非結晶樹脂の中では最もすぐれている。
  • 熱水にも強く、132℃の高温スチーム殺菌(5分)を4,000回繰り返しても物性の変化はない。
  • 広い温度範囲、周波数領域ですぐれた電気的性質を示す。
  • 紫外線、放射線に耐え、環境特性にすぐれる。
  • 琥珀色、透明な樹脂である。
  • 成形加工性が良好である。流動特性が良く、幅広い条件範囲で成形が可能である。
  • 強アルカリや一部溶剤に注意、価格が高い
  • グレード、充填材、共重合成分、硬化条件により物性が大きく変化する。
  • 実使用では温度、湿度、応力、薬品接触時間を含めて評価する必要がある。
  • 成形前に予備乾燥が必要である。
長所
  • 高強度、高耐熱、難燃、低発煙、耐スチーム性、透明琥珀色、射出成形可能
  • 用途に応じたグレード展開がある。
  • 金属、ガラス、汎用樹脂の代替材料として使える場合がある。
短所
  • 強アルカリや一部溶剤に注意、価格が高い
  • 高温、応力、薬品、吸水、添加剤の影響で性能が変化する。
  • 量産前にはメーカー物性表と実使用条件での確認が必要である。
成形加工
  • 成形加工性が良好である。
  • 流動特性が良く、幅広い条件範囲で成形が可能である。
  • 成形前に予備乾燥が必要である。
  • 加工性は種類とグレードにより異なる。
  • 熱可塑性樹脂では射出成形・押出成形が中心となり、熱硬化性樹脂では注型、圧縮、積層、硬化成形が中心となる。

化学

加工方法適性主な製品例
射出成形グレードにより成形部品、電気電子部品、機械部品に使用する
押出成形シート、フィルム、チューブ、板材に使用する
圧縮・注型・硬化成形△〜◎熱硬化性樹脂や高粘度材料では主要加工法となる
切削加工丸棒、板材、試作部品、治具に使用する

構造式

ポリエーテルイミド

芳香族イミド結合とエーテル結合を含む非晶性構造。構造中の官能基、結晶性、架橋密度、芳香族骨格、充填材の有無により、耐熱性、耐薬品性、機械的性質、成形性が変化する。

種類

標準グレード
名称標準ポリエーテルイミド
構成イミド結合とエーテル結合を持つ芳香族高分子
特徴高強度、高耐熱、難燃、低発煙、耐スチーム性、透明琥珀色、射出成形可能
主な用途医療滅菌部品、電気電子部品、航空機内装、コネクタ
特徴
  • 標準的な物性バランスを持つ。
  • 汎用的な成形・加工用途に使いやすい。
強化・改質グレード
名称強化・改質ポリエーテルイミド
構成ガラス繊維、炭素繊維、難燃剤、耐候剤、潤滑剤、共重合成分などで改質したグレード
特徴剛性、耐熱性、耐候性、難燃性、摺動性、寸法安定性などを改善する
主な用途電気電子部品、自動車部品、機械部品、構造部品、機能部材
特徴
  • 標準グレードより特定性能を高めた材料である。
  • 充填材により比重、成形収縮、異方性、耐薬品性が変化する。

代表的な物性値又は機械的性質

性質単位標準30%ガラス
繊維強化
比重1.271.51
吸水率%0.250.18
引張強さMPa107163
引張伸び%603
曲げ強さMPa148235
曲げ弾性率GPa3.48.5
アイゾット衝撃強さ
(ノッチ付き)
J/m50100
荷重たわみ温度
(1.82MPa)
190210
線膨張率10-5/℃5.62.0
難燃性(UL94)V-0V-0
体積固有抵抗Ω・cm1017106

耐薬品性

非晶性樹脂としては良好。強アルカリ、塩素系溶剤、一部極性溶媒に注意。

薬品・溶剤耐性備考
多くは常温で比較的安定であるが、吸水・加水分解型材料では注意する
△〜○強酸では劣化する材料がある
アルカリ△〜○ポリエステル、PC、熱硬化性樹脂では高温・高濃度に注意する
アルコール○〜△応力クラックや膨潤は材料により異なる
ケトン△〜×非晶性樹脂や塗料系樹脂では膨潤・溶解に注意する
芳香族溶剤△〜×膨潤、白化、クラックの可能性がある
油・燃料○〜△ポリアミド、POM、PBT、PPS、PEEKなどは比較的良好な場合が多い

更に詳しくはプラスチックの耐薬品性一覧表を参照。

SP値(溶解度パラメータ)

ポリエーテルイミドのSP値はグレード、結晶化度、架橋密度、充填材により変動する。溶解性はSP値だけでなく、温度、応力、薬品濃度、接触時間で判断する必要がある。

材料SP値(δ)特徴
ポリエーテルイミド(PEI)約22〜24 MPa1/2高耐熱性、難燃性、電気特性を持つ非晶性スーパーエンプラである
GF強化PEI約22〜24 MPa1/2ガラス繊維強化により剛性、寸法安定性、耐クリープ性が向上する
CF強化PEI約22〜24 MPa1/2炭素繊維強化により高剛性、導電性、低線膨張性を実現する
溶解性の目安
Δδ挙動
0〜2溶解しやすい
2〜5膨潤・軟化
5以上溶解しにくい
SP値から見た耐溶剤性
溶媒・薬品SP値(δ)
MPa1/2
耐性備考
47.9吸水はあるが耐加水分解性は比較的良好である
熱水47.9○〜◎長期高温水では物性低下に注意が必要である
エタノール26.0アルコール系には比較的強い
IPA23.5一般的な洗浄用途で使用可能である
メタノール29.7短期接触では安定である
アセトン19.9応力下ではクラックが発生する場合がある
MEK19.0△〜×膨潤やESCに注意が必要である
酢酸エチル18.6長期接触では影響を受ける場合がある
THF18.5×強い膨潤やクラックを生じやすい
クロロホルム19.0×塩素系溶剤に弱い
ジクロロメタン20.2×急速な白化やクラックを生じる可能性がある
トルエン18.2短期では比較的安定である
キシレン18.0高温長期では確認が必要である
ヘキサン14.9脂肪族炭化水素には安定である
ガソリン15〜18程度耐燃料性は比較的良好である
鉱物油15〜17程度耐油性に優れる
フェノール24〜25×高極性芳香族化合物に弱い
NMP23.1×PEIを侵す可能性が高い
DMF24.8×高極性溶剤であり膨潤しやすい
希酸一般的な酸には比較的強い
濃硫酸高極性×強酸では分解する可能性がある
弱アルカリ○〜◎一般的には安定である
強アルカリ高温長期では加水分解に注意する
次亜塩素酸ナトリウム酸化劣化の可能性がある
過酸化水素高濃度酸化剤では注意が必要である

◎:非常に良好 ○:概ね良好 △:注意が必要 ×:不適

実務上の注意
  • SP値は溶解・膨潤予測の一次判断であり、耐久性そのものではない。
  • 成形残留応力がある場合は、短時間の薬品接触でもクラックが発生する場合がある。
  • 最終判断は実使用条件での浸漬試験、応力負荷試験、温度サイクル試験で行う。

製法

芳香族ビスエーテル無水物と芳香族ジアミンの重縮合。

ポリエーテルイミド製法

詳細な利用用途

代表用途
  • 医療滅菌部品
  • 電気電子部品
  • 航空機内装
  • コネクタ
工業用途
  • 電気電子部品
  • 自動車部品
  • 機械部品
  • 耐熱・耐薬品部材
  • フィルム、シート、塗料、接着、複合材用途

関連材料との比較

比較材料違い選定ポイント
PVCポリエーテルイミドはPVCとは耐熱性、成形性、耐薬品性、価格帯が異なる難燃・低コストならPVC、高機能用途なら対象材料を検討する
PCPCは透明性と耐衝撃性に優れる透明防護用途ではPC、高耐薬品・高耐熱用途では他材料を検討する
PBTPBTは成形性と電気特性に優れる電装部品ではPBT、より高耐熱用途ではスーパーエンプラを選ぶ
PEEKPEEKは高耐熱・高耐薬品の代表材料である最高性能が必要ならPEEK、コスト重視なら汎用エンプラを検討する

代表的なメーカー

メーカー代表的な製品・商品名備考
SABIC ULTEM代表グレード又は関連製品詳細はメーカー技術資料で確認する
RTP代表グレード又は関連製品詳細はメーカー技術資料で確認する
Ensinger TECAPEI代表グレード又は関連製品詳細はメーカー技術資料で確認する
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