概要
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 材料名 | 耐衝撃性ポリスチレン |
| 略記号 | HIPS、PS-HI |
| IUPAC | HIPS全体には単一の厳密なIUPAC名はない。主な樹脂相は poly(1-phenylethene)、ゴム相は poly(buta-1,3-diene) である。 |
| 英語名 | High Impact Polystyrene、Impact-modified Polystyrene、Rubber-modified Polystyrene |
| 日本語名 | 耐衝撃性ポリスチレン、ハイインパクトポリスチレン、耐衝撃ポリスチレン、ゴム変性ポリスチレン、耐衝撃性PS |
| 分類 | 熱可塑性樹脂、非晶性樹脂、スチレン系樹脂、ゴム強化多相系樹脂 |
| プラスチック分類 | 汎用プラスチック |
| 化学式又は代表構造 | ポリスチレン相:[-CH2-CH(C6H5)-]n、ポリブタジエン相:[-CH2-CH=CH-CH2-]m |
| CAS No. | HIPSは多成分材料であり、一般に単一CAS番号で一律には表せない。主要成分の例としてポリスチレン 9003-53-6、ポリブタジエン 9003-17-2がある。個別SDSを確認する。 |
| 構造・主成分 | ポリスチレン連続相中に、ポリブタジエンを主体とするゴム粒子と、ポリスチレンがグラフトした界面層を分散させた海島型多相構造である。ゴム含有量は一般に数質量%から十数質量%程度であるが、グレードにより異なる。 |
| 主な用途 | 押出シート、真空成形容器、食品トレー、冷蔵庫内装材、家電筐体、玩具、文具、日用品、工業包装、3Dプリント用サポート材 |
| 代表グレード | 標準、高流動、高衝撃、高剛性、高光沢、耐熱、耐油・耐環境応力割れ、押出シート、難燃、耐候、食品接触用途向け、再生材含有 |
耐衝撃性ポリスチレンは、一般用ポリスチレン(GPPS)をポリブタジエン系ゴムで改質し、脆性的な破壊を抑えて実用衝撃強度を高めた材料である。一般に、ポリスチレンを連続相、サブミクロンから数µm程度のゴム粒子を分散相とする多相構造を形成し、ゴム粒子周辺でのクレーズ発生、せん断降伏及び亀裂進展の偏向によって衝撃エネルギーを消費する。
一般用ポリスチレンと比較すると透明性、表面硬度及び剛性の一部を犠牲にする一方、耐衝撃性、真空成形時の深絞り性及び取扱い時の割れにくさが改善される。ABS樹脂より一般に低価格で成形しやすいが、耐熱性、耐候性、耐溶剤性、塗装後の耐久性及び機械強度はABSに及ばない場合が多い。
材料選定では、HIPSという材料名だけで性能を固定せず、ゴム含有量、ゴム粒子径、グラフト率、分子量、流動性、耐油改質、難燃剤、顔料、再生材比率及び成形履歴を確認する必要がある。実使用では、温度、濃度、荷重、残留応力、湿度、接触時間、製品肉厚及び法規制適合を含む実部品評価が必要である。
特徴
長所
- 汎用樹脂として比較的低価格であり、量産成形及び材料調達がしやすい。
- GPPSより耐衝撃性が高く、落下、組立及び輸送時の割れを抑えやすい。
- 射出成形、押出シート、真空成形、圧空成形及び発泡成形への適性が高い。
- 低吸水であり、通常の保管条件では厳密な予備乾燥を必要としない場合が多い。
- 着色、印刷、塗装、接着、切削及び熱溶着などの二次加工を行いやすい。
- グレード設計により、衝撃強度、剛性、流動性、光沢、耐熱性及び耐油性を調整できる。
短所
- 一般に不透明又は半透明であり、GPPSのような高い透明性は得にくい。
- 耐熱性は高くなく、荷重下の連続高温用途ではクリープ及び変形が問題となる。
- 芳香族炭化水素、ケトン、エステル、塩素系溶剤及び一部の精油により膨潤、軟化、溶解又は環境応力割れを生じやすい。
- 無安定グレードの耐候性は低く、紫外線により黄変、退色、表面チョーキング及び脆化を生じやすい。
- 燃焼しやすく、標準グレードはUL 94 HB相当の例が多い。難燃性は認証グレード及び厚さごとに確認する必要がある。
- ゴム相の増加は衝撃性を高める一方、剛性、光沢、表面硬度及び耐熱性を低下させる場合がある。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 外観 | 自然色は乳白色から不透明である。高光沢、マット、着色、共押出加飾などが可能である。ゴム粒子による光散乱のため、通常のHIPSは透明ではない。 |
| 耐熱性 | ガラス転移温度は主にポリスチレン相に支配され、約90~105℃が目安である。HDT 1.80MPaは一般に約65~80℃であり、長期使用温度はさらに低く設定する。 |
| 耐薬品性 | 水、希酸、希アルカリ及び一部のアルコールには比較的安定である。芳香族溶剤、ケトン、エステル、塩素系溶剤、ガソリン及び精油には弱い。応力下では低濃度洗剤や油脂でも割れが生じる場合がある。 |
| 加工性 | 溶融粘度が比較的低く、射出成形、押出及び熱成形が容易である。過熱又は長時間滞留ではスチレン臭、黄変、黒点及びガス焼けが生じる。 |
| 寸法安定性 | 吸水による寸法変化は小さいが、非晶性樹脂であるため残留応力、肉厚差、冷却差及びクリープの影響を受ける。 |
| 分類上の注意 | HIPSは単純なランダム共重合体ではなく、ポリスチレン相、ゴム相、グラフト界面を含む多相材料である。規格やデータベースではPS-HI、HI-PS又はrubber-modified PSと表記される場合がある。 |
構造式
HIPSは単一の規則的な繰返し単位だけでは表現できない。代表的には、ポリスチレン連続相とポリブタジエンゴム分散相からなり、ゴム粒子表面又は内部にポリスチレン鎖がグラフトした構造を含む。次図は化学構造と多相モルフォロジーを模式化したものである。
代表的な構造単位
| 構成 | 代表構造 | 役割 |
|---|---|---|
| ポリスチレン連続相 | [-CH2-CH(C6H5)-]n | 剛性、成形性、電気絶縁性及び基本的な耐熱性を担う。 |
| ポリブタジエンゴム相 | [-CH2-CH=CH-CH2-]mを主とする | 粒子変形、キャビテーション及びクレーズ誘起により衝撃エネルギーを吸収する。 |
| グラフト界面 | PB鎖上にPS鎖がグラフトした構造 | 界面接着、粒子分散及び応力伝達を改善する。グラフト率は製法とグレードにより異なる。 |
| 包有構造 | ゴム粒子内部にPS相を含むサラミ状又はコアシェル状構造 | 粒子形態は衝撃強度、光沢、剛性及び耐環境応力割れ性に影響する。 |
種類
| 種類の名称 | 主成分又は改質方法 | 長所 | 短所 | 主な用途 |
|---|---|---|---|---|
| 非強化・標準グレード | 標準的なゴム変性HIPS | 衝撃性、剛性、流動性及び価格のバランスが良い。 | 耐熱性、耐候性及び耐溶剤性は限定的である。 | 日用品、玩具、雑貨、一般筐体 |
| 一般射出成形グレード | 中流動、成形外観重視 | 複雑形状を量産しやすく、着色性が良い。 | ウェルド部、厚肉部及び残留応力に注意する。 | 家電部品、文具、容器 |
| 押出成形・高粘度グレード | 高分子量、溶融張力を確保 | シート厚みの安定性、熱成形性及び深絞り性に優れる。 | 射出成形では流動不足になりやすい。 | シート、トレー、冷蔵庫ライナー |
| 高流動グレード | 分子量及び潤滑設計を調整 | 薄肉、長流動及び多個取りに適する。 | 衝撃性、溶融張力又は耐熱性が低下する場合がある。 | 薄肉容器、筐体、雑貨 |
| 高衝撃・超高衝撃グレード | ゴム量、粒子径及び界面を最適化 | 落下衝撃、組立衝撃及び低温衝撃を改善できる。 | 剛性、光沢、表面硬度及び耐熱性が低下しやすい。 | 家電筐体、保護部品、工業包装 |
| 高剛性グレード | PS比率又はモルフォロジーを高剛性側に設計 | 薄肉化、形状保持及び曲げ剛性に有利である。 | 高衝撃グレードより靭性が低い。 | 食品容器、カップ、薄肉部品 |
| 高光沢グレード | 微細ゴム粒子、表面転写及び流動性を最適化 | 外観性及び印刷下地が良い。 | 深い梨地、低温衝撃又は耐油性との両立に制約がある。 | 化粧品容器、家電外観部品 |
| 耐熱グレード | 分子量、共重合成分又は配合を調整 | Vicat、HDT及び熱変形抵抗を改善する。 | 流動性が低下し、成形温度が高くなる場合がある。 | 照明部品、耐熱筐体、家電部品 |
| 耐油・耐環境応力割れグレード | ゴム構造、分子量及び界面を最適化 | 油脂、発泡剤、洗剤及び冷蔵庫環境での割れを抑えやすい。 | 全ての油や洗剤に耐えるわけではなく、実薬品試験が必要である。 | 冷蔵庫内装材、食品包装、油接触部品 |
| 難燃グレード | 難燃剤、助剤及び滴下制御剤を配合 | UL 94 V-2、V-1、V-0等を狙えるグレードがある。 | 密度上昇、衝撃低下、腐食性ガス、ブリード及びリサイクル制約に注意する。 | 電気・電子筐体、内部部品 |
| 耐候グレード | UV吸収剤、HALS、顔料等を配合 | 屋外又は窓際での色差、光沢低下及び脆化を遅延できる。 | ASAやAESほどの長期耐候性を得にくい場合がある。 | 屋外表示、外装部品 |
| 無機フィラー充填グレード | タルク、炭酸カルシウム等を充填 | 剛性、寸法安定性及びコスト調整に有効である。 | 密度、脆性、外観及びウェルド強度に注意する。 | 筐体、構造補助部品 |
| GF強化グレード | 特殊コンパウンドとしてGFを概ね10~30質量%配合する例がある | 剛性、耐熱変形及び寸法安定性を改善できる。 | 一般的なHIPS主流グレードではなく、繊維浮き、異方性及び衝撃低下に注意する。 | 特殊筐体、補強部品 |
| 導電・帯電防止グレード | カーボン系又は帯電防止剤を配合 | 表面抵抗を下げ、静電気障害を抑えられる。 | 黒色化、機械特性低下、汚染及び湿度依存性がある。 | 電子部品トレー、搬送材 |
| 食品接触用途向けグレード | モノマー、添加剤及び製造管理を用途規制に合わせる | 食品容器及びトレーへ適用できるグレードが存在する。 | 材料名だけで適合を断定せず、温度、食品種、接触時間及び証明書を確認する。 | カップ、トレー、蓋、包装 |
| 医療用途向けグレード | 限定的な管理グレード | 成形性と外観を活用できる場合がある。 | 一般HIPSを医療用途に流用しない。滅菌、溶出、生体適合性及び変更管理を確認する。 | 診断機器外装、非侵襲部品 |
| 発泡グレード | 発泡剤又は発泡成形条件に対応 | 軽量化、断熱、緩衝及び材料削減が可能である。 | 表面性、強度、寸法精度及び揮発成分管理に注意する。 | 発泡シート、包装、断熱補助 |
| 再生材含有グレード | PCR又はPIR HIPSを配合 | 資源循環及びCO2負荷低減に寄与できる。 | 色、臭気、異物、衝撃強度、MFR及びロット変動を管理する。 | 非食品包装、家電内装、雑貨 |
| CF強化グレード | 市場例は限定的であり一般化困難 | 高剛性、導電性及び軽量化の可能性がある。 | 高コスト、外観、異方性、衝撃及び供給性に制約がある。 | 特殊用途。個別コンパウンドのTDS確認が必要である。 |
成形加工
| 加工方法 | 適性 | 理由 | 主な注意点 |
|---|---|---|---|
| 射出成形 | ◎ | 流動性が良く、薄肉・多個取り・複雑形状に適する。 | 過熱、長時間滞留、ウェルド、ガス焼け、残留応力を抑える。 |
| 押出成形 | ◎ | シート、板、プロファイル及び発泡シートに適する。 | 高粘度押出グレードを選び、ダイライン、厚みむら及びゲルを管理する。 |
| ブロー成形 | △ | 押出ブロー対応の高溶融張力グレードでは可能である。 | 一般HIPSはドローダウンしやすく、用途及び供給グレードが限定される。 |
| インフレーション成形 | × | 一般的な薄膜インフレーションには適しにくい。 | 溶融強度、靭性及びフィルム延伸安定性が不足しやすい。 |
| Tダイフィルム・シート成形 | ◎ | シート、包装基材及び熱成形原反に広く用いられる。 | ロール温度、厚み偏差、残留応力及び再生材分散を管理する。 |
| 真空成形 | ◎ | 深絞り性、トリミング性及び外観のバランスが良い。 | シート温度分布、コーナー薄肉化、ドローダウン及び収縮を確認する。 |
| 圧空成形 | ◎ | 細部転写及び高速成形に適する。 | 型温度、シート表裏、延伸倍率及び残留応力に注意する。 |
| 圧縮成形 | ○ | 板材、試作及び特殊成形で可能である。 | 量産性は射出・押出より劣る。気泡及び温度均一性を管理する。 |
| トランスファー成形 | × | 通常は選択しない。 | 熱硬化性材料向けの工程であり、HIPSの利点を生かしにくい。 |
| 回転成形 | △ | 粉末化と専用条件により可能性はある。 | 一般的なHIPS用途ではなく、熱劣化及び均一溶融が課題となる。 |
| 発泡成形 | ○ | 発泡シート又は化学・物理発泡に適用できる。 | セル径、残留発泡剤、臭気、表面性及び衝撃強度を確認する。 |
| 3Dプリント | ○ | FDM用HIPSフィラメントとして造形材又はABS用サポート材に使用できる。 | 反り、層間接着、臭気及びd-リモネン除去条件を管理する。 |
| 切削加工 | ○ | 板材、治具、試作及び表示材を加工しやすい。 | 発熱による溶着、欠け、バリ及び応力白化を避ける。 |
| 溶着 | ○ | 熱板、超音波、振動及び溶剤溶着が可能である。 | 溶剤溶着はESCと白化、超音波は局部割れを確認する。 |
| 接着 | ○ | 溶剤系、アクリル系、シアノアクリレート系等を選定できる。 | 接着剤溶剤、硬化収縮、プライマー及び応力割れを実部品で評価する。 |
| 塗装 | ○ | 表面エネルギーが比較的高く塗装しやすい。 | 塗料溶剤による膨潤・クラックを避け、弱溶剤系を優先する。 |
| 印刷 | ◎ | スクリーン、パッド、オフセット等に対応しやすい。 | インキ溶剤、乾燥温度、耐摩耗性及び食品接触面を確認する。 |
| めっき | △ | 特殊前処理により可能であるがABSほど一般的ではない。 | 密着性、エッチング均一性及び環境規制対応に課題がある。 |
| 蒸着 | ○ | 装飾又は反射用途で真空蒸着が可能である。 | アウトガス、表面清浄度、プライマー及び熱負荷を確認する。 |
| レーザーマーキング | ○ | 添加剤又は顔料設計によりコントラストを得られる。 | 標準色では発色が不十分な場合がある。熱影響及び煙を管理する。 |
| 二次成形・インサート成形 | ○ | インサート、加飾及び多材成形に適用できる。 | 金属周辺の応力集中、線膨張差、締付け応力及び界面接着を確認する。 |
適性は材料群としての一般的な目安である。実際には、射出用、押出用、熱成形用、難燃、再生材含有等のグレード差により適否が変わる。
代表的な成形条件
| 成形条件項目 | 単位 | 一般的な目安 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 予備乾燥の要否 | - | 通常は不要 | 低吸水であるため通常保管品は無乾燥でも成形できる場合が多い。結露、長期開封、再生材又は表面外観重視では乾燥する。 |
| 推奨乾燥温度 | ℃ | 70~80 | 一般的な目安である。高温乾燥によるペレット軟化・ブロッキングを避ける。 |
| 推奨乾燥時間 | h | 0~4 | 乾燥が必要な場合の目安である。メーカー資料では0~4hの例がある。 |
| 許容含水率 | % | グレード依存 | 一般化困難である。シルバー、ガス、外観及び接着用途ではメーカー基準を確認する。 |
| ホッパードライヤー | - | 通常不要~条件付き | 高湿度、再生材、高光沢又は連続安定成形では使用が有効な場合がある。 |
| シリンダー温度・供給部 | ℃ | 180~210 | 低温側から段階的に上げる一般例である。供給不良とせん断発熱を確認する。 |
| シリンダー温度・圧縮部 | ℃ | 190~230 | 流動性、成形品肉厚及びスクリュー径により調整する。 |
| シリンダー温度・計量部 | ℃ | 200~250 | 高耐熱・高粘度品では高め、高流動品では低めとなる場合がある。 |
| ノズル温度 | ℃ | 200~250 | 糸引き、鼻垂れ、コールドスラグ及び熱劣化のバランスを取る。 |
| 樹脂温度 | ℃ | 200~260 | メーカー公開例の一般範囲である。長時間滞留及び局所過熱を避ける。 |
| 金型温度 | ℃ | 30~70 | 外観、ウェルド、収縮、サイクル及び残留応力により調整する。高光沢では高めが有効な場合がある。 |
| 射出圧力 | MPa | 60~120 | 製品形状、ゲート、流動長及び機械表示方式により大きく異なる。必要最小限にする。 |
| 保圧 | MPa | 30~80 | ヒケ、バリ、内部応力及び重量安定性を見て調整する。 |
| 背圧 | MPa | 0.3~1.0 | 低~中背圧を基本とし、混練、色むら及び樹脂温度上昇を確認する。 |
| 射出速度 | - | 中速~高速 | 薄肉では高速が有効であるが、ジェッティング、焼け、光沢むら及びせん断発熱に注意する。 |
| スクリュー回転数 | rpm | 40~100 | 過度なせん断発熱と空気巻込みを避ける。機械径に応じて周速で管理する。 |
| 滞留時間 | min | 可能な限り短く | 高温での長時間滞留は黄変、黒点、臭気及び分子量低下を招く。停止時は温度を下げ、適切にパージする。 |
| 成形収縮率・流動方向 | % | 0.3~0.8 | 非強化標準HIPSの一般範囲である。高充填・強化品は別管理とする。 |
| 成形収縮率・流動直角方向 | % | 0.3~0.8 | 非強化品では異方性は比較的小さいが、ゲート、肉厚及び流動配向で差が生じる。 |
| 推奨肉厚 | mm | 1.0~4.0 | 一般筐体の目安である。薄肉化では剛性と流動、厚肉化ではヒケとボイドを確認する。 |
| 抜き勾配 | ° | 0.5~2.0 | 梨地、深形状及び高光沢では大きめに設定する。 |
| アニール | - | 通常不要 | 寸法精度、接着、塗装又は溶剤接触で残留応力が問題となる場合に検討する。 |
| アニール温度 | ℃ | 60~75 | HDT以下で治具拘束し、変形を確認しながら設定する。 |
| アニール時間 | h | 1~4 | 肉厚、形状及び応力状態に応じて設定する。急冷を避ける。 |
成形条件は材料群の一般的な目安であり、メーカー、グレード、成形機、スクリュー、製品形状、色及び再生材比率によって異なる。特定グレードの技術資料を優先する。
代表的な物性値又は機械的性質
以下は、非強化・無充填・標準から高衝撃HIPSの公開メーカー資料を中心に整理した代表範囲である。単一メーカーの特定グレードを材料群全体の規格値として扱わない。比較用代表値は、数値比較に使いやすい代表例であり、保証値ではない。
物理的性質
| 項目 | 単位 | 下限値 | 比較用代表値 | 上限値 | 試験規格・条件 | 材料状態 | 備考 | 信頼度 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 密度 | g/cm³ | 1.03 | 1.04 | 1.06 | ISO 1183又はASTM D792、23℃ | 成形直後~標準状態 | 難燃・無機充填品は高くなる。 | A |
| 比重 | 無次元 | 1.03 | 1.04 | 1.06 | ISO 1183又はASTM D792、23℃ | 成形直後~標準状態 | 水を1とした概略値である。 | A |
| かさ密度 | g/cm³ | 0.55 | 0.60 | 0.65 | ASTM D1895等、ペレット | ペレット | 粒形、帯電及び測定法で変動する。 | C |
| 吸水率・24時間 | % | 0.03 | 0.05 | 0.10 | ISO 62又はASTM D570、23℃水中24h | 乾燥試験片 | 低吸水であるが、接着・外観では乾燥管理が有効な場合がある。 | B |
| 平衡吸水率 | % | データなし | データなし | データなし | 23℃・50%RH等 | 不明 | 材料群として一般化できる十分な統一データがない。 | - |
| 成形収縮率・流動方向 | % | 0.3 | 0.5 | 0.8 | ISO 294-4又はASTM D955 | 射出成形品 | 肉厚、ゲート、保圧及び金型温度で変動する。 | B |
| 成形収縮率・流動直角方向 | % | 0.3 | 0.5 | 0.8 | ISO 294-4又はASTM D955 | 射出成形品 | 非強化品では比較的等方的である。 | B |
| 線膨張係数 | 10⁻⁵/K | 6.5 | 8.0 | 10.0 | ISO 11359又はASTM D696、温度範囲依存 | 標準状態 | 金属より大きく、嵌合・インサート設計で重要である。 | B |
| ポアソン比 | 無次元 | データなし | 0.35 | データなし | 代表値、規格不明 | 標準状態 | 解析用の参考値であり、実測又は材料カードを優先する。 | C |
| 硬度 | ロックウェルL | 10 | 60 | 75 | ISO 2039-2又はJIS K 7202-2 | 成形品 | 高衝撃・耐油品は低く、高剛性品は高い。 | A |
| 屈折率 | 無次元 | 1.57 | 1.58 | 1.59 | ASTM D542等 | 自然色 | 通常は不透明であり、光学用途の透明性指標としては使いにくい。 | C |
| 光線透過率 | % | 該当なし | 該当なし | 該当なし | 試験片厚さ依存 | 標準HIPS | ゴム粒子による散乱が大きく、通常は不透明である。透明耐衝撃PSは別設計である。 | A |
| ヘーズ | % | 一般化困難 | 一般化困難 | 一般化困難 | ASTM D1003、厚さ依存 | 標準HIPS | 通常HIPSでは透明材料用の比較指標として適さない。 | - |
| 色調及び外観 | - | - | 乳白色~不透明 | - | 目視 | 自然色 | 着色、高光沢、マット及び共押出が可能である。 | A |
| 表面性 | - | - | 平滑~高光沢 | - | 金型・ダイ転写 | 成形品 | ゴム粒子、成形温度及び金型温度で光沢が変化する。 | A |
機械的性質
| 項目 | 単位 | 下限値 | 比較用代表値 | 上限値 | 試験規格・条件 | 材料状態 | 備考 | 信頼度 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 引張強さ・降伏 | MPa | 20 | 30 | 41 | ISO 527、23℃、速度は資料依存 | 成形直後~標準状態 | 高剛性・高光沢品は高く、高衝撃・耐油品は低い傾向である。 | A |
| 引張強さ・破断 | MPa | データなし | データなし | データなし | 規格・破断様式依存 | 不明 | 公開資料の多くは降伏応力を示し、破断強さとの混同を避ける。 | - |
| 引張弾性率 | GPa | 1.8 | 2.2 | 2.6 | ISO 527、23℃ | 標準状態 | ゴム量増加で低下しやすい。 | A |
| 引張破断伸び | % | 20 | 40 | 60 | ISO 527、23℃、速度依存 | 標準状態 | 高衝撃品で大きい場合がある。試験片・速度依存性が大きい。 | A |
| 引張降伏伸び | % | データなし | データなし | データなし | ISO 527 | 不明 | 材料群として統一できる公開データが不足する。 | - |
| 曲げ強さ | MPa | 35 | 50 | 66 | ISO 178、23℃ | 標準状態 | グレード差が大きい。 | A |
| 曲げ弾性率 | GPa | 1.5 | 2.2 | 2.6 | ISO 178、23℃ | 標準状態 | 射出用・押出用、高衝撃・高剛性で差がある。 | A |
| 圧縮強さ | MPa | データなし | データなし | データなし | ISO 604又はASTM D695 | 不明 | 一般設計では引張・曲げ及びクリープデータを優先する。 | - |
| せん断強さ | MPa | データなし | データなし | データなし | 規格不明 | 不明 | 締結部は実部品で確認する。 | - |
| アイゾット衝撃強さ・ノッチ付き | kJ/m² | 10 | 12 | 15 | ISO 180、23℃、4mm級の公開例 | 標準状態 | ASTM D256のJ/m又はft·lb/inと直接混同しない。 | A |
| シャルピー衝撃強さ・ノッチ付き | kJ/m² | 8 | 12 | 20 | ISO 179、23℃、4mm | 標準状態 | PSジャパン、東洋スチレン等の公開例に基づく代表範囲である。 | A |
| アイゾット衝撃強さ・ノッチなし | kJ/m² | データなし | データなし | データなし | ISO 180 | 不明 | NB又は破壊せずを数値化しない。 | - |
| 低温衝撃特性 | - | - | グレード依存 | - | 0℃以下 | 標準状態 | GPPSより良いが、ゴム相Tg、粒子設計、肉厚及びノッチで変動する。 | B |
| 疲労強度 | MPa | データなし | データなし | データなし | 温度・応力比・回数の指定が必要 | 不明 | 繰返し荷重部品は実疲労試験が必要である。 | - |
| 引張クリープ弾性率 | MPa | データなし | データなし | データなし | 温度・時間依存 | 不明 | 短時間弾性率を長期設計値に使用しない。 | - |
熱的性質
| 項目 | 単位 | 下限値 | 比較用代表値 | 上限値 | 試験規格・条件 | 材料状態 | 備考 | 信頼度 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| ガラス転移温度・PS相 | ℃ | 90 | 100 | 105 | DSC、DMA又は文献値 | 乾燥状態 | HIPSは多相系であり、PS相とゴム相に別の緩和がある。 | B |
| ガラス転移温度・PB相 | ℃ | -100 | -90 | -75 | DSC又はDMA、ゴム組成依存 | 乾燥状態 | 低温衝撃性に影響する。 | B |
| 融点 | ℃ | 該当なし | 該当なし | 該当なし | 非晶性樹脂 | - | 明確な結晶融点を持たない。 | A |
| 結晶化温度 | ℃ | 該当なし | 該当なし | 該当なし | 非晶性樹脂 | - | 一般のHIPSには適用しない。 | A |
| 荷重たわみ温度・0.45MPa | ℃ | データなし | 85 | データなし | ISO 75-2又はASTM D648 | 成形品 | 公開条件の統一が困難であり参考値である。 | C |
| 荷重たわみ温度・1.80MPa | ℃ | 65 | 73 | 78 | ISO 75-2、非アニールを基本 | 成形品 | アニール品は89~96℃程度の公開例もあるため混同しない。 | A |
| ビカット軟化温度・50N | ℃ | 86 | 93 | 97 | ISO 306、50N、50℃/h | 成形品 | グレードで変動する。 | A |
| 連続使用温度 | ℃ | 50 | 65 | 75 | 一般的な設計目安 | 無応力~低応力 | RTIではない。荷重、寿命、酸素、UV及び薬品で下げる。 | C |
| 短時間耐熱温度 | ℃ | 70 | 80 | 95 | 短時間・無荷重の目安 | 成形品 | 軟化、変形及び残留応力緩和を確認する。 | C |
| 低温使用限界 | ℃ | -30 | -20 | 0 | 衝撃要求依存 | 成形品 | 脆化温度はゴム設計、ノッチ、肉厚及び速度で変わる。 | C |
| 熱分解開始温度 | ℃ | データなし | 300 | データなし | TGA条件依存 | 乾燥状態 | 成形上限を示す値ではない。酸素、時間及びせん断で劣化温度は低下する。 | C |
| 熱伝導率 | W/(m・K) | 0.12 | 0.16 | 0.20 | 23℃付近、無充填品 | 標準状態 | 発泡、充填及び温度で変動する。 | B |
| 比熱 | J/(g・K) | 1.2 | 1.3 | 1.5 | 23℃付近 | 標準状態 | CAEでは温度依存データを用いる。 | C |
| 線膨張係数 | 10⁻⁵/K | 6.5 | 8.0 | 10.0 | 温度範囲依存 | 標準状態 | 金属インサートとの熱膨張差に注意する。 | B |
| RTI Electrical | ℃ | データなし | データなし | データなし | UL認証グレード別 | 認証試験片 | 材料名だけでは設定できない。UL Yellow Cardを確認する。 | - |
| RTI Mechanical with Impact | ℃ | データなし | データなし | データなし | UL認証グレード別 | 認証試験片 | グレード、色及び厚さ依存である。 | - |
| RTI Mechanical without Impact | ℃ | データなし | データなし | データなし | UL認証グレード別 | 認証試験片 | グレード、色及び厚さ依存である。 | - |
電気的性質
| 項目 | 単位 | 下限値 | 比較用代表値 | 上限値 | 試験規格・条件 | 材料状態 | 備考 | 信頼度 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 体積抵抗率 | Ω・cm | 1×1015 | 1×1016 | 1×1017 | ASTM D257、23℃、乾燥 | 乾燥状態 | 顔料、帯電防止剤、湿度及び汚染で低下する。 | B |
| 表面抵抗率 | Ω | データなし | データなし | データなし | ASTM D257 | 不明 | 帯電防止・導電グレードは別管理とする。 | - |
| 絶縁破壊強さ | kV/mm | 15 | 20 | 25 | IEC 60243又はASTM D149、厚さ依存 | 乾燥状態 | 試験片厚さ及び電極形状の影響が大きい。 | B |
| 比誘電率・1kHz | 無次元 | 2.4 | 2.6 | 2.8 | IEC 62631又はASTM D150、23℃ | 乾燥状態 | ゴム量、顔料及び周波数で変動する。 | B |
| 比誘電率・1MHz | 無次元 | 2.4 | 2.5 | 2.7 | IEC 62631又はASTM D150、23℃ | 乾燥状態 | 周波数条件を付けて比較する。 | B |
| 誘電正接・1kHz | 無次元 | 0.0005 | 0.002 | 0.01 | ASTM D150、23℃ | 乾燥状態 | 配合、周波数及び温度で変動する参考範囲である。 | C |
| 誘電正接・1MHz | 無次元 | 0.001 | 0.003 | 0.01 | ASTM D150、23℃ | 乾燥状態 | 高周波用途は個別グレードの測定値を用いる。 | C |
| 耐アーク性 | s | データなし | データなし | データなし | ASTM D495等 | 不明 | 難燃剤と表面汚染の影響を受ける。 | - |
| CTI | V | データなし | データなし | データなし | IEC 60112、グレード別 | 認証試験片 | 一般HIPS全体の値として断定しない。 | - |
| 帯電性 | - | - | 帯電しやすい | - | 表面状態・湿度依存 | 乾燥状態 | 粉塵付着、搬送障害及び電子部品用途では帯電防止設計を検討する。 | B |
燃焼性・難燃性
| 項目 | 単位 | 下限又は区分 | 代表値・区分 | 上限又は区分 | 試験規格・条件 | 材料状態 | 備考 | 信頼度 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| UL 94燃焼性・標準HIPS | 等級 | HB | HB | HB | UL 94、例として0.8~3.0mm | 認証グレード | 公開メーカー例ではHBが多いが、材料群全体の認証を意味しない。 | A |
| UL 94燃焼性・難燃HIPS | 等級 | V-2 | V-0 | V-0 | UL 94、厚さ・色・グレード別 | 難燃グレード | 適合グレードが存在する。Yellow Card及び認証厚さを確認する。 | A |
| 限界酸素指数・LOI | % | 17 | 18 | 20 | ISO 4589又はASTM D2863 | 標準HIPS | 一般に自己消火性は低い。配合で変動する。 | C |
| GWIT | ℃ | データなし | データなし | データなし | IEC 60695、認証グレード別 | 不明 | 電気用途は個別グレードの証明を確認する。 | - |
| GWFI | ℃ | データなし | データなし | データなし | IEC 60695、認証グレード別 | 不明 | 材料名だけでは設定できない。 | - |
| 自然発火温度 | ℃ | データなし | データなし | データなし | 粉塵・形状・試験法依存 | 不明 | SDS及び工程リスク評価を確認する。 | - |
| 発煙性 | - | - | 比較的大きい | - | 燃焼条件依存 | 成形品 | 芳香族系樹脂であり、燃焼時に黒煙、CO、CO2及び炭化水素類を生じ得る。 | B |
| ハロゲン含有 | - | - | 標準HIPSは骨格にハロゲンなし | - | 配合依存 | 標準グレード | 難燃剤、顔料、添加剤の含有は個別SDS・証明書を確認する。 | A |
改質・強化グレードの物性への影響
| グレード区分 | 主な改質方法 | 向上しやすい特性 | 低下又は変動しやすい特性 | 比較上の注意 |
|---|---|---|---|---|
| 高衝撃 | ゴム量・粒子構造最適化 | 衝撃強度、破断伸び | 剛性、光沢、表面硬度、HDTが低下する場合がある。 | ゴム量と粒子径を標準品と混在させず比較する。 |
| 高剛性 | PS比率・モルフォロジー調整 | 曲げ弾性率、薄肉剛性 | 衝撃強度が低下する場合がある。 | 同じ試験規格、肉厚及び成形条件で比較する。 |
| 難燃 | 難燃剤・助剤 | UL 94、着火抵抗 | 密度、衝撃、色調、電気特性、腐食性ガス | 認証厚さ、色、製造拠点及びロット変更を確認する。 |
| GF 10~30質量%の特殊品 | ガラス短繊維 | 剛性、HDT、寸法安定性 | 異方性、繊維浮き、ノッチ衝撃、ウェルド強度 | 一般HIPSの代表値と混在させない。個別TDSを用いる。 |
| 無機充填 | タルク、CaCO3等 | 剛性、収縮、コスト調整 | 密度、脆性、表面、衝撃 | 充填率と粒径を明記する。 |
| 帯電防止・導電 | 帯電防止剤、カーボン系 | 表面抵抗低減 | 色、衝撃、流動、汚染 | 湿度依存と電気抵抗範囲を確認する。 |
| 耐候 | UV吸収剤、HALS、顔料 | 色差、光沢保持、強度保持 | コスト、色、リサイクル性 | 促進試験と屋外暴露の相関を確認する。 |
| 再生材含有 | PCR/PIR | 環境負荷低減 | 衝撃、色、臭気、MFR、異物 | 再生材比率、由来、脱臭、ろ過及び食品適合を確認する。 |
耐薬品性
HIPSの耐薬品性は、ポリスチレン相の溶解・膨潤、ゴム相の膨潤、添加剤抽出及び環境応力割れの複合で決まる。無応力の短時間浸漬で外観変化が小さくても、成形残留応力、ねじ締結、圧入、曲げ荷重又は溶着応力があると割れが発生する場合がある。詳細な比較にはプラスチックの耐薬品性一覧表も参照する。
| 薬品名 | 濃度 | 温度 | 接触条件 | 応力 | 評価 | 主な劣化形態 | 備考 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 水 | 100% | 23℃ | 7日浸漬 | 無応力 | ◎ | 一般に影響が小さい。 | 吸水・寸法変化は小さい。 |
| 温水 | 100% | 60℃ | 24~168h浸漬 | 無応力 | ○ | 軟化、応力緩和、反り | HDTに近づくため、荷重下では変形を確認する。 |
| 熱水・沸騰水 | 100% | 80~100℃ | 1~24h | 無応力~荷重あり | △ | 軟化、反り、白化、寸法変化 | 長時間及び荷重下には適しにくい。 |
| 水蒸気 | 飽和蒸気 | 100℃以上 | 短時間 | 無応力 | × | 熱変形、応力緩和、表面変化 | 蒸気滅菌用途には一般に不適である。 |
| 塩酸 | 10%水溶液 | 23℃ | 7日浸漬 | 無応力 | ○ | 長期で外観・強度変化の可能性 | 濃度、高温及び残留応力を確認する。 |
| 硫酸 | 10%水溶液 | 23℃ | 7日浸漬 | 無応力 | ○ | 長期で変色・劣化の可能性 | 濃硫酸は別評価とする。 |
| 濃硫酸 | 95%以上 | 23℃ | 短時間~24h | 無応力 | × | 強い劣化、炭化、変色 | 接触を避ける。 |
| 硝酸 | 10%水溶液 | 23℃ | 24h | 無応力 | △ | 酸化、変色、脆化 | 酸化性があり、濃度と温度で悪化する。 |
| 酢酸 | 10%水溶液 | 23℃ | 7日浸漬 | 無応力 | ○ | 長期で膨潤・臭気吸着の可能性 | 氷酢酸は別評価とする。 |
| 氷酢酸 | 約99% | 23℃ | 短時間 | 無応力~応力あり | △ | 膨潤、白化、ESC | 実部品試験が必要である。 |
| 水酸化ナトリウム | 10%水溶液 | 23℃ | 7日浸漬 | 無応力 | ○ | 一般に影響は小さいが添加剤抽出の可能性 | 高温・高濃度では確認する。 |
| 水酸化カリウム | 10%水溶液 | 23℃ | 7日浸漬 | 無応力 | ○ | 一般に影響は小さい | 高温・高濃度では確認する。 |
| アンモニア水 | 10%以下 | 23℃ | 24h | 無応力 | ○ | 臭気吸着、表面変化の可能性 | 高濃度・高温では実測する。 |
| メタノール | 100% | 23℃ | 24h | 無応力 | ○ | 長時間で白化・ESCの可能性 | 応力下では評価を厳しくする。 |
| エタノール | 100%又は高濃度 | 23℃ | 24h | 無応力 | ○ | 一般に短時間は良好、長期でESC注意 | 変性アルコールは混合溶剤成分を確認する。 |
| IPA | 100%又は70% | 23℃ | 24h | 無応力~応力あり | ○ | 応力割れ、白化の可能性 | 拭取りは短時間化し、組立応力部で確認する。 |
| グリセリン | 100% | 23℃ | 7日浸漬 | 無応力 | ◎ | 一般に影響が小さい | 高温及び混合成分を確認する。 |
| MMB | 100%又は配合液 | 23℃ | 24h | 無応力~応力あり | △ | 膨潤、軟化、ESCの可能性 | エーテルアルコールであり、単純な高級アルコール扱いをしない。実測必須。 |
| エチレングリコール | 100%又は水溶液 | 23~60℃ | 7日浸漬 | 無応力 | ○ | 高温長期で軟化・添加剤抽出の可能性 | 冷却液は防錆剤等の配合も確認する。 |
| トルエン | 100% | 23℃ | 短時間 | 無応力 | × | 急速な膨潤、軟化、溶解 | 接触を避ける。 |
| キシレン | 100% | 23℃ | 短時間 | 無応力 | × | 膨潤、軟化、溶解 | 塗料・洗浄剤の芳香族分を確認する。 |
| ヘキサン | 100% | 23℃ | 24h | 無応力~応力あり | △ | ゴム相膨潤、ESC | 長時間及び応力下では不適となる場合がある。 |
| ヘプタン | 100% | 23℃ | 24h | 無応力~応力あり | △ | ゴム相膨潤、ESC | 燃料模擬液は芳香族成分を別途確認する。 |
| シクロヘキサン | 100% | 23℃ | 短時間~24h | 無応力 | × | 強い膨潤、軟化 | SP値が近く、接触を避ける。 |
| アセトン | 100% | 23℃ | 短時間 | 無応力 | × | 表面溶解、白化、クラック | 拭取りでも損傷する場合がある。 |
| MEK | 100% | 23℃ | 短時間 | 無応力 | × | 溶解、膨潤、クラック | 接触を避ける。 |
| MIBK | 100% | 23℃ | 短時間 | 無応力 | × | 膨潤、溶解、ESC | 塗料溶剤に含まれる場合がある。 |
| 酢酸エチル | 100% | 23℃ | 短時間 | 無応力 | × | 軟化、膨潤、溶解 | 接着・印刷インキの溶剤に注意する。 |
| 酢酸ブチル | 100% | 23℃ | 短時間 | 無応力 | × | 膨潤、軟化、ESC | 塗料・インキの混合溶剤として注意する。 |
| THF | 100% | 23℃ | 短時間 | 無応力 | × | 急速な溶解又は膨潤 | 接触を避ける。 |
| ジエチルエーテル | 100% | 23℃ | 短時間 | 無応力 | △ | 膨潤、ESCの可能性 | 揮発性が高く、火災安全も別途管理する。 |
| ジクロロメタン | 100% | 23℃ | 短時間 | 無応力 | × | 溶解、白化、クラック | 接触を避ける。 |
| クロロホルム | 100% | 23℃ | 短時間 | 無応力 | × | 溶解、膨潤 | 接触を避ける。 |
| 鉱油・潤滑油 | 市販油 | 23~60℃ | 7日浸漬 | 無応力~応力あり | ○ | ゴム相膨潤、添加剤影響、ESC | 油種、芳香族分、添加剤及び温度で差が大きい。 |
| 植物油 | 食用油 | 23~60℃ | 7日浸漬 | 無応力~応力あり | △ | 長期でESC、膨潤、臭気移行 | 食品容器は実油、温度及び繰返し条件で確認する。 |
| ガソリン | 市販燃料 | 23℃ | 24h | 無応力~応力あり | × | 芳香族分による膨潤、溶解、ESC | 燃料系部品には一般に不適である。 |
| 軽油 | 市販燃料 | 23~60℃ | 7日浸漬 | 無応力~応力あり | △ | 膨潤、ESC、添加剤影響 | 長期・高温では不適となる場合がある。 |
| ブレーキ液 | DOT系 | 23~80℃ | 7日浸漬 | 無応力~応力あり | △ | 膨潤、ESC、添加剤抽出 | 組成差が大きいため実液評価が必要である。 |
| 冷却液 | EG/水混合液 | 23~90℃ | 7~1000h | 無応力~応力あり | ○ | 高温で軟化、添加剤影響 | 長期高温用途はHIPSの耐熱限界を先に確認する。 |
| 中性洗剤 | 0.1~5% | 23~60℃ | 繰返し又は7日 | 応力ありを含む | △ | 界面活性剤によるESC、光沢低下 | 冷蔵庫部品等では耐洗剤・残留応力試験を行う。 |
| 次亜塩素酸ナトリウム | 100~1000ppm | 23℃ | 24h~7日 | 無応力 | ○ | 長期で酸化、退色、表面劣化 | pH、遊離塩素、光及び温度を管理する。 |
| 過酸化水素 | 3% | 23℃ | 24h | 無応力 | ○ | 長期で酸化・変色の可能性 | 高濃度及び高温は別評価とする。 |
| 塩水 | 3~5%NaCl | 23℃ | 7日浸漬 | 無応力 | ◎ | 一般に影響が小さい | 金属インサートの腐食は別途確認する。 |
| 海水 | 天然又は人工海水 | 23℃ | 7~30日 | 無応力 | ◎ | 一般に影響が小さい | UV、温度、微生物、応力を組み合わせると別評価が必要である。 |
| d-リモネン | 100%又は高濃度 | 23℃ | 短時間~数時間 | 無応力 | × | 膨潤、溶解 | HIPSの3Dプリントサポート除去に利用される。 |
評価基準:◎は一般的な条件で影響が小さい、○は概ね使用可能であるが条件確認が必要、△は膨潤、軟化、強度低下、変色又は環境応力割れに注意、×は溶解、著しい膨潤、分解又は割れが生じる可能性が高いことを示す。濃度、温度、接触時間、応力、成形品の残留応力及びグレードにより評価は変わる。
SP値(溶解度パラメータ)
| 材料区分 | 代表的なSP値 δ | 単位 | 備考 |
|---|---|---|---|
| HIPS標準グレード | 18.0~19.0 | MPa1/2 | ポリスチレン相が支配的である。比較用代表値として18.5を用いる。 |
| 高衝撃HIPS | 17.8~18.8 | MPa1/2 | ゴム相の割合及び組成により低下する場合がある。 |
| 高剛性HIPS | 18.3~19.2 | MPa1/2 | PS相の寄与が相対的に大きい。 |
| 難燃・充填HIPS | 一般化困難 | MPa1/2 | 難燃剤、充填材、可塑成分及び添加剤の影響が大きく、個別配合で評価する。 |
SP値は溶解・膨潤傾向の一次スクリーニングに用いる目安である。HIPSは多相材料であるため、単一のδだけではゴム相の選択膨潤、グラフト界面、環境応力割れ、酸化、添加剤抽出及び混合溶剤効果を表せない。詳細なSP値情報はホモポリマー・樹脂の溶解パラメータ(SP値)を参照する。
溶解性の目安
| SP値差 | 溶解・膨潤の目安 | 判定 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 0~2 | 膨潤・軟化しやすい | × | 溶解又は強い膨潤の候補である。 |
| 2~5 | 条件により膨潤する | △ | 時間、温度、ゴム相及び応力により悪化し得る。 |
| 5~8 | 短時間接触では比較的安定 | ○ | 長時間、混合溶剤、界面活性剤及び応力下では確認する。 |
| 8以上 | 溶解・膨潤しにくい | ◎ | 化学反応性、酸化性、加水分解及びESCは別途評価する。 |
SP値から見た耐溶剤性
| 薬品・溶剤 | SP値 δ(MPa1/2) | HIPSとの差 | 評価 | 備考 |
|---|---|---|---|---|
| 水 | 47.9 | 29.4 | ◎ | SP値差は大きく、常温水では一般に安定である。 |
| グリセリン | 36.1 | 17.6 | ◎ | SP値差が大きい。高温及び混合成分は別評価とする。 |
| メタノール | 29.7 | 11.2 | ○ | 単独では比較的安定だが、応力下及び混合溶剤では注意する。 |
| エタノール | 26.0 | 7.5 | ○ | 短時間接触は比較的良好である。変性剤を確認する。 |
| IPA | 23.5 | 5.0 | ○ | 境界域であり、応力部ではESC試験が必要である。 |
| MMB | 約22 | 約3.5 | △ | エーテルアルコールであり、配合液及び長時間接触を実測する。 |
| ジクロロメタン | 20.2 | 1.7 | × | 溶解、白化及びクラックを生じやすい。 |
| アセトン | 19.9 | 1.4 | × | 表面溶解及び応力割れを生じやすい。 |
| クロロホルム | 19.0 | 0.5 | × | 強い溶解・膨潤が予想される。 |
| MEK | 19.0 | 0.5 | × | 非常に近く、溶解・クラックを生じやすい。 |
| 酢酸エチル | 18.6 | 0.1 | × | 軟化、膨潤及び溶解の可能性が高い。 |
| トルエン | 18.2 | 0.3 | × | HIPSを強く膨潤・溶解させる代表的溶剤である。 |
| キシレン | 18.0 | 0.5 | × | 芳香族溶剤であり耐性は低い。 |
| MIBK | 約17.2 | 約1.3 | × | SP値が近く、膨潤・ESCを生じやすい。 |
| シクロヘキサン | 16.8 | 1.7 | × | ゴム相とPS相を膨潤させやすい。 |
| d-リモネン | 16.3 | 2.2 | × | 単純な差では△域だが、実際にはHIPSを溶解・膨潤させるため×とする。 |
| 鉱油 | 約16.0 | 約2.5 | △ | 油組成、芳香族分、添加剤、温度及び応力で差が大きい。 |
| ヘプタン | 15.3 | 3.2 | △ | ゴム相の選択膨潤及びESCに注意する。 |
| ヘキサン | 14.9 | 3.6 | △ | 長時間、温度上昇及び応力下で膨潤し得る。 |
上表はHIPSの比較用代表値18.5MPa1/2との差を中心とした一次評価である。実際の耐薬品性は、Hansen三成分、ゴム相の選択膨潤、温度、濃度、混合比、拡散速度、添加剤、残留応力及び接触時間によって変わる。特にd-リモネン、燃料、油脂、洗剤及び塗料シンナーは、単一SP値だけで判定しない。
環境応力割れ・ESC
| 項目 | 評価・条件 | 内容 |
|---|---|---|
| 環境応力割れ感受性 | 中~高 | 非晶性PS相とゴム相を持ち、溶剤、油脂、界面活性剤及び香料成分でクレーズ・割れを生じる場合がある。 |
| 問題となりやすい薬品 | 芳香族炭化水素、ケトン、エステル、塩素系溶剤、リモネン、燃料、油脂、洗剤、接着剤・塗料溶剤 | 混合物は微量の強溶剤成分が支配する場合がある。 |
| 残留応力の影響 | 大きい | 高保圧、低金型温度、急冷、無理抜き、圧入、ねじ締結、超音波溶着及び曲げ保持で感受性が増す。 |
| ノッチの影響 | 大きい | 鋭角、ボス根元、リブ交差、ゲート跡、切削傷及びウェルド端部が起点となる。 |
| 温度の影響 | 温度上昇で悪化 | 拡散と応力緩和が速くなり、膨潤、軟化及び亀裂進展が促進される。 |
| 成形条件の対策 | 残留応力低減 | 適正樹脂温度、適正金型温度、過大保圧の回避、均一肉厚、十分な抜き勾配及びゲート最適化を行う。 |
| アニールの目安 | 60~75℃、1~4h | 変形を防ぐ治具を用い、昇温・冷却を緩やかにする。グレードと形状で条件を検証する。 |
| 実部品確認 | 定ひずみ又は定荷重+実薬品 | 実使用応力、温度、薬品濃度及び時間を再現し、外観、亀裂、質量、寸法及び残存強度を評価する。 |
製法
工業的なHIPSは、ポリブタジエンゴムをスチレンモノマーに溶解し、ラジカル重合を進めながら重合誘起相分離を起こさせて製造する方法が代表的である。重合初期にはゴムがスチレン中に溶解しているが、ポリスチレン生成量が増えると相分離し、撹拌せん断と界面グラフト反応によりゴム粒子が形成される。最終的にはポリスチレンが連続相、ゴム粒子が分散相となる。
| 工程 | 主な内容 | 技術上の要点 |
|---|---|---|
| 原料 | スチレンモノマー、ポリブタジエンゴム | 必要に応じてエチルベンゼン等の希釈成分、開始剤、連鎖移動剤、酸化防止剤及び滑剤を使用する。 |
| 重合方法 | 連続塊状重合、塊状重合、塊状懸濁重合等 | 連続塊状法は組成と粒子形態を制御しやすく、工業的に広く用いられる。 |
| グラフト反応 | ポリブタジエン鎖へポリスチレン鎖をグラフト | 界面接着と粒子安定性を確保する。過少・過多のグラフトはモルフォロジーと加工性に影響する。 |
| 相反転 | 重合誘起相分離によりゴム連続相からPS連続相へ転換 | 撹拌、粘度、転化率及び温度でゴム粒子径と包有構造を制御する。 |
| 脱揮 | 未反応スチレン及び揮発成分を真空下で除去 | 残留モノマー、臭気、食品接触、アウトガス及び成形時ガスに影響する。 |
| コンパウンド | 酸化防止剤、滑剤、顔料、難燃剤、充填材、帯電防止剤等を混練 | 標準HIPSと改質グレードを区別し、添加剤の法規制・ブリード・抽出を確認する。 |
| ペレット化 | 押出後にストランドカット又は水中カット | ペレット形状、粉、異物、乾燥及び輸送中の摩耗を管理する。 |
| 品質管理 | MFR、衝撃、引張、曲げ、HDT、Vicat、色、光沢、残留モノマー等 | 用途に応じてUL、食品接触、RoHS、REACH及び顧客規格を確認する。 |
詳細な利用用途
| 用途分野 | 具体例 | 採用理由 | 主な確認事項 |
|---|---|---|---|
| 食品包装 | カップ、トレー、蓋、ヨーグルト容器、惣菜容器、ブリスター基材 | 熱成形性、低価格、印刷性、剛性 | 食品接触適合、残留モノマー、油脂ESC、耐熱温度、電子レンジ適否を確認する。 |
| 家電 | 冷蔵庫ライナー、エアコン部品、テレビ・モニター筐体、洗面化粧台部品 | 真空成形性、外観、衝撃性、コスト | 発泡断熱材・油・洗剤とのESC、難燃性、長期熱、UV及びVOCを確認する。 |
| 電気・電子 | 内部筐体、絶縁カバー、端末外装、電子部品トレー | 絶縁性、成形性、着色、難燃グレード | UL 94、RTI、CTI、帯電、アウトガス及びハロゲンフリー証明を確認する。 |
| 自動車 | 内装トリム、非構造カバー、試作部品 | 低コスト、外観、成形性 | 耐熱、耐候、VOC、フォギング、燃焼規格及び薬品接触で用途は限定される。 |
| 機械・工業包装 | リール、搬送トレー、保護カバー、機器筐体 | 衝撃性、熱成形性、切削性 | 長期荷重、摩耗、油、溶剤及び静電気を確認する。 |
| 医療・診断 | 診断装置外装、使い捨て非侵襲部品の一部 | 外観、着色、成形性、コスト | 医療管理グレード、生体適合性、溶出、滅菌及び変更管理が必要である。 |
| 文具・玩具 | 筆記具部品、ケース、玩具、ハンガー、日用品 | 着色、光沢、衝撃、量産性 | 玩具規制、可塑剤・重金属、噛み込み、尖端、耐候性を確認する。 |
| 建築・設備 | 内装パネル、表示板、装飾シート、非構造カバー | 加工性、印刷性、軽量、低価格 | 屋外耐候、建築難燃規格、熱変形及び溶剤系清掃剤を確認する。 |
| 広告・ディスプレイ | POP、サイン、印刷シート、展示什器 | 印刷、切削、熱曲げ、外観 | UV、照明熱、溶剤インキ及び長期変形を確認する。 |
| 3Dプリント | 造形材、ABS用可溶サポート | 加工温度がABSに近く、d-リモネンで除去可能 | VOC、反り、溶剤管理、廃液処理及び造形品の異方性に注意する。 |
接合・表面処理適性
| 方法 | 適性 | 特徴 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 熱板溶着 | ○ | 接合面を均一に加熱しやすい。 | 溶け込み、バリ、熱変形及び治具拘束を確認する。 |
| 超音波溶着 | ○ | 剛性がありエネルギーダイレクタを設計しやすい。 | 局部白化、クラック、粉発生及びゴム量による溶着性差に注意する。 |
| 振動溶着 | ○ | 比較的大面積の接合が可能である。 | 発塵、バリ、治具剛性及び外観を確認する。 |
| レーザー溶着 | △ | 透過・吸収色を設計すれば可能である。 | 通常HIPSは不透明であり、色材と光学特性の専用設計が必要である。 |
| 高周波溶着 | × | 誘電損失が小さく一般には適しにくい。 | PVC等の高周波溶着材と同様には扱えない。 |
| 熱風溶着 | ○ | 板材やシートの接合に適用できる。 | 過熱、酸化、表面荒れ及び残留応力を避ける。 |
| 溶剤接着 | ○ | 溶剤で表面を溶解させ強固に接合できる。 | 溶剤過多による白化、ひずみ、残留溶剤、ESC及び作業安全を管理する。 |
| 接着剤接合 | ○ | アクリル、ウレタン、エポキシ、シアノアクリレート等の候補がある。 | 接着剤溶剤、硬化収縮、プライマー、耐熱及び薬品耐久を評価する。 |
| 機械締結 | ○ | ねじ、スナップフィット、リベットを利用できる。 | ボス根元、締付けトルク、クリープ、応力集中及び割れを確認する。 |
| インサート成形 | ○ | 金属部品との一体化が可能である。 | 線膨張差、金属予熱、角部R及び残留応力を管理する。 |
| タッピングねじ | ○ | セルフタッピングが可能である。 | 下穴径、ボス外径、ねじピッチ、締付け速度及び繰返し脱着に注意する。 |
| 塗装 | ○ | 表面処理なしでも密着を得やすい場合がある。 | 芳香族・ケトン・エステル溶剤を避け、プライマーと塗膜応力を確認する。 |
| 印刷 | ◎ | 表面が平滑で印刷適性が高い。 | インキ溶剤、耐摩耗、密着、移行及び食品用途を確認する。 |
| めっき | △ | 特殊エッチング・プライマーで可能である。 | ABSより工程実績が少なく、密着信頼性と環境負荷を確認する。 |
| コロナ・プラズマ処理 | ○ | 濡れ性と接着性を改善できる。 | 処理効果の経時低下、過処理、粉塵及び表面汚染を管理する。 |
| フレーム処理 | △ | 表面酸化により濡れ性を改善できる。 | 熱変形、局部過熱、火災及び処理均一性に注意する。 |
寸法精度・設計特性
| 設計項目 | 一般的傾向 | 設計上の注意 |
|---|---|---|
| 成形収縮 | 比較的小さい | 一般に0.3~0.8%であるが、保圧、ゲート、肉厚及び金型温度の影響を受ける。 |
| 異方性 | 非強化品は小~中 | 流動配向、ゴム粒子変形、共押出層及び充填材で異方性が増す。 |
| 反り | 中 | 肉厚差、片側リブ、偏肉、冷却差及び残留応力で反りを生じる。 |
| 吸湿寸法変化 | 小 | PA等より小さいが、温水、薬品膨潤及び残留応力緩和は別途考慮する。 |
| 熱寸法変化 | 大 | 線膨張係数が金属より大きく、長尺部品、インサート及び温度サイクルで重要である。 |
| クリープ | 注意 | HDT以下でも長期荷重では変形する。温度上昇、応力集中及び薄肉で悪化する。 |
| ウェルド強度 | 母材より低下し得る | 低金型温度、低樹脂温度、ガス巻込み、顔料及び再生材で悪化する。 |
| ノッチ感受性 | 中~高 | 鋭角、切削傷、ゲート跡及びボス根元はRを付ける。 |
| インサート周辺 | 割れ注意 | 金属角部、過大締め代及び熱膨張差による残留応力を抑える。 |
| ねじ締結 | トルク管理が必要 | 座面径を確保し、ワッシャー、トルクリミッタ及びボスRを用いる。 |
| 圧入 | 慎重に設計 | 締め代を小さくし、面取り、圧入速度及び温度を管理する。ESC環境では避ける。 |
| 設計許容応力 | 短時間強度から低減 | 温度、時間、薬品、疲労、成形欠陥、ウェルド及びばらつきを考慮し、安全率を設定する。 |
短時間の引張強さ、曲げ強さ及び衝撃強さを、そのまま長期設計許容応力として使用してはならない。クリープ曲線、疲労、温度依存性、薬品環境、ウェルド、成形ばらつき及び実部品形状を考慮する。
品質・成形不良
| 不良 | 主な原因 | 発生しやすい条件 | 主な対策 |
|---|---|---|---|
| シルバーストリーク | 水分、揮発分、空気巻込み、過熱 | 長期開封材、再生材、高速計量、背圧不足 | 乾燥、供給安定化、背圧・回転数調整、滞留短縮 |
| ガス焼け | 金型内空気の断熱圧縮、樹脂劣化ガス | 高速充填、末端部、ベント不足 | ベント追加、速度多段化、温度低減、型締力適正化 |
| 黒点 | 長時間滞留、デッドスポット、炭化物剥離 | 高温、停止再開、汚れたシリンダー | パージ、滞留短縮、清掃、ノズル・逆止弁点検 |
| 変色・黄変 | 熱酸化、滞留、過せん断、再生材劣化 | 高温、長時間、過大背圧 | 温度低減、回転数低減、安定剤確認、再生材管理 |
| フローマーク | 樹脂温度・金型温度不足、速度変化 | 薄肉、ゲート近傍、長流動 | 温度・速度最適化、ゲート拡大、肉厚均一化 |
| ジェッティング | ゲートからの高速噴流 | 小ゲート、広いキャビティへの直進流入 | 速度初段低下、ゲート位置変更、タブゲート採用 |
| ウェルドライン | 流動前線合流、温度低下、ガス | 多点ゲート、孔周辺、薄肉 | 温度上昇、ベント、ゲート変更、局部肉厚調整 |
| ヒケ | 保圧不足、厚肉、リブ・ボス | 厚肉交差、ゲート凍結が早い | 肉盗み、保圧・時間調整、ゲート拡大、冷却均一化 |
| ボイド | 厚肉中心の収縮、ガス | 厚肉、急冷、保圧伝達不足 | 肉厚低減、保圧、ゲート位置、冷却条件改善 |
| 反り | 収縮差、配向、冷却差、残留応力 | 偏肉、片側リブ、離型温度高い | 均一肉厚、冷却回路改善、保圧・金型温度調整 |
| 離型不良 | 抜き勾配不足、表面粗さ、過大保圧 | 深形状、梨地、真空吸着 | 抜き勾配増加、エジェクタ最適化、保圧低減、型表面調整 |
| バリ | 型締力不足、過大圧力、金型摩耗 | 薄肉高速、PL部、インサート周辺 | 圧力・速度低減、型締力・金型点検、ベント適正化 |
| プレートアウト | 滑剤、難燃剤、低分子成分の析出 | 低温ダイ、長期運転、添加剤過多 | 温度最適化、清掃、配合変更、滞留短縮 |
| ダイライン・メルトフラクチャー | ダイ傷、異物、過大せん断、粘度不適合 | 押出速度過大、フィルター詰まり | ダイ研磨、スクリーン交換、温度・吐出低減、押出グレード選定 |
| 層間剥離 | 異種材混入、汚染、過剰添加剤 | 再生材混合、共押出界面、マスターバッチ不相溶 | 材料分別、乾燥・混練、相溶性確認、混入防止 |
| 臭気・アウトガス | 残留スチレン、熱劣化物、添加剤 | 高温滞留、再生材、換気不足 | 低残留モノマー品、温度低減、脱気、換気、実測 |
注意点
| 劣化現象 | 主な原因 | 発生しやすい条件 | 外観又は性能への影響 | 予防策 | 推奨確認試験 |
|---|---|---|---|---|---|
| 熱酸化劣化 | 高温、酸素、長時間滞留 | 成形機内滞留、照明・家電の発熱部 | 黄変、臭気、黒点、脆化、分子量低下 | 温度・滞留低減、酸化防止剤、換気 | 熱老化、MFR、色差、引張・衝撃保持率 |
| 紫外線劣化 | UV、酸素、熱 | 屋外、窓際、蛍光灯・UV源近傍 | 黄変、退色、チョーキング、表面亀裂、脆化 | 耐候グレード、顔料、UV安定剤、表面保護 | キセノンアーク、屋外暴露、色差、光沢、衝撃保持率 |
| 吸湿・水分 | 吸水、表面付着、結露 | 高湿度保管、温度差、再生材 | シルバー、外観不良、接着不良 | 密封保管、必要時70~80℃乾燥 | 水分測定、実成形試験 |
| 膨潤・溶解 | SP値が近い溶剤の拡散 | 芳香族、ケトン、エステル、塩素系溶剤、リモネン | 軟化、寸法増加、質量増加、表面溶解 | 材料変更、バリア層、接触回避、低応力化 | 実薬品浸漬、質量・寸法・硬度・残存強度 |
| 環境応力割れ | 薬品と引張応力の相乗作用 | ねじ、圧入、曲げ、ウェルド、残留応力+洗剤・油 | クレーズ、白化、亀裂、突然破壊 | 応力低減、R付与、耐ESCグレード、アニール | 定ひずみESC、実部品荷重+実薬品 |
| クリープ破壊 | 長期荷重と温度 | ボス、スナップ、棚、締結、吊下げ | たわみ、締結力低下、亀裂 | 応力低減、肉厚・リブ最適化、低温化、材料変更 | クリープ、応力緩和、実部品長期荷重 |
| 疲労破壊 | 繰返し応力、ノッチ | ヒンジ、振動部、スナップ反復、モーター近傍 | 微小亀裂、白化、破断 | R付与、応力低減、振動隔離、材料変更 | S-N試験、実振動・開閉耐久 |
| 脆化 | UV、熱酸化、低温、再生履歴 | 屋外、低温衝撃、繰返し再生 | 衝撃強度低下、割れ | 耐候・高衝撃品、再生回数管理、温度管理 | 低温衝撃、熱老化後衝撃、GPC・MFR |
| 添加剤ブリード・抽出 | 低分子添加剤の移動 | 高温、油、水、洗剤、長期保管 | べたつき、曇り、印刷・接着低下、溶出 | 低移行配合、適合グレード、温度低減 | 溶出、GC-MS、表面分析、接着性 |
| 顔料退色 | UV、熱、薬品 | 屋外、洗浄、漂白剤、発熱部 | 色差、外観不良 | 耐候顔料、安定剤、遮光 | 促進耐候、薬品拭取り、色差 |
| アウトガス | 残留スチレン、低分子、熱分解物 | 高温、真空、密閉機器、再生材 | 臭気、曇り、光学汚染、接点汚染 | 低VOCグレード、脱揮、温度低減、ベーキング | TML/CVCM、TD-GC-MS、フォギング、臭気 |
| 金属腐食 | 難燃剤分解物、結露、塩分 | 難燃HIPS、湿熱、金属インサート | 錆、接点不良、金型腐食 | 低腐食難燃系、乾燥、材料分離、換気 | 湿熱、金属腐食、イオン抽出 |
| トラッキング | 表面汚染、水分、電圧 | 電気部品、粉塵、結露 | 炭化導電路、絶縁破壊 | CTI適合グレード、沿面距離、清浄設計 | CTI、耐トラッキング、湿熱絶縁 |
| 摩耗粉発生 | 摺動、振動、粗い相手材 | ガイド、搬送、嵌合 | 粉塵、寸法摩耗、汚染 | 摺動材変更、潤滑、面圧低減、表面平滑化 | 摩耗、粉塵量、摩擦係数 |
| 食品・薬液への溶出 | 残留モノマー、添加剤、顔料 | 高温、油脂、長時間接触 | 臭味、規制不適合、物性変化 | 食品適合グレード、接触条件限定、証明書確認 | 総移行、特定移行、官能、実食品試験 |
| 滅菌劣化 | 蒸気、薬品、放射線 | オートクレーブ、過酸化水素、γ線、電子線 | 変色、脆化、変形、臭気 | 適合医療グレード又は材料変更 | 滅菌繰返し、色差、機械特性、溶出 |
推奨確認試験
| 試験 | 推奨条件の例 | 確認項目 |
|---|---|---|
| 実薬品浸漬試験 | 実液、実濃度、使用温度、24h~1000h | 質量、寸法、外観、硬度、引張、衝撃及び回復後物性を測定する。 |
| 環境応力割れ試験 | 実部品又は短冊に0.2~1.0%程度の定ひずみを付与し、薬品接触 | クレーズ発生時間、亀裂長さ、破断時間を記録する。ひずみ値は用途に合わせる。 |
| 高温高湿試験 | 例:60~85℃、85%RH、500~1000h | 色、寸法、絶縁、接着、金属腐食及び臭気を確認する。 |
| 熱老化試験 | 使用温度+10~30℃、250~2000h | 色差、MFR、引張、衝撃及び臭気の保持率を評価する。 |
| 紫外線促進耐候試験 | キセノン又はUV、散水サイクル、用途相当照射量 | 色差、光沢、チョーキング及び衝撃保持率を確認する。 |
| ヒートサイクル試験 | 例:-20~70℃、100~500サイクル | 反り、嵌合、インサート周辺亀裂及び接着界面を確認する。 |
| クリープ試験 | 実使用温度、設計応力、1000h以上を推奨 | 変位、応力緩和、破断及び回復を測定する。 |
| 疲労試験 | 実荷重波形、応力比、周波数、105~107回 | ノッチ、ウェルド、低温及び薬品併用を必要に応じて評価する。 |
| 摩耗試験 | 実相手材、面圧、速度、温度、無潤滑又は実潤滑 | 摩擦係数、比摩耗量、摩耗粉及び発熱を測定する。 |
| 溶着・接着強度試験 | 実工程直後及び熱・湿熱・薬品老化後 | 引張せん断、剥離、気密及び破壊位置を確認する。 |
| 難燃性試験 | 実グレード、色、最小肉厚 | UL 94、GWFI/GWIT又は用途規格を確認する。 |
| 溶出・食品接触試験 | 実食品模擬物、温度、時間及び繰返し | 総移行、特定移行、臭味及び外観を評価する。 |
| アウトガス試験 | 実使用温度又は真空、24~168h | TML、CVCM、GC-MS、フォギング及び接点汚染を確認する。 |
| 実成形・実部品耐久試験 | 量産金型、実成形条件、最悪条件ロット | ウェルド、残留応力、寸法、組立、落下、薬品及び寿命を総合確認する。 |
法規制・認証
| 規制・認証 | 一般的な位置付け | 確認事項 |
|---|---|---|
| RoHS | 一般に対応可能 | ポリマー骨格だけで適合を断定しない。顔料、難燃剤、安定剤及び再生材を含む個別グレードの証明書を確認する。 |
| REACH・SVHC | 一般に対応可能 | SVHC含有、成形品義務、供給者情報及び改定時点を個別に確認する。 |
| ELV | 自動車用途で適合グレードを選定 | 重金属、難燃剤、顔料及び再生材由来成分を確認する。 |
| PFAS関連規制 | 標準HIPS骨格はフッ素を含まない | 離型剤、加工助剤、難燃助剤、コーティング等の意図的添加は個別確認が必要である。 |
| TSCA | 米国向けは供給者確認 | 化学物質インベントリ、用途制限及び輸入者責任を確認する。 |
| Proposition 65 | 個別評価 | 残留スチレン、添加剤、顔料及び不純物について用途・曝露評価を行う。 |
| EU食品接触規則 | 適合グレードが存在する | EU 10/2011等の対象、食品種、温度、時間、移行試験及びDoCを確認する。 |
| FDA食品接触 | 適合グレードが存在する | 米国では用途に応じて21 CFR 177.1640等の該当性と供給者のFood Contact Declarationを確認する。 |
| 日本の食品衛生法・ポジティブリスト | 適合グレードが存在する | 基ポリマー、添加剤、使用温度区分、食品区分及び事業者証明を確認する。 |
| USP Class VI・ISO 10993 | 一般HIPSに一律適用不可 | 医療管理グレードの試験、変更管理、滅菌耐久及び抽出物評価が必要である。 |
| UL認証 | 認証グレードが存在する | UL 94、RTI、CTI、厚さ、色、製造拠点及びYellow Cardを確認する。 |
| IEC関連規格 | 用途ごとに確認 | グローワイヤ、ボールプレッシャー、絶縁、沿面距離等を部品と材料の両面で確認する。 |
| 自動車材料規格 | 個別承認が必要 | 燃焼、VOC、フォギング、耐候、薬品、臭気及びOEM規格を確認する。 |
| 鉄道・航空宇宙 | 一般HIPSは用途限定 | 煙、毒性、難燃、熱及びトレーサビリティ要件を満たす専用品でなければ採用しにくい。 |
| ハロゲンフリー | 標準HIPS骨格はハロゲンなし | 難燃剤、顔料及び添加剤を含む規格定義と分析証明を確認する。 |
| リサイクル表示 | PS系として識別コード6が一般的 | 地域制度、成形品構成、ラベル、接着剤及び多層材により分別性が変わる。 |
| ISCC PLUS等 | 認証製品が存在する可能性 | マスバランス又は再生原料含有の主張は、メーカー、製造拠点及び証明書を確認する。 |
規制適合は、メーカー、グレード、色、添加剤、製造拠点、用途、使用温度、接触時間及び法令改定時点によって異なる。「一般に対応可能」「適合グレードが存在する」「当該グレードが認証済み」を区別し、最新版の証明書を確認する。
環境・リサイクル性
| 項目 | 評価 | 内容 |
|---|---|---|
| 樹脂区分 | 熱可塑性樹脂 | 再溶融成形が可能である。熱履歴と汚染により物性が低下する。 |
| マテリアルリサイクル | ○ | 単一材で分別されたHIPSは粉砕・再ペレット化できる。衝撃強度、色、臭気、MFR及び異物を管理する。 |
| ケミカルリサイクル | 開発・実用化例あり | 熱分解又は解重合によりスチレン系原料を回収する技術がある。設備、純度、収率及び経済性に依存する。 |
| サーマルリサイクル | 可能 | 発熱量は高いが、完全燃焼、排ガス処理及び地域制度に従う。 |
| 再生材利用 | 可能 | PIRは比較的管理しやすい。PCRは異物、臭気、難燃剤、食品由来汚染及びロット差を確認する。 |
| 再生材使用時の低下 | 衝撃、伸び、色、臭気、外観 | 熱酸化、分子量低下、ゴム相劣化及び異材混入が主因となる。 |
| 識別表示 | PS、樹脂識別コード6 | HIPS専用コードではない。多層・複合品は分別表示を検討する。 |
| バイオベース材 | 限定的 | マスバランス又はバイオ由来スチレンの製品主張は個別認証を確認する。 |
| 生分解性 | なし | 通常のHIPSは生分解性プラスチックではない。 |
| コンポスト適合 | なし | 工業・家庭コンポスト材料として扱わない。 |
| 焼却時の注意 | 燃焼性・発煙 | 標準骨格はCとHが主体であるが、難燃剤、顔料及び添加剤由来成分は個別確認する。 |
| LCA上の特徴 | 低密度・低温加工・低価格 | 材料使用量削減、薄肉化、再生材含有及び単一材設計で改善可能である。製品寿命と回収系を含めて評価する。 |
価格・供給性
| 項目 | 評価・供給形態 | 内容 |
|---|---|---|
| 相対価格 | 比較的低価格 | GPPSより改質費分高い場合があるが、ABS、PC、ASA等より一般に低価格である。市況、ゴム価格、色及び難燃仕様で変動する。 |
| 汎用的な流通性 | 高い | 国内外に複数メーカーがあり、射出・押出・熱成形用の選択肢が多い。 |
| 国内入手性 | 高い | 国内メーカー品、輸入品及びコンパウンド品が流通する。 |
| 少量購入 | 比較的容易 | 板・シート・フィラメントは小口購入しやすい。ペレットの特殊色・特殊グレードはMOQが大きい場合がある。 |
| 供給形態 | ペレット、再生ペレット、シート、板、フィルム、発泡シート、3Dプリントフィラメント | 押出用と射出用を混同しない。 |
| 特注色・特注グレード | 対応可能 | 色、難燃、耐候、帯電防止及び再生材比率では試作量、MOQ、納期及び変更管理を確認する。 |
| 価格変動要因 | スチレン、ブタジエン、エネルギー、物流、難燃剤、為替 | 実価格は購入量、地域、契約、色及び規格で大きく変わるため、相対評価として扱う。 |
用途別選定
| 用途 | 適性 | 理由 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| ギア | △ | 低荷重・低速の軽 duty用途に限る。 | 摩耗、クリープ、歯元疲労、潤滑油によるESCを確認する。 |
| 軸受・ブッシュ | × | 標準HIPSは摺動・耐摩耗材料ではない。 | POM、PA、UHMWPE等を優先する。 |
| ローラー | △ | 軽荷重・非精密用途では可能である。 | 摩耗、偏平、クリープ、帯電及び薬品を確認する。 |
| 摺動板 | × | 摩擦・摩耗・発熱に弱い。 | 摺動専用材料を選定する。 |
| ねじ・ボルト・ナット | △ | 軽荷重の樹脂締結部品では可能である。 | クリープ、締付けトルク、繰返し使用及び薬品ESCを確認する。 |
| ポンプ部品 | × | 耐薬品性、耐熱、クリープ及び摩耗が不足しやすい。 | 水の低圧カバー等を除き、PP、POM、PBT、PPS等を検討する。 |
| バルブ部品 | × | 圧力、薬品、シール性及び長期クリープに不利である。 | 実流体と圧力条件で材料変更を検討する。 |
| シール・ガスケット・Oリング | × | 剛性樹脂であり弾性シール用途に適さない。 | エラストマーを選定する。 |
| チューブ・ホース・配管 | × | 柔軟性、耐圧、耐薬品及び溶着信頼性が不足しやすい。 | 専用押出グレードの特殊用途を除く。 |
| タンク | △ | 低温・非溶剤・低応力の小型容器では可能性がある。 | ESC、耐熱、接合、長期荷重及び内容物透過を確認する。 |
| フィルム | △ | 薄膜よりシート用途が中心である。 | 引裂き、折曲げ、ピンホール及びインフレーション安定性に注意する。 |
| シート | ◎ | HIPSの代表用途であり、押出・熱成形性が高い。 | 厚み、残留応力、油脂、印刷溶剤及び再生材を管理する。 |
| ボトル | △ | 特殊ブローグレードでは可能である。 | 溶融張力、耐落下、内容物耐性及びシールを確認する。 |
| 容器 | ◎ | 食品・日用品・工業包装に広く使用される。 | 食品適合、油脂ESC、耐熱、落下及び蓋嵌合を確認する。 |
| 電気コネクタ・ソケット | △ | 低温・低荷重の一般部品では可能である。 | 耐熱、難燃、CTI、端子保持、はんだ熱及びクリープでPBT等が有利である。 |
| 絶縁部品 | ○ | 電気絶縁性と成形性は良い。 | 難燃、RTI、CTI、沿面距離及び温度を確認する。 |
| 電子部品筐体 | ○ | 低価格、外観、衝撃及び難燃グレードを活用できる。 | 熱、難燃、EMI、帯電、VOC及び溶剤清掃を確認する。 |
| 一般筐体 | ◎ | HIPSの代表用途である。 | 剛性、ボス、ねじ、落下、耐候及び清掃薬品を確認する。 |
| 透明カバー・レンズ | × | 標準HIPSは不透明である。 | GPPS、PMMA、PC又は透明耐衝撃PSを検討する。 |
| 自動車内装 | △ | 非構造・低温度部の一部で使用可能である。 | VOC、フォギング、耐熱、耐候、薬品及びOEM規格を確認する。 |
| 自動車外装 | × | 耐候性、耐熱及び塗装耐久が不足しやすい。 | ASA、AES、PC/ABS等を検討する。 |
| エンジンルーム・燃料系 | × | 高温、油、燃料、振動及び難燃要求に不適である。 | 高耐熱エンプラを選定する。 |
| 食品機械部品 | △ | 低荷重のカバー・トレーでは可能である。 | 食品適合、洗浄剤、温水、摩耗、破片及び衛生設計を確認する。 |
| 医療機器部品 | △ | 外装・非侵襲部の一部に限る。 | 医療グレード、変更管理、滅菌、溶出及び生体適合を確認する。 |
| 滅菌部品 | × | 蒸気・高温滅菌に耐えにくい。 | 滅菌方法と寿命に合うPC、PP、PPSU等を検討する。 |
| 半導体製造装置部品 | × | アウトガス、耐薬品、耐熱、帯電及び清浄性が不足しやすい。 | クリーン用途専用材料を選定する。 |
| 真空装置部品 | △ | 低真空・非汚染要求のカバー等では可能である。 | アウトガス、残留モノマー、寸法、熱及び放電を評価する。 |
| 建築部材 | △ | 内装・装飾・表示用途では可能である。 | 火災規格、耐候、熱変形、VOC及び長期荷重を確認する。 |
| 屋外部品 | △ | 耐候グレード・塗装・顔料で限定的に対応可能である。 | 長期ではASA、AES等が有利な場合が多い。 |
| 接着剤・塗料・コーティング | × | HIPSは通常、成形材料でありバインダー用途ではない。 | 溶液化用途はPS系樹脂として別設計・法規制確認が必要である。 |
| 複合材料マトリックス | △ | 短繊維・無機充填コンパウンドは可能である。 | 高性能構造複合材の主流ではなく、界面、衝撃、異方性及び耐熱を確認する。 |
用途別評価は材料群としての一般的な適性である。実使用では、グレード、荷重、温度、薬品、湿度、寿命、法規制、試験片形状及び成形条件を確認する。
関連材料との比較
| 比較材料 | 特徴 | HIPSとの違い | 主な選定ポイント |
|---|---|---|---|
| 一般用ポリスチレン(GPPS) | 透明性、剛性、光沢、低価格 | HIPSはゴム変性により衝撃性が高いが、透明性、剛性及び表面硬度は低い。 | 透明容器・光学外観はGPPS、割れにくさ・熱成形はHIPS。 |
| ABS樹脂 | 耐衝撃、剛性、外観、塗装・めっき | ABSは機械特性、耐熱、表面品位及びめっき性で有利な場合が多い。HIPSは低価格で熱成形性が良い。 | 高性能筐体はABS、低コスト容器・シートはHIPS。 |
| AS樹脂(SAN) | 透明性、剛性、耐薬品性 | ASは透明・高剛性で耐油性が改善するが、耐衝撃性はHIPSより低い場合がある。 | 透明性・剛性はAS、落下衝撃はHIPS。 |
| ASA樹脂 | 耐候性、外観、耐衝撃性 | ASAは屋外耐候性が大幅に優れ、HIPSは低価格と熱成形性で有利である。 | 屋外外装はASA、屋内低コスト用途はHIPS。 |
| ポリプロピレン | 低密度、耐薬品性、疲労特性 | PPは軽量・耐薬品性に優れる。HIPSは剛性感、印刷性、接着性及び真空成形性に優れる場合がある。 | 薬品・ヒンジはPP、印刷シート・外観はHIPS。 |
| ポリカーボネート | 高耐衝撃、透明性、耐熱性 | PCは耐衝撃・耐熱で大幅に優れるが、高価格で乾燥管理が必要である。HIPSは低コストで成形しやすい。 | 安全・高耐熱はPC、一般筐体・容器はHIPS。 |
| アクリル樹脂(PMMA) | 高透明、耐候、表面硬度 | PMMAは透明性・耐候性・硬度に優れ、HIPSは不透明だが衝撃性と低価格で有利である。 | 透明外装はPMMA、不透明量産部品はHIPS。 |
| 変性ポリフェニレンエーテル | 耐熱、寸法安定、電気特性 | PPE/HIPS系アロイはHIPS単体より耐熱・寸法安定性が高いが、価格と成形温度が上がる。 | 耐熱電気部品は変性PPE、低温一般用途はHIPS。 |
比較用評価スコア
| 評価項目 | スコア(0~5) | 評価理由 |
|---|---|---|
| 引張強度 | 2 | 汎用樹脂としては中低水準であり、高衝撃化により剛性・強度が低下する場合がある。 |
| 剛性 | 3 | 標準HIPSは実用剛性を持つが、GPPS、SAN及びGF材より低い。 |
| 衝撃強度 | 4 | GPPSより大幅に高く、汎用樹脂として優れる。PCや高性能ABSには及ばない場合がある。 |
| 耐熱性 | 2 | HDT 1.8MPaは概ね65~80℃であり、高温連続用途には不向きである。 |
| 低温特性 | 3 | GPPSより改善するが、ゴム設計、ノッチ及び温度に強く依存する。 |
| 耐薬品性 | 2 | 水・希酸・希アルカリには比較的良好だが、多くの有機溶剤と油脂ESCに弱い。 |
| 耐候性 | 2 | 無安定品はUVで黄変・脆化しやすい。耐候グレードでもASA等に劣る場合が多い。 |
| 耐加水分解性 | 4 | 加水分解性官能基を主鎖に持たず、常温水では安定である。ただし熱変形は別問題である。 |
| 寸法安定性 | 3 | 低吸水・低収縮で比較的良いが、熱膨張とクリープに注意する。 |
| 低吸水性 | 5 | 24h吸水率が低く、通常は乾燥管理負担が小さい。 |
| 摺動性 | 1 | 標準HIPSは低摩擦・耐摩耗材料ではない。 |
| 耐摩耗性 | 1 | 摺動部では摩耗粉、発熱及び寸法摩耗が問題となる。 |
| 電気絶縁性 | 4 | 体積抵抗率が高く、乾燥状態の絶縁性は良い。耐熱・CTI・難燃は個別確認が必要である。 |
| 難燃性 | 1 | 標準品は燃えやすくHB例が多い。難燃グレードは別評価とする。 |
| 透明性 | 1 | 通常HIPSは不透明である。透明耐衝撃PSは別グレード群である。 |
| 成形加工性 | 5 | 射出、押出シート及び真空成形に非常に適する。 |
| 切削加工性 | 4 | 板材を加工しやすいが、発熱、バリ及び応力白化に注意する。 |
| 接着性 | 4 | PS系溶剤接着及び各種接着剤を利用しやすい。ただし溶剤ESCに注意する。 |
| リサイクル性 | 4 | 熱可塑性で再溶融可能であり、PS系の機械・ケミカルリサイクル候補となる。分別品質が重要である。 |
| 価格優位性 | 5 | 汎用樹脂として比較的低価格で、供給性も高い。 |
スコアは5が非常に優れる、4が優れる、3が標準的、2がやや劣る、1が劣る、0が評価不能又はデータなしを示す。特定グレードの最高性能ではなく、非強化標準HIPSの一般的傾向を評価したものである。
代表的なメーカー
| メーカー | 代表製品・ブランド | 概要 |
|---|---|---|
| PSジャパン株式会社 | PSJ-POLYSTYRENE HIPS | 高流動、高衝撃、高剛性、高光沢、耐油、押出等の国内向け代表グレード群を展開する。 |
| 東洋スチレン株式会社 | TOYO STYRENE HIPS | 射出、押出シート、高光沢、高流動、高強度、耐熱等のHIPSグレードを展開する。 |
| INEOS Styrolution | Styrolution PS HIPS | 包装、家電、シート及び射出用途向けの耐衝撃ポリスチレンを世界展開する。 |
| Trinseo | STYRON HIPS、STYRON A-TECH、C-TECH、X-TECH | 靭性、光沢、剛性、加工性及び包装・家電用途を重視したHIPS群を展開する。 |
| CHIMEI Corporation | POLYREX PS / HIPS | 家電筐体、食品・水接触、玩具、建材等のPS系材料を展開する。 |
| Formosa Chemicals & Fibre Corporation | TAIRIREX HIPS | 高衝撃、高流動、高光沢、押出及び家電用途向けHIPSを展開する。 |
| LG Chem | Polystyrene GPPS / HIPS | 家電、日用品、文具、容器等に用いるPS系材料を展開する。 |
製品名、供給地域、グレード構成、認証及び販売状況は変更される場合がある。採用時にはメーカー又は正規販売先の最新版TDS、SDS、規制証明書及び供給条件を確認する。
関連キーワード
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