概要
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 材料名 | テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体 |
| 略記号 | FEP |
| IUPAC | 高分子のため一意の低分子IUPAC名では表しにくい。代表的にはpoly(tetrafluoroethene-co-hexafluoropropene)と表記される。 |
| 英語名 | Fluorinated Ethylene Propylene / Tetrafluoroethylene-Hexafluoropropylene Copolymer |
| 日本語名 | テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体、四フッ化エチレン・六フッ化プロピレン共重合体、FEP樹脂、フッ素化エチレンプロピレン共重合体 |
| 分類 | フッ素樹脂、結晶性熱可塑性樹脂、溶融成形可能な完全フッ素化共重合体 |
| プラスチック分類 | スーパーエンジニアリング・プラスチック又は高機能フッ素系熱可塑性樹脂として扱われる。分類体系により呼称は異なる。 |
| 化学式又は代表構造 | −[CF2−CF2]m−[CF2−CF(CF3)]n− |
| CAS No. | 25067-11-2 |
| 構造・主成分 | テトラフルオロエチレン(TFE)単位とヘキサフルオロプロピレン(HFP)単位からなる統計共重合体である。HFP由来のCF3側鎖が結晶性と融点を下げる。 |
| 主な用途 | 電線・高周波ケーブル被覆、チューブ、フィルム、熱収縮チューブ、離型フィルム、ライニング、粉体塗装、薬液搬送部材、半導体・分析機器部品 |
| 代表的な供給形態 | ペレット、粉末、ディスパージョン、フィルム、チューブ、シート、成形品、コーティング材料 |
テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体は、一般にFEPと略記される溶融成形可能なフッ素樹脂である。ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)に近い耐薬品性、低吸水性、電気絶縁性、非粘着性及び耐候性を持ちながら、PTFEより融点と溶融粘度が低く、通常の押出成形、電線被覆、フィルム成形及び射出成形へ適用できる点が最大の特徴である。
FEPは炭素主鎖の周囲がフッ素原子で覆われた低極性構造を持つため、多くの酸、アルカリ、溶剤、油及び燃料に対して高い耐性を示す。誘電率と誘電正接が低く、周波数依存性も比較的小さいため、通信ケーブル、高周波絶縁、電子部品周辺の絶縁材料として使用される。また、薄肉品では半透明から透明性を示し、流体確認用チューブや離型フィルムにも適する。
一方で、FEPは高剛性樹脂ではなく、荷重下のクリープ、傷付き、摩耗、成形収縮、ガス透過及び高温での変形に注意が必要である。連続使用温度は一般に約200℃が目安であり、260℃級の用途ではPFA又はPTFEが有利となる場合が多い。実使用ではグレード、成形履歴、温度、薬品濃度、荷重、残留応力、接触時間、純度要求及び法規制を確認する必要がある。
特徴
長所
- 強酸、強アルカリ、多くの有機溶剤、油及び燃料に対する耐薬品性が非常に高い。
- PTFEに近い非粘着性、低摩擦性、撥水性及び撥油性を持つ。
- 溶融成形が可能であり、電線被覆、チューブ、フィルム及び射出部品へ加工できる。
- 吸水率が極めて低く、湿度による寸法及び電気特性の変化が小さい。
- 誘電率と誘電正接が低く、高周波絶縁材料に適する。
- 耐候性、耐紫外線性、耐オゾン性及び低温柔軟性に優れる。
- 難燃性が高く、低発煙性を示すグレードが多い。
- 薄肉フィルム及びチューブでは内部を確認できる程度の透明性を得やすい。
短所
- 剛性、圧縮強さ、耐摩耗性及び耐クリープ性は、高剛性エンプラやETFEより低い。
- 高温荷重下ではコールドフロー及び永久変形を生じやすい。
- 表面エネルギーが低いため、未処理状態では接着、印刷、塗装及びめっきが難しい。
- 成形温度が高く、設備の耐食性、滞留、局所過熱及び排気管理が必要である。
- 成形収縮が比較的大きく、肉厚差、流動方向及び冷却条件により反りが生じる場合がある。
- 放射線により主鎖切断が進みやすく、放射線滅菌や高線量環境には一般に不向きである。
- 材料価格は汎用樹脂や多くのエンプラより高い。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 外観 | 自然色は半透明から透明感のある乳白色である。厚肉品は白濁しやすく、フィルム及び薄肉チューブは比較的透明である。顔料、カーボン及びフィラーにより外観は変化する。 |
| 耐熱性 | 融点はグレードにより約255〜270℃、連続使用温度は低荷重条件で約200℃が代表的目安である。荷重、薬液、肉厚及び寿命要求により許容温度は低下する。 |
| 耐薬品性 | 一般的な酸、アルカリ、溶剤及び油に対して非常に良好である。ただし、溶融アルカリ金属、高温の元素フッ素、三フッ化塩素等の強力な反応性物質には使用できない。 |
| 加工性 | 押出成形、電線被覆、ブロー又はキャストフィルム、射出成形、圧縮成形、トランスファー成形及び熱融着が可能である。PTFEより大幅に加工しやすい。 |
| 電気特性 | 比誘電率は約2.0〜2.1、誘電正接は非常に小さく、吸湿による変化も小さい。薄肉絶縁ではピンホール、異物、導体偏心及び発泡条件が重要である。 |
| 難燃性 | 限界酸素指数は代表的に95%超であり、V-0相当を示すグレードがある。ただしUL認証はグレード、色及び試験片厚さごとに確認する。 |
| 分類上の注意 | 日本の電設分野で「FEP管」はFlexible Electric Pipeの略として波付硬質ポリエチレン管を指す場合がある。本ページのFEP樹脂とは別物であるため、図面、仕様書及び購買名称で区別する。 |
構造式
FEPはTFE単位とHFP単位からなる統計共重合体である。HFP単位のCF3側鎖がPTFEの規則的な結晶配列を乱し、融点及び溶融粘度を低下させる。これにより、完全フッ素化構造に由来する耐薬品性及び電気特性を維持しながら、溶融成形性を付与している。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 代表的な共重合反応 | m CF2=CF2 + n CF2=CF−CF3 → −[CF2−CF2]m−[CF2−CF(CF3)]n− |
| TFE構成単位 | −CF2−CF2−。化学的安定性、低極性、低吸水性及び電気絶縁性に寄与する。 |
| HFP構成単位 | −CF2−CF(CF3)−。CF3側鎖により結晶性、融点及び溶融粘度を低下させる。 |
| モノマー | テトラフルオロエチレン(TFE、CF2=CF2)及びヘキサフルオロプロピレン(HFP、CF2=CF−CF3) |
| 共重合組成 | HFP含有量はグレード及び測定方法により異なり、分子量、融点、MFR、耐ストレスクラック性及び透明性の調整に用いられる。単一の固定組成ではない。 |
| 変性グレード | 末端基安定化、高流動化、高分子量化、耐ストレスクラック改良、導電化、発泡及びフィラー配合等がある。改質方法により純度、電気特性及び耐薬品性が変化する。 |
FEPのC−F結合は非常に強いが、材料性能は結合エネルギーだけでは決まらない。結晶化度、共重合組成、分子量分布、末端基、成形温度、冷却速度、残留応力及び欠陥の有無が、機械特性、透過性、応力割れ及び長期耐久性に影響する。
種類
| 種類の名称 | 主成分又は特徴 | 長所 | 短所 | 主な用途 |
|---|---|---|---|---|
| 非強化・標準グレード | 無充填FEPペレット。中程度のMFR。 | 耐薬品性、透明性、電気特性及び加工性のバランスが良い。 | 高温荷重下の剛性及びクリープに注意する。 | 一般チューブ、フィルム、射出部品、電線被覆 |
| 高粘度・耐ストレスクラックグレード | 高分子量、低MFR。 | 厚肉チューブ、シート及び長期曲げ用途で割れにくい。 | 押出圧力が高く、薄肉高速成形には不利である。 | 厚肉チューブ、薬液配管、シート、ライニング |
| 高流動グレード | 高MFR、薄肉成形向け。 | 細線被覆、薄肉部品及び高速押出に適する。 | 耐ストレスクラック性及び溶融強度を個別確認する。 | LANケーブル、細径電線、薄肉射出品 |
| 電線・高周波ケーブルグレード | 低誘電損失、押出安定性、導体密着性を調整。 | 高速被覆、発泡絶縁及び薄肉絶縁に適する。 | 異物、ゲル、導体偏心及び熱履歴の管理が厳しい。 | 通信ケーブル、同軸ケーブル、航空宇宙配線 |
| フィルムグレード | キャスト又はブロー成形に適した溶融強度。 | 透明性、離型性、耐候性及び熱融着性に優れる。 | 剛性、耐引裂き及びしわ管理に注意する。 | 離型フィルム、ラミネート、保護膜、バッグ |
| 粉体コーティンググレード | 粒度及び流動性を調整したFEP粉末。 | 比較的平滑で連続した耐食皮膜を形成しやすい。 | 下地処理、膜厚、焼成、ピンホール及び熱膨張差が重要である。 | 化学装置ライニング、バルブ、配管、容器 |
| 水分散液グレード | FEP微粒子を水系に分散。 | 含浸、薄膜塗工及び複雑形状への施工が可能である。 | 界面活性剤、乾燥、焼成、排気及び残留物の管理が必要である。 | ガラスクロス含浸、離型コート、複合膜 |
| 導電・帯電防止グレード | カーボンブラック、炭素系フィラー等を配合。 | 静電気拡散又は導電性を付与できる。 | 透明性、絶縁性、純度及び母材本来の耐薬品性が低下する場合がある。 | 半導体薬液チューブ、静電気対策部品 |
| GF・CF強化カスタムグレード | ガラス繊維又は炭素繊維を配合した特殊コンパウンド。 | 剛性、寸法安定性、耐クリープ又は導電性を改善できる。 | 一般流通が限定的で、繊維含有率及び公開物性はメーカー個別である。 | 特殊機械部品、支持部材、静電気対策品 |
| 食品接触用途向けグレード | 低溶出、色材及び添加剤を用途規格に合わせたグレード。 | 食品機械、包装及び流体接触部材へ適用可能である。 | FDA、EU食品接触、日本の食品衛生法等は個別証明書の確認が必要である。 | 食品機械チューブ、シート、離型部材 |
| 医療用途向けグレード | 生体適合性又は製造管理を個別評価したグレード。 | 低吸着、耐薬品性及び透明性を利用できる。 | 一般工業用FEPを医療用途へ自動的に転用できない。滅菌法と溶出評価が必要である。 | カテーテル関連部材、分析・診断機器、流路 |
成形加工
| 加工方法 | 適性 | 理由・特徴 | 主な注意点 |
|---|---|---|---|
| 射出成形 | ○ | 小型継手、絶縁部品及び複雑形状品に適用できる。 | 高い樹脂温度、金型温度、滞留及びガス抜きを管理する。 |
| 押出成形 | ◎ | チューブ、電線被覆、ロッド及びシートの主加工法である。 | 耐食材質の流路、均一加熱、溶融ろ過及びダイス温度管理が重要である。 |
| ブロー成形 | △ | 特殊容器又は中空品で適用例がある。 | 溶融強度と肉厚均一性の確保が難しく、一般的ではない。 |
| インフレーション成形 | ○ | 薄膜及びバッグ状フィルムに使用される。 | バブル安定、冷却及びしわ管理が必要である。 |
| Tダイフィルム成形 | ◎ | 透明フィルム、離型フィルム及びラミネートに適する。 | ダイリップ汚れ、ゲル、厚み偏差及び冷却条件を管理する。 |
| 真空成形 | △ | 薄いFEPシートの二次成形に適用できる。 | 成形窓が狭く、加熱均一性、戻り及び肉厚減少に注意する。 |
| 圧空成形 | △ | 真空成形より形状転写を改善できる。 | 高温設備、離型及び収縮管理が必要である。 |
| 圧縮成形 | ○ | 厚肉板、プリフォーム及び特殊形状に適用できる。 | 温度均一性、ボイド及び長い冷却時間に注意する。 |
| トランスファー成形 | ○ | ライニング部品や複雑形状の被覆に使用される。 | 流動経路、ウェルド及び熱履歴を管理する。 |
| 回転成形 | △ | 粉末を用いた中空ライニングに適用例がある。 | 粒度、溶融融合、膜厚及びピンホール管理が難しい。 |
| 発泡成形 | ○ | 高周波ケーブルの発泡絶縁に使用される。 | 核剤、窒素等の発泡ガス、セル径及び誘電特性を管理する。 |
| 3Dプリント | △ | 研究・特殊用途でフィラメント又はペレット方式が検討される。 | 高温化、反り、層間接着及び装置耐食性の制約が大きい。 |
| 切削加工 | ○ | 板、丸棒及び成形品の仕上げ加工が可能である。 | 柔軟で逃げやすく、クランプ変形、発熱及びバリに注意する。 |
| 熱風溶着 | ○ | シート及びライニングの接合に適する。 | 表面清浄度、溶着温度及び圧力を管理する。 |
| 熱板溶着 | ○ | 板、チューブ及び部品接合に使用できる。 | 溶融層の過熱、変形及び接合面汚染を防ぐ。 |
| 超音波溶着 | △ | 小型部品で可能な場合がある。 | 低弾性率と低摩擦によりエネルギー伝達が不安定になりやすい。 |
| レーザー溶着 | △ | 吸収層を設計した特殊構成で適用可能である。 | 自然色FEPの透過性、吸収材及び熱影響を個別設計する。 |
| 接着剤接合 | △ | 表面処理と専用プライマーにより可能である。 | 未処理表面では接着強度が非常に低い。薬液耐久性も確認する。 |
| 塗装・印刷 | △ | コロナ、プラズマ又は化学処理後に可能である。 | 表面処理効果の経時低下とインキ密着を確認する。 |
| めっき | × | 一般的な湿式めっきには不向きである。 | 特殊表面改質及びシード層なしでは密着しにくい。 |
| インサート成形 | ○ | 金属又は他樹脂部品の被覆に適用できる。 | 熱膨張差、界面密着、アンダーカット及び金属腐食を考慮する。 |
代表的な成形条件
| 項目 | 代表値・目安 | 備考 |
|---|---|---|
| 予備乾燥 | 通常は不要 | FEP自体の吸水は極めて小さいが、結露、包装開封後の汚染又は導電フィラー配合品では乾燥を検討する。 |
| 推奨乾燥温度 | 100〜150℃ | 必要時の一般的目安である。メーカー指定を優先し、過熱及び異物付着を避ける。 |
| 推奨乾燥時間 | 2〜4h | 樹脂温度、層厚、除湿能力及び包装状態により調整する。 |
| 許容含水率 | グレード依存 | 吸水よりも表面水分、凝縮水及び異物が外観・電気特性へ影響する。 |
| シリンダー温度・供給部 | 300〜340℃ | ブリッジ、供給不良及び局所過熱を避ける。 |
| シリンダー温度・圧縮部 | 330〜380℃ | グレードのMFR及び成形法により調整する。 |
| シリンダー温度・計量部 | 350〜400℃ | 高流動グレードでは低めに設定できる場合がある。長時間滞留を避ける。 |
| ノズル・ダイ温度 | 350〜400℃ | 冷え詰まり、メルトフラクチャー及び焼けを防ぐ。 |
| 樹脂温度 | 約350〜400℃ | 代表的目安であり、対象グレードの加工資料に従う。 |
| 金型温度 | 100〜200℃ | 表面転写、ウェルド強度、結晶化及び収縮へ影響する。 |
| 射出圧力 | 50〜120MPa | 流動長、ゲート、肉厚及びMFRにより大きく変化する。 |
| 保圧 | 30〜80MPa | 過大保圧は残留応力、バリ及び変形の原因となる。 |
| 背圧 | 低〜中 | 混練及び計量安定に必要な最小限とし、過度なせん断発熱を避ける。 |
| 射出速度 | 中〜高速 | 薄肉品では高速が有利だが、ガス焼け及びジェッティングを確認する。 |
| スクリュー回転数 | 低〜中速 | 過度なせん断、樹脂温度上昇及び分解を避ける。 |
| 滞留時間 | 短く管理 | 高温滞留は変色、ガス、分解物、腐食及び黒点の原因となる。停止時はメーカー推奨のパージを行う。 |
| 成形収縮率・流動方向 | 約2.5〜5.0% | 肉厚、金型温度、保圧、冷却速度及び結晶化度により変化する。 |
| 成形収縮率・流動直角方向 | 約2.5〜5.0% | 流動方向差は無充填FEPでは比較的小さいが、形状及び冷却差で反りが生じる。 |
| 推奨肉厚 | 0.5〜4mm程度 | 用途と成形法により異なる。厚肉部はボイド及び冷却時間に注意する。 |
| 抜き勾配 | 0.5〜2°以上 | 低摩擦で離型しやすいが、収縮及び表面傷を考慮する。 |
| アニール | 必要に応じて実施 | 高寸法精度、薬液応力及び溶着品では残留応力低減のため検討する。 |
| 設備材質 | 耐食合金を推奨 | ニッケル基合金等が用いられる。通常鋼の腐食、メッキ剥離及び金属汚染を避ける。 |
| 換気 | 局所排気必須 | 高温加工時のヒュームを作業域から完全に排気する。喫煙物の汚染を防止する。 |
接合・表面処理適性
| 接合・処理方法 | 適性 | 特徴 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 熱板・熱風・押出溶着 | ○ | FEP同士は溶融接合できる。 | 溶着温度、清浄度、圧力、ビード形状及び冷却収縮を管理する。 |
| 溶剤接着 | × | 一般溶剤に溶けにくく、溶剤接着は実用的でない。 | 特殊薬品による表面処理は安全性及び廃液管理が必要である。 |
| 接着剤接合 | △ | ナトリウム系エッチング、プラズマ、コロナ等の前処理で改善できる。 | 処理面の保管時間、薬品耐久性及び界面剥離を確認する。 |
| 機械締結 | ○ | ボルト、クランプ及びフランジ接合が可能である。 | クリープによる締付力低下を考慮し、座面、ばね座金又は再締結を検討する。 |
| タッピングねじ | △ | 低荷重用途で可能である。 | ねじ山のクリープ、割れ及び引抜き強度を実測する。 |
| コロナ・プラズマ処理 | ○ | 印刷及び接着の濡れ性を一時的に向上できる。 | 処理効果の経時低下、過処理及び表面脆化を確認する。 |
| 化学エッチング | ○ | 高い接着強度を得やすい。 | 処理薬品の危険性、変色、残留物及び廃液処理に注意する。 |
寸法精度・設計特性
| 設計項目 | 主な挙動 | 設計上の対応 |
|---|---|---|
| 成形収縮 | 比較的大きい。厚肉差、金型温度差及び保圧差で寸法ばらつきが生じる。 | 均一肉厚、対称冷却、ゲート位置最適化及び実型収縮測定を行う。 |
| 異方性・反り | 無充填品では繊維強化樹脂ほど大きくないが、流動配向と冷却差で反る。 | 流動解析、金型温調、リブ配置及び冷却時間を最適化する。 |
| 温度寸法変化 | 線膨張係数が金属より大きい。 | 金属インサート、ライニング及び長尺配管では熱膨張差を吸収する設計とする。 |
| 吸湿寸法変化 | 極めて小さい。 | 寸法変化は吸水より熱履歴、結晶化及びクリープの影響が支配的である。 |
| クリープ | 室温でも高い面圧又は締付荷重で進行する。温度上昇で顕著になる。 | 短時間引張強さを設計許容応力に用いず、時間−温度−応力条件で評価する。 |
| ウェルド部 | 母材より強度及び耐薬品応力性が低くなる場合がある。 | ゲート、ベント、樹脂温度及び金型温度を調整し、実部品で溶着線強度を測定する。 |
| インサート周辺 | 熱膨張差と成形収縮で残留応力が集中する。 | 角部R、肉厚、予熱、アンダーカット及び圧入代を最適化する。 |
| 安全率 | 温度、時間、薬品、溶着、欠陥及びクリープを含めて設定する。 | 公称強度ではなく長期データ又は実部品試験に基づき設定する。 |
品質・成形不良
| 不良 | 材料側の主因 | 成形条件側の主因 | 主な対策 |
|---|---|---|---|
| 黒点・変色 | 高温滞留、局所過熱、異物又は劣化樹脂 | シリンダー、ノズル又はダイのデッドスポット、長時間停止 | 滞留短縮、温度均一化、適切なパージ、設備清掃及び原料管理 |
| ガス焼け・腐食 | 分解ガス、排気不足、過度なせん断 | 高樹脂温度、ベント不足、急速圧縮 | 温度低減、ベント改善、耐食材質、局所排気及び背圧低減 |
| メルトフラクチャー | ダイ壁面のせん断応力過大 | 低ダイ温度、高吐出、高粘度グレード | ダイ温度上昇、吐出低減、流路平滑化及び適正MFR選択 |
| ゲル・フィッシュアイ | 未溶融粒子、架橋物、劣化物又は異物 | 原料汚染、ろ過不足、局所滞留 | 溶融ろ過、原料保管、設備洗浄及び温度均一化 |
| ボイド | 厚肉部の収縮、ガス又は保圧不足 | 急冷、厚肉、ベント不足 | 肉厚均一化、保圧・冷却最適化、ベント改善 |
| 反り | 冷却差、収縮差、流動配向 | 非対称形状、金型温度差、早期離型 | 金型温調、均一肉厚、冷却延長及びゲート最適化 |
| ウェルドライン | 流動先端の温度低下又はガス巻込み | 多点ゲート、低金型温度、ベント不足 | 樹脂・金型温度上昇、ベント改善及びゲート変更 |
| 表面粗れ・ダイライン | ダイ傷、汚れ、温度むら又は高せん断 | 長時間運転、異物、リップ付着 | ダイ研磨・清掃、ろ過、温度均一化及び吐出調整 |
| プレートアウト | 低分子成分、顔料又は添加剤の析出 | 配合グレード、高温運転、長時間成形 | 材料選定、設備清掃、温度・滞留管理及び添加剤確認 |
| 層間剥離 | 異物、低温界面又は相溶しない再生材 | 混入材、表面汚染、二次成形条件不良 | 原料分別、表面洗浄、温度・圧力最適化及び再生材比率管理 |
代表的な物性値又は機械的性質
下表は非強化・無充填・標準FEPの代表値又は代表範囲である。複数の公開メーカー資料及び一般的な材料データを比較して整理しているが、特定グレードの保証値ではない。比較機能へ登録する際は、下限値、代表値、上限値、単位、規格、材料状態及び信頼度を別フィールドとして保持することが望ましい。
| 項目 | 単位 | 下限値 | 代表値 | 上限値 | 試験規格・条件 | 材料状態 | 出典区分 | 信頼度 | 備考 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 密度 | g/cm³ | 2.12 | 2.15 | 2.17 | ISO 1183 / ASTM D792、23℃ | 成形直後 | メーカー技術資料・複数 | A | 無充填自然色グレード。 |
| 比重 | 無次元 | 2.12 | 2.15 | 2.17 | ISO 1183 / ASTM D792、23℃ | 成形直後 | メーカー技術資料・複数 | A | 密度とほぼ同等の数値として扱われる。 |
| 吸水率・24時間 | % | 0.01 | ASTM D570、23℃水中 | 乾燥試験片 | メーカー技術資料 | A | 0.01%以下。上限値として登録する。 | ||
| 成形収縮率・流動方向 | % | 2.5 | 3.5 | 5.0 | 代表値、規格不明 | 成形直後 | 複数二次資料 | C | 肉厚、金型温度、保圧及び冷却条件に強く依存する。 |
| 線膨張係数 | 10⁻⁵/K | 8 | 10 | 14 | 代表値、温度域により変化 | 乾燥状態 | 複数二次資料 | B | 温度域、結晶化度及び配向で変動する。 |
| 引張強さ・破断 | MPa | 20 | 25 | 30 | ASTM D638又はISO 12086、23℃ | 成形直後 | メーカー技術資料・複数 | A | 資料により引張強さの定義が異なるため破断値として扱う場合は確認する。 |
| 引張弾性率 | GPa | 0.35 | 0.50 | 0.70 | ISO 527又はASTM D638、23℃ | 成形直後 | 複数二次資料 | B | 曲げ弾性率と混同しない。 |
| 引張破断伸び | % | 250 | 300 | 400 | ASTM D638又はISO 12086、23℃ | 成形直後 | メーカー技術資料・複数 | A | 高粘度グレードでは高くなる場合がある。 |
| 曲げ弾性率 | GPa | 0.45 | 0.52 | 0.70 | ISO 178又はASTM D790、23℃ | 成形直後 | メーカー技術資料・複数 | A | 代表例で520MPa。 |
| 硬度 | Shore D | 50 | 55 | 60 | ISO 868 / ASTM D2240、23℃ | 成形直後 | メーカー技術資料 | A | 試験片厚さにより変化する。 |
| 荷重たわみ温度・0.45MPa | ℃ | 60 | 70 | 80 | ISO 75 / ASTM D648 | 成形直後 | 複数二次資料 | C | 短時間試験であり連続使用温度とは異なる。 |
| 荷重たわみ温度・1.80MPa | ℃ | 45 | 50 | 55 | ISO 75 / ASTM D648 | 成形直後 | 複数二次資料 | C | 高荷重では低温から変形しやすい。 |
| ガラス転移温度 | ℃ | 70 | 80 | 85 | DSC又はDMA、測定法依存 | 乾燥状態 | 複数二次資料 | C | 転移の扱いは文献及び測定法で差がある。 |
| 融点 | ℃ | 255 | 265 | 270 | ASTM D4591又はDSC | 乾燥状態 | メーカー技術資料・複数 | A | 共重合組成及び熱履歴で変化する。 |
| 連続使用温度 | ℃ | 180 | 200 | 200 | 低荷重、一般工業用途の目安 | 乾燥状態 | メーカー技術資料・複数 | A | 荷重、薬品、電気要求及び寿命によって低く設定する。 |
| 低温使用限界 | ℃ | -200 | -200 | 低荷重、代表的目安 | 乾燥状態 | 複数技術資料 | B | 衝撃、曲げ半径及び部品形状で制限される。 | |
| 熱伝導率 | W/(m・K) | 0.19 | 0.22 | 0.25 | 23℃付近、代表値 | 乾燥状態 | 複数二次資料 | B | フィラー配合で変化する。 |
| 比熱 | J/(g・K) | 1.0 | 1.1 | 1.2 | 23℃付近、代表値 | 乾燥状態 | 複数二次資料 | B | 温度依存性がある。 |
| 体積抵抗率 | Ω・cm | 1.0E18 | ASTM D257、23℃ | 乾燥状態 | メーカー技術資料・複数 | A | 下限値として登録する。導電グレードには適用しない。 | ||
| 比誘電率・1MHz | 無次元 | 2.02 | 2.05 | 2.10 | IEC 60250 / ASTM D150、23℃ | 乾燥状態 | メーカー技術資料・複数 | A | 代表例2.03。 |
| 誘電正接・1MHz | 無次元 | 0.0004 | 0.0006 | 0.0010 | IEC 60250 / ASTM D150、23℃ | 乾燥状態 | メーカー技術資料・複数 | A | 高周波絶縁用途ではグレード固有値を確認する。 |
| 絶縁破壊強さ | kV/mm | 20 | 40 | 80 | IEC 60243 / ASTM D149 | 乾燥状態 | メーカー技術資料・複数 | B | 80kV/mmは0.25mmフィルムの代表例。厚さ依存性が大きい。 |
| 限界酸素指数・LOI | % | 95 | ISO 4589 / ASTM D2863 | 成形直後 | メーカー技術資料 | A | 95%超の代表例がある。下限値として扱う。 | ||
| 動摩擦係数 | 無次元 | 0.15 | 0.20 | 0.30 | 相手材・荷重・速度不統一 | 乾燥状態 | 複数二次資料 | C | 相手材、粗さ、速度、面圧、温度及び潤滑条件で大きく変化する。 |
衝撃・長期・摺動特性
| 項目 | 単位 | 比較用数値 | 備考 |
|---|---|---|---|
| アイゾット衝撃強さ・ノッチ付き | kJ/m² | 一般化困難 | 柔軟性が高く、試験片厚さ及び規格により破壊せずとなる場合がある。NBを数値へ変換しない。 |
| シャルピー衝撃強さ | kJ/m² | 一般化困難 | ISOとASTMの試験片及び単位を混同しない。低温用途では実温度で確認する。 |
| 疲労強度 | MPa | データなし | 薄膜屈曲、チューブ曲げ及び電線寿命では専用の繰返し試験を用いる。 |
| 引張クリープ弾性率 | MPa又はGPa | グレード依存 | 温度、応力及び時間に強く依存する。短時間弾性率から外挿しない。 |
| 比摩耗量 | mm³/(N・m) | 条件依存 | 未充填FEPは低摩擦であるが耐摩耗性が特に高いとは限らない。相手材と面圧を明記する。 |
| 限界PV値 | MPa・m/s | 一般化困難 | 軸受用途ではPTFE充填材入り、POM、PA又はPEEK系摺動材との比較が必要である。 |
| 耐ストレスクラック性 | 回又は時間 | グレード依存 | MIT折曲げ、ベントストリップ又はチューブ曲げ試験等で評価する。高粘度グレードが有利な場合が多い。 |
燃焼性・電気的性質
| 項目 | 代表値・傾向 | 備考 |
|---|---|---|
| UL 94燃焼性 | V-0相当のグレードが存在 | グレード、色及び厚さごとのUL認証を確認する。材料群全体の認定として扱わない。 |
| UL 94試験片厚さ | グレード個別 | 公開データで厚さが不明な場合は「データなし」とし、推定しない。 |
| 発煙性 | 比較的低い | 火災時の安全性は製品形状、他材料及び換気条件を含めて評価する。 |
| 燃焼・過熱時の主な懸念 | HF、カルボニルフルオリド等を含む刺激性・腐食性分解生成物 | 過熱及び火災時は近づかず、適切な排気、保護具及び緊急対応手順を用いる。 |
| 比誘電率・1kHz | 約2.0〜2.1 | 周波数及び温度依存性は小さいが、発泡率、顔料及びフィラーで変化する。 |
| 比誘電率・1MHz | 約2.02〜2.10 | 高周波ケーブル用途では導体、空隙、発泡及び厚みを含む実構造で測定する。 |
| 誘電正接・1MHz | 約0.0004〜0.0010 | 測定法、周波数、温度及び試験片状態を明記する。 |
| 表面抵抗率 | 一般に1016Ω以上 | 湿度影響は小さい。導電・帯電防止グレードには適用しない。 |
| CTI | グレード依存 | 公開認証値を確認する。推定値を比較用データへ使用しない。 |
改質・強化グレードの物性影響
| グレード | 強化材・含有率 | 物性への主な効果 | 主な不利益 | 比較データ上の扱い |
|---|---|---|---|---|
| GF強化FEP | ガラス繊維、含有率はメーカー個別 | 剛性、寸法安定性及びクリープ抵抗が向上する可能性がある。 | 伸び、透明性、表面平滑性及び一部薬品への耐性が低下する場合がある。 | 公開された共通代表値が不足するため、標準FEPの数値と混在させない。 |
| CF強化FEP | 炭素繊維、含有率はメーカー個別 | 剛性、熱伝導性、耐摩耗性及び帯電防止性を改善できる。 | 絶縁性と透明性を失い、繊維露出及び純度に注意する。 | メーカーの特定グレードデータのみを登録する。 |
| カーボンブラック導電FEP | 炭素系導電材 | 表面抵抗を制御し、静電気を逃がす。 | 母材の高絶縁性を失い、薬液溶出及びパーティクルを確認する。 | 導電レベルは配合量と分散状態に依存する。 |
| 無機フィラー充填FEP | ガラス、鉱物、セラミックス等 | 収縮、寸法、熱伝導又は摩耗を調整できる。 | フィラーが薬品に侵される場合があり、母材FEPの耐薬品性をそのまま適用できない。 | フィラー種類、表面処理及び含有率を必ず別項目で管理する。 |
耐薬品性
下表は主として非強化FEPを20〜25℃、無応力、短期から中期浸漬で使用する場合の一般的な一次評価である。FEPは非常に広い薬品へ耐えるが、高温、加圧、強制曲げ、残留応力、透過、混合薬品、金属イオン純度、フィラー及び長期使用では結果が変化する。半導体、医療、食品及び高純度用途では、質量変化だけでなく溶出、透過、パーティクル及び表面変化も評価する。
| 薬品分類 | 代表薬品・濃度 | 温度 | 接触条件 | 評価 | 主な劣化形態 | 備考 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 水 | 純水 | 20〜25℃ | 長期浸漬、無応力 | ◎ | 影響は極めて小さい。 | 高純度用途では抽出物、TOC及び金属溶出を確認する。 |
| 温水 | 80〜100℃ | 高温 | 長期浸漬 | ◎ | 化学的影響は小さい。 | 荷重下のクリープ、熱膨張及び接合部を確認する。 |
| 水蒸気 | 飽和蒸気 | 100℃以上 | 加圧又は繰返し | ○ | 化学的には安定である。 | 熱サイクル、透過、変形及び溶着部の耐久性を確認する。 |
| 塩酸 | 5〜35% | 20〜25℃ | 浸漬、無応力 | ◎ | 一般に安定である。 | 高温、加圧及び透過による外部金属腐食を確認する。 |
| 硫酸 | 5〜98% | 20〜25℃ | 浸漬、無応力 | ◎ | 一般に安定である。 | 高温濃硫酸では実液試験と透過評価を行う。 |
| 硝酸 | 5〜70% | 20〜25℃ | 浸漬、無応力 | ◎ | 酸化性酸にも一般に良好である。 | 発煙硝酸、高温及び混酸では個別評価する。 |
| フッ酸 | 希薄〜高濃度 | 20〜25℃ | 浸漬、無応力 | ◎ | FEP自体は一般に高い耐性を示す。 | 透過、継手、外部金属及び高純度要求を確認する。 |
| 酢酸 | 10〜100% | 20〜25℃ | 浸漬、無応力 | ◎ | 一般に安定である。 | 高温及び混合溶剤系では確認する。 |
| 水酸化ナトリウム | 5〜50% | 20〜25℃ | 浸漬、無応力 | ◎ | 強アルカリ水溶液に一般に安定である。 | 高温濃厚液、金属ナトリウム及び溶融アルカリと区別する。 |
| 水酸化カリウム | 5〜50% | 20〜25℃ | 浸漬、無応力 | ◎ | 一般に安定である。 | 高温濃厚液及び透過条件を確認する。 |
| アンモニア水 | 5〜28% | 20〜25℃ | 浸漬、無応力 | ◎ | 一般に安定である。 | 温度、圧力、ガス透過及び接合部を確認する。 |
| 低級アルコール | メタノール、エタノール、IPA | 20〜25℃ | 原液、無応力 | ◎ | 膨潤及び溶解は一般に起こりにくい。 | 高温長期では透過と応力を確認する。 |
| 多価・高級アルコール | グリセリン、ブタノール、MMB | 20〜25℃ | 原液、無応力 | ◎ | 一般に安定である。 | 添加剤又は混合成分を含む場合は実液評価する。 |
| 芳香族炭化水素 | トルエン、キシレン、ベンゼン | 20〜25℃ | 原液、無応力 | ◎ | 一般に高い耐性を示す。 | 高温では透過及びわずかな寸法変化を確認する。 |
| 脂肪族炭化水素 | ヘキサン、ヘプタン、ミネラルスピリット | 20〜25℃ | 原液、無応力 | ◎ | SP値が近くても通常は溶解しない。 | 長期高温では透過及び抽出を確認する。 |
| ケトン | アセトン、MEK、MIBK | 20〜25℃ | 原液、無応力 | ◎ | 一般に安定である。 | 高温、高圧及び混合系では実液試験を行う。 |
| エステル | 酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エステル | 20〜25℃ | 原液、無応力 | ◎ | 一般に安定である。 | 長期高温及び応力下で確認する。 |
| エーテル | THF、ジエチルエーテル、ジオキサン | 20〜25℃ | 原液、無応力 | ◎ | 多くのエーテルに安定である。 | 高温及び可燃性溶剤の取扱いは別途管理する。 |
| ハロゲン化炭化水素 | ジクロロメタン、クロロホルム、トリクロロエチレン | 20〜25℃ | 原液、無応力 | ◎ | 一般に良好である。 | 高温長期では透過、重量変化及び環境規制を確認する。 |
| 燃料 | ガソリン、軽油、ジェット燃料 | 20〜25℃ | 長期接触 | ◎ | 炭化水素燃料に一般に安定である。 | 添加剤、芳香族含有率、バイオ成分、温度及び透過を確認する。 |
| 潤滑油・作動油 | 鉱油、PAO、シリコーン油 | 20〜25℃ | 長期接触 | ◎ | 一般に膨潤しにくい。 | リン酸エステル系、添加剤及び高温条件は個別確認する。 |
| ブレーキ液・冷却液 | グリコール系、エチレングリコール水溶液 | 20〜25℃ | 長期接触 | ◎ | 一般に安定である。 | 添加剤、酸化劣化液及び高温循環で確認する。 |
| 界面活性剤・洗浄剤 | 中性、アニオン、ノニオン | 20〜25℃ | 使用濃度 | ◎ | 母材FEPへの影響は小さい。 | 香料、溶剤、酸化剤及び高アルカリ成分を含む製剤は実液評価する。 |
| 次亜塩素酸ナトリウム | 100ppm〜12% | 20〜25℃ | 浸漬、無応力 | ◎ | 一般に良好である。 | 高温、高濃度、pH変動及び金属部材への影響を確認する。 |
| 過酸化水素 | 3〜35% | 20〜25℃ | 浸漬、無応力 | ◎ | 一般に高い耐性を示す。 | 高濃度、高温、触媒金属及び混酸では個別評価する。 |
| 塩水・海水 | 3〜10%塩水、海水 | 20〜25℃ | 長期浸漬 | ◎ | 母材への影響は極めて小さい。 | 接合部、外部金属、付着物及び透過を確認する。 |
| 食品油 | 植物油、動物油脂 | 20〜100℃ | 接触又は浸漬 | ◎ | 膨潤及び吸収は一般に小さい。 | 食品接触適合、洗浄剤及び高温酸化油を確認する。 |
| 高温元素フッ素 | F₂ | 高温 | ガス接触 | × | 強力なフッ素化条件では反応又は損傷の可能性がある。 | 専門的な材料選定と実機評価が必要である。 |
| 三フッ化塩素 | ClF₃ | 常温〜高温 | 接触 | × | 非常に強い反応性を持ち、FEPを含む多くの材料に危険である。 | 一般用途で使用しない。専門設備基準に従う。 |
| 溶融アルカリ金属 | Na、K等 | 高温 | 直接接触 | × | フッ素樹脂を侵す代表的条件である。 | 水酸化物水溶液とは別物である。 |
より広い材料・薬品の一次比較は、プラスチックの耐薬品性一覧表を参照する。耐薬品性が◎であっても、薬液の透過、外側金属の腐食、溶出、パーティクル、溶着部及び高温クリープが寿命を決める場合がある。
環境応力割れ・ESC
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 環境応力割れ感受性 | 一般樹脂より低いがゼロではない。高流動品、薄肉品、ウェルド及び曲げ部では注意する。 |
| 問題となりやすい条件 | 高温薬液、曲げ固定、圧入、急な肉厚変化、傷、ノッチ、成形残留応力及び長期内圧。 |
| グレード影響 | 低MFR・高分子量・耐ストレスクラックグレードが有利となる場合が多い。 |
| アニール | 部品寸法と用途により検討する。温度と時間はメーカー又は実験で設定し、変形と結晶化変化を確認する。 |
| 推奨確認方法 | 実薬品中で曲げひずみ又は一定応力を負荷し、外観、質量、寸法、引張保持率及び破断時間を測定する。 |
SP値(溶解度パラメータ)
| 材料 | 単位 | 下限 | 代表 | 上限 | 備考 | 信頼度 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| FEP標準グレード | MPa1/2 | 12.6 | 13.0 | 13.2 | 文献値・推算値の代表範囲。結晶化度と共重合組成により差がある。 | C |
| 高流動FEP | MPa1/2 | 12.7 | 13.0 | 13.3 | 分子量及び末端基の影響は小さいが、単一値として保証できない。 | D |
| 耐ストレスクラックFEP | MPa1/2 | 12.7 | 13.1 | 13.4 | 耐薬品性はSP値より分子量、結晶性及び欠陥に支配される。 | D |
| 導電性FEP | MPa1/2 | データなし | データなし | データなし | フィラーを含む複合系を母材FEPの単一SP値で表すことは適切でない。 | 0 |
FEPの代表的なSP値は約12.6〜13.2MPa1/2として扱われることがある。ただしFEPは結晶性があり、通常の溶剤に実質的に溶解しにくいため、SP値は直接測定値というより文献値又は推算値として扱うべきである。完全フッ素化構造、結晶性、低い分子運動性及び界面濡れ性が強く影響するため、SP値差だけで耐薬品性を判定してはならない。
溶解性の目安
| SP値差 | 溶解・膨潤の目安 | 判定 | FEPへの適用上の注意 |
|---|---|---|---|
| 0〜2 | 膨潤・軟化しやすい | × | 一般的な非晶性ポリマーの一次目安である。FEPではこの目安がそのまま当てはまらない。 |
| 2〜5 | 条件により膨潤する | △ | 高温、長時間及び低分子量成分の抽出を確認する。 |
| 5〜8 | 短時間接触では比較的安定 | ○ | 長期透過、応力及び温度を含めて確認する。 |
| 8以上 | 溶解・膨潤しにくい | ◎ | 化学反応性、酸化性及び透過性は別途評価する。 |
SP値から見た耐溶剤性
| 溶剤・薬品名 | SP値 δ [MPa1/2] | FEPとの差 | 実用評価 | 備考 |
|---|---|---|---|---|
| n-ヘキサン | 14.9 | 1.9 | ◎ | SP値差だけなら高リスク域であるが、FEPは一般に溶解せず、化学的に安定である。 |
| n-ヘプタン | 15.1 | 2.1 | ◎ | 高温長期では透過及び重量変化を確認する。 |
| シクロヘキサン | 16.8 | 3.8 | ◎ | SP値差による単純評価より実耐性が高い。 |
| キシレン | 18.0 | 5.0 | ◎ | 常温では一般に良好である。 |
| トルエン | 18.2 | 5.2 | ◎ | 芳香族溶剤に対して一般に安定である。 |
| THF | 18.5 | 5.5 | ◎ | 多くの樹脂を膨潤させるが、FEPでは一般に良好である。 |
| 酢酸エチル | 18.6 | 5.6 | ◎ | 常温では一般に良好である。 |
| クロロホルム | 18.7 | 5.7 | ◎ | 高温密閉系では透過を確認する。 |
| MEK | 19.0 | 6.0 | ◎ | 一般に安定である。 |
| アセトン | 20.3 | 7.3 | ◎ | 一般に安定である。 |
| ジクロロメタン | 20.2 | 7.2 | ○ | 常温では概ね良好であるが、高温長時間、薄膜及び透過用途では確認する。 |
| NMP | 23.0 | 10.0 | ◎ | 高沸点極性溶剤であり、高温使用では実液評価を行う。 |
| IPA | 23.5 | 10.5 | ◎ | 洗浄及び半導体用途で一般に良好である。 |
| DMF | 24.8 | 11.8 | ◎ | 一般に安定である。 |
| エタノール | 26.0 | 13.0 | ◎ | 一般に安定である。 |
| DMSO | 26.7 | 13.7 | ◎ | 一般に安定である。 |
| メタノール | 29.7 | 16.7 | ◎ | 一般に安定である。 |
| 水 | 47.9 | 34.9 | ◎ | 吸水及び膨潤は極めて小さい。 |
上表のSP値差はFEPの代表値13.0MPa1/2を基準とした目安である。特にn-ヘキサン及びn-ヘプタンはSP値が近いにもかかわらず、FEPを一般的な条件で溶解しない。この乖離は、FEPの結晶性、完全フッ素化表面、界面相互作用及び分子鎖運動性を一次元SP値が表現できないためである。評価基準は◎非常に良好、○概ね良好、△注意が必要、×不適である。SP値の詳細はホモポリマー・樹脂のSP値一覧、可塑剤や溶剤のSP値一覧及び高分子の溶解・膨潤を参照する。
製法
FEPは、精製したTFEとHFPを圧力反応器内でラジカル共重合して製造する。工業的には水系乳化重合又は懸濁重合が用いられ、開始剤、分散安定剤、連鎖移動剤、温度、圧力及びモノマー供給比により、共重合組成、分子量、末端基、粒子形状及びMFRを調整する。TFEは反応性が高いため、酸素、水分、圧力、温度及び不純物の厳密な管理が必要である。
原料・重合・ペレット化
| 工程 | 内容 | 管理上の要点 |
|---|---|---|
| 原料精製 | TFE及びHFPを精製し、酸素、水分、阻害物及び不純物を管理する。 | モノマー純度は重合安定性、色調、電気特性及び高純度用途に影響する。 |
| 共重合 | 水系乳化又は懸濁系でラジカル共重合する。 | 反応熱、圧力、組成比及び開始剤添加を制御し、暴走及び組成ドリフトを防ぐ。 |
| 凝析・回収 | ラテックス又は分散粒子を凝析し、ポリマーを回収する。 | 凝析条件は粒子形状、残留界面活性剤及び後工程に影響する。 |
| 洗浄 | 残留開始剤、分散剤、塩及び低分子成分を低減する。 | 半導体、医療及び食品接触用途では抽出物、イオン及び金属管理が重要である。 |
| 乾燥 | 水分を除去し、粉末又はフレークを得る。 | 乾燥温度、粉塵、異物及び再凝集を管理する。 |
| 溶融混練・ろ過 | 高温で溶融し、フィルターを通してゲル、異物及び凝集物を低減する。 | 耐食設備、局所排気、滞留防止及びろ過差圧管理が必要である。 |
| ペレット化 | ストランド又は水中カット等で成形用ペレットにする。 | 粒径、かさ密度、微粉及び包装清浄度を管理する。 |
| 末端基・MFR調整 | 重合条件、後処理又は安定化処理で成形性及び電気特性を調整する。 | 高温安定性、発泡、導体密着及び溶出要求に応じてグレードを分ける。 |
| コンパウンド | 顔料、カーボン、充填材又は機能添加剤を配合する。 | 添加材が耐薬品性、電気絶縁性、純度、食品適合及び燃焼性へ与える影響を確認する。 |
代表的な反応式
m CF2=CF2 + n CF2=CF−CF3 → −[CF2−CF2]m−[CF2−CF(CF3)]n−
実際のFEPは単純な交互共重合体ではなく、TFE単位を主体としてHFP単位が統計的に導入された共重合体である。反応式は代表的な構成単位を示すものであり、モノマー配列、分子量分布、末端基及び分岐を一意に示すものではない。
添加剤、充填材、強化材
- 顔料:識別色及び外観を付与する。電気特性、純度、耐候性及び食品接触適合への影響を確認する。
- カーボンブラック:導電性又は帯電防止性を付与する。透明性及び絶縁性は失われる。
- ガラス繊維・炭素繊維:特殊コンパウンドで剛性、寸法安定性、耐クリープ性又は導電性を改善する。含有率と表面処理を個別確認する。
- 無機フィラー:収縮、摩耗、熱伝導又は寸法安定性を調整する。フィラー自体の耐薬品性を確認する。
- 発泡核剤:高周波ケーブルの発泡絶縁でセル径と発泡率を制御する。
- 加工助剤・末端基安定化:押出安定性、金属腐食、発泡性、導体密着及び高温安定性を調整する場合がある。
詳細な利用用途
| 用途分野 | 主な製品例 | 要求特性 | 選定上の注意点 |
|---|---|---|---|
| 自動車・モビリティ | センサー配線、耐熱電線被覆、燃料・薬液チューブ、保護スリーブ | 耐熱性、耐燃料性、低温柔軟性、電気絶縁性 | 振動、曲げ、燃料組成、透過、熱サイクル及び難燃規格を確認する。 |
| 電気・電子 | 高周波ケーブル、同軸ケーブル、LANケーブル、絶縁フィルム、コイル絶縁 | 低誘電率、低誘電正接、低吸水、難燃性 | 薄肉欠陥、導体偏心、発泡率、周波数及びUL認証を確認する。 |
| 半導体製造 | 薬液チューブ、流路、ライニング、ウェハ搬送周辺部材 | 耐薬品性、低溶出性、透明性、清浄性 | 金属溶出、イオン、TOC、パーティクル、透過及び接合部を評価する。 |
| 化学プラント | バルブ・ポンプライニング、配管内張り、ホース、容器被覆 | 耐酸・耐アルカリ・耐溶剤性、非粘着性 | 膜厚、ピンホール、透過、熱膨張差、基材腐食及び真空変形を確認する。 |
| 機械・製造装置 | 離型フィルム、保護カバー、摺動シート、ローラー被覆 | 離型性、低摩擦、耐薬品性、耐候性 | 摩耗、クリープ、傷、荷重及び表面処理を確認する。 |
| 医療・分析機器 | 透明チューブ、カテーテル関連部材、試薬流路、サンプリングバッグ | 低吸着、耐薬品性、透明性、柔軟性 | 医療グレード、生体適合性、抽出物、滅菌法及び放射線劣化を確認する。 |
| 食品機械・包装 | チューブ、離型部材、ヒートシール層、耐油フィルム | 非粘着性、耐油性、洗浄耐久性、低吸水性 | 食品接触証明、使用温度、洗浄剤、移行及び摩耗粉を確認する。 |
| 航空宇宙 | 耐熱配線、絶縁スリーブ、流体系チューブ、複合材成形用離型フィルム | 軽量薄肉絶縁、難燃性、低温特性、耐薬品性 | 航空規格、煙・毒性、屈曲寿命、圧力及びトレーサビリティを確認する。 |
| 建築・設備 | 屋外保護フィルム、膜材表面層、特殊ケーブル被覆 | 耐候性、耐紫外線性、非汚染性 | 機械強度、火災規格、接合、風荷重及び施工条件を確認する。 |
| 複合材料成形 | CFRP・GFRP成形用離型フィルム、バッグ、保護膜 | 離型性、耐熱性、耐薬品性、透明性 | 硬化温度、圧力、しわ、ピンホール及び樹脂ブリードを確認する。 |
用途別選定
| 用途 | 適性 | 理由 | 主な注意点 |
|---|---|---|---|
| ギア | △ | 低摩擦だが剛性、耐摩耗及びクリープが不足しやすい。 | 低荷重、低速で実摩耗試験を行い、ETFE、POM、PA又はPEEKと比較する。 |
| 軸受・ブッシュ | △ | 低摩擦性はあるが、未充填FEPは高面圧摺動に不利である。 | 面圧、速度、相手材及び温度を確認し、充填PTFE等を比較する。 |
| ローラー・摺動板 | ○ | 非粘着性と耐薬品性を活かせる。 | 芯金との接合、摩耗、クリープ及び表面傷を確認する。 |
| ねじ・ボルト・ナット | △ | 耐薬品性は高いが締結保持力が低下しやすい。 | 低締付用途に限定し、クリープと再締結を評価する。 |
| ポンプ・バルブ部品 | ○ | ライニング、低圧部品及び耐薬品流路に適する。 | 圧力、温度、透過、シール面圧及びキャビテーションを確認する。 |
| シール・ガスケット | ○ | 耐薬品性と低摩擦性に優れる。 | 圧縮永久変形、クリープ及び面圧保持ではPTFE、PFA又はエラストマーと比較する。 |
| Oリング | × | 熱可塑性樹脂であり、一般的な弾性Oリング用途には不向きである。 | FEP被覆Oリングは内部エラストマーとの複合品として別評価する。 |
| チューブ・ホース | ◎ | FEPの代表用途であり、透明性、耐薬品性及び低吸着性に優れる。 | 曲げ半径、内圧、透過、継手、脈動及び抽出物を確認する。 |
| 配管・ライニング | ○ | 耐薬品性と溶融成形性を活かせる。 | 大径・高圧・高温ではPFA、PTFE又は金属ライニングと比較する。 |
| タンク | △ | 単体構造よりライニングとして有効である。 | 構造強度、真空、支持、ピンホール及び熱膨張差を別材料で担保する。 |
| フィルム・シート | ◎ | 透明性、離型性、耐候性及び熱融着性に優れる。 | 引裂き、しわ、ピンホール、厚み及びガス透過を確認する。 |
| ボトル・容器 | △ | 特殊薬品容器に適用可能である。 | 成形性、剛性、透過、落下強度及びコストを確認する。 |
| 電気コネクタ・ソケット | ○ | 絶縁性、難燃性及び耐熱性に優れる。 | 剛性、寸法精度、端子保持力及びクリープはLCP、PPS、PEEKと比較する。 |
| 電子部品筐体 | △ | 耐薬品性は高いが剛性とコストで不利になりやすい。 | 薄肉剛性、ねじ保持、EMI及び難燃認証を確認する。 |
| 透明カバー・レンズ | △ | 薄肉では透明だが光学樹脂ほどの透明性と表面硬度はない。 | ヘーズ、傷、屈折率及び寸法精度を確認する。 |
| 自動車内装・外装 | △ | 耐候性は高いが、剛性、塗装性及びコストで一般用途には過剰となりやすい。 | 特殊薬品又は配線用途に限定して検討する。 |
| エンジンルーム部品 | ○ | 耐熱・耐薬品電線及びチューブに適する。 | 連続温度、燃料、振動、屈曲及び難燃性を確認する。 |
| 燃料系部品 | ○ | 燃料耐性に優れる。 | 透過規制、圧力、継手、バイオ燃料及び添加剤を評価する。 |
| 食品機械部品 | ○ | 非粘着性、洗浄性及び耐薬品性を活かせる。 | 食品接触適合、摩耗粉、洗浄温度及び蒸気を確認する。 |
| 医療機器部品 | ○ | 透明チューブ及び試薬流路に適する。 | 医療グレード、生体適合性、滅菌、抽出物及び用途承認を確認する。 |
| 滅菌部品 | △ | 蒸気及び薬液滅菌には適合しやすい。 | 放射線滅菌では劣化しやすいため線量と繰返し回数を評価する。 |
| 半導体製造装置部品 | ◎ | 高純度薬液、透明チューブ及び絶縁用途に有力である。 | 純度、溶出、透過、パーティクル及びグレード証明を確認する。 |
| 真空装置部品 | △ | 耐薬品性は高い。 | ガス透過、アウトガス、クリープ及び温度を実測する。 |
| 屋外部品 | ○ | 耐候性と耐紫外線性に優れる。 | 機械強度、固定方法、風荷重及び温度膨張を確認する。 |
| 接着剤・塗料の主樹脂 | × | 低表面エネルギーで一般接着剤又は塗料の主樹脂には適さない。 | フッ素樹脂コーティング、粉体又は分散液として別工程で用いる。 |
| コーティング・ライニング | ◎ | FEPの代表用途であり、平滑で非粘着性の耐食膜を形成できる。 | 下地処理、焼成、膜厚、ピンホール及び熱膨張差を管理する。 |
| 複合材料マトリックス | △ | 熱可塑性マトリックスとして可能だが界面接着が弱い。 | 繊維表面処理、高温成形、含浸及び界面強度を確認する。 |
上記は材料群としての一般的な適性である。実使用ではグレード、荷重、温度、薬品、湿度、寿命、法規制、成形欠陥、接合方法及び保守条件を確認する。
法規制・認証
| 規制・認証 | 一般的な扱い | 実務上の注意 |
|---|---|---|
| RoHS | 一般に対応可能なグレードがある。 | 色材、添加剤、製造拠点及び証明書の版を個別確認する。 |
| REACH・SVHC | 一般に登録・情報伝達対応が必要である。 | FEPそのもの、残留物、添加剤及び成形品の用途を区別し、最新SDSと適合証明書を確認する。 |
| PFAS関連規制 | 広いPFAS定義ではFEP等のフッ素ポリマーが対象範囲に含まれ得る。 | 地域、用途、含有定義、適用除外、移行期間及び廃棄要件が変化するため、最新法令を確認する。材料名だけで将来適合を断定しない。 |
| TSCA | 米国で製造・輸入する場合はインベントリ、用途及びPFAS報告義務の確認が必要である。 | 樹脂、添加剤、成形品及び輸入品の区分を法務・規制担当者と確認する。 |
| FDA食品接触 | 適合グレードが存在する。 | 食品種類、接触温度、時間、繰返し使用及び製造条件に対応するメーカー証明を確認する。 |
| EU食品接触規則 | 適合グレードが存在する。 | 樹脂だけでなく顔料、添加剤、成形品及び移行試験条件を確認する。 |
| 日本の食品衛生法・ポジティブリスト | 適合可能なグレードが存在する。 | 対象用途、使用温度、接触食品及びサプライチェーン証明を確認する。 |
| USP Class VI・ISO 10993 | 医療用途向けの個別グレード又は成形品で評価される場合がある。 | 一般工業用FEP全体の認証ではない。滅菌後及び最終製品で再評価する。 |
| UL認証 | V-0等の認定グレードが存在する。 | グレード、色、厚さ、製造拠点及びファイル番号を確認する。 |
| 航空・鉄道・自動車規格 | 用途別認定又は顧客仕様が適用される。 | 煙、毒性、難燃、トレーサビリティ及び変更管理を個別確認する。 |
| ハロゲンフリー表示 | フッ素を含むため一般的な「ハロゲンフリー」要求とは整合しない場合がある。 | 規格ごとのハロゲン定義と閾値を確認し、誤表示しない。 |
環境・リサイクル性
| 項目 | 評価 | 注意点 |
|---|---|---|
| 熱可塑性・熱硬化性 | 熱可塑性 | 再溶融可能であるが、高温加工と異物管理が必要である。 |
| マテリアルリサイクル | 条件付きで可能 | 工程内クリーン端材は再利用できる場合がある。熱履歴、ゲル、色、電気特性及び純度低下を確認する。 |
| ケミカルリサイクル | 技術・地域依存 | 一般的な商業循環は限定的であり、回収スキームを個別確認する。 |
| サーマル処理 | 専門設備が必要 | 通常の低温焼却を避け、フッ素系排ガス処理と適切な最終処分を行う。 |
| 再生材利用 | 高純度・電気・医療用途では制限されやすい | 再生回数により分子量、色、ゲル、異物及び絶縁欠陥が変化する。 |
| バイオベース | 一般的ではない | バイオベースと生分解性を混同しない。 |
| 生分解性・コンポスト | 該当なし | 環境中で容易に分解する材料ではない。 |
| LCA上の一般的特徴 | 長寿命と高耐久性により交換頻度低減が期待できる一方、製造、フッ素資源及び廃棄管理の負荷がある。 | 用途寿命、代替材、漏えい防止効果及び回収を含むシステム境界で評価する。 |
価格・供給性
| 項目 | 相対評価 | 内容 |
|---|---|---|
| 相対価格 | 高価格 | 汎用樹脂、一般エンプラ及びPVDFより高い場合が多い。PFAより低い場合があるが、市況、グレード及び数量で逆転する。 |
| 流通性 | 専門材料として比較的良好 | 国内外の主要フッ素樹脂メーカー及び加工品メーカーから入手できる。 |
| 少量購入 | 加工品は比較的容易、樹脂ペレットは条件付き | 板、フィルム、チューブ及び熱収縮チューブは少量流通がある。特殊ペレットは最小購入量が大きい場合がある。 |
| 供給形態 | ペレット、粉末、分散液、フィルム、チューブ、シート、成形品 | 高純度、導電、医療及び特殊色は受注又は限定供給となる場合がある。 |
| 供給リスク | フッ素原料、設備、規制及びメーカー再編の影響を受ける | 単一銘柄依存を避ける場合は、同等グレードのMFR、融点、純度及び認証を比較し、再認定する。 |
注意点・劣化及び故障モード
| 劣化現象 | 主な原因 | 発生しやすい条件 | 影響 | 予防策 | 推奨確認試験 |
|---|---|---|---|---|---|
| 熱劣化・過熱分解 | 高温滞留、局所過熱、空運転 | 成形機内、高温ヒーター付近、火災 | 変色、ガス、腐食、物性低下 | 温度・滞留管理、耐食設備、局所排気、適切なパージ | MFR、色差、FTIR、発生ガス及び機械特性 |
| クリープ・コールドフロー | 長期荷重、面圧、温度 | フランジ、締結、シール、支持部 | 締付力低下、漏れ、永久変形 | 面圧低減、支持拡大、ばね要素、充填材又は代替材 | 温度別クリープ、圧縮保持及び漏れ試験 |
| 応力割れ | 残留応力、曲げ、ノッチ、高温薬液 | チューブ曲げ、ウェルド、圧入、急肉厚変化 | 微細亀裂、漏れ、破断 | 耐ストレスクラックグレード、R付与、アニール、応力低減 | 実薬品中の定ひずみ・定荷重ESC試験 |
| 摩耗・傷 | 摺動、異物、粗い相手材 | ローラー、シート、バルブ、搬送部 | 摩耗粉、表面粗化、膜破れ | 相手材研磨、面圧低減、充填材又は保護構造 | 摩耗量、摩擦係数、パーティクル測定 |
| 透過 | 薄肉、高温、高圧、ガス又は低分子薬品 | チューブ、ライニング、容器 | 外側金属腐食、薬品損失、純度変化 | 肉厚増加、二重管、ベント、PFA又は低透過材比較 | 透過率、重量減少、外部腐食及び濃度変化 |
| ピンホール・溶着欠陥 | 異物、ゲル、膜厚不足、施工不良 | コーティング、ライニング、フィルム | 局部腐食、漏れ、絶縁破壊 | 溶融ろ過、膜厚管理、施工条件最適化 | スパーク試験、耐電圧、気密及び浸透探傷 |
| 放射線劣化 | 電子線、γ線、高線量照射 | 放射線滅菌、原子力・宇宙環境 | 主鎖切断、脆化、強度低下 | 非放射線滅菌、線量最小化、ETFE等の比較 | 線量別引張、伸び、色、MFR及び漏れ試験 |
| アウトガス | 残留低分子、加工劣化物、表面汚染 | 真空、半導体、光学装置 | 汚染、付着、真空到達遅延 | 高純度グレード、洗浄、ベーキング及び清浄包装 | TML、CVCM、GC-MS、真空質量減少 |
| 金属腐食 | 高温分解物、透過薬液、異種金属接触 | 成形機、ダイ、ライニング外側 | 設備腐食、金属汚染、漏れ | 耐食合金、排気、温度管理、二重構造 | 設備点検、金属分析、腐食クーポン |
| 溶出・パーティクル | 添加剤、顔料、摩耗、洗浄不足 | 食品、医療、半導体流路 | 製品汚染、規格不適合 | 適合グレード、清浄成形、洗浄及び低摩耗設計 | 抽出物、TOC、金属、イオン、パーティクル |
推奨確認試験
| 試験 | 推奨条件例 | 確認項目 |
|---|---|---|
| 実薬品浸漬試験 | 実液濃度、最低・標準・最高温度、24h、168h、1000h等 | 質量、寸法、外観、引張保持率、伸び、表面及び溶出を測定する。 |
| 応力負荷下ESC試験 | 実部品相当の曲げひずみ、内圧又は一定応力、実薬品、最高使用温度 | クラック発生時間、漏れ、残留強度及びウェルド部を確認する。 |
| 熱老化・ヒートサイクル | 使用上限温度、低温、室温を繰返し、100〜1000サイクル等 | 寸法、反り、強度、溶着、締結及び漏れを確認する。 |
| クリープ試験 | 実使用温度、設計応力、1000h以上を目安 | 変形量、締付力、漏れ及び破断時間を測定する。 |
| 摩耗・摩擦試験 | 実相手材、面圧、速度、温度、無潤滑又は実潤滑 | 摩擦係数、摩耗量、相手材損傷及び摩耗粉を評価する。 |
| 透過試験 | 実薬品又はガス、温度、圧力、実肉厚 | 透過係数、重量減少、外部金属腐食及び純度変化を確認する。 |
| 電気絶縁試験 | 実厚さ、周波数、温度、湿度及び熱老化後 | 絶縁破壊、誘電率、誘電正接、部分放電及びピンホールを確認する。 |
| 難燃・煙・毒性試験 | 製品規格、実厚さ、色及び構成材料 | UL94、LOI、煙密度、腐食性ガス及び用途規格を確認する。 |
| 接着・溶着強度試験 | 表面処理直後及び経時後、実薬品・熱サイクル後 | 初期強度だけでなく剥離モードと耐久保持率を測定する。 |
| 滅菌耐久試験 | 蒸気、EO、薬液又は放射線の実条件、繰返し回数 | 外観、引張、伸び、漏れ、抽出物及び生体適合性を確認する。 |
| アウトガス・溶出試験 | 実洗浄後、実温度、真空又は接触液条件 | TML、CVCM、GC-MS、TOC、イオン、金属及びパーティクルを測定する。 |
| 実成形・実部品耐久試験 | 量産設備、実金型、実接合、最大公差及び使用条件 | 材料データだけでなく、欠陥、残留応力、寸法及び寿命を確認する。 |
関連材料との比較
| 比較材料 | 特徴 | FEPとの違い |
|---|---|---|
| ポリテトラフルオロエチレン(PTFE) | 最高レベルの耐薬品性、耐熱性、低摩擦性及び非粘着性を持つ。 | FEPは連続使用温度が低い一方、通常の溶融押出及び射出成形が可能で透明性も得やすい。 |
| パーフルオロアルコキシアルカン樹脂(PFA) | PTFEに近い耐薬品性と約260℃級の連続耐熱性を持つ溶融成形フッ素樹脂である。 | PFAは高温薬液用途に有利である。FEPは低い融点、透明性、電線被覆及びフィルム加工で有利な場合がある。 |
| テトラフルオロエチレン・エチレン共重合体(ETFE) | 機械強度、耐衝撃性、耐摩耗性及び成形性に優れる。 | FEPはETFEより非粘着性、完全フッ素化由来の耐溶剤性及び高周波電気特性で有利である。ETFEは構造部品に有利である。 |
| ポリフッ化ビニリデン(PVDF) | 機械強度、耐候性、成形性及び価格のバランスが良い部分フッ素化樹脂である。 | FEPは強アルカリ、アミン及び溶剤への耐性、非粘着性及び低誘電率で有利である。PVDFは剛性、溶着及びコストで有利な場合がある。 |
| ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE) | 低ガス透過性、寸法安定性及び低温特性に優れる。 | FEPは溶融加工、フィルム、電線被覆及び広い耐薬品性で使いやすい。PCTFEはバリア性と寸法精度を重視する用途に有利である。 |
| エチレン・クロロトリフルオロエチレン共重合体(ECTFE) | 耐薬品性、機械強度、低透過性及びライニング適性のバランスが良い。 | FEPは非粘着性、低誘電率及び透明性で有利である。ECTFEは構造強度と低透過性で有利な場合がある。 |
| フッ素樹脂 | PTFE、PFA、FEP、ETFE、PVDF、PCTFE、ECTFE等を含む材料群である。 | FEPは完全フッ素化構造と溶融成形性、約200℃の耐熱性、透明性及び高周波特性を組み合わせた位置付けである。 |
比較用評価スコア
| 評価項目 | スコア | 評価理由 |
|---|---|---|
| 引張強度 | 2 | 柔軟であり、高剛性エンプラより低い。 |
| 剛性 | 1 | 曲げ弾性率は約0.5GPaであり低い。 |
| 衝撃強度 | 4 | 延性及び低温柔軟性に優れるが、試験条件依存が大きい。 |
| 耐熱性 | 4 | 連続約200℃で優れるが、PTFE及びPFAより低い。 |
| 低温特性 | 5 | 低温でも柔軟性を維持しやすい。 |
| 耐薬品性 | 5 | 一般的な酸、アルカリ及び溶剤に非常に強い。 |
| 耐候性 | 5 | 紫外線、オゾン及び屋外環境に非常に強い。 |
| 耐加水分解性 | 5 | 加水分解性結合を持たず、吸水も極めて少ない。 |
| 寸法安定性 | 3 | 吸湿変化は小さいが、熱膨張、収縮及びクリープに注意する。 |
| 低吸水性 | 5 | 24時間吸水率は0.01%以下の代表値がある。 |
| 摺動性 | 4 | 低摩擦・非粘着性に優れる。 |
| 耐摩耗性 | 2 | 未充填品は高面圧摺動で摩耗しやすい場合がある。 |
| 電気絶縁性 | 5 | 低誘電率、低誘電損失及び高体積抵抗率を持つ。 |
| 難燃性 | 5 | LOIが非常に高く、V-0相当グレードがある。 |
| 透明性 | 3 | 薄肉では透明性を示すが、光学樹脂ほどではない。 |
| 成形加工性 | 3 | PTFEより大幅に良いが、成形温度と設備要求が高い。 |
| 切削加工性 | 3 | 加工可能だが柔軟で変形しやすい。 |
| 接着性 | 1 | 未処理では非常に接着しにくい。 |
| リサイクル性 | 2 | 熱可塑性で再溶融可能だが、高温設備、汚染及び回収網に制約がある。 |
| 価格優位性 | 1 | 高価格材料である。 |
スコアは5:非常に優れる、4:優れる、3:標準的、2:やや劣る、1:劣る、0:評価不能又はデータなしである。材料全体の一般的傾向であり、特定グレードの最高性能を基準としていない。
代表的なメーカー
| メーカー | 代表製品・ブランド | 概要 |
|---|---|---|
| ダイキン工業株式会社 | NEOFLON FEP NPシリーズ、FEPフィルム | 高流動から高粘度までのペレット、フィルム及び関連形態を展開する。電線被覆、チューブ、フィルム、ライニング等に用いられる。 |
| The Chemours Company | Teflon FEP | 押出、電線被覆、フィルム及び射出成形向けのFEPグレードを展開する。代表的な高流動グレード等がある。 |
| Gujarat Fluorochemicals Limited | INOFLON FEP | ペレット、粉末及びディスパージョンを展開し、電線、チューブ、成形、ライニング及びコーティング用途に用いられる。 |
メーカー及び製品の供給状況、グレード名、製造拠点、認証及び販売地域は変更される場合がある。採用時には最新の技術資料、SDS、規制適合証明及び供給条件を確認する。
関連キーワード
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FEPの採用を決定する前に、対象グレードの最新技術資料を確認し、実薬品、実温度、実荷重、実応力、実肉厚、実接合及び実使用時間を再現した試験を行う必要がある。特に高温薬液、内圧チューブ、ライニング、半導体高純度、医療、食品接触、高周波絶縁及び長期締結用途では、材料単体の代表物性だけで適否を判断しない。