概要
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 材料名 | ポリブチレンテレフタレート |
| 略記号 | PBT |
| IUPAC | poly(butane-1,4-diyl benzene-1,4-dicarboxylate) |
| 英語名 | Polybutylene Terephthalate |
| 日本語名・別名 | ポリブチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタラート、PBT樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂 |
| 分類 | 熱可塑性樹脂、結晶性樹脂、芳香族ポリエステル系樹脂 |
| プラスチック分類 | エンジニアリング・プラスチック |
| 化学式または代表構造 | (C12H12O4)n、代表構造単位:−O−(CH2)4−O−CO−C6H4−CO− |
| CAS No. | 24968-12-5 |
| 構造・主成分 | テレフタル酸又はジメチルテレフタレートと1,4-ブタンジオールから得られる芳香族ポリエステルである。 |
| 主な用途 | 自動車電装部品、コネクタ、リレー、スイッチ、センサー部品、モーター部品、家電部品、機械部品、摺動部品など |
ポリブチレンテレフタレート(PBT)は、代表的な結晶性芳香族ポリエステル系エンジニアリング・プラスチックである。一般に、成形性、寸法安定性、電気絶縁性、耐薬品性、耐摩耗性のバランスが良く、自動車部品や電気・電子部品で広く使用される材料である。
PBTは、同じポリエステル系樹脂であるポリエチレンテレフタレート(PET)よりも結晶化速度が速く、射出成形で扱いやすいことが多い。一方で、酸・アルカリ・高温水蒸気などの加水分解条件には注意が必要であり、実使用では温度、湿度、薬品濃度、接触時間、荷重、応力、成形時の乾燥状態を確認する必要がある。
市販グレードでは、非強化PBTのほか、ガラス繊維強化PBT、難燃PBT、耐加水分解PBT、低反りPBT、摺動PBT、食品接触対応グレード、レーザーマーキング対応グレードなどがある。材料選定では、PBTを単一材料として扱わず、強化材、難燃剤、耐熱安定剤、耐候剤、滑剤、充填材、リサイクル材の有無を分けて判断する必要がある。
特徴
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 長所 | 成形性、寸法安定性、電気絶縁性、耐薬品性、耐摩耗性、耐熱性のバランスが良い。GF強化グレードでは剛性と荷重たわみ温度が大きく向上する。 |
| 短所 | 加水分解、強アルカリ、強酸、高温水、成形乾燥不足による物性低下に注意が必要である。非強化グレードは高荷重用途では剛性不足となる場合がある。 |
| 外観 | 一般に白色から乳白色のペレットであり、成形品は不透明から半透明である。着色性は比較的良好である。 |
| 耐熱性 | 融点は一般に220〜230℃程度である。連続使用温度はグレードにより異なるが、非強化で80〜120℃程度、GF強化・耐熱グレードで120〜150℃程度が目安である。 |
| 耐薬品性 | 油、燃料、脂肪族炭化水素、アルコール類には比較的安定な場合が多い。強酸、強アルカリ、熱水、蒸気、エステル系溶剤、塩素系溶剤では条件により劣化、膨潤、加水分解が生じる。 |
| 加工性 | 射出成形性に優れ、結晶化速度が比較的速いため成形サイクルを短くしやすい。成形前乾燥は重要であり、乾燥不足では加水分解による分子量低下が起こりやすい。 |
| 分類上の注意 | PBTはポリエステル系エンプラであり、PET、PTT、PBNとは構造が近いが、結晶化速度、成形性、耐熱性、吸水性、用途が異なる。 |
構造式

−O−(CH2)4−O−CO−C6H4−CO−。構造中の官能基、結晶性。
ポリブチレンテレフタレートの代表的な繰り返し構造単位は、下記のように表される。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 代表的な構造単位 | −O−(CH2)4−O−CO−C6H4−CO− |
| 分子式 | (C12H12O4)n |
| 構成単位 | テレフタル酸成分と1,4-ブタンジオール成分からなる芳香族ポリエステルである。 |
| モノマー | テレフタル酸又はジメチルテレフタレート、1,4-ブタンジオール |
| 共重合・変性 | 耐衝撃改良、難燃化、耐加水分解化、低反り化、摺動性付与、レーザー溶着対応、食品接触対応などを目的として、添加剤、エラストマー、無機フィラー、ガラス繊維などが配合される。 |
構造上は、芳香環を持つテレフタレート骨格と柔軟なブチレン鎖を含むため、剛性、耐熱性、結晶性、成形流動性のバランスを取りやすい。PETよりもメチレン鎖が長く、結晶化が進みやすいため、射出成形用材料として扱いやすい場合が多い。
種類
| 種類の名称 | 主成分または特徴 | 長所 | 短所 | 主な用途 |
|---|---|---|---|---|
| 非強化PBT | PBT単体を主体とする標準グレード | 成形性、電気特性、表面外観が良い | GF強化品に比べて剛性、HDT、寸法安定性は低い | 小型部品、電装部品、一般成形品 |
| GF強化PBT | PBTにガラス繊維を配合した強化グレード | 剛性、強度、耐熱性、寸法安定性が高い | 反り、異方性、表面荒れ、金型摩耗に注意 | コネクタ、センサーケース、モーター部品、自動車部品 |
| 難燃PBT | 難燃剤を配合したPBT | UL94 V-0相当を狙えるグレードがある | 難燃剤により機械特性、流動性、耐トラッキング性が変化する | コネクタ、リレー、スイッチ、電気電子部品 |
| 耐加水分解PBT | 加水分解抑制を目的に安定化したグレード | 高温高湿、冷却水、車載環境での耐久性を高めやすい | 強酸、強アルカリ、蒸気条件では十分な確認が必要である | 自動車電装部品、センサー部品、湿熱環境部品 |
| 低反りPBT | GF、無機フィラー、アロイ化などで反りを抑えたグレード | 精密成形品の寸法安定性を高めやすい | 衝撃性、流動性、外観が変化する場合がある | 薄肉精密部品、コネクタ、ケース部品 |
| 摺動PBT | PTFE、シリコーン、潤滑剤などを配合したグレード | 摩擦係数や摩耗量を低減しやすい | 接点汚染、アウトガス、塗装・接着性低下に注意 | ギア、軸受、摺動ガイド、カム部品 |
| 食品接触対応PBT | 食品衛生、FDA、EU食品接触などを意識したグレード | 食品機械部品や厨房機器部品で検討しやすい | 法規制適合はグレード、色、添加剤、使用温度で確認が必要である | 食品機械部品、ポンプ部品、電装部品 |
成形加工
| 加工方法 | 適正 | 内容 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 射出成形 | ◎ | PBTの代表的な加工方法である。コネクタ、リレー、スイッチ、自動車電装部品などに広く使用される。 | 乾燥不足、過剰滞留、金型温度不足、反り、ウェルド強度に注意する。 |
| 押出成形 | ○ | フィルム、シート、チューブ、異形押出で使用される場合がある。 | 分子量、溶融粘度、乾燥状態、結晶化制御が重要である。 |
| ブロー成形 | △ | 専用グレードでは検討可能であるが、一般には射出成形用途が中心である。 | 溶融張力、結晶化、肉厚制御を確認する必要がある。 |
| 圧縮成形 | △ | 試験片、板材、特殊成形で使われる場合がある。 | 加熱条件、結晶化、残留応力、ボイドに注意する。 |
| 真空成形 | △ | シートグレードでは可能な場合があるが、一般的なPBT射出グレードでは主用途ではない。 | 結晶化速度が速いため、加熱条件と成形温度範囲の管理が必要である。 |
| 切削加工 | ○ | 板材、丸棒、試作部品の切削加工が可能である。 | GF強化品では工具摩耗、バリ、繊維露出、寸法異方性に注意する。 |
| 溶着 | ○ | 超音波溶着、振動溶着、レーザー溶着対応グレードで検討される。 | GF量、顔料、難燃剤、レーザー透過性、溶着リブ設計を確認する。 |
| 塗装・印刷 | △ | 表面処理やプライマーにより対応できる場合がある。 | 結晶性樹脂であり、密着性は条件依存である。離型剤、油分、添加剤の影響を確認する。 |
| 接着 | △ | エポキシ系、ウレタン系、シアノアクリレート系などで検討される。 | 表面処理、プライマー、粗化、薬品耐性、熱サイクル後の密着性評価が必要である。 |
代表的な成形条件
| 項目 | 代表条件 | 備考 |
|---|---|---|
| 予備乾燥 | 110〜130℃、3〜5時間程度 | グレード、乾燥機性能、初期含水率により調整する。乾燥不足は加水分解、銀条、物性低下の原因となる。 |
| シリンダー温度 | 230〜260℃程度 | 難燃、GF強化、流動グレードでは推奨条件が異なる。 |
| 金型温度 | 50〜100℃程度 | 寸法安定性、結晶化、表面外観、反りに影響する。 |
| 成形収縮率 | 非強化:1.2〜2.2%程度 GF強化:0.2〜1.0%程度 | 流動方向、直角方向、GF量、肉厚、金型温度により大きく変化する。 |
| 滞留管理 | 過剰滞留を避ける | 熱劣化、分子量低下、変色、ガス、アウトガスの原因となる。 |
代表的な物性値又は機械的性質
| 項目 | 単位 | 非強化PBT | GF30%強化PBT | 難燃GF強化PBT | 備考 |
|---|---|---|---|---|---|
| 密度 | g/cm3 | 1.30〜1.32 | 1.50〜1.60 | 1.55〜1.70 | 充填材、難燃剤、GF量により変化する。 |
| 引張強さ | MPa | 45〜60 | 110〜150 | 90〜140 | 乾燥状態、試験速度、GF配向により変化する。 |
| 伸び | % | 50〜200 | 2〜5 | 1.5〜4 | GF強化品では伸びが大きく低下する。 |
| 曲げ弾性率 | MPa | 2,200〜2,800 | 7,000〜11,000 | 7,000〜12,000 | GF、無機フィラー、結晶化度により変化する。 |
| アイゾット衝撃強さ | kJ/m2 | 3〜8 | 6〜12 | 5〜10 | ノッチ付きの代表値であり、耐衝撃改良品では高くなる。 |
| 荷重たわみ温度 | ℃ | 55〜80 | 190〜220 | 190〜215 | 1.8MPa荷重の目安である。GF強化で大きく向上する。 |
| 融点 | ℃ | 220〜230 | 220〜230 | 220〜230 | 結晶性ポリエステルである。 |
| ガラス転移温度 | ℃ | 40〜60 | 40〜60 | 40〜60 | 測定法により差が出る。 |
| 連続使用温度 | ℃ | 80〜120 | 120〜150 | 120〜150 | 荷重、空気中、湿熱、薬品接触で実用温度は変わる。 |
| 吸水率 | % | 0.1〜0.3 | 0.1〜0.3 | 0.1〜0.4 | 23℃水中24時間の目安である。PA系樹脂より低吸水で寸法安定性に優れる。 |
| 体積抵抗率 | Ω・cm | 1015〜1017 | 1014〜1016 | 1013〜1016 | 湿度、難燃剤、カーボン系添加剤、汚染により変化する。 |
| 難燃性 | UL94 | HB相当が多い | HB〜V-0相当 | V-0相当を狙うグレードが多い | 厚み、色、添加剤、認証グレードで確認が必要である。 |
| 酸素指数 | % | 20〜23程度 | 20〜24程度 | 25〜35以上の場合がある | 難燃剤の種類と配合量により大きく変化する。 |
上記の数値は代表値又は目安であり、保証値ではない。実際の設計では、メーカーのグレード別データシート、成形条件、アニール条件、吸湿状態、温度、荷重、応力、薬品接触時間、成形品肉厚を確認する必要がある。
耐薬品性
| 薬品分類 | 代表薬品 | 評価 | 実務上の注意点 |
|---|---|---|---|
| 酸類 | 希塩酸、希硫酸、酢酸 | ○〜△ | 低濃度・常温では使用可能な場合があるが、高濃度、長時間、高温では加水分解や劣化に注意する。 |
| 強酸 | 濃硫酸、濃硝酸、発煙酸 | × | 酸化性強酸では分解、脆化、変色が起こりやすい。 |
| アルカリ類 | 水酸化ナトリウム、KOH、アルカリ洗浄剤 | △〜× | ポリエステル結合がアルカリ加水分解を受けやすい。濃度、温度、接触時間の影響が大きい。 |
| 低級アルコール類 | メタノール、エタノール、IPA | ○〜◎ | 常温短時間では比較的安定な場合が多いが、応力下、高温、長期浸漬では確認が必要である。 |
| 高級アルコール類 | グリセリン、ベンジルアルコール、MMB | ○〜△ | 溶媒の極性、温度、添加剤抽出、応力割れを確認する必要がある。 |
| 芳香族炭化水素類 | トルエン、キシレン、エチルベンゼン | ○〜△ | 短時間では比較的安定な場合があるが、膨潤、応力割れ、添加剤抽出に注意する。 |
| 脂肪族炭化水素類 | ヘキサン、ヘプタン、ミネラルスピリット | ◎〜○ | 一般に良好であるが、燃料添加剤、温度、応力下での確認が必要である。 |
| ケトン | アセトン、MEK、MIBK | △ | 膨潤、白化、応力割れ、表面荒れが起こる場合がある。 |
| エステル | 酢酸エチル、酢酸ブチル、DBE | △〜× | SP値が近く、膨潤や軟化が起こりやすい場合がある。長時間接触には注意する。 |
| 塩素系溶剤 | ジクロロメタン、クロロホルム、トリクロロエチレン | × | 溶解、膨潤、クラックのリスクが高い。洗浄用途では避けるのが基本である。 |
| 水・温水 | 水、温水、湿熱 | ○〜△ | 常温水では比較的安定であるが、高温水、蒸気、長期湿熱では加水分解に注意する。 |
| 油 | 鉱物油、潤滑油、グリース、作動油 | ◎〜○ | 一般に耐油性は良好である。添加剤、酸化劣化油、高温油では評価が必要である。 |
| 燃料 | ガソリン、軽油、燃料油 | ○ | 燃料組成、アルコール混合燃料、温度、内圧、応力を確認する必要がある。 |
耐薬品性評価は、PBTのグレード、結晶化度、ガラス繊維量、難燃剤、成形時の残留応力、薬品濃度、温度、接触時間、荷重、応力に強く依存する。特に、アルカリ洗浄剤、高温水、蒸気、酸性洗浄剤、塩素系溶剤、エステル系溶剤では、実部品形状での浸漬試験、応力負荷試験、湿熱試験を行うことが望ましい。
SP値(溶解度パラメータ)
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 代表的なSP値 | 20〜22 MPa1/2程度 |
| 材料分類 | 芳香族ポリエステル系結晶性樹脂 |
| 判断上の注意 | SP値は溶解・膨潤傾向を見るための目安であり、耐薬品性を単独で判断する指標ではない。PBTでは結晶化度、加水分解、応力割れ、添加剤抽出、GF界面、温度、薬品濃度の影響が大きい。 |
溶解性の目安
| SP値差 | 溶解・膨潤の目安 | 判定 |
|---|---|---|
| 0〜2 | 膨潤・軟化しやすい | × |
| 2〜5 | 条件により膨潤する | △ |
| 5〜8 | 短時間接触では比較的安定 | ○ |
| 8以上 | 溶解・膨潤しにくい | ◎ |
SP値から見た耐溶剤性
PBTの代表SP値を21 MPa1/2程度と仮定した場合の、代表溶剤とのSP値差と溶解・膨潤傾向の目安を以下に示す。実際には、HSP、結晶化度、温度、薬品濃度、接触時間、応力、成形品の残留応力を含めて判断する必要がある。
| 薬品名 | 代表SP値 MPa1/2 | PBTとの差 | SP値から見た評価 | 実務上の注意 |
|---|---|---|---|---|
| 水 | 47.9 | 約26.9 | ◎ | SP値差は大きいが、高温水や蒸気では加水分解に注意する。 |
| メタノール | 29.7 | 約8.7 | ◎〜○ | 常温短時間では比較的安定な場合が多い。 |
| エタノール | 26.0 | 約5.0 | ○ | 応力下、長時間浸漬、高温では確認が必要である。 |
| IPA | 23.5 | 約2.5 | △ | SP値差は小さめだが、実用上は比較的安定な場合がある。応力割れ試験で確認する。 |
| アセトン | 20.3 | 約0.7 | × | SP値上は近く、膨潤、白化、応力割れに注意する。 |
| MEK | 19.0 | 約2.0 | △〜× | 長時間接触や応力下でリスクがある。 |
| 酢酸エチル | 18.6 | 約2.4 | △ | 膨潤、軟化、添加剤抽出に注意する。 |
| トルエン | 18.2 | 約2.8 | △ | 短時間では耐える場合があるが、長期浸漬や応力下では評価が必要である。 |
| キシレン | 18.0 | 約3.0 | △ | 膨潤、応力割れ、表面変化を確認する。 |
| ヘキサン | 14.9 | 約6.1 | ○ | 一般に比較的良好であるが、添加剤抽出や燃料成分の影響に注意する。 |
| ジクロロメタン | 20.2 | 約0.8 | × | 溶解・膨潤リスクが高く、洗浄用途では避けるのが基本である。 |
| クロロホルム | 19.0 | 約2.0 | × | 塩素系溶剤はPBTに対して不適となる場合が多い。 |
評価基準は、◎非常に良好、○概ね良好、△注意が必要、×不適の目安である。SP値差が大きくても、加水分解、酸化、アルカリ分解、応力割れが起こる場合があるため、耐薬品性はSP値だけで判断しない。
製法
| 工程 | 内容 | 実務上の注意点 |
|---|---|---|
| 原料 | テレフタル酸又はジメチルテレフタレート、1,4-ブタンジオールを主原料とする。 | 原料純度、水分、触媒、末端基制御が分子量と耐加水分解性に影響する。 |
| エステル化又はエステル交換 | テレフタル酸法ではエステル化、DMT法ではエステル交換によりオリゴマーを形成する。 | 副生する水又はメタノールを除去しながら反応を進める。 |
| 重縮合 | 高温・減圧下で重縮合し、高分子量PBTを得る。 | 過剰な熱履歴は分解、着色、分子量低下の原因となる。 |
| ペレット化 | 溶融押出後、ストランドカット又は水中カットでペレット化する。 | 水分管理、熱履歴、異物管理が重要である。 |
| コンパウンド | ガラス繊維、難燃剤、安定剤、滑剤、顔料、無機フィラー、エラストマーなどを配合する。 | GF折損、分散、難燃剤分解、アウトガス、成形流動性を確認する。 |
| 品質管理 | 粘度、末端カルボキシル基、水分、灰分、色相、機械物性、電気特性などを管理する。 | 耐加水分解用途では末端基量や湿熱後物性保持率が重要である。 |
代表的な反応式
テレフタル酸法の概略反応式は、以下のように表される。
n HOOC−C6H4−COOH + n HO−(CH2)4−OH → [−O−(CH2)4−O−CO−C6H4−CO−]n + 2n H2O
ジメチルテレフタレート法の概略反応式は、以下のように表される。
n CH3OOC−C6H4−COOCH3 + n HO−(CH2)4−OH → [−O−(CH2)4−O−CO−C6H4−CO−]n + 2n CH3OH
実際の工業製法では、反応平衡、触媒、減圧、温度、滞留時間、末端基制御、固相重合の有無により、分子量、流動性、耐熱性、耐加水分解性、色相が変化する。
詳細な利用用途
| 用途分野 | 代表用途 | 採用理由 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 自動車 | コネクタ、センサーケース、リレー部品、ECU周辺部品、モーター部品、ランプ部品 | 耐熱性、電気絶縁性、寸法安定性、耐油性、成形性のバランスが良い。 | 高温高湿、冷熱サイクル、燃料、油、塩水、振動、応力下での評価が必要である。 |
| 電気・電子 | コネクタ、ソケット、スイッチ、リレー、ブレーカー、コイルボビン | 難燃化しやすく、電気特性と成形寸法安定性に優れる。 | UL認証、CTI、耐トラッキング性、はんだ耐熱、アウトガスを確認する。 |
| 機械部品 | ギア、カム、軸受、摺動ガイド、ポンプ部品 | 耐摩耗性、剛性、耐油性、成形性が良い。 | 摩耗粉、潤滑条件、相手材、荷重、温度、クリープを確認する。 |
| 医療 | 医療機器部品、電装ケース、機構部品 | 寸法安定性、成形性、電気特性を活かせる場合がある。 | 医療用途では生体適合性、滅菌耐性、抽出物、規制適合を個別グレードで確認する必要がある。 |
| 食品機械 | ポンプ部品、搬送部品、センサー部品、電装ケース | 耐油性、低吸水、寸法安定性が有利な場合がある。 | 食品接触規制、洗浄剤、アルカリ洗浄、高温水、蒸気殺菌への耐性を確認する。 |
| 建築・設備 | 電気設備部品、制御盤部品、照明部品、配線部品 | 難燃性、寸法安定性、電気絶縁性を活かせる。 | 屋外では紫外線、熱、湿気、難燃規格、長期耐久性を確認する。 |
| 家電 | スイッチ、モーター周辺部品、ファン部品、電源部品 | 精密成形性、耐熱性、電気特性、コストバランスが良い。 | 難燃、発煙、臭気、アウトガス、リサイクル性を確認する。 |
| フィルム・シート | 高機能フィルム、電気絶縁フィルム、成形シート | 耐薬品性、電気特性、寸法安定性を活かせる。 | 一般には射出成形用途が中心であり、専用グレードの確認が必要である。 |
関連材料との比較
| 比較材料 | 特徴 | 対象材料との違い |
|---|---|---|
| ポリエチレンテレフタレート(PET) | ボトル、フィルム、繊維で広く使用される芳香族ポリエステルである。 | PBTはPETより結晶化速度が速く、射出成形で扱いやすい場合が多い。PETはフィルム、ボトル、繊維用途で強い。 |
| ポリトリメチレンテレフタレート(PTT) | 柔軟性、弾性回復性に特徴を持つポリエステルである。 | PBTは電気電子・自動車成形材料としての実績とグレード展開が豊富である。PTTは繊維や柔軟性用途で特徴が出やすい。 |
| ポリブチレンナフタレート(PBN) | ナフタレン骨格を持つ高機能ポリエステルである。 | PBNは耐熱性、バリア性、寸法安定性で有利な場合があるが、PBTは汎用性、成形材料としての入手性、コストで有利である。 |
| ナイロン6(PA6) | 靱性、耐摩耗性、耐衝撃性に優れるポリアミドである。 | PBTはPA6より低吸水で寸法安定性が良い場合が多い。PA6は靱性や耐摩耗用途で有利な場合がある。 |
| ナイロン66(PA66) | PA6より高融点で、機械強度、耐熱性に優れるポリアミドである。 | PBTはPA66より低吸水で電気特性の湿度依存が小さい場合が多い。PA66-GFは高温強度や靱性で有利な場合がある。 |
| ポリカーボネート(PC) | 透明性、耐衝撃性、寸法安定性に優れる非晶性エンプラである。 | PBTは耐薬品性、耐油性、結晶性による耐溶剤性で有利な場合がある。PCは透明性と衝撃性で有利である。 |
| ポリフェニレンサルファイド(PPS) | 耐熱性、耐薬品性、寸法安定性に優れるスーパーエンプラである。 | PPSは高温耐薬品性でPBTより有利である。一方、PBTは成形性、外観、コスト、グレード選択性で有利な場合がある。 |
| ポリアセタール(POM) | 摺動性、耐摩耗性、寸法安定性に優れる結晶性エンプラである。 | POMは摺動部品で強いが、難燃性や電気電子用途ではPBTが選ばれやすい。PBTは高温高湿での加水分解、POMは酸や塩素系薬品に注意する。 |
代表的なメーカー
| メーカー | 代表製品・ブランド | 概要 |
|---|---|---|
| 東レ | トレコン、TORAYCON | PBT樹脂の代表的な国内メーカーであり、自動車、電気電子、機械部品向けの各種グレードを展開している。 |
| ポリプラスチックス | DURANEX | PBT成形材料の代表的メーカーであり、GF強化、難燃、低反り、耐加水分解などのグレードを展開している。 |
| 三菱ケミカル | NOVADURAN | PBT樹脂の代表的ブランドを展開し、電気電子、自動車、高機能フィルム用途などに使用される。 |
| BASF | Ultradur | グローバルに展開されるPBT樹脂ブランドであり、自動車、電気電子部品向けの各種グレードがある。 |
| Celanese | Celanex | PBT樹脂の代表的なグローバルブランドであり、電気電子、自動車、工業部品向けに使用される。 |
| SABIC | VALOX | PBT系エンプラの代表的ブランドであり、寸法安定性、耐薬品性、電気特性を活かした用途に使用される。 |
| Envalior | Arnite | ポリエステル系エンプラとしてPBT系グレードを展開しており、自動車、電気電子、機械部品向けに使用される。 |
| LANXESS | Pocan | PBT及びPBTブレンド系のエンプラを展開し、電気電子、自動車、精密部品用途で使用される。 |
代表メーカー・ブランドは、公開情報で確認できる実在例を中心に記載している。実際の採用では、グレード別データシート、UL登録、RoHS、REACH、食品接触、FDA、医療用途、難燃規格、リサイクル材含有、ハロゲンフリー要求などを個別に確認する必要がある。
法規制・規格上の注意
| 項目 | 確認内容 | 注意点 |
|---|---|---|
| RoHS | 鉛、水銀、カドミウム、六価クロム、特定臭素系難燃剤、フタル酸エステル類など | 難燃PBTでは難燃剤、顔料、安定剤の適合確認が必要である。 |
| REACH | SVHC、制限物質、登録物質 | 輸出用途では最新の規制リスト確認が必要である。 |
| UL94 | HB、V-2、V-0など | 厚み、色、グレードごとに認証が異なる。 |
| 食品衛生・食品接触 | 日本の食品衛生法、ポジティブリスト、FDA、EU食品接触規則など | 食品接触用途では、樹脂だけでなく添加剤、色、使用温度、接触食品の種類を確認する。 |
| 医療用途 | 生体適合性、滅菌耐性、抽出物、溶出物 | 一般工業グレードを医療用途に転用することは避け、医療用途対応可否をメーカーに確認する。 |
| アウトガス | 揮発成分、難燃剤由来成分、潤滑剤、低分子成分 | 光学部品、電子部品、密閉空間ではアウトガス評価が必要である。 |
用途別選定の目安
| 用途 | 推奨されやすいグレード | 主な確認項目 |
|---|---|---|
| コネクタ | 難燃GF強化PBT、低反りPBT | UL94、CTI、寸法安定性、ウェルド強度、はんだ耐熱、吸湿後電気特性 |
| ギア | 摺動PBT、GF強化PBT | 摩耗、摩擦係数、騒音、相手材、潤滑条件、クリープ |
| 軸受・摺動部品 | 摺動改良PBT、PTFE配合PBT | 摩耗粉、面圧、速度、発熱、潤滑剤、寸法変化 |
| チューブ | 押出用PBT、耐薬品PBT | 押出安定性、耐薬品性、曲げ疲労、内圧、加水分解 |
| 筐体 | 難燃PBT、低反りPBT、外観改良PBT | 難燃性、反り、表面外観、塗装性、耐候性 |
| フィルム | フィルム用PBT | 厚み精度、結晶化、熱収縮、電気特性、耐薬品性 |
| 車載センサー部品 | 耐加水分解GF強化PBT、難燃PBT | 湿熱、冷熱サイクル、耐油、耐燃料、寸法安定性、端子保持力 |
注意点
- PBTはポリエステル系樹脂であるため、高温水、蒸気、強酸、強アルカリでは加水分解に注意が必要である。
- 成形前乾燥が不十分な場合、成形中に分子量低下、銀条、脆化、機械強度低下が起こる場合がある。
- GF強化グレードでは、流動方向と直角方向で収縮率が異なり、反りや寸法異方性が生じやすい。
- 難燃グレードでは、難燃剤の種類により電気特性、耐トラッキング性、アウトガス、金型腐食性、リサイクル性が変化する。
- 摺動グレードでは、滑剤やPTFEなどにより摩擦特性は改善されるが、塗装性、接着性、接点汚染、アウトガスに注意が必要である。
- 屋外用途では、紫外線、熱、湿気、酸化劣化により変色、脆化が起こる場合があるため、耐候グレードの確認が必要である。
- 食品機械や医療用途では、材料名だけで判断せず、グレード別の法規制適合、抽出物、洗浄剤耐性、滅菌条件を確認する必要がある。
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