概要
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 材料名 | PETG樹脂 |
| 略記号 | PETG、PET-G |
| IUPAC | poly(ethylene terephthalate-co-cyclohexanedimethylene terephthalate) など。共重合組成により厳密な表記は異なる。 |
| 英語名 | Polyethylene Terephthalate Glycol-modified、Glycol-modified PET、PETG Copolyester |
| 日本語名 | グリコール変性ポリエチレンテレフタレート、PETG樹脂、透明共重合ポリエステル、非晶性共重合ポリエステル |
| 分類 | 熱可塑性ポリエステル、共重合ポリエステル、透明樹脂、非晶性または低結晶性ポリエステル |
| プラスチック分類 | 一般にはエンジニアリング・プラスチック周辺材料、透明熱可塑性樹脂、包装・シート用樹脂として扱われる。 |
| 化学式または代表構造 | 代表構造:-[O-CH2-CH2-O-CO-C6H4-CO]-m – [O-CH2-C6H10-CH2-O-CO-C6H4-CO]-n– |
| CAS No. | PETGは共重合体であり、単一のCAS No.で整理されない場合が多い。PET系ポリエステルとして 25038-59-9 が参照される場合がある。 |
| 構造・主成分 | テレフタル酸またはジメチルテレフタレート、エチレングリコール、1,4-シクロヘキサンジメタノールなどを主成分とする共重合ポリエステルである。 |
| 主な用途 | 透明シート、食品容器、化粧品容器、医療部品、ディスプレイ部材、カード、POP、包装材、3Dプリンター用フィラメント、透明成形品など。 |
PETG樹脂は、ポリエチレンテレフタレートをグリコール変性した透明共重合ポリエステルである。一般的なPETと比較して結晶化しにくく、透明性、耐衝撃性、熱成形性、押出シート成形性に優れる。特に透明シート、容器、医療・衛生関連部品、3Dプリンター用フィラメントなどで使用される。
PETGは、PC、PMMA、PVC、PET、PCTGなどの透明樹脂と比較されることが多い。ポリカーボネートほどの耐熱性はないが、成形加工性、耐薬品性、透明性、耐衝撃性のバランスが良い。塩化ビニル系透明材料の代替、BPA非使用透明材料、熱成形シート用途として選定される場合がある。
一方で、強アルカリ、高温水、加水分解、応力下での溶剤接触、ケトン類、塩素系溶剤、芳香族炭化水素には注意が必要である。実使用では、グレード、温度、濃度、荷重、応力、薬品接触時間、成形履歴、残留応力を含めて評価する必要がある。
特徴
長所
- 透明性が高く、厚肉品やシートでも外観性が良い。
- 耐衝撃性が比較的高く、割れにくい透明材料として使用できる。
- 押出成形、射出成形、ブロー成形、真空成形、熱成形に適する。
- 一般的なPETより結晶化しにくく、透明成形品を得やすい。
- 食品容器、医療部品、化粧品容器、包装用途に使用されるグレードがある。
- PCと比較して成形温度が低く、成形加工しやすい場合がある。
- ABSやPSより透明性、耐薬品性、低臭気性で有利な場合がある。
- 3Dプリンター用途では、PLAより靭性が高く、ABSより反りが少ない材料として使用される。
短所
- 耐熱性はPC、PCT、PBT、PET結晶化品より低い。
- 強アルカリ、高温水、蒸気、長時間湿熱環境では加水分解に注意が必要である。
- ケトン類、芳香族炭化水素、塩素系溶剤、強い溶剤では膨潤、白化、クラックが発生する場合がある。
- 応力下で薬品に接触すると環境応力割れが発生することがある。
- 成形前乾燥が不十分な場合、分子量低下、銀条、気泡、強度低下が起こる。
- 難燃性は標準グレードでは高くなく、難燃用途では難燃グレードの確認が必要である。
外観
一般に無色透明から半透明であり、着色グレード、拡散グレード、耐候グレード、難燃グレード、押出シート用グレード、射出成形用グレードなどがある。透明性は良好であるが、成形条件、乾燥状態、肉厚、添加剤、再生材比率によりヘイズが変化する。
耐熱性
PETGのガラス転移温度は一般に70〜85℃程度であり、荷重たわみ温度はグレードや荷重条件により60〜75℃程度が目安である。連続使用温度は概ね50〜70℃程度であり、高温水、蒸気、熱風、荷重下では変形や加水分解に注意する。
耐薬品性
水、希酸、塩類水溶液、低級アルコール、一部の油類に対しては比較的安定である。一方で、強アルカリ、濃酸、高温水、ケトン、エステル、芳香族炭化水素、塩素系溶剤では白化、膨潤、軟化、クラック、強度低下が生じる場合がある。
加工性
射出成形、押出シート、ブロー成形、真空成形、圧空成形、切削加工、曲げ加工、印刷、接着、溶着などに対応しやすい。吸湿による加水分解を避けるため、成形前乾燥が重要である。シート用途では低温で熱成形しやすいが、過熱するとたれ、白化、寸法変化が生じる。
分類上の注意
PETGはPETの単純な透明グレードではなく、グリコール変性により結晶化を抑えた共重合ポリエステルである。PCTG、PCTA、Tritan系コポリエステル、非晶性PET、APET、PET-Gシートなどと近い領域で扱われるが、共重合成分、耐熱性、耐薬品性、耐衝撃性はグレードにより異なる。
構造式
化学式の画像
画像タグは使用せず、HTML内で代表構造を文字式として示す。白黒の構造式画像を作成する場合は、下記の構造単位を基にMS Pゴシック等の読みやすいフォントで作図する。
| 項目 | 構造表記 |
|---|---|
| PET由来構造単位 | -O-CH2-CH2-O-CO-C6H4-CO- |
| CHDM変性構造単位 | -O-CH2-C6H10-CH2-O-CO-C6H4-CO- |
| 代表的な共重合表記 | [-O-CH2-CH2-O-CO-C6H4-CO-]m[-O-CH2-C6H10-CH2-O-CO-C6H4-CO-]n |
| 主な結合 | エステル結合 -CO-O- を主鎖に持つ。 |
代表的な構造単位
PETGは、芳香族ジカルボン酸成分であるテレフタル酸単位と、グリコール成分であるエチレングリコールおよび1,4-シクロヘキサンジメタノールなどから構成される。CHDMなどの共重合成分によりPETの結晶化が抑制され、透明性と熱成形性が向上する。
モノマーまたは構成単位
- テレフタル酸またはジメチルテレフタレート
- エチレングリコール
- 1,4-シクロヘキサンジメタノール
- グレードにより他のジオール、酸成分、改質成分が使用される場合がある。
共重合体や変性グレード
PETGは共重合ポリエステルの一種であり、CHDM量、分子量、添加剤、安定剤、滑剤、耐候剤、難燃剤、着色剤などにより特性が調整される。近縁材料としてPCTG、PCTA、非晶性PET、透明コポリエステルがあるが、耐熱性、耐薬品性、衝撃性は同一ではない。
種類
| 種類の名称 | 主成分または特徴 | 長所 | 短所 | 主な用途 |
|---|---|---|---|---|
| 汎用PETG | 標準的なグリコール変性PET | 透明性、耐衝撃性、成形性のバランスが良い。 | 耐熱性は中程度である。 | 透明容器、雑貨、カバー、ディスプレイ材 |
| 押出シート用PETG | シート押出、熱成形向けに流動性を調整したグレード | 熱成形性、外観性、打ち抜き性が良い。 | 高温使用、強アルカリ洗浄には注意が必要である。 | 食品容器、トレー、POP、カード、包装材 |
| 射出成形用PETG | 射出成形向けに流動性、離型性、衝撃性を調整したグレード | 透明成形品を得やすく、肉厚品にも適する。 | 乾燥不足で外観不良、強度低下が起こる。 | 化粧品容器、医療部品、透明ケース、部品カバー |
| ブロー成形用PETG | 容器成形向けに溶融強度を調整したグレード | 透明容器、厚肉容器の成形に適する。 | 耐熱容器用途ではPET、PCT、PCTGとの比較が必要である。 | 化粧品ボトル、医療容器、日用品容器 |
| 耐衝撃PETG | 衝撃性を高めた共重合または改質グレード | 割れにくく、透明性と靭性を両立しやすい。 | 剛性、耐熱性が低下する場合がある。 | 防護カバー、透明筐体、玩具、輸送部材 |
| 耐候PETG | 紫外線吸収剤、安定剤を配合したグレード | 屋内外の光劣化を抑えやすい。 | 長期屋外用途ではPC、PMMA、フッ素系材料との比較が必要である。 | サイン、表示板、屋外カバー、ディスプレイ材 |
| 難燃PETG | 難燃剤を配合したグレード | 電気・電子用途で使いやすい場合がある。 | 透明性、衝撃性、流動性が低下する場合がある。 | 電気部品、カバー、筐体、照明部材 |
| GF強化PETG | ガラス繊維を配合した強化グレード | 剛性、寸法安定性、耐熱性が向上する。 | 透明性は失われ、成形摩耗、異方性に注意する。 | 構造部品、機構部品、電装部品 |
| 摺動PETG | 潤滑剤、PTFE、シリコーン系添加剤などを配合する場合がある。 | 摩擦、きしみ、摩耗を低減しやすい。 | 透明性、接着性、印刷性に影響する場合がある。 | ガイド、ローラー、摺動カバー、小型機構部品 |
| 食品接触対応PETG | 食品接触用途を想定した管理グレード | 食品容器、包装材で採用しやすい。 | 法規制は国、用途、添加剤、移行試験条件により確認が必要である。 | 食品容器、トレー、ボトル、包装材 |
| 3Dプリンター用PETG | FDM/FFF用フィラメントとして調整したグレード | PLAより靭性があり、ABSより反りが少ない。 | 糸引き、吸湿、表面荒れ、寸法精度に注意が必要である。 | 試作品、治具、透明部品、機構確認モデル |
成形加工
| 加工方法 | 適性 | 加工上の注意点 |
|---|---|---|
| 射出成形 | ◎ | 乾燥管理が重要である。シリンダー温度、滞留時間、せん断発熱に注意する。 |
| 押出成形 | ◎ | 透明シート、フィルム、異形押出に適する。ゲル、異物、吸湿による泡に注意する。 |
| ブロー成形 | ○ | グレードにより溶融強度が異なる。容器肉厚、透明性、落下強度を確認する。 |
| 真空成形・圧空成形 | ◎ | 低温で熱成形しやすい。過熱によるたれ、白化、寸法変化に注意する。 |
| 圧縮成形 | △ | 一般的な主成形法ではない。板材、試験片、特殊加工では条件検討が必要である。 |
| カレンダー成形 | △ | PVCほど一般的ではない。シート用途では押出成形が主流である。 |
| 切削加工 | ○ | 透明板、厚板で可能である。発熱、欠け、応力白化、クラックに注意する。 |
| 曲げ加工 | ○ | 加熱曲げが可能である。過熱、残留応力、白化に注意する。 |
| 接着 | ○ | 溶剤系接着剤ではクラックに注意する。用途に応じて接着剤適合性を確認する。 |
| 溶着 | ○ | 超音波溶着、熱板溶着、レーザー溶着はグレード、肉厚、添加剤の影響を受ける。 |
| 印刷・塗装 | ○ | 表面処理、インキ、溶剤、乾燥条件により密着性とクラックが変化する。 |
| 3Dプリント | ◎ | 吸湿、糸引き、ノズル温度、ベッド温度、冷却条件を管理する。 |
代表的な成形条件
| 項目 | 代表条件 | 備考 |
|---|---|---|
| 乾燥温度 | 60〜75℃ | 乾燥機、露点、グレードにより異なる。 |
| 乾燥時間 | 3〜6時間 | 吸湿状態、ペレット保管状態、成形品要求により調整する。 |
| 射出成形シリンダー温度 | 220〜260℃ | 高温滞留で熱劣化、黄変、分子量低下が起こる場合がある。 |
| 金型温度 | 20〜50℃ | 透明性、寸法安定性、離型性に影響する。 |
| 押出温度 | 210〜250℃ | シート厚み、吐出量、ダイス設計により調整する。 |
| 熱成形温度 | 90〜140℃ | シート厚み、加熱方式、成形深さにより異なる。 |
| 成形収縮率 | 0.2〜0.6% | 非強化グレードの目安。GF強化品では方向差が大きい。 |
| 3Dプリントノズル温度 | 220〜250℃ | フィラメントメーカー推奨条件を優先する。 |
| 3Dプリントベッド温度 | 60〜85℃ | 反り、密着、糸引き、透明性に影響する。 |
代表的な物性値又は機械的性質
| 項目 | 単位 | 汎用PETG | 耐衝撃・透明PETG | GF強化PETG | 備考 |
|---|---|---|---|---|---|
| 密度 | g/cm3 | 1.25〜1.29 | 1.25〜1.29 | 1.35〜1.55 | GF量、添加剤により変化する。 |
| 比重 | – | 1.25〜1.29 | 1.25〜1.29 | 1.35〜1.55 | 水を1とした代表値である。 |
| 引張強さ | MPa | 45〜60 | 40〜55 | 70〜120 | 降伏強さまたは破断強さ。試験法により異なる。 |
| 伸び | % | 80〜250 | 100〜300 | 2〜5 | 非強化品は延性が高い。GF強化品は伸びが小さい。 |
| 曲げ弾性率 | MPa | 1,500〜2,200 | 1,400〜2,000 | 4,000〜8,000 | 剛性の目安である。 |
| 曲げ強さ | MPa | 60〜80 | 55〜75 | 100〜180 | GF強化により大きく向上する。 |
| アイゾット衝撃強さ | kJ/m2 | 5〜15 | 10〜80 | 5〜20 | ノッチ有無、試験温度、グレードにより差が大きい。 |
| 荷重たわみ温度 | ℃ | 60〜75 | 55〜75 | 75〜95 | 1.8MPaまたは0.45MPa条件で値が異なる。 |
| ガラス転移温度 | ℃ | 70〜85 | 70〜85 | 70〜90 | 共重合成分により変化する。 |
| 融点 | ℃ | 明確な融点を示しにくい | 明確な融点を示しにくい | 明確な融点を示しにくい | 非晶性または低結晶性であり、PET結晶性グレードとは異なる。 |
| 連続使用温度 | ℃ | 50〜70 | 50〜70 | 60〜80 | 荷重、湿度、薬品接触により低下する。 |
| 吸水率 | % | 0.1〜0.3 | 0.1〜0.3 | 0.1〜0.3 | PAほど大きくないが、成形前乾燥は重要である。 |
| 体積抵抗率 | Ω・cm | 1015〜1016 | 1015〜1016 | 1013〜1016 | 添加剤、湿度、帯電防止処方により変化する。 |
| 誘電率 | – | 2.8〜3.3 | 2.8〜3.3 | 3.2〜4.5 | 周波数、吸湿、充填材により異なる。 |
| 酸素指数 | % | 20〜23 | 20〜23 | 20〜25 | 標準グレードは自己消火性ではない場合が多い。 |
| 難燃性 | UL94 | HB相当が多い | HB相当が多い | HB〜V-0相当 | 難燃グレードは個別認証を確認する。 |
上記は代表値であり、実際の物性はメーカー、グレード、測定規格、乾燥条件、成形条件、アニール、肉厚、着色、添加剤、再生材比率により変化する。設計では必ず最新の技術資料と実機評価を確認する。
耐薬品性
| 薬品分類 | 代表薬品 | 評価 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 酸類 | 希塩酸、希硫酸、酢酸水溶液、クエン酸水溶液 | ○ | 希酸では比較的安定である。濃酸、高温、長時間接触では劣化する場合がある。 |
| 濃酸 | 濃硫酸、濃硝酸、発煙酸 | × | 分解、変色、強度低下が起こる可能性が高い。 |
| アルカリ類 | 水酸化ナトリウム、KOH、水酸化カリウム、アルカリ洗浄剤 | △〜× | エステル結合が加水分解を受けやすい。濃度、温度、接触時間に注意する。 |
| 低級アルコール類 | メタノール、エタノール、IPA | ○ | 短時間接触では比較的安定な場合が多い。応力下、長時間浸漬では確認が必要である。 |
| 高級アルコール類 | グリセリン、ベンジルアルコール、MMB | ○〜△ | 分子構造により影響が異なる。芳香族アルコール、グリコールエーテル系では注意する。 |
| 芳香族炭化水素類 | トルエン、キシレン、エチルベンゼン | △〜× | 白化、膨潤、クラックが発生する場合がある。 |
| 脂肪族炭化水素類 | ヘキサン、ヘプタン、ミネラルスピリット | ○〜△ | 比較的安定な場合があるが、添加剤、応力、温度により変化する。 |
| ケトン | アセトン、MEK、MIBK、シクロヘキサノン | × | 溶解、膨潤、クラック、白化が起こりやすい。 |
| エステル | 酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル | △〜× | 溶剤性が強く、応力割れに注意する。 |
| 塩素系溶剤 | ジクロロメタン、クロロホルム、トリクロロエチレン | × | 溶解、膨潤、急速な劣化が起こる可能性が高い。 |
| 水・常温水 | 水、純水、水道水 | ◎〜○ | 常温短時間では比較的安定である。 |
| 温水・熱水 | 温水、熱水、蒸気 | △〜× | 高温水、蒸気では加水分解、寸法変化、白化に注意する。 |
| 油 | 鉱物油、植物油、潤滑油 | ○ | 多くの油に比較的安定であるが、添加剤入り油、燃料、温度条件を確認する。 |
| 燃料 | ガソリン、軽油、灯油、アルコール混合燃料 | △ | 燃料成分、芳香族成分、アルコール含有量により膨潤やクラックが発生する場合がある。 |
| 洗剤・界面活性剤 | 中性洗剤、食品工場用洗浄剤、アルカリ洗浄剤 | ○〜× | 中性洗剤は比較的安定な場合が多い。強アルカリ洗浄剤、高温洗浄では注意する。 |
| 消毒剤 | エタノール、次亜塩素酸ナトリウム、過酸化水素 | ○〜△ | 濃度、pH、温度、繰り返し接触で白化、応力割れが起こる場合がある。 |
評価記号は、◎非常に良好、○概ね良好、△注意が必要、×不適を示す。耐薬品性はSP値だけでなく、結晶性、拡散速度、加水分解、酸化劣化、残留応力、成形品肉厚、薬品濃度、温度、接触時間により変化する。
SP値(溶解度パラメータ)
| 項目 | 値 | 単位 | 備考 |
|---|---|---|---|
| PETGの代表的なSP値 δ | 21.5〜23.0 | MPa1/2 | 共重合組成、測定法、推算法により変動する。 |
| 設計上の代表値 | 22.0 | MPa1/2 | 溶剤との相性を概算するための目安である。 |
SP値は、溶解・膨潤の傾向を推定するための目安である。PETGではエステル結合の加水分解、応力割れ、非晶性、薬品の拡散、添加剤、温度の影響が大きいため、SP値だけで耐薬品性を判断してはならない。
溶解性の目安
| SP値差 | 溶解・膨潤の目安 | 判定 |
|---|---|---|
| 0〜2 | 膨潤・軟化しやすい | × |
| 2〜5 | 条件により膨潤する | △ |
| 5〜8 | 短時間接触では比較的安定 | ○ |
| 8以上 | 溶解・膨潤しにくい | ◎ |
SP値から見た耐溶剤性
| 薬品名 | SP値 δ | PETGとの差 | 評価 | 注意点 |
|---|---|---|---|---|
| 水 | 47.9 MPa1/2 | 約25.9 | ◎〜○ | SP値差は大きいが、高温水では加水分解に注意する。 |
| エタノール | 26.0 MPa1/2 | 約4.0 | ○〜△ | 短時間接触では比較的安定な場合が多いが、応力下では確認が必要である。 |
| IPA | 23.5 MPa1/2 | 約1.5 | ○〜△ | SP値差は小さいが、実際には短時間では使用可能な場合がある。長時間浸漬は確認する。 |
| アセトン | 20.3 MPa1/2 | 約1.7 | × | 膨潤、白化、クラックが起こりやすい。 |
| MEK | 19.0 MPa1/2 | 約3.0 | × | ケトン系溶剤であり不適である。 |
| 酢酸エチル | 18.6 MPa1/2 | 約3.4 | △〜× | 溶剤性が強く、応力割れに注意する。 |
| トルエン | 18.2 MPa1/2 | 約3.8 | △〜× | 芳香族炭化水素であり、白化や膨潤が起こる場合がある。 |
| キシレン | 18.0 MPa1/2 | 約4.0 | △〜× | 長時間接触、応力下では不適となる場合が多い。 |
| ヘキサン | 14.9 MPa1/2 | 約7.1 | ○〜△ | SP値差は比較的大きいが、添加剤や燃料成分を確認する。 |
| ジクロロメタン | 20.2 MPa1/2 | 約1.8 | × | 塩素系溶剤であり、溶解・膨潤しやすい。 |
| グリセリン | 33.8 MPa1/2 | 約11.8 | ○ | 常温では比較的安定な場合が多い。高温では確認する。 |
| 水酸化ナトリウム水溶液 | 水溶液のため濃度依存 | 単純比較困難 | △〜× | SP値よりもアルカリ加水分解が支配的である。 |
SP値差による評価は、溶解・膨潤の初期スクリーニングに有効である。しかしPETGでは、エステル結合の化学反応性、pH、温度、応力、成形時の残留歪み、添加剤、フィラー、表面処理が大きく影響する。実使用では必ず実液、実温度、実時間、実荷重で確認する。
製法
原料
- テレフタル酸またはジメチルテレフタレート
- エチレングリコール
- 1,4-シクロヘキサンジメタノール
- 必要に応じて他のジオール、酸成分、安定剤、触媒、滑剤、耐候剤、着色剤を使用する。
重合方法
PETGは、エステル交換法または直接エステル化法によりオリゴマーを生成し、その後に溶融重縮合で高分子量化する。PETと同様にポリエステル系の重縮合反応で製造されるが、CHDMなどの共重合成分を導入することで結晶化を抑制し、透明性と熱成形性を付与する。
代表的な反応式
| 工程 | 代表反応式 |
|---|---|
| 直接エステル化 | n HOOC-C6H4-COOH + m HO-CH2-CH2-OH + k HO-CH2-C6H10-CH2-OH → PETGオリゴマー + H2O |
| エステル交換 | n CH3OOC-C6H4-COOCH3 + m HO-CH2-CH2-OH + k HO-CH2-C6H10-CH2-OH → PETGオリゴマー + CH3OH |
| 重縮合 | PETGオリゴマー → [-O-R-O-CO-C6H4-CO-]n + HO-R-OH |
ペレット化やコンパウンド
重合後のポリマーはストランド化、冷却、カットによりペレット化される。用途に応じて、耐候剤、酸化防止剤、滑剤、離型剤、帯電防止剤、難燃剤、着色剤、ガラス繊維、摺動改質剤などを押出コンパウンドする場合がある。
添加剤、充填材、強化材
透明用途では添加剤の屈折率、分散性、ヘイズへの影響が重要である。難燃、摺動、帯電防止、耐候、抗菌、食品接触、医療用途では、添加剤の規制適合性、抽出性、移行性、滅菌適性を確認する必要がある。GF強化品では剛性と寸法安定性が向上する一方、透明性は失われる。
詳細な利用用途
| 用途分野 | 具体例 | 採用理由 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 自動車 | 内装透明カバー、表示部材、保護カバー、試作部品 | 透明性、成形性、耐衝撃性がある。 | 高温車内、日射、薬品、アウトガスを確認する。 |
| 電気・電子 | 表示窓、照明カバー、透明筐体、保護パネル | 透明性、寸法安定性、加工性が良い。 | 難燃性、UL94、絶縁性、発熱部との距離を確認する。 |
| 機械部品 | 透明カバー、点検窓、治具、ガイド部品 | 視認性と靭性を両立しやすい。 | 摺動摩耗、応力、切削時のクラックに注意する。 |
| 医療 | 医療用容器、透明部品、検査器具、ディスポーザブル部品 | 透明性、耐薬品性、BPA非使用グレードが選定される場合がある。 | 医療グレード、滅菌方法、抽出物、薬事要求を確認する。 |
| 食品機械・食品包装 | 食品容器、トレー、包装シート、透明カバー | 透明性、熱成形性、食品接触対応グレードがある。 | 食品衛生法、FDA、EU規制、洗浄剤、熱水洗浄を確認する。 |
| 建築・設備 | 内装パネル、透明仕切り、表示板、保護板 | 透明性、加工性、耐衝撃性がある。 | 屋外耐候性、難燃性、清掃溶剤、長期荷重を確認する。 |
| 化粧品・日用品 | 透明ボトル、キャップ、ケース、ディスプレイ容器 | 高い透明感と厚肉成形性を得やすい。 | 香料、アルコール、油性成分、応力割れを確認する。 |
| 印刷・カード | カード、POP、ラベル基材、装飾シート | 打ち抜き性、印刷性、透明性が良い。 | インキ溶剤、乾燥熱、反り、接着性を確認する。 |
| 3Dプリント | 試作品、治具、透明モデル、機構確認部品 | PLAより靭性があり、ABSより反りが少ない。 | 吸湿、糸引き、寸法精度、層間強度を確認する。 |
関連材料との比較
| 比較材料 | 特徴 | PETG樹脂との違い |
|---|---|---|
| ポリエチレンテレフタレート(PET) | 結晶性ポリエステルで、ボトル、繊維、フィルムに広く使用される。 | PETGはPETより結晶化しにくく透明成形しやすいが、耐熱性や剛性は結晶化PETが有利な場合がある。 |
| GF強化ポリエチレンテレフタレート | PETにガラス繊維を配合した高剛性グレードである。 | GF-PETは剛性、耐熱性、寸法安定性に優れるが透明性はない。PETGは透明性と成形性を重視する用途に適する。 |
| ポリカーボネート(PC) | 透明性、耐衝撃性、耐熱性に優れる透明エンプラである。 | PCは耐熱性と衝撃性で有利だが、PETGは成形温度、耐薬品性、BPA非使用要求で有利な場合がある。 |
| PMMA | 透明性、表面硬度、耐候性に優れるアクリル樹脂である。 | PMMAは光学透明性と耐候性に優れるが、PETGは衝撃性と熱成形性で有利な場合がある。 |
| ポリブチレンテレフタレート(PBT) | 結晶性ポリエステルで、電装部品、コネクタ、機構部品に使用される。 | PBTは耐熱性、電気特性、寸法安定性に優れるが、一般に透明ではない。PETGは透明用途に向く。 |
| ポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタレート(PCT) | 耐熱性の高いポリエステル系材料である。 | PCTはPETGより耐熱性が高い傾向があるが、加工温度や用途領域が異なる。 |
| PCTG | CHDM成分を多く含む透明コポリエステルとして扱われる場合がある。 | PCTGはPETGより耐衝撃性、耐薬品性、耐熱性が高いグレードがある。名称が近いため、組成とメーカー資料を確認する。 |
| ABS樹脂 | 剛性、耐衝撃性、成形性、外観性のバランスが良い汎用樹脂である。 | ABSは不透明用途が多く、PETGは透明性が必要な用途で有利である。ABSは耐熱グレードやめっき用途で有利な場合がある。 |
代表的なメーカー
| メーカー | 代表製品・ブランド | 概要 |
|---|---|---|
| Eastman Chemical | Eastar、Spectar、Tritan など | 透明コポリエステル分野の代表的メーカーである。PETG、PCTG、PCTA系透明材料を展開する。 |
| SK Chemicals | SKYGREEN、ECOZEN など | PETG、PCTG、バイオ系コポリエステルを展開する。透明性、耐薬品性、成形性を重視したグレードがある。 |
| Celanese | コポリエステル系材料、エンプラ材料 | エンジニアリングプラスチックおよび透明樹脂関連材料を展開する。PETG単独ブランドは用途・地域により確認が必要である。 |
| 三菱ケミカルグループ | ポリエステル系シート、フィルム、関連材料 | ポリエステル系材料、フィルム、シート、機能材料を展開する。PETG相当材料は製品系列ごとに確認する。 |
| 帝人 | ポリエステル系フィルム、機能材料 | ポリエステル系フィルム、樹脂、複合材料の関連分野を展開する。PETG成形材料としての採用可否は個別確認が必要である。 |
| 東レ | ポリエステル系樹脂、フィルム材料 | PET、PBT、フィルム、繊維、機能材料などのポリエステル関連材料を展開する。 |
| 樹脂コンパウンドメーカー各社 | 難燃、耐候、摺動、GF強化、食品接触対応グレード | 用途に応じてPETGベースまたはコポリエステルベースの改質グレードを供給する場合がある。 |
法規制・規格上の注意
| 項目 | 確認内容 | 注意点 |
|---|---|---|
| RoHS | 鉛、カドミウム、水銀、六価クロム、PBB、PBDE、フタル酸エステル類など | 樹脂単体ではなく、添加剤、着色剤、難燃剤を含めて確認する。 |
| REACH | SVHC、制限物質、登録状況 | 輸出先、用途、含有物質により確認が必要である。 |
| 食品衛生 | 食品衛生法、ポジティブリスト、溶出試験 | 食品接触用途ではグレード、添加剤、成形条件、使用温度を確認する。 |
| FDA | 食品接触用途の適合性 | 米国向けでは該当規則とメーカー適合証明を確認する。 |
| 医療用途 | ISO 10993、USP Class VI、滅菌適性など | 医療用グレードを選定し、薬液、滅菌、抽出物、長期接触を確認する。 |
| 難燃性 | UL94、酸素指数、電気用品要求 | 標準PETGはHB相当が多い。V-0等が必要な場合は認証グレードを選定する。 |
| リサイクル | PET流通との識別、リサイクル適合性 | PETGはPETリサイクル系で混入影響を与える場合があるため、用途ごとの表示と分別を確認する。 |
用途別選定
| 用途 | 推奨されるグレード | 確認すべき項目 |
|---|---|---|
| 透明容器 | 射出成形用、ブロー成形用、食品接触対応PETG | 透明性、落下強度、内容物耐性、食品規制、香料・アルコール適性 |
| シート・トレー | 押出シート用、熱成形用PETG | 熱成形温度、打ち抜き性、耐白化性、食品接触、印刷性 |
| 筐体・透明カバー | 耐衝撃PETG、耐候PETG、難燃PETG | 衝撃性、耐候性、難燃性、清掃薬品、長期荷重 |
| フィルム・カード | 押出フィルム用、印刷用PETG | 透明性、反り、印刷密着、ラミネート性、寸法安定性 |
| コネクタ・電装部品 | 難燃PETG、GF強化PETG | UL94、絶縁性、耐熱性、寸法精度、クリープ |
| ギア・軸受 | 摺動PETG、GF強化PETG | 摩耗、摩擦、荷重、相手材、温度、潤滑剤適合性 |
| チューブ | 押出チューブ用PETG、医療用PETG | 柔軟性、透明性、薬液適合性、滅菌、抽出物 |
| 3Dプリント部品 | FDM/FFF用PETGフィラメント | 吸湿、ノズル温度、糸引き、層間強度、耐熱性、寸法精度 |
注意点
- 成形前乾燥が不十分な場合、加水分解により分子量が低下し、強度低下、銀条、気泡、黄変が発生する。
- 高温水、蒸気、強アルカリではエステル結合が加水分解を受けやすい。
- ケトン、エステル、芳香族炭化水素、塩素系溶剤では膨潤、白化、応力割れが起こる場合がある。
- 透明成形品では残留応力が耐薬品性とクラックに大きく影響する。
- 屋外用途では紫外線による黄変、脆化、ヘイズ増加を確認する。
- 熱変形温度はPCやPCTより低いため、高温荷重下での使用には注意する。
- 難燃性が必要な用途では、UL94認証グレード、肉厚条件、色調条件を確認する。
- 医療・食品用途では、樹脂名だけで判断せず、該当グレードの規制適合証明を確認する。
- アウトガス、臭気、抽出物、内容物への移行は、用途ごとに実測確認する。
- PETG、PCTG、PCTA、透明コポリエステルは名称が近く、性能差があるため、メーカー資料で組成とグレードを確認する。
関連キーワード
PETG樹脂 グリコール変性PET 透明共重合ポリエステル 非晶性ポリエステル PCTG PCTA PET 透明樹脂 熱成形シート 食品容器 医療用透明樹脂 3Dプリンター用PETG 耐薬品性透明樹脂 BPA非使用透明材料 ポリエステル樹脂