概要
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 材料名 | GF強化ポリエチレンテレフタレート |
| 略記号 | GF-PET、PET-GF、ガラス繊維強化PET |
| IUPAC | Poly(ethylene benzene-1,4-dicarboxylate) を主成分とするガラス繊維強化複合材料 |
| 英語名 | Glass Fiber Reinforced Polyethylene Terephthalate / Glass Reinforced PET |
| 日本語名 | ガラス繊維強化ポリエチレンテレフタレート、GF強化PET、強化PET樹脂 |
| 分類 | ガラス繊維強化熱可塑性ポリエステル樹脂 |
| プラスチック分類 | エンジニアリング・プラスチック |
| 化学式または代表構造 | PET樹脂:[-O-CH2-CH2-O-CO-C6H4-CO-]n + ガラス繊維 |
| CAS No. | PET樹脂:25038-59-9、ガラス繊維:65997-17-3 が代表例である。ただし、GF強化PETコンパウンド全体としては配合物であり、単一CASで扱われないことが多い。 |
| 構造・主成分 | ポリエチレンテレフタレートをマトリックス樹脂とし、ガラス繊維、難燃剤、結晶核剤、安定剤、離型剤、着色剤などを配合した複合材料である。 |
| 主な用途 | 電気・電子部品、自動車電装部品、コネクタ、リレー部品、スイッチ部品、コイルボビン、機械部品、耐熱寸法安定部品など。 |
GF強化ポリエチレンテレフタレートは、ポリエチレンテレフタレートにガラス繊維を配合し、剛性、寸法安定性、荷重たわみ温度、耐クリープ性を高めたエンジニアリング・プラスチックである。一般のPETはフィルム、繊維、ボトル用途で広く使用されるが、GF強化PETは射出成形用の構造部品材料として用いられることが多い。
GF強化PETは、同じ熱可塑性ポリエステルであるポリブチレンテレフタレートと比較して、一般に耐熱性、剛性、耐クリープ性に優れる。一方で、結晶化速度が遅いため、成形時には高めの金型温度や十分な乾燥管理が必要になる。実使用ではグレード、GF含有率、難燃剤の種類、成形条件、吸湿状態、温度、荷重、応力、接触時間を確認する必要がある。
代表的なGF含有率は15〜45質量%程度であり、30%GF強化グレードが物性比較の基準として用いられることが多い。ただし、耐衝撃改良、難燃、低反り、食品接触、電気絶縁、摺動改良などのグレードにより、物性、耐薬品性、成形収縮率、難燃性、外観、加工温度範囲は大きく変化する。
特徴
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 長所 | 高剛性、高強度、寸法安定性、耐熱性、耐クリープ性、電気絶縁性、耐油性に優れる。ガラス繊維により荷重下での変形が小さく、精密部品に適する。 |
| 短所 | 吸湿時や高温高湿下では加水分解に注意が必要である。成形時の乾燥不足により分子量低下、シルバー、強度低下が発生しやすい。GF配向により異方性、反り、表面粗さが出やすい。 |
| 外観 | 自然色は乳白色から淡色不透明であり、GF配合により不透明性が高い。着色グレード、黒色グレード、難燃グレードが多い。 |
| 耐熱性 | GF強化により荷重たわみ温度が大きく向上する。30%GF強化グレードではHDTが概ね200〜240℃程度になることがあるが、測定荷重、結晶化度、グレードに依存する。 |
| 耐薬品性 | 油、グリース、燃料、脂肪族炭化水素、アルコール類には比較的良好である。一方、強アルカリ、熱水、高温高湿、強酸、一部のフェノール類、ハロゲン系溶剤では加水分解、膨潤、強度低下に注意が必要である。 |
| 加工性 | 射出成形に適する。PETは結晶化制御が重要であり、金型温度、乾燥、保圧、冷却条件の管理が必要である。乾燥不足では成形品の機械強度が低下しやすい。 |
| 分類上の注意 | フィルム・ボトル用PETとは用途、グレード設計、結晶化挙動が異なる。射出成形用GF強化PETは、構造部品用の強化エンプラとして扱うのが適切である。 |
代表グレード
| グレード区分 | 主な特徴 | 主な用途 |
|---|---|---|
| 汎用GF強化 | GF15〜30%程度を配合した標準グレードである。剛性、強度、寸法安定性のバランスを重視する。 | 機械部品、電装部品、一般構造部品 |
| 高剛性・高GF | GF40〜45%程度の高充填グレードである。剛性と低クリープ性に優れるが、流動性、外観、衝撃性、金型摩耗に注意する。 | 高剛性ブラケット、構造部品、寸法安定部品 |
| 耐熱グレード | 結晶化制御、安定剤、GF配合により高温下の剛性を高めたグレードである。 | 自動車電装部品、耐熱コネクタ、コイルボビン |
| 難燃グレード | UL94 V-0相当を狙うグレードがある。ハロゲン系、リン系、窒素系など難燃設計により物性や耐トラッキング性が変わる。 | コネクタ、リレー、スイッチ、電気絶縁部品 |
| 低反りグレード | GFと無機フィラー、結晶化制御により反りを抑えたグレードである。異方性低減が必要な精密部品に使われる。 | 薄肉部品、精密筐体、コネクタハウジング |
| 摺動改良グレード | PTFE、シリコーン、潤滑剤などを配合する場合がある。摩擦摩耗特性は相手材、面圧、速度、温度に依存する。 | 摺動部品、ガイド、ギア周辺部品 |
| 食品接触対応グレード | 食品接触規制に適合する原料・添加剤で設計される。使用国、温度、食品種類、移行試験条件の確認が必要である。 | 食品機械部品、搬送部品、器具部品 |
構造式

(樹脂部はPETの構造)
GF強化ポリエチレンテレフタレートは、PET樹脂の主鎖に芳香族エステル構造を持ち、これをガラス繊維で補強した複合材料である。化学構造としてはPETの繰り返し単位が基本であり、GFは共有結合で主鎖に組み込まれるのではなく、コンパウンド中の強化材として分散している。
PET主鎖+ガラス繊維補強。構造中の官能基、結晶性、架橋密度、芳香族骨格、充填材の有無により、耐熱性、耐薬品性、機械的性質、成形性が変化する。
代表的な構造単位
| 項目 | 構造・内容 |
|---|---|
| PETの代表構造単位 | [-O-CH2-CH2-O-CO-C6H4-CO-]n |
| 構成単位 | エチレングリコール由来単位とテレフタル酸またはジメチルテレフタレート由来単位 |
| ガラス繊維 | 主にEガラス系の短繊維が用いられる。表面処理剤、カップリング剤、サイジング剤によりPETとの界面接着性を高める。 |
| 結晶性 | PETは結晶性樹脂である。GF、結晶核剤、金型温度により結晶化度が変化し、寸法安定性、耐熱性、衝撃性、外観に影響する。 |
| 変性グレード | 耐衝撃改良、難燃、低反り、低アウトガス、耐加水分解、摺動改良などのグレードがある。共重合成分や添加剤の有無により物性は変化する。 |
モノマーまたは構成単位
| 構成成分 | 化学式 | 役割 |
|---|---|---|
| テレフタル酸 | HOOC-C6H4-COOH | 芳香族ジカルボン酸成分であり、剛性、耐熱性、耐薬品性に寄与する。 |
| ジメチルテレフタレート | CH3OOC-C6H4-COOCH3 | PET製造で使用される代表的なエステル交換原料である。 |
| エチレングリコール | HO-CH2-CH2-OH | グリコール成分であり、PET主鎖の脂肪族エーテル部を構成する。 |
| ガラス繊維 | SiO2、Al2O3、CaO、MgOなどを主成分とする無機ガラス | 補強材であり、剛性、強度、荷重たわみ温度、寸法安定性を向上させる。 |
種類
| 種類の名称 | 主成分または特徴 | 長所 | 短所 | 主な用途 |
|---|---|---|---|---|
| GF15強化PET | PETにガラス繊維を約15%配合したグレード | 流動性、外観、剛性のバランスがよい | GF30以上と比べると剛性、HDTは低い | 薄肉部品、電装小部品、軽負荷部品 |
| GF30強化PET | PETにガラス繊維を約30%配合した代表的な強化グレード | 高剛性、高強度、寸法安定性、耐熱性に優れる | 反り、異方性、表面粗さ、金型摩耗に注意する | コネクタ、リレー部品、機械部品、自動車電装部品 |
| GF45強化PET | 高含有GFにより剛性を重視したグレード | 曲げ弾性率、耐クリープ性、寸法安定性に優れる | 流動性低下、ウェルド強度低下、衝撃性低下に注意する | 高剛性構造部品、ブラケット、支持部品 |
| 難燃GF強化PET | GFと難燃剤を配合した電気・電子部品用グレード | UL94 V-0相当を狙えるグレードがあり、電気絶縁部品に適する | 難燃剤により機械物性、流動性、耐加水分解性が変化する | コネクタ、スイッチ、リレー、コイルボビン |
| 低反りGF強化PET | GF、無機フィラー、結晶化制御剤を組み合わせたグレード | 反りや寸法ばらつきを抑えやすい | 標準GF強化品より衝撃性や流動性が低下する場合がある | 精密筐体、薄肉部品、寸法精度部品 |
| 耐加水分解GF強化PET | 安定剤や末端封鎖設計により湿熱環境での劣化を抑えたグレード | 高温高湿、温水環境での強度保持を改善しやすい | 完全に加水分解を防げるわけではなく、実使用評価が必要である | 自動車部品、屋外設備部品、湿熱環境部品 |
| 摺動改良GF強化PET | 潤滑剤、PTFE、シリコーンなどを配合する場合がある | 摩擦係数や摩耗を低減しやすい | 相手材、面圧、速度、温度、潤滑状態により性能差が大きい | ガイド、摺動部品、ギア周辺部品 |
成形加工
| 加工方法 | 適正 | 内容 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 射出成形 | ◎ | GF強化PETの主な加工方法である。コネクタ、電装部品、精密部品に多用される。 | 乾燥、金型温度、結晶化、GF配向、ウェルド強度、反り管理が重要である。 |
| 押出成形 | △ | 一部のプロファイル、シート、棒材で検討されることがある。 | GF配向、表面荒れ、寸法安定性、結晶化制御が課題になりやすい。 |
| ブロー成形 | × | 一般的なGF強化PETでは適しにくい。 | GF配合により延伸性、パリソン形成性、外観が悪化しやすい。 |
| 圧縮成形 | △ | 特殊なシート材、スタンパブル材、試験片作製で使われる場合がある。 | 一般的な射出成形用ペレットでは量産適性が限定的である。 |
| 真空成形 | × | 一般的な短繊維GF強化PETの真空成形適性は低い。 | 伸び不足、白化、繊維露出、割れが発生しやすい。 |
| 切削加工 | ○ | 成形品、板材、丸棒材の追加工に対応できる。 | GFにより工具摩耗が大きい。バリ、繊維露出、切削熱、寸法変化に注意する。 |
| 溶着 | △ | 超音波溶着、熱板溶着などが検討される。 | GF含有率、結晶化度、リブ設計、溶着面形状により強度差が大きい。 |
| 接着 | △ | エポキシ系、ウレタン系、アクリル系接着剤などが候補になる。 | PET表面は接着しにくい場合があり、プラズマ、コロナ、火炎、プライマー処理が有効な場合がある。 |
| 塗装・印刷 | △ | 表面処理やプライマーにより塗装・印刷が可能な場合がある。 | 離型剤、GF露出、結晶化度、表面粗さにより密着性が変化する。 |
代表的な成形条件
| 項目 | 代表範囲 | 備考 |
|---|---|---|
| 予備乾燥温度 | 120〜140℃ | 3〜6時間程度が目安である。除湿乾燥機の使用が望ましい。 |
| 乾燥後水分率 | 0.02%以下を目標 | 乾燥不足では加水分解による分子量低下、シルバー、強度低下が起こりやすい。 |
| シリンダー温度 | 260〜290℃ | グレード、GF含有率、難燃剤、滞留時間により調整する。 |
| 金型温度 | 80〜140℃ | 結晶化を進めるため、一般に高めの金型温度が必要である。低すぎると寸法安定性、耐熱性が不足しやすい。 |
| 成形収縮率 | 流動方向:0.2〜0.8% 直角方向:0.8〜1.5%程度 | GF配向、肉厚、ゲート位置、結晶化度により異方性が大きい。 |
| 背圧・スクリュー条件 | 低〜中背圧 | GF折損を抑えるため、過度なせん断は避ける。 |
| 滞留管理 | 短時間管理 | 高温滞留により熱劣化、ガス、変色、強度低下が発生する場合がある。 |
代表的な物性値又は機械的性質
以下の数値は、主に30%GF強化PETを中心とした代表値・目安である。実際の物性はGF含有率、グレード、結晶化度、試験片成形条件、吸湿状態、測定温度、難燃剤、添加剤により変化する。
| 項目 | 単位 | 非強化PET | GF30強化PET | GF30強化PBT | GF30強化PA66 | 備考 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 密度 | g/cm3 | 1.34〜1.40 | 1.55〜1.70 | 1.50〜1.60 | 1.35〜1.45 | GF含有率が高いほど密度は上がる。 |
| 引張強さ | MPa | 50〜80 | 120〜170 | 110〜150 | 130〜190 | 流動方向、ウェルド部、吸湿状態で変化する。 |
| 伸び | % | 50〜300 | 1.5〜4 | 2〜4 | 2〜5 | GF強化により伸びは大きく低下する。 |
| 曲げ弾性率 | MPa | 2,000〜3,000 | 8,000〜12,000 | 7,000〜10,000 | 7,000〜11,000 | GF含有率、配向、試験方向に依存する。 |
| アイゾット衝撃強さ | kJ/m2 | 2〜8 | 5〜12 | 5〜12 | 6〜15 | ノッチ付きの目安である。耐衝撃改良グレードでは高くなる。 |
| 荷重たわみ温度 | ℃ | 70〜90 | 200〜240 | 190〜220 | 240〜260 | 1.8MPa荷重の代表目安である。結晶化度とGF量で大きく変化する。 |
| 融点 | ℃ | 250〜260 | 250〜260 | 220〜230 | 255〜265 | PET樹脂の結晶融解温度である。 |
| ガラス転移温度 | ℃ | 70〜80 | 70〜85 | 40〜60 | 50〜70 | 測定条件、吸湿状態で変化する。 |
| 連続使用温度 | ℃ | 80〜120 | 120〜160 | 120〜150 | 120〜170 | UL温度指数や実使用荷重により判断する。 |
| 吸水率 | % | 0.2〜0.5 | 0.1〜0.3 | 0.1〜0.3 | 1.0〜2.5 | PAより低吸水であるが、高温高湿では加水分解に注意する。 |
| 体積抵抗率 | Ω・cm | 1015以上 | 1014〜1016 | 1014〜1016 | 1013〜1015 | 吸湿、難燃剤、カーボン系添加剤により低下する場合がある。 |
| 難燃性 | UL94 | HB相当が多い | HB〜V-0 | HB〜V-0 | HB〜V-0 | 難燃グレードではV-0相当がある。厚み条件の確認が必要である。 |
| 酸素指数 | % | 20〜23程度 | 20〜30以上 | 20〜30以上 | 22〜30以上 | 難燃剤の有無により大きく変化する。 |
耐薬品性
GF強化PETの耐薬品性は、PETマトリックス樹脂の耐薬品性、ガラス繊維界面、添加剤、結晶化度、残留応力、温度、濃度、接触時間により変化する。特にエステル結合を持つため、強アルカリ、熱水、高温高湿条件では加水分解による分子量低下や強度低下に注意が必要である。
| 薬品分類 | 代表薬品 | 評価 | 実務上の注意点 |
|---|---|---|---|
| 酸類 | 希塩酸、希硫酸、酢酸 | ○〜△ | 低濃度・常温では比較的安定な場合があるが、濃酸、高温、長時間では加水分解や強度低下に注意する。 |
| 強酸 | 濃硫酸、濃硝酸、クロム酸混酸 | × | 酸化性、脱水性、加水分解により劣化しやすい。使用は避けるのが一般的である。 |
| アルカリ類 | 水酸化ナトリウム、KOH、水酸化カリウム | △〜× | PETのエステル結合はアルカリ加水分解を受けやすい。高濃度、高温、長時間では不適である。 |
| 低級アルコール類 | メタノール、エタノール、IPA | ○ | 常温短時間では概ね良好である。ただし、応力部、温度上昇、長期浸漬では確認が必要である。 |
| 高級アルコール類 | グリセリン、ベンジルアルコール、MMB | ○〜△ | グリセリンや多価アルコールは比較的安定な場合が多い。ベンジルアルコールなど溶解性が高い溶剤では注意する。 |
| 芳香族炭化水素類 | トルエン、キシレン、エチルベンゼン | ○〜△ | 常温短時間では耐える場合があるが、膨潤、応力割れ、添加剤抽出の確認が必要である。 |
| 脂肪族炭化水素類 | ヘキサン、ヘプタン、ミネラルスピリット | ◎〜○ | 一般に良好である。燃料成分、芳香族分、添加剤を含む場合は個別評価が必要である。 |
| ケトン | アセトン、MEK、MIBK、シクロヘキサノン | △ | 短時間接触では耐える場合があるが、膨潤、クラック、寸法変化に注意する。シクロヘキサノンなどは特に確認が必要である。 |
| エステル | 酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル | △ | SP値が近い溶剤があり、膨潤や応力割れの確認が必要である。高温浸漬には注意する。 |
| 塩素系溶剤 | ジクロロメタン、クロロホルム、トリクロロエチレン | ×〜△ | 溶解・膨潤性が高いものがあり、応力割れや強度低下に注意する。使用は避けるのが無難である。 |
| 水・温水 | 水、温水、蒸気 | ○〜△ | 常温水では比較的安定であるが、熱水、蒸気、高温高湿では加水分解が進みやすい。 |
| 油 | 潤滑油、鉱物油、グリース | ◎〜○ | 一般に良好である。添加剤、硫黄分、酸化劣化油、高温条件では確認が必要である。 |
| 燃料 | ガソリン、軽油、灯油、アルコール混合燃料 | ○〜△ | 炭化水素燃料には比較的良好な場合があるが、アルコール、芳香族、添加剤、温度により膨潤や劣化が変化する。 |
| 洗剤・界面活性剤 | 中性洗剤、アルカリ洗剤、脱脂洗浄剤 | ○〜× | 中性洗剤は比較的良好な場合が多い。強アルカリ洗剤、高温洗浄、長時間浸漬では不適となる場合がある。 |
SP値(溶解度パラメータ)
| 項目 | 代表値 | 備考 |
|---|---|---|
| GF強化PETのSP値 | 約21〜23 MPa1/2 | PETマトリックス樹脂を基準にした代表値である。GFは無機充填材であり、溶解性評価では主にPET相が支配的である。 |
| 非強化PETのSP値 | 約21.9 MPa1/2 | 文献値や推算法により差があるため、目安として扱う。 |
| 評価上の注意 | SP値だけでは耐薬品性を判断できない | 結晶化度、拡散速度、温度、濃度、応力、GF界面、加水分解、酸化、添加剤抽出を併せて評価する必要がある。 |
溶解性の目安
| SP値差 | 溶解・膨潤の目安 | 判定 |
|---|---|---|
| 0〜2 | 膨潤・軟化しやすい | × |
| 2〜5 | 条件により膨潤する | △ |
| 5〜8 | 短時間接触では比較的安定 | ○ |
| 8以上 | 溶解・膨潤しにくい | ◎ |
SP値から見た耐溶剤性
以下はGF強化PETの代表SP値を22 MPa1/2と仮定した目安である。実際の耐溶剤性は、薬品の反応性、温度、濃度、結晶化度、応力、GF界面、接触時間、成形品の残留ひずみにより変化する。
| 薬品名 | 代表SP値 MPa1/2 | SP値差 | 目安評価 | 注意点 |
|---|---|---|---|---|
| 水 | 47.9 | 約25.9 | ○ | SP差は大きいが、熱水や蒸気では加水分解が問題となる。 |
| エタノール | 26.0 | 約4.0 | ○〜△ | 常温短時間では比較的安定だが、長期浸漬や応力部では確認が必要である。 |
| IPA | 23.5 | 約1.5 | △ | SP差は近いが、結晶性と拡散性の影響で実用上耐える場合がある。長期評価が必要である。 |
| アセトン | 20.0 | 約2.0 | △ | 膨潤、応力割れ、表面白化に注意する。 |
| MEK | 19.0 | 約3.0 | △ | 短時間接触と長期浸漬で結果が変わるため確認が必要である。 |
| 酢酸エチル | 18.6 | 約3.4 | △ | 膨潤やクラックに注意する。塗料・接着剤溶剤として接触する場合は試験が必要である。 |
| トルエン | 18.2 | 約3.8 | ○〜△ | 常温短時間では耐える場合があるが、応力割れや添加剤抽出に注意する。 |
| キシレン | 18.0 | 約4.0 | ○〜△ | 芳香族炭化水素への長期接触では寸法変化を確認する。 |
| ヘキサン | 14.9 | 約7.1 | ○〜◎ | 一般に良好であるが、燃料混合物では別評価が必要である。 |
| ジクロロメタン | 20.2 | 約1.8 | ×〜△ | SP差が小さく、膨潤・軟化のリスクがある。使用は避けるのが望ましい。 |
| クロロホルム | 18.9 | 約3.1 | ×〜△ | 膨潤、クラック、強度低下に注意する。 |
| グリセリン | 33.8 | 約11.8 | ◎〜○ | SP差は大きいが、高温長期では湿熱劣化を確認する。 |
製法
GF強化PETは、PET樹脂を製造した後、ガラス繊維、安定剤、難燃剤、結晶核剤、離型剤、顔料などを溶融混練してペレット化することで製造される。PET自体は、テレフタル酸とエチレングリコールの直接エステル化、またはジメチルテレフタレートとエチレングリコールのエステル交換を経て、重縮合により得られる。
原料
| 原料・配合成分 | 役割 | 注意点 |
|---|---|---|
| テレフタル酸またはジメチルテレフタレート | PETの芳香族ジカルボン酸成分である。 | 製法により直接エステル化法またはエステル交換法が選択される。 |
| エチレングリコール | PETのグリコール成分である。 | 重縮合時に過剰分を留去する。 |
| ガラス繊維 | 剛性、強度、HDT、寸法安定性を向上させる。 | 繊維長、径、表面処理、サイジング剤により物性が変化する。 |
| 結晶核剤 | 結晶化速度を高め、成形サイクルや耐熱性を改善する。 | 添加量や種類により衝撃性、外観、反りに影響する。 |
| 安定剤 | 熱劣化、酸化、加水分解を抑制する。 | 湿熱環境では耐加水分解グレードの選定が重要である。 |
| 難燃剤 | UL94 V-0などの難燃性を付与する。 | 機械物性、電気特性、アウトガス、規制適合性に注意する。 |
代表的な反応式
| 製法 | 代表反応式 | 説明 |
|---|---|---|
| 直接エステル化法 | n HOOC-C6H4-COOH + n HO-CH2-CH2-OH → [-O-CH2-CH2-O-CO-C6H4-CO-]n + 2n H2O | テレフタル酸とエチレングリコールを反応させ、水を除去しながらPETを得る。 |
| エステル交換法 | n CH3OOC-C6H4-COOCH3 + n HO-CH2-CH2-OH → [-O-CH2-CH2-O-CO-C6H4-CO-]n + 2n CH3OH | ジメチルテレフタレートとエチレングリコールからメタノールを留去し、重縮合でPETを得る。 |
| GF強化コンパウンド | PETペレット + ガラス繊維 + 添加剤 → 溶融混練 → ストランドカット → GF強化PETペレット | 二軸押出機などで混練する。GF折損、分散、界面接着、熱履歴の管理が重要である。 |
ペレット化やコンパウンド
GF強化PETの性能は、単にGF量だけで決まるものではない。ガラス繊維の長さ、表面処理、樹脂との界面接着性、押出混練条件、ペレット乾燥状態、成形時の繊維配向により、引張強さ、曲げ弾性率、ウェルド強度、反り、外観、疲労特性が変化する。高剛性が必要な場合はGF含有率を高めるが、薄肉流動性、衝撃性、表面性、金型摩耗とのバランスを取る必要がある。
添加剤、充填材、強化材
- ガラス繊維は剛性、強度、耐熱性、寸法安定性を向上させる主補強材である。
- 無機フィラーは低反り、寸法安定性、線膨張低減に寄与する場合がある。
- 難燃剤は電気・電子用途で重要であるが、耐加水分解性、アウトガス、金型腐食、規制適合性を確認する必要がある。
- 安定剤は熱劣化、酸化、湿熱劣化を抑える目的で使用される。
- 潤滑剤や離型剤は加工性を改善するが、塗装、接着、印刷、アウトガスに影響する場合がある。
詳細な利用用途
| 分野 | 代表用途 | 採用理由 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 自動車 | 電装コネクタ、センサー部品、リレーケース、ランプ周辺部品、ブラケット | 耐熱性、寸法安定性、電気絶縁性、耐油性が必要な部品に適する。 | 高温高湿、エンジンルーム、薬品接触、熱サイクル、振動疲労を確認する。 |
| 電気・電子 | コネクタ、スイッチ、リレー、コイルボビン、端子台、絶縁部品 | 高剛性、耐熱性、電気絶縁性、難燃グレードの選択肢がある。 | UL94、CTI、耐トラッキング、はんだ耐熱、アウトガス、難燃剤規制を確認する。 |
| 機械部品 | ギア周辺部品、ホルダー、ガイド、カム、支持部品 | 剛性、耐クリープ性、寸法安定性、耐油性が有効である。 | 摺動用途では摩耗粉、相手材攻撃性、GF露出、潤滑条件を評価する。 |
| 医療 | 機器内部部品、絶縁部品、構造保持部品 | 寸法安定性、耐薬品性、成形精度が利用される場合がある。 | 医療用途では生体適合性、滅菌耐性、薬機法、ISO 10993、抽出物評価が必要である。 |
| 食品機械 | 搬送部品、センサー周辺部品、カバー、絶縁部品 | 耐油性、機械強度、寸法安定性を活用できる。 | 食品衛生法、FDA、EU食品接触規則、洗浄剤、熱水、アルカリ洗浄への耐性を確認する。 |
| 建築・設備 | 設備部品、絶縁スペーサー、保持具、ポンプ周辺部品 | 剛性、耐熱性、耐油性、寸法安定性が有効である。 | 屋外では紫外線、水分、熱サイクル、加水分解、難燃要求を確認する。 |
| 用途別選定 | コネクタ、筐体、ギア、軸受、チューブ、ブラケット | コネクタやブラケットでは高剛性・難燃性、摺動部では摩耗特性を重視する。 | ギアや軸受ではGFによる相手材摩耗が課題になるため、摺動改良グレードや他材料も比較する。 |
関連材料との比較
| 比較材料 | 特徴 | GF強化PETとの違い |
|---|---|---|
| ポリエチレンテレフタレート(PET) | フィルム、繊維、ボトル、成形材料に使われる結晶性ポリエステルである。 | GF強化PETは、非強化PETより剛性、強度、HDT、寸法安定性が高い。一方、伸び、透明性、表面平滑性は低下する。 |
| ポリブチレンテレフタレート(PBT) | 結晶化速度が速く、射出成形性に優れる熱可塑性ポリエステルである。 | GF強化PETは一般にPBTより耐熱性、剛性が高い傾向があるが、PBTは成形サイクル、寸法安定、加工安定性で扱いやすい場合が多い。 |
| ポリアミド(PA) | 強靭で耐摩耗性に優れる結晶性エンプラである。 | GF強化PETはPAより吸水による寸法変化が小さい傾向がある。一方、PAは靭性や摺動性で有利な場合がある。 |
| ポリアセタール(POM) | 低摩擦、耐摩耗、寸法安定性に優れる結晶性エンプラである。 | GF強化PETはPOMより耐熱剛性や電装部品適性で有利な場合がある。POMはギア、摺動部品で扱いやすい。 |
| ポリカーボネート(PC) | 透明性、耐衝撃性、寸法安定性に優れる非晶性エンプラである。 | GF強化PETは高剛性、高耐熱、耐薬品性で有利な場合がある。PCは透明性と衝撃性で優れるが、溶剤応力割れに注意する。 |
| 変性ポリフェニレンエーテル(m-PPE) | 低吸水、寸法安定性、電気特性に優れる非晶性エンプラである。 | GF強化PETは結晶性で耐油性や剛性が高い。一方、m-PPEは低吸水、低比重、寸法安定性で有利な場合がある。 |
| ポリフェニレンサルファイド(PPS) | 耐熱性、耐薬品性、難燃性に優れるスーパーエンプラである。 | PPSは耐熱性、耐薬品性、寸法安定性でGF強化PETより上位に位置することが多いが、コストは高い傾向がある。 |
| ポリエーテルエーテルケトン(PEEK) | 高耐熱、高強度、耐薬品性、耐疲労性に優れる高機能スーパーエンプラである。 | PEEKは高温連続使用、耐薬品性、耐摩耗性で優れるが、GF強化PETより大幅に高価である。 |
代表的なメーカー
以下は、PET系、PBT/PET系、熱可塑性ポリエステル系、またはGF強化ポリエステル材料を扱う実在メーカーの代表例である。製品名、供給状況、対象グレードは地域や時期により変化するため、採用時には各メーカーの最新データシートを確認する必要がある。
| メーカー | 代表製品・ブランド | 概要 |
|---|---|---|
| 東レ株式会社 | TORAYCON などのポリエステル系樹脂グレード | PBT、PET系を含むエンジニアリングプラスチックを展開する国内大手メーカーである。GF強化、難燃、低反りなどのグレードが代表例として知られる。 |
| 帝人株式会社 | TRN、その他ポリエステル系材料の代表例 | ポリエステル、複合材料、樹脂関連技術を有する国内メーカーである。具体的なGF強化PETグレードは用途ごとの確認が必要である。 |
| 三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社 | NOVADURAN、その他ポリエステル系エンプラの代表例 | 主にPBTなどのエンプラ材料で知られる。PET系との比較材料として採用検討されることが多い。 |
| BASF | Ultradur など | PBTを中心とする熱可塑性ポリエステル材料の大手メーカーである。GF強化ポリエステル材料の比較対象として重要である。 |
| Celanese | Rynite、Celanex など | GF強化PETやPBT系エンプラで知られる海外メーカーである。電気・電子、自動車用途の実績がある。 |
| DuPont | Rynite の旧来代表例、Crastin など | 熱可塑性ポリエステル系エンプラで実績があるメーカーである。事業再編やブランド管理の変化があるため、最新供給元を確認する必要がある。 |
| SABIC | VALOX など | PBT/PET系ポリエステル樹脂を含むエンプラ材料を展開する。電気・電子、自動車、工業用途で使用される。 |
| LANXESS | POCAN など | GF強化PBTを中心とするポリエステル系エンプラで知られる。GF強化PETの代替比較対象として重要である。 |
法規制・安全性・採用時の注意点
| 項目 | 確認内容 | 注意点 |
|---|---|---|
| RoHS | 鉛、カドミウム、水銀、六価クロム、PBB、PBDE、フタル酸エステル類などの制限物質 | 難燃剤、顔料、安定剤、リサイクル材使用時は特に確認する。 |
| REACH | SVHC、制限物質、登録・情報伝達義務 | 欧州向け製品では最新のSVHCリスト確認が必要である。 |
| 食品衛生 | 日本の食品衛生法、ポジティブリスト制度、溶出試験 | 食品接触用途では食品種類、温度、時間、洗浄剤条件を含めて確認する。 |
| FDA | 米国食品接触用途での該当規格 | グレード単位での適合確認が必要であり、材料名だけでは判断できない。 |
| 医療用途 | ISO 10993、生体適合性、滅菌耐性、抽出物、薬機法関連 | 一般工業グレードを医療用途へ転用する場合は、メーカー保証範囲を確認する。 |
| 難燃性 | UL94、GWIT、GWFI、CTI、酸素指数 | 厚み、色、GF量、難燃剤により評価が変わる。認証ファイルの確認が必要である。 |
| 加水分解 | 熱水、高温高湿、アルカリ洗浄、蒸気環境 | PETはエステル結合を持つため、湿熱環境では強度保持率を確認する。 |
| 応力割れ | 溶剤接触、残留応力、締結応力、圧入部 | SP値が近い溶剤、芳香族溶剤、ケトン、塩素系溶剤では実部品評価が必要である。 |
| 吸湿 | 成形前ペレット吸湿、使用環境での水分吸収 | PAほど吸水は大きくないが、成形前乾燥不足は致命的な物性低下につながる。 |
| 熱劣化 | 高温滞留、再生材比率、酸化、変色、分子量低下 | シリンダー内滞留、過度な再粉砕材使用、乾燥不足を避ける。 |
| アウトガス | 添加剤、難燃剤、残留モノマー、低分子成分 | 光学部品、電子部品、密閉空間用途ではアウトガス評価が望ましい。 |
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