概要
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 材料名 | ブタジエンゴム |
| 略記号 | BR |
| IUPAC | poly(buta-1,3-diene) |
| 英語名 | Butadiene Rubber、Polybutadiene Rubber、Polybutadiene |
| 日本語名 | ブタジエンゴム、ポリブタジエン、BRゴム |
| 分類 | 合成ゴム、ジエン系ゴム、汎用エラストマー |
| プラスチック分類 | ゴム類・エラストマー系材料であり、一般的なプラスチック、エンジニアリング・プラスチック、スーパーエンジニアリング・プラスチックには分類しない。 |
| 化学式または代表構造 | (C4H6)n、代表構造単位:[-CH2-CH=CH-CH2-]n |
| CAS No. | 9003-17-2(ポリブタジエンの代表CAS No.) |
| 構造・主成分 | 1,3-ブタジエンの付加重合体であり、cis-1,4、trans-1,4及び1,2-ビニル構造の割合は触媒・重合条件により異なる。 |
| 主な用途 | タイヤ、ベルト、ホース、防振ゴム、靴底、ゴルフボール、樹脂改質、工業用ゴム部品である。 |
ブタジエンゴム(BR)は、1,3-ブタジエンを主原料とする代表的なジエン系合成ゴムである。一般に反発弾性、耐摩耗性、低発熱性及び低温柔軟性に優れ、タイヤトレッド、サイドウォール、工業用ゴム部品、スポーツ用品、耐衝撃性樹脂の改質材などに使用される。
実用上は単独使用よりも、スチレンブタジエンゴム(SBR)、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)などとブレンドして、加工性、引裂強さ、ウェットグリップ、耐疲労性及びコストを調整することが多い。
特性は、cis含有量、1,2-ビニル量、分子量、分子量分布、分岐、触媒残渣、配合剤、加硫系及び加硫密度により大きく変化する。物性値は未加硫ポリマーではなく、代表的な加硫配合物の目安として扱い、実使用ではグレード、温度、荷重、変形量、周波数、薬品濃度、接触時間及び寿命条件を確認する必要がある。
特徴
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 長所 | 低いガラス転移温度、高い反発弾性、低発熱性、良好な耐摩耗性及び低温柔軟性を持つ。充填剤やプロセスオイルを比較的多量に配合できる。 |
| 短所 | 未加硫時のグリーン強度、ロール粘着性、引裂強さ及びウェットグリップが不足しやすい。二重結合を含むため、耐候性、耐オゾン性、耐熱酸化性及び耐油性は高くない。 |
| 外観 | 原料ゴムは一般に淡色から淡黄色のベール又はクラム状である。加硫品は配合により黒色、淡色、着色品となる。 |
| 耐熱性 | 一般的な硫黄加硫配合の連続使用温度は概ね70~90℃が目安である。耐熱配合や過酸化物架橋では向上する場合があるが、長期熱酸化には注意する。 |
| 耐薬品性 | 水、希薄酸、希薄アルカリには比較的安定である一方、鉱物油、燃料、芳香族炭化水素、塩素系溶剤では膨潤又は軟化しやすい。 |
| 加工性 | 密閉式混練機、ロール混練、押出、カレンダー、圧縮成形、トランスファー成形及びゴム射出成形に対応する。単独配合ではバンディング性やタック性に注意する。 |
| 分類上の注意 | BRは加硫して使用する熱硬化性エラストマーが中心である。シンジオタクチック1,2-ポリブタジエンや液状ポリブタジエンは、構造、物性、加工法及び用途が異なる。 |
構造式
BRは1,3-ブタジエンの付加重合体である。高cis BRではcis-1,4構造が一般に90%以上、ネオジム触媒系ではさらに高いcis比率となるグレードがある。リチウム系低cis BRでは1,2-ビニル構造やtrans-1,4構造の割合が増え、ガラス転移温度、分岐、加工性及び動的粘弾性が変化する。

| 構造要素 | 代表的な内容 | 物性への影響 |
|---|---|---|
| cis-1,4構造 | -CH2-CH=CH-CH2-の二重結合周辺がcis配置 | 低Tg、高反発、低発熱及び耐摩耗性に寄与する。 |
| trans-1,4構造 | 二重結合周辺がtrans配置 | 規則性と結晶性が増すと、硬さ、寸法安定性及び加工挙動が変化する。 |
| 1,2-ビニル構造 | 側鎖にビニル基を持つ付加構造 | Tg、架橋反応性、動的特性及び相溶性を調整できる。 |
| 分岐・長鎖分岐 | 重合設計又はカップリングで導入 | ムーニー粘度、押出安定性、フィラー分散及び加工性に影響する。 |
種類・代表グレード
| 種類・グレード区分 | 主成分又は改質方法 | 長所 | 短所・注意点 | 主な用途 |
|---|---|---|---|---|
| 高cis BR | Nd、Co又はNi系触媒でcis-1,4構造を高比率化 | 低発熱、高反発、耐摩耗、低温性 | 加工タック、ウェットグリップ、単独配合性に注意 | タイヤ、ベルト、ゴルフボール |
| ネオジム系高cis BR | Nd系触媒による高cis・低分岐設計 | 低ヒステリシス、耐摩耗、疲労特性 | 配合・混練条件への依存が大きい | 低燃費タイヤ、工業用品 |
| コバルト系高cis BR | Co系触媒で高cis化 | 加工性と物性バランス、実績が多い | 触媒系により分子量分布やゲル量が異なる | タイヤ、靴底、一般工業品 |
| リチウム系低cis BR | アニオン重合、比較的高い1,2-ビニル量 | 分子設計、官能化、相溶性調整がしやすい | 高cis品より反発・低温性が劣る場合がある | タイヤ、樹脂改質、特殊配合 |
| 油展BR | プロセスオイルをあらかじめ配合 | 混練負荷低減、柔軟性、コスト調整 | 油種、抽出、低温性、規制確認が必要 | タイヤ、工業用ゴム |
| 樹脂改質用BR | HIPS、ABS用に粒径・粘度を調整 | 衝撃強度向上、ゴム粒子形態を制御しやすい | 透明性、剛性、成形収縮への影響 | HIPS、ABS、樹脂改質 |
| 液状ポリブタジエン | 低分子量、末端又は側鎖官能化を含む | 反応性可塑剤、架橋助剤、低粘度化 | ブリード、架橋度、臭気及び残留物に注意 | タイヤ配合、接着剤、シーラント |
| BR/SPB複合系 | BR中に高結晶性シンジオタクチック1,2-PBを分散 | 硬さ、弾性率、押出寸法安定性、耐亀裂性 | 一般BRより高価で用途特化 | タイヤ、靴底、軽量ゴム部品 |
成形加工
| 加工方法 | 適性 | 理由・主な注意点 |
|---|---|---|
| ゴム射出成形 | ○ | 加硫対応射出成形機で適用可能である。スコーチ安全性、粘度、金型温度、滞留時間を管理する。 |
| 押出成形 | ◎ | タイヤ部材、ホース、プロファイルに適する。ダイスウェル、押出肌、収縮及び寸法安定性を配合で調整する。 |
| カレンダー成形 | ◎ | シート、ゴム引布、タイヤコード被覆に適する。粘着性、ゲージ精度及び気泡巻込みに注意する。 |
| 圧縮成形 | ◎ | 一般的な加硫ゴム成形に広く適用できる。加硫時間、厚肉部の温度遅れ、バリを管理する。 |
| トランスファー成形 | ○ | 複雑形状やインサート部品に適する。流動中のスコーチ、ウェルド、残留応力に注意する。 |
| ブロー成形 | × | 熱可塑性樹脂の一般的なブロー成形には適さない。ゴムホースは押出後に加硫する。 |
| 真空・圧空成形 | × | 加硫ゴム原料を熱可塑性シートのように再加熱成形する方法には適さない。 |
| 発泡成形 | ○ | 化学発泡剤又は物理発泡を用いたスポンジゴムが可能である。セル径、収縮、発泡倍率を管理する。 |
| 切削加工 | △ | 加硫後の硬質配合や凍結切削は可能であるが、弾性変形により寸法精度を得にくい。 |
| 接着 | △ | 未処理では接着ばらつきがある。研磨、脱脂、プライマー、加硫接着及び接着剤選定が重要である。 |
| 塗装・印刷 | △ | 表面ブルーム、可塑剤、離型剤を除去し、プライマーや表面処理を検討する。 |
| 3Dプリント | △ | 一般BRを直接造形する用途は限定的である。液状BR系インクやゴム複合フィラメントは個別技術となる。 |
代表的な混練・加硫条件
| 項目 | 単位 | 一般的な目安 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 原料ゴムの予備乾燥 | - | 通常不要 | 水分よりも異物、保管温度、ベール温度及び結露を管理する。 |
| 密閉式混練排出温度 | ℃ | 130~160 | シリカ配合、シラン反応、ポリマー劣化及びスコーチ安全性により設定する。 |
| 最終混練温度 | ℃ | 90~110 | 硫黄及び促進剤投入後はスコーチを避ける。 |
| 押出温度 | ℃ | 50~100 | 部位、配合、押出機及びスクリューにより異なる。 |
| 金型温度 | ℃ | 140~180 | 硫黄加硫又は過酸化物架橋の加硫曲線で決定する。 |
| 加硫時間 | min | 5~30 | 厚さ、温度、配合、加硫系で大きく変わる。 |
| 成形収縮率 | % | 1~3 | 配合、製品形状、加硫後収縮及び金型拘束の影響を受ける。 |
| アニール | - | 通常は実施しない | 必要に応じてポストキュア又は寸法安定化を行う。 |
代表的な物性値又は機械的性質
以下は非油展高cis BRを主体とする代表的な加硫配合物の目安である。未加硫原料ゴムの値ではなく、カーボンブラック、シリカ、オイル、硫黄、促進剤及び架橋密度により大きく変化するため、比較機能では「代表範囲」として扱う。
| 項目 | 単位 | 下限値 | 代表値 | 上限値 | 試験条件・状態 | 備考・信頼度 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 密度 | g/cm³ | 0.89 | 0.91 | 0.93 | 未加硫ポリマー、23℃ | 高cis BR原料の代表範囲。A~B |
| 比重 | 無次元 | 0.89 | 0.91 | 0.93 | 未加硫ポリマー、23℃ | 配合後は充填剤により1.05~1.25程度となる場合が多い。B |
| 硬度 | ショアA | 40 | 60 | 80 | 加硫配合物、23℃ | 充填剤及び架橋密度依存。B |
| 引張強さ・破断 | MPa | 10 | 18 | 25 | 加硫配合物、ISO 37相当 | 補強配合の代表範囲。B |
| 引張破断伸び | % | 300 | 500 | 700 | 加硫配合物、ISO 37相当 | 硬度及び加硫密度依存。B |
| 引張弾性率 | MPa | 2 | 5 | 12 | 加硫配合物、低ひずみ域 | ゴムは非線形であり、割線弾性率の定義確認が必要。C |
| 100%引張応力 | MPa | 1.5 | 3.0 | 5.0 | 加硫配合物、ISO 37相当 | 配合・硬度依存。B |
| 300%引張応力 | MPa | 5 | 10 | 16 | 加硫配合物、ISO 37相当 | 配合・架橋密度依存。B |
| 引裂強さ | kN/m | 20 | 35 | 55 | 加硫配合物、規格不明 | NRより低い場合が多い。C |
| 反発弾性 | % | 55 | 70 | 80 | 加硫配合物、23℃ | 高cis BRの代表的長所。B |
| 圧縮永久ひずみ | % | 15 | 30 | 50 | 70℃×22h相当 | 配合・加硫系・圧縮率で大きく変化。C |
| ガラス転移温度 | ℃ | -110 | -100 | -90 | 高cis BR、DSC又はDMA | ミクロ構造に依存。A~B |
| 連続使用温度 | ℃ | -60 | 80 | 90 | 一般加硫配合、空気中 | 長期熱酸化、荷重及び寿命条件で変化。C |
| 短時間耐熱温度 | ℃ | 100 | 120 | 140 | 短時間、無荷重目安 | 耐熱配合又は過酸化物架橋で変化。C |
| 低温使用限界 | ℃ | -80 | -70 | -60 | 動的部品の目安 | Tgより高い温度でも硬化・疲労を確認する。C |
| 熱伝導率 | W/(m・K) | 0.13 | 0.18 | 0.25 | 加硫配合、23℃ | カーボンブラック等で上昇する。B |
| 体積抵抗率 | Ω・cm | 1×1012 | 1×1014 | 1×1016 | 非導電配合、23℃ | カーボンブラック配合では大幅低下する。C |
| 吸水率・24時間 | % | 0.1 | 0.3 | 0.8 | 23℃水中、加硫配合 | 配合剤、空隙、界面活性成分に依存。C |
| 線膨張係数 | 10−5/K | 12 | 18 | 25 | 加硫配合、室温域 | 拘束、配合、温度域に依存。C |
| 動摩擦係数 | 無次元 | 0.5 | 0.9 | 1.3 | 乾燥、鋼相手材の参考 | 荷重、速度、表面粗さ、温度で大きく変化。D |
燃焼性・電気特性・耐候性
| 評価項目 | 一般的傾向 | 注意点 |
|---|---|---|
| UL 94燃焼性 | 材料群として一律評価できない。一般BR配合は難燃材料ではない。 | 難燃グレードの認証、厚さ、色、配合、製造拠点を個別確認する。 |
| 限界酸素指数・LOI | 一般に低く、自己消火性は期待しにくい。 | 難燃剤、充填剤及び架橋系で変化する。 |
| 電気絶縁性 | 非導電配合では良好である。 | カーボンブラック、湿気、イオン性残渣により抵抗率が低下する。 |
| 耐候性・耐オゾン性 | 低い。主鎖二重結合がオゾン及び酸化劣化を受ける。 | 老化防止剤、ワックス、塗膜、ブレンド及び使用ひずみの管理が必要である。 |
| 耐加水分解性 | 主鎖自体は加水分解を受けにくい。 | 接着剤、可塑剤、フィラー処理剤及び添加剤の加水分解は別途確認する。 |
耐薬品性
以下は一般的な加硫BRの目安である。薬品耐性は、ポリマーと溶剤の親和性だけでなく、架橋密度、充填剤、可塑剤抽出、酸化、温度、応力及び接触時間に左右される。
| 薬品・環境 | 代表条件 | 評価 | 主な劣化形態 | 備考 |
|---|---|---|---|---|
| 水 | 23℃、長期浸漬 | ◎ | 変化小 | 配合剤溶出、界面及び金属接着部を確認する。 |
| 温水 | 60~80℃、長期 | ○ | 軟化、添加剤溶出 | 熱酸化及び接着界面の劣化に注意する。 |
| 水蒸気 | 100℃付近 | △ | 熱老化、膨れ、接着低下 | EPDM等より不利である。 |
| 塩水・海水 | 3.5% NaCl、23℃ | ○ | 変化小、金属腐食の間接影響 | 金属複合部品では界面腐食を確認する。 |
| 塩酸 | 10%、23℃ | ○ | 長期で物性低下の可能性 | 濃度及び温度上昇で個別確認する。 |
| 硫酸 | 10%、23℃ | ○ | 酸化・硬化の可能性 | 濃硫酸は不適。 |
| 水酸化ナトリウム | 10%、23℃ | ○ | 配合剤への影響 | 強アルカリ高温では個別確認する。 |
| エタノール | 23℃ | ○ | 軽微な膨潤又は抽出 | 長期・高温で確認する。 |
| IPA | 23℃ | ○ | 軽微な膨潤又は抽出 | 消毒用途は繰返し暴露を確認する。 |
| グリセリン | 23℃ | ◎ | 変化小 | 水分及び添加剤との相互作用を確認する。 |
| MMB | 23℃ | △ | 膨潤、軟化 | グリコールエーテル系は組成により差が大きい。 |
| アセトン | 23℃ | △ | 膨潤、抽出 | 短時間接触でも配合依存。 |
| MEK | 23℃ | △ | 膨潤、軟化 | 高温・応力下では不適となりやすい。 |
| 酢酸エチル | 23℃ | △ | 膨潤、軟化 | 接着剤・洗浄剤用途で実測する。 |
| トルエン | 23℃ | × | 著しい膨潤、軟化 | BRに近い溶解度パラメータを持つ。 |
| キシレン | 23℃ | × | 著しい膨潤、軟化 | 長時間浸漬には不適。 |
| n-ヘキサン | 23℃ | × | 膨潤、可塑剤抽出 | 脂肪族炭化水素にも弱い。 |
| ガソリン | 23℃ | × | 膨潤、強度低下 | 燃料用途はNBR、HNBR、FKM等を検討する。 |
| 鉱物油・潤滑油 | 23~100℃ | △ | 膨潤、軟化、抽出 | 油種、芳香族分、温度により差が大きい。 |
| エンジン油 | 100℃ | × | 膨潤、熱酸化 | 長期シール用途には不向き。 |
| ブレーキ液・グリコール系 | 23~120℃ | ○ | 配合依存の膨潤 | EPDMが一般的であり、BR単独は採用実績を確認する。 |
| ジクロロメタン | 23℃ | × | 著しい膨潤又は溶解傾向 | 塩素系溶剤は不適。 |
| 次亜塩素酸ナトリウム | 200~1000 ppm、23℃ | △ | 酸化、表面硬化、亀裂 | 濃度、pH、繰返し及び応力条件を確認する。 |
| 過酸化水素 | 3%、23℃ | △ | 酸化劣化 | 濃度・温度上昇で劣化が加速する。 |
SP値(溶解度パラメータ)
BRの代表的なHildebrand SP値は、約17.0~17.6 MPa1/2(従来単位で約8.3~8.6 (cal/cm3)1/2)が目安である。ミクロ構造、分子量、架橋、充填剤及び温度により見かけの親和性は変化する。
溶解性の目安
| SP値差 Δδ | 溶解・膨潤の目安 | 判定 |
|---|---|---|
| 0~2 | 膨潤・軟化しやすい | × |
| 2~5 | 条件により膨潤する | △ |
| 5~8 | 短時間接触では比較的安定 | ○ |
| 8以上 | 溶解・膨潤しにくい | ◎ |
SP値から見た耐溶剤性
| 溶剤 | SP値 MPa1/2 | BRとの差 | SP値評価 | 実用上の補足 |
|---|---|---|---|---|
| n-ヘキサン | 14.9 | 2.4 | △ | 非極性溶剤であり、実際には大きく膨潤しやすい。 |
| トルエン | 18.2 | 0.9 | × | 強い膨潤又は溶解傾向がある。 |
| キシレン | 18.0 | 0.7 | × | 強い膨潤が見込まれる。 |
| 酢酸エチル | 18.6 | 1.3 | × | 架橋品でも膨潤・軟化に注意する。 |
| MEK | 19.0 | 1.7 | × | 短時間でも配合剤抽出を伴う場合がある。 |
| アセトン | 20.0 | 2.7 | △ | 極性差があるが膨潤や抽出が生じ得る。 |
| IPA | 23.5 | 6.2 | ○ | 比較的安定だが長時間・高温では確認する。 |
| エタノール | 26.0 | 8.7 | ◎ | SP差上は良好だが添加剤抽出を確認する。 |
| 水 | 47.9 | 30.6 | ◎ | 主鎖との親和性は低いが温水・蒸気及び界面劣化は別問題である。 |
SP値差は物理的な溶解・膨潤の一次スクリーニングであり、架橋網目、加硫剤、充填剤、可塑剤、酸化、温度、応力、薬品混合物及び時間を含まない。実部品の適否は、質量・体積・硬さ・引張・外観を測定する実薬品浸漬試験で確認する。
製法
BRは一般に、精製した1,3-ブタジエンを炭化水素溶媒中で配位重合又はアニオン重合して製造する。高cis BRにはネオジム、コバルト、ニッケル等の触媒系が用いられ、低cis又は分子設計型BRには有機リチウム系触媒が用いられることが多い。

原料
- 1,3-ブタジエン
- 炭化水素溶媒
- Nd、Co、Ni又はLi系触媒・助触媒
- 重合停止剤、酸化防止剤、安定剤
代表的な重合反応
n CH2=CH-CH=CH2 → [-CH2-CH=CH-CH2-]n
重合後工程
重合停止後、未反応ブタジエンと溶媒を回収し、凝固、洗浄、脱水、乾燥を経てクラム又はベール状にする。品質管理では、ムーニー粘度、cis含有量、1,2-ビニル量、分子量分布、灰分、揮発分、ゲル分、色調などを確認する。
コンパウンド
加硫製品では、カーボンブラック、シリカ、シランカップリング剤、プロセスオイル、酸化亜鉛、ステアリン酸、老化防止剤、ワックス、硫黄、加硫促進剤又は過酸化物を混練する。タイヤ用途では、SBR又はNRとのブレンド、シリカ分散、シラン反応及び動的粘弾性の設計が重要である。
詳細な利用用途
| 用途分野 | 適性 | 代表用途 | 選定理由 | 主な注意点 |
|---|---|---|---|---|
| 自動車・タイヤ | ◎ | トレッド、サイドウォール、ビード周辺、トラックタイヤ | 耐摩耗、低発熱、反発、低温性 | ウェットグリップ、オゾン、配合バランスを確認する。 |
| 工業用ベルト・ホース | ○ | コンベヤベルト、伝動ベルト、一般ホース | 耐摩耗、屈曲、動的疲労 | 油、燃料、屋外では他ゴムとの比較が必要である。 |
| 防振・動的部品 | ○ | 防振ゴム、カップリング、ローラー | 高反発、低発熱、低温性 | 圧縮永久ひずみ、耐候性、接着を確認する。 |
| 靴・スポーツ | ◎ | 靴底、ゴルフボール、ボール芯 | 耐摩耗、反発弾性、弾性回復 | グリップ、着色、臭気、摩耗粉を確認する。 |
| 樹脂改質 | ◎ | HIPS、ABS、耐衝撃改質 | ゴム粒子による衝撃吸収 | 粒径、相容化、剛性、光沢、成形収縮に注意する。 |
| 電気・電子 | △ | 絶縁部品、封止材、衝撃改質材 | 非導電配合では絶縁性が高い | 難燃、耐熱、アウトガス、イオン性不純物を確認する。 |
| 食品機械 | △ | 非直接接触の弾性部品 | 低温性、弾性 | 食品接触適合、抽出物、油脂膨潤、洗浄剤を個別確認する。 |
| 医療 | △ | 限定的な弾性部品、接着・シーラント改質 | 低温柔軟性、反応性液状BR | ISO 10993、抽出物、滅菌、残留モノマーを個別確認する。 |
| 建築・屋外 | × | 限定的な防振材 | 弾性と低温性 | 耐候・耐オゾン性が不足しやすく、EPDMやCRが優先される。 |
| シール・Oリング | △ | 低温・非油環境の限定用途 | 低温柔軟性 | 油、燃料、圧縮永久ひずみ、オゾンに弱い。 |
用途別選定
| 用途 | 適性 | 理由 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| ギア・軸受・ブッシュ | △ | 弾性体ローラーや緩衝部材には使用できる。 | 高荷重摺動、寸法精度、摩耗粉には不向き。 |
| ローラー | ○ | 反発弾性及び耐摩耗性を活かせる。 | 耐油、表面粗さ、圧縮永久ひずみを確認する。 |
| シール・ガスケット・Oリング | △ | 水系・低温域の限定用途で検討できる。 | 油、燃料、オゾン、熱に対する耐性が不足しやすい。 |
| チューブ・ホース | ○ | 一般工業用途で押出加工が可能である。 | 流体の種類、圧力、温度、補強構造を確認する。 |
| フィルム・シート | △ | 未加硫シート、ゴム引布、接着層として利用できる。 | 熱可塑性フィルムのような再溶融成形はできない。 |
| 電気コネクタ・筐体 | × | 構造材としての剛性が不足する。 | 樹脂改質材としては有効である。 |
| 自動車内装・外装 | △ | 防振、緩衝、樹脂改質に使用できる。 | 外装は耐候性対策が必須である。 |
| 燃料系部品 | × | 低温性は良いが耐燃料性が不足する。 | NBR、HNBR、FKM等を検討する。 |
| 食品機械部品 | △ | 適合配合があれば限定使用できる。 | 食品衛生法、FDA、抽出、洗浄条件を確認する。 |
| 複合材料マトリックス | △ | 靭性改質、界面改質、液状BR反応材として使用できる。 | 架橋、相溶性、耐熱、アウトガスを確認する。 |
関連材料との比較
| 比較材料 | 特徴 | BRとの違い | 選定の目安 |
|---|---|---|---|
| 天然ゴム(NR) | 引張、引裂、疲労耐久、グリーン強度及び加工粘着性に優れる。 | BRは低温性、耐摩耗、反発及び低発熱に優れるが、引裂と加工性で劣る場合がある。 | 高強度・疲労はNR、低発熱・耐摩耗はBR、タイヤではブレンドを検討する。 |
| イソプレンゴム(IR) | NRに近い構造で、均一性、清浄性及び加工性に優れる。 | BRはIRより低いTgと高い耐摩耗性を持つが、グリーン強度は低い。 | 高純度・加工性はIR、低発熱・耐摩耗はBRを比較する。 |
| スチレンブタジエンゴム(SBR) | 耐摩耗、加工性、価格及びウェットグリップのバランスに優れる。 | BRは低温性、反発及び低発熱に優れ、SBRは加工性とグリップ調整に優れる。 | タイヤでは要求性能に応じて併用する。 |
| アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR) | 耐油、耐燃料及びガスバリア性に優れる極性ゴムである。 | BRは低温性と反発に優れるが、油・燃料で大きく膨潤する。 | 油・燃料環境はNBR、動的低発熱用途はBRを優先する。 |
| エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM) | 耐候、耐オゾン、耐水、耐蒸気及び電気特性に優れる。 | BRは耐摩耗と反発に優れるが、屋外耐久性ではEPDMが有利である。 | 屋外・蒸気はEPDM、タイヤ・耐摩耗はBRを検討する。 |
| クロロプレンゴム(CR) | 耐候、難燃、接着及び中程度の耐油性を持つ。 | BRは低温性と反発が高く、CRは耐候・難燃・接着が有利である。 | 屋外・難燃・接着はCR、低発熱・耐摩耗はBRを比較する。 |
| シリコーンゴム(VMQ) | 耐熱、耐寒、耐候及び電気特性に優れる。 | BRは機械強度、耐摩耗及び価格で有利だが、高温・屋外ではVMQが有利である。 | 広温度域・耐候はVMQ、動的耐摩耗はBRを検討する。 |
代表的なメーカー
| メーカー | 代表製品・ブランド | 概要 |
|---|---|---|
| JSR株式会社 | JSR BRシリーズ | 高cis BR等を展開してきた代表的な国内合成ゴムメーカーである。採用時は最新の製造・販売体制及びグレード供給を確認する。 |
| UBE株式会社/UBEエラストマー株式会社 | UBEPOL BR、UBEPOL VCR | コバルト触媒系高cis BR及びBR/シンジオタクチック1,2-ポリブタジエン複合系を展開する。 |
| Kumho Petrochemical | KBRシリーズ | タイヤ及び工業用品向けBRを供給する主要メーカーの一つである。 |
| ARLANXEO | Buna CBシリーズ | 高cis BR、Nd系BRなどを展開する世界的な合成ゴムメーカーである。 |
| Synthos | SYNTECA BR、NdBR系製品 | タイヤ及び工業用品向けのBR製品を展開する。 |
| Kuraray | 液状ポリブタジエン関連製品 | 液状ポリブタジエンを反応性可塑剤、ゴム配合、接着・シーラント用途向けに展開する。 |
法規制・認証
| 項目 | 一般的な位置付け | 確認事項 |
|---|---|---|
| RoHS | ポリマー自体は一般に対象制限物質を意図的に含まない設計が可能である。 | 添加剤、顔料、工程汚染及びメーカー適合書を確認する。 |
| REACH・SVHC | 登録・情報伝達は供給者及び用途に依存する。 | 最新SVHC候補リスト、残留モノマー、添加剤及び輸入者義務を確認する。 |
| FDA・食品接触 | 適合配合又は適合グレードが存在する場合がある。 | 21 CFR該当条項、抽出条件、使用温度、食品種別及び最終製品適合を確認する。 |
| 日本の食品衛生法 | ポジティブリスト制度への適合は配合単位で確認が必要である。 | 原料ゴムだけでなく添加剤、加硫剤、色材及び最終製品試験を確認する。 |
| ISO 10993・医療 | 材料名だけで適合を断定できない。 | 抽出物、細胞毒性、感作、滅菌、残留物及び製造変更管理を確認する。 |
| UL認証 | 特定コンパウンド・厚さ・色で取得される。 | BR材料群全体の認証ではないため、UL Yellow Card等を個別確認する。 |
| ISCC PLUS | マスバランス認証対応製品が存在する。 | 供給拠点、製品、証明書、割当方法を個別確認する。 |
環境・リサイクル性及び供給性
| 項目 | 評価 | 内容 |
|---|---|---|
| 材料区分 | 熱硬化性エラストマー | 加硫後は再溶融できない。未加硫端材は条件により再配合できる。 |
| マテリアルリサイクル | △ | 粉砕ゴム、再生ゴム、脱硫ゴムとして限定利用される。物性低下と異物管理が課題である。 |
| ケミカルリサイクル | △ | 熱分解油、モノマー・炭化水素回収の研究・実装例があるが、一般化は限定的である。 |
| サーマルリサイクル | ○ | 発熱量は高いが、排ガス、設備条件及び法規制を確認する。 |
| バイオベース・マスバランス | △ | バイオナフサ又は循環原料を用いるマスバランス製品が存在する。生分解性を意味しない。 |
| 価格区分 | 比較的低価格~中価格 | 市況、ブタジエン価格、購入量、グレード及び地域で変動する。 |
| 国内入手性 | ○ | タイヤ・工業用途の流通はあるが、小口販売はコンパウンダー経由が現実的である。 |
| 供給形態 | ベール、クラム、液状品、コンパウンド | シート、成形品、ゴム板等は加工会社から入手する。 |
注意点・劣化故障モード
| 劣化現象 | 主な原因 | 発生しやすい条件 | 性能への影響 | 予防策 | 推奨確認試験 |
|---|---|---|---|---|---|
| オゾンクラック | 主鎖二重結合とオゾンの反応 | 屋外、静的又は動的ひずみ、オゾン存在 | 表面亀裂、破断 | 老化防止剤、ワックス、被覆、EPDM等との材料比較 | JIS K 6259相当、伸長20~50%、規定オゾン濃度 |
| 熱酸化劣化 | 酸素、熱、金属イオン | 70℃以上の長期暴露 | 硬化、亀裂、伸び低下 | 耐熱配合、酸化防止剤、温度低減 | 70~120℃熱老化、168~1000h、物性保持率 |
| 油・燃料膨潤 | 非極性溶剤との高い親和性 | 鉱物油、ガソリン、芳香族溶剤 | 体積増加、硬さ低下、強度低下 | NBR、HNBR、FKM等への変更 | 実液浸漬、23℃及び使用温度、70~168h |
| 可塑剤・添加剤抽出 | 溶剤、洗浄剤、温水 | 繰返し洗浄、長期浸漬 | 質量低下、硬化、表面変化 | 低抽出配合、抽出物評価 | 質量変化、硬さ、GC-MS又は溶出試験 |
| 疲労亀裂 | 繰返しひずみ、ノッチ、界面欠陥 | タイヤ、ベルト、防振部品 | 亀裂成長、剥離 | NRブレンド、フィラー分散、応力集中低減 | デマチア屈曲、亀裂成長、実機疲労 |
| 圧縮永久ひずみ | 架橋網目の緩和、熱 | 高温圧縮シール | シール性低下 | 加硫系最適化、低温化、材料変更 | 70℃×22h又は使用条件相当 |
| 接着剥離 | 金属表面処理不良、熱、水、疲労 | ゴム金属複合部品 | 界面剥離、異音、破損 | 脱脂、リン酸塩、プライマー、加硫接着管理 | 剥離強度、熱水、塩水、疲労複合試験 |
| アウトガス | 残留溶媒、低分子、添加剤 | 真空、高温、電子用途 | 汚染、曇り、接点障害 | 低揮発配合、ポストキュア | TML/CVCM又はGC-MS、85℃以上の加熱試験 |
短時間の引張強さ又は硬さを、そのまま長期部品の設計許容値として使用してはならない。採用前には、実薬品浸漬、応力負荷下試験、熱老化、オゾン、疲労、圧縮永久ひずみ、摩耗、接着、寸法変化及び実部品耐久試験を、実使用温度、濃度、荷重、ひずみ、湿度、時間及び繰返し回数で実施することが望ましい。
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