概要
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 材料名 | クロロスルフォン化ポリエチレン |
| 略記号 | CSM、CSPE |
| IUPAC | chlorosulfonated polyethylene(組成が一定でない変性高分子であり、単一の厳密IUPAC名に限定しにくい) |
| 英語名 | Chlorosulfonated Polyethylene、Chlorosulphonated Polyethylene、Chlorosulfonated Polyethylene Rubber |
| 日本語名 | クロロスルフォン化ポリエチレン、クロロスルホン化ポリエチレン、塩素化スルホン化ポリエチレン、CSMゴム |
| 分類 | 特殊合成ゴム、ハロゲン含有エラストマー、飽和主鎖系ゴム |
| プラスチック分類 | 架橋して使用する熱硬化性エラストマー。一般的な熱可塑性プラスチックではない。 |
| 化学式又は代表構造 | −[CH2−CH2]x−[CH2−CH(Cl)]y−[CH2−CH(SO2Cl)]z− |
| CAS No. | 68037-39-8が代表例として用いられるが、組成・登録体系により確認が必要である。 |
| 構造・主成分 | ポリエチレン主鎖の一部を塩素化及びクロロスルフォン化したランダム変性高分子である。スルホニルクロリド基が架橋反応点となる。 |
| 主な用途 | 自動車・工業用ホース、電線・ケーブル被覆、ゴム引布、屋根・防水シート、ライニング、ロール、接着剤、エスカレーター手摺、ゴムボート、耐候性コーティング。 |
クロロスルフォン化ポリエチレン(CSM)は、ポリエチレンを塩素化及びクロロスルフォン化して得られる特殊合成ゴムである。主鎖が飽和炭化水素骨格であるため、ジエン系ゴムに比べてオゾン、酸素、紫外線及び屋外暴露による劣化を受けにくい。
塩素置換基は極性、難燃性、耐油性及び耐薬品性に寄与し、少量導入されたスルホニルクロリド基は金属酸化物等を用いた架橋反応点として機能する。これにより、耐候性、耐熱老化性、耐薬品性、機械強度及び着色性のバランスを持つ加硫ゴムが得られる。
実際の性能は、塩素含有量、硫黄含有量、分子量、加硫系、充填材、可塑剤、顔料及び老化防止剤により変化する。実使用では、グレード、温度、薬品濃度、荷重、応力、湿度、接触時間、試験片形状及び成形条件を確認する必要がある。
特徴
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 長所 | 耐オゾン性、耐候性、耐熱老化性、耐薬品性、耐油性、耐摩耗性、難燃性、着色性のバランスに優れる。飽和主鎖のため屋外寿命を確保しやすい。 |
| 短所 | 材料価格が比較的高く、加硫配合及び混練管理が必要である。低温柔軟性、圧縮永久ひずみ、燃料・芳香族溶剤・一部塩素系溶剤への耐性は配合と条件に依存する。 |
| 外観 | 原料ゴムは一般に白色から淡色のベール又はチップ状であり、明色配合が可能である。加硫品は充填材・顔料により任意色となる。 |
| 耐熱性 | 一般的な連続使用温度の目安は約90~120℃であり、適切な配合では短時間125~150℃程度に耐える場合がある。長期寿命は熱、酸素、薬品及び応力に依存する。 |
| 耐薬品性 | 酸、アルカリ、塩水、酸化性薬品に比較的良好である。油には中程度から良好であるが、芳香族炭化水素、ケトン、エステル、塩素系溶剤では膨潤又は軟化に注意する。 |
| 加工性 | ゴム用密閉混練機又はロールで配合し、押出、カレンダー、圧縮、トランスファー、ゴム射出後に加硫する。熱可塑性樹脂の通常射出成形条件は適用できない。 |
| 分類上の注意 | CPEは塩素化ポリエチレンであり、CSMとはスルホニルクロリド基の有無及び架橋機構が異なる。旧DuPont商標Hypalon®は材料一般名ではなく、現在の供給可否を個別確認する必要がある。 |
構造式

| 項目 | 構造・内容 |
|---|---|
| 代表的な構造単位 | −[CH2−CH2]x−[CH2−CH(Cl)]y−[CH2−CH(SO2Cl)]z− |
| 原料骨格 | ポリエチレン由来の飽和炭素主鎖である。 |
| 塩素置換部 | 主鎖炭素に結合した塩素が極性、難燃性、耐油性及びガス透過性に影響する。 |
| スルホニルクロリド部 | −SO2Cl基が架橋反応点となり、金属酸化物等との反応により三次元網目を形成する。 |
| 組成差 | 塩素量、硫黄量、分子量及び置換分布はグレードにより異なる。単一の化学式で完全に表現できない。 |
種類・代表グレード
| グレード区分 | 主な改質又は特徴 | 物性への影響 | 主用途 |
|---|---|---|---|
| 標準グレード | 標準的な塩素量、硫黄量及びムーニー粘度 | 耐候、耐薬品、機械強度のバランス | ホース、シート、ロール、一般工業部品 |
| 高ムーニー・高強度 | 高分子量又は高粘度設計 | 強度、押出形状保持性を高めやすいが混練負荷が増える | ホース、カレンダーシート、ゴム引布 |
| 低ムーニー・加工性重視 | 低粘度設計 | 流動性と混練性を高めやすいが形状保持に注意 | 接着剤、コーティング、薄肉品 |
| 耐熱グレード | ポリマー組成及び加硫配合を最適化 | 熱老化後の硬化・強度低下を抑制 | 高温ホース、電線被覆 |
| 耐低温・動的特性改良 | 分子設計又は共重合・配合を調整 | 低温柔軟性、屈曲疲労を改善 | 動的ホース、手摺、ベルト関連 |
| 接着剤・溶液用途 | 溶解性、粘度、接着性を調整 | 溶液粘度、初期接着、耐候接着性を調整 | 接着剤、ライニング、コーティング |
| 難燃グレード | ハロゲン含有骨格に難燃配合を組み合わせる | 燃焼速度及び自己消火性を改善 | 電線、ケーブル、難燃シート |
| 耐水・耐酸配合 | 受酸剤、架橋系、充填材を最適化 | 浸水・酸接触後の物性保持を改善 | 薬液ライニング、防水用途 |
成形加工
| 加工方法 | 適性 | 理由 | 主な注意点 |
|---|---|---|---|
| 射出成形(ゴム射出) | ○ | 加硫ゴム用射出成形機で対応可能 | スコーチ、滞留、金型温度及び加硫時間を管理する。 |
| 押出成形 | ◎ | ホース、被覆、異形品に適する | ダイ膨張、表面肌、加硫収縮、連続加硫条件を確認する。 |
| ブロー成形 | × | 一般的な熱可塑性ブロー成形には不適 | 未加硫ゴムを用いる特殊成形を除き一般化困難である。 |
| 圧縮成形 | ◎ | シート、ガスケット、成形品で実績が多い | 加硫温度、圧力、エア抜き、金型汚染を管理する。 |
| トランスファー成形 | ○ | 複雑形状及びインサート成形に対応しやすい | 流動長、スコーチ及びウェルド部強度を確認する。 |
| カレンダー加工 | ◎ | ゴム引布、防水シート、薄板に適する | 厚み精度、布との接着、ロール温度を管理する。 |
| 真空成形 | × | 架橋ゴムであり熱可塑シートの再軟化成形は困難 | 適用外である。 |
| 切削加工 | △ | 硬質配合や厚板では可能 | 弾性変形、発熱、寸法戻りに注意する。 |
| 溶着 | △ | 未加硫状態の接合又は熱風・接着併用が可能な場合がある | 加硫後は一般熱融着が困難である。 |
| 接着 | ○ | 溶剤系・反応型接着剤で接合可能 | 表面清浄化、プライマー、被着材との適合性を確認する。 |
| 塗装・印刷 | ○ | 比較的極性があり表面処理で対応しやすい | 離型剤、ワックス、加硫ブルームを除去する。 |
代表的な加工・加硫条件
| 項目 | 単位 | 代表範囲・目安 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 予備乾燥 | - | 通常不要 | 原料ゴムは吸湿性樹脂ではないが、配合剤及び保管時の水分管理は必要である。 |
| 混練温度 | ℃ | 40~110 | 配合順序及びスコーチ安全性により設定する。 |
| 押出ヘッド温度 | ℃ | 60~100 | グレード及び加硫方式により異なる。 |
| 加硫温度 | ℃ | 150~180 | 金属酸化物系等の架橋系と製品厚みに依存する。 |
| 加硫時間 | min | 5~60 | 厚肉品、プレス成形、連続加硫で大きく異なる。 |
| 金型温度 | ℃ | 150~180 | ゴム射出又は圧縮成形の一般的目安である。 |
| 成形収縮率 | % | 1.5~4.0 | 配合、加硫、製品形状及び流動方向で変動する。 |
| 推奨肉厚 | mm | 1~10以上 | 用途依存。厚肉では加硫不足、ボイド及び温度分布に注意する。 |
| アニール・二次加硫 | - | 条件により実施 | 低圧縮永久ひずみ、揮発分低減及び物性安定化目的で検討する。 |
上記は材料群としての一般的な目安である。実際にはメーカー技術資料、配合設計、成形機、製品形状、肉厚及び要求物性に基づいて条件を設定する。
代表的な物性値又は機械的性質
以下は主として非強化の加硫CSM配合物に関する代表値又は代表範囲である。CSMは原料ポリマー単体ではなく、加硫剤、受酸剤、補強材、可塑剤等を含む配合物として評価されるため、特定グレードの保証値ではない。
| 項目 | 単位 | 代表値 | 代表範囲 | 試験条件・材料状態 | 備考 |
|---|---|---|---|---|---|
| 密度 | g/cm³ | 1.20 | 1.10~1.35 | 23℃、加硫配合 | 充填材、塩素量及び可塑剤で変動する。 |
| 比重 | - | 1.20 | 1.10~1.35 | 23℃、加硫配合 | 水を1とした無次元値である。 |
| 硬度 | Shore A | 70 | 40~90 | 23℃、加硫品 | 配合により広範囲に調整可能である。 |
| 引張強さ・破断 | MPa | 15 | 7~25 | 23℃、加硫品 | 配合、加硫状態、試験規格に依存する。 |
| 引張破断伸び | % | 350 | 150~600 | 23℃、加硫品 | 熱老化後は一般に低下する。 |
| 100%引張応力 | MPa | 4.0 | 2~8 | 23℃、加硫品 | 硬度及び補強剤量に依存する。 |
| 引裂強さ | kN/m | 35 | 20~60 | 23℃、加硫品 | 試験片形状及び規格差が大きい。 |
| 圧縮永久ひずみ | % | 35 | 20~60 | 70℃×22~70 h、代表条件 | 配合と加硫系に強く依存する。 |
| 低温使用限界 | ℃ | -30 | -40~-20 | 静的用途の目安 | 動的用途ではより高い温度側で評価する。 |
| 連続使用温度 | ℃ | 110 | 90~120 | 空気中、長期目安 | 寿命判定基準、薬品及び応力で変化する。 |
| 短時間耐熱温度 | ℃ | 140 | 125~150 | 短時間 | 熱履歴と加硫系を確認する。 |
| ガラス転移温度 | ℃ | -25 | -40~-15 | ポリマー組成依存 | 単一値ではなくグレード依存である。 |
| 融点 | ℃ | 該当なし | 該当なし | 架橋ゴム | 原料ポリマーに結晶性が残る場合があるが、成形品は再溶融しない。 |
| 吸水率・24時間 | % | 0.5 | 0.2~1.5 | 23℃水中、加硫品 | 配合、極性充填材、架橋密度で変動する。 |
| 体積抵抗率 | Ω・cm | 1×1012 | 1×1010~1×1014 | 23℃、乾燥状態 | カーボンブラック及び吸湿で大きく変化する。 |
| 絶縁破壊強さ | kV/mm | 15 | 10~25 | 乾燥状態、代表値 | 厚さ及び配合に依存する。 |
| 熱伝導率 | W/(m・K) | 0.20 | 0.15~0.30 | 23℃、加硫品 | 充填材で変動する。 |
| 線膨張係数 | 10−5/K | 18 | 12~25 | 加硫品、代表範囲 | 温度域及び配合に依存する。 |
比較用評価スコア
| 評価項目 | スコア | 評価理由 |
|---|---|---|
| 引張強度 | 4 | 特殊ゴムとして良好であり、補強配合で高強度化しやすい。 |
| 剛性 | 2 | エラストマーであり、硬質構造材用途には適さない。 |
| 衝撃強度 | 4 | ゴム弾性により衝撃吸収性に優れる。 |
| 耐熱性 | 4 | 汎用ゴムより良好であるが、シリコーンゴムやFKMには及ばない。 |
| 低温特性 | 3 | 標準的であり、低温改良グレードを選定する場合がある。 |
| 耐薬品性 | 4 | 酸、アルカリ、酸化剤に良好だが、有機溶剤全般に万能ではない。 |
| 耐候性 | 5 | 耐オゾン、紫外線、屋外暴露に非常に優れる。 |
| 耐加水分解性 | 4 | 主鎖は加水分解を受けにくいが、配合剤と架橋系を確認する。 |
| 寸法安定性 | 2 | ゴムであり、荷重、温度、クリープ及び圧縮永久ひずみの影響を受ける。 |
| 電気絶縁性 | 4 | 絶縁配合で良好だが、導電性充填材により変化する。 |
| 難燃性 | 4 | 塩素含有により一般に燃えにくいが、UL 94は個別グレード確認が必要である。 |
| 成形加工性 | 3 | ゴム加工として標準的だが、配合・加硫管理を要する。 |
| 接着性 | 4 | 比較的極性があり、適切な前処理及び接着剤で良好である。 |
| リサイクル性 | 1 | 加硫後は再溶融できず、マテリアルリサイクルは限定的である。 |
| 価格優位性 | 2 | EPDM、CR、NBRなどより高価格となることが多い。 |
耐薬品性
評価は一般的な加硫CSMの傾向であり、薬品濃度、温度、接触時間、浸漬又は飛沫、応力、配合及び架橋密度により変化する。◎は一般条件で影響が小さい、○は概ね使用可能、△は膨潤、軟化、強度低下又は応力割れに注意、×は不適となる可能性が高いことを示す。
| 薬品・媒体 | 濃度 | 温度 | 接触条件 | 評価 | 主な劣化形態・備考 |
|---|---|---|---|---|---|
| 水 | - | 23℃ | 長期浸漬 | ◎ | 一般に影響は小さい。抽出成分及び配合依存性を確認する。 |
| 温水 | - | 60~80℃ | 長期浸漬 | ○ | 加硫系、受酸剤及び接着界面の劣化に注意する。 |
| 塩酸 | 10~20% | 23℃ | 浸漬 | ◎ | 一般に良好。高温・高濃度では物性保持を確認する。 |
| 硫酸 | 10~30% | 23℃ | 浸漬 | ○ | 比較的良好だが、濃硫酸及び高温では酸化劣化に注意する。 |
| 硝酸 | 5~20% | 23℃ | 浸漬 | △ | 酸化性が強く、濃度・温度上昇で劣化しやすい。 |
| 水酸化ナトリウム | 10~30% | 23℃ | 浸漬 | ◎ | 一般に良好。高温濃厚液は配合剤への影響を確認する。 |
| アンモニア水 | 10% | 23℃ | 浸漬 | ○ | 概ね良好だが、長期条件で硬さ及び重量変化を確認する。 |
| エタノール | 99%以下 | 23℃ | 浸漬 | ○ | 一般に使用可能だが、配合剤抽出及び膨潤を確認する。 |
| イソプロパノール | 99%以下 | 23℃ | 浸漬 | ○ | 短時間接触は比較的良好。高温長期では確認が必要である。 |
| グリセリン | - | 23~60℃ | 浸漬 | ◎ | 一般に良好である。 |
| MMB | - | 23℃ | 浸漬 | △ | エーテルアルコールであり、膨潤・軟化を実測確認する。 |
| ヘキサン・ヘプタン | - | 23℃ | 浸漬 | ○ | 脂肪族炭化水素には中程度から良好。長期膨潤を確認する。 |
| トルエン・キシレン | - | 23℃ | 浸漬 | × | 著しい膨潤、軟化又は強度低下のおそれがある。 |
| アセトン | - | 23℃ | 浸漬 | △ | 配合及び架橋密度により膨潤する。 |
| メチルエチルケトン | - | 23℃ | 浸漬 | × | 膨潤又は軟化のおそれが高い。 |
| 酢酸エチル | - | 23℃ | 浸漬 | × | エステル系溶剤で膨潤しやすい。 |
| ジクロロメタン | - | 23℃ | 浸漬 | × | 塩素系溶剤で著しい膨潤に注意する。 |
| エチレングリコール | 50~100% | 23~100℃ | 浸漬 | ○ | 冷却液用途では温度、添加剤及び酸化状態を確認する。 |
| 鉱物油・潤滑油 | - | 23~100℃ | 浸漬 | ○ | 一般に中程度から良好。油種及び芳香族分で差がある。 |
| ガソリン | - | 23℃ | 浸漬 | △ | 芳香族分及び酸素含有成分により膨潤する。燃料系は専用評価が必要である。 |
| 軽油 | - | 23~80℃ | 浸漬 | ○ | 概ね使用可能な場合があるが、長期膨潤を確認する。 |
| ブレーキ液・グリコール系 | - | 23~120℃ | 浸漬 | ○ | 配合と高温寿命を確認する。 |
| 次亜塩素酸ナトリウム | 0.05~1% | 23℃ | 浸漬 | ○ | 酸化剤であり、高濃度・高温・長期では劣化確認が必要である。 |
| 過酸化水素 | 3~10% | 23℃ | 浸漬 | ○ | 一般に比較的良好だが、高濃度では酸化劣化を確認する。 |
| 海水・塩水 | 3.5%相当 | 23~60℃ | 長期浸漬 | ◎ | 一般に良好。接着界面、金属腐食及び生物付着は別途評価する。 |
| 食品油 | - | 23~100℃ | 浸漬 | ○ | 油種及び温度により膨潤差がある。食品接触適合は個別グレード確認が必要である。 |
SP値(溶解度パラメータ)
CSMのSP値は文献上、約16.6~20.1 MPa1/2(旧単位cal1/2/cm3/2では約8.1~9.8)程度の範囲が示される。塩素含有量、スルホニルクロリド基量、架橋状態及び配合剤により変化するため、代表値として約18.5 MPa1/2を用いる場合でも参考値として扱う必要がある。
SP値は溶解又は膨潤の熱力学的傾向をみる指標であり、加硫密度、結晶性、拡散速度、温度、酸化反応、加水分解、添加剤抽出及び応力状態を表さない。耐薬品性をSP値だけで判定してはならない。
溶解性の目安
| SP値差 Δδ | 溶解・膨潤の目安 | 判定 |
|---|---|---|
| 0~2 | 膨潤・軟化しやすい | × |
| 2~5 | 条件により膨潤する | △ |
| 5~8 | 短時間接触では比較的安定 | ○ |
| 8以上 | 溶解・膨潤しにくい | ◎ |
SP値から見た耐溶剤性
| 溶剤 | SP値 δ MPa1/2 |
CSM代表値との差 | SP値上の評価 | 実務上の注意 |
|---|---|---|---|---|
| n-ヘキサン | 14.9 | 約3~5 | △ | 脂肪族油・燃料では膨潤率を実測する。 |
| トルエン | 18.2 | 約0~2 | × | 芳香族溶剤で膨潤しやすい。 |
| 酢酸エチル | 18.6 | 約0~2 | × | エステル系で膨潤・軟化に注意する。 |
| メチルエチルケトン | 19.0 | 約0~2 | × | 架橋密度にかかわらず長期浸漬は避ける方向で評価する。 |
| アセトン | 19.9 | 約1~3 | △ | 短時間と長期浸漬で挙動が異なる。 |
| イソプロパノール | 23.5 | 約4~7 | ○ | 配合剤抽出及び高温条件を確認する。 |
| エタノール | 26.0 | 約7~9 | ○~◎ | 水分、温度及び応力の影響を確認する。 |
| 水 | 47.9 | 約29~31 | ◎ | SP値上は安定だが、温水、蒸気、接着界面は別評価である。 |
代表溶剤とのSP値差が小さい場合、未加硫CSMは溶解しやすく、加硫CSMは溶解せず膨潤する傾向がある。評価基準は◎非常に良好、○概ね良好、△注意が必要、×不適であるが、最終判断は実液浸漬試験及び物性保持率で行う。
製法

CSMは一般にポリエチレンを反応媒体中で塩素及び二酸化硫黄系反応剤に接触させ、ラジカル反応により塩素原子とスルホニルクロリド基を導入して製造する。代表的な概念反応は、ポリエチレン中のC−H結合の一部がC−Cl及びC−SO2Clへ置換される反応として表される。
反応後は未反応ガス及び副生成塩化水素を除去し、洗浄、中和、溶媒回収、脱揮、乾燥及びベール化を行う。塩素含有量、硫黄含有量、ムーニー粘度及び揮発分を品質管理し、用途に応じて金属酸化物、加硫促進剤、補強充填材、可塑剤、顔料、難燃剤及び老化防止剤を配合する。
製造には塩素、二酸化硫黄、塩化水素及び有機溶媒を扱う場合があるため、密閉化、耐食設備、局所排気、排ガス吸収、溶媒回収及び工程安全管理が重要である。具体的な反応媒体、開始方法及び精製条件はメーカー固有技術である。
詳細な利用用途
| 用途分野 | 具体例 | 適性 | 選定理由 | 注意点 |
|---|---|---|---|---|
| 自動車 | 耐熱ホース、エアダクト、保護カバー | ○ | 耐候、耐熱老化、耐油のバランス | 燃料浸漬及び圧縮永久ひずみを確認する。 |
| 電気・電子 | 電線・ケーブル被覆、絶縁保護 | ◎ | 耐候、難燃、電気絶縁、着色性 | UL、IEC、煙・腐食性ガス要求は個別グレードで確認する。 |
| 建築・設備 | 屋根シート、防水膜、目地材 | ◎ | 長期耐候、耐オゾン、耐水性 | 接合部、下地接着、可塑剤移行及び火災規制を確認する。 |
| 海洋・レジャー | ゴムボート、救命具、ゴム引布 | ◎ | 耐候、耐水、耐摩耗、着色性 | 接着層、折曲げ疲労、海水・紫外線複合劣化を確認する。 |
| 化学設備 | 薬液ホース、タンクライニング、ロール | ○ | 酸、アルカリ、酸化剤への耐性 | 実薬品濃度、温度、浸透及び金属界面を確認する。 |
| 機械部品 | ロール、ダイヤフラム、カバー | ○ | 耐摩耗、耐候、機械強度 | 動的疲労及び発熱を確認する。 |
| 接着剤・塗料 | 耐候性接着剤、保護コーティング | ◎ | 極性、耐候性、溶液加工性 | 溶剤規制、乾燥、残留溶剤及び被着材適合を確認する。 |
| 食品機械 | ガスケット、ホース | △ | 耐水、耐洗浄性を活用できる場合がある | 食品接触適合グレード、抽出、臭気、洗浄薬品を確認する。 |
| 医療 | 限定的なチューブ・部材 | △ | 耐薬品、耐候性 | 生体適合性及び滅菌耐久性は専用証明が必要である。 |
接合・表面処理適性
| 方法 | 適性 | 実務上の注意 |
|---|---|---|
| 熱板・熱風溶着 | △ | 未加硫又は専用シートでは適用例があるが、加硫後CSMは熱可塑溶着できない。 |
| 超音波・振動溶着 | × | 一般的な加硫ゴムには適用困難である。 |
| 溶剤接着 | ○ | CSMを溶解又は膨潤させる溶剤系接着剤が使用される場合がある。作業環境、残留溶剤及び法規制を確認する。 |
| 接着剤接合 | ○ | ポリクロロプレン、ウレタン、エポキシ等の専用系を被着材に応じて選定する。 |
| 機械締結 | ○ | 座金、面圧、クリープ及び引裂を考慮する。 |
| コロナ・プラズマ処理 | ○ | 表面清浄化及びぬれ性改善に有効な場合がある。処理後時間と接着耐久を確認する。 |
| プライマー処理 | ◎ | 金属、繊維及び異種ゴムとの接着に一般的に有効である。 |
寸法精度・設計上の注意
- CSMは弾性体であり、短時間の引張強さを設計許容応力としてそのまま使用してはならない。
- 圧縮、引張、内圧及び曲げが長時間作用する部品では、クリープ、応力緩和及び圧縮永久ひずみを評価する。
- 成形収縮、流動方向、加硫温度分布及び布・金属補強材との収縮差により反り又は界面応力が生じる。
- ノッチ、鋭角、ねじ締結部、圧入部及びインサート端部では応力集中を避け、十分なR及び面圧分散を設ける。
- 薬品浸漬で膨潤した状態では、弾性率、引裂強さ及び締結保持力が低下するため、寸法変化と応力を同時評価する。
品質・成形不良及び注意点
| 不良・故障モード | 主な原因 | 発生しやすい条件 | 影響 | 対策 | 推奨確認試験 |
|---|---|---|---|---|---|
| スコーチ・早期加硫 | 混練温度過高、滞留、加硫剤分散不良 | 高温混練、押出停滞 | 肌荒れ、流動不足、廃棄増加 | 配合順序、冷却、滞留時間を管理 | ムーニースコーチ、レオメータ |
| 加硫不足 | 温度又は時間不足、厚肉 | 低温金型、厚肉品 | 低強度、粘着、圧縮永久ひずみ増大 | 実測品温、加硫曲線及び厚み別条件を確認 | 加硫曲線、硬度、引張試験 |
| ブルーム | 配合剤過剰、相溶性不足 | 低温保管、長期保管 | 外観不良、接着性低下 | 配合最適化、表面洗浄 | 促進老化、表面分析 |
| 膨潤・軟化 | 溶剤又は燃料吸収 | 芳香族、ケトン、エステル接触 | 寸法増加、強度低下 | 実液適合確認、代替材検討 | 重量・体積変化、引張保持率 |
| 熱酸化硬化 | 高温、酸素、金属触媒 | 長期高温使用 | 硬化、亀裂、伸び低下 | 耐熱配合、温度低減 | 熱老化試験 |
| 圧縮永久ひずみ | 架橋密度不足、過熱、長期圧縮 | 高温シール | 密封性低下 | 加硫系最適化、形状設計 | 圧縮永久ひずみ試験 |
| 接着剥離 | 表面汚染、プライマー不適、浸水 | ゴム引布、ライニング | 漏れ、層間剥離 | 表面処理、接着剤適合、端部設計 | 180°剥離、温水浸漬後接着 |
| 金属腐食 | 残留酸性物質、加硫副生成物 | 高温高湿、金属接触 | 腐食、界面剥離 | 受酸剤、洗浄、防食処理 | 高温高湿、接触腐食試験 |
| アウトガス | 残留溶剤、低分子配合剤 | 真空、高温 | 汚染、曇り、質量減少 | 低揮発配合、二次加硫 | TML、CVCM、GC-MS |
法規制・認証
| 法規制・認証 | 一般的な位置付け | 確認事項 |
|---|---|---|
| RoHS | 適合可能なグレード・配合が存在する | 鉛、カドミウム、六価クロム、臭素系難燃剤及び配合剤由来不純物を個別確認する。 |
| REACH・SVHC | ポリマー本体だけでなく添加剤確認が必要 | 最新候補物質、残留モノマー、可塑剤、顔料及び加硫助剤を確認する。 |
| PFAS関連規制 | CSM自体はフッ素系ポリマーではない | 離型剤、加工助剤、表面処理にフッ素系物質を使用していないかサプライヤー確認が必要である。 |
| FDA・EU食品接触・日本食品衛生法 | 適合グレード又は適合配合に限定される | 材料名だけで適合を断定できない。抽出条件、接触食品、温度、時間及び色を確認する。 |
| UL 94 | グレード及び厚さごとに認証確認が必要 | 塩素含有により燃えにくい傾向はあるが、材料群全体の等級ではない。 |
| 医療・USP Class VI・ISO 10993 | 一般材料として一律適合しない | 医療専用グレード、滅菌法、抽出物及び生体適合性資料を確認する。 |
環境・リサイクル性及び供給性
| 項目 | 評価・内容 | 注意点 |
|---|---|---|
| 熱可塑性/熱硬化性 | 加硫後は熱硬化性エラストマー | 再加熱しても溶融再成形できない。 |
| マテリアルリサイクル | 限定的 | 粉砕ゴムの充填材利用、再生ゴム化等は可能性があるが、品質用途が限定される。 |
| ケミカルリサイクル | 一般化困難 | 塩素及び硫黄を含むため、処理プロセスと排ガス管理が必要である。 |
| サーマルリサイクル | 設備依存 | 焼却時に塩化水素、硫黄酸化物等が発生し得るため、適切な排ガス処理が必要である。 |
| バイオベース | バイオ原料を活用したCSMの開発・量産化技術例がある | バイオベース含有率、認証及び供給グレードを個別確認する。 |
| 生分解性 | 一般に生分解性ではない | バイオベースと生分解性を混同しない。 |
| 価格・供給性 | 比較的高価格、供給メーカーが限定的 | 購入量、グレード、地域、色、法規制対応及び最小ロットで変動する。 |
関連材料との比較
| 比較材料 | 特徴 | CSMとの違い | 選定の目安 |
|---|---|---|---|
| クロロプレンゴム(CR) | 耐油、耐候、難燃、接着性のバランスが良い | CSMは耐オゾン、長期耐候、明色安定性で有利な場合が多い。CRは汎用性と加工実績に優れる。 | 屋外長寿命はCSM、一般ホース・接着はCRを比較する。 |
| エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM) | 耐候、耐水、耐熱に優れ、比較的低コスト | CSMは耐油、難燃、塗装・接着性で有利。EPDMは耐水、低温、コストで有利な場合がある。 | 水・蒸気・屋外はEPDM、油・難燃を伴う屋外はCSMを検討する。 |
| 塩素化ポリエチレン(CPE) | 耐候、難燃、耐衝撃改質に用いられる | CSMはスルホニルクロリド基による架橋性を持ち、高耐久ゴム用途に向く。CPEは改質剤用途と供給性に優れる。 | 架橋ゴム製品はCSM、PVC改質・熱可塑用途はCPEを優先する。 |
| アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR) | 鉱油及び燃料油への耐性に優れる | CSMは耐候、耐オゾン、酸化剤に優れる。NBRは耐油・燃料で有利な場合が多い。 | 屋外耐候はCSM、油圧・燃料シールはNBRを比較する。 |
| シリコーンゴム(VMQ) | 広い温度範囲、耐熱、耐寒、電気特性に優れる | CSMは耐摩耗、引裂、耐薬品、接着性で有利な場合がある。シリコーンは高低温範囲に優れる。 | 150℃超又は極低温はシリコーン、中温域の耐候・機械耐久はCSMを検討する。 |
| 熱可塑性ポリウレタン(TPU) | 高強度、耐摩耗、熱可塑加工性 | CSMは耐候、耐オゾン、酸化剤及び難燃性で有利。TPUは機械強度と再成形性に優れる。 | 高摩耗・高強度はTPU、屋外薬品・難燃はCSMを検討する。 |
| 天然ゴム(NR) | 高い反発弾性、引裂強さ、疲労性 | CSMは耐候、耐油、耐薬品、難燃性に大きく優れる。NRは動的性能と価格に優れる。 | 屋外・薬品はCSM、高反発・防振はNRを比較する。 |
代表的なメーカー
| メーカー | 代表製品・ブランド | 概要 |
|---|---|---|
| 東ソー株式会社 | TOSO-CSM®、extos® | 日本国内でCSMを製造する主要メーカーである。標準CSMに加え、動的特性及び低温特性を改良したextos®を展開する。グレード、供給地域及び法規制適合は最新資料で確認する。 |
推奨確認試験
| 確認目的 | 推奨試験 | 代表的な確認条件 |
|---|---|---|
| 薬品適合 | 実薬品浸漬試験 | 実濃度、実温度、24 h、168 h、500 h等で重量、体積、硬度、引張保持率を測定する。 |
| 応力下耐久 | 応力負荷下薬品試験 | 実部品ひずみ又は25~50%圧縮状態で薬品暴露し、亀裂、膨潤、永久変形を確認する。 |
| 屋外耐久 | キセノンアーク又はサンシャインウェザーメータ | 紫外線、散水、温度サイクル後の色差、亀裂、伸び保持率を評価する。 |
| 熱寿命 | 熱老化試験 | 使用温度及び上限温度で168~1000 h、硬度、引張、伸び、圧縮永久ひずみを測定する。 |
| 温水・湿熱 | 温水浸漬及び高温高湿試験 | 60~90℃温水、85℃・85%RH等で物性及び接着界面を確認する。 |
| 動的耐久 | 屈曲疲労及び圧力サイクル | 実温度、実変位、実圧力で105~107回を目安に評価する。 |
| 接着・ライニング | 剥離強度及び端部浸透試験 | 初期、温水後、薬品後、熱サイクル後の接着強度を測定する。 |
| 電気用途 | 絶縁破壊、体積抵抗、耐トラッキング | 乾燥及び吸湿状態、使用周波数、厚さをそろえて評価する。 |
| 難燃用途 | UL 94、酸素指数、煙・腐食性ガス | 製品厚さ、色、配合及び認証対象グレードで評価する。 |
| 真空・清浄用途 | アウトガス及び溶出試験 | TML、CVCM、GC-MS、イオンクロマトグラフィー等を用途に応じて実施する。 |
用途決定前には、実際のグレード、配合、成形品形状及び相手材を用い、温度、濃度、荷重、応力、湿度、時間及び繰返し回数を実使用条件に合わせて確認する必要がある。
関連キーワード
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