概要
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 材料名 | ニトリルゴム |
| 略記号 | NBR |
| IUPAC | poly(buta-1,3-diene-co-acrylonitrile) |
| 英語名 | Nitrile Rubber、Nitrile Butadiene Rubber、Acrylonitrile Butadiene Rubber |
| 日本語名 | ニトリルゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム、ブタジエン・アクリロニトリルゴム、NBRゴム、耐油ゴム、Buna-N |
| 分類 | 合成ゴム、ジエン系ゴム、耐油性ゴム |
| プラスチック分類 | 熱硬化性エラストマーに分類される。一般の熱可塑性プラスチックではなく、加硫によりゴム弾性を示す材料である。 |
| 化学式または代表構造 | 代表構造:-[CH2-CH=CH-CH2]m-[CH2-CH(CN)]n– |
| CAS No. | 9003-18-3 |
| 構造・主成分 | 1,3-ブタジエンとアクリロニトリルの共重合体である。加硫剤、カーボンブラック、可塑剤、老化防止剤などを配合して使用されることが多い。 |
| 主な用途 | Oリング、オイルシール、ガスケット、燃料ホース、油圧ホース、パッキン、ベルト、ロール、手袋、耐油シート、工業用ゴム部品 |
ニトリルゴム(NBR)は、1,3-ブタジエンとアクリロニトリルを共重合して得られる代表的な耐油性合成ゴムである。鉱物油、潤滑油、燃料油に対する耐性が比較的高く、自動車、機械、油圧機器、産業設備のシール材として広く使用される。
NBRの性質は、アクリロニトリル含有量、加硫系、充填材、可塑剤、配合剤により大きく変化する。一般にアクリロニトリル含有量が高いほど耐油性、耐燃料性、ガスバリア性は向上しやすいが、低温柔軟性は低下する傾向がある。
「ニトリルゴム」「NBR」「アクリロニトリルブタジエンゴム」「Buna-N」は、用途や業界により呼び方が異なるが、一般には同じNBR系材料を指すことが多い。ただし、HNBR、水素化NBR、カルボキシル化NBRなどは改質材料であり、標準NBRとは耐熱性、耐摩耗性、耐薬品性が異なるため、材料選定ではグレードを確認する必要がある。
特徴
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 長所 | 耐油性、耐燃料性、耐摩耗性、機械的強度、ガスバリア性に優れる。シール材としての実績が多く、配合設計の自由度も高い。 |
| 短所 | 耐候性、耐オゾン性、耐熱老化性はEPDMやシリコーンゴム、フッ素ゴムに劣る場合がある。芳香族炭化水素、ケトン、エステル、塩素系溶剤では膨潤や軟化が起こりやすい。 |
| 外観 | 原料ゴムは淡黄色から褐色の固体又はラテックスである。成形品はカーボンブラック配合により黒色が多いが、配合により淡色品もある。 |
| 耐熱性 | 標準NBRの連続使用温度は一般に80~100℃程度が目安である。耐熱配合では120℃程度まで使用される場合があるが、長時間使用では硬化、亀裂、圧縮永久ひずみを確認する必要がある。 |
| 耐薬品性 | 鉱物油、潤滑油、脂肪族炭化水素、燃料油に比較的強い。強酸、強アルカリ、酸化剤、芳香族溶剤、ケトン、エステル、塩素系溶剤には注意が必要である。 |
| 加工性 | 混練、カレンダー、押出、圧縮成形、トランスファー成形、射出成形、ラテックス加工が可能である。通常は加硫工程を伴うため、熱可塑性樹脂のような再溶融成形はできない。 |
| 分類上の注意 | NBRはプラスチックではなくゴム材料である。熱可塑性エラストマー、TPU、TPV、軟質PVCとは加工方法と使用温度域が異なる。 |
| 難燃性 | 標準NBRは自己消火性材料ではない。難燃配合は可能であるが、UL94、酸素指数、燃焼ガス、配合剤の規制を個別に確認する必要がある。 |
| 法規制 | RoHS、REACH、食品衛生、FDA、医療用途などは、NBRポリマー単体ではなく配合物、添加剤、抽出物、製造管理を含めて確認する必要がある。 |
| 注意点 | オゾン劣化、熱劣化、圧縮永久ひずみ、可塑剤移行、燃料中のアルコール成分、応力割れ、アウトガス、抽出物に注意する。実使用では温度、濃度、荷重、応力、使用時間を確認する必要がある。 |
構造式
化学式の画像相当表記
代表構造単位:-[CH2-CH=CH-CH2]m-[CH2-CH(CN)]n–
代表的な構造単位
| 構成単位 | 構造 | 役割 |
|---|---|---|
| ブタジエン単位 | -CH2-CH=CH-CH2– | ゴム弾性、低温柔軟性、加工性に寄与する。 |
| アクリロニトリル単位 | -CH2-CH(CN)- | 耐油性、耐燃料性、ガスバリア性、極性に寄与する。 |
| 架橋構造 | 硫黄架橋、過酸化物架橋など | 耐熱性、圧縮永久ひずみ、弾性回復、耐久性に影響する。 |
モノマーまたは構成単位
NBRの主なモノマーは1,3-ブタジエンとアクリロニトリルである。アクリロニトリル含有量は、低ニトリル、中ニトリル、高ニトリルなどに分類され、代表的には18~50質量%程度の範囲で設計される。
共重合体や変性グレード
NBRには標準NBRのほか、水素化ニトリルゴム(HNBR)、カルボキシル化ニトリルゴム(XNBR)、NBR/PVCブレンド、粉末NBR、NBRラテックスなどがある。HNBRは主鎖の二重結合を水素化して耐熱性、耐オゾン性、耐油性を高めた材料であり、標準NBRとは別材料として扱うことが多い。
種類
| 種類の名称 | 主成分または特徴 | 長所 | 短所 | 主な用途 |
|---|---|---|---|---|
| 低ニトリルNBR | アクリロニトリル含有量が比較的低いNBR | 低温柔軟性に優れる。 | 高ニトリル品に比べ耐油性、ガスバリア性は低い。 | 低温用シール、低温ホース、寒冷地部品 |
| 中ニトリルNBR | 耐油性と低温性のバランス型 | 汎用性が高く、シール材として使いやすい。 | 極端な高温、低温、燃料用途では専用グレードが必要である。 | Oリング、オイルシール、ガスケット、パッキン |
| 高ニトリルNBR | アクリロニトリル含有量が比較的高いNBR | 耐油性、耐燃料性、ガスバリア性に優れる。 | 低温柔軟性が低下しやすい。 | 燃料ホース、燃料シール、油圧部品 |
| 耐熱NBR | 耐熱配合、過酸化物加硫などを用いたNBR | 熱老化、圧縮永久ひずみを改善できる。 | HNBRやFKMほどの高温耐久性は期待しにくい。 | エンジン周辺シール、油圧シール、工業用パッキン |
| HNBR | NBRの二重結合を水素化した改質ゴム | 耐熱性、耐オゾン性、耐油性、機械強度に優れる。 | 標準NBRより高価であり、配合と加硫条件の確認が必要である。 | 自動車ベルト、燃料系シール、高温油圧シール |
| XNBR | カルボキシル基を導入したNBR | 耐摩耗性、引裂強さ、接着性を高めやすい。 | 水分、金属イオン、配合条件の影響を受ける場合がある。 | ロール、ライニング、手袋、耐摩耗部品 |
| NBR/PVCブレンド | NBRにPVCをブレンドした材料 | 耐候性、耐オゾン性、難燃性を改善しやすい。 | 低温柔軟性や圧縮永久ひずみは配合に依存する。 | 電線被覆、ホース、シート、工業用カバー |
| NBRラテックス | 水系分散体として供給されるNBR | 薄膜成形、浸漬成形、コーティングに適する。 | 乾燥、凝固、残留成分、抽出物の管理が必要である。 | 手袋、接着剤、コーティング、繊維処理 |
成形加工
| 成形加工法 | 適正 | 内容 |
|---|---|---|
| 射出成形 | ○ | ゴム射出成形によりOリング、パッキン、複雑形状部品を成形できる。加硫時間と金型温度の管理が必要である。 |
| 押出成形 | ◎ | ホース、チューブ、シール材、コード、プロファイル成形に適する。押出後に加硫工程を行う。 |
| ブロー成形 | × | 熱可塑性樹脂のような中空ブロー成形には一般に適さない。 |
| 圧縮成形 | ◎ | パッキン、ガスケット、シート、厚肉部品に広く使用される。少量生産や大型部品に適する。 |
| トランスファー成形 | ○ | 比較的複雑なゴム部品やインサート成形に用いられる。 |
| カレンダー成形 | ◎ | 耐油シート、ゴム引布、薄板、ライニング材に適する。 |
| 真空成形 | × | 熱可塑性シートの真空成形とは異なり、加硫ゴムには一般に適用しにくい。 |
| 切削加工 | △ | 硬質配合、厚板、ロール、試作部品では可能であるが、弾性変形により寸法精度の確保が難しい場合がある。 |
| 浸漬成形 | ◎ | NBRラテックスを用いた手袋、薄膜品、コーティングに適する。 |
代表的な成形条件
| 項目 | 代表条件・目安 | 備考 |
|---|---|---|
| 乾燥温度 | 通常は予備乾燥なし又は40~60℃程度 | 吸湿した配合材、ラテックス、粉末NBRでは水分管理が必要である。 |
| 混練温度 | 40~120℃程度 | ロール、バンバリーミキサーで混練する。スコーチに注意する。 |
| シリンダー温度 | 50~90℃程度 | ゴム射出成形の目安である。熱可塑性樹脂の溶融温度とは異なる。 |
| 金型温度 | 150~190℃程度 | 硫黄加硫、過酸化物加硫、配合により異なる。 |
| 加硫時間 | 数分~数十分程度 | 肉厚、金型温度、加硫系により大きく変化する。 |
| 成形収縮率 | 1.0~3.0%程度 | 配合、硬さ、充填材、成形方向、加硫条件により異なる。 |
| 二次加硫 | 条件により実施 | 過酸化物加硫品や低アウトガス品では、後加硫により揮発成分を低減する場合がある。 |
代表的な物性値又は機械的性質
| 項目 | 単位 | 標準NBR | 高ニトリルNBR | HNBR | 備考 |
|---|---|---|---|---|---|
| 密度 | g/cm3 | 1.00~1.30 | 1.05~1.35 | 1.05~1.35 | 配合、カーボンブラック、充填材により変化する。 |
| 比重 | – | 1.00~1.30 | 1.05~1.35 | 1.05~1.35 | 一般的な加硫ゴム成形品の目安である。 |
| 硬さ | Shore A | 40~90 | 50~90 | 50~95 | シール材では70 Shore A前後が多い。 |
| 引張強さ | MPa | 8~25 | 10~25 | 15~35 | カーボンブラック補強品で高くなる。 |
| 伸び | % | 100~700 | 100~500 | 100~500 | 硬さ、架橋密度、配合により大きく変化する。 |
| 100%モジュラス | MPa | 1~8 | 2~10 | 3~15 | ゴム材料では曲げ弾性率よりモジュラスを用いることが多い。 |
| 曲げ弾性率 | MPa | 該当しにくい | 該当しにくい | 該当しにくい | ゴム材料では一般的な設計指標になりにくい。 |
| アイゾット衝撃強さ | kJ/m2 | 該当しにくい | 該当しにくい | 該当しにくい | ゴム弾性体のため、樹脂のアイゾット値とは比較しにくい。 |
| 引裂強さ | kN/m | 15~60 | 20~70 | 25~80 | XNBRや補強配合では高くなる。 |
| 圧縮永久ひずみ | % | 10~40 | 10~40 | 5~30 | 温度、時間、圧縮率、加硫系により大きく変化する。 |
| 荷重たわみ温度 | ℃ | 該当しにくい | 該当しにくい | 該当しにくい | 熱可塑性樹脂のHDTとは評価方法が異なる。 |
| 融点 | ℃ | 明確な融点なし | 明確な融点なし | 明確な融点なし | 架橋ゴムは溶融しない。 |
| ガラス転移温度 | ℃ | -45~-20 | -25~-10 | -40~-20 | アクリロニトリル含有量が高いほど高くなる傾向がある。 |
| 連続使用温度 | ℃ | -30~100 | -20~110 | -40~150 | 代表値であり、油、空気、圧縮状態、時間により異なる。 |
| 吸水率 | % | 0.5~2.0 | 0.5~2.0 | 0.3~1.5 | PA、PBT、PET、PUほど大きくないが、配合剤や極性により変化する。 |
| 体積抵抗率 | Ω・cm | 109~1013 | 109~1013 | 1010~1014 | カーボンブラック配合では導電性が高くなる場合がある。 |
| 酸素指数 | % | 18~22程度 | 18~22程度 | 18~23程度 | 標準配合は難燃材料ではない。難燃配合では別途確認する。 |
| UL94 | – | 通常は未取得又はHB相当 | 通常は未取得又はHB相当 | グレードによる | UL認証は材料グレード、厚み、色、配合で確認する必要がある。 |
GF強化、CF強化はNBR単体では一般的な分類ではない。NBRでは、カーボンブラック、シリカ、炭酸カルシウム、繊維、樹脂ブレンドなどによる補強や改質が一般的である。
代表グレード
| 代表グレード | 特徴 | 主な用途 |
|---|---|---|
| 汎用NBR | 耐油性、機械強度、加工性のバランスが良い。 | Oリング、パッキン、シール材 |
| 耐熱NBR | 加硫系や配合により熱老化、圧縮永久ひずみを改善したもの。 | 油圧シール、エンジン周辺部品 |
| 難燃NBR | PVCブレンドや難燃配合により燃焼性を改善する。 | 電線被覆、ホース、シート |
| 摺動・耐摩耗NBR | カーボンブラック、樹脂、潤滑材などで摩耗性を調整する。 | ロール、シールリップ、ベルト |
| 食品接触対応NBR | 食品衛生、FDAなどの規格に適合する配合を用いる。 | 食品機械用パッキン、ホース、ガスケット |
| 低アウトガスNBR | 可塑剤、揮発成分、抽出物を低減した配合。 | 精密機器、電子部品、真空周辺部品 |
耐薬品性
| 薬品分類 | 代表薬品 | 評価 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 酸類 | 希塩酸、希硫酸、リン酸 | ○ | 希薄酸では使用できる場合がある。濃酸、酸化性酸、高温酸では劣化しやすい。 |
| 強酸・酸化性酸 | 濃硝酸、発煙硫酸、クロム酸 | × | 酸化劣化、硬化、亀裂が起こりやすい。 |
| アルカリ類 | 水酸化ナトリウム、KOH、アンモニア水 | ○ | 低~中濃度では比較的安定な場合がある。高温高濃度では確認が必要である。 |
| 低級アルコール類 | メタノール、エタノール、IPA | △ | 短時間接触では使用される場合があるが、膨潤、抽出、硬化に注意する。燃料中アルコールにも注意が必要である。 |
| 高級アルコール類 | グリセリン、MMB、プロピレングリコール系溶剤 | ○~△ | 薬品の極性、温度、水分、接触時間により変化する。 |
| 芳香族炭化水素類 | ベンゼン、トルエン、キシレン | × | 膨潤、軟化が起こりやすく、一般に不適である。 |
| 脂肪族炭化水素類 | ヘキサン、ヘプタン、灯油、軽油 | ○ | 耐性は比較的良好である。高温、長時間、低分子炭化水素では膨潤を確認する。 |
| 燃料 | ガソリン、軽油、ジェット燃料 | ○~△ | 高ニトリルNBRが有利である。アルコール混合燃料では膨潤、抽出、低温性を確認する。 |
| ケトン | アセトン、MEK、MIBK | × | 膨潤、軟化、溶解が起こりやすい。 |
| エステル | 酢酸エチル、酢酸ブチル、可塑剤系エステル | ×~△ | 多くのエステルで膨潤しやすい。短時間接触でも確認が必要である。 |
| 塩素系溶剤 | ジクロロメタン、クロロホルム、トリクロロエチレン | × | 膨潤、軟化、抽出が起こりやすく、一般に不適である。 |
| 水・温水 | 水、温水 | ○ | 常温水では比較的安定である。熱水、蒸気ではEPDMやシリコーンゴムが有利な場合が多い。 |
| 油 | 鉱物油、潤滑油、作動油 | ◎ | NBRの代表的な適用領域である。添加剤、温度、圧力、油種により確認が必要である。 |
| 植物油・動物油 | 菜種油、大豆油、グリース | ○ | 一般に比較的良好であるが、酸化劣化した油や高温油では確認が必要である。 |
SP値(溶解度パラメータ)
NBRの代表的なSP値(δ)は、アクリロニトリル含有量により異なるが、低~中ニトリルで約18~20 MPa1/2、高ニトリルで約20~22 MPa1/2が目安である。
SP値は溶解・膨潤の傾向を推定する指標であるが、耐薬品性は架橋密度、結晶性、充填材、可塑剤、温度、濃度、応力、接触時間、薬品混合物により大きく変化する。SP値だけで適否を判断してはならない。
溶解性の目安
| SP値差 | 溶解・膨潤の目安 | 判定 |
|---|---|---|
| 0 ~ 2 | 膨潤・軟化しやすい | × |
| 2 ~ 5 | 条件により膨潤する | △ |
| 5 ~ 8 | 短時間接触では比較的安定 | ○ |
| 8以上 | 溶解・膨潤しにくい | ◎ |
SP値から見た耐溶剤性
| 薬品名 | 代表SP値 MPa1/2 | NBRとの差 | 評価 | 実用上の注意 |
|---|---|---|---|---|
| 水 | 47.8 | 約28 | ◎ | 常温水は比較的良好であるが、熱水・蒸気では配合確認が必要である。 |
| エタノール | 26.0 | 約7 | ○~△ | 抽出や膨潤が起こる場合がある。燃料混合では特に確認する。 |
| IPA | 23.5 | 約4.5 | △ | 短時間接触では使用される場合があるが、長時間接触では確認が必要である。 |
| グリセリン | 36.2 | 約17 | ◎ | SP値上は離れているが、水分、温度、添加剤の影響を確認する。 |
| MMB | 約21~22 | 約2~3 | △ | グリコールエーテル系溶剤では膨潤、抽出に注意する。 |
| トルエン | 18.2 | 約1 | × | SP値が近く、実際にも膨潤しやすい。 |
| キシレン | 18.0 | 約1 | × | 芳香族溶剤のため一般に不適である。 |
| ヘキサン | 14.9 | 約4 | △~○ | 脂肪族炭化水素には比較的強いが、低分子溶剤では膨潤確認が必要である。 |
| ガソリン | 約14~16 | 約3~5 | △~○ | 高ニトリルNBRが有利である。アルコール混合燃料では別途確認する。 |
| 鉱物油 | 約16~17 | 約2~4 | ○ | NBRの代表用途であるが、油添加剤と高温劣化を確認する。 |
| アセトン | 20.0 | 約1 | × | SP値が近く、ケトン類は一般に不適である。 |
| MEK | 19.0 | 約0 | × | 膨潤、軟化、溶解が起こりやすい。 |
| 酢酸エチル | 18.6 | 約0.5 | × | エステル類は一般に不適である。 |
| ジクロロメタン | 20.2 | 約1 | × | 塩素系溶剤は膨潤、抽出を起こしやすい。 |
評価基準:◎非常に良好、○概ね良好、△注意が必要、×不適である。上表は代表的な目安であり、実使用ではグレード、配合、温度、濃度、荷重、応力、接触時間を確認する必要がある。
製法
| 工程 | 内容 |
|---|---|
| 原料 | 1,3-ブタジエン、アクリロニトリル、乳化剤、開始剤、分子量調整剤、水などを用いる。 |
| 重合方法 | 一般に乳化重合で製造される。低温重合品と高温重合品があり、分子量、分岐、加工性、物性に影響する。 |
| 凝固・洗浄 | ラテックスを凝固し、水洗、脱水、乾燥してベール状又はクラム状の原料ゴムにする。 |
| ペレット化やコンパウンド | NBRは熱可塑性樹脂のようなペレットとしてだけでなく、ベール、クラム、粉末、ラテックス、コンパウンドとして供給される。用途に応じて混練済みコンパウンドを用いる場合が多い。 |
| 添加剤・充填材 | カーボンブラック、シリカ、炭酸カルシウム、可塑剤、老化防止剤、加硫剤、加硫促進剤、加工助剤、難燃剤などが使用される。 |
| 強化材 | 繊維、短繊維、布、金属インサートとの複合化が行われる。GFやCF強化というより、ゴム補強配合、繊維補強、布補強として扱われることが多い。 |
| 加硫 | 硫黄加硫、過酸化物加硫、樹脂加硫などにより架橋構造を形成する。加硫条件は硬さ、伸び、圧縮永久ひずみ、耐熱性に影響する。 |
代表的な反応式
m CH2=CH-CH=CH2 + n CH2=CH-CN → -[CH2-CH=CH-CH2]m-[CH2-CH(CN)]n–
上式はNBRの基本的な共重合反応を簡略化した表記である。実際のNBRではブタジエン単位の1,4結合、1,2結合、シス・トランス構造、分子量分布、アクリロニトリル分布が物性に影響する。
詳細な利用用途
| 用途分野 | 代表部品 | 選定理由 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 自動車 | 燃料ホース、オイルホース、Oリング、オイルシール、ガスケット、ベルト | 耐油性、耐燃料性、耐摩耗性、シール性に優れる。 | 高温エンジン周辺、アルコール混合燃料、オゾン環境ではHNBRやFKMも比較する。 |
| 電気・電子 | ケーブル被覆、コネクタシール、防振ゴム、ローラー | 柔軟性、耐油性、機械強度を付与できる。 | 難燃性、アウトガス、可塑剤移行、絶縁性を確認する。 |
| 機械部品 | 油圧シール、パッキン、ガスケット、ロール、ダイヤフラム | 潤滑油、作動油に対する耐性が高い。 | 圧縮永久ひずみ、摩耗、発熱、油添加剤との相性を確認する。 |
| 医療 | ニトリル手袋、チューブ、シール材 | 天然ゴムラテックスに比べ、ラテックスアレルギー対策として用いられる場合がある。 | 生体適合性、抽出物、滅菌条件、医療規格適合を個別に確認する。 |
| 食品機械 | 食品機械用パッキン、ガスケット、ホース | 油脂を含む食品周辺で使用される場合がある。 | 食品衛生法、FDA、EU規制、抽出物、臭気、着色を確認する。 |
| 建築・設備 | 設備用パッキン、耐油シート、配管シール、防振材 | 油を含む設備や機械周辺のシールに適する。 | 屋外、オゾン、紫外線ではEPDMやCRが有利な場合がある。 |
| 化学設備 | ガスケット、ライニング、ポンプ部品 | 特定の油、脂肪族炭化水素、弱酸・弱アルカリに使用される場合がある。 | 芳香族溶剤、ケトン、エステル、塩素系溶剤には注意する。 |
| 用途別選定 | ギア、軸受、チューブ、筐体、フィルム、コネクタ周辺シール | NBRは主にシール、チューブ、ホース、ロール、フィルム状手袋に適する。 | ギア、筐体など剛性部品にはPOM、PA、PBT、PPSなどの樹脂材料を検討する。 |
関連材料との比較
| 比較材料 | 特徴 | 対象材料との違い |
|---|---|---|
| クロロプレンゴム | 耐候性、耐オゾン性、難燃性、接着性のバランスが良い合成ゴムである。 | NBRは耐油性、耐燃料性で有利な場合が多い。CRは屋外性、難燃性、接着性を重視する用途で検討される。 |
| エチレンプロピレンジエンゴム | 耐候性、耐オゾン性、耐水性、耐蒸気性に優れるゴムである。 | NBRは油・燃料に強いが、EPDMは油に弱い。水、温水、屋外用途ではEPDMが有利な場合が多い。 |
| フッ素ゴム | 耐熱性、耐油性、耐燃料性、耐薬品性に優れる高機能ゴムである。 | FKMは高温油、燃料、薬品に強いが高価である。NBRは中温域の油用途でコストと性能のバランスを取りやすい。 |
| シリコーンゴム | 耐熱性、低温柔軟性、耐候性、電気特性に優れるゴムである。 | シリコーンゴムは高温・低温に強いが、耐油性や引裂強さではNBRが有利な場合がある。 |
| ポリウレタン | 耐摩耗性、機械強度、弾性、耐油性に優れる材料である。 | PUは耐摩耗性と機械強度に優れるが、加水分解や高温水に注意が必要である。NBRは油用シール材として実績が多い。 |
| 熱可塑性エラストマー | 熱可塑性樹脂の成形性とゴム弾性を持つ材料群である。 | TPEは射出成形性、リサイクル性に優れる。NBRは加硫ゴムであり、耐油シール性と圧縮永久ひずみを重視する用途に適する。 |
| ポリテトラフルオロエチレン | 耐薬品性、低摩擦性、非粘着性に優れるフッ素樹脂である。 | PTFEはゴム弾性が小さいが、耐薬品性と低摩擦性は非常に高い。NBRは弾性シール性と耐油性を重視する場合に用いる。 |
代表的なメーカー
| メーカー | 代表製品・ブランド | 概要 |
|---|---|---|
| 日本ゼオン | Nipol、Zetpol | NBR、HNBRなどを展開する代表的な合成ゴムメーカーである。ZetpolはHNBRの代表例として知られる。 |
| ARLANXEO | Perbunan、Krynac、Baymod N、Therban | NBR、粉末NBR、HNBRなどを扱う合成ゴムメーカーである。Perbunan、KrynacはNBRの代表例である。 |
| Versalis | Europrene N | 欧州系の合成ゴムメーカーであり、NBRを含むエラストマー製品を展開する。 |
| Kumho Petrochemical | KNB | NBRを含む合成ゴムを供給する韓国の主要メーカーである。 |
| Synthos | KER、NBR系グレード | 合成ゴム、エラストマーを扱うメーカーであり、NBR系材料を展開する。 |
| Nantex Industry | Nancar | NBRラテックス、NBR系材料の供給メーカーとして知られる。 |
代表メーカー、ブランド名は供給地域、事業再編、グレード体系により変化する場合がある。実際の選定では、各メーカーの最新データシート、SDS、規格適合証明、供給可否を確認する必要がある。
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