炭素繊維強化プラスチック

概要

項目 内容
材料名 炭素繊維強化プラスチック
略記号 CFRP。熱可塑性マトリックスを用いる場合はCFRTPと表記されることがある。
IUPAC 単一化学物質ではなく、炭素繊維と高分子マトリックスからなる複合材料であるため、単一のIUPAC名は定義されない。
英語名 Carbon Fiber Reinforced Plastic、Carbon Fiber Reinforced Polymer、Carbon Fiber Composite
日本語名 炭素繊維強化樹脂、カーボン繊維強化プラスチック、カーボンコンポジット
分類 繊維強化プラスチック、複合材料、FRP系材料
プラスチック分類 熱硬化性CFRP又は熱可塑性CFRP。マトリックス樹脂により分類が変わる。
化学式又は代表構造 炭素繊維:主としてC。複合材料全体には単一の化学式がない。代表構造は「炭素繊維+マトリックス樹脂+界面層」である。
CAS No. CFRP全体として単一のCAS No.はない。炭素繊維は一般に7440-44-0が参照される場合があるが、サイジング剤及びマトリックス樹脂は別物質である。
構造・主成分 PAN系又はピッチ系炭素繊維と、エポキシ、ビスマレイミド、シアネートエステル、フェノール、PEEK、PEKK、PPS、PA、PP等のマトリックス樹脂から構成される。
主な用途 航空宇宙、自動車、鉄道、産業機械、ロボット、圧力容器、スポーツ用品、医療機器、ドローン、半導体・液晶製造装置、建築補強材。

炭素繊維強化プラスチック(CFRP)は、高強度・高弾性率を持つ炭素繊維を、熱硬化性又は熱可塑性のマトリックス樹脂で一体化した複合材料である。炭素繊維が主として荷重を負担し、マトリックス樹脂が繊維を所定位置に保持して荷重を伝達し、外部環境から繊維を保護する。

CFRPの特性は、炭素繊維の種類、繊維体積含有率、連続繊維又は短繊維、繊維配向、積層角度、マトリックス樹脂、界面処理、空隙率、硬化又は結晶化条件によって大きく変化する。したがって、CFRPという材料名だけから単一の引張強さ、耐熱温度、耐薬品性又はSP値を割り当てることはできない。

一般に、鋼やアルミニウム合金より低密度で、繊維方向の比強度、比剛性、疲労特性、低熱膨張性に優れる。一方で、異方性、層間剥離、衝撃後圧縮強度、穴あけ部の応力集中、導電性、金属とのガルバニック腐食、修理性及び材料コストが設計上の主要課題となる。

特徴

長所
  • 低密度でありながら、繊維方向の比強度及び比剛性が極めて高い。
  • 繊維配向と積層構成を荷重経路に合わせて設計できる。
  • 疲労特性、低熱膨張性、寸法安定性、耐食性に優れる場合が多い。
  • ピッチ系高弾性率繊維では、高熱伝導性又はほぼゼロの線膨張係数を設計できる。
  • 熱可塑性CFRPでは、短時間成形、再加熱接合、再成形及び材料回収の可能性がある。
短所
  • 繊維方向と直角方向、面内と板厚方向で特性が大きく異なる。
  • 層間剥離、衝撃損傷、孔周辺損傷、圧縮キンクに注意が必要である。
  • 切削工具の摩耗が大きく、導電性粉じんの集じん及び設備保護が必要である。
  • 炭素繊維が導電性を持つため、電気絶縁用途には一般に不向きである。
  • アルミニウム等の金属と接触し電解質が存在すると、金属側のガルバニック腐食を促進する場合がある。
  • 熱硬化性CFRPは再溶融できず、マテリアルリサイクルが難しい。
外観

一般に黒色又は濃灰色である。織物表面では平織又は綾織の模様が見える。塗装、ゲルコート、サーフェシングフィルムを施す場合もある。短繊維射出成形品では繊維浮き、光沢むら、ウェルドラインが現れることがある。

耐熱性

炭素繊維自体は高温に耐えるが、CFRPの実用耐熱性は主としてマトリックス樹脂、界面、酸化雰囲気及び荷重条件で決まる。一般エポキシ系は連続使用80~180℃程度が目安であり、ビスマレイミド、ポリイミド、PEEK、PEKK、PPS等ではより高温域に対応できる場合がある。

耐薬品性

耐薬品性は炭素繊維ではなく、主としてマトリックス樹脂、サイジング剤、接着層、端面及び空隙率に支配される。薬品浸漬で外観変化が小さくても、吸液、Tg低下、層間せん断強度低下又は接着界面劣化が生じる場合がある。

加工性

熱硬化性CFRPはプリプレグ積層、オートクレーブ、RTM、VaRTM、フィラメントワインディング、引抜成形等に適する。熱可塑性CFRPはプレス、スタンピング、射出成形、テープ積層及び溶着に対応する。加工法ごとに繊維配向、含浸、空隙、残留応力及び結晶化を管理する必要がある。

分類上の注意

CFRPは単一の樹脂ではなく材料群である。連続繊維積層材、織物積層材、短繊維コンパウンド、長繊維熱可塑性材料を同一の代表物性で比較してはならない。材料比較機能では、マトリックス樹脂、繊維形態、繊維含有率、配向、積層構成及び材料状態を必須属性として扱う必要がある。

構造式

CFRP全体には単一の化学構造式がない。以下は、炭素繊維、界面層及びマトリックス樹脂からなる代表的な多相構造の模式図である。

CFRPの代表構造模式図 炭素繊維、界面処理層、マトリックス樹脂、荷重伝達の関係を示す模式図 炭素繊維強化プラスチックの多相構造 マトリックス樹脂 黒色円:炭素繊維断面 外周:サイジング・界面層 荷重 界面を介した荷重伝達 繊維周囲で荷重を受け渡す 代表構成:炭素繊維 C + 界面処理層 + 熱硬化性又は熱可塑性マトリックス
代表的な構造単位

炭素繊維は黒鉛状炭素層が繊維軸方向に配向した構造を持つが、完全な単結晶黒鉛ではない。マトリックスは、エポキシ架橋構造、PPSの芳香族スルフィド構造、PEEKの芳香族エーテル・ケトン構造等、採用樹脂に固有の構造を持つ。

モノマー又は構成単位

CFRPは重合体名称ではないため単一モノマーは存在しない。エポキシ系ではエポキシ主剤と硬化剤、PPS系ではp-ジクロロベンゼンと硫化ナトリウム、PEEK系では芳香族ジハライドとビスフェノラート等が代表原料となる。

共重合体・変性グレード

マトリックス樹脂には、靭性改良、耐熱、難燃、低誘電、耐衝撃、導電調整、低粘度含浸、速硬化等の変性が行われる。炭素繊維表面には酸化処理及びサイジング処理が施され、マトリックスとの濡れ及び界面接着を調整する。

種類

種類 主成分又は特徴 長所 短所 主な用途
PAN系炭素繊維CFRP PAN系炭素繊維を使用。高強度型及び中弾性率型が中心。 強度、疲労特性、品質安定性に優れる。 ピッチ系高弾性率品ほどの極低熱膨張は得にくい。 航空機、自動車、圧力容器、スポーツ用品
ピッチ系炭素繊維CFRP 等方性又はメソフェーズピッチ系繊維を使用。 高弾性率、高熱伝導、低熱膨張を設計しやすい。 高弾性率品は脆く、価格が高い場合がある。 宇宙構造、精密機器、放熱部材、ロール
エポキシCFRP 熱硬化性エポキシをマトリックスとする代表的CFRP。 接着性、含浸性、機械特性、実績のバランスが良い。 硬化時間、低温衝撃、リサイクル性、吸湿に注意。 航空宇宙、スポーツ、産業部品
耐熱熱硬化性CFRP ビスマレイミド、シアネートエステル、ポリイミド等。 高温強度、耐熱性、低誘電又は低吸湿を設計可能。 高価で成形温度が高く、硬化管理が難しい。 航空エンジン周辺、宇宙、電子
PEEK・PEKK系CFRTP PAEK系熱可塑性樹脂をマトリックスとする。 耐熱、耐薬品、靭性、再加熱接合、再成形性に優れる。 材料費、成形温度、含浸難度が高い。 航空宇宙、医療、油空圧、半導体
PPS系CFRTP PPSをマトリックスとする。 耐薬品、難燃、寸法安定、量産性に優れる。 靭性及び高温長期特性はPAEK系より低い場合がある。 航空内装、自動車、電装
PA・PP系短繊維CF強化材 短繊維又は長繊維炭素繊維をコンパウンド。 射出成形性、量産性、導電性、寸法安定性に優れる。 連続繊維積層材より強度が低く、異方性と繊維浮きがある。 筐体、治具、機械部品、自動車部品
UD積層材 一方向プリプレグ又はUDテープを積層。 繊維方向の比強度、比剛性を最大化できる。 横方向、層間、衝撃、穴周辺が弱点となる。 主翼、梁、シャフト、補強板
織物積層材 平織、綾織、朱子織等を積層。 取扱性、外観、面内バランスが良い。 繊維うねりによりUD材より軸方向性能が低下する。 外板、カバー、スポーツ、意匠部品

成形加工

加工方法 適性 理由 主な注意点
射出成形 短繊維又は長繊維CFコンパウンドで量産可能である。 繊維折損、配向、ウェルド強度、摩耗、反りを管理する。
押出成形 CF強化熱可塑性樹脂の板、棒、異形材に適用できる。 ダイ摩耗、繊維配向、表面粗さ、圧力上昇に注意する。
ブロー成形 短繊維熱可塑性系の一部で可能である。 パリソン伸長、繊維配向、肉厚均一性が制約となる。
インフレーション成形 × 連続繊維CFRPには一般に不適である。 短繊維入りフィルムでも外観と延伸性が低下しやすい。
Tダイフィルム成形 導電性シート等の短繊維系で可能である。 繊維分散、表面粗さ、ダイ摩耗に注意する。
圧縮成形 SMC、プリプレグ、スタンパブルシート、LFTに適する。 チャージ配置、樹脂流動、繊維うねり、ボイドを管理する。
オートクレーブ成形 航空宇宙用高品質積層材の代表的工法である。 設備費、成形時間、真空バッグ品質、硬化履歴を管理する。
RTM・VaRTM 複雑形状及び大型品の閉鎖成形に適する。 含浸性、ドライスポット、樹脂粘度、注入口配置が重要である。
フィラメントワインディング 圧力容器、パイプ、シャフトに適する。 巻角、張力、含浸、端部応力を管理する。
引抜成形 一定断面の長尺材を連続生産できる。 繊維配向が長手中心となり、横方向補強が必要な場合がある。
真空成形 熱可塑性CFRTPシートの二次成形で可能である。 加熱均一性、層間滑り、スプリングバックに注意する。
3Dプリント 短繊維CFフィラメント及び連続繊維積層方式がある。 層間強度、空隙、ノズル摩耗、配向依存性を評価する。
切削加工 成形後の穴あけ、トリミング、仕上げが可能である。 工具摩耗、層間剥離、粉じん、導電性粉末の集じんが必要である。
溶着 熱可塑性CFRTPでは抵抗、誘導、超音波、レーザー等を適用できる。 熱硬化性CFRPは溶融溶着できない。導電性と繊維配向を考慮する。
接着 熱硬化性・熱可塑性とも構造接着が有力である。 離型剤除去、表面処理、吸湿、接着層厚、電食を管理する。
塗装・印刷 外観、UV保護、絶縁付与に適用できる。 繊維浮き、ピンホール、表面エネルギー、導電性に注意する。
めっき・蒸着 表面処理を介して機能付与できる。 密着性、熱膨張差、電気的連続性、前処理が重要である。
代表的な成形条件
項目 単位 一般的な目安 対象系 注意点
予備乾燥 熱硬化性プリプレグ:通常は低温保管管理、熱可塑性ペレット・テープ:樹脂別に乾燥 全般 吸湿、結露、保管期限を管理する。
乾燥温度 PA系80~100、PPS系120~150、PEEK系140~160 熱可塑性CFRP メーカー推奨値を優先し、酸化及び凝集を避ける。
乾燥時間 h 3~6 熱可塑性CFRP 材料厚さ、乾燥機、初期含水率で調整する。
樹脂温度 PPS系300~330、PEEK系370~400 熱可塑性CFRP 繊維及び装置摩耗、滞留、熱劣化に注意する。
金型温度 PPS系130~160、PEEK系160~200 熱可塑性CFRP 結晶化度、表面、反り、離型性を左右する。
硬化温度 120~180 エポキシプリプレグ 樹脂系により異なる。硬化度及びTgを確認する。
硬化時間 h 1~3 エポキシプリプレグ 昇温速度、部品厚さ、発熱、後硬化条件を管理する。
オートクレーブ圧力 MPa 0.3~0.7 航空用プリプレグ 真空度、バッグ漏れ、揮発分、ブリード量を管理する。
成形収縮率・繊維方向 % 0.0~0.2 連続繊維積層材 繊維配向により極めて小さい。
成形収縮率・繊維直角方向 % 0.2~1.0 連続繊維積層材 マトリックス硬化収縮及び結晶化収縮の影響を受ける。
推奨肉厚 mm 設計依存 全般 層数、最小曲げ半径、ドレープ性、衝撃許容性から決定する。
アニール・後硬化 必要に応じ実施 全般 Tg、結晶化度、残留応力、寸法安定性の改善を目的とする。

代表的な物性値又は機械的性質

以下は主として連続炭素繊維・エポキシ積層材の一般的な代表値又は代表範囲である。特定メーカーの特定グレード値ではない。比較時は、繊維方向、積層構成、繊維体積含有率、空隙率、試験規格、温度、湿度及び材料状態を揃える必要がある。

項目 単位 代表値 代表範囲 グレード区分 試験条件・規格 備考 信頼度
密度 g/cm³ 1.55 1.45~1.65 連続繊維・炭素/エポキシ積層材 23℃、代表値 繊維体積含有率約55~65%を想定。マトリックス及び空隙率で変動する。 B
比重 無次元 1.55 1.45~1.65 連続繊維・炭素/エポキシ積層材 23℃、代表値 密度と同等の数値で扱う。 B
引張強さ・繊維方向 MPa 1500 600~2500 UD炭素/エポキシ 23℃、乾燥、代表範囲 繊維品種、Vf、タブ、試験規格で大きく変動する。 B
引張強さ・積層板面内 MPa 700 400~1200 疑似等方又は織物積層 23℃、乾燥、代表範囲 積層構成依存である。 C
引張弾性率・繊維方向 GPa 130 70~200 UD炭素/エポキシ 23℃、乾燥 高弾性率繊維では200 GPa超となる場合がある。 B
引張破断伸び・繊維方向 % 1.2 0.5~2.0 UD炭素/エポキシ 23℃、乾燥 一般に明確な塑性降伏を示さず、脆性的に破断する。 B
圧縮強さ・繊維方向 MPa 900 500~1500 UD炭素/エポキシ 23℃、乾燥 繊維ミスアライメント、キンク、空隙に敏感である。 B
曲げ強さ MPa 900 500~1600 炭素/エポキシ積層材 23℃、代表値 支点間距離、積層、表面層で変動する。 C
曲げ弾性率 GPa 90 50~150 炭素/エポキシ積層材 23℃、代表値 引張弾性率と同一値として扱わない。 C
層間せん断強さ MPa 70 40~100 炭素/エポキシ積層材 短梁法、代表範囲 主としてマトリックス、界面、空隙率に依存する。 B
ポアソン比 無次元 0.30 0.25~0.35 UD材・繊維方向基準 23℃、代表値 方向定義により異なる。 C
吸水率・24時間 % 0.20 0.05~0.50 炭素/エポキシ積層材 23℃水中、代表範囲 樹脂、硬化度、端面、空隙率に依存する。 C
線膨張係数・繊維方向 10⁻⁵/K 0.1 -0.1~0.5 UD炭素/エポキシ 室温域、代表範囲 負値又はほぼゼロとなる場合がある。 B
線膨張係数・繊維直角方向 10⁻⁵/K 3.0 2.0~6.0 UD炭素/エポキシ 室温域、代表範囲 マトリックス支配であり大きい。 C
ガラス転移温度 140 80~220 エポキシCFRP DMA又はDSC、代表範囲 樹脂系、硬化条件、吸湿に依存する。 C
融点 該当なし 該当なし 熱硬化性エポキシCFRP 熱硬化性マトリックスは明確な融点を持たない。 A
連続使用温度 120 80~180 エポキシCFRP 一般的目安 Tgより十分低い温度で荷重、湿度、寿命を含め評価する。 C
熱伝導率・繊維方向 W/(m・K) 8 3~50 PAN系炭素繊維CFRP 室温、代表範囲 高熱伝導ピッチ系では大幅に高くなる。 C
体積抵抗率・繊維方向 Ω・cm 0.01 0.001~1 連続繊維CFRP 室温、代表範囲 導電性であり、絶縁材料として扱わない。接触抵抗に注意する。 C
UL 94燃焼性 等級 グレード依存 HB~V-0等 各種 厚さ及び認証グレード依存 CFRP全体の一律等級ではない。難燃マトリックスと認証確認が必要である。 C
代表的な強化材・マトリックス別比較
材料系 密度 g/cm³ 引張強さ MPa 引張弾性率 GPa 連続使用温度 ℃ 特徴・注意
炭素/エポキシ連続繊維積層材 1.45~1.65 600~2500 70~200 80~180 高比強度・高比剛性。異方性、層間破壊、吸湿、熱硬化性リサイクルに注意。
炭素/PEEK連続繊維積層材 1.50~1.65 800~2200 80~150 200~260 高耐熱、耐薬品、靭性、溶着性に優れるが高価で高温成形が必要。
炭素/PPS連続繊維積層材 1.50~1.65 600~1800 60~130 180~220 耐薬品、難燃、量産性に優れる。結晶化及び含浸を管理する。
短繊維CF30%・PA系 1.20~1.40 150~300 15~35 100~180 射出成形可能。吸湿、繊維配向、ウェルド、ノッチ感受性に注意。
短繊維CF30%・PEEK系 1.35~1.50 180~300 20~35 240~260 高耐熱・耐薬品・摺動性。連続繊維材ほどの強度はない。
GFRP連続繊維積層材 1.8~2.0 300~1000 20~50 樹脂依存 CFRPより安価で絶縁性があるが、密度が高く剛性が低い。
アルミニウム合金 2.7~2.9 200~600 約70 合金依存 等方性、接合、補修、リサイクル性に優れるが比剛性ではCFRPが有利。
疲労・長期耐久性

CFRPは繊維方向の疲労特性に優れる場合が多いが、マトリックスクラック、層間剥離、界面損傷及び孔周辺損傷が累積する。S-N特性は積層構成、応力比、周波数、温湿度及び損傷許容設計に依存する。短時間引張強さを長期設計許容応力として使用してはならない。

耐摩耗・摺動特性

短繊維CF強化熱可塑性樹脂は、剛性、熱伝導、寸法安定性を改善できるが、相手材を摩耗させる場合がある。摩擦係数及び比摩耗量は、マトリックス、繊維露出、相手材、表面粗さ、荷重、速度、温度及び潤滑条件に強く依存するため、用途条件で試験する必要がある。

燃焼性・難燃性

炭素繊維は燃焼を促進しにくいが、CFRPの燃焼性はマトリックス樹脂と積層構成に依存する。UL 94、LOI、発煙性、毒性及び航空・鉄道燃焼規格への適合はグレードごとに確認する。炭素繊維含有だけを理由にV-0又は不燃と断定してはならない。

電気的性質

CFRPは繊維方向に導電性を持つ。面内と板厚方向で導電率が異なり、接触抵抗、繊維連続性、積層角度、樹脂リッチ層で変化する。絶縁破壊強さや誘電率を一般の絶縁樹脂と同様に扱うことは適切でない。雷撃対策、電磁シールド、接地、迷走電流及び金属接触部の電食を設計に含める。

耐薬品性

以下は主として十分に硬化した炭素繊維・エポキシ積層材の一般的な目安である。熱可塑性CFRPではマトリックス樹脂の耐薬品性を基準とする。評価は外観だけでなく、質量変化、厚さ変化、Tg、曲げ強さ、層間せん断強さ及び接着強度の保持率で確認する。

薬品・環境 濃度 温度 接触条件 評価 主な劣化形態 備考
23℃ 長期浸漬 吸水、界面劣化、Tg低下 エポキシ系代表。端面及び空隙から吸水しやすい。
温水・熱水 60~100℃ 長期浸漬 吸湿、加水分解、界面強度低下 マトリックス樹脂に依存する。PEEK、PPS系は比較的良好。
水蒸気 飽和 100℃以上 繰返し 吸湿、マイクロクラック、界面劣化 オートクレーブ用途は専用樹脂系で確認する。
塩酸 10% 23℃ 168 h浸漬 樹脂劣化、界面影響 一般エポキシ系の目安。濃酸、高温、応力下では要試験。
硫酸 10% 23℃ 168 h浸漬 酸化、樹脂劣化 濃硫酸及び高温では△~×となり得る。
硝酸 10% 23℃ 168 h浸漬 酸化、樹脂分解、強度低下 酸化性酸であり、SP値では評価できない。
酢酸 10% 23℃ 168 h浸漬 吸収、樹脂軟化 濃度及び温度上昇で悪化し得る。
水酸化ナトリウム 10% 23℃ 168 h浸漬 樹脂又は界面の加水分解 エステル系マトリックスは特に注意する。
水酸化ナトリウム 30% 60℃ 長期 加水分解、強度低下 高温強アルカリは実液試験が必要である。
エタノール 99% 23℃ 168 h浸漬 吸収、軽微な膨潤 エポキシ系代表。硬化度に依存する。
IPA 99% 23℃ 168 h浸漬 吸収、軽微な膨潤 応力下及び高温では確認が必要である。
グリセリン 99% 23℃ 168 h浸漬 一般に影響小 吸湿を伴う場合は重量変化を確認する。
MMB 99% 23℃ 168 h浸漬 膨潤、軟化 マトリックス樹脂との相溶性が高い場合がある。
トルエン 99% 23℃ 168 h浸漬 膨潤、樹脂軟化 エポキシの架橋密度及び硬化剤に依存する。
ヘキサン 99% 23℃ 168 h浸漬 一般に影響小~軽微な膨潤 低極性樹脂系では評価が変わる。
アセトン 99% 23℃ 短時間~168 h 膨潤、軟化、接着界面低下 未硬化又は低架橋エポキシでは×となり得る。
MEK 99% 23℃ 短時間~168 h 膨潤、軟化 塗膜、接着剤、サイジング剤にも影響する。
酢酸エチル 99% 23℃ 168 h浸漬 膨潤、軟化 熱可塑性マトリックスでは樹脂種により大きく異なる。
ジクロロメタン 99% 23℃ 短時間 × 強い膨潤、樹脂劣化 多くの有機マトリックスで高リスクである。
潤滑油 23~100℃ 長期接触 吸収、樹脂又は接着層への影響 添加剤、温度、油種を含め確認する。
ガソリン・燃料 23~80℃ 長期接触 膨潤、抽出、界面低下 燃料組成、アルコール混合、温度に依存する。
塩水・海水 3.5%相当 23~60℃ 長期浸漬 吸湿、界面劣化、金属接合部の電食 CFRP自身より金属とのガルバニック腐食が重要である。
次亜塩素酸ナトリウム 1000 ppm 23℃ 反復接触 酸化、変色、樹脂劣化 濃度、pH、温度、時間に依存する。
過酸化水素 3% 23℃ 短時間~反復 酸化劣化 高濃度又は高温では不適となり得る。
SP値(溶解度パラメータ)

CFRP全体に固有の単一SP値は定義できない。炭素繊維は溶媒に溶解する通常の高分子ではなく、溶解・膨潤評価にはマトリックス樹脂のSP値を用いる。代表例として、硬化エポキシ樹脂の見掛けのSP値は一般に約18~23 MPa1/2程度の範囲で扱われることがある。本ページの計算例では20.4 MPa1/2を便宜的基準値とするが、架橋密度、硬化剤、吸湿及び温度により変動する参考値である。

SP値差が大きくても、水による吸湿、酸・アルカリによる加水分解、酸化剤による分解、界面劣化、応力下のクラック又は添加剤抽出が起こり得る。したがってSP値だけで耐薬品性を判断してはならない。

溶解性の目安
SP値差 Δδ 溶解・膨潤の目安 判定
0~2 マトリックス樹脂が膨潤・軟化しやすい。架橋樹脂は溶解せず膨潤する場合がある。 ×
2~5 条件により膨潤、可塑化、界面強度低下が生じる。
5~8 短時間接触では比較的安定な場合がある。
8以上 溶解・膨潤しにくい傾向がある。
SP値から見た耐溶剤性

以下は硬化エポキシマトリックスの便宜的SP値20.4 MPa1/2を用いた形式的比較である。架橋樹脂は完全溶解せず、膨潤、可塑化、Tg低下又は界面強度低下として現れる場合が多い。

溶剤 SP値 MPa1/2 基準マトリックスとの差 評価 注意点
47.9 約27.5 SP差は大きいが、吸水、加水分解、界面劣化は別途生じ得る。
メタノール 29.7 約9.3 小分子で拡散しやすく、実際の吸収はSP差だけで決まらない。
エタノール 26.0 約5.6 硬化度、温度、応力により膨潤する場合がある。
IPA 23.5 約3.1 エポキシ系代表SP値20.4との差による形式評価。
アセトン 20.0 約0.4 × 膨潤・軟化リスクが高い。
MEK 19.0 約1.4 × 短時間でも表面、接着層、サイジングに影響し得る。
酢酸エチル 18.6 約1.8 × 樹脂系により膨潤する。
トルエン 18.2 約2.2 架橋エポキシの種類により評価が変わる。
n-ヘキサン 14.9 約5.5 低極性マトリックスでは差が小さくなる。
ジクロロメタン 20.2 約0.2 × 強い膨潤又は樹脂劣化の可能性がある。

環境応力割れ・ESC

連続繊維CFRPでは、一般熱可塑性樹脂の典型的ESCとは異なり、薬品吸収と残留応力が重なることでマトリックスクラック、層間剥離又は接着界面剥離が進行する。短繊維CF強化PC、ABS、PA、PPS、PEEK等ではマトリックス固有のESC又は薬品クラックを考慮する。

  • 問題となりやすい因子:ケトン、ハロゲン化溶剤、燃料、洗浄剤、酸化剤、高温水、残留応力、孔及び切欠き。
  • 成形条件:空隙、樹脂不足、過度な硬化収縮、結晶化不均一及び繊維配向急変が損傷起点となる。
  • 推奨確認:実部品又は代表積層板に設計応力を付与し、薬品浸漬後の外観、超音波探傷、重量、Tg及び強度保持率を測定する。

接合・表面処理適性

方法 適性 主な条件・注意点
接着剤接合 エポキシ、アクリル、ウレタン等。離型剤除去、研磨、プラズマ処理、プライマー、接着層厚管理が重要である。
機械締結 座面圧壊、孔周辺割れ、層間剥離を防ぐため、座金、ブッシュ、金属インサート、適正締付けを用いる。
超音波溶着 熱可塑性CFRPで適用可能。繊維配向、エネルギーダイレクタ、界面温度を管理する。
誘導・抵抗溶着 熱可塑性CFRPで有力。炭素繊維の導電性を利用できるが、局所過熱を防ぐ。
レーザー溶着 透過・吸収条件の設計が必要である。黒色CFRPは通常の透過レーザー溶着に制約がある。
塗装 表面研磨、脱脂、プライマー、ピンホール封止、UV保護を行う。
めっき 導電性を利用できる場合があるが、密着性と電食を評価する。
金属との接合 異種材熱膨張差、ガルバニック腐食、接着界面、絶縁層及びシールを設計する。

寸法精度・設計特性

  • 繊維方向の成形収縮及び線膨張は小さいが、板厚方向及び繊維直角方向はマトリックス支配である。
  • 非対称積層、繊維角度ずれ、樹脂偏り、硬化温度差で反り及びねじれが生じる。
  • 孔、切欠き、自由端及び積層打切り部では応力集中と層間応力を考慮する。
  • ウェルド、継手、インサート及び圧入部は、母材の繊維方向引張強さより大幅に低い許容値で設計する場合がある。
  • 設計許容応力は、統計的ばらつき、温湿度、衝撃損傷、疲労、クリープ、製造欠陥及び検査能力を含めて設定する。

品質・成形不良

不良 材料側要因 成形条件側要因 主な対策
ボイド 樹脂粘度、揮発分、吸湿 真空不足、加圧不足、昇温過速 材料保管、脱気、真空漏れ確認、硬化サイクル最適化
ドライスポット 濡れ性不足、繊維束密集 樹脂流路不良、注入圧不足 透過率評価、注入口・ベント配置、低粘度化
層間剥離 界面弱さ、異物、含浸不足 急冷、切削損傷、衝撃 表面清浄化、積層・硬化管理、適切な工具と支持
繊維うねり プリフォーム不安定 圧縮流動、過大なドレープ チャージ配置、保持、成形圧力及び曲率最適化
繊維浮き 短繊維、樹脂不足 高せん断、金型温度不適 流動設計、表面樹脂層、条件最適化
反り 異方性、非対称積層 温度差、結晶化差、離型時期 対称積層、均一加熱冷却、治具後硬化
ウェルド低強度 繊維配向、樹脂温度低下 流動合流、圧力不足 ゲート配置、温度・速度・保圧最適化
樹脂リッチ・樹脂不足 繊維目付ばらつき 過剰ブリード又は圧密不足 材料秤量、ブリーダー設計、圧力管理
表面ピンホール 空気、揮発分、繊維露出 脱気不足、ゲル化過速 表面フィルム、脱気、含浸・硬化条件最適化

注意点・劣化・故障モード

劣化現象 主な原因 発生しやすい条件 影響 予防策 推奨確認試験
層間剥離 衝撃、面外荷重、孔加工、界面弱化 落錘衝撃、自由端、厚肉積層 剛性低下、圧縮強度低下 靭性樹脂、層間補強、形状緩和 落錘衝撃、CAI、超音波探傷
吸湿・熱湿劣化 樹脂吸水、界面への水分拡散 高温高湿、端面露出 Tg低下、膨潤、層間強度低下 端面封止、耐湿樹脂、保護塗装 吸水、高温高湿、熱水試験
熱酸化劣化 マトリックス酸化 高温空気中長期 脆化、質量減少、クラック 耐熱樹脂、酸化防止、温度低減 熱老化、TGA、強度保持率
疲労破壊 マトリックスクラック、界面損傷 繰返し荷重、応力集中 剛性低下、最終破断 荷重経路最適化、損傷許容設計 S-N試験、剛性監視、NDT
クリープ・応力緩和 マトリックス粘弾性 高温、長時間荷重 変形、締結力低下 Tg余裕、荷重低減、金属インサート 長時間クリープ試験
ガルバニック腐食 炭素繊維と金属の電位差 湿潤、塩水、アルミ接触 金属側腐食、接合部劣化 絶縁層、シール、適切な金属選定 塩水噴霧、電食試験
薬品膨潤 溶剤吸収、樹脂相互作用 SP近接溶剤、高温、応力 軟化、Tg低下、界面剥離 耐薬品樹脂、バリア、接触回避 実薬品浸漬、応力負荷試験
アウトガス 未反応物、吸着水、低分子 真空、高温 汚染、質量減少 低アウトガス樹脂、後硬化、ベーク TML、CVCM、GC-MS
摩耗粉発生 繊維露出、相手材摩耗 摺動、切削、振動 異物、導電性粉じん 表面コート、潤滑、集じん 摩耗試験、粒子測定
推奨確認試験
  • 実薬品浸漬試験:実濃度、実温度、予定接触時間で、質量、寸法、Tg、層間せん断強さ及び外観を確認する。
  • 高温高湿試験:例として85℃・85%RHで500~2000 hを設定し、強度及び接着保持率を確認する。
  • 落錘衝撃及び衝撃後圧縮試験:実部品の想定衝撃エネルギーを基準とする。
  • 疲労試験:応力比、周波数、温湿度及び目標繰返し回数を実使用に合わせる。
  • ヒートサイクル試験:接合金属との熱膨張差を含め、最低・最高温度及び保持時間を設定する。
  • 非破壊検査:超音波、X線CT、サーモグラフィ等でボイド、剥離及び衝撃損傷を確認する。
  • 実成形試験及び実部品耐久試験:積層、孔加工、締結、接着、塗装及び補修工程を含めて評価する。

製法

CFRPの製造は、炭素繊維製造、表面処理・サイジング、樹脂含浸又はコンパウンド、賦形、硬化又は冷却固化、仕上げ加工及び検査からなる。炭素繊維の代表的製法として、PAN前駆体を耐炎化、炭素化し、必要に応じて黒鉛化する経路がある。

CFRPの代表的製造工程 PAN前駆体から炭素繊維を製造し、表面処理、樹脂含浸、積層、硬化又は溶融成形を経てCFRP部材とする工程 炭素繊維及びCFRPの代表的製造工程 PAN前駆体繊維又はピッチ 耐炎化約200~300℃酸化雰囲気 炭素化約1000~1500℃不活性雰囲気 黒鉛化必要に応じ2000℃以上 表面酸化処理・サイジング界面接着及び取扱性を調整 樹脂含浸・プリプレグ化又は熱可塑性テープ化 積層・賦形配向・積層角を設定 硬化又は溶融圧密温度・圧力・真空結晶化を管理 仕上げ・検査切削・接合・NDT 代表反応概念:PAN前駆体 → 耐炎化環状構造 → 脱水素・脱窒素を伴う炭素化 → 炭素質繊維
原料

補強材にはPAN系又はピッチ系炭素繊維を用いる。マトリックスにはエポキシ、フェノール、ビスマレイミド、シアネートエステル、ポリイミド、PPS、PEEK、PEKK、PA、PP等を用いる。必要に応じ、靭性改良剤、難燃剤、離型剤、導電又は絶縁調整材、顔料及びナノフィラーを配合する。

重合方法

CFRP自体を一段で重合するのではない。熱硬化性系では、炭素繊維へ未硬化樹脂を含浸した後、加熱により架橋硬化する。熱可塑性系では、あらかじめ重合された樹脂を溶融又は溶液・粉末法で繊維へ含浸し、加熱圧密後に冷却固化する。

ペレット化・コンパウンド

短繊維CF強化熱可塑性樹脂では、二軸押出機等で樹脂と炭素繊維を混練し、ペレット化する。繊維投入位置、スクリュー構成、せん断、滞留時間及び押出温度により残存繊維長と分散が変化する。長繊維ペレットでは、含浸ダイを通して連続繊維束へ樹脂を含浸し、一定長さに切断する。

代表的な反応・工程

PAN系炭素繊維では、PAN前駆体を酸化雰囲気で耐炎化し、環状構造を形成した後、不活性雰囲気中で炭素化する。厳密な反応は複雑で単一反応式に限定できないため、「PAN前駆体 → 酸化環化構造 → 脱水素・脱窒素を伴う炭素質構造」と表すのが妥当である。

詳細な利用用途

用途分野 代表用途 選定理由 主な注意点
航空宇宙 主翼、胴体、尾翼、内装、衛星構体 軽量、高比剛性、疲労、低熱膨張 衝撃損傷、雷撃、難燃、品質保証、修理
自動車 モノコック、ルーフ、プロペラシャフト、圧力容器 軽量化、剛性、部品統合 コスト、量産サイクル、接合、リサイクル
鉄道 車体、台車周辺、内装、補強材 軽量、耐食、振動特性 火災安全、衝撃、補修
産業機械 ロボットアーム、搬送梁、ロール、治具 低慣性、高剛性、寸法安定 局部荷重、締結、摩耗、静電気
圧力容器 水素タンク、CNGタンク、呼吸器ボンベ 周方向強度、軽量 ライナー適合、疲労、衝撃、透過、安全規格
スポーツ 自転車、ゴルフシャフト、ラケット、釣竿 軽量、剛性設計、振動調整 衝撃、局所圧壊、品質ばらつき
医療 X線天板、義肢、手術器具、画像装置部材 X線透過、軽量、剛性 生体適合、清浄性、滅菌、表面封止
半導体・精密 ステージ、搬送アーム、検査治具 低熱膨張、低慣性、振動減衰 発塵、アウトガス、導電性、清浄度
建築・土木 補強板、ロッド、ケーブル、耐震補強 軽量、耐食、施工性 接着耐久、火災、紫外線、長期荷重

用途別選定

用途 適性 理由 注意点
ギア 短繊維CF強化熱可塑性で高剛性化できる。 相手材摩耗、騒音、歯元疲労、繊維配向を確認する。
軸受・ブッシュ CF/PTFE等を含む摺動グレードで適用できる。 摩耗粉、相手材、PV、温度、潤滑を評価する。
ローラー 軽量、高剛性、低慣性、低たわみを活かせる。 表面コート、軸端接合、バランスを管理する。
ねじ・ボルト・ナット 軽量・非腐食用途で特殊設計可能である。 ねじ山せん断、座面圧壊、トルク管理が必要である。
ポンプ・バルブ部品 耐薬品性マトリックスを選べば軽量化できる。 薬液、圧力、摩耗、導電性、シール面を確認する。
シール・Oリング × 一般CFRPは弾性シール材ではない。 バックアップリング等の剛性部材用途は可能である。
チューブ・配管・タンク フィラメントワインディングで高い周方向強度を得られる。 ライナー、継手、透過、衝撃、検査を設計する。
フィルム × 一般CFRPは薄膜包装用途に不向きである。 導電性薄シート等は別材料区分である。
電気コネクタ・絶縁部品 高剛性・寸法安定性は有利である。 導電性があるため絶縁距離及び露出繊維に注意する。
電子部品筐体 軽量、剛性、EMIシールド性を活かせる。 接地、電食、アンテナ性能、表面絶縁を確認する。
透明カバー・レンズ × 炭素繊維により不透明である。 光学透明用途には適さない。
自動車内外装 軽量化、意匠性、高剛性が得られる。 衝撃、塗装、UV、修理、コストを評価する。
エンジンルーム部品 耐熱CFRTP又は耐熱熱硬化性CFRPで適用可能である。 熱老化、油、燃料、冷却液、振動を確認する。
食品機械部品 軽量・耐食部材として可能性がある。 食品接触適合、繊維露出、洗浄剤、摩耗粉を確認する。
医療機器部品 X線透過、軽量、高剛性を活かせる。 医療グレード、溶出、滅菌、粒子脱落を確認する。
半導体・真空装置 低熱膨張、軽量、振動特性を活かせる。 アウトガス、発塵、導電性、真空ベークを確認する。
建築・屋外部品 耐食、軽量、補強性能に優れる。 UV、火災、接着耐久、長期クリープを評価する。
接着剤・塗料・コーティング CFRP自体は基材又は被着体として扱う。 表面処理、離型剤、導電性、ピンホールを管理する。
複合材料マトリックス × CFRPは既に複合材料であり、通常マトリックス単体ではない。 再複合化する場合は階層複合材料として別途設計する。

関連材料との比較

比較材料 特徴 CFRPとの違い
ガラス繊維強化プラスチック(GFRP) 低コスト、電気絶縁性、耐食性に優れる。 CFRPより密度が高く剛性が低いが、価格、絶縁性、衝撃許容性で有利な場合がある。
アラミド繊維強化プラスチック(AFRP) 軽量、耐衝撃、振動減衰、電気絶縁性に優れる。 CFRPより圧縮剛性と切削性が低いが、衝撃吸収と非導電性で有利である。
エポキシ樹脂 代表的な熱硬化性マトリックスである。 樹脂単体よりCFRPは強度と剛性が大幅に高いが、異方性と加工コストが増す。
ポリエーテルエーテルケトン(PEEK) 高耐熱、高耐薬品、高靭性のスーパーエンプラである。 CF連続繊維強化により比剛性が向上する一方、成形温度と材料費がさらに高くなる。
ポリフェニレンサルファイド(PPS) 耐薬品、難燃、寸法安定性に優れる。 CFRTPマトリックスとして量産性が高いが、連続繊維配向と界面品質が性能を左右する。
長繊維強化ポリプロピレン(LGF-PP) 軽量、低コスト、射出・圧縮成形性に優れる。 CFRPより耐熱・剛性・寸法安定性が低いが、大量生産とリサイクル性で有利である。
ポリアミド(PA) 靭性、耐摩耗、射出成形性に優れる。 CF強化PAは量産部品に適するが、吸湿と寸法変化に注意が必要である。
複合材料 繊維、粒子、積層等を組み合わせる材料群である。 CFRPは複合材料のうち炭素繊維を主補強材とする一群である。

法規制・認証

項目 一般的な扱い 確認事項
RoHS 構成成分によって対応可能である。 樹脂、難燃剤、顔料、サイジング、金属インサートを含む個別証明を確認する。
REACH・SVHC 構成成分及び供給者情報に依存する。 SVHC含有、成形品中濃度、輸入者義務を確認する。
PFAS関連規制 フッ素樹脂、フッ素系離型剤、添加剤を使用する場合に影響し得る。 材料名だけでPFASフリーと断定せず、配合及び工程薬剤を確認する。
FDA・EU食品接触・日本食品衛生法 適合グレードが存在する場合がある。 マトリックス、表面コート、繊維露出、使用温度、食品種、繰返し使用条件を確認する。
USP Class VI・ISO 10993 医療用途向け個別材料で評価される場合がある。 最終製品、滅菌、加工助剤、色及び接着剤を含めて評価する。
UL認証 特定グレード及び厚さで取得される。 UL 94、RTI、CTI等を個別ファイルで確認する。
航空宇宙規格 材料仕様、工程仕様、品質保証要求が厳格である。 プリプレグ保管、硬化履歴、NDT、トレーサビリティを確認する。
鉄道・建築燃焼規格 用途地域及び構造により異なる。 発煙、毒性、火炎伝播、耐火被覆を確認する。

環境・リサイクル性

熱硬化性CFRPは再溶融できず、機械粉砕、熱分解、ソルボリシス等による繊維回収が検討される。回収繊維は一般に連続長、表面状態及び強度が低下するため、元の航空構造用途へそのまま戻せるとは限らない。熱可塑性CFRPは再加熱・再成形及び端材再利用の余地があるが、再処理による繊維短化、樹脂劣化及び混入管理が必要である。

炭素繊維製造は高温工程を伴う一方、使用段階の軽量化により輸送エネルギーを削減できる場合がある。環境優位性は原料、製造歩留まり、使用期間、軽量化効果、修理、回収及び廃棄を含むライフサイクルで評価する。

価格・供給性

項目 相対評価 概要
価格区分 高価格~極めて高価格 繊維品種、マトリックス、プリプレグ、認証、購入量、成形工程で大きく変動する。
国内入手性 良好 汎用炭素繊維、織物、プリプレグ、短繊維コンパウンドは入手可能である。
少量購入 条件付き 板材、パイプ、ロッド、織物は小口流通があるが、航空認証プリプレグは制約が多い。
供給形態 多様 トウ、織物、UDテープ、プリプレグ、オルガノシート、ペレット、板、丸棒、成形品。
最小購入量 グレード依存 特注サイジング、特注目付、認証グレード、特注積層はMOQが大きくなりやすい。

比較用評価スコア

評価項目 スコア 評価理由
引張強度 5 連続繊維方向で非常に高い。積層方向及び短繊維材は低下する。
剛性 5 比剛性に優れ、配向設計が可能である。
衝撃強度 3 外観から見えにくい層間損傷が生じる場合がある。熱可塑性系は改善可能である。
耐熱性 4 マトリックス選択により高耐熱化できるが、CFRP全体で一律ではない。
低温特性 4 一般に良好であるが、樹脂脆化と熱応力を確認する。
耐薬品性 4 適切なマトリックスで良好。酸化剤、溶剤、熱水は要確認である。
耐候性 3 炭素繊維は安定だが、樹脂のUV劣化と表面保護が必要である。
耐加水分解性 3 マトリックス依存である。PA、ポリエステル、PU系は特に注意する。
寸法安定性 5 繊維方向の熱膨張及び収縮が小さい。異方性と吸湿は考慮する。
低吸水性 4 一般樹脂単体より低い場合が多いが、端面と空隙から吸水する。
摺動性 3 専用グレードで良好だが、相手材摩耗と繊維露出に注意する。
耐摩耗性 4 高剛性化で改善できるが、条件依存性が大きい。
電気絶縁性 1 炭素繊維が導電性を持つ。
難燃性 3 樹脂及び認証グレード依存である。
透明性 1 黒色不透明である。
成形加工性 2 高品質連続繊維材は工程管理が難しく、短繊維材は比較的容易である。
切削加工性 2 加工可能だが工具摩耗、剥離、粉じん対策が必要である。
接着性 4 適切な表面処理により構造接着に適する。
リサイクル性 2 熱硬化性は難しく、熱可塑性は比較的改善可能である。
価格優位性 1 一般に高価格である。

代表的なメーカー

メーカー 代表製品・ブランド 概要
東レ株式会社 TORAYCA PAN系炭素繊維、プリプレグ、織物、コンポジット材料を展開する主要メーカーである。
帝人株式会社 Tenax PAN系炭素繊維、熱硬化性及び熱可塑性複合材料、成形技術を展開する。
三菱ケミカル株式会社 PYROFIL、DIALEAD PAN系及びピッチ系炭素繊維、プリプレグ、複合材料を展開する。
SGL Carbon SE SIGRAFIL 炭素繊維、織物、プリプレグ、CFRP部材を展開する。
Hexcel Corporation HexTow、HexPly 航空宇宙向け炭素繊維、プリプレグ、ハニカム等を展開する。
Solvay SA CYCOM、APC 航空宇宙向け熱硬化性及び熱可塑性複合材料を展開する。

メーカー及びブランドは代表例である。炭素繊維、プリプレグ、マトリックス樹脂、成形品の供給範囲は企業及び地域により異なるため、最新の製品資料を確認する必要がある。

関連キーワード

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本ページの数値及び評価は材料群としての一般的な代表値又は目安である。実使用では、マトリックス樹脂、炭素繊維品種、繊維含有率、繊維配向、積層構成、グレード、温度、濃度、荷重、応力、湿度、時間、試験片形状、成形条件及び適用法規を確認し、実部品又は代表試験片で妥当性を検証する必要がある。

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