概要
| 材料名 | ポリアリレート |
|---|---|
| 略記号 | PAR |
| 英語名 | Polyarylate |
| 分類 | 非晶性スーパーエンプラ、芳香族ポリエステル |
| 構造・主成分 | 芳香族ジカルボン酸とビスフェノール類からなる芳香族ポリエステル |
| 主な用途 | 精密部品、電気電子部品、フィルム、耐熱透明部品 |
ポリアリレートは、芳香族ジカルボン酸とビスフェノール類からなる芳香族ポリエステルである。耐熱性、耐衝撃性、ばね弾性、難燃性、耐候性、ガスバリア性が良い。
材料選定では、成形前乾燥が必要、耐薬品グレードは吸水に注意。用途、温度、荷重、薬品、成形方法に応じてグレードを選定する必要がある。
特徴
- 耐衝撃性にすぐれている。
- 耐熱性にすぐれている。
- ばね弾性にすぐれている。
- 難燃性にすぐれている。
- 耐摩耗性にすぐれている。
- 耐候性、ガスバリア性にすぐれている。
- 無毒のプラスチック樹脂である。
- 120℃以上で4万時間の耐久温度に耐える。
- 耐薬品グレードは、結晶性で弾性率が高い。
- 耐薬品グレードは、耐油性が向上するが、吸水性が大きくなり、吸水すると若干の強度低下がおきる。
- 成形には、120℃ 8時間以上の予備乾燥が必要である。
- 射出条件は、樹脂温度300~350℃、金型温度120℃、射出圧力が140MPaである。
- 成形前乾燥が必要、耐薬品グレードは吸水に注意
- グレード、充填材、共重合成分、硬化条件により物性が大きく変化する。
- 実使用では温度、湿度、応力、薬品接触時間を含めて評価する必要がある。
長所
- 耐熱性、耐衝撃性、ばね弾性、難燃性、耐候性、ガスバリア性が良い
- 用途に応じたグレード展開がある。
- 金属、ガラス、汎用樹脂の代替材料として使える場合がある。
短所
- 成形前乾燥が必要、耐薬品グレードは吸水に注意
- 高温、応力、薬品、吸水、添加剤の影響で性能が変化する。
- 量産前にはメーカー物性表と実使用条件での確認が必要である。
成形加工
ポリアリレートの加工性は種類とグレードにより異なる。熱可塑性樹脂では射出成形・押出成形が中心となり、熱硬化性樹脂では注型、圧縮、積層、硬化成形が中心となる。
プラスチック、ポリマー
| 加工方法 | 適性 | 主な製品例 |
|---|---|---|
| 射出成形 | ○ | グレードにより成形部品、電気電子部品、機械部品に使用する |
| 押出成形 | ○ | シート、フィルム、チューブ、板材に使用する |
| 圧縮・注型・硬化成形 | △〜◎ | 熱硬化性樹脂や高粘度材料では主要加工法となる |
| 切削加工 | ○ | 丸棒、板材、試作部品、治具に使用する |
構造式

芳香族ポリエステル骨格。構造中の官能基、結晶性、架橋密度、芳香族骨格、充填材の有無により、耐熱性、耐薬品性、機械的性質、成形性が変化する。
種類
標準グレード
| 名称 | 標準ポリアリレート |
|---|---|
| 構成 | 芳香族ジカルボン酸とビスフェノール類からなる芳香族ポリエステル |
| 特徴 | 耐熱性、耐衝撃性、ばね弾性、難燃性、耐候性、ガスバリア性が良い |
| 主な用途 | 精密部品、電気電子部品、フィルム、耐熱透明部品 |
特徴
- 標準的な物性バランスを持つ。
- 汎用的な成形・加工用途に使いやすい。
強化・改質グレード
| 名称 | 強化・改質ポリアリレート |
|---|---|
| 構成 | ガラス繊維、炭素繊維、難燃剤、耐候剤、潤滑剤、共重合成分などで改質したグレード |
| 特徴 | 剛性、耐熱性、耐候性、難燃性、摺動性、寸法安定性などを改善する |
| 主な用途 | 電気電子部品、自動車部品、機械部品、構造部品、機能部材 |
特徴
- 標準グレードより特定性能を高めた材料である。
- 充填材により比重、成形収縮、異方性、耐薬品性が変化する。
代表的な物性値又は機械的性質
| 性質 | 単位 | 標準 | 耐薬品 |
|---|---|---|---|
| 比重 | 1.21 | 1.17 | |
| 吸水率 | % | 0.26 | 0.75 |
| 引張強さ | MPa | 73 | 74 |
| 引張伸び | % | 40~70 | 20~30 |
| 曲げ弾性率 | GPa | 1.9 | 2.2 |
| アイゾット衝撃強さ (ノッチ付き) | J/m | 250 | 78 |
| ロックウェル硬さ | R125 | R105 | |
| 荷重たわみ温度 (1.82MPa) | ℃ | 164 | 150 |
| 難燃性 | UL94 | V-2 (酸素指数 37) | HB |
| 体積固有抵抗 | Ω・cm | 2 × 1016 | 1014 |
| 誘電率 | 106 | 3.0 | 3.6 |
| 透明度 | 透明 | 不透明 |
耐薬品性
油・弱酸に比較的良好。強アルカリ・一部溶剤に注意。
| 薬品・溶剤 | 耐性 | 備考 |
|---|---|---|
| 水 | ○ | 多くは常温で比較的安定であるが、吸水・加水分解型材料では注意する |
| 酸 | △〜○ | 強酸では劣化する材料がある |
| アルカリ | △〜○ | ポリエステル、PC、熱硬化性樹脂では高温・高濃度に注意する |
| アルコール | ○〜△ | 応力クラックや膨潤は材料により異なる |
| ケトン | △〜× | 非晶性樹脂や塗料系樹脂では膨潤・溶解に注意する |
| 芳香族溶剤 | △〜× | 膨潤、白化、クラックの可能性がある |
| 油・燃料 | ○〜△ | ポリアミド、POM、PBT、PPS、PEEKなどは比較的良好な場合が多い |
更に詳しくはプラスチックの耐薬品性一覧表を参照。
SP値(溶解度パラメータ)
ポリアリレートのSP値はグレード、結晶化度、架橋密度、充填材により変動する。溶解性はSP値だけでなく、温度、応力、薬品濃度、接触時間で判断する必要がある。
| 項目 | SP値(δ) MPa^1/2 | 備考 |
|---|---|---|
| ポリアリレート(PAR) 標準グレード | 21.5~22.5 | 芳香族ポリエステル系。耐熱性・透明性・耐クリープ性に優れる。 ケトン系・塩素系溶剤には注意が必要。 |
| GF30% ポリアリレート (ガラス繊維強化) | 21.0~22.0 | ガラス繊維添加により耐薬品性と寸法安定性が向上。 応力集中部では溶剤クラックに注意。 |
| CF20% ポリアリレート( 炭素繊維強化) | 20.8~21.8 | 炭素繊維により低線膨張・高剛性化。 有機溶剤中での応力割れ感受性はやや残る。 |
| 耐熱改質ポリアリレート | 22.0~23.0 | 高Tg化されたタイプ。 極性溶剤への耐性はやや改善するが、 強極性溶剤には長期曝露を避ける。 |
| アロイ系PAR/PC | 20.5~21.5 | ポリカーボネート系とのアロイ。 耐衝撃性は高いが、塩素系・ケトン系に弱くなる場合がある。 |
溶解性の目安
| Δδ | 挙動 |
|---|---|
| 0〜2 | 溶解しやすい |
| 2〜5 | 膨潤・軟化 |
| 5以上 | 溶解しにくい |
SP値から見た耐溶剤性
| 溶剤・薬品 | SP値(δ) MPa^1/2 | 耐性評価 | 特徴・備考 |
|---|---|---|---|
| 水 | 47.9 | ◎ | 吸水は小さく、常温では安定。 |
| メタノール | 29.7 | ○ | 短時間接触は良好。長期浸漬では注意。 |
| エタノール | 26.0 | ○ | 比較的安定。応力存在下ではクラック注意。 |
| IPA(イソプロパノール) | 23.5 | △ | PARのSP値に比較的近く、長時間接触で白化リスク。 |
| アセトン | 20.3 | × | SP値が近く膨潤・クラックを起こしやすい。 |
| MEK(メチルエチルケトン) | 19.3 | × | 強い溶解・応力割れの危険。 |
| トルエン | 18.2 | △ | 長期接触で膨潤の可能性。 |
| キシレン | 18.0 | △ | 高温環境では注意。 |
| 酢酸エチル | 18.6 | × | エステル系溶剤はPARを侵しやすい。 |
| NMP | 23.0 | × | 極性が高く高温では大きく劣化。 |
| DMF | 24.8 | × | 強極性溶剤。長時間で溶解・劣化。 |
| DMSO | 26.7 | △ | 高温条件では浸透・劣化の可能性。 |
| ヘキサン | 14.9 | ◎ | 非極性炭化水素には比較的安定。 |
| ガソリン | 14.5~15.5 | ○ | 短期接触では比較的良好。 |
| 鉱物油 | 15~17 | ◎ | 油脂・潤滑油には強い。 |
| 10%塩酸 | – | ○ | 常温では比較的安定。 |
| 10%硫酸 | – | △ | 高温・高濃度では加水分解注意。 |
| 10%水酸化ナトリウム | – | △ | アルカリ条件ではエステル結合加水分解に注意。 |
◎:非常に良好 ○:概ね良好 △:注意が必要 ×:不適
※本表はポリアリレート(PAR)のSP値中央値(約22 MPa1/2)を基準として、 溶剤との近似性および一般的な耐薬品データを参考に作成しています。 SP値が近い溶剤ほど膨潤・白化・応力割れが発生しやすくなります。
※特に注意する溶剤
アセトン、MEK、酢酸エチル、NMP、DMFなどの 「ケトン系・エステル系・強極性溶剤」は、 ポリアリレートに対して強い膨潤・クラック・溶解を引き起こす可能性があります。
また、成形応力が残った状態ではIPAやアルコールでも 環境応力割れ(ESC)が発生する場合があります。
実務上の注意
- SP値は溶解・膨潤予測の一次判断であり、耐久性そのものではない。
- 成形残留応力がある場合は、短時間の薬品接触でもクラックが発生する場合がある。
- 最終判断は実使用条件での浸漬試験、応力負荷試験、温度サイクル試験で行う。
製法
ビスフェノール類と芳香族ジカルボン酸誘導体を重縮合。

詳細な利用用途
代表用途
- 精密部品
- 電気電子部品
- フィルム
- 耐熱透明部品
工業用途
- 電気電子部品
- 自動車部品
- 機械部品
- 耐熱・耐薬品部材
- フィルム、シート、塗料、接着、複合材用途
関連材料との比較
代表的なメーカー
| メーカー | 代表的な製品・商品名 | 備考 |
|---|---|---|
| ユニチカ Uポリマー | 代表グレード又は関連製品 | 詳細はメーカー技術資料で確認する |
| Unitika | 代表グレード又は関連製品 | 詳細はメーカー技術資料で確認する |
| RTP | 代表グレード又は関連製品 | 詳細はメーカー技術資料で確認する |
| Ensinger | 代表グレード又は関連製品 | 詳細はメーカー技術資料で確認する |