ポリブチレンナフタレート(PBN)
概要
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 材料名 | ポリブチレンナフタレート |
| 略記号 | PBN |
| IUPAC | poly(tetramethylene 2,6-naphthalenedicarboxylate) / poly(butylene 2,6-naphthalate) |
| 英語名 | Polybutylene Naphthalate / Poly(butylene 2,6-naphthalate) |
| 日本語名 | ポリブチレンナフタレート、ポリブチレン-2,6-ナフタレート、ポリブチレンナフタレンジカルボキシレート |
| 分類 | 結晶性芳香族ポリエステル系エンジニアリング・プラスチック |
| プラスチック分類 | エンジニアリング・プラスチック、高機能ポリエステル |
| 化学式または代表構造 | 繰り返し単位の目安:[-O-(CH2)4-O-CO-C10H6-CO-]n、繰り返し単位の組成式目安:C16H14O4 |
| CAS No. | ポリマーとして一般流通品ではグレード・登録形態により確認が必要である。安全データシートではメーカー記載を優先する。 |
| 構造・主成分 | 2,6-ナフタレンジカルボン酸またはそのエステルと1,4-ブタンジオールから得られる芳香族ポリエステルである。 |
| 主な用途 | 摺動部品、低溶出部品、バリア性部材、電気電子部品、精密機械部品、自動車部品、食品機械周辺部材など |
ポリブチレンナフタレート(PBN)は、ナフタレン骨格を主鎖中に持つ結晶性の芳香族ポリエステルである。一般的なポリエステル系エンプラであるポリブチレンテレフタレート(PBT)と近い分類に属するが、テレフタレート骨格ではなくナフタレート骨格を持つため、耐熱性、剛性、寸法安定性、ガスバリア性、耐薬品性、摺動性で特徴が出やすい材料である。
PBNは、一般にPBTより高機能側に位置付けられるポリエステル材料であり、ポリアセタール(POM)やポリアミド(PA)では不足する耐熱性、低溶出性、寸法安定性、バリア性が要求される用途で検討される。一方で、流通量、グレード数、材料コスト、成形実績はPBTやPOMほど一般的ではないため、設計段階では入手性とメーカー技術資料の確認が重要である。
材料選定では、PBNを単に「高耐熱ポリエステル」として扱うのではなく、未強化グレード、GF強化グレード、摺動グレード、難燃グレード、食品接触を想定した低溶出グレードなどに分けて判断する必要がある。実使用では、グレード、分子量、結晶化度、乾燥状態、成形条件、温度、薬品濃度、荷重、応力、接触時間、相手材、摩耗粉、加水分解環境を確認することが望ましい。
特徴
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 長所 | 摺動性、耐摩耗性、低溶出性、耐薬品性、ガスバリア性、水蒸気バリア性、寸法安定性、低吸水性に優れる傾向がある。 |
| 短所 | 材料価格が高くなりやすく、流通グレードが限定される。高温高湿、熱水、強アルカリ、加水分解条件では確認が必要である。 |
| 外観 | 未着色では乳白色から淡色のペレットまたは成形品が一般的である。GF強化、摺動材、難燃材では色調が変化する。 |
| 耐熱性 | 融点は概ね240〜250℃前後、ガラス転移温度は概ね70〜80℃前後が目安である。HDTや連続使用温度は強化材、結晶化度、荷重条件により大きく変化する。 |
| 耐薬品性 | 油、燃料、アルコール類、弱酸、脂肪族炭化水素に対して比較的良好な傾向がある。強アルカリ、熱水、蒸気、強酸、フェノール類、塩素系溶剤、エステル交換や加水分解を促進する環境では注意が必要である。 |
| 加工性 | 射出成形に適する。結晶性ポリエステルであるため、十分な予備乾燥、適切な樹脂温度、金型温度、滞留時間管理が重要である。 |
| 分類上の注意 | PBNはPolybutylene Naphthalateを指す場合と、熱分解窒化ホウ素であるPyrolytic Boron Nitrideを指す場合がある。本ページではポリブチレンナフタレートを扱う。 |
| 難燃性 | 未強化・非難燃グレードではUL94 HB相当となる場合がある。V-0などを要求する場合は難燃グレードの確認が必要である。 |
| 法規制 | RoHS、REACH、食品衛生、FDA、医療用途への適合は、材料名ではなく個別グレード、添加剤、着色剤、成形助剤、使用条件で確認する必要がある。 |
構造式
ポリブチレンナフタレートは、1,4-ブタンジオール由来の脂肪族メチレン鎖と、2,6-ナフタレンジカルボン酸由来の剛直なナフタレン環をエステル結合で連結した構造を持つ、芳香族ポリエステルである。 主鎖中にエステル結合を持つため、ポリエステル系樹脂として加水分解には注意が必要である。

一方で、ナフタレン環を含む剛直な構造により、PBTやPETと比較して、耐熱性、バリア性、耐摩耗性、寸法安定性が向上しやすい。
代表的な構造単位
| 項目 | 構造・内容 |
|---|---|
| 代表構造単位 | [-O-(CH2)4-O-CO-C10H6-CO-]n |
| ナフタレン骨格 | C10H6で表される芳香族二環構造を含む。分子鎖の剛直性、バリア性、耐熱性に寄与する。 |
| エステル結合 | -CO-O-結合を含むため、一般に強アルカリ、熱水、蒸気、高温高湿下で加水分解に注意が必要である。 |
| ブチレン鎖 | -(CH2)4-を含むため、ポリエチレンテレフタレート(PET)やPENと比較して結晶化挙動や成形性が異なる。 |
| 化学式の画像 | 画像タグは使用しない。WordPress掲載時は、白黒構造式画像を別途作成する場合、フォントはMS Pゴシック相当、線幅を統一し、繰り返し単位を角括弧とnで示すと見やすい。 |
モノマーまたは構成単位
| 構成成分 | 内容 | 役割 |
|---|---|---|
| 2,6-ナフタレンジカルボン酸またはジメチル-2,6-ナフタレンジカルボキシレート | NDCまたはNDCエステルとして扱われる芳香族二官能性モノマーである。 | 耐熱性、剛性、バリア性、耐薬品性、寸法安定性に寄与する。 |
| 1,4-ブタンジオール | HO-(CH2)4-OHで表されるジオールである。 | ポリエステル主鎖の柔軟性、結晶化挙動、成形性に影響する。 |
| 共重合成分 | テレフタル酸、イソフタル酸、他のジオール成分などが導入される場合がある。 | 結晶化速度、融点、成形性、靭性、透明性、耐熱性を調整する。 |
共重合体や変性グレードでは、PBN単独の性質から外れる場合がある。例えば、PBTやPET系とのブレンド、エラストマー改質、GF強化、摺動材添加、難燃剤添加により、耐熱性、寸法安定性、摩耗特性、難燃性、耐薬品性、成形収縮率は大きく変化する。
種類
| 種類の名称 | 主成分または特徴 | 長所 | 短所 | 主な用途 |
|---|---|---|---|---|
| 未強化PBN | PBNを主成分とする標準グレード | 摺動性、低溶出性、耐薬品性、バリア性のバランスが良い。 | GF強化品より剛性、HDT、寸法安定性は低くなる場合がある。 | 摺動部品、低溶出部品、精密部品 |
| 耐熱グレード | 結晶化制御、安定剤、場合により強化材を併用 | 高温下での剛性保持、寸法安定性を高めやすい。 | 成形条件幅が狭くなる場合がある。 | 電装部品、機械部品、耐熱ハウジング |
| GF強化PBN | ガラス繊維を配合した強化グレード | 剛性、HDT、クリープ特性、寸法安定性に優れる。 | 異方性、反り、繊維露出、相手材摩耗に注意が必要である。 | コネクタ、構造部品、自動車機構部品 |
| 摺動グレード | PTFE、潤滑剤、無機フィラーなどを配合する場合がある。 | 摩擦係数、摩耗量、鳴き、焼付きリスクを低減しやすい。 | 強度、溶出、食品接触、相手材適合性の確認が必要である。 | ギア、軸受、スライダー、ローラー |
| 難燃グレード | 難燃剤、難燃助剤、GFを組み合わせる場合がある。 | 電気電子部品でUL94 V-0などを狙える場合がある。 | 耐トラッキング性、アウトガス、金型腐食、リサイクル性に注意する。 | コネクタ、スイッチ、電装筐体 |
| 食品接触・低溶出グレード | 低溶出性を重視したグレード | 食品機械、流体接触部材で検討しやすい。 | 食品衛生法、FDA、EU規制などは個別グレードの証明書確認が必要である。 | 食品機械部品、搬送部品、流路周辺部材 |
| ブレンド・アロイグレード | PBT、PET、エラストマー、他ポリエステルとの複合系 | 成形性、衝撃性、コスト、結晶化速度を調整しやすい。 | PBN本来のバリア性や耐薬品性が低下する場合がある。 | 汎用成形部品、機能調整部品 |
成形加工
PBNは結晶性芳香族ポリエステルであり、成形前の乾燥が重要である。水分が残ると成形時に加水分解し、分子量低下、強度低下、外観不良、ガス、シルバー、脆化の原因となる。乾燥条件、樹脂温度、金型温度、滞留時間はメーカー推奨条件を優先する。
| 加工方法 | 適正 | 内容 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 射出成形 | ◎ | 最も一般的な加工方法である。精密部品、摺動部品、電装部品に適する。 | 乾燥、金型温度、結晶化、反り、ゲート部残留応力を管理する。 |
| 押出成形 | ○ | シート、ロッド、チューブ、フィルム状材料で検討される。 | 溶融粘度、結晶化、冷却条件、厚み精度を確認する。 |
| ブロー成形 | △ | バリア性を活かす用途で検討余地はある。 | パリソン安定性、溶融強度、結晶化制御が課題となる場合がある。 |
| 圧縮成形 | △ | 板材、試験片、少量成形で使用される場合がある。 | 結晶化ムラ、ボイド、熱履歴に注意する。 |
| 真空成形 | △ | シートグレードがある場合に検討される。 | 結晶性が高い場合、成形温度幅、白化、寸法安定性を確認する。 |
| 切削加工 | ○ | 丸棒、板材、ブロック材が入手できる場合、精密加工が可能である。 | 内部応力、熱変形、バリ、吸湿後寸法変化、切削熱に注意する。 |
| 溶着 | △ | 超音波溶着、熱板溶着などを検討できる場合がある。 | 結晶化度、添加剤、GF量、設計形状により強度が変化する。 |
| 接着 | △ | 表面処理、プライマー、接着剤選定により対応する。 | 低表面エネルギーではないが、結晶性と耐薬品性により接着剤選定が難しい場合がある。 |
代表的な成形条件の目安
| 項目 | 代表値・目安 | 備考 |
|---|---|---|
| 乾燥温度 | 120〜140℃程度 | 除湿乾燥が望ましい。実条件はグレードと含水率で調整する。 |
| 乾燥時間 | 4〜6時間程度 | 開封後保管状態、ペレット水分、乾燥機能力で変化する。 |
| シリンダー温度 | 250〜280℃程度 | 融点、流動性、熱安定性により設定する。過度な滞留は避ける。 |
| 金型温度 | 80〜130℃程度 | 結晶化、表面外観、寸法安定性、HDTに影響する。 |
| 成形収縮率 | 未強化:1.0〜2.0%程度 GF強化:0.2〜1.0%程度 | 肉厚、ゲート、繊維配向、結晶化度、金型温度により変化する。 |
| 注意点 | 加水分解、熱劣化、滞留分解、反り、異方性 | 成形前乾燥と滞留時間管理が特に重要である。 |
代表的な物性値又は機械的性質
下表は代表値・目安であり、保証値ではない。PBNはグレード展開、強化材、結晶化度、成形条件、試験片状態により数値が変動する。実設計ではメーカーの技術資料、ULイエローカード、実測データを優先する必要がある。
| 項目 | 単位 | 未強化PBN | GF強化PBN | 備考 |
|---|---|---|---|---|
| 密度 | g/cm3 | 1.35〜1.38 | 1.50〜1.65 | GF量、フィラー量で上昇する。 |
| 引張強さ | MPa | 55〜80 | 100〜160 | 乾燥状態、試験温度、繊維配向で変化する。 |
| 伸び | % | 5〜50 | 1〜4 | 未強化品はグレード差が大きい。GF強化品は低伸びとなる。 |
| 曲げ弾性率 | GPa | 2.5〜3.5 | 7〜12 | GF強化で大幅に向上する。 |
| アイゾット衝撃強さ | kJ/m2 | 3〜8 | 4〜10 | ノッチ付きの目安。衝撃改質材では変化する。 |
| 荷重たわみ温度 | ℃ | 100〜150 | 180〜230 | 荷重条件、結晶化度、GF量で大きく変化する。 |
| 融点 | ℃ | 240〜250 | 240〜250 | DSC条件、結晶型、共重合成分で変化する。 |
| ガラス転移温度 | ℃ | 70〜80 | 70〜80 | 測定法と熱履歴で変化する。 |
| 連続使用温度 | ℃ | 100〜130 | 120〜150 | 荷重、空気中、薬品中、電気特性要求で変化する。 |
| 吸水率 | % | 0.05〜0.15 | 0.05〜0.20 | 23℃水中24時間の目安。ポリアミドより低吸水である場合が多い。 |
| 体積抵抗率 | Ω・cm | 1015〜1017 | 1013〜1016 | 難燃剤、GF、カーボン系添加剤、水分で変化する。 |
| 酸素指数 | % | 20〜25程度 | 20〜28程度 | 難燃グレードでは異なる。UL94はグレード確認が必要である。 |
耐薬品性
PBNは芳香族ポリエステルであり、一般に油、燃料、アルコール、脂肪族炭化水素、弱酸に対して比較的良好な耐性を示す傾向がある。一方で、エステル結合を持つため、強アルカリ、高温水、蒸気、高温高湿、加水分解条件、強酸、酸化性薬品では劣化する可能性がある。下表は代表的な目安であり、実使用では濃度、温度、接触時間、応力、成形残留応力、結晶化度、グレードを確認する必要がある。
| 薬品分類 | 代表薬品 | 評価 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 酸類 | 希塩酸、希硫酸、酢酸 | ○ | 低濃度・常温では比較的安定な場合が多い。濃酸、酸化性酸、高温では確認が必要である。 |
| 強酸・酸化性酸 | 濃硫酸、濃硝酸、クロム酸 | × | 酸化劣化、分解、着色、脆化のおそれがある。 |
| アルカリ類 | NaOH、KOH、水酸化ナトリウム水溶液 | △〜× | ポリエステルであるためアルカリ加水分解に注意する。高濃度、高温、長時間接触では不適となりやすい。 |
| 低級アルコール類 | メタノール、エタノール、IPA | ○〜◎ | 常温短時間では良好な場合が多い。応力下、膨潤、抽出、低分子溶出は確認する。 |
| 高級アルコール類 | グリセリン、ベンジルアルコール、MMB | ○〜△ | 高沸点溶剤では高温長時間接触に注意する。SP値が近い場合は膨潤確認が必要である。 |
| 芳香族炭化水素類 | トルエン、キシレン | △ | 常温短時間では大きな溶解は起こりにくい場合があるが、膨潤、応力割れ、寸法変化を確認する。 |
| 脂肪族炭化水素類 | ヘキサン、ヘプタン、ミネラルスピリット | ○〜◎ | 一般に比較的安定である。ただし燃料混合物、添加剤、温度の影響を確認する。 |
| ケトン | アセトン、MEK、MIBK | △ | 短時間接触では使用可能な場合もあるが、膨潤、白化、応力割れ、抽出に注意する。 |
| エステル | 酢酸エチル、酢酸ブチル | △ | SP値が近く、膨潤しやすい場合がある。長時間浸漬や高温では避ける方が安全である。 |
| 塩素系溶剤 | ジクロロメタン、クロロホルム、トリクロロエチレン | × | 膨潤、溶解、クラック、抽出が起こる可能性が高い。原則として事前試験が必要である。 |
| 水・温水 | 水、温水、純水 | ○〜△ | 常温水では比較的安定な場合が多い。熱水、蒸気、高温高湿では加水分解に注意する。 |
| 油 | 潤滑油、作動油、植物油、鉱物油 | ○〜◎ | 一般に良好な傾向がある。添加剤、酸化劣化油、高温連続接触は確認する。 |
| 燃料 | ガソリン、軽油、灯油、アルコール混合燃料 | ○〜△ | 芳香族成分、アルコール混合、添加剤、温度により膨潤や物性低下が変化する。 |
SP値(溶解度パラメータ)
PBNのSP値(δ)は、公開データが限定されるため、芳香族ポリエステル構造、PBT、PET、PEN系材料から推定すると、代表値は概ね21〜24 MPa1/2程度を目安として扱うのが実務的である。ナフタレン骨格を持つため、PBTよりやや高い凝集エネルギー密度を示す可能性があるが、実際の耐薬品性は結晶化度、拡散性、分子量、添加剤、残留応力、温度、濃度、接触時間により変化する。
| 項目 | 代表値・目安 MPa1/2 | 注意点 |
|---|---|---|
| PBNのSP値 | 21〜24 | 推定を含む目安である。メーカー実測値またはHSPデータがある場合はそれを優先する。 |
| HSPでの考え方 | δD、δP、δHに分けて評価する方が望ましい。 | SP値が近くても、結晶性、拡散速度、水素結合性、極性、薬品反応性で結果が変わる。 |
| 耐薬品性判断 | SP値差だけでは不可 | ポリエステルでは加水分解、アルカリ分解、応力割れ、溶出、熱劣化も考慮する必要がある。 |
溶解性の目安
| SP値差 | 溶解・膨潤の目安 | 判定 |
|---|---|---|
| 0〜2 | 膨潤・軟化しやすい | × |
| 2〜5 | 条件により膨潤する | △ |
| 5〜8 | 短時間接触では比較的安定 | ○ |
| 8以上 | 溶解・膨潤しにくい | ◎ |
SP値から見た耐溶剤性
下表はPBNの代表SP値を22.5 MPa1/2と仮定した場合の目安である。SP値差が小さい溶剤ほど膨潤や軟化の可能性が高くなるが、PBNは結晶性ポリエステルであるため、SP値だけでは耐薬品性を判断できない。実使用では浸漬試験、重量変化、寸法変化、引張強さ保持率、曲げ強さ保持率、外観、クラック、摩耗特性、溶出量を確認する必要がある。
| 薬品名 | 薬品SP値目安 | PBNとの差 | 評価 | コメント |
|---|---|---|---|---|
| 水 | 47.9 | 25.4 | ○ | SP値差は大きいが、熱水・蒸気では加水分解を確認する。 |
| エタノール | 26.0 | 3.5 | ○〜△ | 常温短時間では比較的良好な場合がある。長時間接触は確認する。 |
| IPA | 23.5 | 1.0 | △ | SP値差は小さいが、結晶性のため即時溶解とは限らない。膨潤・応力割れを確認する。 |
| アセトン | 20.3 | 2.2 | △ | 膨潤、白化、応力割れに注意する。 |
| MEK | 19.0 | 3.5 | △ | 塗料溶剤として接触する場合は短時間でも確認が必要である。 |
| 酢酸エチル | 18.6 | 3.9 | △ | エステル系溶剤であり、膨潤や抽出に注意する。 |
| トルエン | 18.2 | 4.3 | △ | 芳香族溶剤であり、応力下ではクラック確認が必要である。 |
| キシレン | 18.0 | 4.5 | △ | 高温接触、長時間接触では寸法変化を確認する。 |
| ヘキサン | 14.9 | 7.6 | ○ | 脂肪族炭化水素では比較的安定な場合が多い。 |
| ジクロロメタン | 20.2 | 2.3 | × | 塩素系溶剤であり、膨潤・溶解・クラックリスクが高い。 |
| エチレングリコール | 32.9 | 10.4 | ○〜△ | SP値差は大きいが、高温では加水分解や抽出を確認する。 |
| 鉱物油 | 16〜18 | 4.5〜6.5 | ○ | 油の添加剤、酸化劣化、高温連続接触を確認する。 |
| 評価 | 意味 |
|---|---|
| ◎ | 非常に良好。常温短時間から中長期接触で安定しやすい。ただし実使用条件で確認する。 |
| ○ | 概ね良好。温度、濃度、応力、接触時間により確認が必要である。 |
| △ | 注意が必要。膨潤、白化、寸法変化、クラック、物性低下の評価が必要である。 |
| × | 不適。原則として避けるか、短時間接触を含めて実機条件で十分な試験が必要である。 |
製法
PBNは、一般に2,6-ナフタレンジカルボン酸またはジメチル-2,6-ナフタレンジカルボキシレートと1,4-ブタンジオールを原料とし、エステル化またはエステル交換反応の後、重縮合により製造される。反応は高温、減圧下で進められ、生成する水、メタノール、過剰ジオールを除去しながら分子量を上げる。
代表的な原料
| 原料 | 役割 | 備考 |
|---|---|---|
| 2,6-ナフタレンジカルボン酸 | 芳香族ジカルボン酸成分 | ナフタレン骨格により剛性、耐熱性、バリア性を付与する。 |
| ジメチル-2,6-ナフタレンジカルボキシレート | エステル交換用モノマー | メタノールを副生しながらビスヒドロキシブチルエステル中間体を形成する。 |
| 1,4-ブタンジオール | ジオール成分 | ブチレン鎖を形成し、結晶化挙動と成形性に影響する。 |
| 触媒 | エステル化、エステル交換、重縮合促進 | チタン系、アンチモン系、ゲルマニウム系などが検討される場合がある。実際はメーカー技術による。 |
| 添加剤・強化材 | 熱安定化、加水分解抑制、難燃化、摺動性向上、強度向上 | GF、潤滑剤、難燃剤、安定剤、着色剤、離型剤などが使われる場合がある。 |
代表的な反応式
| 方式 | 反応式の目安 | 副生成物 |
|---|---|---|
| ジカルボン酸法 | n HOOC-C10H6-COOH + n HO-(CH2)4-OH → [-O-(CH2)4-O-CO-C10H6-CO-]n + 2n H2O | 水 |
| ジメチルエステル法 | n CH3OOC-C10H6-COOCH3 + n HO-(CH2)4-OH → [-O-(CH2)4-O-CO-C10H6-CO-]n + 2n CH3OH | メタノール |
工程の概要
- 原料であるNDC系モノマーと1,4-ブタンジオールを仕込む。
- エステル化またはエステル交換により低重合体を形成する。
- 高温・減圧下で重縮合し、分子量を上げる。
- ストランド化、冷却、カットによりペレット化する。
- 用途に応じてGF、難燃剤、安定剤、摺動材、着色剤を混練し、コンパウンド化する。
- 成形前には除湿乾燥を行い、加水分解による分子量低下を抑える。
詳細な利用用途
| 用途分野 | 具体例 | 採用理由 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 自動車 | 摺動部品、ギア、ブッシュ、ローラー、燃料周辺部品、センサー周辺部品 | 耐摩耗性、低吸水、寸法安定性、耐油性、耐燃料性を活かせる。 | 燃料組成、熱履歴、振動、相手材、摩耗粉、低温衝撃を確認する。 |
| 電気・電子 | コネクタ、スイッチ部品、絶縁部品、精密ハウジング | 寸法安定性、電気絶縁性、耐熱性、低吸水性が有効である。 | 難燃性、耐トラッキング性、はんだ耐熱、アウトガスを確認する。 |
| 機械部品 | 軸受、カム、スライダー、摺動プレート、搬送部品 | 低摩擦、耐摩耗、寸法安定性、油中安定性を活かせる。 | PV値、相手材、潤滑条件、発熱、摩耗粉、荷重を確認する。 |
| 医療 | 低溶出性を求める機構部品、検査機器部品 | 低溶出性、耐薬品性、寸法安定性が有効な場合がある。 | 医療認証、滅菌方法、抽出物、溶出物、生体適合性は個別確認が必要である。 |
| 食品機械 | 搬送ガイド、ローラー、摺動部品、流体接触部材 | 耐摩耗性、低溶出性、耐油性、洗浄剤耐性を活かせる。 | 食品衛生法、FDA、洗浄剤、熱水、アルカリ洗浄、摩耗粉を確認する。 |
| 包装・バリア材料 | バリア性部材、フィルム、シート、多層構成材料 | ナフタレン骨格に由来するガスバリア性、水蒸気バリア性を活かせる。 | フィルム化条件、延伸、透明性、接着性、リサイクル性を確認する。 |
| 建築・設備 | 設備内摺動部品、耐薬品部品、ポンプ周辺部材 | 耐薬品性、寸法安定性、耐摩耗性を活かせる。 | 屋外紫外線、薬液濃度、連続温度、応力、クリープを確認する。 |
用途別選定の目安
| 部品 | 推奨グレード候補 | 確認すべき評価 |
|---|---|---|
| ギア | 摺動グレード、GF強化摺動グレード | 摩耗量、騒音、歯面温度、相手材攻撃性、疲労寿命 |
| 軸受 | 摺動グレード、未強化低摩擦グレード | PV限界、摩擦係数、焼付き、潤滑油適合性、摩耗粉 |
| チューブ | 押出グレード、低溶出グレード | 内圧、薬液、抽出物、曲げ疲労、熱水耐性 |
| 筐体 | GF強化、難燃グレード | 反り、寸法精度、難燃性、耐熱、落下衝撃 |
| フィルム | 押出・延伸対応グレード | ガスバリア性、ピンホール、延伸性、透明性、接着性 |
| コネクタ | GF強化難燃グレード | はんだ耐熱、UL94、耐トラッキング、寸法安定性、アウトガス |
関連材料との比較
| 比較材料 | 特徴 | PBNとの違い |
|---|---|---|
| ポリブチレンテレフタレート(PBT) | 結晶性芳香族ポリエステル系エンプラであり、成形性、電気特性、寸法安定性、耐薬品性のバランスが良い。 | PBNはPBTよりバリア性、摺動性、低溶出性、耐熱性で有利な場合がある。一方、PBTはグレード数、入手性、コストで有利である。 |
| ポリエチレンテレフタレート(PET) | ボトル、フィルム、繊維、シートで広く使用される芳香族ポリエステルである。 | PBNはPETより成形用高機能部品や摺動用途で検討されることが多い。PETは透明性、フィルム、ボトル、繊維用途で実績が大きい。 |
| GF強化ポリエチレンテレフタレート(GF-PET) | PETにガラス繊維を配合し、剛性、耐熱性、寸法安定性を高めた材料である。 | GF-PETは構造部品向けの剛性と耐熱性に優れる。PBNは低溶出性、摺動性、バリア性を重視する用途で差別化しやすい。 |
| ポリアセタール(POM) | 低摩擦、耐摩耗、寸法安定性、疲労特性に優れる代表的な摺動材料である。 | PBNはPOMより耐熱性、バリア性、低溶出性で有利な場合がある。POMはコスト、加工性、摺動部品での実績に優れる。 |
| ナイロン6(PA6) | 靭性、耐摩耗性、成形性、コストバランスに優れるポリアミドである。 | PBNはPA6より低吸水で寸法安定性が良い場合が多い。PA6は靭性、低温衝撃、汎用性で有利な場合がある。 |
| ナイロン66(PA66) | PA6より高融点で、機械強度、耐摩耗性、耐熱性に優れるポリアミドである。 | PBNは低吸水、バリア性、低溶出性で有利な場合がある。PA66は靭性、耐摩耗、汎用機械部品での実績が大きい。 |
| ポリフェニレンサルファイド(PPS) | 耐熱性、耐薬品性、難燃性、寸法安定性に優れるスーパーエンプラである。 | PPSは高温耐薬品性、難燃性でPBNより有利な場合がある。PBNは摺動性、低溶出性、ポリエステル系の加工性で検討される。 |
| PEEK | 高耐熱、高耐薬品、耐加水分解性、機械特性に優れる代表的なスーパーエンプラである。 | PEEKは耐熱性と耐薬品性で上位に位置するが高価である。PBNはPEEKほどの高温性能を必要としない摺動・低溶出用途で検討しやすい。 |
代表的なメーカー
PBNは一般的なPBTやPETと比較して商業展開が限られる材料である。メーカー名、グレード、供給可否は時期により変わるため、採用前に最新の製品情報、SDS、技術資料、法規制適合証明を確認する必要がある。
| メーカー | 代表製品・ブランド | 概要 |
|---|---|---|
| 帝人株式会社 / 帝人系樹脂事業 | ポリブチレンナフタレート(PBN)樹脂 | ナフタレンジカルボン酸由来のPBN樹脂として、摺動性、低溶出性、耐薬品性、ガス・水蒸気バリア性、結晶化速度を特徴としている。採用時は最新の供給体制とグレード一覧を確認する。 |
| その他コンパウンダー | 個別開発品・受託コンパウンド | PBN単独樹脂またはPBN系アロイとして扱われる場合がある。ただし公開情報が限られるため、実在グレード、組成、長期供給性、法規制対応を個別確認する必要がある。 |
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