概要
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 材料名 | 超高分子量ポリエチレン |
| 略記号 | UHMWPE、UHMW-PE、UHPE、U-PE |
| IUPAC | poly(ethylene) または poly(methylene) と表記される場合がある |
| 英語名 | Ultra High Molecular Weight Polyethylene |
| 日本語名 | 超高分子量ポリエチレン、超高分子ポリエチレン、高分子量PE |
| 分類 | ポリオレフィン系樹脂、結晶性樹脂、熱可塑性樹脂 |
| プラスチック分類 | 汎用プラスチック系材料であるが、摺動・耐摩耗用途ではエンジニアリングプラスチック的に扱われることが多い |
| 化学式または代表構造 | (−CH2−CH2−)n |
| CAS No. | 9002-88-4 |
| 構造・主成分 | エチレン単位が直鎖状に連結した高分子量ポリエチレンである。分子量はグレードにより異なるが、一般に100万〜700万程度が目安である。 |
| 主な用途 | 摺動板、ガイドレール、ライニング、搬送部品、スプロケット、チェーンガイド、ホッパーライナー、食品機械部品、医療用部材、繊維、防護材 |
超高分子量ポリエチレンは、ポリエチレンの分子量を非常に高くした結晶性ポリオレフィンである。一般的なHDPEよりも分子鎖が長く、耐摩耗性、低摩擦性、耐衝撃性、耐薬品性、低吸水性に優れる材料である。
通常のポリエチレンに比べて溶融粘度が極めて高いため、一般的な射出成形や押出成形には不向きなグレードが多い。板材、丸棒、パイプ、異形押出、圧縮成形、ラム押出、切削加工品として使用されることが多く、近年は射出成形や押出成形に対応した特殊グレードも用いられている。
材料選定では、耐摩耗性と低摩擦性を重視する用途で有利である。一方で、剛性、耐熱性、寸法精度、接着性、塗装性、クリープ特性には注意が必要である。実使用では、グレード、分子量、結晶化度、添加剤、温度、荷重、相手材、表面粗さ、薬品濃度、接触時間を確認する必要がある。
特徴
長所
- 耐摩耗性が非常に高く、摺動部品、搬送部品、ライニング材に適する。
- 摩擦係数が低く、自己潤滑性を示すため、無給油用途で検討しやすい。
- 耐衝撃性が非常に高く、低温環境でも脆化しにくい。
- 酸、アルカリ、水、油、多くの有機溶剤に対して一般に安定である。
- 吸水率が極めて低く、湿度による寸法変化が小さい。
- 比重が約0.93〜0.94と低く、金属代替による軽量化に適する。
- 食品接触、医療、衛生用途に対応するグレードがある。
短所
- 溶融流動性が極めて低く、標準的な射出成形には不向きなグレードが多い。
- 剛性、硬度、荷重たわみ温度はポリアセタールやポリアミドより低い場合が多い。
- 線膨張係数と成形収縮率が大きく、精密寸法部品では設計上の配慮が必要である。
- クリープしやすく、長時間荷重、高面圧、高温下では変形に注意が必要である。
- 表面エネルギーが低いため、接着、塗装、印刷は困難である。
- 紫外線、酸化雰囲気、高温長期使用では劣化する場合がある。
- 難燃性は高くなく、標準グレードではUL94 HB相当の扱いになることが多い。
HONEYWELL社の スペクトラの特性
- 比重が軽い(スペクトラ比重:0.97g/cc )
- 耐薬品性、耐紫外線性能がすぐれている。
- 吸水率が低い。
- 振動減衰効果にすぐれている。
- 曲げによる疲労低下が低い。
- 自己潤滑性があり、摩擦抵抗が少ない。
- 耐摩耗性にすぐれている。
- 誘電率が低い。
- レーダーに反応しない。
- 耐衝撃性が高く、ポリカーボネートを上回る。
外観
標準グレードは白色から乳白色の不透明材料である。着色グレード、黒色グレード、帯電防止グレード、導電グレード、摺動改良グレード、充填材入りグレードもある。板材、丸棒、パイプ、シート、粉末、繊維、成形品、切削加工品として供給される。
耐熱性
融点は代表値で約130〜136℃である。連続使用温度は低荷重条件で80〜90℃程度が目安であり、短時間では100℃前後まで使用される場合がある。ただし、荷重、応力、摩擦発熱、薬品、酸化雰囲気、使用時間により許容温度は変化する。
耐薬品性
超高分子量ポリエチレンは、一般に酸、アルカリ、水、低級アルコール、油、脂肪族炭化水素に対して良好な耐性を示す。芳香族炭化水素、塩素系溶剤、燃料、油類では、常温短時間では使用可能な場合があるが、膨潤、寸法変化、応力割れ、抽出、摩耗変化を確認する必要がある。強酸化性薬品、発煙硝酸、濃硫酸高温、ハロゲン、紫外線との併用では劣化に注意する。
加工性
標準的なUHMWPEは溶融流動性が極めて低く、射出成形や一般押出には適さない場合が多い。圧縮成形、ラム押出、焼結、スカイブ加工、切削加工が一般的である。一方、特殊な低粘度グレードや成形性改良グレードでは、射出成形、押出成形、複合化用途に使われる場合がある。
分類上の注意
超高分子量ポリエチレンは化学構造上はポリエチレンであり、汎用プラスチックに近い材料である。ただし、耐摩耗性、摺動性、耐衝撃性を生かして機械部品に使われるため、実務上はエンジニアリングプラスチック的に扱われることが多い。HDPE、HMWPE、UHMWPEは分子量、加工方法、物性、用途が異なるため、同一材料として扱わない方がよい。
代表グレード
| 代表グレード | 特徴 | 主な確認項目 |
|---|---|---|
| 汎用グレード | 耐摩耗性、低摩擦性、耐衝撃性を重視した標準グレードである。 | 分子量、摩耗量、寸法安定性、切削性 |
| 耐熱・高分子量グレード | 耐摩耗性、耐クリープ性、長寿命を重視するグレードである。 | 連続使用温度、荷重、摩擦発熱、長期変形 |
| 摺動グレード | 潤滑剤、固体潤滑材、特殊添加剤により摩擦・摩耗を調整したグレードである。 | 相手材、面圧、速度、摩擦係数、摩耗粉 |
| 帯電防止・導電グレード | カーボン系添加剤などにより帯電を抑えるグレードである。 | 表面抵抗、体積抵抗、汚染性、食品適合性 |
| 食品接触グレード | 食品機械、搬送、まな板、ライニングなどに使われるグレードである。 | 食品衛生法、FDA、EU 10/2011、洗浄剤耐性 |
| 医療グレード | 人工関節、インプラント、医療部材向けに管理されたグレードである。 | 生体適合性、滅菌方法、酸化劣化、摩耗粉 |
| 繊維グレード | ゲル紡糸などにより高強度繊維として使用されるグレードである。 | 引張強度、クリープ、耐熱性、紫外線劣化 |
| 成形性改良グレード | 射出成形、押出成形、コンパウンド改質に対応する特殊グレードである。 | 流動性、成形温度、収縮率、摺動性、添加量 |
難燃性
標準的な超高分子量ポリエチレンは炭化水素系樹脂であり、難燃性は高くない。UL94ではHB相当として扱われることが多く、酸素指数はおおむね17〜19程度が目安である。難燃グレードは存在する場合があるが、摺動性、摩耗性、食品適合性、機械強度、発煙性が変化するため、用途ごとに確認が必要である。
法規制・適合性
RoHS、REACH、食品衛生法、FDA、EU 10/2011、医療用途の生体適合性などは、材料名だけで判断せず、メーカーのグレード別証明書で確認する必要がある。食品機械や医療用途では、添加剤、着色剤、滑剤、リサイクル材の有無、滅菌方法、抽出物、摩耗粉も確認する。
構造式
代表的な構造単位

−CH2−CH2−の超高分子量直鎖構造。構造中の官能基、結晶性、架橋密度、芳香族骨格、充填材の有無により、耐熱性、耐薬品性、機械的性質、成形性が変化する。
モノマーまたは構成単位
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| モノマー | エチレン |
| モノマー構造 | CH2=CH2 |
| 重合後の構造単位 | −CH2−CH2− |
| 基本反応式 | n CH2=CH2 → (−CH2−CH2−)n |
共重合体や変性グレード
超高分子量ポリエチレンは、基本的にはエチレンの高分子量重合体である。用途により、酸化安定剤、紫外線吸収剤、カーボンブラック、固体潤滑材、帯電防止剤、無機フィラー、架橋処理、表面処理、医療用高純度化などが行われる場合がある。エチレン系共重合体であるEVA、EVOHとは極性、接着性、バリア性、耐薬品性、加工性が異なるため、別材料として扱う必要がある。
種類
| 種類の名称 | 主成分または特徴 | 長所 | 短所 | 主な用途 |
|---|---|---|---|---|
| 標準UHMWPE | 高分子量ポリエチレンを基本とする汎用グレードである。 | 耐摩耗性、低摩擦、耐衝撃性、耐薬品性のバランスが良い。 | 剛性、耐熱性、寸法精度は高機能エンプラに劣る。 | 摺動板、ガイド、ライナー、切削部品 |
| 高分子量・高耐摩耗グレード | 分子量を高め、耐摩耗性を重視したグレードである。 | 摩耗寿命を延ばしやすく、粉体・粒体搬送に適する。 | 加工性が低下しやすく、成形・切削条件の管理が必要である。 | ホッパーライナー、シュート、サイロ、搬送設備 |
| 摺動改良グレード | 固体潤滑材や特殊添加剤で摩擦特性を調整したグレードである。 | 摩擦係数、摩耗量、異音を低減しやすい。 | 食品適合性、耐薬品性、摩耗粉の確認が必要である。 | 軸受、スライダー、チェーンガイド、ローラー |
| 帯電防止グレード | 帯電防止剤または導電性添加剤を配合したグレードである。 | 粉体搬送、電子部品周辺、静電気対策に使いやすい。 | 電気抵抗、汚染性、添加剤移行の確認が必要である。 | 搬送ライン、電子部品搬送、粉体設備 |
| 導電グレード | カーボンブラック、炭素系フィラーなどを配合したグレードである。 | 静電気拡散、帯電防止、粉じん着火対策に使われる。 | 黒色化し、食品・医療用途では適用範囲が制限される場合がある。 | 静電気対策部品、搬送部品、粉体機器 |
| 食品接触グレード | 食品機械向けに添加剤や衛生適合性を管理したグレードである。 | 低吸水、耐洗浄剤、耐摩耗、衛生性に優れる。 | 高温洗浄、強酸化洗浄剤、蒸気滅菌では確認が必要である。 | まな板、食品搬送、ガイド、スクレーパー |
| 医療グレード | 医療用途向けに純度、酸化安定性、滅菌適性を管理したグレードである。 | 人工関節などで耐摩耗性と生体適合性が評価される。 | 酸化劣化、摩耗粉、滅菌履歴、規格適合の管理が重要である。 | 人工関節、医療用摺動部材、インプラント部材 |
| UHMWPE繊維 | ゲル紡糸などにより高配向化した高強度繊維である。 | 比強度が高く、軽量で耐衝撃性に優れる。 | 耐熱性、クリープ、接着性、紫外線劣化に注意が必要である。 | ロープ、防護材、防弾材、複合材料 |
| 成形性改良UHMWPE | 特殊重合や分子量制御により流動性を改善したグレードである。 | 射出成形、押出成形、他樹脂改質に適用しやすい。 | 標準UHMWPEと耐摩耗性、分子量、物性が異なる場合がある。 | 射出成形部品、押出部品、樹脂改質剤 |
成形加工
| 加工方法 | 適正 | 内容 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 射出成形 | △ | 標準グレードでは困難である。射出成形対応グレードでは可能な場合がある。 | 流動性、成形収縮、離型、寸法精度、摩耗性を確認する。 |
| 押出成形 | ○ | ラム押出や特殊押出により、丸棒、パイプ、異形材を成形する。 | 溶融粘度が高く、標準PEの押出条件とは異なる。 |
| ブロー成形 | × | 標準的なUHMWPEでは一般的ではない。 | 中空成形用途ではHDPEやHMWPEを検討することが多い。 |
| 圧縮成形 | ◎ | 粉末または粒状材料を加熱・加圧し、板材やブロックを成形する。 | 焼結条件、冷却条件、内部応力、反りを管理する。 |
| 真空成形 | △ | 薄板の熱成形は条件により可能であるが、一般的ではない。 | 加熱ムラ、戻り、結晶化、寸法安定性を確認する。 |
| 切削加工 | ◎ | 板材、丸棒、ブロックから機械加工する用途が多い。 | 熱膨張、バリ、反り、切削熱、寸法変化に注意する。 |
| 溶着 | △ | 熱板溶着、押出溶接などが検討される場合がある。 | 表面状態、酸化、結晶化、応力で接合強度が変化する。 |
| 接着 | × | 表面エネルギーが低く、一般接着剤では接着困難である。 | コロナ処理、プラズマ処理、火炎処理、専用プライマーが必要になる場合がある。 |
| 塗装・印刷 | × | 標準状態では密着しにくい。 | 表面処理、インク、塗料、摩耗条件を個別に確認する。 |
成形条件の目安
| 項目 | 代表条件 | 備考 |
|---|---|---|
| 乾燥温度 | 通常不要。 必要に応じて60〜80℃程度 | 吸水は極めて少ないが、表面水分や保管時の結露がある場合は乾燥する。 |
| シリンダー温度 | 180〜240℃程度 | 射出成形対応グレードの目安である。標準UHMWPEには適用できない場合が多い。 |
| 金型温度 | 40〜90℃程度 | グレード、肉厚、収縮、反りにより調整する。 |
| 圧縮成形温度 | 170〜220℃程度 | 焼結、加圧、冷却条件により内部応力と寸法安定性が変化する。 |
| 成形収縮率 | 2.0〜5.0%程度 | 分子量、結晶化度、加工法、流動方向、冷却条件により大きく変化する。 |
| 切削加工条件 | 低発熱、鋭利な工具、十分な逃げ角 | 熱膨張が大きく、加工後の寸法変化や反りに注意する。 |
代表的な物性値又は機械的性質
| 項目 | 単位 | UHMWPE 標準グレード | 摺動・充填グレード | UHMWPE繊維 | 備考 |
|---|---|---|---|---|---|
| 密度 | g/cm3 | 0.93〜0.94 | 0.94〜1.10程度 | 0.97程度 | 充填材、配向、結晶化度により変化する。 |
| 引張強さ | MPa | 20〜50 | 20〜60 | 2000〜3500程度 | 繊維は高配向品であり、成形品とは別物性として扱う。 |
| 伸び | % | 200〜500 | 100〜400 | 2〜5程度 | 試験片、加工履歴、分子量により差が大きい。 |
| 曲げ弾性率 | MPa | 600〜1000 | 700〜1500程度 | 繊維方向で高い | 金属やPOMに比べると剛性は低い。 |
| アイゾット衝撃強さ | J/m | 破壊せず、または非常に高い | 高い | 用途設計による | 低温でも衝撃性に優れる。 |
| ロックウェル硬さ | Rスケール | R40〜R65程度 | R50〜R80程度 | 該当しにくい | 表面硬度はPOMやPAより低い場合が多い。 |
| 荷重たわみ温度 | ℃ | 45〜85程度 | 50〜100程度 | 用途設計による | 荷重条件により大きく変化する。 |
| 融点 | ℃ | 130〜136 | 130〜136 | 140〜150程度の場合あり | 結晶化度、配向、測定法により変化する。 |
| ガラス転移温度 | ℃ | 約−100〜−120 | 約−100〜−120 | 約−100〜−120 | 低温衝撃性に優れる要因の一つである。 |
| 連続使用温度 | ℃ | 80〜90程度 | 80〜100程度 | 用途設計による | 低荷重条件の目安である。高荷重では下げて考える。 |
| 吸水率 | % | <0.01〜0.05 | <0.01〜0.05 | 極めて低い | ポリアミドより吸水寸法変化が小さい。 |
| 線膨張係数 | ×10−5/K | 10〜20程度 | 8〜18程度 | 繊維方向で小さい | 寸法精度部品では温度変化を考慮する。 |
| 体積抵抗率 | Ω・cm | 1015以上 | 103〜1015程度 | グレードによる | 導電・帯電防止グレードでは大きく低下する。 |
| 摩擦係数 | − | 0.10〜0.25程度 | 0.08〜0.20程度 | 用途設計による | 相手材、面圧、速度、潤滑、表面粗さで変化する。 |
上記は代表値または目安である。実際の物性は、分子量、結晶化度、加工法、焼結条件、アニール、充填材、試験片方向、温度、湿度、荷重、測定規格により変化する。
耐薬品性
| 薬品分類 | 代表薬品 | 評価 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 酸類 | 塩酸、希硫酸、酢酸、リン酸 | ◎ | 常温では一般に良好である。高温、濃硫酸、酸化性酸では確認が必要である。 |
| 強酸化性酸 | 濃硝酸、発煙硝酸、クロム酸混酸 | △〜× | 酸化劣化、表面劣化、機械強度低下の恐れがある。 |
| アルカリ類 | NaOH、KOH、水酸化ナトリウム水溶液 | ◎ | 常温から中温域では一般に良好である。高温長期では実液確認が必要である。 |
| 低級アルコール類 | メタノール、エタノール、IPA | ◎ | 一般に安定である。添加剤抽出や応力条件は確認する。 |
| 高級アルコール類 | ブタノール、グリセリン、MMB | ◎〜○ | 常温では良好な場合が多い。高温、長時間では膨潤や寸法変化を確認する。 |
| 芳香族炭化水素類 | トルエン、キシレン、エチルベンゼン | ○〜△ | 常温短時間では使用できる場合があるが、膨潤、軟化、応力割れを確認する。 |
| 脂肪族炭化水素類 | ヘキサン、ヘプタン、ミネラルスピリット | ○〜△ | SP値が近いため、長時間接触や高温では膨潤する場合がある。 |
| ケトン | アセトン、MEK、MIBK | ○ | 常温では比較的良好である。応力、温度、混合溶剤では確認する。 |
| エステル | 酢酸エチル、酢酸ブチル | ○〜△ | 常温短時間では比較的安定な場合があるが、膨潤や抽出を確認する。 |
| 塩素系溶剤 | ジクロロメタン、クロロホルム、トリクロロエチレン | △ | 膨潤や寸法変化を生じる場合がある。長時間接触、高温、応力下では避ける方がよい。 |
| 水・温水 | 水、温水、海水 | ◎ | 吸水は少ないが、熱水中の荷重、洗浄剤、酸化剤併用では確認する。 |
| 油 | 鉱物油、潤滑油、動植物油 | ◎〜○ | 一般に良好である。高温油、添加剤、燃料混入では膨潤や抽出を確認する。 |
| 燃料 | ガソリン、軽油、灯油 | ○〜△ | 膨潤、寸法変化、添加剤影響を確認する。精密部品では注意が必要である。 |
| 酸化剤 | 次亜塩素酸ナトリウム、過酸化水素水 | ○〜△ | 濃度、pH、温度、紫外線、接触時間により酸化劣化する場合がある。 |
耐薬品性評価は、◎非常に良好、○概ね良好、△注意が必要、×不適を目安とした。実使用では薬品の濃度、温度、接触時間、応力、摩擦、洗浄頻度、添加剤、食品適合性、摩耗粉発生を確認する必要がある。
SP値(溶解度パラメータ)
| 項目 | 値 | 備考 |
|---|---|---|
| 超高分子量ポリエチレンの代表SP値 | 約16.0〜16.8 MPa1/2 | 一般的なポリエチレン系樹脂の目安である。結晶化度、分子量、添加剤、測定法により変化する。 |
| HSPの傾向 | δd主体、δpとδhは小さい | 非極性ポリオレフィンであり、極性溶剤より非極性炭化水素系溶剤に近い。 |
| 耐溶剤判断の注意 | SP値だけでは判断不可 | 結晶性、分子量、拡散速度、温度、応力、接触時間、薬品の酸化性により膨潤・劣化挙動が変化する。 |
SP値が近い薬品であっても、超高分子量ポリエチレンは高結晶性かつ高分子量であるため、常温短時間では溶解しにくい場合が多い。ただし、芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素、塩素系溶剤、燃料などでは、膨潤、寸法変化、機械強度低下が問題になる場合がある。
溶解性の目安
| SP値差 | 溶解・膨潤の目安 | 判定 |
|---|---|---|
| 0〜2 | 膨潤・軟化しやすい | × |
| 2〜5 | 条件により膨潤する | △ |
| 5〜8 | 短時間接触では比較的安定 | ○ |
| 8以上 | 溶解・膨潤しにくい | ◎ |
SP値から見た耐溶剤性
| 薬品名 | 代表SP値 MPa1/2 | UHMWPEとの差 | 評価 | 実務上の注意 |
|---|---|---|---|---|
| 水 | 47.9 | 約31 | ◎ | 吸水は少ない。温水、洗浄剤、酸化剤併用では確認する。 |
| メタノール | 29.7 | 約13 | ◎ | 一般に安定である。 |
| エタノール | 26.0 | 約9〜10 | ◎ | 常温では良好な場合が多い。 |
| IPA | 23.5 | 約7 | ○ | 短時間接触では安定しやすい。 |
| アセトン | 19.9 | 約3〜4 | ○〜△ | SP値差は小さめだが、常温では比較的安定な場合がある。応力下では確認する。 |
| MEK | 19.0 | 約2〜3 | △ | 長時間接触や高温では膨潤を確認する。 |
| 酢酸エチル | 18.2 | 約1〜2 | △ | SP値上は近く、膨潤や寸法変化の確認が必要である。 |
| トルエン | 18.2 | 約1〜2 | △ | 常温短時間では使用できる場合があるが、高温・長時間では注意する。 |
| キシレン | 18.0 | 約1〜2 | △ | 膨潤、応力割れ、寸法変化を確認する。 |
| ヘキサン | 14.9 | 約1〜2 | △ | 非極性でSP値が近い。高温・長時間では膨潤を確認する。 |
| ヘプタン | 15.3 | 約1 | △ | 燃料・油系用途では寸法変化と摩耗変化を確認する。 |
| ジクロロメタン | 20.2 | 約3〜4 | △ | 塩素系溶剤では膨潤や抽出に注意する。 |
| グリセリン | 33.8 | 約17 | ◎ | 一般に良好であるが、添加剤や高温条件は確認する。 |
SP値差による判定は、溶解・膨潤傾向を推定するための簡易指標である。超高分子量ポリエチレンでは、結晶性、分子量、拡散速度、相手液の分子サイズ、温度、応力、接触時間が大きく影響する。したがって、SP値が近い場合でも直ちに溶解すると判断せず、重量変化、寸法変化、硬度変化、摩耗試験、実液浸漬試験で確認する必要がある。
製法
原料
主原料はエチレンである。超高分子量化するため、重合触媒、重合条件、分子量制御、粒子形状制御が重要である。一般的なHDPEよりも高分子量領域で設計されるため、溶融流動性は著しく低くなる。
重合方法
チーグラー・ナッタ触媒、メタロセン触媒などを用いた配位重合によりエチレンを重合する。実際の工業プロセスでは、スラリー重合、気相重合、溶液重合などが用いられる場合がある。重合条件により、分子量、分子量分布、粒子径、結晶化度、加工性が変化する。
代表的な反応式
| 工程 | 反応式または内容 |
|---|---|
| エチレンの付加重合 | n CH2=CH2 → (−CH2−CH2−)n |
| 高分子量化 | 触媒、温度、圧力、水素濃度、滞留時間を制御し、分子量を高める。 |
| 粉末化・粒子制御 | 成形用粉末、微粒子、改質剤用粉末など、用途に応じて粒子径や形状を調整する。 |
ペレット化やコンパウンド
標準的なUHMWPEは溶融粘度が高いため、一般的なペレット溶融混練が難しい場合がある。板材や丸棒では粉末を圧縮成形またはラム押出することが多い。一方、成形性改良グレード、微粒子グレード、他樹脂改質用グレードでは、ペレット、粉末、分散体として供給され、PA、PBT、ゴム、塗料、コーティングに摺動性・耐摩耗性を付与する目的で使用される場合がある。
添加剤、充填材、強化材
用途により、酸化防止剤、紫外線吸収剤、カーボンブラック、帯電防止剤、導電性フィラー、固体潤滑材、ガラス系充填材、セラミック粉、金属粉、架橋処理などが用いられる場合がある。添加剤や充填材は、耐摩耗性、摩擦係数、寸法安定性、電気特性を改善する一方で、食品適合性、摩耗粉、耐薬品性、衝撃性を変化させるため、グレード別の確認が必要である。
詳細な利用用途
| 分野 | 用途例 | 採用理由 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 自動車 | スライダー、ガイド、ウェザーストリップ摺動層、異音対策部品、チェーンガイド | 低摩擦、耐摩耗、低騒音、軽量性に優れる。 | 熱、摩擦発熱、油、グリース、紫外線、相手材摩耗を確認する。 |
| 電気・電子 | 搬送ガイド、治具、帯電防止部品、フィルム添加剤、摺動部品 | 低摩擦、低吸水、電気絶縁性、耐摩耗性がある。 | 静電気、アウトガス、摩耗粉、寸法精度を確認する。 |
| 機械部品 | 軸受、スライドプレート、ギア、ローラー、ライナー、シール部品 | 無給油摺動、耐摩耗、耐衝撃、低騒音に適する。 | 高荷重、高温、クリープ、面圧、相手材粗さを確認する。 |
| 食品機械 | まな板、コンベヤガイド、スクレーパー、ホッパーライナー、充填機部品 | 低吸水、耐洗浄性、耐摩耗性、食品接触グレードの選択肢がある。 | 食品衛生法、FDA、洗浄剤、熱水、摩耗粉を確認する。 |
| 医療 | 人工関節、医療用摺動部材、整形外科関連部材 | 耐摩耗性、生体適合性、低摩擦性が評価される。 | 医療グレード、滅菌、酸化劣化、摩耗粉、規格適合が必須である。 |
| 建築・設備 | 摺動支承、ライニング、ガイドレール、配管支持材、雪滑り材 | 低摩擦、耐候グレード、耐水性、耐薬品性に優れる。 | 紫外線、屋外酸化、熱膨張、固定方法を確認する。 |
| 粉体・鉱業・搬送 | サイロライナー、シュートライナー、ホッパー、コンベヤ部品 | 付着防止、耐摩耗、低摩擦、耐衝撃に優れる。 | 粉体の硬度、衝撃、静電気、摩耗粉、固定方法を確認する。 |
| 繊維・防護材 | 高強度ロープ、防護服、防弾材、複合材料補強材 | 高比強度、軽量、耐衝撃性に優れる。 | 耐熱性、クリープ、接着性、紫外線劣化を確認する。 |
| 塗料・コーティング | 摺動性付与剤、耐摩耗改質剤、ブロッキング防止剤 | 低摩擦、耐摩耗、表面改質効果が期待できる。 | 粒子径、分散性、密着性、透明性、沈降、摩耗粉を確認する。 |
用途別選定
| 用途 | 推奨されるグレード | 重視する特性 | 確認試験 |
|---|---|---|---|
| ギア | 摺動グレード、充填グレード | 摩耗、低騒音、耐衝撃 | 歯面摩耗、トルク、温度上昇、クリープ |
| 軸受 | 摺動グレード、導電グレード | 低摩擦、耐摩耗、無給油性 | 摩擦係数、PV限界、相手材摩耗、温度上昇 |
| チューブ・パイプ | ラム押出グレード、耐摩耗グレード | 耐摩耗、耐薬品、低付着 | 内面摩耗、圧力、薬品浸漬、寸法変化 |
| 筐体 | 成形性改良グレード | 耐衝撃、軽量、耐薬品 | 寸法精度、反り、落下衝撃、難燃性 |
| フィルム | 微粒子添加用グレード、特殊成形グレード | 耐摩耗、滑り性、ブロッキング防止 | ヘイズ、摩擦係数、分散性、表面欠陥 |
| コネクタ・電子部品搬送 | 帯電防止グレード、導電グレード | 静電気対策、低摩耗、低吸水 | 表面抵抗、摩耗粉、アウトガス、寸法安定性 |
| 食品搬送部品 | 食品接触グレード | 衛生性、耐洗浄剤、低吸水、耐摩耗 | 食品適合証明、洗浄耐久、摩耗粉、着色移行 |
関連材料との比較
| 比較材料 | 特徴 | 超高分子量ポリエチレンとの違い |
|---|---|---|
| ポリエチレン(PE) | 低密度、耐薬品性、成形性に優れる汎用ポリオレフィンである。 | UHMWPEはPEの一種であるが、分子量が非常に高く、耐摩耗性と耐衝撃性で有利である。一方、一般PEの方が射出成形、押出成形、ブロー成形に適する。 |
| ポリアセタール(POM) | 高剛性、寸法安定性、摺動性、耐疲労性に優れる結晶性エンプラである。 | POMは剛性、寸法精度、ギア用途で有利である。UHMWPEは耐摩耗性、耐衝撃性、低摩擦、耐薬品性で有利な場合がある。 |
| ポリアミド(PA) | 機械強度、耐摩耗性、耐油性に優れるエンジニアリングプラスチックである。 | PAは強度と耐熱性で有利であるが、吸水による寸法変化がある。UHMWPEは吸水が少なく、耐薬品性と低摩擦性で有利な場合がある。 |
| ポリテトラフルオロエチレン(PTFE) | 最高水準の耐薬品性、耐熱性、低摩擦性、非粘着性を持つフッ素樹脂である。 | PTFEは耐熱性と耐薬品性で優れる。UHMWPEは耐摩耗性、耐衝撃性、コスト、機械加工性で有利な場合がある。 |
| フッ素樹脂 | PTFE、PFA、FEP、ETFE、PVDFなどを含む耐薬品性材料群である。 | フッ素樹脂は耐薬品性、耐熱性、非粘着性で優れる。UHMWPEは低比重、耐摩耗性、耐衝撃性、食品搬送用途で有利な場合がある。 |
| ポリフェニレンサルファイド(PPS) | 耐熱性、耐薬品性、難燃性、寸法安定性に優れるスーパーエンプラである。 | PPSは高温・薬品環境、電装部品で有利である。UHMWPEは低温衝撃、耐摩耗、低摩擦、軽量性で有利である。 |
| ポリエーテルエーテルケトン(PEEK) | 高耐熱、高強度、耐薬品性、耐摩耗性に優れる高機能スーパーエンプラである。 | PEEKは高温、高荷重、精密部品で有利である。UHMWPEは常温から中温域の低摩擦・耐摩耗用途でコスト面の利点が出やすい。 |
| 炭素繊維強化プラスチック(CFRP) | 炭素繊維で強化した軽量高剛性複合材料である。 | CFRPは比剛性、比強度で有利である。UHMWPEは低摩擦、耐摩耗、耐衝撃、耐薬品、切削加工性で有利な場合がある。 |
注意点
- 加水分解は一般に問題になりにくいが、熱水、洗浄剤、酸化剤、長期荷重では実液確認が必要である。
- 応力割れは他の非晶性樹脂ほど顕著ではないが、燃料、炭化水素系溶剤、塩素系溶剤、洗浄剤、長期応力下では確認が必要である。
- 吸湿は極めて少ないが、表面水分、結露、汚染、洗浄残渣は接着、塗装、摩擦、寸法測定に影響する。
- 熱劣化は高温、酸素、紫外線、摩擦発熱で進行する場合がある。屋外用途では耐候グレードや黒色グレードを検討する。
- アウトガス、摩耗粉、添加剤移行は、電子部品、半導体、医療、食品用途では重要な確認項目である。
- クリープしやすいため、長期荷重部品、締結部、圧入部、面圧部では設計応力を低く設定する必要がある。
- 接着、塗装、印刷は困難であり、表面処理を行っても長期密着性は用途ごとに確認する必要がある。
代表的なメーカー
| メーカー | 代表製品・ブランド | 概要 |
|---|---|---|
| 三井化学 | HI-ZEX MILLION、MIPELON、LUBMER | 超高分子量ポリエチレン、微粒子グレード、成形性改良グレードなどを展開する代表的メーカーである。 |
| Celanese | GUR | UHMWPE粉末・成形材料の代表的ブランドとして知られる。医療、工業、フィルター、電池、摺動用途などで使用される。 |
| Braskem | UTEC | UHMWPEの代表的グローバルメーカーの一つであり、耐摩耗、低摩擦、ライニング、工業部品用途に展開している。 |
| DSM / Avient系ブランド | Dyneema | UHMWPE高強度繊維の代表例として知られる。防護材、ロープ、複合材料用途で使用される。 |
| Honeywell | Spectra | UHMWPE高強度繊維の代表例である。防護材、ロープ、軽量高強度用途で使用される。 |
| LyondellBasell | Hostalen GUR関連グレードとして流通する場合がある | ポリオレフィン系材料の大手メーカーであり、グレード・地域により供給形態を確認する必要がある。 |
| 作新工業 | Saxinニューライトなど | UHMWPE板材、切削加工材、摺動材料の代表的な国内加工・材料メーカーの一つである。 |
メーカー名、ブランド名、グレード名は、事業移管、地域、販売代理店、用途区分により変わる場合がある。採用時は最新の技術資料、SDS、食品適合証明、医療適合性、RoHS、REACH、UL、FDAなどのグレード別資料を確認する必要がある。
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