概要
| 材料名 | 超高分子量ポリエチレン |
|---|---|
| 略記号 | UHMWPE、UHPE |
| 英語名 | Ultra High Molecular Weight Polyethylene |
| 分類 | 超高分子量ポリオレフィン、結晶性樹脂 |
| 構造・主成分 | (–CH₂–CH₂–)ₙ 分子量100万〜700万程度の高分子量PE |
| 主な用途 | 摺動板、ライニング、人工関節、繊維、防弾材、搬送部品 |
- エチレンを重合して得られる結晶性樹脂。
- 通常のポリエチレンが2~30万の分子量の所、分子量を100~700万まで高めたものが超高分子量ポリエチレン。
- 熱可塑性樹脂に分類される合成樹脂である。
- 耐摩耗性、低摩擦性、耐衝撃性、耐薬品性、軽量性が非常に良い。
- 超高分子ポリエチレンで繊維を製造しているハネウェル社によると、地球上に存在する繊維のうち最強で最軽量の素材の1つである。
- 材料選定では、溶融流動性が極めて低く通常射出成形困難、接着困難。
- 用途、温度、荷重、薬品、成形方法に応じてグレードを選定する必要がある。
特徴
- 耐摩耗性、低摩擦性、耐衝撃性、耐薬品性、軽量性が非常に良い
- 溶融流動性が極めて低く通常射出成形困難、接着困難
- グレード、充填材、共重合成分、硬化条件により物性が大きく変化する。
- 実使用では温度、湿度、応力、薬品接触時間を含めて評価する必要がある。
HONEYWELL社の スペクトラの特性
- 比重が軽い(スペクトラ比重:0.97g/cc )
- 耐薬品性、耐紫外線性能がすぐれている。
- 吸水率が低い。
- 振動減衰効果にすぐれている。
- 曲げによる疲労低下が低い。
- 自己潤滑性があり、摩擦抵抗が少ない。
- 耐摩耗性にすぐれている。
- 誘電率が低い。
- レーダーに反応しない。
- 耐衝撃性が高く、ポリカーボネートを上回る。
長所
- 耐摩耗性、低摩擦性、耐衝撃性、耐薬品性、軽量性が非常に良い
- 用途に応じたグレード展開がある。
- 金属、ガラス、汎用樹脂の代替材料として使える場合がある。
短所
- 溶融流動性が極めて低く通常射出成形困難、接着困難
- 高温、応力、薬品、吸水、添加剤の影響で性能が変化する。
- 量産前にはメーカー物性表と実使用条件での確認が必要である。
成形加工
超高分子量ポリエチレンの加工性は種類とグレードにより異なる。熱可塑性樹脂では射出成形・押出成形が中心となり、熱硬化性樹脂では注型、圧縮、積層、硬化成形が中心となる。
化学
| 加工方法 | 適性 | 主な製品例 |
|---|---|---|
| 射出成形 | ○ | グレードにより成形部品、電気電子部品、機械部品に使用する |
| 押出成形 | ○ | シート、フィルム、チューブ、板材に使用する |
| 圧縮・注型・硬化成形 | △〜◎ | 熱硬化性樹脂や高粘度材料では主要加工法となる |
| 切削加工 | ○ | 丸棒、板材、試作部品、治具に使用する |
構造式

−CH2−CH2−の超高分子量直鎖構造。構造中の官能基、結晶性、架橋密度、芳香族骨格、充填材の有無により、耐熱性、耐薬品性、機械的性質、成形性が変化する。
種類
標準グレード
| 名称 | 標準超高分子量ポリエチレン |
|---|---|
| 構成 | 分子量100万〜700万程度の高分子量PE |
| 特徴 | 耐摩耗性、低摩擦性、耐衝撃性、耐薬品性、軽量性が非常に良い |
| 主な用途 | 摺動板、ライニング、人工関節、繊維、防弾材、搬送部品 |
特徴
- 標準的な物性バランスを持つ。
- 汎用的な成形・加工用途に使いやすい。
強化・改質グレード
| 名称 | 強化・改質超高分子量ポリエチレン |
|---|---|
| 構成 | ガラス繊維、炭素繊維、難燃剤、耐候剤、潤滑剤、共重合成分などで改質したグレード |
| 特徴 | 剛性、耐熱性、耐候性、難燃性、摺動性、寸法安定性などを改善する |
| 主な用途 | 電気電子部品、自動車部品、機械部品、構造部品、機能部材 |
特徴
- 標準グレードより特定性能を高めた材料である。
- 充填材により比重、成形収縮、異方性、耐薬品性が変化する。
代表的な物性値又は機械的性質
| 性質 | 単位 | 高密度 (HDPE) | 低密度 (LDPE) | 直鎖状低密度 (LLDPE) | 超高分子量 (UHMW-PE) |
|---|---|---|---|---|---|
| 比重 | 0.94~0.97 | 0.91~0.93 | 0.92~0.94 | 0.97 (Spectra fiber) | |
| 吸水率 | % | <0.01 | <0.01 | <0.01 | <0.01 |
| 引張強さ | MPa 超高分子量はGPa | 20~33 | 10~23 | 10~20 | 2.91~3.68 GPa (Spectra fiber) |
| 引張伸び | % | 8~10 | 20 | 20 | 2.8~3.5 (Spectra fiber) |
| 曲げ強さ | MPa | 38~60 | |||
| 圧縮強さ | MPa | 19~25 | |||
| アイゾット衝撃強さ(ノッチ付き) | J/m | 5~200 | 破壊せず | 破壊せず | 破壊せず |
| シェア硬さ | D60~70 | D41~50 | D45~50 | D60~70 | |
| 荷重たわみ温度 (0.45MPa) | ℃ | 60~82 | 38~74 | 46~66 | 68~82 |
| 体積固有抵抗 | Ω・cm | >1016 | >1016 | >1016 | >1016 |
| 誘電率 | 106Hz | 2.30~2.35 | 2.25~2.35 | 2.25~2.35 | 2.3 |
| 絶縁破壊強さ | kV/mm | 18~20 | 18~40 | 18~ | 28 |
耐薬品性
水・酸・アルカリに強い。高温炭化水素で膨潤注意。
| 薬品・溶剤 | 耐性 | 備考 |
|---|---|---|
| 水 | ○ | 多くは常温で比較的安定であるが、吸水・加水分解型材料では注意する |
| 酸 | △〜○ | 強酸では劣化する材料がある |
| アルカリ | △〜○ | ポリエステル、PC、熱硬化性樹脂では高温・高濃度に注意する |
| アルコール | ○〜△ | 応力クラックや膨潤は材料により異なる |
| ケトン | △〜× | 非晶性樹脂や塗料系樹脂では膨潤・溶解に注意する |
| 芳香族溶剤 | △〜× | 膨潤、白化、クラックの可能性がある |
| 油・燃料 | ○〜△ | ポリアミド、POM、PBT、PPS、PEEKなどは比較的良好な場合が多い |
更に詳しくはプラスチックの耐薬品性一覧表を参照。
SP値(溶解度パラメータ)
超高分子量ポリエチレンのSP値はグレード、結晶化度、架橋密度、充填材により変動する。溶解性はSP値だけでなく、温度、応力、薬品濃度、接触時間で判断する必要がある。
| 材料 | SP値(δ) | 特徴 |
|---|---|---|
| LDPE | 約16.0〜16.8 MPa1/2 | 柔軟性と耐薬品性を持つ低密度PEである |
| HDPE | 約16.2〜17.0 MPa1/2 | 高結晶性で耐薬品性に優れるPEである |
| UHMWPE | 約16.0〜17.5 MPa1/2 | 超高分子量により極めて高い耐摩耗性と耐衝撃性を持つ |
溶解性の目安
| Δδ | 挙動 |
|---|---|
| 0〜2 | 溶解しやすい |
| 2〜5 | 膨潤・軟化 |
| 5以上 | 溶解しにくい |
SP値から見た耐溶剤性
| 溶媒・薬品 | SP値(δ) MPa1/2 | 耐性 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 水 | 47.9 | ◎ | 吸水率が極めて低い |
| 熱水 | 47.9 | ◎ | 高温長期でも比較的安定である |
| エタノール | 26.0 | ◎ | アルコール類に強い |
| IPA | 23.5 | ◎ | 一般洗浄用途で安定である |
| メタノール | 29.7 | ◎ | 短期・長期とも比較的安定である |
| アセトン | 19.9 | ◎ | 常温ではほとんど影響を受けない |
| MEK | 19.0 | ◎ | 高温を除き安定である |
| 酢酸エチル | 18.6 | ◎ | 常温では安定である |
| THF | 18.5 | ○ | 高温では膨潤する場合がある |
| クロロホルム | 19.0 | △ | 長時間では膨潤する可能性がある |
| ジクロロメタン | 20.2 | △ | 高温や長期接触では影響を受ける |
| トルエン | 18.2 | ○ | 高温では膨潤する場合がある |
| キシレン | 18.0 | ○ | 高温長期で軟化する場合がある |
| ヘキサン | 14.9 | ◎ | 脂肪族炭化水素には極めて強い |
| ガソリン | 15〜18程度 | ◎ | 燃料用途にも使用される |
| 鉱物油 | 15〜17程度 | ◎ | 耐油性は極めて高い |
| フェノール | 24〜25 | △ | 高温では影響を受ける場合がある |
| DMF | 24.8 | ○ | 一般的には安定である |
| NMP | 23.1 | ○ | 高温長期を除き安定である |
| 希酸 | – | ◎ | 酸に対して非常に安定である |
| 濃硫酸 | 高極性 | △ | 酸化劣化する可能性がある |
| 弱アルカリ | – | ◎ | アルカリに強い |
| 強アルカリ | – | ◎ | 高温でも比較的安定である |
| 次亜塩素酸ナトリウム | – | △ | 強酸化剤では劣化する場合がある |
| 過酸化水素 | – | △ | 高濃度酸化剤には注意が必要である |
◎:非常に良好 ○:概ね良好 △:注意が必要 ×:不適
実務上の注意
- SP値は溶解・膨潤予測の一次判断であり、耐久性そのものではない。
- 成形残留応力がある場合は、短時間の薬品接触でもクラックが発生する場合がある。
- 最終判断は実使用条件での浸漬試験、応力負荷試験、温度サイクル試験で行う。
製法
低圧の懸濁重合法にて製造しつつ、反応時間を長く取ることで分子量を高め製造され、圧縮成形・ラム押出する。
詳細な利用用途
代表用途
- 摺動板
- ライニング
- 人工関節
- 繊維
- 防弾材
- 搬送部品
工業用途
- 電気電子部品
- 自動車部品
- 機械部品
- 耐熱・耐薬品部材
- フィルム、シート、塗料、接着、複合材用途
関連材料との比較
代表的なメーカー
| メーカー | 代表的な製品・商品名 | 備考 |
|---|---|---|
| 三井化学 ハイゼックスミリオン | 代表グレード又は関連製品 | 詳細はメーカー技術資料で確認する |
| Celanese GUR | 代表グレード又は関連製品 | 詳細はメーカー技術資料で確認する |
| DSM Dyneema | 代表グレード又は関連製品 | 詳細はメーカー技術資料で確認する |
| Honeywell Spectra | 代表グレード又は関連製品 | 詳細はメーカー技術資料で確認する |