概要
| 材料名 | ポリ塩化ビニリデン |
|---|---|
| 略記号 | PVDC |
| 英語名 | Polyvinylidene Chloride |
| 分類 | 熱可塑性樹脂、非結晶性〜半結晶性樹脂、バリア材料 |
| 化学式 | (C2H2Cl2)n |
| 構成単位 | −CH2−CCl2− |
| 主な用途 | 食品包装、医薬包装、バリアフィルム |
ポリ塩化ビニリデン(PVDC)は、塩化ビニリデンを重合して得られる高バリア性樹脂である。 酸素透過率、水蒸気透過率ともに極めて低く、食品・医薬分野における保存性向上材料として広く使用される。
ポリ塩化ビニル(PVC)と比較すると、 塩素含有量が多く分子間力が強いため、ガスバリア性能が大幅に高いのが特徴である。—
特徴
- 極めて高いガスバリア性を持つ
- 水蒸気バリア性も非常に高い
- 他のプラスチック樹脂と比較して空気と酸素を通しにくい。
- 酸素透過量は、低密度ポリエチレンの約900分の1、ポリプロピレンの400分の1以下。
- 水分透過度は、、低密度ポリエチレンの7分の1以下、ポリプロピレンの3分の1以下。
- 他のフィルムにコーティングすると、酸素透過度が約50分の1になる。
- 耐薬品性が高い
- 透明性を持つ
- 薄膜でも性能を発揮する
- 加工温度範囲が狭い
- 弾性がある。
- 難燃性がある。
構造式

塩素原子を多く含む構造により分子間相互作用が強く、これが高バリア性の主因となる。
種類
ホモポリマーPVDC
- 最高レベルのバリア性能を持つ
- 加工性は悪い
共重合PVDC
- 実用上主流
- 加工性・柔軟性が向上
長所
- 酸素バリア性が極めて高い
- 水蒸気バリア性が高い
- 食品保存性を大幅に向上させる
- 耐薬品性に優れる
短所
- 熱安定性が低い
- 加工温度管理が難しい
- 単体成形用途には不向き
- 燃焼時に塩素系ガスを発生
機械的性質
| 項目 | ホモPVDC | 共重合PVDC | 備考 |
|---|---|---|---|
| 密度 | 1.65〜1.70 | 1.60〜1.68 | 高密度材料 |
| 引張強度 | 40〜60 MPa | 30〜50 MPa | 共重合で柔軟化 |
| 伸び | 10〜50% | 50〜200% | 柔軟性向上 |
| 衝撃強度 | 低い | 中程度 | 脆性材料 |
| 耐熱性 | 低い | やや改善 | 分解注意 |
耐薬品性
| 薬品 | 耐性 |
|---|---|
| 水 | ◎ |
| 酸 | ◎ |
| アルカリ | ○ |
| アルコール | ◎ |
| ケトン | △ |
| 芳香族溶剤 | △ |
更に詳しくはプラスチックの耐薬品性一覧表を参照
SP値(溶解度パラメータ)と溶解性
ポリ塩化ビニリデン(PVDC)は塩素含有量が高く、極性が強い高分子である。 そのため分子間相互作用が大きく、溶解性は限定的であり、特定の強溶媒にのみ溶解する。
SP値(Hildebrandパラメータ)
| 材料 | SP値(δ) | 特徴 |
|---|---|---|
| ポリ塩化ビニリデン(PVDC) | 約19.5〜21.5 (MPa1/2) | 高極性・強い分子間力 |
PVC(約18.5〜20.5)よりもSP値がやや高く、より極性が強い材料である。
溶解性の目安
| Δδ | 挙動 |
|---|---|
| 0〜2 | 溶解しやすい |
| 2〜5 | 膨潤・軟化 |
| 5以上 | 溶解しにくい |
PVDCと代表溶媒の相性
| 溶媒 | SP値 | 挙動 | 備考 |
|---|---|---|---|
| THF | 18.5 | ○(溶解) | 代表的溶解溶媒 |
| シクロヘキサノン | 20.3 | ◎(溶解) | 実用的溶解剤 |
| DMF | 24.8 | ○(溶解〜膨潤) | 強極性溶媒 |
| アセトン | 19.9 | △(膨潤) | 条件により影響 |
| トルエン | 18.2 | △(膨潤) | 高温で影響増大 |
| エタノール | 26.0 | ◎(安定) | 溶解しない |
| 水 | 47.9 | ◎(安定) | 影響なし |
実務上のポイント
- シクロヘキサノン、THFはPVDCを溶解する代表溶媒である
- ケトン系は膨潤〜溶解の可能性がある
- 芳香族溶媒では高温時に膨潤が起こる
- 水・アルコールには安定である
- PVDCはPVCより溶解しにくい傾向がある
注意点
- 共重合タイプでは溶解性が変化する
- 温度上昇により溶解性は大きく増加する
- 熱分解しやすいため溶解時の温度管理が重要である
- SP値は溶解予測指標であり、耐久性評価とは異なる
ガスバリア性
PVDCは湿度の影響を受けにくく、最も安定したバリア材料である。 EVOHは乾燥状態では非常に優れるが、湿度に弱い。 ナイロンは機械強度は高いが、バリア用途では補助的な位置付けである。—
製法
塩化ビニリデンのラジカル重合により製造される。 実用上は共重合体として設計されることが多い。
- 石油を精製してエチレンを製造する。
- ポリ塩化ビニリデンを加熱して、重合させる。
詳細な利用用途
- 食品包装(ハム、チーズ)
- 医薬包装(PTP)
- 高バリアフィルム
- ラミネート材料